(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記有機溶媒が、酢酸ブチル、ブタノール、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、トルエン、及びミネラルスピリットからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の防汚性シートの製造方法。
工程(1)において、(A)成分の含有量が、(A)成分及び(B)成分の合計100モル%に対して、0.80モル%以上、96.00モル%以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の防汚性シートの製造方法。
工程(1)において、(B)成分の含有量が、(A)成分及び(B)成分の合計100モル%に対して、2.50モル%以上、99.00モル%以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の防汚性シートの製造方法。
工程(1)において、更に(E)成分である酸触媒を含み、(E)成分の含有量が、(A)成分及び(B)成分の合計100モル%に対して、0.010モル%以上、1.000モル%以下である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の防汚性シートの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[防汚性シートの製造方法]
本発明の防汚層を有する防汚性シートの製造方法は、下記工程(1)〜(3)をこの順で有する。
工程(1):下記(A)〜(D)成分を含有する防汚性組成物を調製する工程
(A)成分:下記一般式(a)で表される4官能シラン系化合物
Si(OR
1)
p(X
1)
4−p (a)
〔一般式(a)中、R
1は、炭素数1〜6のアルキル基を表し、X
1は、ハロゲン原子を表す。R
1及びX
1が複数存在する場合、複数のR
1及びX
1は、互いに同一でも、異なっていてもよい。pは0〜4の整数を表す。〕
(B)成分:下記一般式(b)で表される3官能シラン系化合物
R
2Si(OR
3)
q(X
2)
3−q (b)
〔一般式(b)中、R
2は、炭素数1〜24のアルキル基を表し、当該アルキル基は置換基を有していてもよい。R
3は、炭素数1〜6のアルキル基を表し、X
2は、ハロゲン原子を表す。R
3及びX
2が複数存在する場合、複数のR
3及びX
2は、互いに同一でも、異なっていてもよい。qは0〜3の整数を表す。〕
(C)成分:金属触媒
(D)成分:有機溶媒
工程(2):工程(1)で調製した防汚性組成物を支持体上に塗布して塗膜を形成する工程
工程(3):工程(2)で形成した支持体上の塗膜を、当該有機溶媒の沸点以下の温度で加熱して、防汚層を形成する工程
【0010】
本発明の製造方法により得られる防汚層を有する防汚性シートは、上記工程(1)に記載の防汚性組成物中のシラン系化合物同士の縮合反応が進行し、重合体となることで防汚層が形成される。
本発明者らは、同一組成の防汚性組成物を用いた場合であっても、当該防汚性組成物から形成される塗膜の硬化促進方法の違いによって、塗膜から形成される防汚層の状態が変化することを見出した。より具体的には、上記工程(3)の工程を導入しない場合、防汚層を形成する過程で、防汚性組成物から形成される塗膜がゲル化してしまう場合があることを見出した。
上記工程(2)で、本発明で用いられる防汚性組成物を支持体上に塗布して塗膜を形成する際に、工程(1)で調製した防汚性組成物は有機溶媒に溶解した溶液の形態として塗布される。
本発明者らは、防汚層を形成する過程で、塗膜の硬化反応が十分に進行する前に、当該有機溶媒が揮発や蒸発して塗膜の乾燥が進行してしまうことにより、塗膜がゲル化してしまうと推測した。
【0011】
そこで、本発明者らは、上記の工程(3)を導入することにより、防汚性組成物から形成された塗膜中の有機溶媒が塗膜表面側から揮発及び/又は蒸発して塗膜が乾燥してしまう前に、塗膜の硬化反応を促進できることに着目した。
更に、(C)成分として金属触媒を用いることで、シラン系化合物同士の縮合反応を効果的に進行させて、より塗膜の硬化反応を促進できることに着目した。
その結果、塗膜のゲル化を抑制しつつ、面状態が良好な防汚層を形成し得ることを見出し、本発明を完成させたものである。
以下、本発明の防汚性シートの製造方法について説明する。
【0012】
<<工程(1)>>
本発明で用いる工程(1)は、前記(A)〜(D)成分を含有する防汚性組成物を調製する工程である。
【0013】
<防汚性組成物>
工程(1)で用いられる防汚性組成物は、(A)成分として一般式(a)で表される4官能シラン系化合物、(B)成分として一般式(b)で表される3官能シラン系化合物、(C)成分として金属触媒、及び(D)成分として有機溶媒を含む。
なお、当該防汚性組成物は、更に(E)成分として酸触媒を含むことが好ましく、本発明の効果を損なわない範囲において、(A)〜(E)成分以外のその他の添加剤を含有してもよい。
以下、工程(1)で用いられる防汚性組成物に含まれる各成分について説明する。
【0014】
((A)成分:一般式(a)で表される4官能シラン系化合物)
本発明で用いる防汚性組成物は、(A)成分として下記一般式(a)で表される4官能シラン系化合物を含む。
Si(OR
1)
p(X
1)
4−p (a)
一般式(a)中、R
1は、炭素数1〜6のアルキル基を表し、X
1は、ハロゲン原子を表す。R
1及びX
1が複数存在する場合、複数のR
1及びX
1は、互いに同一でも、異なっていてもよい。pは0〜4の整数を表す。
【0015】
R
1として選択し得るアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、ネオペンチル基、メチルペンチル基等が挙げられる。これらの中でも、より良好な硬化性を得る観点から、メチル基、エチル基、又はn−プロピル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。
R
1として選択し得るアルキル基は、直鎖及び分岐鎖のいずれであってもよいが、直鎖であることが好ましい。
【0016】
X
1として選択し得るハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
なお、上記の一般式(a)で表されるシラン系化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、(A)成分としては、前記一般式(a)中のpが4であるシラン系化合物を含むことが好ましい。
【0017】
防汚性組成物中の(A)成分の含有量は、防汚性組成物から形成される防汚層の硬化性を向上させる観点、良好な面状態を得る観点、及び、高い表面硬度を得る観点から、(A)成分、及び(B)成分の合計100モル%に対して、好ましくは0.80モル%以上、より好ましくは10.00モル%以上、更に好ましくは30.00モル%以上、より更に好ましくは45.00モル%以上、より更に好ましくは55.00モル%以上、より更に好ましくは65.00モル%以上、より更に好ましくは75.00モル%以上である。そして、好ましくは98.00モル%以下、より好ましくは96.00モル%以下、更に好ましくは94.00モル%以下、より更に好ましくは90.00モル%以下である。なお、当該含有量は、各成分を配合する時の配合量から算出することもできる。
【0018】
((B)成分:一般式(b)で表される3官能シラン系化合物)
本発明で用いる防汚性組成物は、前記(A)成分と共に、(B)成分として下記一般式(b)で表される3官能シラン系化合物を含む。
R
2Si(OR
3)
q(X
2)
3−q (b)
一般式(b)中、R
2は、炭素数1〜24のアルキル基を表し、当該アルキル基は置換基を有していてもよい。R
3は、炭素数1〜6のアルキル基を表し、X
2は、ハロゲン原子を表す。R
3及びX
2が複数存在する場合、複数のR
3及びX
2は、互いに同一でも、異なっていてもよい。qは0〜3の整数を表す。
【0019】
R
2として選択し得るアルキル基の炭素数は1〜24である。
当該アルキル基の炭素数が24を超えると、防汚性組成物から形成される防汚層の硬化性が劣る。また、当該アルキル基の炭素数が増加するほど、防汚性組成物がゲル化し易く、当該防汚性組成物から形成される防汚層の面状態も悪化する傾向にある。このような観点から、当該アルキル基の炭素数は、好ましくは22以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは18以下である。
なお、上記R
2として選択し得るアルキル基の炭素数には、当該アルキル基が有してもよい任意の置換基の炭素数は含まれない。
【0020】
R
2として選択し得るアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基、n−ヘンイコシル基、n−ドコシル基、n−トリコシル基、n−テトラコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、メチルペンチル基、イソへキシル基、ペンチルヘキシル基、ブチルペンチル基、及び2−エチルヘキシル基等が挙げられる。
なお、R
2として選択し得るアルキル基としては、直鎖又は分岐鎖のいずれであってもよいが、防汚性組成物から形成される防汚層の硬化性及び面状態を向上させる観点から、直鎖であることが好ましい。
【0021】
R
2として選択し得るアルキル基は、置換基を有していてもよい。
このような置換基としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;ヒドロキシル基;ニトロ基;アミノ基;シアノ基;チオール基;エポキシ基;グリシドキシ基;(メタ)アクリロイルオキシ基;環形成炭素数3〜12(好ましくは環形成炭素数6〜10)のシクロアルキル基;環形成炭素数6〜12のアリール基;窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子から選ばれるヘテロ原子を含む環形成原子数6〜12のヘテロアリール基;炭素数1〜6(好ましくは炭素数1〜3)のアルコキシ基;環形成炭素数6〜12のアリールオキシ基等が挙げられ、これらの置換基は更に置換されていてもよい。
ただし、R
2として選択し得るアルキル基としては、置換基を有していないアルキル基であることが好ましい。
【0022】
R
3として選択し得るアルキル基、及びX
2として選択し得るハロゲン原子としては、上述の一般式(a)中のR
1として選択し得るアルキル基、X
1として選択し得るハロゲン原子と同じものが挙げられる。
なお、上記の一般式(b)で表される3官能シラン系化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、(B)成分としては、前記一般式(b)中のqが3である3官能シラン系化合物を含むことが好ましい。
【0023】
本発明で用いる防汚性組成物中の(B)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計100モル%に対して、好ましくは2.50モル%以上、より好ましくは5.00モル%以上、更に好ましくは10.00モル%以上である。また、防汚性組成物から形成される防汚層の面状態を良好とする観点、硬化性を向上させる観点、及び、高い表面硬度を得る観点から、好ましくは99.00モル%以下、より好ましくは80.00モル%以下、更に好ましくは50.00モル%以下、より更に好ましくは30.00モル%以下、より更に好ましくは25.00モル%以下である。なお、当該含有量は、各成分を配合する時の配合量から算出することもできる。
【0024】
(条件(I)について)
本発明で用いる防汚性組成物は、前記(A)成分及び(B)成分の関係において、下記条件(I)を満たす防汚性組成物であることが好ましい。
条件(I):(B)成分のモル量に対する(A)成分のモル量の比〔(A)/(B)〕(モル比)が、0.01以上
当該〔(A)/(B)〕(モル比)が、0.01以上であると、防汚性組成物から形成される防汚層の硬化性、表面硬度が優れる。このような観点から、当該〔(A)/(B)〕(モル比)は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.20以上、更に好ましくは2.00以上、より更に好ましくは3.00以上である。
また、当該〔(A)/(B)〕(モル比)は、50.00以下であることが好ましい。当該〔(A)/(B)〕(モル比)が50.00以下であることで、(B)成分中のR
2で表されるアルキル基の存在割合が極端に減少することなく、防汚性組成物から形成される防汚層が、より良好な撥水性を有する。このような観点から、当該〔(A)/(B)〕(モル比)は、より好ましくは50.00以下、更に好ましくは25.00以下、より更に好ましくは12.50以下、より更に好ましくは10.00以下である。
【0025】
〔(B−1)成分:一般式(b)で表される3官能シラン系化合物〕
本発明で用いる防汚性組成物は、前記(B)成分として、下記一般式(b−1)で表される3官能シラン系化合物である(B−1)成分を少なくとも1種含むことが好ましい。
R
4Si(OR
5)
r(X
3)
3−r (b−1)
一般式(b−1)中、R
4は、炭素数15〜24のアルキル基を表し、当該アルキル基は置換基を有していてもよい。R
5は、炭素数1〜6のアルキル基を表し、X
3は、ハロゲン原子を表す。R
5及びX
3が複数存在する場合、複数のR
5及びX
3は、互いに同一でも、異なっていてもよい。rは0〜3の整数を表す。
【0026】
当該R
4が表すアルキル基の炭素数が15以上であると、水接触角が高く、水滑落角が低い防汚層が得られるため好ましい。このような観点から、当該R
4としては、好ましくは16以上である。また、R
4が表すアルキル基の炭素数の好ましい上限値は、上述したR
2の上限値の好ましい値と同じであり、好ましくは22以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは18以下である。当該各好ましい上限値の設定理由もR
2について上述したとおりである。
なお、上記R
4として選択し得るアルキル基の炭素数には、当該アルキル基が有してもよい任意の置換基の炭素数は含まれない。
一方で、上述したように、R
4が表すアルキル基の炭素数が増加すると、防汚性組成物から形成される防汚層の硬化性が劣り、防汚性組成物がよりゲル化し易く、形成される防汚層の面状態も悪化する傾向にあることを本発明者らは見出している。
しかしながら、本発明の製造方法を用いることで、防汚性組成物がゲル化を抑制することができ、形成される防汚層の面状態も良好とすることができる。そのため、(B)成分として、(B−1)成分を少なくとも1種含む防汚性組成物を用いることが可能となり、硬化性及び面状態に優れ、更に、撥水性も良好な防汚層を得ることができる。
【0027】
R
4として選択し得るアルキル基としては、例えば、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基、n−ヘンイコシル基、n−ドコシル基、n−トリコシル基、及びn−テトラコシル基等が挙げられる。
なお、R
4として選択し得るアルキル基としては、直鎖又は分岐鎖のいずれであってもよいが、防汚性組成物から形成される防汚層の硬化性及び面状態を向上させる観点から、直鎖であることが好ましい。R
4として選択し得るアルキル基としては、防汚層の硬化性及び面状態の観点から、n−ペンタデシル基、又はn−ヘキサデシル基が好ましく、また、より良好な撥水性を得る観点からは、n−ヘキサデシル基、n−ペンタデシル基、又はn−オクタデシル基が好ましい。
R
4として選択し得るアルキル基は、置換基を有していてもよい。なお、R
4として選択し得るアルキル基が有する置換基は、R
2として選択し得るアルキル基が有する置換基について上述したとおりである。ただし、R
4として選択し得るアルキル基としては、置換基を有していないアルキル基であることが好ましい。
【0028】
R
5として選択し得るアルキル基、及びX
3として選択し得るハロゲン原子としては、上述の一般式(a)中のR
1として選択し得るアルキル基、X
1として選択し得るハロゲン原子と同じものが挙げられる。
なお、上記の一般式(b−1)で表される3官能シラン系化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、(B−1)成分としては、前記一般式(b−1)中のrが3である3官能シラン系化合物を含むことが好ましい。
【0029】
〔(B−2)成分:一般式(b−2)で表される3官能シラン系化合物〕
本発明で用いる防汚性組成物は、前記(B)成分として、下記一般式(b−2)で表される3官能シラン系化合物である(B−2)成分を少なくとも1種含むことが好ましい。
R
6Si(OR
7)
s(X
4)
3−s (b−2)
一般式(b−2)中、R
6は、炭素数1〜3のアルキル基を表し、当該アルキル基は置換基を有していてもよい。R
7は、炭素数1〜6のアルキル基を表し、X
4は、ハロゲン原子を表す。R
7及びX
4が複数存在する場合、複数のR
7及びX
4は、互いに同一でも、異なっていてもよい。sは0〜3の整数を表す。
【0030】
R
6として選択し得るアルキル基の炭素数は1〜3である。
当該アルキル基の炭素数がこの範囲であると、防汚性組成物から形成される防汚層の硬化性が優れ、表面硬度も向上する。なお、上記R
6として選択し得るアルキル基の炭素数には、当該アルキル基が有してもよい任意の置換基の炭素数は含まれない。
R
6として選択し得るアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、又はイソプロピル基が挙げられ、より良好な水滑落性を得る観点から、メチル基、又はエチル基が好ましく、また、より高い表面硬度及び低い摩擦係数を得る観点から、メチル基がより好ましい。
R
6として選択し得るアルキル基は、置換基を有していてもよい。なお、R
6として選択し得るアルキル基が有する置換基は、R
2として選択し得るアルキル基が有する置換基について上述したとおりである。ただし、R
6として選択し得るアルキル基としては、置換基を有していないアルキル基であることが好ましい。
【0031】
R
7として選択し得るアルキル基、及びX
4として選択し得るハロゲン原子としては、上述の一般式(a)中のR
1として選択し得るアルキル基、X
1として選択し得るハロゲン原子と同じものが挙げられる。
なお、上記の一般式(b−2)で表される3官能シラン系化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、(B−2)成分としては、前記一般式(b−2)中のsが3である3官能シラン系化合物を含むことが好ましい。
【0032】
本発明で用いる防汚性組成物は、(B)成分として、(B−1)成分及び(B−2)成分を共に含むことがより好ましい。(B)成分として、(B−1)成分及び(B−2)成分を併用することで、いずれかを単独で用いる場合と比べて、面状態及び硬化性が良好であり、撥水性及び水滑落性が良好であり、かつ高い表面硬度及び低い摩擦係数を有するという各特性のバランスが取れた防汚層を形成することが可能である。
【0033】
(B)成分として、(B−1)成分及び(B−2)成分を用いる場合、防汚性組成物中の(B−1)成分の含有量は、防汚性組成物から形成される防汚層の硬化性を向上させる観点、良好な面状態を得る観点、及び、高い表面硬度を得る観点から、(A)成分、(B−1)成分及び(B−2)成分の合計100モル%に対して、好ましくは0.30モル%以上、より好ましくは0.50モル%以上、更に好ましくは1.00モル%以上、より更に好ましくは2.00モル%以上、より更に好ましくは4.00モル%以上であり、そして、好ましくは36.00モル%以下、より好ましくは26.00モル%以下、更に好ましくは24.00モル%以下、より更に好ましくは19.00モル%以下である。なお、当該含有量は、各成分を配合する時の配合量から算出することもできる。
【0034】
(B)成分として、(B−1)成分及び(B−2)成分を用いる場合、前記(A)成分及び(B−1)成分の関係において、(B−1)成分のモル量に対する(A)成分のモル量の比〔(A)/(B−1)〕(モル比)が、1.40以上であることが好ましい。
当該〔(A)/(B−1)〕(モル比)が、1.40以上であると、防汚性組成物から形成される防汚層の硬化性、表面硬度が優れる。このような観点から、当該〔(A)/(B−1)〕(モル比)は、好ましくは1.50以上、より好ましくは1.90以上、更に好ましくは2.10以上、より更に好ましくは2.50以上、より更に好ましくは5.00以上、より更に好ましくは6.00以上である。
また、当該〔(A)/(B−1)〕(モル比)は、300.00以下であることが好ましい。当該〔(A)/(B−1)〕(モル比)が300.00以下であることで、(B−1)成分中のR
4で表されるアルキル基の存在によって、防汚性組成物から形成される防汚層が、より良好な撥水性を有する。このような観点から、当該〔(A)/(B−1)〕(モル比)は、より好ましくは200.00以下、更に好ましくは150.00以下、より更に好ましくは100.00以下、より更に好ましくは90.00以下、より更に好ましくは50.00以下、より更に好ましくは20.00以下である。
【0035】
(B)成分として、(B−1)成分及び(B−2)成分を用いる場合、防汚性組成物中の(B−2)成分の含有量は、防汚性組成物から形成される防汚層の硬化性を向上させる観点、良好な面状態を得る観点、及び、高い表面硬度を得る観点から、(A)成分、(B−1)成分及び(B−2)成分の合計100モル%に対して、好ましくは0.50モル%以上、より好ましくは1.00モル%以上、更に好ましくは1.30モル%以上、より更に好ましくは2.00モル%以上であり、そして、好ましくは40.00モル%以下、より好ましくは38.00モル%以下、更に好ましくは35.00モル%以下、より更に好ましくは20.00モル%以下である。なお、当該含有量は、各成分を配合する時の配合量から算出することもできる。
【0036】
(B)成分として、(B−1)成分及び(B−2)成分を用いる場合、前記(A)成分及び(B−2)成分の関係において、(B−2)成分のモル量に対する(A)成分のモル量の比〔(A)/(B−2)〕(モル比)は、特に制限はなく、好ましくは1.00以上、より好ましくは4.00以上である。また、当該〔(A)/(B−2)〕(モル比)は、好ましくは70.00以下、より好ましくは40.00以下、更に好ましくは35.00以下である。
【0037】
(条件(II)について)
本発明で用いる防汚性組成物は、前記(B−1)成分及び(B−2)成分との関係において、下記条件(II)を満たす防汚性組成物であることが好ましい。
条件(II):(B−1)成分及び(B−2)成分の合計モル量に対する(B−1)成分のモル量の比〔(B−1)/{(B−1)+(B−2)}〕(モル比)が、0.020以上
当該〔(B−1)/{(B−1)+(B−2)}〕(モル比)が、0.020以上であると、防汚性組成物から形成される防汚層の静摩擦係数及び動摩擦係数が低くなり、摩擦特性に優れる。また、(B−1)成分中のR
4で表されるアルキル基が適度に存在することで、防汚性組成物から形成される防汚層の水接触角が向上して、撥水性に優れる。このような観点から、当該〔(B−1)/{(B−1)+(B−2)}〕(モル比)は、好ましくは0.025以上、より好ましくは0.035以上、更に好ましくは0.080以上、より更に好ましくは0.180以上、より更に好ましくは0.220以上である。
当該〔(B−1)/{(B−1)+(B−2)}〕(モル比)の上限は、特に制限はなく、当該〔(B−1)/{(B−1)+(B−2)}〕(モル比)は、好ましくは0.995以下、より好ましくは0.990以下、更に好ましくは0.980以下、より更に好ましくは0.950以下である。
【0038】
なお、本発明で用いる防汚性組成物は、3官能シラン系化合物として(B−1)成分と(B−2)成分とを上記条件(I)及び条件(II)を満たすように含むことで、防汚性組成物から形成される防汚層のより高い表面硬度と低い摩擦係数とを両立することができる。また、(B−2)成分を含むことで、防汚性組成物から形成される防汚層の耐候性向上も期待できる。
【0039】
また、本発明で用いる防汚性組成物は、(A)成分、(B−1)成分及び(B−2)成分の関係において、(B−1)成分及び(B−2)成分の合計モル量に対する(A)成分のモル量の比〔(A)/{(B−1)+(B−2)}〕(モル比)が、好ましくは0.50以上、より好ましくは0.90以上である。また、当該〔(A)/{(B−1)+(B−2)}〕(モル比)は、好ましくは25.00以下、より好ましくは20.00以下である。
【0040】
((C)成分:金属触媒)
本発明で用いる防汚性組成物は、(A)及び(B)成分と共に、更に(C)成分として金属触媒を含む。当該金属触媒を含まない場合、(A)成分、(B)成分の縮合反応を効果的に促進させることができず、防汚性組成物から形成される防汚層の硬化性を十分に向上させることができない。
また、(C)成分を含まない防汚性組成物の場合、比較的低温下(130℃以下)の場合には、十分に硬化反応を進行させることができない。そのため、例えば、塩化ビニル樹脂等の耐熱性が低い支持体上に、当該防汚性組成物から形成される防汚層を形成したい場合、支持体の熱収縮を抑え得るほどの低温下において防汚層を形成しようとすると、防汚層の硬化性が不十分となる虞がある。逆に、硬化反応を十分に進行させるため、比較的高温下(130℃越え)で硬化させようとした場合、支持体が熱収縮を生じてしまう虞がある。
【0041】
当該金属触媒としては、触媒作用発現のために光照射を必要としない金属触媒であることが好ましい。
なお、本明細書において、当該「触媒作用発現のために光照射を必要としない金属触媒」とは、前記(A)成分及び(B)成分の縮合反応に対する触媒作用を発現するために光照射を必要としない金属触媒のことを指す。例えば、酸化チタン(TiO
2)や酸化亜鉛(ZnO)等の、光照射により電子と正孔を生成することで酸化反応及び還元反応を引き起こすといった、触媒作用発現のために光照射が必要とされる、一般に光触媒と呼ばれるものは除かれる。
なお、防汚層が上記「触媒作用発現のために光照射を必要としない金属触媒」を含有する場合には、光触媒を用いた場合に生じる虞がある不具合を回避できる。当該、光触媒を用いた場合に生じる虞がある不具合とは、例えば、光触媒自体が固形物であることに起因して防汚層の表面粗さが大きくなることによる撥水性の低下や、光触媒の親水性付与効果による撥水性の低下、並びにシラン化合物の重合体の加水分解を促進することによる防汚層の耐久性の低下といった問題が挙げられる。
【0042】
当該金属触媒としては、チタン系触媒、ジルコニウム系触媒、パラジウム系触媒、錫系触媒、アルミニウム系触媒、及び亜鉛系触媒からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0043】
上記チタン系触媒としては、チタン原子を含有する光触媒以外の化合物であることが好ましく、例えば、チタンアルコキシド、チタンキレート、チタンアシレート等が挙げられ、チタンの水酸化物、酢酸塩、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、又は塩化物等であってもよい。
チタンアルコキシドとしては、例えば、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラノルマルブトキシド、チタンブトキシドダイマー、チタンテトラ−2−エチルヘキソキシド等が挙げられる。
チタンキレートとしては、例えば、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタンテトラアセチルアセトネート等のチタンアセチルアセトネート;チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)等のチタンエチルアセトアセテート;チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)等のチタントリエタノールアミネート;チタンテトラオクチレングリコネート、チタンジオクチロキシビス(オクチレングリコネート)、チタンジ−2−エチルヘキソキシビス(2−エチル−3−ヒドロキシヘキソキシド)等のチタンオクチレングリコネート;チタンラクテート、チタンラクテートアンモニウム塩等が挙げられる。
チタンアシレートとしては、例えば、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0044】
上記ジルコニウム系触媒としては、ジルコニウム原子を含有する光触媒以外の化合物であることが好ましく、例えば、ジルコニウムアルコキシド、ジルコニウムキレート、ジルコニウムアシレート等が挙げられ、ジルコニウムの水酸化物、酢酸塩、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、又は塩化物等であってもよい。
ジルコニウムアルコキシドとしては、例えば、ジルコニウムテトラノルマルプロポキシド、ジルコニウムテトラノルマルブトキシド等が挙げられる。
ジルコニウムキレートとしては、例えば、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート等のジルコニウムアセチルアセトネート;ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)等のジルコニウムエチルアセトアセテート;塩化ジルコニル化合物、ジルコニウムラクテートアンモニウム塩等が挙げられる。
ジルコニウムアシレートとしては、例えば、オクチル酸ジルコニウム化合物、ステアリン酸ジルコニウム等が挙げられる。
【0045】
上記パラジウム系触媒としては、パラジウム原子を含有する光触媒以外の化合物であることが好ましく、例えば、パラジウム、塩化パラジウム、水酸化パラジウム、パラジウム炭素触媒(Pd/C)等が挙げられる。
【0046】
上記錫系触媒としては、錫原子を含有する光触媒以外の化合物であることが好ましく、例えば、スタナスオクトエート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫メルカプタイド、ジブチル錫ジチオカルボキシレート、ジブチル錫ジマレエート、ジオクチル錫メルカプタイド、ジオクチル錫チオカルボキシレート等の有機錫化合物、又は無機錫化合物が挙げられる。
【0047】
上記アルミニウム系触媒としては、アルミニウム原子を含有する光触媒以外の化合物であることが好ましく、例えば、アルミニウムのアセトアセテート錯体、又はアルミニウムのアセチルアセトネート錯体等が挙げられる。
アルミニウムのアセトアセテート錯体としては、例えば、ジイソプロポキシアルミニウムモノオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムビスオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムモノオレエートモノエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノラウリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノステアリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノイソステアリルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムモノ−N−ラウロイル−β−アラネートモノラウリルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等が挙げられる。
アルミニウムのアセチルアセトネート錯体としては、例えば、モノアセチルアセトネートアルミニウムビス(イソブチルアセトアセテート)キレート、モノアセチルアセトネートアルミニウムビス(2−エチルヘキシルアセトアセテート)キレート、モノアセチルアセトネートアルミニウムビス(ドデシルアセトアセテート)キレート、モノアセチルアセトネートアルミニウムビス(オレイルアセトアセテート)キレート等が挙げられる。
【0048】
上記亜鉛系触媒としては、亜鉛原子を含有する光触媒以外の化合物であることが好ましく、例えば、亜鉛−クロム酸化物、亜鉛−アルミニウム酸化物、亜鉛−アルミニウム−クロム酸化物、亜鉛−クロム−マンガン酸化物、亜鉛−鉄酸化物、亜鉛−鉄−アルミニウム酸化物等が挙げられる。
【0049】
なお、上記金属触媒としては、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、シラン系化合物同士の縮合反応を効果的に促進させ、防汚性組成物から形成される防汚層の硬化性を向上させる観点、及び、比較的低温下(130℃以下)でも硬化反応を進行させ得る防汚性組成物とする観点から、少なくとも上記チタン系触媒を含有していることが好ましい。
当該チタン系触媒としては、チタンキレートが好ましく、チタンエチルアセトアセテート、チタンアセチルアセトネート又はチタンオクチレングリコネートがより好ましく、チタンエチルアセトアセテートが更に好ましく、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)がより更に好ましい。
【0050】
防汚性組成物中の(C)成分の含有量は、防汚性組成物から形成される防汚層の硬化性を向上させる観点、及び、比較的低温下(130℃以下)でも硬化反応を進行させ得る防汚性組成物とする観点から、(A)成分及び(B)成分の合計100モル%に対して、好ましくは0.010モル%以上、より好ましくは0.100モル%以上、更に好ましくは0.150モル%以上、より更に好ましくは0.300モル%以上、より更に好ましくは0.500モル%以上、より更に好ましくは1.000モル%以上である。そして、当該含有量は、好ましくは50.000モル%以下、より好ましくは30.000モル%以下、更に好ましくは20.000モル%以下、より更に好ましくは10.000モル%以下、より更に好ましく6.000モル%以下、より更に好ましくは3.000モル%以下である。
なお、当該含有量は、各成分を配合する時の配合量から算出することもできる。
【0051】
((D)成分:有機溶媒)
本発明で用いる防汚性組成物は、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分と共に、更に(D)成分として有機溶媒を含む。
当該有機溶媒の沸点としては、後述する工程(3)における加熱温度を、防汚層の面状態がより良好となる温度に調整しやすい観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは100℃以上、より更に好ましくは110℃以上である。そして、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下、更に好ましくは140℃以下、より更に好ましくは130℃以下である。
当該有機溶媒を2種以上併用する場合は、沸点が高い方の有機溶媒が少なくとも前述の沸点となるように選択することが好ましい。
当該有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、トルエン等が挙げられる。当該有機溶媒としては、好ましくは、酢酸ブチル、ブタノール、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、トルエン、及びミネラルスピリットからなる群より選ばれる1種以上、より好ましくは酢酸ブチル、ブタノール、シクロヘキサノン、及びメチルイソブチルケトンからなる群より選ばれる1種以上であり、更に好ましくは酢酸ブチル、及びブタノールからなる群より選ばれる1種以上である。
【0052】
前記(A)成分及び(B)成分を有効成分とした場合、当該(D)成分である有機溶媒並びに前記(A)成分及び(B)成分からなる溶液中の当該有効成分濃度は、塗布し易く支持体上に適切な塗膜厚の防汚層を形成する観点から、好ましくは0.01M(モル/L)以上、より好ましくは0.10モル/L以上、更に好ましくは0.50モル/L以上である。そして、同様の観点から、好ましくは5.00M(モル/L)以下、より好ましくは3.00モル/L以下、更に好ましくは2.00モル/L以下である。
【0053】
((E)成分:酸触媒)
本発明で用いる防汚性組成物は、防汚性組成物から形成される防汚層の硬化性をより向上させる観点から、更に(E)成分として酸触媒を含むことが好ましい。
防汚性組成物中に酸触媒を含有することで、(A)成分及び(B)成分が有する反応性官能基の加水分解が促進される。その結果、シラン系化合物同士の縮重合反応がより促進され、硬化性に優れた防汚層を形成することができる。
上記酸触媒としては、(A)成分及び(B)成分の反応性官能基の加水分解を促進させる作用を有する成分であれば特に制限はない。例えば、防汚性組成物から形成される防汚層の硬化性をより向上させる観点から、塩酸、リン酸、酢酸、ギ酸、硫酸、メタンスルホン酸、
シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、及びトリフルオロ酢酸からなる群より選ばれる1種以上を含むことが好ましく、塩酸を含むことがより好ましい。
なお、上記酸触媒としては、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
防汚性組成物中の(E)成分の含有量は、防汚性組成物から形成される防汚層の硬化性をより向上させる観点から、(A)成分及び(B)成分の合計100モル%に対して、好ましくは0.010モル%以上、より好ましくは0.030モル%以上、更に好ましくは0.050モル%以上、より更に好ましくは0.060モル%以上である。そして、当該含有量は、好ましくは1.000モル%以下、より好ましくは0.500モル%以下、更に好ましくは0.100モル%以下、より更に好ましくは0.075モル%以下である。なお、当該含有量は、各成分を配合する時の配合量から算出することもできる。
【0055】
(その他の添加剤)
本発明で用いる防汚性組成物には、上述の(A)〜(E)成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の添加剤を含有していてもよい。
その他の添加剤としては、例えば、樹脂成分、硬化剤、老化防止剤、光安定剤、難燃剤、導電剤、帯電防止剤、可塑剤等が挙げられる。
これらの添加剤のそれぞれの含有量は、防汚性組成物の全量に対して、好ましくは0〜20質量%、より好ましくは0〜10質量%、更に好ましくは0〜5質量%、より更に好ましくは0〜2質量%である。
【0056】
なお、前記(D)成分を除く、本発明で用いる防汚性組成物中の(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び必要に応じて含まれる(E)成分の合計含有量は、前記(D)成分量を除く当該防汚性組成物の全量(固形分100質量%)に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは95質量%以上、より更に好ましくは99質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下である。また、当該合計含有量は、より好ましくは100質量%である。なお、防汚性組成物中に(E)成分を含まない場合は、これら含有量の好適範囲は(A)〜(C)成分の合計含有量の好適範囲を表す。なお、当該合計含有量は、各成分を配合する時の配合量から算出することもできる。
【0057】
<<工程(2)>>
本発明で用いる工程(2)は、上記工程(1)で調製した防汚性組成物を支持体上に塗布して塗膜を形成する工程である。
上記工程(1)で調製した防汚性組成物は、前記有機溶媒によって溶液の形態となっており、支持体上には、公知の塗布方法で塗布することができる。
当該塗布方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が挙げられる。
【0058】
<支持体>
工程(2)で用いる支持体は、当該支持体上に上記防汚性組成物からなる塗膜を形成することが可能であって、後述する工程(3)にて不具合を生じないものであれば、特に制限されない。支持体としては、後述する基材又は剥離材を用いることが好ましい。
なお、当該支持体は、得られる防汚性シートの構成にそのまま含まれる支持体であってもよく、後述する工程(3)以降の工程で除去される支持体であってもよい。
【0059】
(基材)
前記支持体として用いることができる基材としては、例えば、紙基材、樹脂フィルム、樹脂シート、紙基材を樹脂でラミネートした基材等が挙げられ、防汚性シートの用途に応じて適宜選択することができる。
紙基材を構成する紙としては、例えば、薄葉紙、中質紙、上質紙、含浸紙、コート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙等が挙げられる。
樹脂フィルム又は樹脂シートを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体等、エチレン−メタクリル酸共重合体のビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体;三酢酸セルロース;ポリカーボネート;ポリウレタン、アクリル変性ポリウレタン等のウレタン系樹脂等が挙げられる。
【0060】
紙基材を樹脂でラミネートした基材としては、上記の紙基材を、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂でラミネートしたラミネート紙等が挙げられる。
これらの基材の中でも、樹脂フィルム又は樹脂シートが好ましく、ポリエステル系樹脂からなる樹脂フィルム又は樹脂シートがより好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる樹脂フィルム又は樹脂シートが更に好ましい。
【0061】
前記支持体として用いることができる基材として、防汚層又は後述する耐候層との密着性を向上させる観点から、上述の基材の表面上にプライマー層を設けたプライマー層付き基材を用いてもよい。
プライマー層を構成する成分としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられ、これらの樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
また、前記支持体として用いることができる基材として、上述の基材の表面上又はプライマー層付き基材の表面上に、更に高分子紫外線吸収剤からなる耐候層を設けた耐候層付き基材(耐候層と基材との間にプライマー層を有していてもよい)を用いてもよい。当該高分子紫外線吸収剤としては、紫外線吸収骨格がポリマー構造内に共有結合している構造を有するものであり、重量平均分子量が5,000以上のものが好ましく、より好ましくは10,000以上である。
また、前記支持体として用いることができる基材として、上述の基材の表面上又はプライマー層付き基材の表面上に、更にハードコート層を設けたハードコート層付き基材(ハードコート層と基材との間にプライマー層を有していてもよい)を用いてもよい。当該ハードコート層を形成する材料としては、特に制限はなく、公知のハードコート層形成材料の中から、防汚性シートの用途に応じて適宜選択することができる。
【0063】
また、前記支持体として用いることができる基材が樹脂フィルム又は樹脂シートである場合、防汚層との密着性を向上させる観点から、必要に応じて、これら樹脂フィルム又は樹脂シートの表面に対して、酸化法や凹凸化法等の表面処理を施してもよい。
酸化法としては、特に限定されず、例えば、コロナ放電処理法、プラズマ処理法、クロム酸酸化(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等が挙げられる。
また、凹凸化法としては、特に限定されず、例えば、サンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。
これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選定されるが、防汚層との密着性向上の観点、及び操作性の観点から、コロナ放電処理法が好ましい。
【0064】
基材の厚さは、防汚性シートの用途に応じて適宜設定されるが、取扱性及び経済性の観点から、好ましくは10〜250μm、より好ましくは15〜200μm、更に好ましくは20〜150μmである。
なお、前記支持体として用いることができる基材には、更に、上述の高分子紫外線吸収剤以外の紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、着色剤等が含有されていてもよい。
【0065】
(剥離材)
前記支持体として用いることができる剥離材としては、両面剥離処理をされた剥離シートや、片面剥離処理をされた剥離シート等が用いられ、剥離材用の基材上に剥離剤を塗布したもの等が挙げられる。
剥離材用の基材としては、例えば、本発明の防汚性シートの一態様が有する基材として使用し得る、紙基材、樹脂フィルム、樹脂シート、紙基材を樹脂でラミネートした基材等が挙げられる。
剥離剤としては、例えば、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
剥離材の厚さは、特に制限はなく、好ましくは10〜200μm、より好ましくは25〜150μmである。
【0066】
なお、前記防汚層が2枚の剥離材で挟持された構成を有する場合、当該2枚の剥離材は、互いに同一でも異なっていてもよい。
また、当該剥離材は、得られる防汚性シートの構成にそのまま含まれていてもよく、後述する工程(3)以降の工程で除去される剥離材として用いてもよい。工程(3)以降の工程で剥離材が除去される場合としては、例えば、次の例が挙げられる。まず、工程(2)で剥離材上に防汚性組成物を塗布し、更に、後述する工程(3)にて防汚層を形成する。そして、当該防汚層を上述した基材又は後述する粘着剤層等と貼り合わせた後、当該剥離材を除去するといった場合が挙げられる。
【0067】
<<工程(3)>>
本発明で用いる工程(3)とは、上記工程(2)で形成した支持体上の塗膜を、前記有機溶媒の沸点以下の温度で加熱して、防汚層を形成する工程である。
上述のとおり、本発明者らは、支持体上の塗膜を、前記有機溶媒の沸点以下の温度で加熱することによって、塗膜表面から塗膜中の有機溶媒が揮発及び/又は蒸発して塗膜が乾燥してしまうより前に、塗膜の硬化反応を開始、促進できることに着目した。
当該工程(3)を導入しない場合、当該工程(3)を導入した場合と比べて、塗膜のゲル化が進行しやすくなる。その結果、防汚層の面状態が悪化しやすくなり、防汚層の硬化性が低下して、表面硬度が低下する虞がある。また、より塗膜がゲル化し易い防汚性組成物を用いた場合には、塗膜がゲル化して、防汚層の硬化性が低下し、防汚層の面状態が悪化する。更には防汚層を形成できなくなる場合がある。
【0068】
工程(3)における加熱温度については、前期有機溶媒の種類により適宜設定することができるが、上述のとおり、前記有機溶媒の沸点以下の温度で加熱して、塗膜表面から塗膜中の有機溶媒が揮発及び/又は蒸発し、塗膜が乾燥してしまうより前に、塗膜の硬化反応を開始、促進できる温度である。
そのため、上記観点から、当該温度としては、好ましくは前記有機溶媒の沸点−10℃以下、より好ましくは前記有機溶媒の沸点−20℃以下、更に好ましくは前記有機溶媒の沸点−30℃以下である。
また、本発明で用いる防汚性組成物は、130℃以下と比較的低温下でも硬化反応を進行させることができ、塩化ビニル等の耐熱性の低い支持体を用いた場合に、当該支持体の熱収縮を抑制することができる。
そのため、上記観点、及び生産性の観点から、当該温度としては、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、更に好ましくは40℃以上、より更に好ましくは50℃以上、より更に好ましくは60℃以上である。そして、好ましくは130℃以下、より好ましくは120℃以下、更に好ましくは110℃以下、より更に好ましくは95℃以下である。
【0069】
工程(3)における加熱時間については、本発明の効果が奏される限り、特に制限はなく、適宜設定することができる。
なお、工程(2)で塗膜を形成してから工程(3)に至る時間は、工程(2)で形成した塗膜中の有機溶媒の揮発や蒸発等による損失を極力抑制する観点から、可能な限り短い時間が好ましい。好ましくは60秒以下、より好ましくは30秒以下、更に好ましくは20秒以下、より更に好ましくは10秒以下である。
【0070】
工程(3)で硬化反応が促進された塗膜は、最終的に、当該塗膜がゲル化せずに固化して防汚層となる。
当該工程としては、前記塗膜を乾燥機構に投入して防汚層を形成する工程であることが好ましい。
当該乾燥機構としては、例えば、エアーオーブンといったバッチ式の乾燥機構、並びにヒートロール、ホットエアースルー機構(開放式の乾燥炉内を被乾燥体が移動、通過しながら、加熱・乾燥される設備等)といった連続式の乾燥機構等が挙げられる。なお、これら乾燥機構の一部としても用いることができる装置、例えば、オイルヒーター等の熱媒循環式ヒーター、及び遠赤外線式ヒーター等のヒーター自体も乾燥機構として用いることができる。
【0071】
なお、上述した製造方法にて形成した防汚層上に、保存時の防汚層の表面の保護のために、更に新たな剥離材を積層してもよい。
更に、形成した防汚層又は基材上に、別の剥離材上に形成した粘着剤層を貼り合わせることで、
図1(b)の防汚性シート1bや
図2(b)の防汚性シート2bのような、粘着剤層付きの防汚性シートを製造することもできる。
また、工程(2)で用いた支持体が剥離材である場合に、防汚層を形成した後、当該防汚層を上述した基材又は新たな剥離材と貼り合わせ、その後、支持体として用いた剥離材を除去してもよい。
【0072】
[防汚性シート]
本発明の製造方法によって得られる防汚性シートは、上述の本発明の防汚性シートの製造方法によって得られるものであれば、特に制限はない。
<防汚性シートの構成例>
図1は、本実施態様の一例である製造方法によって得られる、基材を有する防汚性シートの一例を示す断面図である。
基材を有する防汚性シートとしては、例えば、
図1(a)に示すような、基材12上に、防汚層11を有する防汚性シート1aが挙げられる。
また、
図1(b)に示すような、基材12の防汚層11を有する面とは反対側の面上に、更に粘着剤層13及び剥離材14を設けた防汚性シート1bとしてもよい。
なお、この防汚性シート1a、1bの防汚層11上には、保存時の防汚層の保護のために、更に剥離材を設けてもよい。
【0073】
図2は、本実施態様の一例である製造方法によって得られる、基材を有しない防汚性シートの一例を示す断面図である。
基材を有しない防汚性シートとしては、例えば、
図2(a)に示すような、防汚層11が2枚の剥離材14、14’で挟持された構成を有する防汚性シート2aが挙げられる。
また、
図2(b)に示すような、
図2(a)に示す構成において、更に、防汚層11と剥離材14’との間に粘着剤層13を設けた防汚性シート2bとしてもよい。
【0074】
(防汚層)
本発明の製造方法によって得られる防汚性シートが有する防汚層は、上述の防汚性組成物から形成される。
当該防汚層の厚さとしては、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.005μm以上、更に好ましくは0.01μm以上、より更に好ましくは0.05μm以上、より更に好ましくは0.10μm以上である。また、当該厚さは、好ましくは40μm以下、より好ましくは25μm以下、更に好ましくは15μm以下、より更に好ましくは5.0μm以下、より更に好ましくは1.0μm以下、より更に好ましくは0.80μm以下である。
【0075】
(基材)
本発明の防汚性シートが基材を有する場合、当該基材としては、防汚性シートの用途に応じて適宜選択することができ、本発明の防汚性シートの製造方法で用い得る基材について上述したとおりである。
【0076】
(剥離材)
本発明の防汚性シートが剥離材を有する場合、当該剥離材としては、防汚性シートの用途に応じて適宜選択することができ、本発明の防汚性シートの製造方法で用い得る剥離材について上述したとおりである。
【0077】
(粘着剤層)
本発明の防汚性シートが粘着剤層を有する場合、当該粘着剤層を構成する粘着剤としては、防汚性シートの用途に応じて適宜選択することができる。
具体的な粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、紫外線等のエネルギー線により硬化する硬化型粘着剤等が挙げられる。
これらの粘着剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
粘着剤層の厚さは、特に制限はなく、好ましくは1〜100μm、より好ましくは5〜80μmである。
【実施例】
【0078】
実施例1
以下の工程(1)〜(3)の工程により、防汚性シートを製造した。
工程(1):
表1に示す種類及び配合比(有効成分比、モル%)で(A)成分及び(B)成分を配合し、(D)成分である酢酸ブチル(沸点:126℃)を加えて希釈し、有効成分濃度1.80Mの溶液を得た。当該溶液に表1に示す配合比(有効成分比、モル%)で、更に(E)成分である塩酸を配合して1分間攪拌した。攪拌後、当該溶液を15分間静置した。
次いで、表1に示す配合比(有効成分比、モル%)で(C)成分であるチタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)を配合して、防汚性組成物を調製した。
工程(2):
基材として、片面にプライマー層が設けられたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡株式会社製、製品名「コスモシャインA−4100」、厚さ50μm)を用いた。
当該プライマー層付き基材のプライマー層上に、マイヤーバーを用いて、上記のとおり調製した防汚性組成物を塗布して塗膜を形成した。
工程(3):
工程(2)で形成した支持体上の塗膜を、当該有機溶媒の沸点以下である80℃に設定したオーブン中に投入して、2分間で加熱して、表3に示す厚さの防汚層を有する防汚性シートを作製した。なお、工程(2)で台紙上に塗膜を形成してから、工程(3)のオーブン中に投入するまでの時間は、10秒以内であった。
【0079】
実施例2〜8、比較例1〜4
(A)成分、(B−1)成分、(B−2)成分及び(D)成分の種類と配合比を表1に示す内容に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法を用いて、各防汚性シートを製造した。
【0080】
各実施例及び各比較例での防汚性組成物の調製に際し使用した、表1に記載の各成分の詳細は以下のとおりである。
<(A)成分:一般式(a)で表される4官能シラン系化合物>
・「TEOS」:テトラエトキシシラン、前記一般式(a)中、p=4、R
1=エチル基(炭素数:2)である4官能シラン系化合物。
<(B)成分:一般式(b)で表される3官能シラン系化合物>
・「ヘキサデシルトリメトキシシラン」:前記一般式(b)中のq=3、R
2=n−ヘキサデシル基(炭素数:16)、R
3=メチル基(炭素数:1)である3官能シラン系化合物。
・「オクタデシルトリメトキシシラン」:前記一般式(b)中のq=3、R
2=n−オクタデシル基(炭素数:18)、R
3=メチル基(炭素数:1)である3官能シラン系化合物。
なお、これらの化合物は、それぞれ、R
2をR
4、R
3をR
5、並びにqをrとして読みかえた場合、前記一般式(b−1)で表される化合物、すなわち(B−1)成分として表される化合物である。
・「メチルトリメトキシシラン」:前記一般式(b)中のq=3、R
2=メチル基(炭素数:1)、R
3=メチル基(炭素数:1)である3官能シラン系化合物。
なお、当該化合物は、R
2をR
6、R
3をR
7、並びにqをsとして読みかえた場合、前記一般式(b−2)で表される化合物、すなわち(B−2)成分として表される化合物である。
<(C)成分:金属系触媒>
・「チタン系触媒」:チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)〔マツモトファインケミカル株式会社製、製品名「オルガチックス TC−750」〕。
<(D)成分:有機溶媒>
・「酢酸ブチル」:沸点126℃
・「ブタノール」:沸点117℃
・「シクロヘキサノン」:沸点155℃
・「メチルイソブチルケトン」沸点:117℃
・「トルエン」:沸点111℃
・「ミネラルスピリット」:沸点140〜180℃
・「メタノール」:沸点65℃
・「エタノール」:沸点78℃
<(E)成分:酸触媒>
・「塩酸」:0.01M塩酸。
【0081】
各実施例及び各比較例で調製した表1に示す防汚性組成物を用いて製造した防汚性シートの特性について、以下の方法に基づき評価した。その結果を表2に示す。
【0082】
<防汚層の厚さ>
防汚層の厚さは、J.A.Woollam社製の分光エリプソメーター(製品名「M−2000」)にて測定した。
【0083】
<防汚層の面状態>
各実施例及び各比較例で作製した防汚性シートの防汚層の表面を目視で観察し、以下の基準により、防汚層の面状態を評価した。
A:透明であった。
B:僅かに曇りが確認された。
C:曇りが生じて透明ではなくなった。
なお、防汚層の面状態の評価が「C」であったものについては、使用に耐え得るものではないため、下記に示す防汚層の硬化性評価以外の評価は行っていない。
【0084】
<防汚層の硬化性>
各実施例及び各比較例で作製した防汚性シートの防汚層の表面を、指で20回擦った後の防汚層を目視で観察し、以下の基準により、防汚層の硬化性を評価した。
・A:指で擦る前と比べて変化は見られなかった。
・B:少し白く変色したが、許容できる程度である。
・C:白く変色した。
・D:防汚性組成物からなる塗膜が硬化せずに、防汚層が形成できなかった。
なお、防汚層の硬化性の評価が「C」又は「D」であったものについては、使用に耐え得るものではないため、防汚層の厚さは測定していない。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
表1及び表2より、実施例1〜8の防汚層の面状態及び硬化性に劣る防汚性組成物であるが、撥水性向上に寄与する炭素数の大きいアルキル基を有する3官能シラン系化合物を含有する防汚性組成物を用い、上記製造方法によって製造した防汚性シートは、面状態及び硬化性が良好であった。
各実施例では、工程(3)における加熱温度が、(D)成分である有機溶媒の沸点以下である。(D)成分である有機溶媒の沸点以下の温度で加熱することによって、塗布膜表面からの有機溶媒の蒸発よりも、優先的に塗膜の硬化反応が促進されたものと考えられる。その結果、本発明の製造方法を用いた実施例では、比較例1〜4のように塗膜がゲル化することなく、面状態及び硬化性が良好な防汚層を有する防汚性シートを得ることができたと考えられる。
【0088】
一方、比較例1〜4の防汚性組成物から形成した防汚層は、工程(3)において、(D)成分である有機溶媒の沸点を超える温度で加熱したことから、面状態及び硬化性が劣る結果となった。そのため、これらの防汚層を有する防汚性シートは、使用に耐え得るものではないと判断し、防汚層の厚さについては測定していない。