特許第6263326号(P6263326)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ライトポイント・コーポレイションの特許一覧

特許6263326単一のベクトル信号発生器を使用して被試験デバイスを検証するためのシステム及び方法
<>
  • 特許6263326-単一のベクトル信号発生器を使用して被試験デバイスを検証するためのシステム及び方法 図000014
  • 特許6263326-単一のベクトル信号発生器を使用して被試験デバイスを検証するためのシステム及び方法 図000015
  • 特許6263326-単一のベクトル信号発生器を使用して被試験デバイスを検証するためのシステム及び方法 図000016
  • 特許6263326-単一のベクトル信号発生器を使用して被試験デバイスを検証するためのシステム及び方法 図000017
  • 特許6263326-単一のベクトル信号発生器を使用して被試験デバイスを検証するためのシステム及び方法 図000018
  • 特許6263326-単一のベクトル信号発生器を使用して被試験デバイスを検証するためのシステム及び方法 図000019
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263326
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】単一のベクトル信号発生器を使用して被試験デバイスを検証するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/0413 20170101AFI20180104BHJP
   H04B 17/29 20150101ALI20180104BHJP
   H04B 17/309 20150101ALI20180104BHJP
【FI】
   H04B7/0413
   H04B17/29
   H04B17/309 100
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-124066(P2012-124066)
(22)【出願日】2012年5月31日
(65)【公開番号】特開2013-5436(P2013-5436A)
(43)【公開日】2013年1月7日
【審査請求日】2015年2月16日
【審判番号】不服2016-13497(P2016-13497/J1)
【審判請求日】2016年9月8日
(31)【優先権主張番号】13/158870
(32)【優先日】2011年6月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507308186
【氏名又は名称】ライトポイント・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】LitePoint Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100096725
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 明▲ひこ▼
(72)【発明者】
【氏名】イエラパンチュラ、ラマクリシュナ
(72)【発明者】
【氏名】リ、インフイ
(72)【発明者】
【氏名】ウォルビス、ディルク・ジェイ・エム
【合議体】
【審判長】 大塚 良平
【審判官】 玉木 宏治
【審判官】 吉田 隆之
(56)【参考文献】
【文献】 カナダ国特許出願公開第2743316号明細書(CA,A1)
【文献】 特表2010−522490号公報(JP,A)
【文献】 特表2007−523549号公報(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/122658号(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0080972号明細書(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0039928号明細書(US,A1)
【文献】 ETSI TS 136 212、2011年4月、V10.1.0、<URL>http://www.etsi.org/deliver/etsi_ts/136200_136299/136212/10.1.00_60/ts_136212v100100p.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B1/69-1/719
H04J1/00-1/20,4/00-15/00
H04L5/00-5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一のベクトル信号発生器(VSG)から、被試験デバイス(DUT)へ、データパケットを、第1符号語(CW0)及び第2符号語(CW1)として送信することによって、通信デバイスを試験する方法であって、
前記第1符号語(CW0)及び前記第2符号語(CW1)をプリコーディングすることによって、前記第1符号語(CW0)及び前記第2符号語(CW1)を操作する工程と、
第1出力信号(TX0)及び第2出力信号(TX1)を、それぞれ、前記操作された第1符号語(CW0)及び第2符号語(CW1)から発生させる工程であって、前記第1出力信号(TX0)が、前記第2出力信号(TX1)とは異なる、工程と、
前記VSGからの第1入力信号(RX0)を前記DUTで受信する工程であって、前記DUTの前記受信した第1入力信号(RX0)が、前記VSGの前記第1出力信号及び第2出力信号の総和(TX0+TX1)である、工程と、
前記VSGからの第2入力信号(RX1)を前記DUTで受信する工程であって、前記DUTの前記受信した第2入力信号(RX1)が、前記VSGの前記第1出力信号及び第2出力信号の総和(TX0+TX1)である、工程と、
前記受信した第1入力信号(RX0)及び前記受信した第2入力信号(RX1)をプリコーディングすることによって、前記DUTの前記受信した第1入力信号(RX0)及び前記DUTの前記受信した第2入力信号(RX1)を操作する工程と、
前記DUTの前記操作された第1入力信号(RX0)及び前記DUTの前記操作された第2入力信号(RX1)から、ブロック誤り率の結果を発生させる工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1符号語及び前記第2符号語を操作する工程が、異なるエミュレート信号を作成するために、前記第1符号語及び前記第2符号語をスクランブリングする工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1符号語及び前記第2符号語の前記プリコーディングが、
チャネル
【数1】
の擬似逆行列に基づく、
【数2】
として定義されるプリコーディング演算子を利用する、バイパス/パススルー復号を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1符号語及び前記第2符号語を操作する工程が、前記第1符号語及び前記第2符号語の、巡回冗長検査、チャネル符号化、変調マッピング、レイヤマッピング、再マッピング、及び直交周波数分割多重化変調のうちの、1つ以上を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記DUTの前記受信した第1入力信号及び前記DUTの前記受信した第2入力信号の前記プリコーディングが、
【数3】
として定義されるプリコーディング演算子を利用する、バイパス/パススルー復号を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記DUTの前記受信した第1入力信号及び前記DUTの前記受信した第2入力信号を操作する工程が、前記DUTの前記受信した第1入力信号及び前記DUTの前記受信した第2入力信号の、直交周波数分割多重化復調、再デマッピング、レイヤデマッピング、変調デマッピング、チャネル復号、及び巡回冗長検査のうちの、1つ以上を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記DUTの前記受信した第1入力信号及び前記DUTの前記受信した第2入力信号を操作する工程が、前記DUTの前記受信した第1入力信号及び前記DUTの前記受信した第2入力信号をデスクランブリングする工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
単一のベクトル信号発生器(VSG)から、被試験デバイス(DUT)へ、データパケットを、第1符号語(CW0)及び第2符号語(CW1)として送信することによって、通信デバイスを試験するためのシステムであって、
前記第1符号語(CW0)及び前記第2符号語(CW1)をプリコーディングすることによって、前記第1符号語(CW0)及び前記第2符号語(CW1)を操作する手段と、
第1出力信号(TX0)及び第2出力信号(TX1)を、それぞれ、前記操作された第1符号語(CW0)及び第2符号語(CW1)から発生させる手段であって、前記第1出力信号(TX0)が、前記第2出力信号(TX1)とは異なる、手段と、
前記VSGからの第1入力信号(RX0)を前記DUTで受信する手段であって、前記DUTの前記受信した第1入力信号(RX0)が、前記VSGの前記第1出力信号及び第2出力信号の総和(TX0+TX1)である、手段と、
前記VSGからの第2入力信号(RX1)を前記DUTで受信する手段であって、前記DUTの前記受信した第2入力信号(RX1)が、前記VSGの前記第1出力信号及び第2出力信号の総和(TX0+TX1)である、手段と、
前記受信した第1入力信号(RX0)及び前記受信した第2入力信号(RX1)をプリコーディングすることによって、前記DUTの前記受信した第1入力信号(RX0)及び前記DUTの前記受信した第2入力信号(RX1)を操作する手段と、
前記DUTの前記操作された第1入力信号(RX0)及び前記DUTの前記操作された第2入力信号(RX1)から、ブロック誤り率の結果を発生させる手段と、
を含む、システム。
【請求項9】
異なるエミュレート信号を作成するために、前記第1符号語及び前記第2符号語をスクランブリングする手段を更に含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1符号語及び前記第2符号語を操作するための前記手段は、
チャネル
【数4】
の擬似逆行列に基づく、
【数5】
として定義されるプリコーディング演算子を利用する、バイパス/パススルー復号のための手段を含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記第1符号語及び前記第2符号語を操作する前記手段が、前記第1符号語及び前記第2符号語の、巡回冗長検査、チャネル符号化、変調マッピング、レイヤマッピング、再マッピング、及び直交周波数分割多重化変調のうちの、1つ以上を実行する手段を更に含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記DUTの前記受信した第1入力信号及び前記DUTの前記受信した第2入力信号を操作する前記手段が、
【数6】
として定義されるプリコーディング演算子を利用する、バイパス/パススルー復号のための手段を含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
前記DUTの前記受信した第1入力信号及び前記DUTの前記受信した第2入力信号を操作する前記手段が、前記DUTの前記受信した第1入力信号及び前記DUTの前記受信した第2入力信号の、直交周波数分割多重化復調、再デマッピング、レイヤデマッピング、変調デマッピング、チャネル復号、及び巡回冗長検査のうちの、1つ以上を実行する手段を更に含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項14】
前記DUTの前記受信した第1入力信号及び前記DUTの前記受信した第2入力信号を操作する前記手段が、前記DUTの前記受信した第1入力信号及び前記DUTの前記受信した第2入力信号をデスクランブリングする手段を含む、請求項8に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には、電子デバイスを試験するためのシステム及び方法に関する。より詳細には、本発明は、ハードウェア構成要素、ファームウェア構成要素、及び/又はソフトウェア構成要素からなる試験プラットフォームを使用して、無線デバイスを試験し、ブロック誤り率を判定するための、システム及び方法の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
今日の携帯用デバイスの多くは、電話、デジタルデータ転送、地理的位置決めなどのために、無線「接続」を利用する。周波数スペクトル、変調方法、及びスペクトルパワー密度の差異に関わらず、無線接続性の規格は、同期化したデータパケットを使用してデータを送受信する。
【0003】
一般的には、これらの無線接続性能力の全て(例えば、WiFi、WiMAX、Bluetoothなど)は、それらの接続性能力を有するデバイスが順守しなければならないパラメーター及び制限を指定する、業界承認の規格(例えば、IEEE 802.11、IEEE 802.16)、並びに携帯電話業界コンソーシアムに基づく規格(例えば、3GPP LTE)によって規定される。
【0004】
一連のデバイス開発に沿った、任意の時点で、デバイスがその規格の仕様の範囲内で動作することを、試験及び検証することが必要とされる場合がある。そのようなデバイスの殆どは、送受信機であり、すなわち、無線RF信号を送受信するものである。そのようなデバイスを試験するために設計される専用のシステムは、典型的には、デバイスの送信信号を受信及び分析するように設計され、かつ、業界承認の規格に従った信号を送ることにより、デバイスがその規格に従って無線信号を受信及び処理しているか否かを判定するように設計される、サブシステムを含む。
【0005】
無線通信技術の開発では、スマートアンテナ技術の諸形態の1つの進歩としては、複数入力及び複数出力、すなわちMIMOが挙げられる。MIMOは、送信機及び受信機の双方で複数のアンテナを利用して、(一方又は双方の)通信性能を改善するものであり、すなわち、無線リンクのスループットを増大させるために、複数のアンテナ(及び、それに応じて複数のRF連鎖)が、送信機及び受信機の双方に設置される。二地点間(ポイントツーポイント)(PTP)リンクでの送信機及び受信機の双方に、同様の数のアンテナを備えるMIMOシステムは、好条件下では、アンテナを追加するごとに、システムスループットを線形に増大させることが可能である。例えば、2×2 MIMOは、スループットを2倍にすることができる。
【0006】
MIMOは、空間多重化(SM)を使用して、信号(符号化及び変調されたデータストリーム)が、異なる独立した空間領域をわたって送信されることを可能にすることができる。一方で、モバイルWiMAXは、複数のMIMOモードに対応し、SM又はSTC(時空間符号化)のいずれか、若しくは双方を使用して、カバレッジエリアを縮小することなく、スペクトル効率を最大化する(スループットを増大させる)。チャネル(伝搬路)条件に基づく、これらのモード間での動的な切り替え(スイッチング)は、適応MIMOスイッチング(AMS)と呼ばれる。AAS(適応アンテナシステム)と組み合わせた場合には、MIMOは、WiMAXの性能を更に引き上げることができる。
【0007】
帯域幅を必要とするブロードバンドユーザーの出現と共に、データ転送速度を複数倍に増大させるという、高まる一方の必要性に対処するために、多くの無線技術(例えば、PAN、LAN、MAN、及びWAN)にMIMOを実装することが望まれるようになっている。MIMO技術は、追加的な帯域幅又は送信パワーを使用することなく、データスループット及びリンク範囲の著しい増大を提供するがゆえに、無線通信で関心を集めている。MIMO技術は、より高いスペクトル効率(帯域幅の1ヘルツ当りの、より大きいビット毎秒(bps))、及びリンク信頼性、すなわちダイバーシティ(フェージングの低減)によって、この増大を達成する。これらの特性ゆえに、MIMOは、IEEE 802.11n(Wifi)、4G、3GPP Long Term Evolution(LTE)、WiMAX、及びHSPA+などの、現代の無線通信規格の、重要な部分である。
【0008】
MIMOシステムを採用するように設計されたデバイスは、ある時点で、試験及び検証することが必要である。例えば、図1は、同期化した(103)ベクトル信号発生器(VSG)102、104を使用して、2×2 MIMOの無線MIMOデバイスを完全に試験するための規格を採用する、従来のシステム100を示す。2つの受信機(RX)/2つの送信機(TX)のMIMO(例えば、2×2 MIMO)用に設計されたデバイス106の場合には、2つのMIMO TX信号を同時に試験するための、2つのベクトル信号解析器(VSA)を有する試験システムを使用して、その物理層(PHY)の特性を完全に試験することが可能である。更には、デバイスの2つの受信機を試験するために、2つの独立したTX MIMO信号をシミュレートするための、2つのVSGを使用して、試験することも可能である。
【0009】
この方式で、被試験デバイス(DUT)106の、RX1/デジタル信号プロセッサ(DSP)の連鎖(チェイン)及びRX2/DSPの連鎖を試験して、DUT 106が適切に動作しているか否かを判定することが可能である。2つのVSGを使用して、2×2 DUTの2つの受信の連鎖の正常動作を検証しているため、この従来の方法はまた、RX連鎖及びMIMOチャネル(伝搬路)推定の双方の検証も可能にし得る。しかしながら、試験システムのコストは、この例で採用されるVSA及びVSGなどの、実装機器のコストによって概ね占められる。それゆえ、実際問題として、無線接続性試験システム内部で採用される試験機器が多くなるにつれて、前述のシステムは、より高価になる傾向がある。更には、信頼性の確認及び/又はメンテナンスの応用のための、個々の試験機器に関連する支出もまた存在し得る。したがって、実装機器の、信頼性のある試験方法を依然として維持しながらも、試験システム内で利用されるデバイスに関する支出を低減することが望まれる。
【0010】
試験機器の構成要素を限定し、それによって関連するコスト要因を限定することに対処する試みが行なわれている。例えば、図2の従来の実施形態は、単に、単一のVSG202を採用して、その出力を2つの同一信号へと分割する(204)という、試験システム200を採用する。しかしながら、この手順では、2つのDUT受信機206、208の能力は、適切に試験されない。この方式で、単一のVSG202を使用し、出力を分割することによって、RX連鎖及びチャネル推定の検証を提供する試みでは、双方のRX連鎖を検証することができない。これは、とりわけ、採用された手順では、それぞれの単独の雑音指数ではなく、結果的に生じる2つの雑音指数の平均が、単に測定されるためである。結果として、この即席の方法では、MIMOシステムでの空間多重化(SM)の適切な処理に不可欠である、チャネル推定が検証されない。簡潔に述べれば、この方法では、RX1/DSP及びRX2/DSPの双方の連鎖を完全に試験することによる、試験信号の完全な計算を、提供することができない。それゆえ、単一のDSPの連鎖(2つではなく)が検証されるのみであり、またMIMOチャネル推定を検証することもできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、先端的な無線接続性能力の要件を満たすか又は上回る、改善された低コストの試験システムに対する必要性が存在する。この必要性は、製造される2×2、3×2、及び4×2のMIMO無線デバイスを試験するための、改善された機能を提供する。追加的な試験機器への依存を低減することにより、運用コストを低減し、無線機器内の欠陥を識別するための試験を実行して、ブロック誤り率の情報を判定する、更なる必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明の目的は、先行技術の不備を克服する、好ましくは単一のVSGを含む試験システムを使用する、システム及び方法を含むことであり、この試験システムは、製造される2×2、3×2、及び4×2のMIMO無線デバイスを試験して、DUT受信機が、構成されたMIMO TX信号を適切に受信し、送信されたTX信号によって伝搬されるビット/シンボルを正確に復号することを、損なうか又は無効にする恐れのある、潜在的な製造欠陥を識別することを可能にする。
【0013】
開示される例示的な一実施形態によれば、通信デバイスを試験する方法が提供され、この方法は、一部の実施形態では、ベクトル信号発生器(VSG)から、被試験デバイス(DUT)へ、データパケットを、第1符号語及び第2符号語として送信することを含む。この方法は、第1符号語及び第2符号語をプリコーディングすることによって、第1符号語及び第2符号語を操作する工程と、第1出力信号及び第2出力信号を、それぞれ、操作された第1符号語及び第2符号語から発生させることとを含んでよく、この第1出力信号は、第2出力信号とは異なる。追加の実施形態は、VSGからの第1信号をDUTで受信することを含んでよく、このDUTの第1受信信号は、VSGの第1出力信号及び第2出力信号の総和である。更には、VSGからの第2信号は、このDUTで受信することができ、このDUTの第2受信信号は、VSGの第1出力信号及び第2出力信号の総和である。この方法は、第1受信信号及び第2受信信号をプリコーディングすることによって、DUTの第1受信信号及びDUTの第2受信信号を操作する工程を、更に含み得る。DUTの操作された第1受信信号及びDUTの操作された第2受信信号から、ブロック誤り率の結果を発生させることができる。
【0014】
開示される他の例示的な実施形態によれば、通信デバイスを試験するシステムが提供され、このシステムは、一部の実施形態では、ベクトル信号発生器(VSG)から、被試験デバイス(DUT)へ、データパケットを、第1符号語及び第2符号語として送信する手段を含む。このシステムはまた、第1符号語及び第2符号語を操作する手段であって、それぞれ1出力信号及び第2出力信号を作り出すための手段を含んでよく、この第1出力信号は、第2出力信号とは異なる。更には、VSGからの第1信号をDUTで受信する手段を含んでよく、このDUTの第1受信信号は、VSGの第1出力信号及び第2出力信号の総和である。このシステムは、VSGからの第2信号をDUTで受信する手段を含み、このDUTの第2受信信号は、VSGの第1出力信号及び第2出力信号の総和である。更には、DUTの第1受信信号及びDUTの第2受信信号を操作する手段であって、DUTの第1受信信号及びDUTの第2受信信号に関するブロック誤り率の結果を発生させるための手段もまた含まれ得る。
【0015】
開示される更に他の例示的な実施形態によれば、通信デバイスを試験するシステムが提供され、このシステムは、一部の実施形態では、DUTに結合されるVSGを含む。このVSGは、データパケットを、第1符号語及び第2符号語として送信するように構成され、このVSGは、第1符号語及び第2符号語を、エミュレートされた第1波形及び第2波形として操作するための、ソフトウェア及びハードウェアのアーキテクチャーを含み、この第1波形は、第2波形とは異なる。DUTは、エミュレートされた第1波形及び第2波形を、VSGからの規定の信号として受信するように構成される。この規定の信号は、第1受信信号及び第2受信信号を含み、DUTは、第1受信信号及び第2受信信号を操作して、それらの信号からブロック誤り率の結果を発生させるための、ソフトウェア及びハードウェアのアーキテクチャーを含む。
【0016】
ここにある本発明の詳細な説明が、より良好に理解され得るように、また当該技術への本発明の貢献が、より良好に認識され得るように、本発明の特定の実施形態が、このように、やや広範に概説されてきた。当然ながら、本発明の追加の実施形態が存在し、それらは以下に説明され、それらは本明細書に付される特許請求の範囲の対象である。
【0017】
この点で、本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、以下の説明に記載されるか又は図面に示される、構成の詳細並びに構成要素の配列に、その応用が限定されないことを理解されたい。本発明は、説明される実施形態以外の実施形態が可能であり、様々な方法で実践及び実施することが可能である。また、本明細書並びに要約書で使用される、表現及び用語は、説明を目的とするものであって、限定として見なすべきではないことも理解されたい。
【0018】
したがって、当業者であれば、本開示が基づくところの着想が、本発明の諸目的を実施するための他の構造、方法、及びシステムを設計するための基盤として容易に利用可能であることを、理解するであろう。したがって、本発明の思想及び範囲から逸脱しない限りにおいて、特許請求の範囲は、それらの均等な構成を含むものとして見なされることが重要である。
【0019】
本発明の更なる他の態様、特徴、及び利点は、本発明を実施するために考えられる最良の形態を含めた、数々の例示的な実施形態及び実装を単に説明することによって、以下の詳細な説明から容易に明らかとなる。本発明はまた、全て本発明の思想及び範囲から逸脱することなく、他の実施形態、及び異なる実施形態も可能であり、本発明の幾つかの詳細は、様々な点で修正することができる。したがって、図面及び説明は、制限としてではなく、本質的に例示として見なされるべきである。
【0020】
本発明は、以下に記載される「発明を実施するための形態」、及び本発明の様々な実施形態の添付された図面から、より完全に理解されるが、しかしながら、これらは、本発明を特定の実施形態に限定するように解釈されるべきではなく、単に説明及び理解のためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】

図1図1は、同期化したベクトル信号発生器を使用して、2×2 MIMOの無線MIMOデバイスを試験するための、従来のシステムである。
図2図2は、単一のVSGの出力を、2つの同一信号へと分割するための試験システムを示す。
図3図3は、開示される例示的な実施形態による、DUTにコマンドを出すためのVSG信号を発生させるために利用される構成表を示す。
図4図4は、開示される例示的な実施形態による、符号語CW0及び符号語CW1からVSG生成波形へのフローを示す。
図5図5は、開示される例示的な実施形態による、入力VSG信号を処理するように符号化された、プリコーディング及びデスクランブリングの連鎖を有する、2×2 MIMO DUTを示す。
図6図6は、開示される例示的な実施形態による、DUTのRX及び復号の連鎖を完全に試験するように構成された、単一のVSG及び2×2 MIMO DUTを利用する、完全な試験の設計を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を、ここで図面を参照して説明するが、全体を通じて、同様の参照数字は、同様の部分を指す。以下の「発明を実施するための形態」は、本発明の、添付図面を参照とする、例示的実施形態のものである。そのような説明は、例示的なものであって、本発明の範囲に関して限定するものではないことを意図する。そのような実施形態は、本発明を当業者が実践することを可能にするために、十分に詳細に説明され、また他の実施形態を、本発明の思想及び範囲から逸脱することなく、一部の変形と共に実践し得ることが理解されよう。
【0023】
本開示の全体を通して、文脈から反対であるという明示がない限り、説明される個々の回路素子は、数において単数又は複数であり得ることが理解されよう。例えば、「回路」及び「回路構成」という用語は、説明される関数を提供するための、単一の構成要素、あるいは、能動(アクティブ)的及び/又は受動(パッシブ)のいずれかであって、一体的に接続されるか又は他の方法で結合される(例えば、1つ以上の集積回路(IC)チップとして)複数個の構成要素のいずれかを含み得る。更には、「信号」という用語は、1つ以上の電流、1つ以上の電圧、又はデータ信号を指す場合がある。図面内では、同様の、又は関連する要素は、同様の、又は関連する、英字、数字、若しくは英数字の表記を有する。更には、本発明は、個別の電子回路構成(好ましくは、1つ以上のICチップの形態)を使用する実装に関連して論じられているが、そのような回路構成の任意の部分の関数も、処理される信号周波数又はデータ転送速度に応じて、適切にプログラムされた1つ以上のプロセッサを使用して、代替的に実装することができる。
【0024】
ここに説明される本発明は、無線システム内の欠陥構成要素を検証するために、より少ない試験構成要素を必要とする試験システムを使用するための、システム及び方法を提供する。具体的には、開示されるシステム及び方法の実施形態は、製造される2×2 MIMO無線デバイスを試験して、適切に構成されたMIMO TX信号をDUTの受信機が受信することを損なうか又は無効にする任意の製造欠陥を識別するように構成され、かつ、そのように使用可能な単一のVSGを含む試験システムを使用する。開示される試験システム及び方法は、更に、前述のTX信号によって搬送されるビット/シンボルを正確に復号することが可能である。この場合、説明される2×2 MIMOデバイスの使用は、本明細書の全体を通して、3GPP LTE規格に基づくことが意図されているが、しかしながら、2×2 MIMOデバイスは、例示であることが意図されている。以下の説明で述べられる、2×2 MIMO DUTは、3GPPのLTE規格に準拠するものであるが、当業者には既知の、同様のプリコーディング及び符号語の技術を使用して、任意の2×2 MIMO DUT RX連鎖及びチャネル推定の検証試験手順に、本発明の採用システム及び方法を適用可能であることが、容易に理解される。
【0025】
したがって、開示されるシステム及び方法は、選択された本発明の基準に従って、単一のVSGから適切な波形を発生させるように、試験装置にコマンドを出す。そのように発生した単一のVSG信号は、双方のDSP連鎖を検証するために使用され、MIMO RXに影響を及ぼす製造欠陥を識別することができるブロック誤り率試験を提供する。開示される本発明の試験能力は、2つのVSGなどの追加的な機器を利用する、従来の試験システム及び方法に少なくとも匹敵する。しかしながら、第2のVSGに対する必要性を除去することによって、開示されるシステム及び方法は、システム内部の潜在的な欠陥を識別するために必要とされる試験装置の費用を引き下げることによる、コスト節減の利点を提供する。
【0026】
単一のVSG波形を発生させるために、開示される発明は、例えばDUTが2つの復号連鎖を実行するようコマンドを出すためのアルゴリズムを採用することができる。一実施形態では、3GPP LTE MIMOを利用するものなどの構成表が、開示されるシステムによって採用され、必要とされるVSG信号を発生させることができる。図3は、DUTが2つの復号連鎖を実行するようコマンドを出すための、必要とされるVSG信号を発生させるために、使用することができる値を含む、3GPP LTE MIMOで使用される例示的な構成表300を示す。図3のダウンリンク制御情報(DCI)フォーマット2の表は、それぞれの記述項目304に対応する規定値302を提供し、この実施例では、それぞれの記述項目304は、特定の項目番号306として記載することができる。規定値302は、試験装置又はデバイスに入力され、その試験装置又はデバイスがどのように動作するかを確立することができる。好ましい実施形態では、DCIフォーマット2の表は、その値情報を、単一のVSGに供給し、次に、この単一のVSGは、2×2 MIMO DUTを完全に試験するためのVSG波形を作り出す。
【0027】
図4を参照すると、図3からの表の値302を利用する、単一のVSG400は、送信パケット内に埋め込まれるデータを含む規定の数の符号語を採用する。符号語は、幾つかの、ソフトウェアに基づく処理工程402及びハードウェアに基づく処理工程404を経て進行し、例えば3GPP LTE 2×2空間多重化アーキテクチャーとの互換性があるような、信号を作り出す。(代替的実施形態として、初期の処理工程402もまた、ハードウェアに基づくものとすることができる。)この実施例では、2つの符号語(CW0及びCW1)を利用し、前述の処理工程402、404を施して、波形TX0及び波形TX1を発生させる。符号語を、例えばソフトウェア又はハードウェアを介して操作し、それぞれの符号語CW0及び符号語CW1の、例えば、巡回冗長検査401、チャネル符号化406、及びスクランブリング408を含めた、幾つかの演算を実行することができる。好ましい実施形態では、スクランブリングは、CW0関してq=0、及びCW1に関してq=1などの、異なる値を提供することによって、エミュレート信号の作成を容易にする。符号語CW0及び符号語CW1には、開示される実施形態に従って、例えば、変調マッピング410、レイヤマッピング412、再マッピング414、及び直交周波数分割多重化(OFDM)変調を含めた、1つ以上の追加的演算を施すことができる。
【0028】
好ましい実施形態では、2つの出力信号TX0及び出力信号TX1の発生は、符号語CW0及び符号語CW1のプリコーディング418を必要とする。このプリコーディングプロセスの間、バイパス/パススルー復号が実行される。プリコーディング演算子は、次のように定義することができる。
【0029】
チャネル
【0030】
【数1】
【0031】
【数2】
【0032】
この操作の後、VSG送信機420の出力は、2つの信号をTX0及びTX1として発生させる。VSGの出力の段階では、チャネルは次の通りである。
【0033】
【数3】
【0034】
それゆえ、VSGの出力は、2つの受信機への入力信号RX0、RX1となる、同一の出力信号TX0+TX1を作り出す。
【0035】
図5を参照すると、DUT500の2つの受信機502に送信される信号の、RX0、RX1は、それぞれ、TX0+TX1、及びTX0+TX1として表すことができる。VSG信号RX0及びVSG信号RX1は、受信機502から、処理連鎖を上って続行し、直交周波数分割多重化(OFDM)復調演算504を経るなどの、1つ以上の追加的な処理を施される。同様に、例えば、再デマッピング506、及びプリコーディング508を含めた、追加的な演算が、信号RX0及び信号RX1を操作するために実行される。この場合、プリコーディング演算の間の、プリコーディング演算子は、次のように定義することができる。
【0036】
【数4】
【0037】
図5に示すように、プリコーディング508に続いて、レイヤデマッピング510、変調デマッピング512、及びデスクランブリング514、515の演算を採用して、信号RX0及び信号RX1を更に操作することができる。好ましい実施形態では、双方の連鎖でのデスクランブリング514、515は、以下で更に述べるように、RX0及びRX1の信号の双方に関して、q=0を設定する。デスクランブリングの後、信号RX0及び信号RX1に、チャネル復号516、517、及び巡回冗長検査518を施し、双方のRX連鎖のRX0及びRX1に関して、それぞれ、ブロック誤り率(BLER)の結果520、522を発生させることができる。
【0038】
図6を参照すると、単一のVSG400と、VSG出力信号TX0、TX1と、双方の信号(TX0及びTX1のそれぞれ)に関する、RX0(TX0+TX1)及びRX1(TX0+TX1)へのチャネル変換と、双方のRX連鎖に関して得られるBLER結果520、522とを含む、試験構成の全体が示される。終端間(エンドツーエンド)の全体にわたる結果(VSG400でのプリコーディング418の入力から、DUT500でのプリコーディング508の出力まで)は、次の式によって説明される。
【0039】
【数5】

式中
【0040】
【数6】
は、CW1にマッピングされない、VSG400から送られる、q=0でスクランブルされたCW0のストリームである。CW1は、DUT500側上に流すことが許可される。CW0の復号517及びBLERの報告520は、DUT500側上で直接的に進む。しかしながら、CW1に関しては、DUT500は、復号516及びBLERについての報告522を試みる前に、好ましくは、そのストリームに、q=0で(q=1ではなく)デスクランブル514を行なうように構成される。
【0041】
単一のVSG出力が分割されて各RXに送り込まれる場合(例えば、図2を参照)とは異なり、開示される発明は、完全なRXの連鎖の特性、単独の雑音指数、及びチャネル推定を考慮に入れる、BLER結果を提供する。更には、本発明によって提供されるブロック誤り率試験は、少なくとも、追加的な機器(2つのVSGなど)を利用する従来の試験システム及び方法の正確度で、MIMO RXに影響を及ぼす製造欠陥を識別することができる。また一方、第2のVSGに対する必要性を除去することによって、開示される実施形態は、より経済的な試験システム及び運用方法を提供する。
【0042】
本開示の範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変形を、開示される装置及び方法に実施し得ることが、当業者には明らかであろう。更には、本明細書を考察することにより、本発明に係る装置及び方法の他の実施形態が、当業者には明らかであろう。本明細書及び実施例は、例示としてのみ考慮され、本開示の真の範囲は、以下の特許請求の範囲及びそれらの均等物によって示されることが意図される。
【0043】
本技術において説明されるようなシステム、又はその任意の構成要素が、コンピュータシステムの形態で具体化され得る。コンピュータシステムの典型的な例としては、汎用コンピュータ、プログラムされたマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、周辺IC(集積回路)素子、及び本技術の方法を構成する工程を実装可能な他のデバイス、若しくはデバイスの配列が挙げられる。
【0044】
このコンピュータシステムは、コンピュータ、入力デバイス、ディスプレイユニット、及び/又はインターネットを含む。コンピュータは、マイクロプロセッサを更に含む。マイクロプロセッサは、通信バスに接続される。コンピュータはまた、メモリも含む。このメモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び読み出し専用メモリ(ROM)を含み得る。コンピュータシステムは、記憶デバイスを更に含む。この記憶デバイスは、ハードディスクドライブ、又はフロッピーディスクドライブ、光ディスクドライブなどのような、リムーバブルな記憶ドライブとすることができる。この記憶デバイスはまた、コンピュータシステム内に、コンピュータプログラム又は他の命令を読み込むための、他の同様の手段とすることもできる。コンピュータシステムはまた、通信ユニットも含む。この通信ユニットにより、コンピュータは、入出力インターフェースを通じて、他のデータベース及びインターネットに接続することが可能になる。この通信ユニットにより、データの転送、並びに他のデータベースからのデータの受信が可能になる。通信ユニットは、データベース、並びにLAN、MAN、WAN、及びインターネットなどのネットワークに、コンピュータシステムが接続することを可能にする、モデム、イーサネットカード、又は任意の同様のデバイスを含み得る。コンピュータシステムは、入出力インターフェースを通じてシステムにアクセス可能な、入力デバイスを通じて、ユーザーからの入力を容易にする。
【0045】
コンピュータシステムは、入力データを処理するために、1つ以上の記憶素子内に記憶された、命令のセットを実行する。この記憶素子はまた、必要に応じて、データ又は他の情報も保持することができる。記憶素子は、情報源、又は処理機械内に存在する物理的なメモリ素子の形態にすることができる。
【0046】
命令のセットは、処理機械に、本技術の方法を構成する工程などの特定のタスクを実行するように命令する、様々なコマンドを含み得る。命令のセットは、ソフトウェアプログラムの形態にすることができる。更には、このソフトウェアは、個別のプログラムの集まり、より多くのプログラムを有するプログラムモジュール、又は本技術におけるような、プログラムモジュールの一部分の形態にすることができる。このソフトウェアはまた、オブジェクト指向プログラミングの形態での、モジュラープログラミングも含み得る。処理機械による入力データの処理は、ユーザーコマンド、先行の処理の結果、又は別の処理機械によって作成される要求に応答することができる。
【0047】
以下の説明は、当業者が本技術を作製及び使用することを可能にするために提示される一方で、特許取得のための要件に関連して記載される。本説明は、本技術を実施するための、現時点で考えられる最良の方法である。好ましい実施形態への様々な修正は、当業者には容易に明らかとなり、本技術の包括的な原理は、他の実施形態に適用することができ、本技術の一部の特徴は、対応して他の特徴の使用することなく、使用することができる。したがって、本技術は、示される実施形態に限定されることを意図するものではなく、本明細書に記載される原理及び特徴に一致する最も広い範囲が与えられるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6