特許第6263336号(P6263336)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6263336セメント硬化体のひび割れ自己治癒用合成繊維、それを含むセメント硬化体及びセメント硬化体のひび割れ補修方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263336
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】セメント硬化体のひび割れ自己治癒用合成繊維、それを含むセメント硬化体及びセメント硬化体のひび割れ補修方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 16/06 20060101AFI20180104BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   C04B16/06 A
   C04B16/06 C
   C04B16/06 D
   C04B28/02
【請求項の数】8
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-108800(P2013-108800)
(22)【出願日】2013年5月23日
(65)【公開番号】特開2014-1129(P2014-1129A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2016年4月18日
(31)【優先権主張番号】特願2012-118048(P2012-118048)
(32)【優先日】2012年5月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002923
【氏名又は名称】ダイワボウホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】300049578
【氏名又は名称】ダイワボウポリテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】川上 滋貴
(72)【発明者】
【氏名】西脇 智哉
【審査官】 岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−032129(JP,A)
【文献】 特開2000−034146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00−32/02
C04B 40/00−40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント硬化体のひび割れの自己治癒を促進するセメント硬化体のひび割れ自己治癒用合成繊維であって、
前記セメント硬化体のひび割れ自己治癒用合成繊維は、非円形断面を有し、ポリオレフィン系樹脂及びポリアセタール樹脂からなる群から選ばれる一つ以上の樹脂が繊維表面の少なくとも一部を占めており、
前記非円形断面は、2以上の突起を有し、
前記セメント硬化体のひび割れ自己治癒用合成繊維は、繊度が0.5〜20dtexであることを特徴とするセメント硬化体のひび割れ自己治癒用合成繊維。
【請求項2】
前記非円形断面は、繊維断面で見たときの最大の差し渡し長さSに対する突起の長さLの比L/Sが0.1〜0.9である請求項1に記載のセメント硬化体のひび割れ自己治癒用合成繊維。
【請求項3】
前記非円形断面は、突起の長さLに対する突起の幅Dの比L/Dが0.3〜3である請求項1又は2に記載のセメント硬化体のひび割れ自己治癒用合成繊維。
【請求項4】
前記セメント硬化体のひび割れ自己治癒用合成繊維は、繊維表面に極性基を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載のセメント硬化体のひび割れ自己治癒用合成繊維。
【請求項5】
前記セメント硬化体のひび割れ自己治癒用合成繊維は、繊維表面にカルボキシル基を含有するモノマーを共重合したオレフィン系樹脂が配置されている請求項1〜4のいずれか1項に記載のセメント硬化体のひび割れ自己治癒用合成繊維。
【請求項6】
前記セメント硬化体のひび割れ自己治癒用合成繊維は、コロナ放電処理、プラズマ処理、フッ素ガス処理、オゾン処理及びスルホン化処理からなる群から選ばれる少なくとも1つの親水化処理により親水化されている請求項1〜5のいずれか一項に記載のセメント硬化体のひび割れ自己治癒用合成繊維。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のセメント硬化体のひび割れ自己治癒用合成繊維とセメントとを含むことを特徴とするセメント硬化体。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のセメント硬化体のひび割れ自己治癒用合成繊維とセメントとを含むセメント硬化体のひび割れ補修方法であって、
ひび割れが発生した前記セメント硬化体のひび割れ部分に水分を間欠的又は連続的に付与してひび割れを自己治癒することを特徴とするセメント硬化体のひび割れ補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートやモルタルなどのセメント硬化体のひび割れの自己治癒を促進するセメント硬化体のひび割れ自己治癒用合成繊維、それを含むセメント硬化体及びセメント硬化体のひび割れ補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメント系材料は、圧縮強度、耐火性及び耐久性に優れるとともに、型枠によって自由な寸法、形状に加工できるため、建築構造物や土木構造物に好適に用いられている。一方、コンクリートなどのセメント系材料は、応力が作用することや、温度変化及び乾燥などによる体積変化が生じることなどの原因によってひび割れが発生する。このようなひび割れは、美観を損なうだけではなく、ひび割れ部分からの漏水、内部鉄筋の腐食による断面減少、構造物の耐久性の低下などの様々な問題を引き起こす。対策として、ひび割れの発生後に充填剤を注入すること、構造物の製造時に防水工や止水工を施すことなどが行われていた。しかし、このような対策は、コスト増加や工期の長期化などの問題があった。
【0003】
そこで、コンクリートが水分供給を受ける環境下において、ひび割れ部分が自然に閉塞する自己治癒性能を利用した対策が行われていた。例えば、特許文献1には、セメントなどの粉体に、自己治癒性材料として、膨張材と微細シリカ、水ガラスなどの無機質セメント結晶増殖材とを添加することが提案されている。特許文献2には、自己治癒性材料として、膨張材と膨潤性を有するアルミナシリケートとを含有するセメント混和剤を用いることが提案されている。しかし、上記のような自己治癒性材料を含むことでコンクリートは自己治癒するものの、自己治癒効果をさらに高める必要があった。また、非特許文献1には、ビニロン(PVA)繊維が自己治癒効果を有することが公表されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−239482号公報
【特許文献2】特開2009−190937号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】国府田まりな、三橋博三、西脇智哉、菊田貴恒、「合成繊維を用いたFRCCのひび割れ自己修復に関する実験的研究」、日本建築学会構造系論文集、Vol.76、No.667、1547-1552頁、2011年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の問題を解決するため、セメント硬化体のひび割れの自己治癒を促進するセメント硬化体のひび割れ自己治癒用合成繊維、それを含むセメント硬化体及びセメント硬化体のひび割れ補修方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、セメント硬化体のひび割れの自己治癒を促進するセメント硬化体のひび割れ自己治癒用合成繊維であって、上記セメント硬化体のひび割れ自己治癒用合成繊維は、非円形断面を有し、ポリオレフィン系樹脂及びポリアセタール樹脂からなる群から選ばれる一つ以上の樹脂が繊維表面の少なくとも一部を占めており、上記非円形断面は、2以上の突起を有し、上記セメント硬化体のひび割れ自己治癒用合成繊維は、繊度が0.5〜20dtexであることを特徴とするセメント硬化体のひび割れ自己治癒用合成繊維に関する。
【0008】
本発明は、また、上記のセメント硬化体のひび割れ自己治癒用合成繊維とセメントとを含むセメント硬化体に関する。
【0009】
本発明は、また、上記のセメント硬化体のひび割れ自己治癒用合成繊維とセメントとを含むセメント硬化体のひび割れ補修方法であって、ひび割れが発生した上記セメント硬化体のひび割れ部分に水分を間欠的又は連続的に付与してひび割れを自己治癒することを特徴とするセメント硬化体のひび割れ補修方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、合成繊維において、繊維表面の少なくとも一部をポリオレフィン系樹脂及びポリアセタール樹脂からなる群から選ばれる一つ以上の樹脂で構成し、断面形状を2以上の突起を有する非円形断面にすることで、セメント硬化体のひび割れの自己治癒を促進するセメント硬化体のひび割れ自己治癒用合成繊維を提供することができる。また、本発明は、上記セメント硬化体のひび割れ自己治癒用合成繊維を含ませることにより、ひび割れの自己治癒性が高いセメント硬化体を提供することができる。また、本発明によれば、セメント硬化体に上記セメント硬化体のひび割れ自己治癒用合成繊維を含ませ、ひび割れ部分に水分を間欠的又は連続的に付与することでひび割れを自己治癒するセメント硬化体のひび割れ補修方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、セメント硬化体のひび割れの自己治癒効果の確認に用いる試験体形状を示す模式図である。
図2図2は、透水試験に用いる小型透水試験機の模式図である。
図3図3は、実施例1〜5、比較例1の各々の繊維を用いた試験体における第一載荷試験及び第二載荷試験の結果を示すグラフである。
図4A図4Aは、実施例1〜3の各々の繊維を用いた試験体における第二養生期間中の試験体のひび割れの変化を示すマイクロスコープ写真(倍率50倍)である。
図4B図4Bは、実施例4〜5、比較例1の各々の繊維を用いた試験体の第二養生期間中のひび割れの変化を示すマイクロスコープ写真(倍率50倍)である。
図5図5は、実施例1〜5、比較例1の各々の繊維を用いた試験体の第二養生期間中の透水係数の変化を示すグラフである。
図6図6A〜Eは、繊維の断面形状の模式図である。
図7図7は、実施例1のセメント硬化体のひび割れ自己治癒用合成繊維の断面のSEM写真(倍率1000倍)である。
図8図8は、実施例2のセメント硬化体のひび割れ自己治癒用合成繊維の断面のSEM写真(倍率1000倍)である。
図9図9は、実施例3のセメント硬化体のひび割れ自己治癒用合成繊維の断面のSEM写真(倍率1000倍)である。
図10図10は、実施例4のセメント硬化体のひび割れ自己治癒用合成繊維の断面のSEM写真(倍率1000倍)である。
図11図11は、実施例5のセメント硬化体のひび割れ自己治癒用合成繊維の断面のSEM写真(倍率1000倍)である。
図12図12は、実施例10のセメント硬化体のひび割れ自己治癒用合成繊維の断面のSEM写真(倍率1000倍)である。
図13図13は、実施例11のセメント硬化体のひび割れ自己治癒用合成繊維の断面のSEM写真(倍率1000倍)である。
図14図14は、実施例12のセメント硬化体のひび割れ自己治癒用合成繊維の断面のSEM写真(倍率1000倍)である。
図15図15は、実施例6〜13及び参考例1の各々の繊維を用いた試験体における第一載荷試験の結果を示すグラフである。
図16図16は、セメント硬化体のひび割れ自己治癒用合成繊維の断面におけるS、L及びDの求め方を説明する模式図である。
図17図17は、実施例6〜8の各々の繊維を用いた試験体の第二養生期間中のひび割れの変化を示すマイクロスコープ写真(倍率50倍)である。
図18図18は、実施例9〜11の各々の繊維を用いた試験体の第二養生期間中のひび割れの変化を示すマイクロスコープ写真(倍率50倍)である。
図19図19は、実施例12〜14の各々の繊維を用いた試験体の第二養生期間中のひび割れの変化を示すマイクロスコープ写真(倍率50倍)である。
図20図20は、実施例6〜14及び参考例1の各々の繊維を用いた試験体の第二養生期間中の透水係数の変化を示すグラフである。
図21図21は、実施例14〜17の各々の繊維を用いた試験体における第一載荷試験の結果を示すグラフである。
図22図22は、実施例15〜17の各々の繊維を用いた試験体の第二養生期間中の透水係数の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者らは、鋭意検討した結果、繊維表面の少なくとも一部をポリオレフィン系樹脂及びポリアセタール樹脂からなる群から選ばれる一つ以上の樹脂で構成し、断面形状を2以上の突起を有する非円形断面にした合成繊維をセメント硬化体に含ませると、セメント硬化体にひび割れが発生した場合、セメント硬化体のひび割れの自己治癒が促進されることを見出し、すなわち、上記の合成繊維のセメント硬化体のひび割れの自己治癒を促進するという新たな属性を見出し、本発明に至った。
【0013】
本発明のセメント硬化体のひび割れ自己治癒用合成繊維(以下において、単に自己治癒用合成繊維と記す。)は、非円形断面を有する。上記非円形断面は、2以上の突起を有し、好ましい突起の数は3〜16であり、より好ましくは4〜8である。上記非円形断面としては、例えば、三葉、四葉、八葉などの多葉型、Y、H、Xなどのアルファベット型、UFO型、多角形型などの外形を有するものが挙げられる。突起の数が上記範囲を満たす非円形断面繊維を用いることにより、セメント粒子と接触する面積(繊維表面積)が増加し、セメント硬化体にひび割れが発生したときに細分化されたひび割れが形成されること、及び繊維の周囲に炭酸カルシウムなど自己治癒物質が析出し易くなることから、ひび割れ部分が自己治癒すると推定される。また、上記非円形断面(異形断面)形状は、突起が繊維の中心付近から放射状に形成されていることが好ましい。突起が放射状に形成されることで、セメント粒子が隣り合う突起間に入り込み易くなり、自己治癒物質を繊維表面に析出し易くなる。突起が放射状に形成されている非円形断面としては、例えば、図6A、6B、6Cで示される断面形状などが挙げられる。樹脂成分としては、単一又は複合の繊維を用いることができる。また、繊維断面に中空部を有していてもよい。
【0014】
上記自己治癒用合成繊維の繊維断面形状における突起の長さは、例えば、図16に示しているように、突起の2つの根元を結ぶ線の中点cから突起の先端(頂点t)までを結ぶ線の長さLで示される。上記自己治癒用合成繊維において、繊維断面で見たときの最大の差し渡し長さSに対する突起の長さLの比L/Sが0.1〜0.9であることが好ましい。より好ましいL/Sは、0.2〜0.5である。上記範囲を満たす非円形断面繊維を用いることにより、セメント粒子と接触する面積(繊維表面積)が増加し、セメント硬化体にひび割れが発生したときに細分化されたひび割れが形成されること、及び繊維の周囲に炭酸カルシウムなど自己治癒物質がより析出しやすくなることから、より高い効率でひび割れ部分が自己治癒すると推定される。
【0015】
上記自己治癒用合成繊維の繊維断面形状における突起の幅は、例えば、図16に示しているように、上記突起の長さLとその中点で直交する線が突起の側面と交わる交点s1と交点s2を結ぶ線の長さDで示される。上記自己治癒用合成繊維において、突起の長さLに対する突起の幅Dの比L/Dが0.3〜3であることが好ましい。より好ましいL/Dは、0.7〜2.5であり、さらにより好ましくは1.2〜2.5である。上記範囲を満たす非円形断面繊維を用いることにより、セメント粒子と接触する面積(繊維表面積)が増加すること及び繊維強度の低下が少ないことから、セメント硬化体にひび割れが発生したときに細分化されたひび割れが形成されること、並びに繊維の周囲に炭酸カルシウムなど自己治癒物質がより析出しやすくなることから、より高い効率でひび割れ部分が自己治癒すると推定される。なお、上記S、L、及びDの値は、繊維断面を1000倍に拡大したSEM写真から任意の5本の平均値で算出するとよい。
【0016】
本発明の自己治癒用合成繊維において、非円形断面の程度を表す指標として繊維周長が用いられる。繊維周長は、20〜800μmであることが好ましい。より好ましくは30〜400μmであり、さらにより好ましくは50〜250μmである。繊維周長が上記範囲を満たすと、十分な繊維強度を保持しつつ、セメント粒子と接触する面積(繊維表面積)が増加するので、セメント硬化体にひび割れが発生したときに細分化されたひび割れが形成されること、並びに繊維の周囲に炭酸カルシウムなど自己治癒物質がより析出しやすくなることから、より高い効率でひび割れ部分が自己治癒すると推定される。なお、繊維周長は、電子顕微鏡等で繊維断面の画像を用いて測定することができる。
【0017】
上記自己治癒用合成繊維は、アスペクト比(繊維長/繊維径)が150〜600の範囲であることが好ましく、より好ましくは250〜500である。アスペクト比が上記範囲を満たすことで、セメントスラリー中での繊維の分散性が良好となり、必要な繊維本数を確保することができるため、自己治癒用合成繊維としての効果を発揮し易く、さらにセメント硬化体にひび割れが形成されても微細なひび割れにすることができ、ひいては硬化体のひび割れの自己治癒がし易くなる。上記自己治癒用合成繊維は、非円形断面、即ち、異形断面であるため、繊維径は、円形断面に換算した値である。
【0018】
上記自己治癒用合成繊維において、ポリオレフィン系樹脂及びポリアセタール樹脂からなる群から選ばれる一つ以上の樹脂が繊維表面の少なくとも一部を占めている。好ましくは、ポリオレフィン系樹脂及びポリアセタール樹脂からなる群から選ばれる一つ以上の樹脂が繊維表面の全部を占めている。
【0019】
上記ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体及びエチレン−アクリル酸メチル共重合体などが挙げられる。
【0020】
上記ポリアセタール樹脂とは、ポリオキシメチレンとも呼ばれ、オキシメチレン単位を主たる繰り返し単位とするポリマーである。ポリアセタール樹脂(以下、POMともいう。)は、POMホモポリマーであってもよく、POMコポリマーであってもよい。上記POMホモポリマーは、通常、ホルムアルデヒド又はトリオキサンを主原料として、重合反応によって得られる。上記POMコポリマーは、通常、主としてオキシメチレン単位からなり、主鎖中に2〜8個の隣接する炭素原子を有し、置換基を有してよいオキシアルキレン単位、好ましくはCH2CH2Oをエチレンオキサイド換算値として10質量%以下、より好ましくは0.5〜8質量%含有する。上記POMコポリマーにおいて、オキシアルキレン基に結合し得る置換基は、例えば、アルキル基、フェニル基、又は他の有機基である。また、上記ポリアセタール樹脂は、オキシメチレン単位以外の他の構成単位を含有するコポリマー、即ち、ブロックコポリマー、ターポリマー、及び架橋ポリマーのいずれであってもよい。
【0021】
上記自己治癒用合成繊維は、ポリオレフィン系樹脂及びポリアセタール樹脂からなる群から選ばれる一つ以上の樹脂で構成される単一繊維であってもよく、ポリオレフィン系樹脂及びポリアセタール樹脂からなる群から選ばれる一つ以上の樹脂を鞘成分とする複合繊維であってもよい。上記自己治癒用合成繊維が複合繊維である場合、芯成分は熱可塑性樹脂で構成されていればよく、特に限定されない。耐アルカリ性、耐酸性などの耐薬品性に優れており、セメント硬化体内での品質劣化が少なく、比重も軽く製品質量を軽量化できる観点から、芯成分は、ポリオレフィン系樹脂で構成されることが好ましく、ポリプロピレン及びポリメチルペンテンからなる群から選ばれる一種以上であることがより好ましい。
【0022】
上記自己治癒用合成繊維は、繊維表面に極性基を有することが好ましい。極性基を有することにより、セメント硬化体内のカルシウムイオンを積極的に析出させることが可能となり、セメント硬化体のひび割れの自己治癒を促進する効果が高くなるからである。上記極性基は、特に限定されないが、比較的極性や耐熱性が高く、簡易的に導入できる観点から、水酸基及びカルボキシル基からなる群から選ばれる一種以上であることが好ましい。上記自己治癒用合成繊維は、水酸基を含有するモノマーを共重合したオレフィン系樹脂又はポリアセタール樹脂で構成されることが好ましい。水酸基を含有するモノマーを共重合したオレフィン系樹脂としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体などが挙げられる。水酸基を含有するポリマーを繊維表面に有する合成繊維は、繊維周囲への炭酸カルシウムなどの自己治癒物質が析出しやすい傾向にあり、好ましい。
【0023】
上記自己治癒用合成繊維は、カルボキシル基を含有するモノマーを共重合したポリオレフィン系樹脂が繊維表面に配置されていることが好ましく、鞘成分にカルボキシル基を含有するモノマーを共重合したポリオレフィン系樹脂を含む合成繊維であることが好ましい。繊維表面に極性基を付与することができ、セメント硬化体のひび割れの自己治癒を促進する効果が高くなる。上記カルボキシル基を含有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸などが挙げられる。また、共重合するポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体などが挙げられる。セメント硬化体に混入させた際セメント硬化体の補強材としても使用可能であるという観点から、ポリプロピレンが好ましい。共重合の方法は特に限定されず、ポリマー重合段階で、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合などの方法で共重合することが挙げられる。共重合の方法は、好ましくは、グラフト共重合である。カルボキシル基を含有するポリマーを繊維表面に有する合成繊維は、繊維周囲への炭酸カルシウムなどの自己治癒物質が析出し易い傾向にあり、好ましい。
【0024】
上記自己治癒用合成繊維は、繊維表面を親水化処理することが好ましい。親水化処理により繊維表面に極性基を付与することができ、セメント硬化体のひび割れの自己治癒を促進する効果が高くなる。上記親水化処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、フッ素ガス処理、オゾン処理、スルホン化処理などが挙げられる。コロナ放電処理を実施する場合、特に限定されないが、コロナ放電処理における1回当たりの放電量は、50W/m2/min以上であることが好ましく、総放電量は100〜5000W/m2/minであることが好ましい。より好ましい総放電量は、250〜5000W/m2/minである。また、プラズマ処理は、特に限定されないが、常圧プラズマ処理であることが好ましく、電圧50〜250kV、周波数500〜3000ppsで処理するとよい。常圧プラズマ処理であると、低電圧で処理できるので、繊維の劣化が少なく都合がよい。また、フッ素ガス処理は、特に限定されないが、例えば、フッ素ガスと酸素ガスを含む混合ガス又はフッ素ガスと亜硫酸ガスを含む混合ガスを用いて行うことができる。また、オゾン処理は、特に限定されないが、例えば、オゾン水溶液、オゾンガス処理などにより行うことができる。また、スルホン化処理は、特に限定されないが、例えば、無水硫酸処理、発煙硫酸処理、亜硫酸ガス処理、熱濃硫酸処理などにより行うことができる。
【0025】
上記自己治癒用合成繊維は、繊維表面に界面活性剤を付着させることが好ましい。界面活性剤を付着することにより、繊維表面に極性基を付与することができ、セメント硬化体のひび割れの自己治癒を促進する効果が高くなる。上記界面活性剤としては、極性基を有するものであればよく、特に限定されない。例えば、クチルアルキルホスフェート、デシルアルキルホスフェート、ラウリルアルキルホスフェート、トリデシルアルキルホスフェート、ミリスチルアルキルホスフェート、セチルアルキルホスフェート、ステアリルアルキルホスフェートなどのアルキルホスフェート及びこれらのナトリウム或いはカリウムなどの金属塩などのリン酸エステル系界面活性剤などが挙げられる。
【0026】
上記自己治癒用合成繊維は、無機物粒子を含むことが好ましく、上記無機物粒子は繊維表面に存在することがより好ましい。セメント硬化体のひび割れの自己治癒を促進する効果が高くなる。上記無機物粒子としては、例えば、ケイ素、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物、炭酸塩若しくは硫酸塩などが挙げられる。これらの無機物粒子は、芯鞘型複合繊維の場合は、鞘成分を構成する熱可塑性樹脂に混合するとよい。上記無機物粒子の配合量は、鞘成分100質量%に対し、0.1〜40質量%の範囲が好ましく、より好ましくは1〜20質量%の範囲である。上記無機物粒子は、平均粒子径が0.1〜10μmであることが好ましい。より好ましくは0.2〜5μmであり、さらに好ましくは0.3〜2μmである。無機物粒子の平均粒子径は、粒度分布測定装置(商品名「SALD−2000」、株式会社島津製作所製)で測定したものである。
【0027】
上記自己治癒用合成繊維は、特に限定されるものではないが、繊度が0.1〜3000dtexであることが好ましい。より好ましくは、0.5〜20dtexである。さらに好ましくは、0.9〜15dtexであり、さらにより好ましくは、1.5〜7dtexである。繊度がこの範囲内であると、セメント硬化体のひび割れの自己治癒を促進する効果が高くなる。
【0028】
上記自己治癒用合成繊維は、特に限定されるものではないが、繊維強度が、3.5cN/dtex以上であることが好ましい。より好ましくは、5cN/dtex以上である。繊維強度が3.5cN/dtex以上であると、セメント硬化体に応力がかかった場合でも、セメント硬化体を補強し、大きなひび割れの発生を低減することができる。
【0029】
上記自己治癒用合成繊維は、特に限定されるものではないが、繊維ヤング率が、2000MPa以上であることが好ましい。より好ましくは、3000MPa以上である。繊維ヤング率が2000MPa以上であると、セメント硬化体に応力がかかった場合でも、セメント硬化体を補強し、大きなひび割れの発生を低減することができる。
【0030】
本発明の自己治癒用合成繊維における自己治癒の力学的特性に対する影響を調べる因子として、セメント硬化体の養生後に引張載荷試験を行う第一載荷試験が用いられる。これにより、自己治癒用合成繊維のセメント硬化体のひび割れにおける性状を確認することができる。上記自己治癒用合成繊維における繊維強度及び繊維ヤング率は、セメント硬化体の引張強度における擬似ひずみ硬化挙動に影響を与える因子である。擬似ひずみ硬化とは、一軸引張応力下において、初期ひび割れ発生後も引張応力が上昇する現象をいう。この擬似ひずみ硬化挙動を示すセメント硬化体は、細かいひび割れが発生する傾向にあり、これにより自己治癒によるひび割れが閉塞する効果が向上すると考えられる。上記自己治癒用合成繊維のうち、所定の非円形断面を有し、繊維強度及び/又は繊維ヤング率が上記範囲を満たす繊維は、擬似ひずみ硬化挙動を示し、特に繊維表面に極性基を付与したポリオレフィン樹脂を配置するとより効果的である。
【0031】
第一載荷試験後の養生28日目以降に上記と同様の引張載荷試験(以下、第二載荷試験という。)を行うことで、自己治癒による力学的特性への影響について調べることができる。下記式により、第一載荷試験時の最大引張強度δ’と、第二載荷試験時の最大引張強度δとの比を求めることにより、自己治癒後の力学的特性が確認できる。
強度比=(δ'/δ)×100
上記強度比が大きいと、自己治癒物質析出により繊維マトリックスの界面結合強度の増加し、自己治癒用合成繊維の架橋効果が増大していると考えられる。上記自己治癒用合成繊維のうち、所定の非円形断面を有し、繊維強度及び/又は繊維ヤング率が上記範囲を満たし、且つ繊維表面に極性基を有する繊維は、上記強度比が高く、好ましい。
【0032】
上記自己治癒用合成繊維は、以下の手順で製造することができる。まず、繊維を構成する樹脂を、所定の非円形形状になるような単一型或いは複合型ノズルを用いて、樹脂が溶融する温度、例えば、ポリプロピレンであれば紡糸温度200〜350℃で溶融紡糸し、引取速度100〜1500m/minで引き取り、紡糸フィラメント(未延伸糸)を得ることができる。また、上記において、必要に応じ、鞘成分となる樹脂に無機物粒子などを混合する。
【0033】
次いで、紡糸フィラメントは、必要に応じて延伸される。延伸温度は樹脂の種類によって適宜設定される。例えば、ポリプロピレンである場合、延伸温度は80〜160℃、延伸倍率1.5〜8倍の条件で延伸することが好ましい。より好ましい延伸温度は、110〜155℃である。より好ましい延伸倍率は、3〜6倍である。延伸方法は、特に限定されず、例えば、高温の熱水などの高温の液体で加熱しながら延伸を行う湿式延伸、高温の気体中又は高温の金属ロールなどで加熱しながら延伸を行う乾式延伸、100℃以上の水蒸気を常圧若しくは加圧状態にして繊維を加熱しながら延伸を行う水蒸気延伸などの公知の方法で延伸処理を行うことができる。延伸工程は、1段階延伸、または2以上の複数の段階に分けて行う、いわゆる多段延伸処理のいずれで行ってもよい。得られた延伸フィラメントは、必要に応じて界面活性剤などの繊維処理剤が付与され、必要があれば捲縮付与処理が施され、所定の繊維長に切断する。
【0034】
セメント材料に上記自己治癒用合成繊維を添加して硬化させたセメント硬化体は、ひび割れの自己治癒効果が高い。上記自己治癒用合成繊維は、セメント硬化体に対して、0.01〜5.0体積%含ませることが好ましく、より好ましくは0.05〜3.5体積%である。上記自己治癒用合成繊維とセメントを含むセメント硬化体は、ひび割れが発生した場合、ひび割れ部分に水分を間欠的又は連続的に付与すると、高い効率でひび割れが自己治癒され、セメント硬化体のひび割れが補修される。例えば、上記自己治癒用合成繊維とセメントを含むセメント硬化体において、降雨などによりひび割れ部分に水分が付与されると、高い効率でひび割れが自己治癒され、セメント硬化体のひび割れが補修される。
【0035】
本発明の自己治癒用合成繊維を用いると、自己治癒物質の析出量が多くなる傾向にある。自己治癒物質の析出量は、自己治癒物質平均付着幅によって特定することができる。自己治癒物質平均付着幅は、所定の非円形断面にすること、及び/又は極性基を有するポリオレフィン樹脂、ポリアセタール樹脂、又はこれらの共重合樹脂を用いることにより、増加する傾向にある。自己治癒物質平均付着幅は、40μm以上であることが好ましい。自己治癒物質平均付着幅は、後述する方法で測定することができる。
【0036】
本発明の自己治癒用合成繊維の自己治癒における効果の確認は、自己治癒用合成繊維を含むセメント硬化体にひび割れを発生させ、養生する期間中、セメント硬化体全体でのひび割れ性状をマイクロスコープで撮影し、最大ひび割れ幅の計測を行うことにより、確認できる。そのひび割れについて、3日後、14日後、28日後など経時的に観察される。上記自己治癒用合成繊維を含むセメント硬化体において、ひび割れに架橋する繊維周りへの自己治癒物質の付着が確認され、日数が経過するに従いひび割れが閉塞していき、14日経過後にはひび割れがほぼ閉塞する。これは、所定の非円形断面を有する繊維を用いることにより、ひび割れが比較的細かく形成されるとともに、繊維表面での自己治癒物質の析出量が多いため、閉塞し易いものと考えられる。
【0037】
本発明の自己治癒用合成繊維の自己治癒における効果は、硬化体破断面観察を行うことでも確認できる。上記第二載荷試験後のセメント硬化体破断面を、マイクロスコープにより観察し、3D計測ソフトを用いて破断面の凹凸を計測して凹凸性状を確認できる。凹凸性状が複雑であるほど、繊維とセメントとの親和性が高く、細かなひび割れが形成されているといえる。一方、凹凸性状が平滑であるほど、繊維が千切れるか、抜けるかして脆性破壊しているといえる。本発明では、所定の非円形断面を有する自己治癒用合成繊維を用いることにより、凹凸性状が複雑となる。特に、繊維強度及び/又は繊維ヤング率が上記範囲を満たす繊維及び/又は繊維表面に極性基を付与したポリオレフィン繊維は、凹凸性状がより複雑化する傾向にある。
【実施例】
【0038】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0039】
(実施例1)
芯成分としてポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製、商品名「SA03」)を用い、鞘成分としてポリアセタール樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、商品名「ユピタール」)を用いた。芯鞘比が芯:鞘=8:2になるようにした。図6Aに示すような四葉型のノズル孔形状を有する複合紡糸ノズルを用いて、紡糸温度200℃にて溶融押出し、引取速度541m/分で引き取り、繊度7.8dtexの紡糸フィラメント(未延伸糸)を作製した。得られた紡糸フィラメントは、155℃で、4.4倍に乾式延伸した。得られた延伸フィラメントに界面活性剤として炭素数12のアルキルリン酸エステルカリウム塩を1.0質量%付着させ、繊維長6mmに切断し、繊度2.2dtexの繊維(以下において、「C‐(PP/POM)」と記す。)を得た。
【0040】
得られた繊維は、図7に示しているように、断面形状が4つの凸部(突起)を有する四葉型であった。
【0041】
(実施例2)
鞘成分としてエチレン‐ビニルアルコール共重合体(EVOH樹脂、日本合成化学株式会社製、商品名「ソアノール」)を用いた以外は、実施例1と同様にして、繊維長6mm、繊度2.2dtexの繊維(以下において、「C‐(PP/EVOH)」と記す。)を得た。
【0042】
得られた繊維は、図8に示しているように、断面形状が4つの凸部(突起)を有する4葉型であった。
【0043】
(実施例3)
ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製、商品名「SA01A」)を、四葉型のノズル孔形状を有する紡糸ノズルを用いて、紡糸温度270℃にて溶融押出し、引取速度485m/分で引き取り、繊度7.8dtexの紡糸フィラメント(未延伸糸)を作製した。得られた紡糸フィラメントは、155℃で、4.4倍に乾式延伸した。得られた延伸フィラメントを、コロナ放電処理機に通して、0.5kW/m2/minの放電量でコロナ放電処理して親水化し、次いで、繊維仕上げ剤(界面活性剤)として炭素数12のアルキルリン酸エステルカリウム塩を1.0質量%付着させ、繊維長6mmに切断し、繊度2.2dtexの繊維(以下において、「C‐PPコロナ」と記す。)を得た。
【0044】
得られた繊維は、図9に示しているように、断面形状が4つの凸部(突起)を有する四葉型であった。
【0045】
(実施例4)
鞘成分にポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製、商品名「SA01A」)を用い、鞘成分樹脂に炭酸カルシウム粒子(平均粒子径0.57μm)を6質量%混合した以外は、実施例1と同様にして、繊維長6mm、繊度2.2dtexの繊維(以下において、「C‐PP‐Ca」と記す。)を得た。
【0046】
得られた繊維は、図10に示しているように、断面形状が4つの凸部(突起)を有する四葉型であった。
【0047】
(実施例5)
図6Bに示すような五角中空型のノズル孔形状を有する紡糸ノズルを用いた以外は、実施例3と同様にして、繊維長6mm、繊度2.2dtexの繊維(以下において、「五角中空PPコロナ」と記す。)を得た。
【0048】
得られた繊維は、図11に示しているように、繊維断面形状が5つの凸部(突起)を有する五角中空型であった。
【0049】
(比較例1)
円型のノズル孔形状を有する紡糸ノズルを用いた以外は、実施例3と同様の方法で、円型断面を有し、繊維長6mm、繊度2.2dtexの繊維(以下において、「PPコロナ」と記す。)を得た。
【0050】
実施例1〜5及び比較例1の繊維の繊維物性を下記のように測定し、その結果を下記表1に示した。また、実施例1〜5及び比較例1の繊維のセメント硬化体のひび割れの自己治癒に対する効果を下記のマイクロスコープ観察及び透水試験により評価した。なお、表1には、繊維断面における突起の形状に関するデータも示した。
【0051】
(繊維物性)
<繊維強度、伸度>
JIS L 1015に準じ、引張試験機を用いて、試料の掴み間隔を20mmとし、繊維が切断したときの荷重値及び伸びを測定し、それぞれを繊維強度及び伸度とした。
<ヤング率>
上記方法で引張試験を行って、荷重−伸長曲線を描き、JIS L 1015に準じて、第1降伏点までの最大傾き量(初期引張抵抗度)を求め、初期引張抵抗度から見かけヤング率を求めた。
<繊維周長>
繊維を束ねて切断し、その繊維断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で倍率1000倍に拡大撮影し、得た画像データを、東洋紡績株式会社画像事業プロジェクト製の画像解析ソフト(商品名「Image Analyzer V20」)を用いて、画像処理を行い、繊維外周方向を約30点に分割し、2点間距離の足し合わせにより算出した。
【0052】
(自己治癒効果)
<使用材料>
試験体の作製には、以下のような材料を、W/Bが45%、S/Bが45%、SF/Bが15%、SP/Bが0.9%になるように配合し、繊維を2体積%なるように添加したモルタルを用いた。
セメント:早強ポルトランドセメント(宇部三菱セメント社製、比重3.14g/cm3、比表面積4450cm3/g)
細骨材:珪砂5号(ショーボンド建設社製、比重2.61g/cm3、平均粒径180μm)
混和材:シリカフューム(エルケムジャパン社製、比重2.2g/cm3、平均粒径0.15μm);高性能AE減水剤(BASFポゾリス社製、比重1.05g/cm3、主成分ポリカルボン酸エーテル系化合物)
【0053】
<第一載荷試験>
上記のモルタルを用い、長さ85mm、幅85mm、厚さ25mmの試験体(セメント硬化体)を作製した。図1に示すように、試験体1には4本のネジ鉄筋2(M6)を埋設した。平行するネジ鉄筋2の間の距離Dは40mmとした。打設後7日間、20℃の養生槽内で水中養成した(以下において、第一養生と記す。)。第一養生の後、万能試験機を用いて試験体1のネジ鉄筋2を引張る引張載荷試験(以下において、第一載荷試験と記す。)を行うことで、試験体1に300μm程度の幅のひび割れを導入した。第一載荷試験の引張の方向は図1にて矢印で示した。ひび割れ導入後、試験体1の両側に金属プレート3を定着用ナット4で固定し、ひび割れ幅を保持した試験体10を得た。次いで、試験体10を再度20℃の水中で4週間(28日間)水中養生を行った(以下において、第二養生と記す)。第二養生期間中に自己治癒が進行していた。
【0054】
<第二載荷試験>
第二養生28日目以降に、第一載荷試験と同じ方法で第二載荷試験を行った。なお、各試験体において、第一載荷試験及び第二載荷試験における応力と変異の関係を図3に示した。図3A〜Fは、それぞれ、実施例1〜5、比較例1のデータを示している。
【0055】
<マイクロスコープ観察>
マイクロスコープを用いて、自己治癒物質の付着状況を観察することにより、自己治癒の進展を確認した。ひび割れ導入時(第二養生0日目)に、各試験体におけるひび割れをマイクロスコープで撮影し、最大ひび割れ幅の計測を行った。第二養生3日目、14日目及び28日目にもそれぞれ同様の観察を行い、ひび割れ表面部分への自己治癒物質の付着状況を確認した。マイクロスコープ観察結果(50倍)を図4A〜Bに示した。
【0056】
<透水試験>
図2に示すようにひび割れ導入した試験体10を配置した小型透水試験機20を用いて透水試験を行い、上部ピペット11の単位水量の損失時間を記録し、透水係数を算出した。図2において、矢印は純水の流れ方向を示している。透水試験は、第二養生0日目、3日目、14日目及び28日目に行い、透水係数の変化を調べ、水密性能を評価した。透水試験は、n=3で行った。第二養生の日数と平均透水係数の減少割合の関係を図5に示した。
【0057】
<自己治癒物質平均付着幅>
試験体は、上記のモルタルを用い、40×40×160mmの角柱試験体を準備し、水中養生し、材齢7日において曲げ載荷によって破断したものを用いた。試験体片の浸漬開始から7日において、各試験体の破断面に現れている繊維を観察し、繊維周りへの自己治癒物質平均付着幅を以下の式で算出した。
自己治癒物質平均付着幅=(治癒後平均繊維直径−公称直径)/2
【0058】
<破断面観察>
上記第二載荷試験後の試験体の破断面を、マイクロスコープにより観察し、3D計測ソフトを用いて破断面の凹凸を計測した。凹凸の計測は、試験体の鉄筋の影響の少ない25×35mmの範囲で試験体の短辺方向に向かって5カ所行った。
【0059】
【表1】
【0060】
図3から、各々の繊維を含む試験体において、最大引張強度は1.5〜2.5MPaであることが分かった。また、最大引張強度到達後に、実施例3(図3C)、実施例4(図3D)及び実施例5(図3E)の繊維を含む試験体では擬似ひずみ硬化挙動が見られた。また、第一載荷試験と第二載荷試験との強度比を見ると、実施例3の繊維を用いた場合最大引張強度が第一載荷試験と第二載荷試験で同程度であることが確認できた。
【0061】
図4A及び図4Bのマイクロスコープ写真から、各々の繊維を含む試験体において、ひび割れ部分に、自己治癒物質が析出し、ひび割れが閉塞することが確認できた。特に、実施例2、実施例3及び実施例4の繊維を用いた試験体では、3日目の時点で、ひび割れ表面がほぼ閉塞することが確認できた。実施例1及び実施例5の繊維を用いた試験体でも、14日目の段階で、ひび割れ表面がほぼ閉塞することが確認できた。
【0062】
図5から、各々の繊維を含む試験体において、経時変化に伴い透水係数が減少していることが分かった。特に、実施例1〜5の繊維を用いた試験体では、比較例1の繊維を用いた試験体より、透水係数がより低減していた。実施例の繊維の方が、比較例の繊維より、セメント硬化体のひび割れの自己治癒を促進する効果が高いことが分かった。
【0063】
破断面観察の結果、実施例3は破断面の凹凸性状が複雑であった。このことから、細かなひび割れであったことが確認できた。実施例1は繊維強度及びヤング率が低かったからか、破断面の凹凸性状は比較的平滑であった。
【0064】
(実施例6)
ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製、商品名「SA01A」)を図6Aに示すような四葉型のノズル孔形状を有する紡糸ノズルを用いて、紡糸温度270℃にて溶融押出し、引取速度839m/分で引き取り、繊度4dtexの紡糸フィラメント(未延伸糸)を作製した。得られた紡糸フィラメントは、150℃で、3.6倍に乾式延伸した。得られた延伸フィラメントに、繊維仕上げ剤(界面活性剤)として実施例1で用いたものよりもセメントとの親和性が高い別のリン酸エステル系界面活性剤を1.0質量%付着させ、繊維長6mmに切断し、繊度1.1dtexの繊維を得た。得られた繊維は、断面形状が4つの凸部(突起)を有する四葉型であった。
【0065】
(実施例7)
引取速度を428m/分にし、紡糸フィラメント(未延伸糸)の繊度を7.8dtexにし、延伸倍率を4.4倍にした以外は、実施例6と同様にして、繊維長6mm、繊度2.2dtexの繊維を得た。得られた繊維は、断面形状が4つの凸部(突起)を有する四葉型であった。
【0066】
(実施例8)
繊維長を10mmになるように切断した以外は、実施例7と同様にして繊維を得た。得られた繊維は、断面形状が4つの凸部(突起)を有する四葉型であった。
【0067】
(実施例9)
引取速度を364m/分とし、紡糸フィラメント(未延伸糸)の繊度を10.4dtexとし、延伸倍率を4.4倍とした以外は、実施例6と同様にして、繊維長6mm、繊度3.3dtexの繊維を得た。得られた繊維は、断面形状が4つの凸部(突起)を有する四葉型であった。
【0068】
(実施例10)
図6Cに示すような八葉型のノズル孔形状を有する紡糸ノズルを用い、引取速度を857m/分とし、紡糸フィラメント(未延伸糸)の繊度を7.8dtexとし、延伸倍率を4.4倍とした以外は、実施例6と同様にして、繊維長6mm、繊度2.2dtexの繊維を得た。得られた繊維は、図12に示しているように、繊維断面形状が8つの凸部(突起)を有する八葉型であった。
【0069】
(実施例11)
図6Dに示すようなUFO型のノズル孔形状を有する紡糸ノズルを用い、引取速度を830m/分とし、紡糸フィラメント(未延伸糸)の繊度を7.8dtexとし、延伸倍率を4.4倍とした以外は、実施例6と同様にして、繊維長6mm、繊度2.2dtexの繊維を得た。得られた繊維は、図13に示しているように、繊維断面形状が2つの凸部(突起)を有するUFO型(トライパス型)であった。
【0070】
(実施例12)
図6Eに示すようなH型のノズル孔形状を有する紡糸ノズルを用い、引取速度を1344m/分とし、紡糸フィラメント(未延伸糸)の繊度を7.8dtexとし、延伸倍率を4.4倍とした以外は、実施例6と同様にして、繊維長6mm、繊度2.2dtexの繊維を得た。得られた繊維は、図14に示しているように、繊維断面形状が4つの凸部(突起)を有するH型であった。
【0071】
(実施例13)
繊維仕上げ剤(界面活性剤)として実施例1で用いたものと同様のものを用いた以外は、実施例7と同様にして、繊維長6mm、繊度2.2dtexの繊維を得た。得られた繊維は、断面形状が4つの凸部(突起)を有する四葉型であった。
【0072】
(実施例14)
芯成分として、ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製、商品名「SA01A」)を用いた。鞘成分として、ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製、商品名「SA01A」)と、マレイン酸変性ポリプロピレン(三菱化学株式会社製、商品名「モディック」、品番「P908」、酸価度:12.8)と、マレイン酸変性ポリプロピレン(三菱化学株式会社製、商品名「モディック」、品番「P555」、酸価度:0.4)を、質量比が61.2:6.8:32になるように混合した樹脂混合物を用いた。図6Aに示すような四葉型のノズル孔形状を有する複合紡糸ノズルを用いて、芯鞘比が8:2になるようし、芯成分は紡糸温度270℃で、鞘成分は紡糸温度270℃で溶融紡糸し、引取速度485m/minで引き取り、繊度7.8dtexの紡糸フィラメント(未延伸糸)を作製した。得られた紡糸フィラメントは、155℃で、4倍に乾式延伸した。得られた延伸フィラメントに繊維処理剤として、実施例1で用いたものよりもセメントとの親和性が高い別のリン酸エステル系界面活性剤を1.0質量%付着させ、繊維長6mmに切断し、繊度2.2dtexの繊維を得た。得られた繊維は、断面形状が4つの凸部(突起)を有する四葉型であった。
【0073】
(参考例1)
参考例1としてビニロン繊維(ユニチカ社製、商品名「22A」、繊度2.2dtex、繊維長6mm)を用いた。
【0074】
実施例6〜13及び参考例1の繊維の繊維物性を上記のように測定・観察し、その結果を下記表2及び表3に示した。なお、表2及び表3には、繊維断面における突起の形状に関するデータも示した。
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
実施例6〜13及び参考例1の繊維を用い、上述したとおり、第一載荷試験を行い、その結果を図15に示した。図15のA〜Iは、それぞれ、実施例6〜13、参考例1のデータを示している。図15から、実施例の繊維を含む全ての試験体において、最大引張強度は1.5〜2.5MPaであることが分かった。
【0078】
実施例6〜14の繊維のセメント硬化体のひび割れの自己治癒に対する効果を第二養生期間中の自己治癒物質の付着状況を上記のようにマイクロスコープを用いて観察することにより評価した。その結果を図17図19に示した。
【0079】
図17図19のマイクロスコープ写真から、実施例6〜14の繊維を含む試験体において、ひび割れ部分に、自己治癒物質が析出し、ひび割れが閉塞することが確認できた。特に、実施例6〜11、13及び14の繊維を用いた試験体では、3日目の時点で、ひび割れ表面がほぼ閉塞することが確認できた。
【0080】
実施例6〜14及び参考例1の繊維のセメント硬化体のひび割れの自己治癒に対する効果を上記のように透水試験により評価した。透水試験は、第二養生0日目、3日目、14日目、28日目及び90日目に行い、第二養生の日数と平均透水係数の減少割合の関係を図20に示した。
【0081】
図20から、実施例6〜14の繊維を含む試験体において、経時変化に伴い透水係数が減少していることが分かった。特に、実施例6、7、9、10、13及び14の繊維を用いた試験体では、実施例8、11、12及び参考例1の繊維を用いた試験体より、透水係数がより低減していた。アスペクト比が250〜500の範囲内の実施例の繊維の方が、セメント硬化体のひび割れの自己治癒を促進する効果が高いことが分かった。また、突起が繊維の中心付近から放射状に形成されている実施例の繊維の方が、セメント硬化体のひび割れの自己治癒を促進する効果が高いことが分かった。
【0082】
(実施例15)
ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製、商品名「SA01A」)を、四葉型のノズル孔形状を有する紡糸ノズルを用いて、紡糸温度270℃にて溶融押出し、引取速度123m/分で引き取り、繊度50dtexの紡糸フィラメント(未延伸糸)を作製した。得られた紡糸フィラメントは、155℃で、5倍に乾式延伸した。得られた延伸フィラメントを、コロナ放電処理機に通して、0.5kW/m2/minの放電量でコロナ放電処理して親水化し、次いで、繊維仕上げ剤(界面活性剤)として実施例1で用いたものよりもセメントとの親和性が高い別のリン酸エステル系界面活性剤を1.0質量%付着させ、繊維長6mmに切断し、繊度10.5dtexの繊維を得た。得られた繊維は、断面形状が4つの凸部(突起)を有する四葉型であった。繊維周長は、214.7μmであった。
【0083】
(実施例16)
繊維長を12mmに切断した以外は、実施例15と同様にして、繊度10.5dtexの繊維を得た。得られた繊維は、断面形状が4つの凸部(突起)を有する四葉型であった。
【0084】
(実施例17)
芯成分として、ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製、商品名「SA03」)を用いた。鞘成分として、ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製、商品名「SA03」)と、マレイン酸変性ポリプロピレン(三菱化学株式会社製、商品名「モディック」、品番「P908」、酸価度:12.8)を、質量比が68.8:31.2になるように混合した樹脂混合物を用いた。図6Aに示すような四葉型のノズル孔形状を有する紡糸ノズルを用いて、芯鞘比が8:2になるようし、芯成分は紡糸温度230℃で、鞘成分は紡糸温度230℃で溶融紡糸し、引取速度344m/minで引き取り、繊度が11dtexの紡糸フィラメント(未延伸糸)を作製した。得られた紡糸フィラメントは、155℃で、5.3倍に乾式延伸した。得られた延伸フィラメントに繊維処理剤として、実施例1で用いたものよりもセメントとの親和性が高い別のリン酸エステル系界面活性剤を1.0質量%付着させ、繊維長6mmに切断し、繊度2.2dtexの繊維を得た。得られた繊維は、断面形状が4つの凸部(突起)を有する四葉型であった。繊維周長は、101.8μmであった。
【0085】
実施例1〜17の繊維の繊度及び繊維長に基づいてアスペクト比を算出し、その結果を下記表4及び表5に示した。表4及び表5には、繊度、繊維径及び繊維長のデータも併せて示した。
【0086】
【表4】
【0087】
【表5】
【0088】
実施例の繊維は、セメント硬化体のひび割れを自己治癒しており、アスペクト比が150〜600の範囲であった。
【0089】
実施例14〜17の繊維を用い、上述したとおり、第一載荷試験を行い、その結果を図21に示した。図21A図21Dは、それぞれ、実施例14〜17のデータを示している。図21から、実施例14、16〜17の繊維を含む全ての試験体において、最大引張強度は1.5〜2.5MPaであることが分かった。実施例15の方は、他の実施例に対し、最大引張強度が低かった。アスペクト比が250〜500の範囲内の実施例の繊維の方が、セメント硬化体にひび割れが形成されても微細なひび割れにすることができることが確認できた。
【0090】
実施例15〜17の繊維のセメント硬化体のひび割れの自己治癒に対する効果を上記のように透水試験により評価した。透水試験は、実施例15及び実施例16の繊維を用いた場合は、第二養生0日目、3日目及び14日目に行い、実施例17の繊維を用いた場合は、第二養生0日目、3日目、14日目及び28日目に行った。第二養生の日数と平均透水係数の減少割合の関係を図22に示した。
【0091】
図22から、実施例15〜17の繊維を含む試験体において、経時変化に伴い透水係数が減少していることが分かり、セメント硬化体のひび割れの自己治癒されていることが確認できた。
【0092】
実施例15〜17の繊維のセメント硬化体のひび割れの自己治癒に対する効果を第二養生の0、3、7、14、28日間の自己治癒物質の付着状況を上記のようにマイクロスコープを用いて観察することにより評価した。
【0093】
マイクロスコープにより観察した結果、第二養生7日目において、実施例15〜17の繊維を含む試験体について、ひび割れ部分に自己治癒物質が析出し、ひび割れが閉塞することが確認できた。
【0094】
本発明のひび割れ自己治癒用合成繊維について、降雨など乾湿状態が繰り返される屋外環境を考慮し、乾湿が繰り返す環境下(水分が間欠的に付与される環境下)におけるセメント硬化体のひび割れ自己治癒性状を確認するため、以下の乾湿繰り返し試験を行い、マイクロスコープ観察によって評価した。
【0095】
<乾湿繰り返し試験>
まず、実施例3のひび割れ自己治癒用合成繊維を用いて、上述した方法と同様の方法でモルタルの試験体(セメント硬化体)を作製した。該試験体を用い、上述した方法と同様の方法でひび割れ幅(20〜150μm)を保持した試験体を得た。次に、乾燥状態として40℃のオーブンで42時間放置し、湿潤状態として20℃の水中で6時間浸漬を行い、これを乾湿繰り返しの1サイクルとした。これを7サイクル(14日間に相当)まで継続して行った。7サイクル後の試験体のひび割れ部分をマイクロスコープで観察した。
【0096】
実施例3のひび割れ自己治癒用合成繊維を含有する試験体(セメント硬化体)は、ひび割れ部分に自己治癒物質が析出し、ひび割れ幅が50μm程度までのひび割れは閉塞することが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明のセメント硬化体のひび割れ自己治癒用合成繊維は、セメント硬化体のひび割れの自己治癒を促進する効果が高いので、セメントに混合する材料として用いることができる。
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