(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263345
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】燃焼除害装置
(51)【国際特許分類】
F23G 7/06 20060101AFI20180104BHJP
【FI】
F23G7/06 101D
F23G7/06ZAB
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-169879(P2013-169879)
(22)【出願日】2013年8月19日
(65)【公開番号】特開2015-38412(P2015-38412A)
(43)【公開日】2015年2月26日
【審査請求日】2016年7月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231235
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】石塚 悟
(72)【発明者】
【氏名】折田 隆
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 和信
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 信昭
(72)【発明者】
【氏名】大石 祐輔
【審査官】
渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−218584(JP,A)
【文献】
特開2002−061821(JP,A)
【文献】
特開2001−355820(JP,A)
【文献】
特開2006−194544(JP,A)
【文献】
特表2007−519878(JP,A)
【文献】
特開2005−188775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス中に含まれる有害成分を燃焼火炎中で除害処理する燃焼除害装置において、内径がD0の排ガス導入管と、該排ガス導入管の下流側に設けられた内径がD1の第1処理筒と、該第1処理筒の下流側に設けられた内径がD2の第2処理筒と、該第2処理筒の下流側に設けられた内径がD3の第3処理筒とを備え、前記第1処理筒は、燃焼火炎を該第1処理筒の周壁から接線方向に噴出する周方向幅がW1の火炎噴出孔を備え、前記第2処理筒は、酸素含有ガスを該第2処理筒の周壁から接線方向に噴出する周方向幅がW2の酸素含有ガス噴出孔を備え、前記内径D1はD0+2W1より大きく、前記内径D2はD1+2W2より大きく設定されている燃焼除害装置。
【請求項2】
前記第3処理筒は、内径がD3の内筒と、該内筒の外周を覆う外筒との二重構造で形成され、前記外筒は、該外筒と前記内筒との間に形成された空気導入室に空気を導入する空気導入部を備えるとともに、前記内筒は、前記空気導入室に導入された空気を内筒内に噴出する多数の空気噴出孔を備え、前記内径D3が前記内径D2以上に設定されている請求項1記載の燃焼除害装置。
【請求項3】
前記排ガス導入管は第1処理筒の軸線と一致する軸線を有し、前記排ガス導入管の下流側開口端は、第1処理筒における前記火炎噴出孔の上流側端と同一位置乃至火炎噴出孔の上流側端より下流側に突出している請求項1又は2記載の燃焼除害装置。
【請求項4】
前記第1処理筒と前記第2処理筒との間には、第1処理筒及び第2処理筒の軸線と一致する軸線を有し、第2処理筒の内径より小さな外径を有する円筒状の燃焼ガス導入筒が設けられ、該燃焼ガス導入筒の下流側開口端は、第2処理筒における前記酸素含有ガス噴出孔の上流側端と同一位置乃至酸素含有ガス噴出孔の上流側端より下流側に突出している請求項1乃至3のいずれか1項記載の燃焼除害装置。
【請求項5】
燃焼除害装置に導入される前記排ガスは、有害成分濃度を低くするために不活性ガスで希釈されている請求項1乃至4のいずれか1項記載の燃焼除害装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼除害装置に関し、詳しくは、半導体や液晶などの電子部品を製造する半導体製造工程から排気される排ガス中に含まれる燃焼爆発危険性や毒性危険性を有する成分、環境影響の大きい成分などの有害成分を燃焼火炎中で除害処理する燃焼除害装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品製造に使用されるガスをはじめとして、各種工業分野、医療分野で用いられるガスには、燃焼爆発危険性や毒性危険性を有するガス、環境影響の大きいガスなどが使用されており、また、各種ガスを使用中に反応したり、分解したりして発生する物質においても、燃焼爆発危険性や毒性危険性などを有することがあるため、これらのガスを使用する工程から排気される排ガスを大気に放出する前に、各種有害成分の除害処理を行う必要がある。排ガス中の有害成分を除害処理する手段とし、従来から、燃焼火炎中に排ガスを導入し、高温で反応させたり、分解させたりすることによって有害成分を除去することが行われている。近年は、燃焼火炎中に排ガスを導入して有害成分を除害処理する際に、燃焼火炎を燃焼筒内周面の接線方向に噴出させ、管状火炎を形成する方式が注目されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3358527号公報
【特許文献2】特許第4292926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、半導体製造工程から排気される排ガスは、装置から真空ポンプで吸引して抜き出されることが多いため、真空ポンプの軸シールに用いている窒素ガスなどの不活性ガスが排ガス中に混入したり、さらに、有害成分によっては、取り扱いや配管経路の安全性を確保するため、排ガスを不活性ガスで希釈することが多く行われている。このため、燃焼火炎中に導入される排ガス中の有害成分濃度が、不活性ガスで希釈されて低濃度になっているだけでなく、有害成分に対する全体のガス量が多いことから、火炎の安定性が失われることがあった。また、有害成分の種類によっては、火炎を形成するための酸素に加えて、有害成分と反応させるための酸素を必要とすることがあった。
【0005】
そこで本発明は、不活性ガスで希釈された排ガス中の有害成分を効率よく除害処理できるとともに、有害成分と反応させるための酸素の供給も効果的に行うことができる燃焼除害装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の燃焼除害装置は、排ガス中に含まれる有害成分を燃焼火炎中で除害処理する燃焼除害装置において、
内径がD0の排ガス導入管と、該排ガス導入管の下流側に設けられた内径がD1の第1処理筒と、該第1処理筒の下流側に設けられた内径がD2の第2処理筒と
、該第2処理筒の下流側に設けられた内径がD3の第3処理筒とを備え、前記第1処理筒は、燃焼火炎を該第1処理筒の周壁から接線方向に噴出する
周方向幅がW1の火炎噴出孔を備え、前記第2処理筒は、酸素含有ガスを該第2処理筒の周壁から接線方向に噴出する
周方向幅がW2の酸素含有ガス噴出孔を備え、
前記内径D1はD0+2W1より大きく、前記内径D2はD1+2W2より大きく設定されていることを特徴としている。
【0007】
さらに、本発明の燃焼除害装置は、
前記第3処理筒が、内径がD3の内筒と、該内筒の外周を覆う外筒との二重構造で形成され、前記外筒は、該外筒と前記内筒との間に形成された空気導入室に空気を導入する空気導入部を備えるとともに、前記内筒は、前記空気導入室に導入された空気を内筒内に噴出する多数の空気噴出孔を備え、前記内径D3が前記内径D2以上に設定されていることを特徴としている。
【0008】
また、
前記排ガス導入管は第1処理筒の軸線と一致する軸線を有し、
前記排ガス導入管の下流側開口端は、第1処理筒における前記火炎噴出孔の上流側端と同一位置乃至火炎噴出孔の上流側端より下流側に突出していることを特徴としている。
【0009】
さらに、前記第1処理筒と前記第2処理筒との間には、第1処理筒及び第2処理筒の軸線と一致する軸線を有し、第2処理筒の内径より小さな外径を有する円筒状の燃焼ガス導入筒が設けられ、該燃焼ガス導入筒の下流側開口端は、第2処理筒における前記酸素含有ガス噴出孔の上流側端と同一位置乃至酸素含有ガス噴出孔の上流側端より下流側に突出していることを特徴としている。
【0010】
加えて、燃焼除害装置に導入される前記排ガスは、有害成分濃度を低くするために不活性ガスで希釈されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の燃焼除害装置によれば、第1処理筒のガス流れ方向下流側に、第1処理筒の内径より大きな内径を有する第2処理筒を設け、該第2処理筒から酸素含有ガスを接線方向に噴出するようにしているので、第1処理筒で形成した管状火炎を乱すことなく酸素含有ガスを導入することができる。これにより、管状火炎による有害成分の加熱を確実に行えるとともに、反応に必要な酸素を、管状火炎を乱すことなく供給することができる。したがって、燃焼に寄与しない不活性ガスで希釈された排ガス中の有害成分を効率よく除害処理することができる。
【0012】
また、第2処理筒の下流側に、空気噴出孔を備えた内筒と空気導入部を備えた外筒とで形成した第3処理筒を設けることにより、有害成分の除害処理で固形物(粉末)が発生するような場合でも、温度が低下した固形物が装置内に付着、堆積することを防止でき、安定した除害処理を継続することができるとともに、導入した空気によって燃焼除害装置から排気される処理ガスの温度を下げることができる。さらに、排ガス導入筒や燃焼ガス導入筒を設けることにより、管状火炎の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の燃焼除害装置の一形態例を示す断面正面図である。
【
図2】第1処理筒の火炎噴出孔及び第2処理筒の酸素含有ガス噴出孔の状態を示す説明図である。
【
図4】実験例2で使用した実験装置の説明図である。
【
図6】実験例2における窒素と空気との相違を示す図である。
【
図8】実験例3におけるNF
3の分解性能を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本形態例に示す燃焼除害装置は、排ガス導入管10のガス流れ方向上流側から順に、第1処理筒11と、第2処理筒21と、第3処理筒31とを連設したものであって、排ガス導入管10からは、例えば、半導体製造工程から排気される有害成分を不活性ガスで希釈した排ガスが導入される。
【0015】
第1処理筒11は、偏平円筒状に形成されており、周壁には、
図2に示すように、処理筒内周面Aに対する噴出方向Bが処理筒内周面Aの接線方向に設定され、周方向幅がW1で長さがH1の複数の火炎噴出孔12が設けられている。第1処理筒11の内径D1は、排ガス導入管10の内径D0より大きく(D0<D1)設定されており、通常は、D0,D1,W1の関係が、D1>D0+2W1になるように設定される。また、第1処理筒11の長さL1は、火炎噴出孔12の長さH1に対して1.5〜2倍になるように設定される。さらに、火炎噴出孔12の周方向の幅W1は、長さH1に対して、火炎噴出孔12から噴出する火炎の流速が所望の流速になるように設定され、通常は、ガス流れ方向に長いスリット状に形成される。
【0016】
第1処理筒11に排ガスを導入する排ガス導入部には、第1処理筒11の軸線と一致する軸線を有し、第1処理筒11の内径D1より小さな外径d1を有する円筒状の排ガス導入筒13が設けられており、該排ガス導入筒13の下流側開口端13aは、第1処理筒11における前記火炎噴出孔12の上流側端12aと同一位置まで突出している。
【0017】
第2処理筒21は、第1処理筒11と同様な偏平円筒状に形成されており、周壁には、
図2に示すように、処理筒内周面Aに対する噴出方向Bが、前記火炎噴出孔12の噴出方向と同じ方向で、処理筒内周面Aの接線方向に設定され、周方向幅がW2で長さがH2の複数の酸素含有ガス噴出孔22が設けられている。第2処理筒21の内径D2は、第1処理筒11の内径D1より大きく(D1<D2)設定されており、通常は、D0,D1,W2の関係が、D2>D1+2W2になるように設定される。また、第2処理筒21の長さL2は、火炎噴出孔12の長さH1に対して1.5〜2倍になるように設定される。さらに、酸素含有ガス噴出孔22の周方向の幅W2は、長さH2に対して、酸素含有ガス噴出孔22から噴出する酸素含有ガスの流速が所望の流速になるように設定され、通常は、ガス流れ方向に長いスリット状に形成される。
【0018】
第1処理筒11と第2処理筒21との間には、第1処理筒11及び第2処理筒21の軸線と一致する軸線を有し、第2処理筒21の内径D2より小さな外径d2を有する円筒状の燃焼ガス導入筒23が設けられており、この燃焼ガス導入筒23の下流側開口端23aは、第2処理筒21における酸素含有ガス噴出孔22の上流側端22aと同一位置まで突出している。
【0019】
このように第1処理筒11の火炎噴出孔12から噴出した火炎が、排ガス導入管10から第1処理筒11内に導入された排ガスの周囲を螺旋状に包み込んだ層流状態の管状火炎を形成することにより、排ガス中に含まれている有害成分を効果的に加熱することができる。そして、第1処理筒11の内径より大きな内径を有する第2処理筒21の酸素含有ガス噴出孔22から噴出した酸素含有ガスは、第1処理筒11から第2処理筒21に流れ込んだ管状火炎の外周を螺旋状に周回する状態になるので、管状火炎の燃焼状態を乱すことなく、酸素含有ガス中の酸素を、管状火炎内を流れる排ガス中に導入することができ、高温に加熱されている有害成分と酸素とを反応させることができる。
【0020】
したがって、燃焼には全く寄与しない不活性ガスで希釈された排ガス中に含まれる有害成分を、第1処理筒11で形成した管状火炎によって効率よく熱分解して除害処理できるとともに、燃焼性を有する有害成分量が多い場合でも、第2処理筒21から導入される酸素含有ガス中の酸素によって有害成分を酸化、燃焼させて効率よく除害処理することができる。また、除害処理で固形物が発生しても、酸素含有ガス噴出孔22からの酸素含有ガスが第2処理筒21の内周面に沿って流れているため、第2処理筒21の内周面への固形物の付着を抑制することができる。
【0021】
さらに、排ガス導入筒13の下流側開口端13aを、第1処理筒11内に突出させておくことにより、導入される排ガスの流れを安定させて第1処理筒11内に拡がることを抑えることができ、第1処理筒11内でより確実に管状火炎を形成することができる。同様に、第1処理筒11と第2処理筒21との間に、下流側開口端23aを第2処理筒21内に突出させた燃焼ガス導入筒23を設けておくことにより、管状火炎の外周に導入される酸素含有ガスを管状火炎の外周に沿って流れる状態にすることができ、第2処理筒21に流入する管状火炎の乱れを抑えることができる。
【0022】
すなわち、排ガス中に含まれる燃焼性有害成分の量が少なく、不活性ガスが主体の排ガスになると、第1処理筒11及び第2処理筒21において燃焼に寄与しないガス量が過剰な状態になり、一方、排ガス中の燃焼性有害成分の量が多くなると、第1処理筒11及び第2処理筒21における酸素量が不足する状態になるが、第1処理筒11の内径D1及び第2処理筒21の内径D2や、排ガス導入筒13及び燃焼ガス導入筒23の状態を、排ガスの流量や有害成分の濃度範囲、特に、燃焼性成分の濃度範囲などの条件に応じて適切に設定することにより、管状火炎の乱れを抑えて有害成分の除去処理を効果的に行うことができる。
【0023】
前記第3処理筒31は、第1処理筒11や第2処理筒21に比べて軸線方向に長い円筒状の内筒32と、該内筒32の外周を覆う外筒33との二重構造で形成されており、内筒32と外筒33との間には、空気導入室34が形成されている。外筒33の周壁には、前記空気導入室34に空気を導入するための空気導入部35が設けられるとともに、前記内筒32には、空気導入室34に導入された空気を内筒32の周壁全体から内筒32の内部に噴出する多数の空気噴出孔36が形成されている。
【0024】
内筒32の内径D3は、第2処理筒21の内径D2と同一か、大きく(D2≦D3)設定されており、通常は、D2に対してD3が1.1〜1.5倍になるように設定される。また、第3処理筒31の全体的な長さL3は、前記内径D3に対して十分に長く設定され、ガス流れ方向上流側では、燃焼や熱分解に必要な酸素を燃焼火炎中に導入して燃焼、熱分解を促進するととともに、下流側では、空気導入部35から噴出した空気との混合によって内筒32内を流れるガスの温度を適度に冷却できる長さに設定される。
【0025】
このように、内筒32の全体にわたって設けた空気噴出孔36から内筒32の内部に向けて適当な流速、流量で空気を噴出することにより、有害成分の除害処理で固形物が発生するような場合でも、内筒32の内周面に固形物が付着することを抑制でき、固形物を含んだ状態の処理ガスを装置外に円滑に導出することができ、装置内への固形物の付着に起因する運転状態の変化を生じることがなくなる。
【0026】
なお、排ガス導入筒や燃焼ガス導入筒は省略することも可能であり、排ガス導入筒は、排ガス導入管の先端を第1処理筒に差し込んで排ガス導入筒を形成してもよく、別の部材を取り付けてもよく、各燃焼室と一体に形成してもよい。また、第3処理筒の内筒は、金属多孔板や網状板などの適宜な材料を円筒形に形成したものや、多段構造の内筒を用いることができ、空気噴出孔の大きさや数、配置は任意であり、空気噴出孔の形状も、丸孔、角孔、スリットなどを適宜選択することができる。また、内筒の上流部と下流部とで空気噴出孔の大きさなどが異なっていてもよい。
【0027】
実験例1
排ガス導入管の内径D0を80mm、第1処理筒の内径D1を133.8mm、第2処理筒の内径D2を133.8mm(D2−D1=0mm、D1:D2=1:1)及び159.2mm(D2−D1=12.7mm、D1:D2=1:約1.1)に設定した2種類の装置を使用して燃焼実験を行った。第1処理筒の長さL1は60mmであり、火炎噴出孔は、H1が30mmで、W1が4mmのスリットを90度間隔で4箇所に設けた。排ガス導入筒は設けずに、スリットの上流側端縁と第1処理筒の上流側端面との距離は0mmにした。この火炎噴出孔からは、プロパンガスと空気とをあらかじめ混合して燃焼状態にしたものを均等に分配させて噴出させた。また、第2処理筒の長さL2は60mmであり、酸素含有ガス噴出孔は、H2が30mmで、W2が4mmのスリットを90度間隔で4箇所に設けた。スリットの上流側端縁と第2処理筒の上流側端面との距離は0mmにした。この酸素含有ガス噴出孔22からは、毎分500リットルの空気を均等に分配して噴出させた。
【0028】
排ガス導入管から毎分400リットルの窒素を一定流量で導入するとともに、火炎噴出孔から、プロパンガスの流量を毎分8〜25リットルの間で一定に保ちながら、空気量を変化させて管状火炎の燃焼状態を観察した。その結果を
図3に示す。この結果から、第2処理筒の内径D2を第1処理筒の内径D1より大きくすることにより、処理に必要な管状火炎を形成できる空気比の幅が広くなることがわかる。
【0029】
また、排ガス導入管から導入するガスとして、前記窒素に代えて毎分4リットルのシラン(SiH
4)と毎分400リットルの窒素とを混合したガスを使用し、除害処理の反応で発生する酸化ケイ素(SiO
2)が第2処理筒の内周面に付着する状態を比較した。その結果、第2処理筒の内径D2が133.8mmの場合には、1時間当たり5gが付着したのに対し、第2処理筒の内径D2を159.2mmに拡大したものでの付着量は、1時間当たり0.1g未満であった。
【0030】
実験例2
第1処理筒の火炎噴出孔の上流側端と排ガス導入筒の下流側開口端との関係を変化させた燃焼実験を行った。
図4に示すように、排ガス導入管10の内径D0は43mm、第1処理筒11の内径D1は56mm、長さL1は50mmで、火炎噴出孔12は、H1が25mmで、W1が2mmのスリットを90度間隔で4箇所に設けた。この火炎噴出孔12からは、プロパンガスと空気とをあらかじめ混合して燃焼状態としたものを均等に分配させて噴出させた。スリットの上流側端縁12aと排ガス導入筒13の下流側開口端13aとの距離Xは、火炎噴出孔の上流側端を基準(X=0mm)とし、下流方向をプラス、上流方向をマイナスで表し、排ガス導入筒の下流側開口端を、スリットの上流側端縁12aに対して−5mm(
図4に示す状態)、0mm、+5mmにそれぞれ設定した。なお、第1処理筒における燃焼状態を観察できればよいことから、第2処理筒は省略し、第1処理筒の下流側には、前記第3処理筒と同様に形成した保護筒41を配置した。
【0031】
排ガス導入管から毎分200リットルの窒素を一定流量で導入するとともに、火炎噴出孔から、プロパンガスの流量を毎分2〜10リットルの間で一定に保ちながら、空気量を変化させて管状火炎の燃焼状態を観察した。その結果を
図5に示す。この結果から、排ガス導入筒の下流側開口端を−5mmに設定したものに比べて、0mm、+5mmに設定することにより、処理に必要な管状火炎を形成できる空気比の幅を拡げられることがわかる。
【0032】
また、排ガス導入筒の下流側開口端を−5mmに設定した場合において、排ガス導入管から窒素に代えて空気を毎分200リットル導入したときの燃焼状態を
図6に示す。この結果から、酸素を含む空気に比べて、燃焼に寄与しない窒素の場合は、燃焼範囲が狭くなることがわかる。したがって、不活性ガスで希釈した排ガスを処理する場合、前記
図5に示したように、排ガス導入筒の下流側開口端を下流側に配置することにより、不活性ガスが多い排ガスの場合でも、適正な管状火炎を幅広い範囲で形成することができるので、不活性ガスで希釈された有害成分の処理を確実に行えることがわかる。
【0033】
実験例3
図1に示した装置構成の燃焼除害装置でスケールアップを行い、燃焼範囲及び分解性能の確認を行った。燃料であるプロパンガスの供給量に対する燃焼特性を
図7に、NF
3の分解性能を
図8にそれぞれ示す。この結果から、スケールアップが十分可能であることがわかる。
【符号の説明】
【0034】
10…排ガス導入管、11…第1処理筒、12…火炎噴出孔、12a…上流側端、13…排ガス導入筒、13a…下流側開口端、21…第2処理筒、22…酸素含有ガス噴出孔、22a…上流側端、23…燃焼ガス導入筒、23a…下流側開口端、31…第3処理筒、32…内筒、33…外筒、34…空気導入室、35…空気導入部、36…空気噴出孔、41…保護筒