特許第6263346号(P6263346)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6263346-皮膚外用剤及び化粧料 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263346
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】皮膚外用剤及び化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/67 20060101AFI20180104BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20180104BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20180104BHJP
   A61K 8/97 20170101ALI20180104BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20180104BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20180104BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20180104BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   A61K8/67
   A61K8/73
   A61K8/92
   A61K8/97
   A61K8/37
   A61K8/06
   A61Q19/00
   A61Q19/08
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-172704(P2013-172704)
(22)【出願日】2013年8月22日
(65)【公開番号】特開2015-40195(P2015-40195A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2016年3月18日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成25年6月20日にコーセー化粧品販売株式会社に試供サンプルを配布
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(72)【発明者】
【氏名】篠田 和宏
(72)【発明者】
【氏名】上原 静香
(72)【発明者】
【氏名】間庭 史雄
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 順也
【審査官】 井上 典之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−335628(JP,A)
【文献】 特開2011−063563(JP,A)
【文献】 特開2007−246453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/
A61Q
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMET(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスタキサンチン類及びグリコーゲンを含有する、真皮の弾力が衰え、重力によって皮膚組織や皮下脂肪の下垂によって生じるたるみであるほうれい線改善用の皮膚外用剤又は皮膚外用化粧料。
【請求項2】
アスタキサンチン類とグリコーゲンの含有比が、1:0.5〜20である請求項1記載の皮膚外用剤又は皮膚外用化粧料。
【請求項3】
さらに、抱水性油剤を含有する請求項1又は2記載の皮膚外用剤又は皮膚外用化粧料。
【請求項4】
グリコーゲンが、植物由来のグリコーゲンである請求項1〜3のいずれか記載の皮膚外用剤又は皮膚外用化粧料。
【請求項5】
植物由来のグリコーゲンが、トウモロコシ由来のグリコーゲンである請求項4記載の皮膚外用剤又は皮膚外用化粧料。
【請求項6】
抱水性油剤が、30℃での粘度が10,000mPa・s以上である請求項3〜5のいずれか記載の皮膚外用剤又は皮膚外用化粧料。
【請求項7】
抱水性油剤が、ロジン酸エステル、ダイマー酸エステルからなる群から選ばれる1又は2種以上である請求項6記載の皮膚外用剤又は皮膚外用化粧料。
【請求項8】
ロジン酸エステルが、ヘキサ(12−ヒドロキシステアリン酸・ステアリン酸・ロジン酸)ジペンタエリスリチルである請求項7記載の皮膚外用剤又は皮膚外用化粧料。
【請求項9】
水中油乳化型の美容液である請求項1〜8のいずれか記載の皮膚外用剤又は皮膚外用化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスタキサンチン類及びグリコーゲン、さらに好ましくはロジン酸エステル等の抱水性油剤を含有する皮膚外用剤及び化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
ほうれい線(法令線)は、ヒトの鼻の両脇から唇の両端に伸びる2本のしわのことであり、主に加齢によって中年以降に目立ち始めることが多く、加齢、ストレス、紫外線、喫煙、ビタミンC不足等が原因とされている。ほうれい線は、真皮の弾力が衰え、重力によって皮膚組織や皮下脂肪の下垂によって生じるたるみであり、表皮の乾燥や老化により生じる小じわ(ちりめんじわ)や、真皮の弾力が低下し、乾燥や表情の癖などにより生じる目尻のしわ、眉間の縦しわ、額の横しわ、口周りのしわ等の真皮性しわと通常区別されている。
【0003】
ほうれい線の改善には、パック用シート、マスク、マッサージ器具等の美容具が数多く提案されているが、経口摂取用のほうれい線改善剤として、ツツジ科スノキ属のリンゴンベリー等の植物体を含む、コラーゲン産生促進剤(特許文献1)が、ほうれい線改善皮膚外用剤として、5−アミノレブリン酸と鉄化合物とを含有する皮膚外用剤(特許文献2)や、表情筋に作用するアルジルリンと、コラーゲンやエラスチンの修復を促進するマトリカイン物質とを備えたクリーム(特許文献3)や、重量平均分子量50万〜400万のヒアルロン酸又はその塩を少なくとも含有する水性溶液からなる皮膚美容液(特許文献4)や、ベースポリマーが多糖類である、組織増大用インプラントを製造するためのチオール基含有ポリマー(特許文献5)や、フラクタル粒子ベースのゲルとポリグリコール等のポリマーを含有する水中油型乳剤の形状での化粧料組成物(特許文献6)や、トランス-tert-ブチルシクロヘキサノールを含む皮膚刺激低下作用を有する組成物(特許文献7)や、クロリンe4とビタミンCとを含むポリマーゲル製剤(特許文献8)や、キトサン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルキトサン等の多糖類基材、ポリエチレングリコール等の合成親水性ポリマー、及び架橋剤を含むヒドロゲル組成物(特許文献9)や、少なくとも1つの架橋ポリマー及び少なくとも1つの分岐ポリマーを含み、該架橋ポリマー及び該分岐ポリマーのいずれもがひまし油、リシノール酸及び/又はヒドロキシステアリン酸から選択される1以上をベースとして含む生物学的に許容されるゲル(特許文献10)がそれぞれ知られている。
【0004】
他方、アスタキサンチンは、以下の化学式で示されるようにカロテノイド(天然色素の一種)で高い抗酸化作用を有し、アスタキサンチンを含むしわ改善剤としては、アスタキサンチンを含む光老化抑制剤(特許文献11)や、アスタキサンチン、デキストリン、及びカゼインを含有するアスタキサンチン含有水溶性組成物(特許文献12)や、アスタキサンチン、コラーゲン、及びコラーゲンペプチドを含有する化粧品組成物(特許文献13)や、アスタキサンチンと、真皮マトリックス成分安定作用を有する化合物を含むしわ改善組成物(特許文献14)や、アドニルビン、アドニキサンチン及びアスタキサンチンを含む皮膚外用剤(特許文献15)が知られている。
【0005】
【化1】
【0006】
また、グリコーゲンは、D−グルコースより構成されるホモ多糖であり、グルコースのα−1,4結合の糖鎖から、α−1,6結合でグルコースおよそ3単位おきに1本程度の割合に平均重合度12〜18の分枝をだし、さらにそれも枝分かれした網状構造を形成している。グリコーゲンを含むしわ改善剤としては、フィトグリコーゲンを有効成分として含有する皮膚外用剤(特許文献16)や、ヒアルロン酸又はその塩とフィトグリコーゲンを配合した皮膚外用剤(特許文献17)や、真珠とコンキオリン、コハクコンキオリン、コラーゲン、エラスチン、酸性ムコ多糖、貝類酸性多糖、グリコーゲンから選ばれる1種以上を含む皮膚外用剤(特許文献18)や、グリコーゲンと抗炎症剤の1種又は2種以上とを含有する皮膚外用剤(特許文献19)や、グリコーゲンを含む、表皮細胞においてヒアルロン酸およびエラスチンからなる群より選択される少なくとも1つの成分の産生を促進するための組成物(特許文献20)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−14561号公報
【特許文献2】WO2006/117885号公報
【特許文献3】特開2007−50126号公報
【特許文献4】特開2008−37774号公報
【特許文献5】特表2010−512859号公報
【特許文献6】特表2010−513544号公報
【特許文献7】特表2012−523381号公報
【特許文献8】特表2013−508390号公報
【特許文献9】特表2013−510175号公報
【特許文献10】特表2013−518095号公報
【特許文献11】特開2002−128651号公報
【特許文献12】WO2009/048120号公報
【特許文献13】特開2009−13129号公報
【特許文献14】特開2011−63563号公報
【特許文献15】特開2012−158569号公報
【特許文献16】特開平11−255657号公報
【特許文献17】特開2000−95660号公報
【特許文献18】特開2003−300821号公報
【特許文献19】特開2003−335651号公報
【特許文献20】特開2012−62273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、ほうれい線を改善するための皮膚外用剤及び化粧料、すなわち、ほうれい線を引き上げてほうれい線を目立たなくする、あるいは目立ちにくくする皮膚外用剤及び化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
アスタキサンチンやグリコーゲンはともにシワ改善効果を有することは知られているが、それぞれの単独使用や他のシワ改善剤では、ほうれい線(たるみ)の改善は不十分であった。本発明者らは、アスタキサンチン類とグリコーゲンとを組み合わせることで、ほうれい線(たるみ)を改善する皮膚外用剤及び化粧料を開発した。さらに、特定の油剤を組み合わせることで、即時的・長期連続使用後の顕著なほうれい線(たるみ)を改善する皮膚外用剤及び化粧料を開発した。
【0010】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)アスタキサンチン類及びグリコーゲンを含有する、ほうれい線改善用の皮膚外用剤又は皮膚外用化粧料。
(2)アスタキサンチン類とグリコーゲンの含有比が、1:0.5〜20である上記(1)記載の皮膚外用剤又は皮膚外用化粧料。
(3)さらに、抱水性油剤を含有する上記(1)又は(2)記載の皮膚外用剤又は皮膚外用化粧料。
)グリコーゲンが、植物由来のグリコーゲンである上記(1)〜(3)のいずれか記載の皮膚外用剤又は皮膚外用化粧料。
)植物由来のグリコーゲンが、トウモロコシ由来のグリコーゲンである上記()記載の皮膚外用剤又は皮膚外用化粧料。
)抱水性油剤が、30℃での粘度が10,000mPa・s以上である上記()〜()のいずれか記載の皮膚外用剤又は皮膚外用化粧料。
)抱水性油剤が、ロジン酸エステル、ダイマー酸エステルからなる群から選ばれる1又は2種以上である上記()記載の皮膚外用剤又は皮膚外用化粧料。
)ロジン酸エステルが、ヘキサ(12−ヒドロキシステアリン酸・ステアリン酸・ロジン酸)ジペンタエリスリチルである上記()記載の皮膚外用剤又は皮膚外用化粧料。
)水中油乳化型の美容液である上記(1)〜()のいずれか記載の皮膚外用剤又は皮膚外用化粧料。
【発明の効果】
【0011】
本発明の皮膚外用剤及び化粧料によると、ほうれい線を引き上げて、ほうれい線を目立たなくする、あるいは目立ちにくくする等、ほうれい線(たるみ)を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例2の使用前後の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の皮膚外用剤及び化粧料としては、アスタキサンチン類とグリコーゲンとを含むほうれい線改善用の皮膚外用剤及び化粧料であれば特に制限されず、ここで、ほうれい線の改善とは、ほうれい線(たるみ)を引き上げて、ほうれい線を目立たなくする、あるいは目立ちにくくすることをいう。本発明のほうれい線改善皮膚外用剤及び化粧料は、アスタキサンチン類とグリコーゲンに加えて抱水性油剤を含有するものが好ましい。
【0014】
上記アスタキサンチン類としては、アスタキサンチン(遊離体)の他、そのエステル誘導体を挙げることができ、例えば、グリシン、アラニン等のアミノ酸エステル類、酢酸エステル、クエン酸エステル等のカルボン酸エステル及びその塩類、リン酸エステル、硫酸エステル等の無機酸エステル及びその塩類、グルコシド等の配糖体類、またはエイコサペンタエン酸やドコサヘキサエン酸等の高度不飽和脂肪酸、オレイン酸やリノール酸等の不飽和脂肪酸またはパルミチン酸やステアリン酸等の飽和脂肪酸から選択される脂肪酸エステル類等から選択されるモノエステル体及び同種または異種のジエステル体等を挙げることができる。これらアスタキサンチン類はオキアミ、サケ、マス、福寿草、赤色酵母、ヘマトコッカス藻等の天然物から抽出・精製により製造したものであっても、あるいは、有機化学合成によって製造したものであってもよい。ヘマトコッカス藻抽出物の由来としては、具体的には、ヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pluvialis)、ヘマトコッカス・ラキュストリス(Haematococcus lacustris)、ヘマトコッカス・カペンシス(Haematococcus capensis)、ヘマトコッカス・ドロエバゲンシス(Haematococcus droebakensis)、ヘマトコッカス・ジンバビエンシス(Haematococcus zimbabwiensis)等が挙げられる。天然物からアスタキサンチン類を得る場合の抽出溶媒については、水系溶媒でも有機溶媒であってもよい。有機溶媒としてはメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、1,3−ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、酢酸エチル、エーテル、ヘキサン等を用いることができる。また、超臨界状態の二酸化炭素等を用いることもできる。これらの溶媒は単独で用いてもよいし2種類以上を混合して用いてもよい。また、市販品としては、例えば、武田紙器(株)製のASTOTS−S、同−5O、同−10O等、富士化学工業(株)製のアスタリールオイル50F、同5F等、オリザ油化製のアスタキサンチン−5C、同20C、バイオジェニック社製のASTABIO(登録商標)AR1、AR5等が挙げられる。
【0015】
また、本発明の皮膚外用剤及び化粧料におけるアスタキサンチン類の含有量としては、0.00001〜0.5質量%、好ましくは0.0001〜0.05質量%、より好ましくは0.005〜0.01質量%、更に好ましくは0.001〜0.005質量%を好適に例示することができる。
【0016】
上記グリコーゲンは、平均分子量20万〜200万であることが好ましく、さらに50〜100万であることが好ましい。また、ホタテ,アワビ,牡蛎,イガイ,アコヤ貝等の貝類、ウシ,豚の肝臓等に由来する動物性グリコーゲンや、トウモロコシ,オオムギ,米、ポテト、タピオカ等に由来する植物性グリコーゲンを挙げることができるが、植物性グリコーゲンが好ましい。これらグリコーゲンは、常法により調製した天然物に含まれるグリコーゲンをそのまま使用することもでき、また、必要に応じて酵素処理した後に、分離精製処理したグリコーゲンを使用することもできる他、市販品を用いることができる。上記植物性グリコーゲンの中でもトウモロコシの子実から抽出し、精製して得られるグリコーゲンが特に好ましく、例えば、キューピー株式会社のフィトグリコーゲン(登録商標)(平均分子量70万)を使用することができる。グリコーゲンの市販品としては、他にも、ムラサキイガイ由来のビオサッカライドLS、ビオサッカライドGY(LABORATORIES SEROBIOLOGIQUES社製)等も挙げられる。また、本発明の皮膚外用剤及び化粧料におけるグリコーゲンの含有量としては、0.001〜5質量%、好ましくは0.002〜1質量%、より好ましくは0.005〜0.05質量%、更に好ましくは0.008〜0.015質量%を好適に例示することができる。
【0017】
また、本発明の皮膚外用剤及び化粧料における上記アスタキサンチン類とグリコーゲンの含有比は、1:0.5〜20、好ましくは1:1〜8、より好ましくは1:3〜5である。
【0018】
また、本発明は抱水性油剤を含有すると、ほうれい線やたるみの改善が顕著になるため好ましい。本発明で用いる「抱水性」とは、以下の抱水力試験により測定される抱水力(%)が100%以上を示すものである。抱水力試験方法は、50℃に加熱した試料(油性成分)10gを200mLビーカーに秤り取り、ディスパーミキサーにて3000rpmで攪拌しながら、50℃の水を徐々に、水が試料から排液してくるまで添加し、水が排液しない最大量(質量)を測定し、この数値を試料10gで除し、100倍して抱水力(%)として評価している。このような抱水性油剤は、例えば、ラウロイルグルタミン酸ジオクチルドデシル、ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル又はフィトステロール・べへニル・オクチルドデシル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル又はフィトステロール・オクチルドデシル)等のアミノ酸系エステル油剤、ヒマシ油、シア脂等の多価アルコール脂肪酸エステル、ヘキサグリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステル等のポリグリセリン脂肪酸エステル、及び、(アジピン酸・2−エチルへキサン酸・ステアリン酸)グリセリルオリゴエステル、ジペンタエリトリットヒドロキシステアリン酸エステル、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸・ステアリン酸・ロジン酸)ジペンタエリスリチル、コレステロール、コレスタノール、デヒドロコレステロール、ラノリン脂肪酸コレステリル、イソステアリン酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、リシノール酸コレステリル、マカデミアナッツ油脂肪酸コレステリル等のコレステロール誘導体やフィトステロール誘導体、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)等のダイマー酸エステル、ラノリン、吸着精製ラノリン、液状ラノリン、還元ラノリン、酢酸液状ラノリン、ラノリンアルコール、水素添加ラノリンアルコール、ラノリン脂肪酸等のラノリン誘導体及びそれらをポリオキシアルキレンで変性したもの等が挙げられる。
【0019】
抱水性油剤の中でも、30℃での粘度が10,000mPa・s以上であるものが好ましく、半固形状であるものがより好ましい。これらを用いることで肌への密着性が向上し、肌のリフトアップ効果が優れ、即時的・長期連続使用後のほうれい線(たるみ)改善効果が顕著となる。
【0020】
さらに、上記抱水性油剤の中でも、ロジン酸エステル、ダイマー酸エステルが好ましく、さらにロジン酸エステルが肌への親和性が高く好ましい。
【0021】
本発明の皮膚外用剤及び化粧料におけるこれら抱水性油剤は2種以上含有してもよく、その含有量としては皮膚外用剤及び化粧料の種類等にもよるが、0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%、より好ましくは2〜4質量%、更に好ましくは2.5〜3.5質量%を好適に例示することができる。また、本発明の皮膚外用剤及び化粧料における上記抱水性油剤とアスタキサンチン類とグリコーゲンの含有比は、アスタキサンチン類とグリコーゲンの合算量に対する抱水性油剤の割合が、10〜1000、好ましくは50〜500、より好ましくは100〜400である。
【0022】
本発明の組成物には、必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分の他に、皮膚外用剤や化粧料に使用される成分、すなわち、水(精製水、温泉水、深層水等)、油剤、界面活性剤、金属セッケン、ゲル化剤、粉体、アルコール類、水溶性高分子、皮膜形成剤、樹脂、紫外線防御剤、包接化合物、抗菌剤、香料、消臭剤、塩類、pH調整剤、清涼剤、動物・微生物由来抽出物、植物抽出物、血行促進剤、収斂剤、抗脂漏剤、美白剤、抗炎症剤、活性酸素消去剤、細胞賦活剤、保湿剤、キレート剤、角質溶解剤、酵素、ホルモン類、ビタミン類等を加えることができる。
【0023】
本発明の化粧料としては、化粧水、クリーム、乳液、美容液等の基礎化粧料や、シャンプー、リンス、トリートメント等の頭髪化粧料や、リキッドファンデーション、下地乳液等のメイクアップ化粧料や、日焼け止め化粧料等の化粧料(医薬部外品を含む)を例示することができ、皮膚外用剤としては、リニメント剤、ローション剤、軟膏剤等の外用医薬品を例示することができる。なお、本発明の皮膚外用剤及び化粧料は、ほうれい線を目立たなくし、頬のたるみを改善する効果が顕著であるため、基礎化粧料や皮膚外用剤が好ましい。また、本発明の皮膚外用剤や化粧料の剤型としては特に限定されないが、水性、水中油型、油中水型等を挙げることができる。また、本発明の膚外用剤や化粧料の形態としては、クリーム状、ゲル状、液状を挙げることができる。
【0024】
本発明の皮膚外用剤及び化粧料は、ほうれい線の改善のための「ほうれい線改善用」として好適に用いることができる。ほうれい線の改善効果が特に優れている場合、ほうれい線の改善に加えて、頬部のたるみの改善が期待できる。
【0025】
本発明の皮膚外用剤及び化粧料の製造方法は、特に限定されないが、例えば、アスタキサンチン類に抱水性油剤などを必要に応じて添加し、さらにグリコーゲンやその他の成分を添加混合する方法等を挙げることができる。
【実施例】
【0026】
次に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はかかる実施例によって何ら限定されるものではない。
【0027】
[実施例1〜4及び比較例1〜5]
以下の「表1」に示す実施例1〜4及び比較例1〜5の水中油乳化型の美容液を下記製造方法により調製した。かかる美容液の適量をほうれい線の目立つ10人の被検者に対して1日2回朝と夕方に2週間適用してもらい、以下(イ)〜(ロ)のほうれい線の改善、たるみの改善について評価した。これらの評価は、肌測定に精通した専門家3名による目視判定により各被験者のほうれい線の目立ち具合、頬部のたるみ程度を評価した。評価基準に準じて専門家3名が各被験者に評点を付け、3名の評点の平均点を改善スコアとして算出し、判定基準に照らし合わせて改善効果を判定した。結果を「表1」に示す。
【0028】
[評価基準]
3点:顕著な改善がみられる
2点:改善がみられる
1点:わずかに改善がみられる
0点:変化なし、もしくは悪化
[判定基準]
◎:スコアが2.5以上
○:スコアが1.5以上2.5未満
△:スコアが0.5以上1.5未満
×:スコアが0.5未満
【0029】
【表1】
【0030】
(注1)ノニオン OT−221R(日油社製)
(注2)NIKKOL SP−10V(日本サーファクタント工業社製)
(注3)アスタキサンチン−5C(オリザ油化社製)
(注4)コスモール 168ARV(日清オイリオグループ社製)
(注5)エルデュウ PS−304(味の素社製)
(注6)PLANDOOL S(日本精化社製)
(注7)KF−96A−100CS(信越化学工業社製)
(注8)フィトグリコーゲン(キューピー社製)
【0031】
[製造方法]
A:成分No.1〜11を70℃で混合する。
B:成分No.13の一部と成分No.14、15を混合する。
C:成分No.12と成分No.13の残りを70℃で混合する。
D:AとCを70℃で混合し、40℃まで冷却した後にBを添加混合して、美容液(水中油乳化型)を得た。
【0032】
[評価結果]
表1から明らかなように、実施例1〜4は2週間連用後のほうれい線及びたるみの改善が見られた。中でも実施例2〜4はほうれい線の改善効果が顕著であり、さらに使用直後のほうれい線改善も優れており、またハリ感にも優れるものであった。また、実施例2はたるみの改善も顕著であった。一方、アスタキサンチン類を含有しない比較例1及びグリコーゲンを含有しない比較例2は、ほうれい線及びたるみの改善が不十分であった。また、アスタキサンチン類もグリコーゲンも含有せずに、レチノイン酸を含有する比較例3は全く改善が見られなかった。さらに、アスタキサンチン類の代わりにレチノイン酸を含有する比較例4及びグリコーゲンの代わりにレチノイン酸を含有する比較例5は、ほうれい線及びたるみの改善が不十分であった。
【0033】
〔実施例5:可溶化型化粧水〕
(成分) (質量%)
1.ポリオキシエチレン(40モル)硬化ヒマシ油 0.5
2.ポリオキシエチレン(12モル)ジオレエート 0.3
3.アスタキサンチン5%溶液 (注3) 0.02
4.1,3−ブチレングリコール 2.0
5.グリセリン 2.0
6.エタノール 15.0
7.トラネキサム酸 2.0
8.トウモロコシグリコーゲン (注8) 0.1
9.乳酸ナトリウム 0.2
10.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
11.精製水 残 量
(製造方法)
A.成分1〜6を混合溶解する。
B.成分7〜11を混合溶解する。
C.BにAを加え、化粧水を得た。
実施例5の可溶化型化粧水は、ほうれい線及びたるみの改善が良好なものであった。
【0034】
〔実施例6:乳液〕
(成分) (質量%)
1.モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン 1.0
2.セスキオレイン酸ソルビタン 0.5
3.トリオクタン酸グリセリル 0.5
4.ホホバ油 0.5
5.アスタキサンチン5%溶液 (注3) 0.1
6.精製水 残 量
7.エデト酸二ナトリウム 0.1
8.メチルパラベン 0.2
9.フェノキシエタノール 0.5
10.グリセリン 5.0
11.ペンチレングリコール 1.0
12.ジプロピレングリコール 2.0
13.乳酸ナトリウム 0.5
14.L−アスコルビン酸2−グルコシド (注9) 1.0
15.トウモロコシグリコーゲン (注8) 0.1
16.キサンタンガム 0.05
17.精製水 10.0
18.エタノール 3.0
19.香料 0.05
(注9):林原社製
(製造方法)
A:成分16を70℃に加熱した成分17で膨潤する。
B:成分1〜5を70℃で加熱混合する。
C:成分6〜13を70℃で加熱溶解後、Bに添加し、乳化する。
D:Cを室温まで冷却後、成分14、15、18、19とAを添加し、美容液を得た。
実施例6の乳液は、ほうれい線及びたるみの改善が良好なものであった。
【0035】
〔実施例7:日焼け止め〕
(成分) (質量%)
1.ステアリン酸 1.0
2.モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20モル)ソルビタン 0.5
3.セスキオレイン酸ソルビタン 0.5
4.ベヘニルアルコール 0.5
5.2−エチルヘキサン酸グリセリル 2.0
6.パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 10.0
7.ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 2.0
8.アスタキサンチン5%溶液 (注3) 0.03
9.Tinosorb S (注10) 1.0
10.オクチルトリアゾン 0.5
11.ジプロピレングリコール 10.0
12.トリエタノールアミン 1.0
13.精製水 残 量
14.グリセリン 5.0
15.1,3−ブチレングリコール 5.0
16.Tinosorb M (注10) 1.0
17.アクリル酸/メタクリル酸アルキルエステル共重合体(注11) 0.2
18.精製水 5.0
19.トウモロコシグリコーゲン (注8) 0.01
20.クエン酸 0.1
21.コハク酸二ナトリウム 0.1
22.エタノール 10.0
23.フェノキシエタノール 0.05
24.香料 0.02
(注10) BASF社製
(注11) CARBOPOL 1382(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製)
(製造方法)
A:成分1〜10を80℃にて均一に溶解する。
B:成分11〜19を80℃にて均一に溶解する。
C:BにAを添加し、乳化する。
D:Cを攪拌冷却し、成分20〜24を添加し、日焼け止めを得た。
実施例7の日焼け止めは、ほうれい線及びたるみの改善が良好なものであった。
【0036】
〔実施例8:不織布含浸タイプパック料〕
(成分) (質量%)
1.ポリオキシエチレン(25)フィトスタノール(HLB14.5) 1.0
2.ステアリルアルコール 0.2
3.セタノール 0.2
4.水添大豆リン脂質 0.3
5.プロピレングリコール 10.0
6.ジグリセリン 8.0
7.流動パラフィン 1.0
8.アスタキサンチン5%溶液 (注12) 0.1
9.マイクロクリスタリンワックス 5.0
10.精製水 1.0
11.エタノール 3.0
12.精製水 残 量
13.L−アスコルビン酸2−グルコシド (注9) 2.0
14.トウモロコシグリコーゲン (注8) 0.05
15.イガイグリコーゲン (注13) 0.05
16.加水分解ヒアルロン酸(分子量3000) 1.0
17.水酸化ナトリウム 適 量
18.香料 0.01
(注12)ASTOTS−5O (武田紙器社製)
(注13)ビオサッカライドGY(LABORATORIES SEROBIOLOGIQUES社製)
(製造方法)
A:成分1〜6を80℃で溶解混合する。
B:成分7〜9を80℃に加熱し、Aに添加したのち、75℃に加熱した成分10を加えて乳化した。
C:これを冷却、脱泡し、水中油型液状組成物を調製し、成分11〜18を加えて混合した原液を、不織布に含浸させ、不織布含浸タイプパック料を得た。
実施例8の不織布含浸タイプパック料は、ほうれい線及びたるみの改善が良好なものであった。
【0037】
〔実施例9:軟膏〕
(配合成分) (質量%)
1.ステアリルアルコール 18.0
2.モクロウ 20.0
3.ポリオキシエチレン(20)モノオレイン酸エステル 0.3
4.アスタキサンチン5%オイル (注14) 0.1
5.ワセリン 40.0
6.精製水 残 量
7.グリセリン 10.0
8.アデノシン−1−リン酸 0.5
9.トウモロコシグリコーゲン (注8) 0.05
10.玉露抽出物 1.0
(注14)アスタキサンチン (バイオアクティブスジャパン社製)
(製造方法)
A.1〜5を70℃で均一に混合する。
B.6〜9を70℃に加温する。
C.AにBを加え、乳化する。
D.Cを冷却し、10を添加し、軟膏を得た。
実施例9の軟膏は、ほうれい線及びたるみの改善が良好なものであった。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の皮膚外用剤及び化粧料は、ほうれい線やたるみを改善し、化粧・美容の分野で有利に利用される。
図1