【実施例】
【0026】
以下、本発明の一実施例について、
図1から
図3を参照しながら説明する。尚、本実施例では、前眼部断面画像撮影装置の一つである前眼部光干渉断層撮影装置を用いているが、本発明は、前眼部光干渉断層撮影装置に限ったものではなく、他に超音波を用いた超音波画像診断装置等、前眼部の断面画像を撮影可能な装置であれば採用可能である。
【0027】
図2は、本実施例に係る前眼部光干渉断層撮影装置1の電気的構成を概略的に示している。尚、この前眼部光干渉断層撮影装置1は、隅角計測、角膜曲率、角膜厚分布、前房深度の測定等の、被検者の眼球(被検眼E)の前眼部Ec(
図1参照)の眼科検査のために用いられる装置であり、光干渉断層法(Optical Coherence Tomography:OCT)により被検眼Eの前眼部Ecの断層画像を撮影するものである。
【0028】
ここで、図示はしないが、前眼部光干渉断層撮影装置1の装置本体は、保持台に対して、X方向(左右方向)及びY方向(上下方向)並びにZ方向(前後方向)に移動可能に支持されている。装置本体の前面側(被検者側)には、顎受け部及び額当て部が、前記保持台に対して固定的に設けられている。被検者が、前記顎受け部に顎を載せると共に額当て部に額を当てることにより、被検者の眼(被検眼E)が、装置本体の前面に設けられた撮影用の(光の出入りが行われる)検査窓の正面に配置されるようになっている。
【0029】
このとき、
図2に示すように、この前眼部光干渉断層撮影装置1には、前記装置本体を前記保持台に対して、X方向、Y方向、Z方向に夫々自在に移動させるための本体駆動部2が設けられている。詳しい説明は省略するが、この本体駆動部2は、X方向移動モータ、Y方向移動モータ、Z方向移動モータなどを備えた周知構成を備えており、制御装置3により制御されるようになっている。後述するように、この本体駆動部2及び制御装置3は、アライメント光学系4等と共にアライメント手段及びオートアイトラッキング手段を構成するようになっている。
【0030】
前記装置本体には、
図2に示すように、CPU,メモリ等からなるマイクロコンピュータを含んで構成され全体の制御を行う制御装置3、前眼部Ecの断層画像を取得する断層画像取得手段としてのOCTシステム5、被検眼Eの正面画像を撮影する撮像手段を構成する前眼部撮像系6、アライメント光学系4が設けられている。このアライメント光学系4は、上記のようにアライメント手段及びオートアイトラッキング手段を構成すると共に、角膜頂点位置検出手段を構成する。これらOCTシステム5、前眼部撮像系6、アライメント光学系4の詳細については後述する。
【0031】
さらに、装置本体には、後面(検者)側に位置して、被検眼正面画像等を表示する表示装置としてのモニタ7や、検者(オペレータ)が各種操作を行うためのキー操作部8が設けられている。図示はしないが、前記キー操作部8には、測定開始スイッチ等が含まれている。また本実施例では、前記モニタ7の画面上には、種々の操作手段として機能するタッチパネル9が設けられている。尚、前記制御装置3には、撮影した三次元画像の画像データ等を記憶する記憶部10が接続されている。
【0032】
図1は、上記した光学系、即ち、OCTシステム5、前眼部撮像系6、アライメント光学系4の構成を示している。以下、これらについて順に述べる。前記OCTシステム5は、光干渉断層法により前眼部Ecの断層画像(断面画像)を得るものである。本実施例では時間的に波長を変化させて走査する波長走査光源11を用いたフーリエドメイン(光周波数掃引)方式が採用されている。
【0033】
即ち、波長走査光源11から出力された光は、光ファイバ12aを通して第1のファイバーカプラ13に入力され、この第1のファイバーカプラ13において、例えば1:99の比率で、参照光と測定光とに分波されて出力される。そのうち参照光は、光ファイバ12bを通って第1のサーキュレータ14の入力部に入力され、更にこの第1のサーキュレータ14の入出力部から光ファイバ12cを通ってその端部から出力され、複数個のコリメータレンズ15を通って参照ミラー16に入射される。
【0034】
そして、参照ミラー16にて反射された参照光が、再び、複数個のコリメータレンズ15を通って光ファイバ12cの端部から入力され、光ファイバ12cを通って第1のサーキュレータ14の入出力部から入力される。そして、第1のサーキュレータ14の出力部から出力された参照光は、光ファイバ12dを通って第2のファイバーカプラ17の第1の入力部に入力される。
【0035】
一方、前記第1のファイバーカプラ13から出力された測定光は、光ファイバ12eを通って第2のサーキュレータ18の入力部に入力され、さらにこの第2のサーキュレータ18の入出力部から光ファイバ12fを通ってその端部から出力される。光ファイバ12fの端部から出力された測定光は、コリメータレンズ19を通ってガルバノスキャナ20に入力される。ガルバノスキャナ20は、測定光を走査させるためのもので、ガルバノドライバ21により駆動されるようになっている。
【0036】
前記ガルバノスキャナ20から出力された測定光は、波長が長い側の光を反射させ短い側の光を透過させるホットミラー22により90度の角度で反射され、対物レンズ23を通して前記検査窓から出射され、被検眼Eに入射される。被検眼Eに入射された測定光は、前眼部Ecの各組織部分(角膜、前房、虹彩、水晶体等)にて反射し、その反射光が、検査窓から入射され、上記と逆に、対物レンズ23、ホットミラー22、ガルバノスキャナ20、コリメータレンズ19を順に通って、光ファイバ12fの端部から入力される。
そして、その反射光は、光ファイバ12fを通って前記第2のサーキュレータ18の入出力部から入力され、第2のサーキュレータ18の出力部から出力され、光ファイバ12gを通って前記第2のファイバーカプラ17の第2の入力部に入力される。
【0037】
この第2のファイバーカプラ17において、前眼部Ecからの反射光と、前記光ファイバ12dを通って入力された参照光とが、例えば50:50の比率で合波され、その信号が光ファイバ12h、12iを介して検出器24に入力される。検出器24においては、波長毎の干渉が計測され、計測された干渉信号が、前記制御装置3に設けられたADボード25に入力される。さらに、制御装置3に設けられた演算部26において、干渉信号に対するフーリエ変換などの処理が行われ、もって走査線に沿う前眼部Ecの断層画像が取得されるのである。
【0038】
このとき、詳しくは後述するように、前記ガルバノスキャナ20による測定光のスキャンパターン言い換えると走査線(B−スキャン)の方向は、制御装置3において設定されるようになっている。そして、制御装置3(演算部26)からの指令信号に基づいてガルバノドライバ21がガルバノスキャナ20を制御するようになっている。尚、得られた前眼部Ecの断層画像のデータは、必要な屈折補正が行われた後、前記記憶部10に記憶される。また、
図1に模式的に示しているように、その断層画像Tを前記モニタ7に表示させることができる。
【0039】
次に、前記前眼部撮像系6は、照明光源27,27、前記対物レンズ23、前記ホットミラー22、コールドミラー28、結像レンズ29、CCDカメラ30、光学制御部31を備えて構成される。照明光源27,27は、被検眼Eの正面に可視光領域の照明光を照射するようになっており、被検眼Eからの反射光が、前記検査窓から前記対物レンズ23、ホットミラー22、コールドミラー28、結像レンズ29を通って、CCDカメラ30に入力される。これにて、被検眼Eの正面画像Fが撮影され、撮影された画像データは、光学制御部31によって画像処理が行われて、前記モニタ7に表示されるようになる。
【0040】
そして、前記アライメント光学系4は、より詳細には、被検者が固視灯を見つめることにより眼球(被検眼E)を極力動かさないようにさせるための固視灯光学系、被検眼E(角膜頂点)のXY方向の位置(本体に対する上下左右の位置ずれ)を検出するためのXY方向位置検出系、被検眼E(角膜頂点)の前後方向(Z方向)の位置を検出するためのZ方向位置検出系を含んで構成されている。
【0041】
そのうち固視灯光学系は、固視灯32、コールドミラー33、リレーレンズ34、ハーフミラー35、前記コールドミラー28、前記ホットミラー22、前記対物レンズ23などから構成されている。これにて、固視灯32から出力された光(例えば緑色の光)は、コールドミラー33、リレーレンズ34、ハーフミラー35、コールドミラー28、ホットミラー22、レンズ23を順に介して、検査窓から被検眼Eに向けて出力されるようになっている。
【0042】
前記XY方向位置検出系は、XY位置検出光源36、前記コールドミラー33、前記リレーレンズ34、前記ハーフミラー35、前記コールドミラー28、前記ホットミラー22、前記対物レンズ23、結像レンズ37、位置センサ38などを備えて構成されている。前記XY位置検出光源36からは、位置検出用のアライメント光が出力され、コールドミラー33、リレーレンズ34、ハーフミラー35、コールドミラー28、ホットミラー22、対物レンズ23を介して、検査窓から被検眼Eの前眼部Ec(角膜)に向けて出射される。
【0043】
このとき、被検眼Eの角膜表面が球面状をなすことにより、アライメント光は、被検眼Eの角膜頂点の内側で輝点像を形成するようにして角膜表面で反射され、その反射光が、検査窓から入射されるようになっている。角膜頂点からの反射光(輝点)は、対物レンズ23、ホットミラー22、コールドミラー28、ハーフミラー35、結像レンズ37を介して位置センサ38に入力される。位置センサ38によってその輝点の位置が検出されることにより、角膜頂点の位置(X方向及びY方向の位置)が検出されるようになっている。尚、前記輝点は、CCDカメラ30の撮影画像(モニタ7の表示画像)にも写り込むものとなる。
【0044】
前記位置センサ38の検出信号は、前記光学制御部31ひいては制御装置3に入力される。この場合、位置センサ38と前記前眼部撮像系6(CCDカメラ30やモニタ7)との間でのアライメントが取られていると共に、角膜頂点の所定(正規)の画像取得位置(断層画像取得時に追従させるべき位置)が設定されている。角膜頂点の正規の画像取得位置としては、例えば、CCDカメラ30の撮影画像の中心位置(前記モニタ7の画面中心位置)と一致する点とされている。前記制御装置3は、位置センサ38の検出に基づいて、正規の位置に対する、検出された角膜頂点(輝点)のX方向及びY方向の位置ずれ量(この場合モニタ7の画面中心からの位置ずれ量)を求めるようになっている。
【0045】
前記Z方向位置検出系は、Z方向位置検出光源39、結像レンズ40、ラインセンサ41を備えて構成されている。Z方向位置検出光源39は、被検眼Eに対して斜め方向から検出用の光(スリット光又はスポット光)を照射し、角膜からの斜め方向の反射光が、結像レンズ40を介してラインセンサ41に入射されるようになっている。このとき、装置本体に対する被検眼Eの前後方向(Z方向)の位置によって、ラインセンサ41に入射される反射光の入射位置が異なるようになるので、被検眼Eの装置本体に対するZ方向の位置(距離)が検出されるのである。
【0046】
ラインセンサ41の検出信号は、前記制御装置3に入力されるようになっている。このとき、制御装置3には、被検眼E(角膜)の装置本体に対する適切なZ方向位置(距離)が予め設定されており、ラインセンサ41の検出に基づいて、被検眼Eの適切な位置に対するZ方向のずれ量を求めることができるのである。
【0047】
そして、制御装置3は、前記XY方向位置検出系により検出された角膜頂点(輝点)のX方向及びY方向の位置ずれ量、並びに、前記Z方向位置検出系により検出された被検眼EのZ方向の位置ずれ量に基づいて、それらの位置ずれ量を全て0にするように、本体駆動部2を制御し、装置本体を保持台に対して移動させる。このとき、制御装置3は、断層画像取得を開始するにあたって、角膜頂点の位置を所定の画像取得位置に一致させるように前記装置本体を前記保持台に対して移動させるようになっていると共に、断層画像の取得処理中にも、角膜頂点と装置本体との位置関係を一定に保つように、該装置本体を追従移動させるようになっている。これにより、アライメント手段及びオートアイトラッキング手段が構成されているのである。
【0048】
次に、上記構成の前眼部光干渉断層撮影装置1の作用について、
図3を参照して述べる。
図3のフローチャートは、被検眼Eの前眼部Ecの断層画像を撮影する際に制御装置3が実行する処理手順を示している。
【0049】
ここで、被検者が顎受け部に顎を載せると共に額当て部に額を当て、被検眼Eを装置本体の検査窓の正面に配置させた状態で、前眼部Ecの断層画像の取得の処理が開始(前眼部断層撮影プログラムが起動)されると、まず、ステップS1にて、前眼部撮像系6(CCDカメラ30)により撮影された被検眼Eの現在の正面画像が、モニタ7に表示されると共に、その画面中心を水平方向に延びる走査線に沿ってスキャンした前眼部Ecの現在の断層画像が併せてモニタ7に表示される(
図2参照)。但し、この時点では、それら正面画像及び断層画像のデータがメモリに取込まれることはない。
【0050】
この後、検者が測定開始スイッチをオン操作すると(ステップS2)、ステップS3にて、アライメント光学系4等によるX,Y,Z方向のアライメントが開始され、角膜頂点認識用の輝点が正規の位置と一致したところで(ステップS4にてYES)、アライメントが完了する。続いて、ステップS5に移行し、OCTシステム5により、前眼部Ecの断層画像の取得処理が実行される。この断層画像の取得処理中は、オートアイトラッキングが機能し、角膜頂点認識用の輝点が常に正規の位置(CCDカメラ30の撮影画像の中心位置)に来るように、アライメント光学系4等により装置本体を追従移動させる。
【0051】
ステップS5における断層画像の取得処理は、本実施例では、
図5に示すラジアルスキャンの方式により、前眼部Ecの断層画像が全領域に亘って取得される。つまり、B−スキャン方向を放射方向とし、C−スキャン方向を円周方向として断層画像の取込みを行うようになっている。このとき、被検眼Eのずれ動きがあっても、オートアイトラッキングにより装置本体と被検眼との位置関係が一定に保たれることによって、走査線が角膜頂点を通る直線上からずれることを未然に防止することができることは勿論である。ステップS6では、取得(撮影)された断層画像のデータが、メモリに取込まれる。
【0052】
次のステップS7では、上記各断層画像のデータの屈折補正処理が行われる。この処理は、ほぼ球面状をなす角膜(角膜表面及び前房との境界面)において、測定光が屈折するため、得られたそのままの断層画像には歪みが生じており、その角膜屈折に対する画像データの補正を行うものである。補正処理が行われた画像データは、記憶部10に記憶される。
【0053】
次に、本発明に係る隅角解析の請求項1及び2、3に係る方法(方法1)の手順を
図6のフローチャート及び
図8、
図9を参照しながら説明する。尚、以下の説明に記載の断層画像は、上述のように、ラジアルスキャンの方式により取得した前眼部Ecの断層画像(B−スキャン画像)である。また、
図9に示す角膜や虹彩の境界線は、B−スキャン画像に対して自動的に角膜前面・角膜後面・虹彩前面をトレースしたトレース線であるものとする。
【0054】
まず、モニタ画面で2D解析を選択する(ステップS10)。モニタ7には
図8(a)に示すように、ラジアルスキャンの方式により取得した前眼部Ecの断層画像(B−スキャン画像)の内の1つが表示される。通常は経線角度が0度のB−スキャン画像が表示される。
【0055】
隅角タブ70をクリック(選択)する(ステップS11)。モニタ7には
図8(b)に示すように、隅角解析用画面が表示される。
【0056】
検者は、画面中央に表示されたB−スキャン画像における角膜前面・角膜後面・虹彩前面のトレース結果を確認する(ステップS12)。ここで、もし、トレースの状態が正しくないと判断した場合は(ステップS13の「N」)トレース修正ボタン71を押し、再トレースを実施する(ステップS14)。
【0057】
トレースの状態が正しいと判断した場合は(ステップS13の「Y」)B−スキャン画像を観察し、強膜岬(SS)の位置を目視にて判断し、その位置をクリック(選択)する(ステップS15)。
【0058】
モニタ上でSSの位置をクリックすると、
図9(a)に示すように、SSの位置から角膜中心方向に、本実施例では、500μm離れた角膜後面上(トレース上)の位置に基準点AOD−TB(○印)を表示する(ステップS16)。
【0059】
次に、
図9(b)に示すように、基準点AOD−TBに対して80μmの範囲で角膜後面上(トレース上)にn個の
点P(i)[i=1,2,…, n]が自動的に設定される(ステップS17)。本実施例では、基準点AOD−TBの位置を中心に80μmの範囲が設定されているが、範囲の指定は、本実施例に限ったものではなく、80μmの範囲に基準点AOD−TBが入っていればよい。また、
P(1)〜P(n)のn個の点は、本実施例では等間隔に設定しているが、これも等間隔ではなく、ランダムな間隔でも構わない。また、n個の点は少なくとも2つ以上設定される。さらに、本実施例では範囲を80μmとしたが、これについても80μmに限ったものではなく、任意に適切な範囲を設定されていても構わない。
【0060】
次に、
図9(c)に示すように、各点(
P(1)〜P(n))から虹彩前面に向けてSSとAOD−TBを結ぶ線に対して直角となる線を引き、各点からの垂線と虹彩前面のトレース線との各接点(
Q(1)〜Q(n))を設定する。ここで、各P、Q間の距離を算出し、
AOD(1)(
P(1)と
Q(1)間の距離)〜AOD(n)(P(n)とQ(n)間の距離)として、n個のAODの値を記憶部10に記憶する(ステップS18、ステップS19)。
【0061】
そして、下式のように、n個のAODの値の平均値を算出する(ステップS20)。
AOD(μm)= SUM(
AOD(i)(μm))/n
[i=1,2,…,n]
【0062】
次に、ステップS19で作図した
AOD(1)〜AOD(n)を用いて、TISA(trabecular iris space area)を求める。
【0063】
まず、
図9(d)に示すように、SSから虹彩前面に向けて、
AOD(1)(
P(1)と
Q(1)を結んだ直線)に対し平行な直線を引く(ステップS21)。
【0064】
ステップS21で引いたSSと虹彩前面間の直線、
AOD(1)、角膜後面及び虹彩前面を囲われた領域の面積を算出して、
TISA(1)を算出する(
図9(d)、ステップS22)。
【0065】
上記のステップS21とステップS22を
図9(e)に示すように、AOD(n)まで実施して、n個のTISA(
TISA(1)〜TISA(n))を算出する(ステップS23)。
【0066】
下式のように、n個のTISAの値からTISAの平均値を算出する(ステップS24)。
TISA(μm
2)= SUM(
TISA(i)(μm
2))/n
[i=1,2,…,n]
【0067】
そして、ステップS20で算出されたAODの値と、ステップS24で算出されたTISAを、それぞれ、AOD500及びTISA500の値として
図8(b)の隅角解析用画面の下方の表72の中に表示される(ステップS25)。上記と同じ手順で、他のB−スキャン画像に対しても複数のAOD、複数のTISAを求めて、AOD500及びTISA500の値を算出して、表示する。
【0068】
上記方法では、複数の
AOD(i)[i=1,2,…, n]及び
TISA(i)[i=1,2,…, n]の値を単純平均して、それぞれAOD及びTISAを算出したが、単純平均ではなく、例えば、基準点AOD−TBを中心に重みづけをして平均化処理を実施してもよい。このような処理により、AOD及びTISAの値のばらつきのさらなる低減化やAOD及びTISAの値のさらなる適正化が期待できる。
【0069】
方法1では、複数のAOD及び複数のTISAの値を取得してその平均値を求めて、それぞれAOD及びTISAの値としたが、下述のように別の方法(請求項4及び5に係る方法、方法2)を用いてAOD及びTISAの値を求めてもよい。この方法2について、
図7のフローチャート及び
図10を参照しながら説明する。尚、上述の方法1と同様、以下の説明に記載の断層画像は、ラジアルスキャンの方式により取得した前眼部Ecの断層画像(B−スキャン画像)であり、
図10に示す角膜や虹彩の境界線は、B−スキャン画像に対して自動的に角膜前面・角膜後面・虹彩前面をトレースしたトレース線であるものとする。
【0070】
図7のステップS30からステップ36までの手順(AOD−TBを表示する)は、方法1におけるステップS10からステップ16と同じであるため、ここでは省略する。
【0071】
SSの位置を指定して、基準点AOD−TBが表示されたら、
図10(a)のように、基準点AOD−TBを中心に範囲80μmの範囲が指定され、角膜後面のトレース上の最前位置の点(開始点)P及び最後位置の点(終点)Qを決定し、設定する(ステップS37)。
【0072】
次に、設定された角膜後面上の点P及び点Qから虹彩前面に向けてSSとAOD−TBを結ぶ線に対して直角となる線を引き、虹彩前面のトレース線とのそれぞれの接点T及びUを決定し、設定する(ステップS38)。
【0073】
そして、
図10(a)に示すように、点Pと点Tとを結ぶ線、点Qと点Uとを結ぶ線、角膜後面(点P―点Q間のトレース線)及び虹彩前面(点T―点U間のトレース線)で囲まれた領域(
図10(a)の斜線部)の面積S(μm
2)を求める(ステップS39)。
【0074】
下式のように、求めた面積S(μm
2)を範囲の長さ80μmで除算して、AOD500を算出する(ステップS40)。
AOD(μm)= S(μm
2)/80(μm)
【0075】
次にTISA500を求める。
図10(b)に示すように、SSから直線P−T(AOD)に対して平行な直線を虹彩前面に向けて引く(ステップS41)。
【0076】
ステップS41で引いた直線、直線P−T(AOD)、角膜後面及び虹彩前面で囲われた領域(TISA)を記憶部10に記憶する(
図10(b)、ステップS42)。
【0077】
TISAを直線P−Tから
直線Q−Uまで求め、ステップS42と同様に記憶部10に記憶し、記憶された複数のTISAから
図10(c)に示す体積V(μm
3)を算出する(ステップS43)。
【0078】
下式のように、求めた体積V(μm
3)を範囲である高さ80μmで除算して、TISA500を算出する(ステップS44)。
TISA500(μm
2)=V(μm
3)/80(μm)
【0079】
上述のステップにて算出されたAOD500及びTISA500を
図8(b)の隅角解析用画面の下方の表72の中に表示される(ステップS45)。上記と同じ手順で、他のB−スキャン画像に対してもAOD500及びTISA500の値を算出して、表示する。
【0080】
上述した実施例ではAOD500及びTISA500を求めたが、同様な方法で、AOD750及びTISA750も算出可能であることは、言うまでもない。
【0081】
また、方法1の説明でも述べたが、本実施例では、80μmの範囲は基準点AOD−TBの位置を中心に設定されているが、範囲の指定は、本実施例に限ったものではなく、80μmの範囲に基準点AOD−TBが入っていればよい。また、本実施例では範囲を80μmとしたが、これについても80μmに限ったものではなく、任意に適切な範囲を設定されても構わないことは、方法1と同様である。
【0082】
さらに本発明は、隅角の閉塞度合いを定量的に表したパラメーターとして代表的なAOD及びTISAを対象としたが、ARA(Angle Recess Area)やACA(Anterior Chamber Angle)などについても同様な方法で算出し、ばらつきを減らす共に適切な値を得ることが可能である。
【0083】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることが、理解されるべきである。
【0084】
以上のように、本実施形態によれば、上記に説明したように、ポイントされた強膜岬(SS)の位置が検者間や検査毎でばらついても、AOD及びTISAの値のばらつきが減らすと共に、適正なAOD及びTISAの値を得ることが可能なのである。