(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記戻し通路の前記排気通路側の出口に設けられ、凝縮水を前記排気通路中に散布するベンチュリを更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のEGRシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、EGR効率を向上させる方法の一つとして、EGRガスの強冷却が進められている。しかしながら、EGRガスを強冷却すると、硫酸成分を含む凝縮水が発生し、この凝縮水が吸気系に流れ込むことでエンジン部材の腐食を招くと言う問題がある。このため、強冷却で発生した凝縮水を適切に処理する必要があった。凝縮水の処理について、前述した従来のEGRシステムにおいては未だ改善の余地が存在する。
【0005】
そこで、本発明は、EGRガスの冷却によりEGR効率を高めつつ、触媒などに影響が少なく、凝縮水を適切に処理することができるEGRシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、内燃機関の排気通路を流れる排気ガスの一部をEGRガスとして吸気通路に戻すEGR通路を備えたEGRシステムであって、EGR通路に設けられ、EGRガスを冷却するEGRクーラーと、EGR通路に設けられ、EGRガスの冷却により生じる凝縮水を貯留するタンクと、EGR通路を開閉するEGRバルブと、タンク及び排気通路を接続し、タンクに貯留された凝縮水を排気通路に戻す戻し通路と、
タンク内に設けられ、凝縮水の水位を検出する水位センサと、水位センサの検出信号に基づいてEGRバルブを制御する制御手段と、を備え、戻し通路は、排気通路に対して排気ガスの後処理装置よりも下流側に接続されて
おり、EGRバルブは、EGR通路においてタンクより下流側に配置され、制御手段は、タンク内の凝縮水の水位が所定の危険水位を超えたと判定した場合に、EGRバルブを閉鎖することを特徴とする。
【0007】
本発明に係るEGRシステムによれば、EGRクーラーの冷却により生じた凝縮水を貯留するタンクを備えることで、凝縮水の吸気通路への混入を避けることができる。しかも、タンクに貯留した凝縮水を排気通路に戻すことで排気ガスと共に排出できるので、凝縮水の発生による悪影響を受けることなく、EGRガスの十分な冷却を実現することができ、EGR効率を向上させることができる。更に、このEGRシステムによれば、触媒などの後処理装置より下流側に凝縮水を戻すので、後処理装置の上流側に凝縮水を戻す場合と比べて、凝縮水に起因する触媒の水熱劣化を避けることができる。また、このEGRシステムでは、後処理装置より下流側に凝縮水を戻すので、後処理装置の上流側に凝縮水を戻す場合と比べて、凝縮水の気化潜熱により触媒の温度が下がることが避けられ、触媒機能の低下を抑制できる。
【0008】
また、本発明に係るEGRシステムにおいては、タンク内に配置され、凝縮水の水位に応じて位置が上下するフロートと、フロートに接続され、フロートが所定の高さ以上に上昇することで戻し通路を開放すると共に、フロートが所定の高さ未満に下降することで戻し通路を閉鎖する弁体と、を更に備えてもよい。
このEGRシステムによれば、所定の水位まで凝縮水が溜まった場合に、フロートの浮上により機械的に弁体が戻し通路を開放してタンク内の凝縮水が排出されるので、簡素な構成でタンク内の凝縮水の貯留量の調整を実現することができる。
【0009】
また、本発明に係るEGRシステムにおいては、戻し通路の排気通路側の出口に設けられ、凝縮水を排気通路中に散布するベンチュリを更に備えてもよい。
このEGRシステムによれば、ベンチュリにより排気ガスの流れを利用して戻り通路内の凝縮水を吸い出すことができるので、ポンプなどを別途設ける必要がなくなり、構成の簡素化を図ることができる。また、このEGRシステムによれば、ベンチュリにより凝縮水を排気ガス中に散布することができるので、凝縮水が排気通路に流れ込むような場合と比べて、凝縮水を効率良く気化させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るEGRシステムによれば、EGRガスの冷却によりEGR効率を高めつつ、触媒などに影響が少なく、凝縮水を適切に処理することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
[第1の実施形態]
図1に示されるように、第1の実施形態に係るEGR[Exhaust Gas Recirculation]システムは、車両に搭載されるディーゼルエンジン(内燃機関)1に対して備えられ、排気ガスの一部を排気通路3から吸気通路2に戻すことによりNOx(窒素酸化物)の低減や燃費向上を図るものである。
【0015】
まず、ディーゼルエンジン1の構成について説明する。ディーゼルエンジン1は、外部から吸気するための吸気通路2を備えており、吸気通路2の入口には、吸気から埃等を除去するためのエアクリーナ4が設けられている。
【0016】
また、吸気通路2の途中には、ターボチャージャー5を構成するコンプレッサ5aが配置されており、その下流にはコンプレッサ5aによる過給で温度上昇した空気を冷やすためのインタークーラ6が設けられている。
【0017】
一方、排気通路3の途中には、ターボチャージャー5を構成するタービン5bが設けられている。ターボチャージャー5は、排気ガスの排気エネルギーによりタービン5bが回転されることにより、吸気通路2側のコンプレッサ5aが回転駆動され、空気の圧縮すなわち過給が行われる。
【0018】
排気通路3において、タービン5bの下流には、排気ガスの後処理装置7が設けられている。後処理装置7は、排気ガスを浄化するための装置であり、DPF[Diesel Particulate Filter]8及びNOx触媒9を備えている。
【0019】
DPFは、ディーゼルエンジン1の排気ガス中に含まれる煤などの粒子状物質(PM, Particulate Matter)を捕集するためのフィルターである。フィルター素材としては、例えばセラミックが用いられる。
【0020】
NOx触媒9は、排気ガス中のNOxを浄化するための触媒である。NOx触媒9としては、例えばゼオライト触媒を用いることができる。また、NOx触媒9として、白金などを用いた通常の三元触媒や選択還元触媒[SCR Selective Catalytic Reduction]、NOx吸蔵還元触媒を採用してもよい。選択還元触媒には、尿素を使用する尿素SCR触媒と軽油を使用する軽油SCR触媒などがある。
【0021】
次に、本実施形態に係るEGRシステムについて説明する。本実施形態に係るEGRシステムは、排気通路3におけるタービン5bの下流側から、吸気通路2におけるコンプレッサ5aの上流側へEGRガスを戻すLPL[Low Pressure Loop]のEGRシステムである。
【0022】
このEGRシステムは、排気通路3と吸気通路2を接続するEGR通路10を備えている。EGR通路10の入口は、排気通路3におけるDPF8とNOx触媒9の間に設けられている。また、EGR通路10の出口は、吸気通路2におけるコンプレッサ5aの上流側に設けられている。このEGR通路10の途中には、EGRクーラー11、凝縮水タンク12、及びEGRバルブ13がそれぞれ設けられている。
【0023】
EGRクーラー11は、EGR通路10の入口側に設けられ、EGR通路10に流れ込んだ排気ガスであるEGRガスを冷却するための熱交換器である。例えば、EGRクーラー11は、EGRガスが流れる複数本の配管の束を有しており、その周囲を冷却水が流れることでEGRガスが冷却される。EGRクーラー11では、EGRガスの一部が凝縮して硫酸成分などを含む凝縮水が生じる強冷却が行われる。
【0024】
凝縮水タンク12は、EGRクーラー11より下流に設けられ、EGRクーラー11の強冷却で生じた凝縮水を貯留するためのタンクである。EGRガス中の水分の凝縮により生じた凝縮水は、EGR通路10を流れて凝縮水タンク12に貯まる。一方、EGRガスは、凝縮水タンク12の上方のスペースを通過してEGR通路10の下流へと流れる。この凝縮水タンク12は、EGRガスが通過するEGR通路10の一部を構成している。
【0025】
EGRバルブ13は、開閉により吸気通路2に流れ込むEGRガスの流量を制御する電磁弁である。このEGRバルブ13は、凝縮水タンク12よりも下流側に設けられている。EGRバルブ13は、車両のECU[Engine Control Unit](制御手段)20によって制御されている。ECU20は、車両のエンジン関連の機器を統括的に制御する電子制御ユニットであり、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]などから構成されている。
【0026】
凝縮水タンク12の底には、凝縮水を排気通路3に戻すための戻し通路14が接続されている。戻し通路14の入口(凝縮水タンク12側の開口)は、フロート15と接続された弁体16によって閉鎖されている。
【0027】
フロート15は、タンク内に配置され、凝縮水の水位に応じて位置が上下する浮体である。フロート15は、連結棒15aを介して凝縮水タンク12の内壁に接続されている。連結棒15aは、凝縮水タンク12の内壁に対して上下方向の角度変更自在(上下に揺動自在)に接続されており、フロート15の浮き沈みに追従して上下する。この連結棒15aには、下方に延びる棒材16aが接続されており、この棒材16aの下端に弁体16が配置されている。
【0028】
この構成によれば、凝縮水タンク12内に凝縮水が貯まってフロート15が所定の高さ以上に上昇すると、フロート15に追従して弁体16が引き上げられ、戻し通路14の入口が開放されて凝縮水が戻し通路14内に流れ込む。その後、凝縮水タンク12内の凝縮水が減少してフロート15が所定の高さ未満に下降すると、弁体16が沈んで戻し通路14の入口が閉鎖される。このようにして、凝縮水タンク12内の凝縮水の量が調整される。なお、この所定の高さは、凝縮水タンク12の容量などに応じて適切に設定される。
【0029】
また、戻し通路14の出口は、排気通路3に対して後処理装置7よりも下流側に接続されている。触媒が複数備えられる場合においても、戻し通路14の出口は、全ての触媒より下流側に接続される。この戻し通路14の出口には、凝縮水を排気ガス中に散布するためのベンチュリ17が設けられている。
【0030】
ベンチュリ17は、排気通路3の一部を狭めて形成され、排気ガスの流速増加に伴って生じる圧力低下により、戻し通路14の凝縮水を吸い出す。凝縮水を排気ガス中に散布して効率的に気化させるため、散布用のノズルを設けてもよい。凝縮水が効率良く気化することで、気化潜熱により排気ガスの温度を下げることができる。また、環境保護の観点からも凝縮水が効率良く気化することが望ましい。
【0031】
なお、排気圧損を抑えるため、排気通路3の一部を分岐してメイン通路とサブ通路とに分け、ベンチュリ17をサブ通路に設ける構成としてもよい。また、二重管の構造を採用して外側通路及び内側通路の何れか一方をメインのガス通路とし、他方のガス通路にベンチュリ17を設けてもよい。なお、必ずしもベンチュリ17を備える必要はない。
【0032】
また、凝縮水タンク12内には、凝縮水の水位を検出する水位センサ18が設けられている。この水位センサ18は、フロート機構が上手く動かずに、凝縮水の水位が危険水位まで上昇したことを検出するためのものである。水位センサ18は、例えば凝縮水タンク12内の凝縮水の水位が所定の危険水位に至った場合、車両のECU20に対して検出信号を送信する。
【0033】
ECU20は、水位センサ18の検出信号に基づいて、凝縮水がEGR通路10に溢れ出る可能性のある危険水位に至ったか否かを判定する。ECU20は、凝縮水タンク12内の水位が危険水位に至ったと判定した場合、EGRバルブ13制御してEGR通路10を閉鎖する。これにより、凝縮水タンク12から溢れた凝縮水は下流側のEGRバルブ13で止められるので、EGR通路10を通じて吸気通路2に入り込み、ディーゼルエンジン1に損傷を与える事態を防止できる。なお、必ずしも水位センサ18を設けて、上記制御を採用する必要はない。
【0034】
以上説明した第1の実施形態に係るEGRシステムによれば、EGRクーラー11の強冷却により生じた凝縮水を貯留する凝縮水タンク12を備えることで、凝縮水の吸気通路2への混入を避けることができる。しかも、凝縮水タンク12に貯留した凝縮水を排気通路3に戻すことで排気ガスと共に排出できるので、凝縮水の発生による悪影響を受けることなく、EGRガスの十分な冷却を実現することができ、EGR効率を向上させることができる。また、このEGRシステムによれば、凝縮水を排気ガスの熱で蒸発させることで、排出する排気ガスの温度を低減することもできる。
【0035】
更に、このEGRシステムによれば、後処理装置7より下流側に凝縮水を戻すので、後処理装置7の上流側に凝縮水を戻す場合と比べて、凝縮水に起因するNOx触媒9の水熱劣化を抑えることができる。また、このEGRシステムでは、後処理装置7より下流側に凝縮水を戻すことで、凝縮水の気化潜熱によりNOx触媒9の温度が下がることが避けられ、触媒機能の低下を抑制できる。
【0036】
また、このEGRシステムによれば、フロート15及び弁体16を用いたフロート機構を採用することにより、所定の水位まで凝縮水が溜まった場合に、フロート15の浮上により機械的に弁体16が戻し通路14を開放して凝縮水タンク12内の凝縮水が排出されるので、ポンプ等を用いることなく、簡素な構成で凝縮水タンク12内の凝縮水の貯留量の調整を実現することができる。
【0037】
更に、このEGRシステムにおいては、戻し通路14の出口にベンチュリ17を備えているので、ベンチュリ17により排気ガスの流れを利用して戻り通路14内の凝縮水を吸い出すことができ、ポンプなどを別途設ける必要がなく、システム構成の簡素化を図ることができる。
【0038】
また、このEGRシステムによれば、水位センサ18の検出信号に基づき、凝縮水タンク12内の凝縮水の水位が所定の危険水位を超えたと判定した場合にEGRバルブ13を閉鎖するので、凝縮水タンク12内の凝縮水が溢れてEGR通路10を流れ、吸気通路3に入り込んでディーゼルエンジン1を損傷させる事態を防止することができる。
【0039】
[第2の実施形態]
図2に示す第2の実施形態に係るEGRシステムは、第1の実施形態に係るEGRシステムにおけるフロート機構及びベンチュリ17に代えて、ポンプ21を備えている点のみが異なっている。
【0040】
第2の実施形態に係るEGRシステムでは、凝縮水タンク12と排気通路3を接続する戻り通路14の途中にポンプ21が備えられている。ポンプ21は、凝縮水タンク12内の凝縮水を戻り通路14を通じて排気通路3に送り出すためのものである。
【0041】
ポンプ21は、ECU20によって制御される。ポンプ21は、凝縮水タンク12の水位が危険水位まで上がらないように適切なタイミングで凝縮水を排気通路3に送り出す。また、ポンプ21は、例えば排気ガスの温度に基づいて、凝縮水を排気通路3に送り出すように制御されてもよい。この場合、ポンプ21は、排気通路3に設けられた排気温度センサ(図示せず)の検出信号に基づいて、排気ガスの温度が凝縮水を適切に気化できる温度以上である場合に、凝縮水を排気通路3に送り出す。
【0042】
なお、ポンプ21は、電磁弁付きポンプとしてもよい。この場合、凝縮水タンク12内に凝縮水が十分に貯まっていないときには、電磁弁を閉鎖することで凝縮水の垂れ流しを防止することができる。
【0043】
以上説明した第2の実施形態に係るEGRシステムにおいても、EGRクーラー11の強冷却により生じた凝縮水を貯留する凝縮水タンク12を備えることで、凝縮水の吸気通路2への混入を避けつつ、EGRガスの十分な冷却を実現することができ、EGR効率を向上させることができる。また、このEGRシステムによれば、触媒などの後処理装置7より下流側に凝縮水を戻すので、後処理装置7の上流側に凝縮水を戻す場合と比べて、触媒の水熱劣化や触媒機能の低下を抑えることができる。
【0044】
また、このEGRシステムによれば、ポンプ21に電気的に凝縮水の排出を制御することができるので、排気ガスの温度などを考慮した適切なタイミングで凝縮水を排出することができる。このことは、凝縮水の気化潜熱による排気ガスの温度調整や環境負荷の軽減に有利である。
【0045】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明はディーゼルエンジンに限られず、ガソリンエンジンについても適用可能である。
【0046】
また、本発明は、LPLのEGRシステムに限定される必要はなく、HPL[High Pressure Loop]のEGRシステムに適用してもよい。また、必ずしも内燃機関はターボチャージャーを備える必要はない。この場合には、EGR通路の入口をDPFより上流側に設けることもできる。