特許第6263352号(P6263352)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263352
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】ライナー及びライナー取付方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/24 20060101AFI20180104BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   E04B1/24 F
   E04B1/58 F
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-181487(P2013-181487)
(22)【出願日】2013年9月2日
(65)【公開番号】特開2015-48648(P2015-48648A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2016年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100111109
【弁理士】
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】田中 秋水
【審査官】 富士 春奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−177894(JP,A)
【文献】 特開2010−163766(JP,A)
【文献】 特開2006−305520(JP,A)
【文献】 特開平05−193896(JP,A)
【文献】 米国特許第4817794(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B1/00−1/61
E04B2/56−2/70
2/88−2/96
E04C3/00−3/46
E04G21/14−21/22
F16D65/095
F16B23/00−43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材の間に挿入されて該部材の間隔を調整する板状のライナーであって、
該板状のライナーは、前記部材の間に挿入される挿入片と、該挿入片が前記部材の間に挿入された状態において前記部材からはみ出すはみ出し片との間にノッチを有し、
該ノッチは、前記挿入片が前記部材の間に所定の位置まで挿入されたときに、前記部材の外形の少なくとも一部に一致するように形成されており、
前記挿入片と前記はみ出し片とは、前記ノッチで折り曲げられて切り離され
前記はみ出し片には、前記ライナーを前記部材の間から引き抜く器具に係合する係合穴が形成されていることを特徴とするライナー。
【請求項2】
前記挿入片は、厚さ方向に貫通して前記ライナーの挿入方向に端縁まで延出するスリットを有することを特徴とする請求項1に記載のライナー。
【請求項3】
前記ノッチは複数形成されており、
前記板状のライナーは、第1の部材の間に挿入される第1の挿入片と、該第1の挿入片が前記第1の部材の間に挿入された時に前記第1の部材からはみ出す第1のはみ出し片との間に第1のノッチを有し、
前記第1のはみ出し片には、第2の部材の間に挿入される第2の挿入片と、該第2の挿入片が前記第2の部材の間に挿入された時に前記第2の部材からはみ出す第2のはみ出し片との間に第2のノッチが形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のライナー。
【請求項4】
部材の間に挿入されて該部材の間隔を調整する板状のライナーであって、
該板状のライナーは、前記部材の間に挿入される挿入片と、該挿入片が前記部材の間に挿入された状態において前記部材からはみ出すはみ出し片との間にノッチを有し、
該ノッチは、前記挿入片が前記部材の間に所定の位置まで挿入されたときに、前記部材の外形の少なくとも一部に一致するように形成されており、
前記挿入片と前記はみ出し片とは、前記ノッチで折り曲げられて切り離され、
前記部材の間に挿入される前記挿入片を複数備え、
該挿入片の少なくとも一組は、略L字状に連結されていることを特徴とするライナー。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のライナーを用意し、
前記部材の外形の少なくとも一部に前記ノッチが沿う位置まで、複数の前記部材の間に前記挿入片を挿入し、
前記ノッチで折って、前記はみ出し片を前記挿入片から切り離すことを特徴とするライナー取付方法。
【請求項6】
請求項に記載のライナーを用意し、
前記第1の部材の間に前記第1の挿入片を挿入して、前記第1のノッチで折り曲げて前記第1の挿入片から前記第1のはみ出し片を切り離した後に、
前記第2の部材の間に、前記第2の挿入片を挿入して、前記第2のノッチで折り曲げて前記第2の挿入片から前記第2のはみ出し片を切り離すことを特徴とするライナー取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライナー及びライナー取付方法、特に、柱材、梁又はブレース等の取り合い寸法を調整するためのライナー及びライナー取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
柱材、梁又はブレース等の建築等に用いられる部材同士を組み付けにおいて、他の部材との組み付けが寸法上不可能になることを避ける必要がある。このために、各部材の取り合い寸法において予め隙間ができるように設計された各部材を用意して、建築現場で組み上げる際に、取り合い箇所にある接合部の間隔の調整する方法がある。この調整を実現する手段として金属製の薄板であるライナーが用いられていた。
【0003】
具体的な間隔の調整は、各部材の接合部において生じている隙間、例えば、各部材のボルトナットで結合されたフランジ状の各端部の隙間に合う厚みのライナーが選定され、これを各端部の隙間に挿入することによってなされる。
【0004】
例えば、特許文献1には、ブレース(上斜材及び下斜材)と柱材との接合部の隙間にライナー(スペーサ)を挿入して、ブレースと柱材との取り合い寸法を調整するという技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−242330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されたライナーを、ボルトナットで締結された接合部の隙間に一旦挿入してしまうと、ライナーの厚み分だけ接合部が離れ、接合部を締結するボルトナットの締結力が大きくなり、ボルトナットを緩めることが難しくなり、ライナーを引き抜くのが困難となる。
【0007】
例えば、挿入したライナーでは、接合部の隙間が所定の大きさよりも大きくなりすぎている場合であって、厚さの薄いライナーに変更しようとするときに、上記のようにボルトナットの締結力が大きくなりライナーを引き抜くのが困難になるために作業性が低かった。このように、厚さの厚いライナーから薄いライナーに変更することを避けるために、想定よりも十分に薄いライナーから、順に厚いライナーに変更する取付方法がある。しかし、この取付方法にすると、複数回、ライナーを挿入する必要があるため作業性が低かった。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、取付作業性が良好なライナー及びライナー取付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、本願発明の第1の観点に係るライナーによれば、部材の間に挿入されて該部材の間隔を調整する板状のライナーであって、該板状のライナーは、前記部材の間に挿入される挿入片と、該挿入片が前記部材の間に挿入された状態において前記部材からはみ出すはみ出し片との間にノッチを有し、該ノッチは、前記挿入片が前記部材の間に所定の位置まで挿入されたときに、前記部材の外形の少なくとも一部に一致するように形成されており、前記挿入片と前記はみ出し片とは、前記ノッチで折り曲げられて切り離され、前記はみ出し片には、前記ライナーを前記部材の間から引き抜く器具に係合する係合穴が形成されていること、により解決される。
【0010】
このように、挿入片とはみ出し片との間にノッチを有するライナーを用いることによって、部材の外形の少なくとも一部とノッチとが一致する所定の位置まで、挿入片を部材の間に挿入することで、ノッチを挿入片の挿入位置についてのガイドとして利用することができ、更に、部材の間に挿入片を挿入した状態で、はみ出し片をノッチで折り曲げて切り離すようにできることで、ライナーの部材の間への取付作業性が向上する。
【0011】
更に、はみ出し片に、係合穴が形成されているようにすることで、係合穴に、ライナーを引き抜く器具を係合させることによって、部材の間に挿入されたライナーを容易に引き抜くことができる。厚さの異なるライナーへの変更が必要な場合に特に有効となる。
【0012】
更に、前記挿入片は、厚さ方向に貫通して前記ライナーの挿入方向に端縁まで延出するスリットを有しているとより好ましい。
このように、挿入片にスリットが形成されていることで、部材の間にボルト等の締結具が挿通している場合であっても、締結具をスリットに通すようにして、挿入片を挿入することができる。
【0013】
また、前記ノッチは複数形成されており、前記板状のライナーは、第1の部材の間に挿入される第1の挿入片と、該第1の挿入片が前記第1の部材の間に挿入された時に前記第1の部材からはみ出す第1のはみ出し片との間に第1のノッチを有し、前記第1のはみ出し片には、第2の部材の間に挿入される第2の挿入片と、該第2の挿入片が前記第2の部材の間に挿入された時に前記第2の部材からはみ出す第2のはみ出し片との間に第2のノッチが形成されているようにしてもよい。
このように、板状のライナーが第1のノッチと、第2のノッチとを有することで、第1の挿入片を第1の部材の間に挿入し、第1のはみ出し片を第1のノッチで切り離した後においても、切り離された第1のはみ出し片の第2の挿入片を第2の部材の間に挿入して、第2のノッチで第2のはみ出し片を切り離すことができ、1個のライナーで2箇所の部材間の間隔を調整でき、取付作業性を向上させることができる。
【0014】
また、前述した課題は、本発明のライナーによれば、部材の間に挿入されて該部材の間隔を調整する板状のライナーであって、該板状のライナーは、前記部材の間に挿入される挿入片と、該挿入片が前記部材の間に挿入された状態において前記部材からはみ出すはみ出し片との間にノッチを有し、該ノッチは、前記挿入片が前記部材の間に所定の位置まで挿入されたときに、前記部材の外形の少なくとも一部に一致するように形成されており、前記挿入片と前記はみ出し片とは、前記ノッチで折り曲げられて切り離され、前記部材の間に挿入される前記挿入片を複数備え、該挿入片の少なくとも一組は、略L字状に連結されていることにより解決される
このように、挿入片の少なくとも一組は、略L字状に連結されていることで、複数の部材の間が略L字状を含む空間から成る場合に、略L字状に連結された少なくとも一組の挿入片を含むライナーを挿入することで、容易に間隔調整ができ、取付作業性が向上する。
【0015】
また、前記課題は、本願発明の第2の観点に係るライナー取付方法によれば、前記ライナーを用意し、前記部材の外形の少なくとも一部に前記ノッチが沿う位置まで、前記複数の部材の間に前記挿入片を挿入し、前記ノッチで折って、前記はみ出し片を前記挿入片から切り離すようにすること、により解決される。
【0016】
このように、ライナーのノッチが部材の外形に沿う位置まで、ライナーを部材の間に挿入するようにして、ノッチをライナーの挿入位置についてのガイドとして利用することができ、部材の間に挿入片を挿入した状態で、はみ出し片をノッチで折り曲げて切り離すようにできることで、ライナーの部材の間への取付作業性が向上する。
【0017】
また、前記ライナーを用意し、前記第1の部材の間に前記第1の挿入片を挿入して、前記第1のノッチで折り曲げて前記第1の挿入片から前記第1のはみ出し片を切り離した後に、前記第2の部材の間に、前記第2の挿入片を挿入して、前記第2のノッチで折り曲げて第2の挿入片から前記第2のはみ出し片を切り離すようにしてもよい。
このように、第1の挿入片を第1の部材の間に挿入し、第1のはみ出し片を第1のノッチで切り離した後において、切り離された第1のはみ出し片を、第2の部材の間に挿入して第2のノッチで第2のはみ出し片で切り離すようにすることで、1個のライナーで2箇所の部材間の間隔を調整でき、取付作業性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、取付作業性が良好なライナー及びライナー取付方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本願発明の第1の実施形態に係るライナーがフレームを構成するブレースの接合継手と柱材の接合継手との間に挿入された状態を示す模式図である。
図2】本願発明の第1の実施形態に係るライナーをブレースの接合継手と2本の柱材の接合継手との間に挿入した状態を示す拡大図である。
図3】部材間にライナーを挿入して部材間の長さを調整することを示す模式的な概念図である。
図4】本願発明の第1の実施形態に係るライナーを示す正面図である。
図5】ブレースの接合継手と柱材の接合継手との間に挿入したライナーを引き抜く動作を示す模式図である。
図6】ブレースの接合継手と柱材の接合継手との間に挿入したライナーのはみ出し片を挿入片から切り離す動作を示す模式図である。
図7】本願発明の変形例に係るライナーを示す正面図である。
図8】本願発明の第2の実施形態に係るライナーを直交する梁の間に挿入した状態を示す斜視図である。
図9】本願発明の第2の実施形態に係るライナーを示す正面図である。
図10】本願発明の第3の実施形態に係るライナーを示す正面図である。
図11】本願発明の第4の実施形態に係るライナーを示す正面図である。
図12】本願発明の第5の実施形態に係るライナーについての(a)は、2本の梁の間と2本の梁、柱材の間とにライナーを挿入する前の状態を示す斜視図、(b)は、2本の梁の間と2本の梁、柱材の間とにライナーを挿入した後の状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
【0021】
<<第1の実施形態>>
以下、本願発明の第1の実施形態に係るライナー1について、図1図6を参照しながら説明する。
まず、第1の実施形態に係るライナー1の使用用途について、図1図3を参照して説明する。ここで、図1は、フレームFを構成するブレース3の接合継手3aと2本の柱材2の接合継手2b,2cとの間にライナー1が挿入された状態を示す模式図である。図2は、ライナー1をブレース3の接合継手3aと柱材2Bの接合継手2cとの間に挿入した状態を示す拡大図、図3は、部材間にライナー1を挿入して部材間の長さを調整することを示す模式的な概念図である。
【0022】
本実施形態において説明する鉄骨造の構造住宅の骨組みとなるフレームFは、図1に示すように、基礎Bから突出する図示せぬアンカーボルト上に立設する複数の柱材2と、二本の柱材2に斜め架けされたブレース3と、柱材2の上部に横架された複数の梁4とを備える。
【0023】
具体的には、柱材2は、本実施形態において角パイプ状であり、その下端に設けられた接合継手2aが基礎Bから突出する図示せぬアンカーボルトに固定されることによって、接合継手2aを介して基礎Bに固定されている。
ここで、接合継手2aは、後述するブレース3の接合継手3aと同様の形状を有する。
【0024】
また、図1において左側に示された柱材2Aには、その下部の側面から斜め上方に向いて突出して、ブレース3の下端を接合するための接合継手2bが溶接されており、図1において右側に示された柱材2Bには、その上部の側面から斜め下方に向いて突出して、ブレース3の上端を接合するための接合継手2cが溶接されている。
接合継手2b,2cは、本実施形態において、図2に示すように、長手方向に延在する平板状のウェブ2dと、ウェブ2dから垂直に形成されて長手方向に延在するリブ2eと、ウェブ2d及びリブ2eに垂直な矩形状のフランジ2fとを有する。
【0025】
ブレース3は、本実施形態において角パイプ状であり、両端部に接合継手3aを有し、接合継手3aを介して、柱材2Aの接合継手2bと柱材2Bの接合継手2cとの間に、ボルト7a、ナット7bによって締結されている。
接合継手3aは、本実施形態において、図2に示すように、2枚のフランジ3fの中央にウェブ3bを有する略H形であり、更にウェブ3bの中央に、フランジ3fに垂直に延在するリブ3cを有する形状であり、フランジ3fが端部となる向きでブレース3に一体的に取り付けられている。
【0026】
梁4は、本実施形態においてH型鋼で形成されており、接合継手4aを有する。接合継手4aは、角パイプ状に形成されており、側面の各面に、上下に5個、横2列の貫通孔4ahが形成されている。接合継手4aと柱材2の上端に設けられた接合継手2aとは、ボルトナット7によって締結されている。
【0027】
ここで、ライナー1は、図3に示すように、部材間の長さを調整する用途に用いられるものである。特に、第1の実施形態に係るライナー1は、図1及び図2に示すように、ブレース3の接合継手3aのフランジ3fと柱材2Aの接合継手2b又は柱材2Bの接合継手2cのフランジ2fとの間に挿入されて、接合継手3aと接合継手2b又は接合継手2cとの間隔を調整する用途に用いられるものである。
【0028】
次に、ライナー1の構成について、図4を参照して説明する。ライナー1は、本実施形態において、幅80mm、長さ120mmで形成され、0.8mm、1.6mm、2.3mmの複数の厚さを有する複数種類の金属製の薄板である。
【0029】
ライナー1は、柱材2Aの接合継手2b又は柱材2Bの接合継手2cとブレース3の接合継手3aとの間に挿入される挿入片1aと、ミシン目状に断続的に形成された孔から成り直線的に延出するノッチ1nと、当該ノッチ1nによって挿入片1aと隔てられ、接合継手2b又は接合継手2cと接合継手3aの間に挿入片1aが挿入された状態において、部材間からはみ出すはみ出し片1bとを備える。
換言すると、ノッチ1nは、予め定められているライナー1を挿入する対象である部材の外形に沿うように、形成されている。
なお、ノッチ1nは、ライナー1の厚さ方向に貫通した孔に限らず、有底の溝であってもよく、溝である場合には、断続に形成されていなくとも、けがき溝のように連続的に形成されているものであってもよい。
【0030】
挿入片1aには、予め定められた挿入側の端面から挿入方向に延在するスリット1sが2本形成されている。
スリット1sは、接合継手3aと接合継手2b又は接合継手2cとの締結に用いられるボルト7aを通る幅、本実施形態において幅14mmで形成されており、2本のスリット1sの間隔は、ライナー8の挿入方向に2列に配列されたボルト7aの列の間隔と一致するように形成されている。
このように構成されたスリット1sによって、接合継手3aと接合継手2b又は接合継手2cとの間にライナー1を挿入する際に、ボルト7aによってその挿入が阻害されない。
【0031】
はみ出し片1bには、ライナー1を引き抜く際に用いられるシノ30等の先細の工具に係合する係合孔1hが、厚さ方向に貫通して略中央の1箇所に形成されている。なお、係合孔1hは、貫通孔でなくとも有底の溝であってもよく、1箇所に限らず複数箇所に形成されているものであってもよい。
【0032】
(ライナー1の使用方法)
最後に、ライナー1の使用方法(取付方法)について、図5及び図6を参照して説明する。ここで、図5は、ブレース3の接合継手3aと柱材2Bの接合継手2cとの間に挿入したライナー1を引き抜く動作を示す模式図である。また、図6は、ブレース3と柱材2Bの接合継手2cとの間に挿入したライナー1のはみ出し片1bを挿入片1aから切り離す動作を示す模式図である。
【0033】
図5に示すように、接合継手3aと接合継手2cとの間に挿入したライナー1を、例えば厚さの異なるものに変更する場合には、シノ30を係合孔1hに挿入して、ライナー1の挿入方向の逆方向である引き抜き方向に、シノ30を介してライナー1に力を付加する。このように係合孔1hにシノ30を通して、ライナー1に力を付加すると、引き抜き方向への力が係合孔1hの内縁を介してライナー1に効率的に伝わることで、はみ出し片1bを手で把持して引き抜き方向に力を加えるよりも、容易にライナー1に引き抜くことができる。
【0034】
また、接合継手3aと接合継手2cとの間にライナー1を挿入することによって、これらの間隔が所望の間隔となった場合、つまり、挿入するライナー1が確定し、交換する必要がなくなった場合には、接合継手3aと接合継手2cから突出するはみ出し片1bが、他の部材との配置の関係上、邪魔となる。
このような場合には、図6に示すように、シノ30を係合孔1hに挿入し、シノ30を把持しているシノ30の基端側を係合孔1hの挿入側である先端側に対して回動させることによって、はみ出し片1bをノッチ1nに対して回動させることで、はみ出し片1bを折り曲げて挿入片1aから容易に切り離すことができる。
具体的には、ノッチ1nは、接合継手2cのフランジ2fの外形、及び接合継手3aのフランジ3fの外形と一致するように形成されているため、固定支点となるノッチ1nに曲げ応力が付加されることにより、はみ出し片1bを折り曲げて挿入片1aから容易に切り離すことができる。
【0035】
また、挿入片1aから切り離したあとのはみ出し片1bについては、通常廃棄するものであるが、例えば、基礎Bと柱材2の下端にある接合継手2a間であって、図示せぬアンカーボルトが通っていない部分のスペーサとして用いるようにしてもよく、溶解して他の用途に用いるようにしてもよい。
【0036】
なお、一度のはみ出し片1bの回動によって、切り離すことができない場合であっても、往復して回動させて、繰り返し応力を付加することで、はみ出し片1bを挿入片1aから切り離すことができる。
更には、はみ出し片1bを作業者の手で回動させて、挿入片1aから切り離すようにしてもよく、シノ30による場合と手による場合とを組み合わせるようにしてもよい。
【0037】
<変形例>
以下、変形例に係るライナー8について、図7を参照しながら説明する。なお、以下において、上記の実施形態において説明した部位と異なる部位の特徴を明確にするため、共通する部位については、同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0038】
変形例に係るライナー8は、中央に1本のスリット8sが形成された挿入片8aを備えるものである。このライナー8は、フランジ2fとフランジ3fとを締結するボルト7aが、フランジ2fとフランジ3fの幅方向の中央であって、ライナー8の挿入方向に1列に配列されているものに用いられる。
【0039】
なお、ライナー8のスリット8sは、フランジ2fとフランジ3fとを締結するボルト7aの複数個を通る幅で形成されているものであってもよい。このようにすれば、ライナー8をより汎用性の高いものとすることができる。
【0040】
<<第2の実施形態>>
本願発明の第2の実施形態に係るライナー9について、図8及び図9を参照して説明する。ここで、図8は、ライナー9を直交する梁4,5の間に挿入した状態を示す斜視図である。また、図9は、ライナー9を示す正面図である。
【0041】
ライナー9は、図8に示す、直交する梁4の端部4bと、梁5の側面に面一に形成されてボルト7aを通す貫通孔4ahを有する接合継手4a(図1参照)との間に挿入されるものである。ライナー9は、高さ方向に長く形成されたH型鋼から成る梁4の端部4bに合わせて、ライナー1の所定の挿入方向に垂直な方向である幅方向に長く形成されている。
【0042】
また、ライナー9の挿入片9aには、図9に示すように、ボルト7aの幅よりも大きい幅で形成された本実施形態においては5本のスリット9sが挿入方向である短手方向に挿入側の側面まで延出して形成されている。
なお、図8に示すように、梁4の端部4bと、接合継手4a(図1参照)の貫通孔4ahには、3本のボルト7aが通り、3個のナット7bによって締結されている。ライナー9のスリット9sは、ボルト7aの3本よりも多い5本形成されていることで、ボルト7aの締結位置が異なる場合であってもボルト7aを通すことができる場合があり、ライナー9の汎用性を高くすることができる。
【0043】
<<第3の実施形態>>
本願発明の第3の実施形態に係るライナー10について、図10を参照して説明する。ライナー10は、ブレース3の接合継手3aと柱材2の接合継手2b,2cとの間の2箇所に1個で調整できるという機能を有するものである。
【0044】
ライナー10は、はみ出し片10cを挟んだ両側に、挿入片10a,10bを有し、挿入片10aとはみ出し片10cとの境にノッチ10na、挿入片10aとはみ出し片10cとの境にノッチ10nbを有する。
2個の挿入片10aには、それぞれ2本のスリット10sが、挿入方向であるはみ出し片10cから離間する方向に側面まで延出している。
はみ出し片10cには、シノ30等の先細の工具に係合する係合孔10hが厚さ方向に貫通して略中央の1箇所に形成されている。
【0045】
(ライナー10の使用方法)
このように構成されたライナー10の使用方法(取付方法)としては、まず、一方の挿入片10aを、接合継手2cと接合継手3aとの間に第1の実施の形態に係るライナー1を挿入する図2に示す場合と同様に、例えば、柱材2Aの接合継手2bとブレース3の接合継手3aの間に、ノッチ10naが接合継手2b,3a(フランジ2f,3f)の外形に一致する深さまで、挿入する。
【0046】
次に、接合継手2b,3aの間隔が所望の間隔になったことを確認し、シノ30を係合孔10hに挿入し、第1の実施の形態に係るライナー1について図6に示す動作と同様に、シノ30を把持しているシノ30の基端側を係合孔10hの挿入側である先端側に対して回動させ、はみ出し片10c及びはみ出し片10cに一体的に形成されている他方の挿入片10bをノッチ10naに対して回動させて、はみ出し片10c及び他方の挿入片10bを折り曲げて挿入片10aから切り離す。
【0047】
次に、挿入片10aから切り離したはみ出し片10cとはみ出し片10cに一体的に形成された挿入片10bを、第1の実施の形態に係るライナー1を挿入する図2に示す動作と同様に、例えば柱材2Bの接合継手2cとブレース3の接合継手3aの間に、ノッチ10nbが接合継手2c,3a(フランジ2f,3f)の外形に一致する深さまで挿入する。
【0048】
最後に、接合継手2c,3aの間隔が所望の間隔になったことを確認し、シノ30を係合孔10hに挿入し、第1の実施の形態に係るライナー1について図6に示す動作と同様に、シノ30を把持しているシノ30の基端側を係合孔10hの挿入側である先端側に対して回動させ、はみ出し片10cをノッチ10nbに対して回動させて、はみ出し片10cを折り曲げて挿入片10bから切り離す。
【0049】
なお、上記の工程において、接合継手2b(2c)と接合継手3aとの間隔が所望の間隔にならなかった場合には、シノ30を係合孔10hに挿入し、第1の実施の形態に係るライナー1について図5に示す動作と同様に、ライナー10の挿入方向の逆方向である引き抜き方向にシノ30を介してライナー10に力を付加し、ライナー10を引き抜く。そして、厚さの異なる他のライナー10を接合継手2b(2c)と接合継手3aとの間に挿入し、接合継手2b(2c)と接合継手3aとの間隔が所望の間隔になるようにする。
【0050】
上記のようにライナー10を使用することで、1個のライナー10で2箇所の部材間の間隔を調整できることとなり、作業効率が高まる。また、はみ出し片10cを挿入片10aと挿入片10bとで共有できることとなり、省資源化でき、材料コストを低減することができる。
【0051】
<<第4の実施形態>>
本願発明の第4の実施形態に係るライナー11について、図11を参照して説明する。上記実施形態に係るライナー1,8,9,10においては、ノッチ1n,10na,10nbに対して、スリット1s,8s,9s,10sが略直交する方向に延在するように形成されていた。
一方、第4の実施形態に係るライナー11は、ノッチ11nに対して、並行して延在するように形成されたスリット11sを有するものである。
【0052】
ライナー11は、挿入片11aと、挿入片11aを挟み込むように配された一対のはみ出し片11bとを備える。更に、挿入片11aとはみ出し片11bとの境界として、挿入対象である部材の幅に一致する間隔でノッチ11nが形成されている。
【0053】
挿入片11aには、2本のスリット11sが、ノッチ11nに並行するように延在している。
はみ出し片11bには、シノ30等の先細の工具に係合する係合孔11hが厚さ方向に貫通して略中央の1箇所にそれぞれ形成されている。更に、はみ出し片11bには、ライナー11の引き抜き方向を示すシール11jがそれぞれ貼り付けられている。
【0054】
このように構成されたライナー11であっても、他の実施形態に係るライナー1,8,9,10と同様に、部材間に挿入したあとに、ノッチ11nではみ出し片11bを挿入片11aから切り離すことができ、また、シール11jの方向に、シノ30等によって力を加えることで、ライナー11を部材間から引き抜くことができる。
【0055】
特に、ライナー11を部材間から引き抜く際には、挿入片11aの両側に、係合孔11hを有するはみ出し片11bが形成されていることで、ライナー11の2箇所に引き抜き方向の力を加えることができる。このため、ライナー11に作業者が加える力は、部材から圧縮方向に力が加えられて支持されている挿入片11aに対する回転方向の力とならないため、引き抜きに対する摩擦力の発生を抑制でき、引き抜き方向の力を効率的にライナー11に付与することができる。
【0056】
また、ライナー11が部材間に挿入された状態においては、スリット11sの方向が分かりづらい状態となり、ライナー11を引き抜こうとする場合に、ライナー11に対して力を加える方向によっては、スリット11sとボルト7aが干渉し、引き抜きができないこととなる。この点、シール11jによって引き抜き方向が示されているため、このような問題が生じることなく、作業性を高くすることができる。
【0057】
<<第5の実施形態>>
本願発明の第5の実施形態に係るライナー12について、図12を参照して説明する。図12(a)は、2本の梁40,41の間と2本の梁40,41と柱材20の間とにライナー12を挿入する前の状態を示す斜視図、図12(b)は、2本の梁の間と2本の梁と柱材の間とにライナー12を挿入した後の状態を示す側面図である。
【0058】
ライナー12は、L字状の面を有してこの面に延在する部材間の隙間に挿入されて、一度にその隙間の幅を調整するためのものである。
【0059】
まず、ライナー12を挿入する対象について説明する。ライナー12を挿入する対象は、柱材20と、柱材20の上方に載置されてボルト70a,71a、ナット70b,71bによって固定された断面コの字状の梁40,41とから構成されるものである。
梁40,41は、コの字の断面が背中合わせとなるように併設された状態で、上下に配置された2本のボルト71a及びナット71bで固定されており、水平方向に延在するように柱材20上に載置されている。梁40は、柱材20との間で上下方向に挿通する1本のボルト70aと、ナット70bとによって、柱材20に締結されている。
【0060】
次に、ライナー12の構成について説明する。ライナー12は、挿入片12aと、挿入片12aに対して垂直な向きで一体的に形成された挿入片12bと、挿入片12b側に対して逆側で挿入片12aに接続されたはみ出し片12cとを備え、断面L字状に形成されている。また、挿入片12aとはみ出し片12cは、ノッチ12nで境界付けられており、ノッチ12nは、梁40の外側面に略一致する位置に形成されている。
【0061】
挿入片12aには、予め定められた挿入側の端面からノッチ12nに沿う方向である挿入方向に延在するスリット12saが1本形成されている。
スリット12saは、ボルト70aを通る幅で形成されており、ライナー12を梁40と柱材20の間に挿入する際に、ボルト70aを通る位置に形成されている。
このように構成されたスリット12saによって、ライナー12を梁40と柱材20の間に挿入する際に、ボルト70aによってその挿入が阻害されない。
【0062】
挿入片12bには、予め定められた挿入側の端面からノッチ12nに沿う方向である挿入方向に延在するスリット12sbが2本形成されている。
2本のスリット12sbは、2本のボルト71aを通る幅で形成されており、ライナー12を梁40と梁41の間に挿入する際に、2本のボルト71aを通る位置に形成されている。
このように構成されたスリット12sbによって、ライナー12を梁40と梁41の間に挿入する際に、ボルト71aによってその挿入が阻害されない。
【0063】
このように断面L字状に構成されたライナー12によっては、柱材20と梁40との間と、梁40と梁41との間に、ライナー12を挿入することができるため、柱材20と梁40との間隔、及び梁40と梁41との間隔を、一度に調整することができる。
また、挿入されたライナー12を、はみ出し片12cを把持して、挿入方向の逆方向に力を加えることで、引き抜くことができる。また、はみ出し片12cを折り曲げて、挿入片12aから切り離すこともできる。
【0064】
以上の実施形態に係るライナー及びライナー取付方法は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0065】
例えば、第3の実施形態に係る2個の挿入片及びノッチを備えるライナーに関して、スリットを1本としたり、梁の接合部に用いるものとして、梁の接合継手の形状に合わせて、幅方向に長い形状の挿入片とするようにしてもよい。
また、第5の実施形態に係るライナーにおいて、はみ出し片に係合孔を設けるようにしてもよく、第4の実施形態に係るライナーのように、はみ出し片を両端に設けて、挿入された状態のライナーに対して、はみ出し片のある2箇所で、引き抜き方向の力をライナーに付加できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1,8,9,10,11,12 ライナー
1a,8a,10a,10b,11a,12a,12b 挿入片
1b,10c,11b,12c はみ出し片
1h,10h,11h 係合孔
1n,10na,10nb,11n,12n ノッチ
1s,8s,9s,10s,11s,12sa,12sb スリット
11j シール
2,2A,2B,20 柱材
2a,2b,2c 接合継手
2d ウェブ
2e リブ
2f フランジ
3 ブレース
3a 接合継手
3b ウェブ
3c リブ
3f フランジ
4,40,41,5 梁
4a 接合継手
4ah 貫通孔
4b 端部
7 ボルトナット
7a,70a,71a ボルト
7b,70b,71b ナット
30 シノ
B 基礎
F フレーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
図11
図12