(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
情報処理機器を収容する複数のラックであって、所定の配列方向に沿って連続的に配列された複数のラックを前記配列方向と直交する方向において挟んで位置する2つの空間である第一空間及び第二空間において、前記第一空間から各ラックの内部を介して前記第二空間への冷却空気の流れを形成することにより前記情報処理機器の冷却を行う空調システムであって、
前記配列方向における前記複数のラックのいずれか一方の端部に連続的に配置された空調手段であって、前記第二空間から空気を吸い込む吸込口と、前記吸込口より吸い込んだ空気を冷却して冷却空気を生成する冷却手段と、前記冷却手段にて生成された冷却空気を前記第一空間に対して吹き出す吹出口と、前記吸込口から前記吹出口に至る空気の流れを形成する送風手段と、を有する空調手段と、
前記空調手段の吹出口からの冷却空気の吹き出し方向を所定の方向に変更する風向変更手段と、
前記第一空間が前記配列方向において前記複数のラック及び前記空調手段に沿って設けられる空間となるように前記第一空間を外部に対して遮蔽する冷却空気漏出防止手段と、を備え、
前記冷却空気漏出防止手段は、前記配列方向に沿って設けられている前記複数のラック及び前記空調手段における前記空調手段側の端と、当該空調手段側とは反対側の端との両方の端に出入り口を備える、
空調システム。
前記空調手段における前記複数のラックが配置された側方と反対側の側方から、前記空調手段における前記第一空間側の側方を介して、前記複数のラックにおける前記第一空間側の側方へとユーザが連続的に移動可能となり、かつ、前記反対側の側方から、前記空調手段における前記第二空間側の側方を介して、前記複数のラックにおける前記第二空間側の側方へとユーザが連続的に移動可能となるように、前記空調手段を配置した、
請求項1に記載の空調システム。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る空調システムの各実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕各実施の形態の基本的概念を説明した後、〔II〕各実施の形態の具体的内容について説明し、〔III〕最後に、各実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、各実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0022】
〔I〕各実施の形態の基本的概念
まず、各実施の形態の基本的概念について説明する。各実施の形態に係る空調システムは、情報処理機器の冷却を行う空調システムである。ここで、情報処理機器の用途は任意であるが、各実施の形態では、データセンター等の大規模な情報処理施設にて各種のデータを処理するための機器として用いられるものとして説明する。また、情報処理施設における情報処理機器の設置台数についても任意であり、少なくとも一つの情報処理機器を備えることにより当該空調システムを構成することが可能であるが、各実施の形態では複数の情報処理機器が設置されているものとして説明する。また、各実施の形態では、情報処理施設における、複数の情報処理機器が設置された一つの部屋について注目して説明し、当該部屋の内部のことを以下では必要に応じて「室内」と称して説明する。
【0023】
〔II〕各実施の形態の具体的内容
次に、各発明に係る実施の形態の具体的内容について説明する。
【0024】
(実施の形態1)
最初に、実施の形態1について説明する。
【0025】
(構成)
まずは、本実施の形態1に係る空調システム1の構成について説明する。
図1は、本実施の形態1に係る空調システム1を概略的に示す図であって、
図1(a)は平面図、
図1(b)は前面図、
図1(c)は左側面図、
図1(d)は右側面図である。以下では、必要に応じて、
図1におけるX−X’方向を「幅方向」と称し、特にX方向を「右方向」、X’方向を「左方向」と称する。また、Y−Y’方向を「奥行き方向」と称し、特にY方向を「後方向」、Y’方向を「前方向」と称する。また、Z−Z’方向を「高さ方向」と称し、特にZ方向を「上方向」、Z’方向を「下方向」と称する。この
図1に示すように、本実施の形態1に係る空調システム1は、概略的に、ラック10、空調機20、風向板30、免震装置40、コールドアイルのキャッピング50、ホットアイルのキャッピング60、及びPDU70(Power Distribution Unit)を備えて構成される。
【0026】
(構成−ラック)
ラック10は、情報処理機器(図示省略)を収容するための収容手段である。このラック10の具体的な形状については任意であるが、本実施の形態1については
図1に示すように中空の直方体形状として形成された筐体を有し、その筐体の内部には複数の情報処理機器が収容されたラック10であるものとして説明する。なお、このラック10における筐体の内部の空間(情報処理機器が配置された空間)を以下では必要に応じて「冷却対象空間」と称して説明する。
【0027】
ここで、このラック10には情報処理機器を冷却するための工夫が施されている。具体的には、まずラック10の筐体における一側面、及び当該一側面と対向する位置に設けられた他の側面には、開閉可能な扉が設けられており、この扉の略全面にはメッシュ状の通風孔が設けられている。そして、各情報処理機器には、空気の送風を行うための冷却ファン(図示省略)が設けられている。このように構成されたラック10及び情報処理機器において冷却ファンを稼動させることにより、ラック10の外部における空間(以下、第一空間)の空気が、ラック10の筐体における一側面に設けられた通風孔、ラック10の内部(すなわち冷却対象空間)、ラック10の筐体における他の側面に設けられた通風孔、を順次介してラック10の外部における反対側の空間(以下、第二空間)へと送風される。ここで、以下では、上述したラック10の筐体における一側面を「吸込面11」、他の側面を「吹出面12」と必要に応じて称して説明する。
【0028】
そして、室内には複数のラック10がある特定の方向(本実施の形態1では、幅方向)に沿って連続的に並設されることによりラック10の列(以下、ラック列)が形成されており、当該ラック列を構成する各ラック10はそれぞれの吸込面11の向きと吹出面12の向きが揃えられて配置されている。ここで、「連続的に並設される」とは、ラック10の相互間に空調機20等の他の機器や装置が介在していないことを示す。また、このようにラック10が並設された方向(すなわち、本実施の形態1における幅方向)を、以下では必要に応じて「配列方向」と称して説明する。また、このラック列における吸込面11側に設けられた空間(すなわち、コールドアイルのキャッピング50により遮蔽された空間)を「コールドアイル4」と称し、ラック列における吹出面12側に設けられた空間(すなわち、ホットアイルのキャッピング60により遮蔽された空間)を「ホットアイル5」と称して以下では説明する。
【0029】
ここで、ラック10の上面には情報処理機器の配線を通すための配線孔(図示省略)が設けられている。そして、情報処理機器の配線は、それぞれのラック10の配線孔を介して、ラック10の上方に引き出され、ラック列の配列方向に沿ってPDU70に対して接続されている。このように配線をラック列の上方を介してPDU70に対して接続することにより各情報処理機器に対して配電が行われる。
【0030】
(構成−空調機)
空調機20は、冷却空気を生成して、生成した冷却空気をコールドアイル4へと供給する空調手段であって、配列方向における複数のラック10のいずれか一方の端部(本実施の形態1においては、複数のラック10の右側の端部)に連続的に配置された空調手段である。ここで、「連続的に配置」とは、複数のラック10の一方の端部と、当該空調手段との相互間に他の物が介在しないことを示す。
図2は空調機20を示す図であって、
図2(a)は平面図、
図2(b)は側面図、
図2(c)は前面図である。この
図2に示すように、空調機20は、吸込口21、冷却器22、吹出口23、及び送風機24を備えて構成されている。なお、
図2(c)において、実際には、風向板30は空調機20の送風機24等よりも前方に配置されているが、図示の便宜上において、点線にて風向板30を示している。
【0031】
吸込口21は、ホットアイル5から空気を吸い込む開口部であって、空調機20の筐体におけるホットアイル5に面している側の面に設けられる。冷却器22は、吸込口21より吸い込んだ空気を冷却して冷却空気を生成する冷却手段であって、冷水配管25を介して冷水の供給源から取り入れた冷水を用いて空気の冷却を行う公知の冷却コイルとして形成されている。ここで、この冷水配管25は、空調機20の上端部から上方に向かって延設されており、その一部が可撓性材料により螺旋形状にて形成されている。このような形状により冷水配管25を形成することにより、地震動発生時において当該冷水配管25が上下左右方向に柔軟に変異することができるため、地震動によって冷水配管25が破損してしまう可能性を低減することができる。吹出口23は、冷却器22にて生成された冷却空気をコールドアイル4に対して吹き出す開口部であって、空調機20の筐体におけるコールドアイル4に面している側の面に設けられる。送風機24は、吸込口21から吹出口23に至る空気の流れを形成する送風手段である。具体的には、空調機20の筐体の内部に高さ方向に沿って並設された複数(本実施の形態1においては3つ)の有圧扇として形成されており、冷却器22の下流に配置されている。このように複数の有圧扇を備えることにより、複数の有圧扇のうち1つの有圧扇が故障等の理由により稼働停止した場合であっても、空調システム1全体が機能しなくなってしまう事態を防止することができる。また、空調機20には図示しないドレンホースの如きドレン排水手段が、空調機20の内部から空調機20の右方(すなわち、PDU70の前方又は後方)へ向けて突設されている。そして、空調機20にて冷却空気を生成することにより発生したドレンが、このドレンホースを介して、空調機20の外部へと排水される。なお、送風機24は有圧扇により形成されるものに限らず、DCファン等公知の送風手段により形成する事が可能である。
【0032】
ここで、
図1に示すように、空調機20における複数のラック10が配置された側方と反対側の側方(すなわち、空調機20の右方)から、コールドアイルのキャッピング50の空調機側遮蔽部51に設けられた出入り口51a(後述する)、及び空調機20におけるコールドアイル4側の側方(すなわち、空調機20の前方)を介して、複数のラック10におけるコールドアイル4側の側方(すなわち、ラック10の前方)へとユーザが連続的に移動可能となっている。
さらに、空調機20における複数のラック10が配置された側方と反対側の側方(すなわち、空調機20の右方)から、ホットアイルのキャッピング60の空調機側遮蔽部61に設けられた出入り口61a(後述する)、及び空調機20におけるホットアイル5側の側方(すなわち、空調機20の後方)を介して、複数のラック10におけるホットアイル5側の側方(すなわち、ラック10の後方)へとユーザが連続的に移動可能となっている。
このように、ユーザは、空調機20の前方を通ってラック10の前方へと移動可能であり、かつ、空調機20の後方を通ってラック10の後方へと移動可能であるため、コールドアイル4やホットアイル5における空調機20が配置されていない側の側方(本実施の形態1における左側方)に回り込む必要なくラック10の前方又は後方へと移動できる。このように、当該空調システム1における空調機20の配置によれば、ユーザによる設備点検等の自由度の向上を図ることが可能となる。
【0033】
(構成−風向板)
風向板30は、空調機20の吹出口23からの冷却空気の吹き出し方向を所定の方向に変更する風向変更手段である。この風向板30は、空調機20と略同一の高さを有する長板形状の部材として形成されており、空調機20の吹出口23に対して幅方向に沿って複数枚(本実施の形態1においては6枚)並設されている。ここで、各風向板30は、吹出口23との設置部分を中心として回動可能となっている。そして、風向板30同士は、公知のリンク機構(図示省略)によって接続されており、相互に連動して回動する。例えばユーザが、一つの風向板30の角度を手動で調節した場合、他の風向板30も同様に回動して同一の角度に調節される。すなわち、各風向板30の角度は常に同一となるように形成されている。なお、本実施の形態1においては、各風向板30は、平面視において吹出口23と直交する方向から左方向に所定の角度(例えば30°)を有する向きとなるように角度が調節されているものとして説明する。
【0034】
ここで、風向板30を設置しない場合には、吹出口23から吹き出された冷却空気は、吹出口23に対して略直交する方向に向けて吹き出される。すなわち、コールドアイル4における各ラック10の吸込面11の前方に対して冷却空気が直接供給されるわけではなく、各ラック10に収容された情報処理機器に設けられた冷却ファンの働きによって、各ラック10の冷却対象空間に吸い込まれる。したがって、空調機20から近い位置に在るラック10(
図1のラック列における右側寄りに配置されたラック10)に対しては冷却空気が充分に供給されるのに対し、空調機20から遠い位置に在るラック10(
図1のラック列における左側寄りに配置されたラック10)に対しては冷却空気を充分に供給できない可能性があった。一方、本実施の形態1のように風向板30を設置した場合には、冷却空気が各ラック10の吸込面11の前方に直接供給されるため、各ラック10に対して冷却空気を均等に供給することが可能となる。さらに、風向板30は、上述したように、その設置角度を自在に調節することによって、吹出口23からの冷却空気の吹き出し方向を少なくとも2以上の方向に自在に調節することができる。したがって、ユーザは実験等によって、各ラック10に均等に冷却空気が均等されるような風向板30の角度を探索することで、より効率的に各ラック10に対して冷却空気を均等に供給することが可能である。
【0035】
また、風向板30の設置台数は任意であるが、直進する気流の発生や、風向板30を設置することによる圧力損失を加味して設置台数を決定することが望ましい。すなわち、設置台数が少なすぎると、風向板30の相互間の隙間が大きくなるため、風向板30の影響を受けずに吹出口23から直進してしまう気流が生じる可能性があり、風向きを変更する機能が薄れてしまう。また、設置台数が多すぎると、風向板30によって圧力損失が生じ、空調機20の送風機24の負荷が大きくなってしまう可能性がある。
【0036】
(構成−免震装置)
免震装置40は、地震発生時におけるラック10の揺れを抑制する免震手段であって、具体的な構成については任意であり、例えば公知の積層ゴムやすべり支承を用いた免震装置40として構成することができる。なお、本実施の形態1においては、各ラック10の下面、空調機20の下面、コールドアイルのキャッピング50の下面、ホットアイルのキャッピング60の下面、PDU70の下面、PDU70の前方領域の下面、及びPDU70の後方領域の下面に架けて配置された、平面視略長方形状の所定高さ(例えば10cm)の薄型免震装置として形成されている。
ここで、PDU70の前方領域、及びPDU70の後方領域については、いかなる機器も配置されておらず、実際にはこれら領域を免震する必要は無い。したがって、免震装置40の設置面積を低減して設置コストの低減を図るためには、これらの領域の部分を省略した形状(すなわち、平面視上において右方がPDUの下面に対応する形状に突設した長方形状)にて免震装置40を構成することが望ましい。ただし、本実施の形態1においては、このような複雑な形状の免震装置40を形成する手間等を考慮して、上述したようにPDU70の前方領域の下面、及びPDU70の後方領域の下面に架けても配置された平面視略長方形状の免震装置40として構成している。
【0037】
(構成−コールドアイルのキャッピング)
コールドアイルのキャッピング50は、コールドアイル4の内部に供給された冷却空気がコールドアイル4の外部へと漏出してしまうことを防止する冷却空気漏出防止手段である。具体的には、コールドアイルのキャッピング50は、概略的に、空調機側遮蔽部51、ラック側遮蔽部52、側方遮蔽部53、及び上方遮蔽部54を備えて構成されている。
【0038】
空調機側遮蔽部51は、空調機20におけるラック10と接している側の面と反対側の面(すなわち、本実施の形態1においては空調機20の右側面)に沿って配置されたビニール製のシートである。この空調機側遮蔽部51には、ユーザがコールドアイル4の内部へと出入りするための出入り口51aが設けられている。この出入り口51aの具体的な構成については任意であるが、本実施の形態1においては、シートの高さ方向に沿って設けられたファスナーであって、当該ファスナーを開くことによってシートに開口が形成されてユーザが出入り可能となるようなファスナーであるものとして説明する。なお、後述するラック側遮蔽部52に設けられた出入り口52aについても同様の構成であるものとする。
【0039】
ラック側遮蔽部52は、空調機20から最も遠い位置に配置されたラック10における、空調機20と最も遠い側の側面(すなわち、本実施の形態1においては最も左側に位置するラック10の左側面)に沿って配置されたビニール製のシートである。このラック側遮蔽部52には、ユーザがコールドアイル4の内部へと出入りするための出入り口52aが設けられている。
側方遮蔽部53は、ラック10の吸込面11から、配列方向と直交する方向に所定距離離れた位置に、ラック10の吸込面11と平行に配置されたポリカーボネート製の板状体である。
上方遮蔽部54は、コールドアイル4の上方において、水平に配置されたポリカーボネート製の板状体である。
【0040】
このように、コールドアイルのキャッピング50を備えることによって、冷却空気がコールドアイル4の外部の空間へと漏出しないため、空調機20の空調効率の向上を図ることが可能となる。また、このように構成されたコールドアイルのキャッピング50において、空調機20を管理する者は、空調機側遮蔽部51に設けられた出入り口51aを介して、ラック10の吸込面11の前方を通過せずに空調機20へとアクセスすることが出来る。また、ラック10の内部に収容された情報処理機器を管理する者(以下、情報処理機器を管理する者)は、ラック側遮蔽部52に設けられた出入り口52aを介して、空調機20の吹出口23の前方を通過せずにラック10へとアクセスすることが出来る。したがって、このようにコールドアイルのキャッピング50を構成することにおり、空調機20を管理する者とラック10の内部の情報処理機器を管理する者の動線を相互に重複させずに区別して確保する事が可能となる。
【0041】
(構成−ホットアイルのキャッピング)
ホットアイルのキャッピング60は、ホットアイル5の内部の空気がホットアイル5の外部へと漏出してしまうことを防止する排気漏出防止手段である。具体的には、ホットアイルのキャッピング60は、概略的に、空調機側遮蔽部61、ラック側遮蔽部62、側方遮蔽部63、及び上方遮蔽部64を備えて構成されている。
【0042】
空調機側遮蔽部61は、空調機20におけるラック10と接している側の面と反対側の面(すなわち、本実施の形態1においては空調機20の右側面)に沿って配置されたビニール製のシートである。この空調機側遮蔽部61には、ユーザがホットアイル5の内部へと出入りするための出入り口61aが設けられている。なお、この出入り口61aについては、コールドアイルのキャッピング50の空調機側遮蔽部51と同様に構成することが可能である。ラック側遮蔽部62に設けられた出入り口62aについても同様である。
【0043】
ラック側遮蔽部62は、空調機20から最も遠い位置に配置されたラック10における、空調機20と最も遠い側の側面(すなわち、本実施の形態1においては最も左側に位置するラック10の左側面)に沿って配置されたビニール製のシートである。このラック側遮蔽部62には、ユーザがホットアイル5の内部へと出入りするための出入り口62aが設けられている。
側方遮蔽部63は、ラック10の吹出面12から、配列方向と直交する方向に所定距離離れた位置に、ラック10の吹出面12と平行に配置されたポリカーボネート製の板状体である。
上方遮蔽部64は、ホットアイル5の上方において、水平に配置されたポリカーボネート製の板状体である。
【0044】
このように、ホットアイルのキャッピング60を備えることによって、ラック10の吹出面12から吹き出された排気がホットアイル5の外部の空間へと漏出しないため、当該空調システム1が配置された室内の温度上昇を防ぐことができ、室内を空調する空調装置の空調負荷が上昇してしまうことを防止する事が可能となる。また、このように構成されたホットアイルのキャッピング60において、空調機20を管理する者は、空調機側遮蔽部61に設けられた出入り口61aを介して、ラック10の吹出面12の後方を通過せずに空調機20へとアクセスすることが出来る。また、情報処理機器を管理する者は、ラック側遮蔽部62に設けられた出入り口62aを介して、空調機20の吸込口21の後方を通過せずにラック10へとアクセスすることが出来る。したがって、このようにホットアイルのキャッピング60を構成することにおり、空調機20を管理する者と情報処理機器を管理する者の動線を相互に重複させずに区別して確保する事が可能となる。
【0045】
(構成−PDU)
PDU70は、データセンターで供給される電源を、ラック10の内部の情報処理機器に配電するための電源分配手段であって、ベーシックPDU、スイッチ付きPDU、あるいはインテリジェントPDU等といった公知のPDU70によって構成されている。ここで、PDU70の具体的な位置は任意であるが、本実施の形態1においては、空調機20の側方のうちラック10が配置された側方と反対側の側方に配置されている。このように空調機20を管理する者や情報処理機器を管理する者の動線と重複しない位置にPDU70を配置することが望ましい。また、各情報処理機器の配線は、上述したように、ラック10の上部を介して当該PDU70と接続されている。また、室内の電源からPDU70に対して送電するための配線は、上述した冷水配管25同様に地震時において破断等しないように、地震時における変位を考慮した長さにて形成されている。
【0046】
(処理)
このように構成された空調システム1によって実行される空調処理について説明する。まず、空調機20の吸込口21を介して空調機20に吸い込まれた空気は、空調機20の冷却器22によって冷却されて冷却空気となり、空調機20の吹出口23を介して吹き出される。そして、このように空調機20から吹出された冷却空気は風向板30によって風向きが変えられて、所定の角度を持って吹き出される。この際における冷却空気の流れを
図1の矢印にて示す。このように、空調機20の吹出口23からラック列の方向に向けて送風されることにより、コールドアイルにおける各ラック10の吸込面11の前方に対して冷却空気が送風される。
【0047】
そして、コールドアイルにおける各ラック10の吸込面11の前方に対して送風された冷却空気は、各ラック10に収容された情報処理機器に設けられた冷却ファンによって、ラック10の内部(冷却対象空間)を通って、ラック10の吹出面12からホットアイル5に対して排気として吹出される。この際にラック10に収容された情報処理機器が冷却される。そして、ホットアイル5に吹出された排気は、空調機20の送風機24によって、空調機20の吸込口21を介して再度空調機20に取り入れられ、空調機20の冷却器22によって冷却されて、再び空調機20の吹出口23を介してコールドアイル4へと吹き出される。
【0048】
ここで、上述したように、冷却空気は
図1の矢印のようにコールドアイルのキャッピング50の空調機側遮蔽部51に設置された出入り口51aから離れる方向に向かって吹き出される。したがって、コールドアイル4の内部へと出入りする者が、当該出入り口51aを開けた場合であっても、空調機20から吹き出された冷却空気が当該出入り口51aを介して直接的にコールドアイル4の外部へと排出されない。このように風向板30は、各ラック10に対して均等に冷却空気を送風する役割だけでなく、コールドアイル4から出入り口51aを介して排出されてしまう冷却空気を低減して空調機20の空調負荷を低減させる役割を果たす。
【0049】
(実施の形態1の効果)
本実施の形態1に記載の空調システム1によれば、空調機20を複数のラック10の端部に連続的に配置するので、空調機20を管理する者とラックの内部に収容された情報処理機器を管理する者の動線を区別して確保する事が可能となる。また、吹出口23からの冷却空気の吹き出し方向を所定の方向に変更する風向板30を備えるので、空調機20が複数のラック10の端部に配置されている場合であっても各ラック10に対して均等にあるいは局所的に冷却空気の送風を図ることができ、情報処理機器の冷却効率の向上を図ることが可能となる。
【0050】
また、空調機20におけるコールドアイル4側及びホットアイル5側の側方の両方をユーザが移動可能となるので、ユーザによるコールドアイル4及びホットアイル5への移動し易さの向上を図ることができ、設備点検等の自由度の向上を図ることが可能となる。
【0051】
また、風向板30として長板形状を有する風向板30を設けることにより、極めて容易な構成により冷却空気の吹き出し方向を所定の方向に変更することができ、施工性及び施工コストの低減を図ることが可能となる。
【0052】
また、風向板30は吹出口23からの冷却空気の吹き出し方向を少なくとも2以上の方向に調節可能であるので、ラック10の冷却状態等に応じて風向を自在に調節でき、情報処理機器の冷却効率のさらなる向上を図ることが可能となる。
【0053】
(実施の形態2)
続いて、実施の形態2について説明する。
【0054】
(構成)
まず、実施の形態2に係る空調システムの構成について説明する。この空調システムは、概略的に、ラック10、空調機20、風向板30、免震装置40、コールドアイルのキャッピング50、ホットアイルのキャッピング60、PDU70、温度計、及び制御部を備えて構成される。なお、温度計及び制御部以外の各構成要素については実施の形態1と同様に構成することが可能であるため、その詳細な説明を省略する。
【0055】
(構成−温度計)
温度計は、ラック10の内部の温度を計測するための計測手段であって、各ラック10の内部に設置された公知の温度計として構成されている。なお、当該温度計は、制御部に対して配線により接続されており、計測された温度を制御部に対して所定の時刻間隔(例えば10秒置き)で送信する。
【0056】
(構成−制御部)
制御部は、温度計にて計測された温度に基づいて風向板30を制御して吹出口23からの冷却空気の吹き出し方向を調節する制御手段である。この制御部は、具体的には、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを格納するためのRAMの如き内部メモリを備えて構成されている。
【0057】
(処理)
続いて、実施の形態2の空調システムによって実行される処理について説明する。
【0058】
まず、空調システムの稼働時において、温度計は所定の時刻間隔でラック10の内部の温度及び当該ラック10を特定する識別IDを含む信号を制御部に対して送信する。そして、制御部は、当該信号に基づいて、各ラック10の内部の温度が情報処理機器に影響を与え得る所定の温度を超えているか否かを監視する。そして、所定の温度を超えていると判定した場合、識別IDに基づいてラック10を特定し、当該特定したラック10に対して冷却空気が送風されやすいような風向きにすべく、風向テーブル(図示省略)を参照して風向板30の角度を調節する。なお、「風向テーブル」とは、複数のラック10のそれぞれの識別IDと、各ラック10に対して最も冷却空気が多く供給されるような風向板30の角度とを互いに対応付けて保存したテーブルである。
【0059】
(実施の形態2の効果)
本実施の形態2に記載の空調システムによれば、ラック10の内部の温度に応じて冷却空気の吹き出し方向を調節する制御部を備えるので、各ラック10の冷却状況に一層適した空調を行うことが可能となり、情報処理機器の冷却効率のさらなる向上を図ることが可能となる。
【0060】
(実施の形態3)
続いて、実施の形態3について説明する。この実施の形態3に係る空調システム3は、複数の空調ユニット80を組み合わせることによって構成された空調システム3である。ここで、「空調ユニット80」とは、所定の配列方向に沿って連続的に配列された複数のラック10と、当該複数のラック10の端部に連続的に配置された空調機20と、を少なくとも備えて構成された一単位のシステムであって、本実施の形態3においては、これら複数のラック10及び空調機20に加えて、風向板30、免震装置40、及びPDU70を備えるユニットであるものとして説明する。
図3は、実施の形態3に係る空調ユニット80を2つ接続した空調システム3を概略的に示す平面図である。
図4は、空調システム3を概略的に示す側面図である。なお、この
図3に示すように、以下では2つの空調ユニット80を、コールドアイル4を介して平行かつ同一向きに並設して接続した接続パターンの空調システム3の構成について説明する。なお、「同一向き」とは、ラック列の両端部における同一側の端部に空調機20を配置することを示し、例えば、
図3に示すように、2つの空調ユニット80はそれぞれラック列の右側の端部に空調機20を配置して構成されているため、これらの空調ユニット80は「同一向き」に該当する。なお、以下では、
図3における後側に配置された空調ユニット80を「第一空調ユニット81」、前側に配置された空調ユニット80を「第二空調ユニット82」と必要に応じて称して説明する。なお、第一空調ユニット81は実施の形態1と同様に空調機20の前側に空調機20の吹出口23が位置するように配置されており、第二空調ユニット82は第一空調ユニット81とは対称的に空調機20の後側に空調機20の吹出口23が位置するように配置されている。
【0061】
(構成)
まずは本実施の形態3に係る空調システム3の構成について説明する。本実施の形態3に係る空調システム3は、概略的には、実施の形態1に係る空調システム1を、ラック10の吸込面11が向き合うような配置において設置し、コールドアイルのキャッピング50の側方遮蔽部53を削除してコールドアイル4を1つに結合することにより形成されたシステムである。具体的には、空調システム3は、概略的に、第一空調ユニット81、第二空調ユニット82、コールドアイルのキャッピング90、ホットアイルのキャッピング60、及び各空調ユニット80に対応するPDU70を備えて構成されている。ここで、各空調ユニット80を構成するラック10及び空調機20と、ホットアイルのキャッピング60と、各空調ユニット80に対応するPDU70と、については実施の形態1と同様に構成することが可能であるため、以下ではコールドアイルのキャッピング90の構成についてのみ説明する。
【0062】
(構成−コールドアイルのキャッピング)
コールドアイルのキャッピング90は、各空調ユニット80の相互間に形成されたコールドアイル4の内部に供給された冷却空気がコールドアイル4の外部へと漏出してしまうことを防止する冷却空気漏出防止手段である。具体的には、空調機側遮蔽部91、ラック側遮蔽部92、及び上方遮蔽部93を備えて構成されている。
【0063】
空調機側遮蔽部91は、空調機20におけるラック10と接している側の面と反対側の面(すなわち、本実施の形態3においては空調機20の右側面)に沿って配置されたビニール製のシートである。この空調機側遮蔽部91は、具体的には、第一空調ユニット81の空調機20の右側面から第二空調ユニット82の空調機20の右側面へと架け渡されて配置されており、コールドアイル4の右側方から冷却空気が漏出してしまうことを防止する。ここで、この空調機側遮蔽部91には、ユーザがコールドアイル4の内部へと出入りするための出入り口91aが設けられている。この出入り口91aの具体的な構成については、実施の形態1と同様に構成できるためその詳細な説明を省略する。
【0064】
ラック側遮蔽部92は、空調機20から最も遠い位置に配置されたラック10における、空調機20と最も遠い側の側面(すなわち、本実施の形態3においては最も左側に位置するラック10の左側面)に沿って配置されたビニール製のシートである。このラック側遮蔽部92は、具体的には、第一空調ユニット81における最も左側に位置するラック10の左側面から、第二空調ユニット82における最も左側に位置するラック10の左側面へと架け渡されて配置されており、コールドアイル4の左側方から冷却空気が漏出してしまうことを防止する。ここで、このラック側遮蔽部92には、ユーザがコールドアイル4の内部へと出入りするための出入り口92aが設けられている。この出入り口92aの具体的な構成については、実施の形態1と同様に構成できるためその詳細な説明を省略する。
【0065】
上方遮蔽部93は、コールドアイル4の上方において、水平に配置されたポリカーボネート製の板状体である。この上方遮蔽部93は、具体的には、第一空調ユニット81のラック10の吸込面11の上端部から、第二空調ユニット82のラック10の吸込面11の上端部へと架け渡されて配置されており、コールドアイル4の上方から冷却空気が漏出してしまうことを防止する。
【0066】
(空調ユニットの接続パターン)
以上では、ラック10の配列方向と直交する方向(すなわち、
図3における奥行き方向)に沿って2つの空調ユニット80を並設して接続した接続パターンについて説明したが、空調ユニット80の接続パターンはこれに限定されない。
図5は、空調ユニット80の接続パターンを概略的に示す平面図である。すなわち、この
図5に示すように、本実施の形態に係る空調ユニット80は、ラック10の配列方向に沿って(すなわち、
図5における幅方向に沿って)一直線上に接続する接続パターンも可能であり、また、ラック10の配列方向と直交する方向(すなわち、
図5における奥行き方向に沿って)に沿って3つ以上の空調ユニット80を並設する接続パターンも可能である。具体的には、前者の接続パターンにおいては、複数のラック10における空調機20が配置されていない側の端部同士が連続的に配置される向き(すなわち、平面視上において、空調機20からも最も遠いラック10の側面のうち空調機20から遠い側の側面を基準面として線対称の配置となる向き)に空調ユニット80を並設する。この場合には、各空調ユニット80のラック側遮蔽部52、62、92、及び、各ラック側遮蔽部52、62、92に設けられた出入り口52a、62a、92aを省略しても良い。また、後者の接続パターンにおいては、複数の空調ユニット80のラック列の、吹出面12及び吸込面11がそれぞれ向かい合うように空調ユニット80を配置する。ここで、複数の空調ユニット80のラック列の、吹出面12がそれぞれ向かい合うように配置する際には、当該吹出面12の相互間に位置するホットアイルのキャッピング60の側方遮蔽部63を削除して、ホットアイル5を1つに結合するようにホットアイルのキャッピング60を構成しても良い。このような構成の詳細については、上述したように、実施の形態1に係る空調システム1におけるコールドアイルのキャッピング50の側方遮蔽部53を削除してコールドアイル4を1つに結合するようにコールドアイルのキャッピング90を構成した事と同様に説明することが出来るため、説明を省略する。このように、室内の広さに応じて任意の数の空調ユニット80を幅方向又は奥行き方向に沿って接続することが可能である。
【0067】
(実施の形態3の効果)
本実施の形態3に記載の空調システム3によれば、複数の空調ユニット80を組み合わせて空調システム3を構成するので、ラック10を設置する部屋の広さや、設置するラック10の数等に応じて複数の空調ユニット80を組み合わせることができ、空調システムの構成の自由度の向上を図ることが可能となる。
【0068】
〔III〕各実施の形態に対する変形例
以上、本発明に係る各実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0069】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。例えば、情報処理機器の冷却効率を向上させることができない場合であっても、従来と異なるシステムにより空調を達成できている場合には、本発明の課題は解決されている。
【0070】
(寸法や材料について)
発明の詳細な説明や図面で説明した空調システム1、3、100の各部の寸法、形状、比率等は、あくまで例示であり、その他の任意の寸法、形状、比率等とすることができる。
【0071】
(ラックの扉について)
各実施の形態では、ラック10の筺体における一側面、及び当該一側面と対向する位置に設けられた他の側面には開閉可能な扉が設けられているものとして説明したが、これに限らず、いずれか一方の面にのみ扉が設けられているものとしても良い。
【0072】
(ラックに設けられた冷却ファンについて)
各実施の形態では、情報処理機器自体に設けられた冷却ファンによってコールドアイル4の空気をラック10の内部を介してホットアイル5に排気したが、このような冷却ファンは必ずしも情報処理機器自体に設ける必要はない。例えば、情報処理機器自体には冷却ファンを設けず、各ラック10の内部におけるいずれかの位置に冷却ファンを配置して情報処理機器に対して冷却空気を送風しても良い。
【0073】
(ラックのパネルについて)
情報処理機器が収容されていないラック10に対して取り付けられる冷却対象空間遮蔽手段であって、当該ラック10の内部に対する冷却空気の流通を防止するための冷却対象空間遮蔽手段を設けても良い。すなわち、必ずしもラック列を構成する各ラック10の全てに情報処理機器を収容する必要はなく、一部のラック10にのみ情報処理機器を収容し、他のラック10には情報処理機器を収容しない場合も存在する。このような場合においては、情報処理機器が収容されていないラック10の内部は、情報処理機器が収容されているラック10の内部に比べて通気抵抗が格段に小さい。したがって、コールドアイル4の冷却空気の多くが、当該情報処理機器が収容されていないラック10の内部を介してホットアイル5へと流通してしまい、情報処理機器を充分に冷却することが出来ない可能性があった。このような問題を解決するために、ラック10の吸込面11又は吹出面12と略同一形状の長板面を有するパネルの如き冷却対象空間遮蔽手段を、情報処理機器が収容されていないラック10における吸込面11又は吹出面12に対して当該吸込面11又は吹出面12のいずれかを覆うように取り付けても良い。このことによって、情報処理機器が収容されていないラック10の内部への冷却空気の流通を防止し、情報処理機器が収容されたラック10に対して重点的に冷却空気を流通させることが可能となり、情報処理機器の冷却効率を向上させることが可能となる。なお、当該パネルは一枚のパネルによって構成されている事を要さず、例えば複数のパネルを組み合わせて構成されたものであっても良い。
【0074】
(ホットアイルのキャッピングについて)
各実施の形態では、ホットアイルのキャッピング60を設置するものとして説明したが、ホットアイルのキャッピング60を設置しない構成としても良い。このようにホットアイルのキャッピング60を設置しない構成によれば、ホットアイルのキャッピング60を設置することに要するコストや、ホットアイルのキャッピング60の清掃コストの低減を図ることが可能となる。さらに、意匠的圧迫感を有することのあるホットアイルのキャッピング60を設置しないことにより、ユーザのストレスの低減を図ることが可能となる。
【0075】
(コールドアイルのキャッピング及びホットアイルのキャッピングの素材や形状について)
各実施の形態では、コールドアイルのキャッピング50、90及びホットアイルのキャッピング60を構成する各部の素材や形状に関して、空調機側遮蔽部51、61、91及びラック側遮蔽部52、62、92をビニール製のシート、側方遮蔽部53、63及び上方遮蔽部54、64、93をポリカーボネート製の板状体として構成するものとして説明したが、空気の漏出を防止可能な強度を有する限りにおいて、これらに限定されない。例えば、側方遮蔽部53、63及び上方遮蔽部54、64、93についてもビニール製のシートとして構成しても良い。逆に、空調機側遮蔽部51、61、91及びラック側遮蔽部52、62、92をポリカーボネート製の板状体として構成しても良く、この際に設けられる出入り口51a、52a、61a、62a、91a、92aの構成としては、例えばスライド式のドア等としても良い。
【0076】
(風向板の角度について)
各実施の形態では、各風向板30の角度は均一であるものとして説明したが、これに限定されない。例えば、各風向板30をそれぞれ異なる角度としてもよい。
【0077】
また、各実施の形態では、風向板30の角度を2以上の角度に自在に調節できるものとして説明したが、これに限定されない。すなわち、例えば各ラック10に対して効率的に冷却空気を送風することが可能な角度が特定できている場合には、当該角度にて固定されていても良い。
【0078】
(風向変更手段について)
各実施の形態では、風向変更手段は、長板形状の風向板30であるものとして説明したが、これに限定されない。特に風向板30の形状は吹出口23からの風向きを変更可能な限りにおいて任意であり、例えば円筒形状のパイプや、短板を高さ方向に沿って複数組み合わせて風向板30を形成しても良い。
【0079】
(免震装置について)
各実施の形態では、免震装置40は、各ラック10の下面、空調機20の下面、コールドアイルのキャッピング50の下面、ホットアイルのキャッピング60の下面、PDU70の下面、PDU70の前方領域の下面、及びPDU70の後方領域の下面に架けて配置されているものとして説明したが、これに限定されない。すなわち、免震の対象として必要なのは情報処理機器が収容されたラック10、空調機20、及びPDU70のみであるため、少なくともラック10の下面、空調機20の下面、及びPDU70の下面にのみ免震装置40を設置すれば構わない。例えば、実施の形態3のように空調ユニット80を複数接続する場合には、1つの空調ユニット80の下面及びPDU70の下面から、コールドアイル4を介して、他の空調ユニット80の下面及びPDU70の下面に架けて免震装置40を設置し、ホットアイル5には免震装置40を設置しなくても良い。同様に、例えば奥行き方向に沿って3つ以上の空調ユニット80を接続する場合であっても、奥行き方向における最も外側に位置するコールドアイル4の下面又はホットアイル5の下面(例えば
図5においては、最も前方に位置するホットアイル5の下面又は最も後方に位置するホットアイル5の下面)には免震装置40を設置しなくても良い。このように免震装置40の設置面積を削減することにより空調システム1、3、100のコストを低減することが出来る。
【0080】
(空調機について)
各実施の形態においては、空調機20の冷却器22を、送風機24の上流に配置されるものとして説明したが、これに限らず、空調機20の冷却器22を、送風機24の下流に配置しても良い。
【0081】
(空調ユニットについて)
本実施の形態3においては、1組の、ラック10、空調機20、風向板30、免震装置40、及びPDU70を備えるユニットを「空調ユニット80」として、この空調ユニット80を室内の広さに応じて接続するものとして説明したが、これに限定されない。例えば、
図3に示すような2組のラック10、空調機20、風向板30、免震装置40、及びPDU70を備えるユニットを「空調モジュール」として、この空調モジュールを室内の広さに応じて接続しても良い。
【0082】
(付記)
付記1に記載の空調システムは、情報処理機器を収容する複数のラックであって、所定の配列方向に沿って連続的に配列された複数のラックを前記配列方向と直交する方向において挟んで位置する2つの空間である第一空間及び第二空間において、前記第一空間から各ラックの内部を介して前記第二空間への冷却空気の流れを形成することにより前記情報処理機器の冷却を行う空調システムであって、前記配列方向における前記複数のラックのいずれか一方の端部に連続的に配置された空調手段であって、前記第二空間から空気を吸い込む吸込口と、前記吸込口より吸い込んだ空気を冷却して冷却空気を生成する冷却手段と、前記冷却手段にて生成された冷却空気を前記第一空間に対して吹き出す吹出口と、前記吸込口から前記吹出口に至る空気の流れを形成する送風手段と、を有する空調手段と、前記空調手段の吹出口からの冷却空気の吹き出し方向を所定の方向に変更する風向変更手段と、を備える。
【0083】
また、付記2に記載の空調システムは、付記1に記載の空調システムにおいて、前記空調手段における前記複数のラックが配置された側方と反対側の側方から、前記空調手段における前記第一空間側の側方を介して、前記複数のラックにおける前記第一空間側の側方へとユーザが連続的に移動可能となり、かつ、前記反対側の側方から、前記空調手段における前記第二空間側の側方を介して、前記複数のラックにおける前記第二空間側の側方へとユーザが連続的に移動可能となるように、前記空調手段を配置した。
【0084】
また、付記3に記載の空調システムは、付記1又は2に記載の空調システムにおいて、前記風向変更手段は、それぞれが長板形状を有する風向板であって、前記吹出口に対して前記配列方向に沿って並設された複数の風向板である。
【0085】
また、付記4に記載の空調システムは、付記1から3のいずれか一項に記載の空調システムにおいて、前記風向変更手段は、前記吹出口からの冷却空気の吹き出し方向を少なくとも2以上の方向に調節可能である。
【0086】
また、付記5に記載の空調システムは、付記4に記載の空調システムにおいて、前記各ラックの内部の温度を計測する計測手段と、前記計測手段にて計測された温度に基づいて前記風向変更手段を制御して前記吹出口からの冷却空気の吹き出し方向を調節する制御手段を備える。
【0087】
また、付記6に記載の空調システムは、付記1から5のいずれか一項に記載の空調システムにおいて、前記所定の配列方向に沿って連続的に配列された複数のラックと、当該複数のラックの端部に連続的に配置された空調手段と、により空調ユニットを構成し、複数の前記空調ユニットを、前記第一空間又は前記第二空間を介して平行かつ同一向きに並設し、又は、複数の前記空調ユニットを、前記複数のラックの配列方向に沿って一直線上に、かつ各空調ユニットを構成する複数のラックにおける前記空調手段が配置されていない側の端部同士が連続的に配置される向きに並設した。
【0088】
(付記の効果)
付記1に記載の空調システムによれば、空調手段を複数のラックの端部に連続的に配置するので、空調手段を管理する者とラックの内部に収容された情報処理機器を管理する者の動線を区別して確保する事が可能となる。また、吹出口からの冷却空気の吹き出し方向を所定の方向に変更する風向変更手段を備えるので、空調手段が複数のラックの端部に配置されている場合であっても各ラックに対して均等にあるいは局所的に冷却空気の送風を図ることができ、情報処理機器の冷却効率の向上を図ることが可能となる。
【0089】
付記2に記載の空調システムによれば、空調手段における第一空間側及び第二空間側の側方の両方をユーザが移動可能となるので、ユーザによる第一空間及び第二空間への移動し易さの向上を図ることができ、設備点検等の自由度の向上を図ることが可能となる。
【0090】
付記3に記載の空調システムによれば、風向変更手段として長板形状を有する風向板を設けることにより、極めて容易な構成により冷却空気の吹き出し方向を所定の方向に変更することができ、施工性及び施工コストの低減を図ることが可能となる。
【0091】
付記4に記載の空調システムによれば、風向変更手段は吹出口からの冷却空気の吹き出し方向を少なくとも2以上の方向に調節可能であるので、ラックの冷却状態等に応じて風向を自在に調節でき、情報処理機器の冷却効率のさらなる向上を図ることが可能となる。
【0092】
付記5に記載の空調システムによれば、ラックの内部の温度に応じて冷却空気の吹き出し方向を調節する制御手段を備えるので、各ラックの冷却状況に一層適した空調を行うことが可能となり、情報処理機器の冷却効率のさらなる向上を図ることが可能となる。
【0093】
付記6に記載の空調システムによれば、複数の空調ユニットを組み合わせて空調システムを構成するので、ラックを設置する部屋の広さや、設置するラックの数等に応じて複数の空調ユニットを組み合わせることができ、空調システムの構成の自由度の向上を図ることが可能となる。