(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の吸収体は、尿パッド(失禁パッドを含む)、使い捨ておむつ、生理用ナプキン等の吸収性物品に設けられるものである。吸収体は吸収性物品が受けた尿等を吸収し固定し、例えば、吸収性物品のトップシートとバックシートの間に設けられる。
【0021】
吸収体は、長手方向と幅方向とを有する。「長手方向」とは、吸収体が設けられた吸収性物品を着用者が着用した際、着用者の股間の前後方向に延びる方向を意味する。「幅方向」とは、吸収体と同一面上にあり、長手方向と直交する方向を意味する。また、長手方向と幅方向から形成される面上の方向を、平面方向と定義付ける。また本発明において、「上側」とは、吸収性物品を着用した際の着用者側を意味し、吸収体を基準にとるとトップシート側に相当する。「下側」とは、吸収性物品を着用した際の着用者とは反対側、すなわち外側を意味し、吸収体を基準にとるとバックシート側に相当する。上側から下側に延びる方向を、上下方向と規定する。
【0022】
本発明の吸収体は、シート部材の間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有しない吸収シート体から構成される。吸収シート体は、第1シート部材と第2シート部材を有し、第1シート部材と第2シート部材の間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有しない。つまり吸収シート体は、第1シート部材と第2シート部材の間に吸水性樹脂が配されるが、これらのシート部材の間にはパルプ繊維は配されない。なお、吸収シート体において、製造上不可避的に混入するパルプ繊維の存在は許容される。吸収シート体は、第1シート部材と第2シート部材の間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有しないため、高い吸収容量を有しつつ薄型に形成することができる。
【0023】
第1シート部材と第2シート部材は液透過性であることが好ましく、例えば、セルロース、レーヨン、コットン等の親水性繊維から形成された不織布や、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル(例えば、PET)、ポリアミド(例えば、ナイロン)等の疎水性繊維から形成された不織布であって、疎水性繊維の表面が界面活性剤により親水化されたものを用いることができる。また、第1シート部材と第2シート部材として、織布、編布、有孔プラスチックフィルム等を用いてもよい。好ましくは、第1および第2シート部材として不織布を用いる。
【0024】
吸水性樹脂としては、ポリアクリル酸ナトリウム等のポリアクリル酸系の吸水性樹脂;デンプン−アクリロニトリルグラフト共重合体、デンプン−アクリル酸グラフト共重合体、デンプン−アクリルアミドグラフト共重合体等のデンプン系の吸水性樹脂;ポリビニルアルコール架橋体等のポリビニルアルコール系の吸水性樹脂等を用いることができる。吸水性樹脂としては、高い液吸収量を有する点で、ポリアクリル酸ナトリウム等のポリアクリル酸系の吸水性樹脂を用いることが好ましい。
【0025】
ところで、第1シート部材と第2シート部材の間に配される吸水性樹脂は微細な粒状であり、例えば吸水性樹脂を接着剤等によってシート部材に接着固定させたとしても、全ての吸水性樹脂を固定させることは難しく、シート部材の間から脱落してしまう場合がある。また、第1シート部材と第2シート部材の間にパルプ繊維が配されていないため、吸水性樹脂がパルプ繊維に絡まって保持されることもなく、吸水性樹脂が脱落しやすくなる。この場合、吸収体が所望する吸収性能を発揮しなかったり、吸収体から脱落した吸水性樹脂によって着用感が悪化したりするおそれがある。
【0026】
そこで本発明では、第1シート部材と第2シート部材の間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有しない吸収シート体を幅方向の両端部で折り返すことにより吸収体を形成し、この際に、吸収シート体の両端部に第1シート部材と第2シート部材の間に吸水性樹脂を配しないようにすることで、吸収体からの吸水性樹脂の脱落を起こりにくくしている。
【0027】
吸収シート体は、幅方向の両端部とそれらの間に位置する中央部を有する。吸収シート体は中央部と両端部の境界で幅方向に折り返され、吸収シート体の幅方向の端縁を含む折り返し部分が端部と規定される。両端部は、幅方向の一方側の端部と他方側の端部とから構成される。吸収シート体の両端部と中央部の幅方向の長さは特に限定されないが、中央部は、吸収シート体の幅方向の長さの60%〜90%(より好ましくは67%〜80%)となるように設けられることが好ましい。
【0028】
吸収体は、吸収シート体の幅方向の両端部が折り返されることにより形成され、両端部は中央部の上側または下側に重なって配される。例えば、吸収体をトップシートとバックシートの間に配した吸収性物品において、両端部は中央部のトップシート側に折り返されてもバックシート側に折り返されてもよい。また両端部は、一方側の端部がトップシート側に折り返されて、他方側の端部がバックシート側に折り返されてもよいが、好ましくは、両方の端部がトップシート側またはバックシート側に折り返されることが好ましい。なお、一方側または他方側の端部において、各端部を構成する第1シート部材と第2シート部材は同じ側に折り返される。
【0029】
折り返された両端部は、中央部に接着剤等で接合(固定)されてもよい。このように吸収体を構成することにより、両端部の折り返しが好適に維持され、吸水性樹脂の吸収体からの脱落が起こりにくくなる。
【0030】
吸収シート体の形状(平面形状)は特に限定されないが、吸収シート体の両端部の折り返しを容易にする点から長方形であることが好ましい。吸収体の形状(平面形状)も特に限定されないが、製造容易性の点から長方形であることが好ましい。
【0031】
中央部では、第1シート部材と第2シート部材の間に吸水性樹脂が配され、パルプ繊維は配されない。吸水性樹脂は、中央部の全面に配されてもよく、一部に配されてもよい。なお本発明の吸収体は、吸収シート体の両端部を折り返すことにより形成されるものであるため、中央部の幅方向の端まで吸水性樹脂を配置しても、吸収体の幅方向の端縁からの吸水性樹脂の脱落を防止できる。また、このように吸水性樹脂を配置することで、吸収体の幅方向の端縁近傍でも吸収能力を十分に発揮させることが可能となり、吸収体の吸収性能を高めることができる。
【0032】
両端部では、第1シート部材と第2シート部材の間に吸水性樹脂が配されていない。もちろん、第1シート部材と第2シート部材の間にパルプ繊維も配されていない。両端部に吸水性樹脂を配しないことにより、吸収体からの吸水性樹脂の脱落が防止される。
【0033】
両端部では、第1シート部材と第2シート部材が互いに接合されて、封止部が形成されていることが好ましい。両端部に封止部が形成されることにより、中央部から両端部に吸水性樹脂が移動しても、吸水性樹脂が吸収体から脱落しにくくなる。封止部は、第1シート部材と第2シート部材を接着剤で接合したり、ヒートシール(熱融着)や超音波接着することにより形成することができる。
【0034】
両端部の封止部は吸収体の長手方向の全長にわたって形成されることが好ましい。このように封止部が形成されることにより、吸水性樹脂が吸収体の幅方向に脱落するのが防止される。
【0035】
封止部は、吸収シート体の両端部が折り返される折り目に沿って形成されることが好ましい。すなわち、吸収体は、両端部で第1シート部材と第2シート部材が互いに接合されて封止部が形成され、吸収シート体が封止部で幅方向に折り返されることにより形成されていることが好ましい。このように吸収体が構成されていれば、吸収シート体の両端部を折り返して吸収体を形成する際に、吸水性樹脂が中央部から両端部に移動するのが阻止され、吸水性樹脂が吸収体から脱落しにくくなる。
【0036】
両端部の封止部は、第1シート部材と第2シート部材を接着剤で接合することにより形成することが好ましい。この場合、後述する接着剤層を両端部に設ければよく、第1シート部材と第2シート部材の間に形成した接着剤層により第1シート部材と第2シート部材を互いに接合すればよい。第1シート部材と第2シート部材は断続的に塗布した接着剤で互いに接合することが好ましく、このように両端部の封止部を形成することにより、封止部において第1シート部材と第2シート部材の柔軟性が確保され、吸収シート体を封止部で折り返しやすくなる。接着剤を断続的に塗布する方法としては、接着剤を、例えば網状やストライプ状や散点状に塗布すればよく、網状に接着剤を塗布する場合は、カーテンスプレー法、スパイラルコーティング法、オメガコーティング法等により接着剤を塗布すればよい。
【0037】
吸収シート体の両端部での折り返しを容易にする点から、吸収シート体は両端部で剛性が低くなるように形成されていることが好ましい。この点で、吸収シート体は、両端部で第1シート部材と第2シート部材が溶融することなくエンボス加工され、エンボス加工された部分で両端部が折り返されていることが好ましい。このように吸収シート体の両端部をエンボス加工することにより、吸収シート体はエンボス加工された部分で柔軟性が高まり、吸収シート体の両端部を折り返しやすくなる。
【0038】
吸収シート体を、第1シート部材と第2シート部材が溶融することなくエンボス加工するためには、第1シート部材を第1シート部材の融点未満の温度でエンボス加工し、および/または、第2シート部材を第2シート部材の融点未満の温度でエンボス加工すればよい。エンボス加工は第1シート部材と第2シート部材の少なくとも一方にされればよい。エンボス加工は、第1シート部材と第2シート部材を重ねた状態で行ってもよく、第1シート部材と第2シート部材が分離した状態で行ってもよい。好ましくは、エンボス加工は、第1シート部材と第2シート部材を重ねた状態で行うことが好ましく、このようにエンボス加工することにより第1シート部材と第2シート部材を一体的に折り返しやすくなる。つまり、第1シート部材と第2シート部材は、両端部で、溶融することなく、一体的にエンボス加工されていることが好ましい。
【0039】
吸収シート体の両端部での折り返しを容易にする点から、折り返した際に内側に位置するシート部材は、構成繊維が長手方向に配向した不織布からなることが好ましい。例えば、吸収シート体の両端部が第2シート部材側に折り返されて吸収体が形成される場合は、第2シート部材は、構成繊維が長手方向に配向した不織布からなることが好ましい。第2シート部材が不織布から構成され、構成繊維が長手方向に配向していれば、吸収シート体を幅方向に折り返しやすくなる。また、第1シート部材も、構成繊維が長手方向に配向した不織布からなることが好ましく、第1シート部材と第2シート部材の両方が、構成繊維が長手方向に配向した不織布から構成されていれば、吸収シート体の両端部での折り返しがさらに容易になる。
【0040】
構成繊維が一方向に配向した不織布としては、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、スパンレース不織布等が挙げられる。不織布の構成繊維の配向方向は、不織布の表面を顕微鏡等で観察することにより確認できる。例えばスパンボンド不織布では、構成繊維の配向方向について次のように説明される。スパンボンド不織布は、例えば、ポリマー原料を溶融し、紡糸口金から押し出して延伸し、これをコンベアベルト等の上に集積して、ウェブ状に形成することにより得られるが、この際、コンベアベルト上に集積されたウェブ(繊維)はコンベアベルトの進行方向に沿って配列されることとなる。従って、この場合、ウェブ(繊維)はコンベアベルトの進行方向(MD方向)に沿って配向することとなる。エアスルー不織布では、不織布を製造するに当たり、繊維塊形成の際の原料短繊維の集積方法やウェブ形成の際の開繊方法を適宜設定することにより、構成繊維の配向方向を揃えることができる。スパンレース不織布では、不織布を形成する際に、短繊維が分散した水流の流れを制御して繊維を堆積させることで、構成繊維の配向方向を揃えることができる。
【0041】
吸収シート体の両端部での折り返しを容易にする点から、吸収体は次のように構成されることも好ましい。すなわち、吸収シート体は、第1シート部材が第2シート部材よりも幅広に形成され、吸収体は、吸収シート体が第2シート部材側に折り返されて形成されていることが好ましい。この場合、吸収体は、折り返された両端部において、第1シート部材の端縁が第2シート部材の端縁よりも幅方向の内方に位置することが好ましい。吸収シート体を折り返した際に内側に位置する第2シート部材の幅を狭くすることで、吸収シート体を両端部で折り返しやすくなる。また逆に、外側に位置する第1シート部材を幅広に形成することで、吸収シート体の両端部を折り返した際に、内側の第2シート部材の全体を外側の第1シート部材で覆うことが可能となり、折り返した両端部をすっきりと形成することができる。また、折り返した両端部を接着剤等で中央部に固定する場合などは、第1シート部材で第2シート部材の幅方向の端縁を覆いながら両端部の第1シート部材を中央部に接合することで、両端部をきれいに接合しやすくなる。
【0042】
また、吸収シート体を第2シート部材側に折り返して吸収体を形成する場合は、第1シート部材は第2シート部材よりも剛性が高いことも好ましい。このように第1シート部材と第2シート部材を構成することにより、吸収シート体の両端部を第2シート部材側に折り返しやすくなる。
【0043】
次に、中央部の吸水性樹脂の配置について説明する。中央部は、吸水性樹脂が配された領域と、吸水性樹脂が配されない領域とを有することが好ましい。より好ましくは、中央部は、第1シート部材と第2シート部材とが接合された封止部と、第1シート部材と第2シート部材とが接合されない非封止部とを有し、非封止部に吸水性樹脂が配されて吸収領域が形成される。中央部に封止部を設けることにより、封止部が尿等の拡散通路として機能し、吸収体で受けた尿等が封止部を通って拡散しやすくなる。その結果、尿等が吸収体によって速やかに吸収されるようになる。
【0044】
封止部は、第1シート部材と第2シート部材が接合される部分として規定される。なお、中央部において、封止部での吸水性樹脂の存在は許容される。
【0045】
封止部は、吸収体が吸水しても、シート部材どうしの接合が維持されることが好ましい。吸収体が吸水すると、シート部材の間に配された吸水性樹脂が膨潤して、封止部においてシート部材どうしの接合が解けるおそれがある。この場合、吸収体での尿等の拡散性が低下することが想定される。従って、封止部は、吸収体が吸水しても、シート部材どうしの接合が維持されることが好ましい。封止部でシート部材どうしの接合が維持されやすくするためには、シート部材どうしを、ゴム系接着剤(例えば、天然ゴム系、ブチルゴム系、ポリイソプレン等)やスチレン系エラストマー(例えば、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)等)で接着したり、ヒートシール(熱融着)あるいは超音波接着することが好ましい。
【0046】
非封止部は、中央部において第1シート部材と第2シート部材が接合されない部分として規定され、封止部以外の部分が非封止部に相当する。非封止部では、第1シート部材と第2シート部材の間に空間が形成され、当該空間に吸水性樹脂が配されて吸収領域を形成する。なお中央部には、第1シート部材と第2シート部材の間の空間に吸水性樹脂が配されない非封止部が存在してもよい。吸収領域は吸収シート体を平面視した状態で規定される。
【0047】
吸収領域は、吸水性樹脂が第1シート部材と第2シート部材の間に配されて構成される。吸収領域は、吸収体が受けた尿等を吸収し固定する領域として機能する。吸収領域は複数設けられることが好ましい。
【0048】
吸収領域は、吸収体の幅方向の端縁近傍(すなわち中央部の幅方向の端縁近傍)に少なくとも設けられることが好ましい。例えば、吸収領域は、吸収体の幅方向の端縁から少なくとも5mm以内の領域に設けられることが好ましい。このように吸収領域を設けることにより、吸収体の吸収能力を幅方向のほぼ全体にわたって発揮させることが可能となり、吸収体の吸収能力を高めることができる。なお本発明の吸収体では、このように吸収体の幅方向の端縁近傍まで吸収領域を設けても、吸収体からの吸水性樹脂の脱落を防ぐことができる。
【0049】
吸収領域の配置態様は特に限定されないが、吸収領域はストライプ状または島状に配置されることが好ましい。吸収領域がこのように設けられていれば、吸収体での尿等の拡散性が高まるとともに、吸収体に設けられた吸収領域の全体が尿等の吸収に好適に寄与しやすくなる。
【0050】
吸収領域をストライプ状に配置する場合は、吸収領域が長手方向に延びるように少なくとも2つ設けられることが好ましい。この場合、吸収領域を幅方向に分割するように、長手方向に延びる封止部が少なくとも1つ設けられることが好ましい。吸収領域が長手方向に延びるストライプ状に配置されれば、尿等が吸収体の長手方向に拡散しやすくなり、尿等が吸収体に速やかに吸収されやすくなる。また、吸収領域を比較的広い面積で設けることができ、吸収体の吸収量を高めやすくなる。
【0051】
吸収領域を島状に配置する場合は、吸収領域が少なくとも2つ設けられ、それぞれの吸収領域が封止部または吸収体の端縁によって囲まれるように設けられることが好ましい。吸収領域が島状に配置されれば、尿等が吸収体の平面方向に拡散しやすくなり、尿等が吸収体に速やかに吸収されやすくなる。
【0052】
本発明の吸収体では、吸収領域が長手方向に延びるストライプ状に設けられることが好ましい。このように吸収領域が設けられれば、両端部を吸収領域に沿って折り返しやすくなり、またこのように形成された吸収体は幅方向の端縁近傍まで吸収領域が設けられるものとなる。
【0053】
吸収領域に配される吸水性樹脂の量は特に限定されないが、100g/m
2以上が好ましく、150g/m
2以上がより好ましく、また400g/m
2以下が好ましく、385g/m
2以下がより好ましい。吸収領域に吸水性樹脂が100g/m
2以上の量で配されていれば、吸収体の吸収容量を高めやすくなる。一方、吸収領域に吸水性樹脂が400g/m
2以下の量で配されていれば、吸水性樹脂が吸水しても、封止部でシート部材どうしの接合が維持されやすくなる。
【0054】
吸収領域において、吸水性樹脂は接着剤により第1シート部材および/または第2シート部材に固定されていることが好ましい。すなわち、シート部材には接着剤が塗布されて接着剤層が設けられ、吸水性樹脂が接着剤層でシート部材に固定されていることが好ましい。接着剤層は、吸水性樹脂の第1シート部材と第2シート部材の少なくとも一方に設けられればよいが、好ましくは、接着剤層は第1シート部材と第2シート部材の両方に設けられる。吸水性樹脂は、少なくとも一部が接着剤層に固定されていればよく、例えば、接着剤層に接する吸水性樹脂が接着剤層に固定されていればよい。吸水性樹脂が接着剤層によりシート部材に固定されていれば、吸水性樹脂の吸水前においては、吸水性樹脂が第1シート部材と第2シート部材の間で移動しにくくなり、吸収層における尿等の吸収能力が確保されやすくなる。吸水性樹脂の吸水後においても、ゲル化した吸水性樹脂がシート部材間で移動しにくくなる結果、吸水性樹脂が塊になって着用者に違和感を与えにくくなる。
【0055】
接着剤層は、吸水性樹脂を固定しつつ、吸水性樹脂による吸水や膨潤を阻害しないことが好ましい。この点から、接着剤層は断続的なパターンで設けられることが好ましく、例えば、接着剤層は、接着剤を網状やストライプ状や散点状に塗布することにより形成されることが好ましい。接着剤層を網状に形成する場合は、カーテンスプレー法、スパイラルコーティング法、オメガコーティング法等により接着剤を塗布すればよい。
【0056】
接着剤層に用いる接着剤としては、例えば、天然ゴム系、ブチルゴム系、ポリイソプレン等のゴム系接着剤;スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)等のスチレン系エラストマー;エチレン・酢酸ビニルコポリマー(EVA);ポリオレフィン系エラストマー等を用いることができる。これらの接着剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ゴム系接着剤やスチレン系エラストマーを用いることが好ましい。
【0057】
接着剤層によって、封止部が形成されてもよい。この場合、第1および/または第2シート部材に接着剤が塗布されることにより設けられた接着剤層によって第1シート部材と第2シート部材とが接合され、これにより封止部が形成されることとなる。接着剤層は、中央部の封止部を形成するのに利用されてもよく、両端部の封止部を形成するのに利用されてもよい。後者の場合、接着剤層は、中央部から両端部にかけて連続的に塗布されることが製造上好ましい。
【0058】
本発明の吸収体の構成例について、
図1〜
図3を参照して説明する。
図1は吸収シート体(すなわち折り返される前の吸収体)の一部切欠き平面図を表し、
図2は
図1に示した吸収シート体の幅方向の両端部を折り返して形成した吸収体の平面図を表し、
図3は
図2に示した吸収体のA−A断面図を表す。
図1〜
図3では、吸収領域がストライプ状に配置された例を表す。図面において、矢印x、y、zはそれぞれ吸収体の幅方向、長手方向、上下(厚み)方向を表す。
【0059】
吸収体は、
図1に示されるような吸収シート体2の幅方向xの両端部Eを折り返すことにより形成される。吸収シート体2は、幅方向xの両端部Eとそれらの間に位置する中央部Cを有する。吸収シート体2は、第1シート部材3と第2シート部材4を有し、第1シート部材3と第2シート部材4の間に吸水性樹脂5が配され、第1シート部材3と第2シート部材4の間にパルプ繊維は配されていない。吸水性樹脂5は、中央部Cに配されるが、両端部Eには配されていない。吸収シート体2の両端部Eが幅方向xの内方に折り返されることにより、
図2および
図3に示されるような吸収体1が形成される。吸収体1はこのように両端部Eが折り返されて形成されることにより、吸収体1は幅方向xからの吸水性樹脂5の脱落が防止され、吸収体1が所望する吸収性能を発揮しやすくなる。また、吸収体1から脱落した吸水性樹脂5によって、例えば着用者に悪影響を及ぼすおそれもなくなる。また吸収体1は、
図2や
図3に示すように、吸水性樹脂5を幅方向xの端縁近傍まで配置することが可能となる。
【0060】
第1シート部材3と第2シート部材4にはそれぞれ接着剤が塗布されて接着剤層6が形成され、吸水性樹脂5が接着剤層6により第1シート部材3と第2シート部材4に固定されている。中央部Cでは、第1シート部材3と第2シート部材4とが接合されて封止部7Cが形成されるとともに、第1シート部材3と第2シート部材4とが接合されない非封止部8が形成されている。非封止部8には吸水性樹脂5が配されて、吸収領域9が形成されている。封止部7Cは、第1シート部材3と第2シート部材4とが接着剤層6によって互いに接合されることにより形成されている。中央部Cに封止部7Cを設けることにより、封止部7Cが尿等の拡散通路として機能し、尿等の速やかな吸収が実現される。
【0061】
両端部Eでは、第1シート部材3と第2シート部材4が互いに接合されて、封止部7Eが形成されている。封止部7Eでは、第1シート部材3と第2シート部材4とが接着剤層6によって互いに接合されている。吸収体1は、吸収シート体2が封止部7Eで幅方向xに折り返されることにより形成されている。このように封止部7Eを形成することにより、吸水性樹脂5が中央部Cから両端部Eに移動するのが阻止され、吸水性樹脂5が吸収体1から脱落しにくくなる。
【0062】
吸収シート体2は、第1シート部材3が第2シート部材4よりも幅広に形成され、吸収体1は、吸収シート体2の両端部Eが第2シート部材4側に折り返されて形成されている。第1シート部材3を第2シート部材4よりも幅広に形成するにより、吸収シート体2を両端部Eで第2シート部材4側に折り返しやすくなる。また吸収体1は、折り返された両端部Eにおいて、第1シート部材3の端縁が第2シート部材4の端縁よりも幅方向の内方に位置しているため、両端部Eにおいて第2シート部材4の全体が第1シート部材3で覆われて、吸収体1の外見がすっきりと形成される。
【0063】
次に本発明の吸収性物品について説明する。本発明の吸収性物品は、本発明の吸収体が設けられている点に特徴を有し、本発明の吸収体がトップシートとバックシートの間に配されている。吸収性物品の態様としては、尿パッド(失禁パッドを含む)、使い捨ておむつ、生理用ナプキン等が示される。本発明の吸収性物品は、吸収体からの吸水性樹脂の脱落が起こりにくく、吸収体が所望する吸収性能を発揮しやすくなる。また、吸収体から脱落した吸水性樹脂によって着用感が悪化したりするおそれも少なくなる。
【0064】
吸収性物品の形状は特に限定されない。吸収性物品が例えば、尿パッド、生理用ナプキンである場合、吸収性物品の形状としては、長方形、砂時計形、ひょうたん形、羽子板形等が示される。
【0065】
吸収性物品が使い捨ておむつである場合、使い捨ておむつは、左右に一対の止着部材が備えられ、当該止着部材により着用時にパンツ型に形成するオープン型使い捨ておむつであってもよく、ウェスト開口部と一対の脚開口部とが形成されたパンツ型使い捨ておむつであってもよい。
【0066】
トップシートは、吸収性物品の着用の際、着用者側に位置するシートであり、液透過性であることが好ましい。バックシートは、吸収性物品の着用の際、着用者とは反対側、すなわち外側に位置するシートであり、液不透過性であることが好ましい。
【0067】
トップシートやバックシートは、例えば、不織布、織布、編布、プラスチックフィルム、プラスチックフィルムと不織布との積層体等から構成される。積層体としては、例えば、不織布とプラスチックフィルムとが一層ずつ重ねられたものや、プラスチックフィルムを不織布で挟んで重ねられたものが示される。なお、プラスチックフィルムやプラスチックフィルムを含む積層体をトップシートに用いる場合は、プラスチックフィルムには液を通過させるための孔が形成されていることが好ましい。トップシートは、好ましくは不織布から構成される。バックシートは、好ましくは不織布またはプラスチックフィルムから構成される。
【0068】
本発明の吸収性物品では、吸収体は、吸収シート体の両端部が第2シート部材側に折り返されて形成されるものとし、このように形成された吸収体は、折り返された両端部が中央部よりもトップシート側に位置するように配されてもよく、バックシート側に位置するように配されてもよい。前者の場合、吸収体が尿等を受けると、折り返された両端部が尿等を吸収体の長手方向に拡散させるように機能して、尿等の拡散性を高めるとともに、折り返された両端部によって尿等が幅方向に横漏れしにくくなる。また、折り返された両端部の存在により、着用者の股間が吸水性樹脂が内包された中央部に強く当たりにくくなり、着用者が吸水性樹脂に由来するごわつき感を覚えにくくなる。後者の場合、吸収体は、トップシート側の面全体で尿等を速やかに吸収しやすくなり、吸収性能の向上が期待できる。
【0069】
本発明の吸収性物品は、本発明の吸収体が複数積層して設けられていてもよい。また、本発明の吸収体以外の吸収体が設けられていてもよい。例えば、本発明の吸収体の下側に、さらに別の吸収体として補助吸収体が設けられてもよい。この場合、補助吸収体は、親水性繊維(パルプ繊維、セルロース繊維等)と吸水性樹脂を含有するものであることが好ましく、これによりバックシート側からの尿等の漏れ防止効果が高まる。
【0070】
吸収性物品には、幅方向の両側に立ち上がりフラップが設けられることが好ましい。立ち上がりフラップを設けることにより、尿等の横漏れが防止される。立ち上がりフラップは、例えば、トップシートの幅方向両側に、長手方向に延在するサイドシートを接合し、サイドシートの幅方向内方に弾性部材を設けることにより形成される。このようにサイドシートと弾性部材とを設けることにより、弾性部材の収縮力によりサイドシートの幅方向内方が着用者の肌に向かって立ち上がり、立ち上がりフラップが形成される。立ち上がりフラップまたはサイドシートは、液不透過性のプラスチックフィルムや液不透過性の不織布等により構成されることが好ましい。
【0071】
立ち上がりフラップは、立ち上がる基点となる起立基部が折り返された両端部と重なるように設けられることが好ましい。吸収体において、中央部と折り返された両端部が重なる部分は特に剛性が強くなるため、立ち上がりフラップの起立基部が折り返された両端部と重なるように設けられることにより、立ち上がりフラップが良好に起立しやすくなる。また、着用者から排泄された尿等が吸収体の上面にスムーズに導かれて、吸収体によって尿等が好適に吸収されるようになる。特に、吸収シート体が第2シート部材側に折り返されて吸収体が形成され、第2シート部材がトップシート側に位置するように吸収体が配された吸収性物品においては、起立基部が両端部と重なるように立ち上がりフラップを設けることにより、両端部での尿等の長手方向への拡散性が高められるようになる。
【0072】
立ち上がりフラップに設けられる弾性部材としては、ポリウレタン糸、ポリウレタンフィルム、天然ゴム等の通常の使い捨ておむつ等の吸収性物品に用いられる弾性伸縮材料を用いることができる。弾性部材は、伸張状態で、ホットメルト接着剤で固定されることが好ましい。例えば、繊度100〜2,500dtexのポリウレタン糸を、倍率1.1〜5.0倍に伸張して配設し、固定する。接合手段としては、好ましくは、ゴム系のホットメルト接着剤が用いられる。
【0073】
本発明の吸収性物品について、尿パッドを例に挙げ、
図4〜
図6を参照して説明する。なお、本発明の吸収性物品は、図面に示された実施態様に限定されるものではない。
図4〜
図6には、
図2および
図3に示した吸収体を備えた吸収性物品を示した。
図4は、吸収性物品として尿パッドをトップシート側から見た平面図を表す。
図5および
図6は、
図4に示した吸収性物品のB−B断面図を表すが、
図5と
図6では吸収体の上下方向の配置が異なる。
【0074】
吸収性物品11は、トップシート12とバックシート13とこれらの間に設けられた吸収体1とを有する。トップシート12は、着用者の肌に面するように配され、尿等の体液を透過する。トップシート12を透過した体液は、吸収体1に収容される。バックシート13は液不透過性であり、体液が外部へ漏れるのを防ぐ。
【0075】
吸収体1は、両端部Eが折り返されて形成されているが、
図5では、折り返された両端部Eがトップシート12側に位置するように配され、
図6では、折り返された両端部Eがバックシート13側に位置するように配されている。吸収性物品11で受けた尿等は、吸収体1に吸収され、固定される。
図5に示した吸収性物品11では、折り返された両端部Eによって尿等の長手方向yへの拡散性が高まり、また尿等の幅方向xへの横漏れ防止効果が高まる。
図6に示した吸収性物品11では、吸収体1がトップシート12側の面全体で尿等を速やかに吸収しやすくなり、吸収性能が向上する。
【0076】
トップシート12と吸収体1との間には上側台紙14が設けられることが好ましい。また、バックシート13と吸収体1との間には下側台紙15が設けられることが好ましい。上側台紙14と下側台紙15は、尿等の体液の拡散性を向上させたり、吸収性物品11が型崩れしにくくするために設けられる。上側台紙14は液透過性であることが好ましく、下側台紙15は、液透過性であっても液不透過性であってもよい。上側台紙14と下側台紙15としては、ティッシュペーパーやクレープ紙等を用いることもできる。
【0077】
吸収性物品11には、トップシート12の幅方向xの両側に、長手方向yに延在するサイドシート16が設けられることが好ましい。サイドシート16は、トップシート12の幅方向xの両側に接合される。
図4〜
図6では、サイドシート16に、各々、幅方向xの内方に起立用弾性部材18が3本設けられている。吸収性物品11の使用時には、起立用弾性部材18の収縮力によりサイドシート16の内方が着用者の肌に向かって立ち上がり、これにより立ち上がりフラップ17が形成され、尿等の排泄物の横漏れが防止される。
【0078】
立ち上がりフラップ17は、立ち上がる基点となる起立基部17Bを有し、起立基部17Bが折り返された両端部Eと重なるように設けられることが好ましい。起立基部17Bが折り返された両端部Eと重なるように設けられることにより、立ち上がりフラップ17が良好に立ち上がりやすくなり、また着用者から排泄された尿等が吸収体1の上面に好適に導かれて、吸収体1によって好適に吸収されるようになる。
【0079】
次に、本発明の吸収体の製造方法について説明する。本発明の吸収体の製造方法は、幅方向の両端部とそれらの間に位置する中央部とを有する吸収シート体が両端部で幅方向に折り返されて形成された吸収体を製造する方法であって;第1シート部材に接着剤を塗布する工程(接着剤塗布工程)と;接着剤が塗布された第1シート部材の中央部のみに吸水性樹脂を配置する工程(吸水性樹脂配置工程)と;第1シート部材の中央部と両端部に第2シート部材を重ねて、吸水性樹脂を第1シート部材と第2シート部材の間に配するようにして、吸収シート体を得る工程(吸収シート体製造工程)と;吸収シート体の両端部を第2シート部材側に折り返す工程(両端部折り返し工程)とを有するものである。
【0080】
接着剤塗布工程では、第1シート部材に接着剤を塗布する。接着剤は少なくとも第1シート部材の中央部に塗布する。接着剤が塗布された第1シート部材の中央部には、後段の吸水性樹脂配置工程で、吸水性樹脂が配置され、吸水性樹脂が第1シート部材に固定される。吸収体を連続的に製造する場合は、第1シート部材を連続体として繰り出し、そこに接着剤を塗布すればよい。この場合、第1シート部材と同一面にあり、第1シート部材の繰り出し方向に対して垂直な方向が、幅方向となる。
【0081】
接着剤塗布工程では、接着剤を、例えば、カーテンスプレー法、スパイラルコーティング法、オメガコーティング法等により塗布する。このように接着剤を塗布することにより、網状に形成された接着剤層を形成することができる。接着剤はまた、ストライプ状や散点状に塗布されることも好ましい。
【0082】
接着剤塗布工程では、接着剤を第1シート部材の中央部と両端部に塗布してもよい。接着剤を第1シート部材の両端部に塗布し、後段の吸収シート体製造工程で第1シート部材に第2シート部材を重ねて配置することで、吸収シート体の両端部に封止部を簡便に形成することができる。
【0083】
吸水性樹脂配置工程では、接着剤が塗布された第1シート部材の中央部のみに吸水性樹脂を配置する。吸水性樹脂配置工程により、第1シート部材に吸水性樹脂が固定配置される。吸水性樹脂配置工程では吸水性樹脂を幅方向に断続的に配置することが好ましく、これにより吸収領域を長手方向に延びるストライプ状に設けることができ、また中央部に封止部を形成することが可能となる。
【0084】
吸収シート体製造工程では、第1シート部材の中央部と両端部に第2シート部材を重ねて、吸水性樹脂を第1シート部材と第2シート部材の間に配するようにして、吸収シート体を得る。吸収シート体製造工程では、第1シート部材と第2シート部材の間に吸水性樹脂が配されて一体化された吸収シート体が得られる。吸収体を連続的に製造する場合は、第2シート部材を連続体として繰り出し、第1シートの連続体に重ねて配置すればよい。
【0085】
本発明の吸収体の製造方法では、吸収シート体製造工程に先立って、第2シート部材に接着剤を塗布する工程を設けてもよい。この場合、第2シート部材の少なくとも中央部に接着剤を塗布することが好ましく、さらに両端部に接着剤を塗布してもよい。
【0086】
また、吸水性樹脂配置工程と吸収シート体製造工程の間に、吸水性樹脂が配置された第1シート部材に接着剤を塗布する工程を設けてもよい。この場合、接着剤は、第1シート部材に配置された吸水性樹脂の上に少なくとも塗布することが好ましく、第1シート部材の吸水性樹脂が配置されない部分にさらに塗布してもよい。接着剤は、第1シート部材の少なくとも中央部に接着剤を塗布することが好ましく、さらに両端部に接着剤を塗布してもよい。
【0087】
第2シート部材は、第1シート部材よりも幅方向の長さが短いものであることが好ましい。第2シート部材が第1シート部材よりも幅狭であれば、後段の両端部折り返し工程で両端部を第2シート部材側に折り返しやすくなるとともに、得られた吸収体は折り返された両端部の外見がすっきりとしたものになる。
【0088】
吸収シート体製造工程で得られた吸収シート体は、両端部を第1シート部材と第2シート部材の融点未満でエンボス加工することが好ましい。すなわち、本発明の製造方法は、吸収シート体の両端部を、第1シート部材と第2シート部材の融点未満でエンボス加工する工程をさらに有することが好ましい。両端部をこのようにエンボス加工することにより、エンボス加工された部分の剛性が低下し、後段の両端部折り返し工程で、エンボス加工した部分で両端部を折り返しやすくなる。
【0089】
吸収シート体製造工程で得られた吸収シート体は、両端部をヒートシール(熱融着)や超音波接着することにより封止部を形成してもよい。この場合、両端部に封止部を形成するために、第1シート部材や第2シート部材の両端部に接着剤を塗布しなくてもよい。
【0090】
両端部折り返し工程では、吸収シート体の両端部を第2シート部材側に折り返して吸収体を得る。本発明の吸収体の製造方法では、吸収シート体の中央部を第1シート部材側(すなわち、第1シート部材の吸水性樹脂配置面の反対側)から吸引しながら、吸収シート体の両端部を第2シート部材側に折り返すことが好ましい。吸収シート体の両端部を第2シート部材側に折り返す際に、吸収シート体の中央部を第1シート部材側から吸引することで、厚さの薄い吸収シート体であっても両端部を正確な位置で折り返しやすくなる。また、吸収体を製造する際に、吸水性樹脂の脱落を防ぎやすくなる。なお、この場合において、吸収シート体の両端部は第1シート部材側から吸引しないことが好ましい。製造時の吸水性樹脂の脱落を防止する点からは、吸水性樹脂配置工程および/または吸収シート体製造工程において、第1シート部材の中央部を、吸水性樹脂が配置される面の反対側から吸引することも好ましい。
【0091】
吸収シート体の中央部を第1シート部材側から吸引しながら、吸収シート体の両端部を第2シート部材側に折り返すためには、例えば、中央部が載せられる部分に吸引用の穴が多数形成されたコンベア(例えば、中央部がメッシュ状に形成されたコンベア)上に吸収シート体を載せ、中央部を第1シート部材側から吸引して固定しながら、吸収シート体の両端部を第1シート部材側から持ち上げて第2シート部材側に折り返せばよい。
【0092】
両端部折り返し工程では、吸収シート体に、第2シート部材側から長手方向に沿ってガイド部材を押し当てながら、吸収シート体の両端部を第2シート部材側に折り返すことも好ましい。この場合、ガイド部材を吸収シート体の中央部と両端部の境界に押し当てて、吸収シート体の両端部を第1シート側から持ち上げて第2シート部材側に折り返すようにすることで、吸収シート体の両端部を正確な位置で折り返しやすくなる。
【0093】
吸収体を連続的に製造する場合、両端部折り返し工程では、吸収シート体の連続体の両端部を第2シート部材側に折り返すようにすればよい。この場合、両端部折り返し工程の後に個別切断工程を設けて、個別切断工程において吸収体の連続体を幅方向に延びる切断線で切断することにより、吸収体を個別に得ることができる。
【0094】
上記のようにして得られた吸収体は、液透過性のトップシートと液不透過性のバックシートとの間に配することにより本発明の吸収性物品を得ることができる。すなわち、本発明の吸収性物品の製造方法は、本発明の吸収体の製造方法により得られた吸収体を液透過性のトップシートと液不透過性のバックシートとの間に配する工程を有する。吸収性物品を連続的に製造する場合は、バックシートの連続体の上に、吸収体(個別に切断した吸収体であってもよい)を配置し、さらにその上にトップシートの連続体を配置した後に、個別に切断することで、吸収性物品を個別に得ることができる。
【0095】
次に、本発明の吸収体の製造方法の一例について、
図7を参照して説明する。
図7には、
図2および
図3に示した吸収体を連続的に製造する方法の一例を示した。
【0096】
まず、接着剤塗布工程31で、第1シート部材21を搬送方向wに繰り出し、第1シート部材21上に接着剤22を塗布する。
図7では、接着剤22を、中央部Cから両端部Eにかけて塗布している。
【0097】
次いで、吸水性樹脂配置工程32で、接着剤22が塗布された第1シート部材21の中央部Cのみに吸水性樹脂23を配置する。
図7では、吸水性樹脂23を搬送方向wに延びるストライプ状に配置している。
【0098】
次いで、吸収シート体製造工程33で、第1シート部材21の中央部Cと両端部Eに第2シート部材24を重ねて、吸水性樹脂23を第1シート部材21と第2シート部材24の間に配するようにして、吸収シート体25を得る。
図7では、第1シート部材21が第2シート部材24よりも幅広に形成され、これにより次の両端部折り返し工程34で吸収シート体25の両端部Eを第2シート部材24側に折り返しやすくなる。
【0099】
吸水性樹脂23が配されずに接着剤22が露出している部分では、第1シート部材21と第2シート部材24とが互いに接合され、封止部が形成されている。
図7では、封止部が中央部Cと両端部Eに形成されている。なお図面には示されていないが、第2シート部材24の吸水性樹脂23に面する側に接着剤が塗布されていれば、吸水性樹脂23を第1シート部材21と第2シート部材24の間に安定して保持しやすくなる。あるいは、吸水性樹脂配置工程32の後に、吸水性樹脂23の上から接着剤を塗布する工程を設けてもよい。
【0100】
両端部折り返し工程34では、吸収シート体25の両端部Eを第2シート部材24側に折り返す。この際、吸収シート体25の中央部Cを第1シート部材21側から吸引したり、吸収シート体25に第2シート部材24側から搬送方向wに沿ってガイド部材を押し当てることにより、吸収シート体25の両端部Eを第2シート部材24側に折り返しやすくなる。
【0101】
両端部折り返し工程34で得られた吸収体の連続体26は、個別切断工程35で切断され、個別の吸収体27が得られる。