(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被検体の生体組織に対する超音波のプッシュパルスの送信と、該プッシュパルスによって前記生体組織に生じたせん断弾性波を検出するための検出用超音波パルスの送信とを行なう超音波プローブと、
前記検出用超音波パルスの送信によって得られたエコー信号に基づいて前記生体組織の弾性に関する値と、前記生体組織の粘性の値とを算出する算出部と、
前記生体組織の弾性に関する値と、前記生体組織の粘性の値とに応じた表示形態を有する画像を表示させる表示画像制御部と、
を備え、
前記表示画像制御部は、前記生体組織の弾性に関する値と、前記生体組織の粘性の値とに応じた表示形態を定義する二次元マップに基づいて、前記画像を表示させ、
前記生体組織の弾性に関する値又は前記生体組織の粘性の値のいずれか一方の物性値に前記閾値として前記一方の物性値の閾値が設定され、他方の物性値が複数の範囲に分割されて前記二次元マップが構成されており、なおかつ該二次元マップにおいては、前記複数の範囲のうちの少なくともいずれか一つにおいては、他の範囲における前記一方の物性値の閾値が、閾値とはなっていないことを特徴とする超音波診断装置。
前記表示画像制御部は、前記生体組織の弾性に関する値及び前記生体組織の粘性の値の各々において設定された閾値の前後で異なる表示形態の画像を表示させることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
前記閾値は、前記生体組織の弾性に関する値及び前記生体組織の粘性の値の少なくともいずれかにおいては、複数設定されていることを特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置。
前記他方の物性値に前記閾値として前記他方の物性値の閾値が設定され、該他方の物性値の閾値によって、前記他方の物性値が複数の範囲に分割されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る超音波診断装置の実施形態について説明する。
(第一実施形態)
先ず、第一実施形態の超音波診断装置について説明する。
図1に示す超音波診断装置1は、超音波プローブ2、送受信ビームフォーマ3、エコーデータ処理部4、表示制御部5、表示部6、操作部7、制御部8、記憶部9を備える。
【0011】
前記超音波プローブ2は、前記超音波プローブ2は、本発明における超音波プローブの実施の形態の一例であり、被検体の生体組織に対して超音波を送信する。この超音波プローブ2により、生体組織にせん断弾性波を生じさせるための超音波パルス(プッシュパルス)が送信される。また、このプッシュパルスによって生体組織に生じたせん断弾性波を検出するための検出用超音波パルスが、前記超音波プローブ2によって送信され、そのエコー信号が受信される。
【0012】
さらに、前記超音波プローブ2により、Bモード画像を作成するための画像用超音波パルスが送信され、そのエコー信号が受信される。
【0013】
前記送受信ビームフォーマ3は、前記制御部8からの制御信号に基づいて、前記超音波プローブ2を駆動させて所定の送信パラメータ(parameter)を有する前記各種の超音波パルスを送信させる。また、前記送受信ビームフォーマ3は、超音波のエコー信号について、整相加算処理等の信号処理を行なう。
【0014】
前記エコーデータ処理部4は、
図2に示すように、Bモード処理部41、算出部42を有する。前記Bモード処理部41は、前記送受信ビームフォーマ3から出力されたエコーデータに対し、対数圧縮処理、包絡線検波処理等のBモード処理を行い、Bモードデータを作成する。
【0015】
前記算出部42は、前記送受信ビームフォーマ3から出力されたエコーデータに基づいて、前記せん断弾性波の伝搬速度を算出する。前記せん断弾性波の伝搬速度は、検出用超音波パルスの送信によって得られたエコーデータに基づいて算出される。
【0016】
また、前記算出部42は、プッシュパルスが送信された生体組織の弾性値(弾性率)及び粘性値(粘性率)を、前記伝搬速度に基づいて算出する。詳細は後述する。前記算出部42は、本発明における算出部の実施の形態の一例である。また、前記せん断弾性波の伝搬速度及び前記弾性値は、本発明における生体組織の弾性に関する値の実施の形態の一例であり、粘性値は、本発明における生体組織の粘性の値の実施の形態の一例である。
【0017】
前記表示制御部5は、
図3に示すように、Bモード画像作成部51、カラー画像作成部52、表示画像制御部53を有する。Bモード画像作成部51は、前記Bモードデータをスキャンコンバータ(scan converter)によって走査変換してBモード画像データを作成する。
【0018】
前記カラー画像作成部52は、生体組織の弾性値及び生体組織の粘性値に応じた色情報を有する二次元カラーマップ(color map)を用いて、前記算出部42によって算出された前記弾性値及び前記粘性値に基づいて、カラーデータを作成する。前記二次元カラーマップは、前記記憶部9に記憶されている。前記二次元カラーマップの具体例については後述する。前記二次元カラーマップは、本発明におけるマップの実施の形態の一例である。
【0019】
また、前記カラー画像作成部52は、スキャンコンバータによって前記カラーデータを走査変換してカラー画像データを作成する。
【0020】
前記表示画像制御部53は、前記Bモード画像データと前記カラー画像データとを加算することにより、前記Bモード画像データと前記カラー画像データとが合成された合成画像データを作成する。前記表示画像制御部53は、前記合成画像データに基づく合成画像を前記表示部6に表示させる。後述するように、前記合成画像は、Bモード画像とカラー画像とからなる。前記表示画像制御部53は、本発明における表示画像制御部の実施の形態の一例である。
【0021】
前記表示部6は、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro−Luminescence)ディスプレイなどである。前記操作部7は、特に図示しないが、ユーザーが指示や情報を入力するためのキーボード(keyboard)や、トラックボール(trackball)等のポインティングデバイス(pointing device)などを含んで構成されている。
【0022】
前記制御部8は、特に図示しないがCPU(Central Processing Unit)によって構成される。この制御部8は、前記記憶部9に記憶された制御プログラムを読み出し、前記超音波診断装置1の各部における演算処理機能を含む機能を実行させる。前記超音波診断装置1は、コンピュータとしての構成を備えている。
【0023】
前記記憶部9は、HDD(Hard Disk Drive:ハードディスクドライブ)や、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の半導体メモリ(Memory)である。
【0024】
次に、本例の超音波診断装置1の作用について、
図4のフローチャートに基づいて説明する。先ず、ステップS1では、ユーザーは被検体に対して前記超音波プローブ2による超音波の送受信を行ない、
図5に示すように、エコー信号に基づくBモード画像BIを表示させる。そして、ユーザーは、前記操作部7を用いて前記Bモード画像BIに関心領域Rを設定する。この関心領域Rは、カラー画像を表示させたい領域に設定される。
【0025】
次に、ステップS2では、ユーザーは、前記操作部7においてカラー画像を表示させる入力を行なう。前記ステップS2における入力があると、ステップS3の処理へ移行し、生体組織に対して、プッシュパルス及び検出用超音波パルスが送信される。具体的には、先ず前記制御部8は、プッシュパルスが送信されるよう前記送受信ビームフォーマ3へ制御信号を出力する。これにより、前記超音波プローブ2から生体組織に対してプッシュパルスが送信される。
【0026】
前記プッシュパルスが送信されると、前記制御部8は、検出用超音波パルスが送信されるよう前記送受信ビームフォーマ3へ制御信号を出力する。これにより、前記超音波プローブ2から生体組織に対して検出用超音波パルスが送信される。
【0027】
本例では、周波数が異なるプッシュパルスが、少なくとも2回送信され、各々のプッシュパルスの送信の後に、前記関心領域Rに対して前記検出用超音波パルスが送信される。具体的には、1回目の前記プッシュパルスの送信の後に、前記関心領域Rに対して前記検出用超音波パルスが送信され、この検出用超音波パルスのエコー信号が受信される。次に、2回目の前記プッシュパルスが送信される。その後、再び前記関心領域Rに対して前記検出用超音波パルスが送信され、そのエコー信号が受信される。一回目のプッシュパルスに対応する前記検出用超音波パルスと、二回目のプッシュパルスに対応する前記検出用パルスは、異なる周波数のせん断弾性波を検出する。
【0028】
次に、ステップS4においては、前記算出部42が、前記検出用超音波パルスのエコー信号に基づいて、せん断弾性波の伝搬速度を算出する。前記算出部42は、1回目のプッシュパルスに対応する検出用超音波パルスのエコー信号に基づいて、伝搬速度V1を算出する。また、前記算出部42は、2回目のプッシュパルスに対応する検出用超音波パルスのエコー信号に基づいて、伝搬速度V2を算出する。
【0029】
また、前記算出部42は、前記伝搬速度V1,V2に基づいて、生体組織の弾性値及び粘性値を算出する。ここで、一般的に、せん断弾性波の伝搬速度と弾性値及び粘性値との間には、下記(式1)の関係が成り立つ。
【数1】
ここで、(式1)において、Cs(ωs)はせん断弾性波の伝播速度、μ
1は弾性値、μ
2は粘性値である。また、ρは生体組織の密度(既知の値)、ωsはせん断弾性波の周波数である。このせん断弾性波の周波数は、前記プッシュパルスの中心送信周波数に応じた周波数である。
【0030】
前記算出部42は、前記(式1)のCs(ω
S)に前記伝搬速度V1を代入し、なおかつω
Sに一回目の検出用超音波パルスで検出されたせん断弾性波の周波数を代入した式と、前記(式1)のCs(ω
S)に前記伝搬速度V2を代入し、なおかつω
Sに二回目の検出用超音波パルスで検出されたせん断弾性波の周波数を代入した式との連立方程式を演算することにより、弾性値μ1及び粘性値μ2を算出する。ただし、仮に三回以上のプッシュパルスの送信及び検出用超音波パルスによるせん断弾性波の検出が行われる場合、フィッティング(fitting)によって前記伝搬速度V1,V2が算出されてもよい。
【0031】
次に、ステップS5では、
図6に示すように、前記表示部6における前記関心領域R内にカラー画像CIが表示される。詳細に説明すると、先ず前記カラー画像作成部52が、前記弾性値μ1及び前記粘性値μ2に基づいて、カラーデータを作成する。前記カラー画像作成部52は、
図7に示す二次元カラーマップCM1を用いてカラーデータの作成を行なう。この二次元カラーマップCM1は、生体組織の弾性値及び生体組織の粘性値に応じた色情報を有している。
図7の二次元カラーマップCM1では、色情報がグレースケールで示されている。
【0032】
前記二次元カラーマップCM1においては、例えば横軸方向においては色相が異なり、縦軸方向においては彩度又は明度が異なっていてもよい。この場合、同じ弾性値であっても粘性値が異なれば、同一の色相で、彩度又は明度が異なるカラーデータが作成される。また、同じ粘性値であっても弾性値が異なれば、同一の彩度又は明度で、色相が異なるカラーデータが作成される。このように、前記二次元カラーマップCM1を用いることにより、同じ弾性値であっても粘性値が異なれば、異なる色情報のカラーデータが作成され、同じ粘性値であっても弾性値が異なれば異なる色情報のカラーデータが作成される。
【0033】
また、前記二次元カラーマップCM1は、弾性値及び粘性値に応じて色相、彩度及び明度のうちいずれか一つのみが異なっていてもよい。
【0034】
前記カラー画像作成部52は、前記カラーデータに基づいてカラー画像データを作成する。このカラー画像データは、前記Bモード画像データと合成され、前記カラー画像CIとして前記表示部6に表示される。
【0035】
前記表示画像制御部53は、前記表示部6に前記二次元カラーマップCM1を表示させてもよい。
【0036】
前記カラー画像CIは、例えば弾性値μ1に応じて色相が異なるとともに粘性値に応じて彩度又は明度が異なっており、前記弾性値μ1及び前記粘性値μ2に応じた色を有する画像である。このように、本例においては、前記カラー画像CIのように、弾性値に応じて特定の表示形態情報が異なるとともに、粘性値に応じて他の表示形態情報が異なっている画像が表示されるので、生体組織の弾性のみならず、粘性をも考慮した診断などを行なうことができる。従って、例えば、弾性値が同じであっても、粘性値が異なっている症例を区別することができる。
【0037】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について説明する。以下、第一実施形態と異なる点について説明する。
【0038】
本例では、前記表示制御部5は、
図8に示すように、前記Bモード画像作成部51、カラー画像作成部52、表示画像制御部53の他、閾値バー(bar)設定部54を有している。
【0039】
本例では、前記記憶部9には、第一実施形態の二次元カラーマップCM1とは異なる二次元カラーマップCM2が記憶されている。この二次元カラーマップCM2は、
図9に示すように、弾性値における閾値Xthの前後及び粘性値における閾値Ythの前後で、色情報が異なっている。前記閾値Xth,Ythは本発明における閾値の実施の形態の一例である。
【0040】
本例では、前記閾値Xth未満でなおかつ前記閾値Yth以上の領域A(
図9において斜線で示された領域)と、それ以外の領域Bとで色情報が異なっている。前記領域Bは、
図10に示すように、前記閾値Xth未満でなおかつ前記閾値Yth未満の領域B1、前記閾値Xth以上でなおかつ前記閾値Yth未満の領域B2、前記閾値Xth以上でなおかつ前記閾値Yth以上の領域B3からなる。
【0041】
前記領域Aの色情報と前記領域Bの色情報は、ユーザー(user)が容易に区別し得るものとして設定された色情報である。より詳細に説明する。例えば、前記領域Bにおいては、第一実施形態の前記二次元カラーマップCM1と同様に、横軸方向において色相が異なり、縦軸方向において彩度又は明度が異なっている。一方、前記領域Aにおいては、前記領域Bとは異なる色相情報を有する。例えば、領域Bにおける色情報が、青、緑、黄系の色相を有する場合、前記領域Aにおける色情報は、赤系の色相である。
【0042】
前記領域Aにおいても、横軸方向において色相が異なり、縦軸方向において彩度又は明度が異なっていてもよい。また、前記領域Aは単一の色情報であってもよい。
【0043】
前記閾値Xth,Ythは、
図11に示すように前記表示部6に表示された二次元カラーマップCM2において設定できるようになっていてもよい。この場合、例えば前記閾値Xth,Ythは、前記表示部6に表示された閾値バーBx、Byによって設定される。前記閾値バーBx、Byは、前記閾値バー設定部54によって前記表示部6に表示され、設定される。
【0044】
前記閾値Xthは前記閾値バーBxによって設定され、前記閾値Ythは前記閾値バーByによって設定される。より詳細には、
図12に示すように、前記閾値バーBxは、前記表示部6(
図12では図示省略)において横軸方向(水平方向)に移動する。一方、前記閾値バーByは、前記表示部6において縦軸方向(上下方向)に移動する。前記閾値バー設定部54は、前記操作部7におけるポインティングデバイスの入力に従って、前記閾値バーBx,Byを移動させる。従って、ユーザーは、前記ポインティングデバイスを用いて、前記二次元カラーマップCM2において閾値を設定したい位置に、前記閾値バーBx,Byを移動させることができる。本例において、前記操作部7は、本発明における入力部の実施の形態の一例である。
【0045】
ユーザーは、注目対象の弾性値及び粘性値の範囲に前記領域Aが設定されるように、前記閾値Xth,Ythを設定する。これにより、前記カラー画像において、注目対象をそれ以外のものとは明確に区別して表示させることができる。
【0046】
本例においても、前記二次元カラーマップCM2に基づいて作成される前記カラー画像により、第一実施形態と同様に、生体組織の弾性のみならず、粘性をも考慮した診断などを行なうことができるので、例えば、弾性値が同じであっても、粘性値が異なっている症例を区別することができる。特に、本例においては、前記二次元カラーマップCM2に基づいてカラー画像を作成することにより、注目対象とそれ以外のものとを明確に区別して表示させることができる。
【0047】
次に、第二実施形態の変形例について説明する。先ず、第一変形例について説明する。
図13に示すように、前記二次元カラーマップCM2において、前記領域B1,B2,B3は、同じ色情報を有していてもよい。
図13では、前記領域B1,B2,B3は、格子模様で示されている。ただし、前記領域B1,B2,B3の色情報は、前記領域Aの色情報とは異なっている。
【0048】
図13に示す二次元カラーマップCM2において、前記領域B1,B2は同じ色情報を有するので、粘性値がYth以上の範囲においては閾値である前記Xthは、粘性値が0以上Yth未満の範囲においては閾値ではない。また、前記領域B2,B3は同じ色情報を有するので、弾性値が0以上Xth未満の範囲においては閾値である前記Ythは、弾性値がXth以上の範囲においては閾値ではない。
【0049】
次に、第二変形例について説明する。
図14に示すように、前記二次元カラーマップCM2において、前記領域B1,B2,B3の各々は、互いに異なる単一の色情報を有していてもよい。ただし、上述と同様に、前記領域B1,B2,B3の色情報は、前記領域Aの色情報とは異なっている。
【0050】
(第三実施形態)
次に、第三実施形態について説明する。以下、第一、第二実施形態と異なる点について説明する。
【0051】
本例においても、前記表示制御部5は、第二実施形態と同様に、前記Bモード画像作成部51、カラー画像作成部52、表示画像制御部53の他、閾値バー設定部54を有している(上述の
図8参照)。
【0052】
本例では、前記記憶部9には、第一、第二実施形態の二次元カラーマップCM1、CM2とは異なる二次元カラーマップCM3が記憶されている。この二次元カラーマップCM3は、
図15に示すように、弾性値及び粘性値の各々において、複数の閾値を有している。具体的には、前記二次元カラーマップCM3は、弾性値の閾値として、閾値Xth1,Xth2,Xth3,Xth4,Xth5を有し、粘性値の閾値として、閾値Yth1,Yth2,Yth3,Yth4,Yth5を有している。前記二次元カラーマップCM3は、弾性値における五つの閾値Xth1〜Xth5と、粘性値における五つの閾値Yth1〜Yth5によって、25個の領域Cに分かれている。そして、各々の領域Cには、互いに異なる色情報が割り当てられている。各々の領域Cは、単一の色情報を有する。ただし、
図15では色情報は図示省略されている。
【0053】
例えば、肝臓の線維化の程度、すなわち線維化のステージ(stage)に対応する前記弾性値及び前記粘性値が特定されている場合、前記閾値Xth1〜Xth5及び前記閾値Yth1〜Yth5は、肝臓の線維化のステージに対応した値に設定される。
【0054】
ここで、肝臓の線維化のステージは、F0〜F4の五段階に分かれている。従って、例えば、弾性値において、0以上Xth1未満はF0、Xth1以上Xth2未満はF1、Xth2以上Xth3未満はF2、Xth3以上Xth4未満はF3、Xth4以上Xth5未満はF4となるように、前記閾値Xth1〜Xth5が設定される。また、粘性値において、0以上Yth1未満はF0、Yth1以上Yth2未満はF1、Yth2以上Yth3未満はF2、Yth3以上Yth4未満はF3、Yth4以上Yth5未満はF4となるように、前記閾値Yth1〜Yth5が設定される。
【0055】
ちなみに、肝臓の線維化のステージは、前記弾性値及び前記粘性値の各々に基づいて特定され、前記弾性値に基づいて特定されるステージと、前記粘性値に基づいて特定されるステージとが異なる場合がある。
【0056】
前記閾値Xth1〜Xth5は、
図16に示すように、閾値バーBx1〜Bx5によって設定される。一方、前記閾値Yth1〜Yth5は、閾値バーBy1〜By5によって設定される。前記閾値バーBx1〜Bx5,By1〜By5は、前記第二実施形態の閾値バーBx,Byと同様に、前記操作部7におけるポインティングデバイスの入力に従って、前記閾値バー設定部54によって移動し、設定される。
【0057】
本例においても、前記二次元カラーマップCM3に基づいて作成される前記カラー画像により、第一、二実施形態と同様に、生体組織の弾性のみならず、粘性をも考慮した診断などを行なうことができるので、例えば、弾性値が同じであっても、粘性値が異なっている症例を区別することができる。また、粘性値が考慮された肝臓の線維化の程度を知ることができる。
【0058】
次に、第三実施形態の変形例について説明する。上述の二次元カラーマップCM3は、前記領域Cの各々が全て異なる色情報を有しているが、これに限られるものではない。前記領域Cのうち、一部が同じ色情報になっていてもよい。例えば、
図17に示す二次元カラーマップCM3′のように、太線lで囲まれた領域C1〜C5の各々は、互いに異なる単一の色情報を有していてもよい。
【0059】
具体的には、前記領域C1は、弾性値が0以上Xth未満で、粘性値が0以上Yth未満の領域であり、単一の色情報を有する。前記領域C2は、弾性値がXth1以上Xth2未満で、粘性値が0以上Yth2未満の領域であり、単一の色情報を有する。前記領域C3は、弾性値がXth2以上Xth3未満で、粘性値が0以上Yth3未満の領域であり、単一の色情報を有する。前記領域C4は、弾性値がXth3以上Xth4未満で、粘性値が0以上Yth4未満の領域であり、単一の色情報を有する。前記領域C5は、弾性値がXth4以上Xth5未満で、粘性値が0以上Yth5未満の領域であり、単一の色情報を有する。
【0060】
上述のように前記領域C1〜C5の各々は単一の色情報を有するので、前記閾値Yth1,Yth2,Yth3,Yth4は、弾性値の範囲によっては閾値ではない。具体的には、弾性値が0以上Xth1未満の範囲においては閾値である前記Yth1は、弾性値がXth1以上Xth2未満の範囲においては、閾値ではない。また、弾性値が0以上Xth1未満の範囲においては閾値である前記Yth1及びXth1以上Xth2未満の範囲においては閾値である前記Yth2は、弾性値がXth2以上Xth3未満の範囲においては、閾値ではない。また、弾性値が0以上Xth1未満の範囲においては閾値である前記Yth1、Xth1以上Xth2未満の範囲においては閾値である前記Yth2及びXth2以上Xth3未満の範囲においては閾値である前記Yth3は、弾性値がXth3以上Xth4未満の範囲においては、閾値ではない。また、弾性値が0以上Xth1未満の範囲においては閾値である前記Yth1、Xth1以上Xth2未満の範囲においては閾値である前記Yth2、Xth2以上Xth3未満の範囲においては閾値である前記Yth3及びXth3以上Xth4未満の範囲においては閾値である前記Yth4は、弾性値がXth4以上Xth5未満の範囲においては、閾値ではない。
【0061】
前記領域Cのうち、前記領域C1〜C5以外の領域は、上記実施形態と同様に互いに異なる色情報を有する。
【0062】
前記領域C1〜C5は、弾性値における線維化のステージが粘性値における線維化のステージよりも高い領域である。ここで、もしも弾性値における線維化のステージが粘性値における線維化のステージよりも高いとしたら、弾性値における線維化のステージを診断結果として採用するという場合、前記太線lで囲まれた領域は、ステージの判定において区別する意義が少ない。例えば、前記弾性値及び前記粘性値が前記領域C2に属する場合、すなわち弾性値がXth1以上Xth2未満の範囲であり、なおかつ粘性値が0以上Yth1の範囲である場合も、弾性値がXth1以上Xth2未満の範囲であり、なおかつ粘性値がYth1以上Yth2の範囲である場合も、ともに線維化のステージはF1であり、両者を区別する意義が少ない。従って、前記領域C1〜C5の各々は、同じ色情報を有する。
【0063】
以上、本発明を前記実施形態によって説明したが、本発明はその主旨を変更しない範囲で種々変更実施可能なことはもちろんである。例えば、前記カラー画像作成部52は、前記せん断弾性波の伝搬速度及び粘性値に応じた色情報を有する二次元カラーマップを用いて、カラーデータを作成してもよい。この場合、前記伝搬速度のみが算出され、前記弾性値は必ずしも算出されなくてもよい。
【0064】
また、生体組織の弾性に関する値と、生体組織の粘性の値とに応じた表示形態を有する画像は、前記カラー画像に限られるものではない。すなわち、表示形態は色に限られるものではなく、例えば、生体組織の弾性に関する値と、生体組織の粘性の値とに応じて、点や線の種類が異なっている画像が表示されてもよい。
【0065】
また、生体組織の弾性に関する値と、生体組織の粘性の値とに応じた表示形態を有する画像は、生体組織の弾性に関する値及び生体組織の粘性の値の比、和、差に応じた画像であってもよい。
【0066】
また、弾性値及び/又は粘性値に応じて、前記合成画像における透明度や輝度が異なっていてもよい。例えば、弾性値に応じて色相等が異なるカラー画像データが作成され、このカラー画像データとBモード画像データとの加算における重み係数が粘性値に応じて設定されてもよい。これにより、弾性値に応じて色相等が異なるとともに、粘性値に応じて透明度が異なる合成画像を表示することができる。また、単一の色情報からなるカラー画像データとBモード画像データとの加算における重み係数が、弾性値と粘性値とに応じて設定されていてもよい。これにより、弾性値と粘性値に応じて透明度が異なる合成画像を表示することができる。