【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の安全速度生成装置は、プローブカーに搭載されたデータ収集装置から、前記プローブカーの走行速度関連データを含むプローブデータを受信するプローブデータ受信部と、受信された前記走行速度関連データの中から、所定の道路区間において継続して加速度の変化量が所定の閾値以下の前記走行速度関連データを選択する走行速度関連データ選択部と、選択された前記走行速度関連データから、前記道路区間における前記プローブカーの平均走行速度を算出し、前記平均走行速度の分布状態に基づき、前記道路区間における安全速度情報を生成する安全速度情報生成部とを備えた構成を有している。
【0007】
走行時の加速度の変化量が小さいということは、その車両において安定した加減速が行われていること、すなわち、運転が上手であるということを意味する。そして、運転が上手なドライバーは、道路の実際の状況に即して安全な速度で運転を行っていると考えることができる。したがって、上記の構成によれば、運転が上手なドライバーの走行速度関連データを用いて、道路の実際の状況を反映した信頼性の高い安全速度情報を生成することができる。なお、プローブカーから取得する走行速度関連データとは、各プローブカーの走行速度を示すデータのほか、例えば、加速度等、その値を用いて各プローブカーの走行速度を算出することができるデータのことである。
【0008】
本発明の安全速度情報生成装置は、所定の道路地点における交通量データを含む交通情報を受信する交通情報受信部をさらに備え、前記走行速度関連データ選択部は、前記道路地点を含む道路区間における前記走行速度関連データから、前記交通量データが所定の閾値以上となっている間に得られた走行速度関連データを除外してもよい。
【0009】
ここで、交通量データは、単位時間における車両の通過台数である。交通量データが大きい、すなわち、密度が高い状態は、渋滞の前段階の状態であることが知られている。渋滞時あるいは渋滞前の状態では、車両の速度は過度に減速するため、通常の安全速度であるとは言えない。また、本発明の安全速度情報生成装置においては、ある道路区間における平均速度の分布から安全速度が決定されるが、渋滞の前段階にある地点の通過速度は、車両によってばらつきが大きくなることも知られている。したがって、交通量データが閾値以上の場合には、その地点を含む道路区間における速度データから除外することで、より信頼性の高い安全速度情報を生成することができる。
【0010】
本発明の安全速度情報生成装置において、前記走行速度関連データ選択部は、第1の前記道路区間における前記プローブカーの第1の走行速度と、前記プローブカーが前記第1の道路区間に続いて走行した第2の前記道路区間における、前記第1の走行速度よりも小さい第2の走行速度との差が、所定の閾値以上の、前記第1および第2の道路区間における前記走行速度関連データを除外してもよい。
【0011】
ある道路区間における走行速度が、前の道路区間における走行速度に比べて急激に速度が下がっている場合、当該前の道路区間における走行速度が速すぎたために、次の道路区間(減速された道路区間)において渋滞が発生したとみることができる。このような場合、当該前の道路区間において、加減速がスムーズに行われていたとしても、安全な速度で走行したということはできない。したがって、減速が閾値以上の場合には、その前後の道路区間の走行速度関連データを除外することで、より信頼性の高い安全速度情報を生成することができる。
【0012】
本発明の安全速度情報生成装置において、前記プローブデータは、前記プローブカーの位置データに対応付けられた危険運転履歴データを含み、前記走行速度関連データ選択部は、前記危険運転履歴に対応する道路地点から所定の距離内に位置する前記道路区間における前記走行速度関連データを除外してもよい。
【0013】
このように、危険運転履歴データに基づいて走行速度関連データの絞り込みを行うことで、過去に危険運転をしたことのあるドライバーの走行速度データを除外し、より信頼性の高い安全速度情報を生成することができる。なお、危険運転履歴データとは、例えば、プローブカーに搭載されるドライブレコーダーやデジタル式運行記録計等に記録される、事故やニアミス、急ブレーキ等の危険運転の存在を示すデータをいう。
【0014】
本発明の安全速度情報生成装置において、前記走行速度関連データ選択部は、前記道路区間において定められている制限速度を超える走行速度関連データを除外してもよい。
【0015】
この構成によれば、法定の制限速度を遵守した、信頼性の高い安全速度情報を生成することができる。
【0016】
本発明の安全速度情報生成装置において、前記プローブデータは、前記プローブカーの舵角データを含み、前記走行速度関連データ選択部は、前記舵角データに基づいて、前記道路区間における舵角の所定時間当たりの変化量が所定の閾値以上のプローブカーの前記走行速度関連データを除外してもよい。
【0017】
加速度変化量のみならず、所定時間当たりの舵角の変化量からも運転の巧拙を判断することが可能である。すなわち、運転の上手いドライバーの舵角の変化量は小さいのに対し、運転が上手でないドライバーは、小刻みなハンドル操作により、舵角の変化量は大きくなる傾向にある。したがって、舵角の変化量が所定の閾値以上の走行速度データを除外することで、より信頼性の高い安全速度情報を生成することができる。
【0018】
本発明の安全速度情報生成装置において、前記安全速度情報生成部は、前記平均走行速度の分布の中央値、平均値、1σ値のうちのいずれか1つ、または、前記中央値を含む所定範囲内の速度をを前記道路区間における安全速度とする安全速度情報を生成してもよい。
【0019】
この構成によれば、運転の上手なドライバーの実際の傾向を反映した、信頼性の高い安全速度情報を生成することができる。
【0020】
本発明の安全速度情報生成装置において、前記安全速度情報生成部は、前記平均走行速度の分布の中央値、平均値、1σ値のうちのいずれか1つよりも低い速度である第1の速度または前記第1の速度を含む所定範囲内の速度を安全速度とする安全速度情報を生成し、それ以外の前記所定の道路区間において、前記中央値、平均値、1σ値のうちのいずれか1つである第2の速度または前記第2の速度を含む所定範囲内の速度を安全速度とする安全速度情報を生成してもよい。
【0021】
この構成により、所定の道路形状に起因して渋滞が発生しがちな場所においては、予め低めに安全速度を設定する。そして、この安全速度をドライバに提供することにより、渋滞の発生する可能性を低減させることができる。
【0022】
本発明の安全速度情報生成装置において、前記プローブカーの走行状況を示す走行状況データを受信する走行状況データ受信部を備え、前記安全速度情報生成部は、前記走行状況データごとに前記平均走行速度を算出し、前記平均走行速度の分布状態に基づき、前記走行状況データごとに前記道路区間における安全速度情報を生成してもよい。
【0023】
様々な状況における走行速度を用いて安全速度を求めようとすると、データがなまってしまい、安全速度を求めることができない場合がある。本発明の構成によれば、プローブカーの走行状況に応じて、取得した走行速度関連データを分類し、走行状況ごとに安全速度情報を生成するので、適切に安全速度を求めることができる。また、実際の道路の状況をきめ細かく反映し、安全速度情報の信頼性を高めることができる。なお、プローブカーの走行状況とは、時間の経過とともに変化するプローブカー走行時の種々の状況または走行年月日や走行日時等の時間的な条件それ自体を意味する。
【0024】
本発明の安全速度情報生成装置において、前記走行状況データは、ドライバーの視界に影響を与える要因、車両と道路の摩擦係数に影響を与える要因、道路の交通密度に影響を与える要因を示すデータのうち、少なくともいずれか1つを含んでいてもよい。
【0025】
この構成により、特に走行速度に影響を与える要因を走行状況データとして安全速度に反映させ、より信頼性の高い安全速度情報を生成することができる。ここで、ドライバーの視界に影響を与える要因を示すデータとは、例えば、天候(雨、雪、霧)に関するデータや日射照度・日射方向に関するデータ(時間帯、時刻または時刻及び年月データ等)である。車両と道路の摩擦係数に影響を与える要因を示すデータとは、例えば、天候(雨、雪、霧)や湿度に関するデータである。また、道路の交通密度に影響を与える要因を示すデータとは、例えば、渋滞情報等の交通情報、道路区間周辺のイベント開催の有無に関するデータである。これらのデータは、プローブカーや所定の通信手段を用いて取得し、走行速度関連データの走行状況を示す属性データとして、走行速度関連データの分類基準に用いることができる。
【0026】
本発明の安全速度情報生成装置においては、前記プローブデータが、少なくとも1つの前記走行状況データを含んでいてもよい。
【0027】
この構成により、走行速度関連情報と共に走行状況データを取得することができるので、簡易な構成で、信頼性の高い安全速度情報を生成することができる。
【0028】
本発明の安全速度情報生成方法は、プローブカーから収集したデータに基づいて、所定の道路区間における安全速度情報を生成する方法であって、プローブカーに搭載されたデータ収集装置から、前記プローブカーの走行速度関連データを含むプローブデータを受信するステップと、受信された前記走行速度関連データの中から、所定の道路区間において継続して加速度の変化量が所定の閾値以下の前記走行速度関連データを選択するステップと、選択された前記走行速度関連データから、前記道路区間における前記プローブカーの平均走行速度を算出し、前記平均走行速度の分布状態に基づき、前記所定の道路区間における安全速度情報を生成するステップとを備えた構成を有する。
【0029】
この構成により、運転が上手なドライバーの走行速度関連データを用いて、道路の実際の状況を反映した信頼性の高い安全速度情報を生成することができる。なお、本発明の安全速度情報生成方法に、上述した安全速度情報生成装置の各種の構成を適用することも可能である。
【0030】
本発明のプログラムは、プローブカーから収集したデータに基づいて、所定の道路区間における安全速度情報を生成するためのプログラムであって、コンピュータに、プローブカーに搭載されたデータ収集装置から、前記プローブカーの走行速度関連データを含むプローブデータを受信するステップと、受信された前記走行速度関連データの中から、所定の道路区間において継続して加速度の変化量が所定の閾値以下の前記走行速度関連データを選択するステップと、選択された前記走行速度関連データから、前記道路区間における前記プローブカーの平均走行速度を算出し、前記平均走行速度の分布状態に基づき、前記道路区間における安全速度情報を生成するステップとを実行させる。
【0031】
この構成により、運転が上手なドライバーの走行速度関連データを用いて、道路の実際の状況を反映した信頼性の高い安全速度情報を生成することができる。なお、本発明のプログラムに、上述した安全速度情報生成装置の各種の構成を適用することも可能である。
【0032】
本発明の経路情報提供装置は、プローブカーに搭載されたデータ収集装置から、前記プローブカーの走行速度関連データを含むプローブデータを受信するプローブデータ受信部と、受信された前記走行速度関連データの中から、所定の道路区間において継続して加速度の変化量が所定の閾値以下の前記走行速度関連データを選択する走行速度関連データ選択部と、選択された前記走行速度関連データから、前記道路区間における前記プローブカーの平均走行速度を算出し、前記平均走行速度の分布状態に基づき、前記道路区間における安全速度情報を生成する安全速度情報生成部と、経路探索を行う車両の走行速度履歴を受信する走行速度履歴受信部と、生成された前記安全速度情報と、受信した前記走行速度履歴とに基づいて、前記車両の目的地までの経路を決定する経路探索部と、前記経路探索部にて決定された経路情報を送信する経路情報送信部とを備えた構成を有している。
【0033】
この構成により、運転が上手なドライバーの走行速度関連データから生成された、信頼性の高い安全速度情報と、走行速度履歴とに基づいて目的地までの経路が決定される。したがって、各ドライバーが安全に運転することができる経路情報を提供することができる。
【0034】
本発明の別の態様の安全速度情報生成装置は、プローブカーに搭載されたデータ収集装置から、前記プローブカーの走行速度関連データ及び前記プローブカーに搭載されたセンサからのセンシングデータを含むプローブデータを受信するプローブデータ受信部と、受信された前記センシングデータに基づいて、所定の道路区間における前記プローブカーの見通し距離を決定する見通し距離決定部と、受信された前記走行速度関連データに基づいて、前記道路区間における前記プローブカーの停止距離を算出する停止距離算出部と、前記見通し距離と前記停止距離のうち、短い方の距離に基づいて安全停止可能速度を決定し、前記安全停止可能速度の分布状態に基づき、前記道路区間における安全速度情報を生成する安全速度情報生成部とを備えた構成を有している。
【0035】
この構成によれば、センシングデータに基づいて決定される見通し距離と速度データ及び天候情報に基づいて算出される停止距離のうち、短い方の距離に基づいて、安全停止可能速度が決定され、安全停止可能速度の分布に基づいて、各道路リンクにおける安全速度が決定される。ここで、見通し距離とは、プローブカーのドライバーが道路前方を見通すことのできる距離(視距)を意味する。また、停止距離とは、自動車が停止するまでの距離であり、空走距離と制動距離の和である。安全停止可能速度とは、ドライバーが見通し距離の範囲内に予期しない歩行者の存在等を視認して車両を停止させようとする場合、当該歩行者等の手前で安全に車両を停止することができるような速度をいう。したがって、見通し距離としてセンシングデータに反映された道路の実情に即して、不測の事態があっても安全に停止することのできる、信頼性の高い安全速度情報を生成することができる。
【0036】
上記の安全速度情報生成装置は、天候情報を含む走行状況情報受信部をさらに備え、
前記停止距離算出部は、前記走行速度関連データと前記天候情報とに基づいて前記停止距離を算出してよい。
【0037】
停止距離は、主として天候に左右される路面の状態によって変化する。したがって、この構成によれば、より正確な停止距離を算出でき、信頼性の高い安全速度情報を生成することができる。
【0038】
上記の安全速度情報生成装置において、前記プローブデータは、前記プローブカーのドライバーの属性情報を含み、前記見通し距離及び/または前記停止距離は、前記ドライバーの属性情報に応じて変化してよい。
【0039】
この構成によれば、ドライバー属性に応じてきめ細かく見通し距離及び/または停止距離を決定することができ、信頼性の高い安全速度情報を生成することができる。
【0040】
本発明の別の態様の安全速度情報生成方法は、プローブカーから収集したデータに基づいて、所定の道路区間における安全速度情報を生成する方法であって、プローブカーに搭載されたデータ収集装置から、前記プローブカーの走行速度関連データ及び前記プローブカーに搭載されたセンサからのセンシングデータを含むプローブデータを受信するステップと、受信された前記センシングデータに基づいて、所定の道路区間における前記プローブカーの見通し距離を決定するステップと、受信された前記走行速度関連データに基づいて、前記道路区間における前記プローブカーの停止距離を算出するステップと、前記見通し距離と前記停止距離のうち、短い方の距離に基づいて安全停止可能速度を決定し、前記安全停止可能速度の分布状態に基づき、前記道路区間における安全速度情報を生成するステップとを備えた構成を有する。
【0041】
本発明の別の態様のプログラムは、プローブカーから収集したデータに基づいて、所定の道路区間における安全速度情報を生成するためのプログラムであって、コンピュータに、プローブカーに搭載されたデータ収集装置から、前記プローブカーの走行速度関連データ及び前記プローブカーに搭載されたセンサからのセンシングデータを含むプローブデータを受信するステップと、受信された前記センシングデータに基づいて、所定の道路区間における前記プローブカーの見通し距離を決定するステップと、受信された前記走行速度関連データに基づいて、前記道路区間における前記プローブカーの停止距離を算出するステップと、前記見通し距離と前記停止距離のうち、短い方の距離に基づいて安全停止可能速度を決定し、前記安全停止可能速度の分布状態に基づき、前記道路区間における安全速度情報を生成するステップとを実行させる。