【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 展示会名 INCHEM TOKYO 2013 プラントショー 主催者名 公益社団法人化学工学会および一般社団法人日本能率協会 開催日 平成25年10月30日から平成25年11月1日まで
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ベース材に、光源装置からの光を照射する照射用光ファイバーと、該照射用光ファイバーからの光を反射させるプリズムと、該プリズムからの反射光を受光して受光装置に伝送する受光用光ファイバーを備えて構成される光学式センサチップであって、
上記ベース材側には折曲した二面をもつように二等辺三角形状に切り込まれたプリズム取付部が形成され、該折曲した二面には、その両端縁に沿って延びる帯状の高位部が形成されるとともに、該高位部に挟まれた中間部分は該高位部よりも高さの低い低位部とされており、
上記プリズムは、光の入射面及び出射面となる前面と該前面の後方に位置して光の反射面となる一対の背面を備え、その一対の背面を上記プリズム取付部の折曲した二面に対向するように配置し且つその両端縁を上記高位部に衝合させるとともに、上記前面と一対の背面以外の1面または2面において固着されていることを特徴とする光学式センサチップ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上掲の各特許文献に示される光学式センサチップ(光学式ガスセンサ)においては、光路長の延長を図るための反射材としてミラー(一般的には、金属蒸着ミラーや誘電体多層膜蒸着ミラー)を採用しているが、これらの蒸着ミラーは耐熱性が低く(200℃程度)、また化学物質(腐食性ガス)や水分によって腐食または剥離する場合がある。このため、例えば、火力発電所等のボイラーの燃焼にともなって発生する高温の排ガス中のガス成分の濃度測定とか、大気中の公害ガスの濃度測定、プラント施設での可燃性ガスとか毒性ガスの濃度測定等のような過酷条件下において使用されることが多い光学式センサチップとして好適とは言い難く、該光学式センサチップの使用上における信頼性の確保という点において改善の余地がある。
【0008】
また、反射材としてミラーを用いた光学式センサチップにおいて、その検出精度を高めるためには該ミラーにおける光の高反射性が要求されるが、金属蒸着ミラーを用いた場合には、その蒸着金属の表面において僅かながら光が乱反射し、あるいは光が透過してしまうために、高反射性が損なわれることから、ガス成分の検出精度の向上には自ずと限界がある。
【0009】
そこで本願発明は、測定精度の向上と信頼性の確保との両立を可能とした光学式センサチップを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明ではかかる課題を解決するための具体的手段として次のような構成を採用している。
【0011】
本願の第1の発明では、ベース材に、光源装置からの光を照射する照射用光ファイバーと、該照射用光ファイバーからの光を反射させるプリズムと、該プリズムからの反射光を受光して受光装置に伝送する受光用光ファイバーを備えて構成される光学式センサチップにおいて、
上記ベース材側には折曲した二面をもつように二等辺三角形状に切り込まれたプリズム取付部が形成され、該折曲した二面には、その両端縁に沿って延びる帯状の高位部が形成されるとともに、該高位部に挟まれた中間部分は該高位部よりも高さの低い低位部とされており、上記プリズムは、光の入射面及び出射面となる前面と該前面の後方に位置して光の反射面となる一対の背面
を備え、その一対の背面を上記プリズム取付部の折曲した二面に対向するように配置し且つその両端縁を上記高位部に衝合させるとともに、上記前面と一対の背面以外の1面または2面において固着されていることを特徴としている。
【0012】
本願の第2の発明では、上記第1の発明に係る光学式センサチップにおいて、上記照射用光ファイバーと受光用光ファイバーを縦方向に並設する一方、上記プリズムを光路上に複数個配設するとともに、該複数のプリズムのうち、光路の略中間位置に配設される一のプリズムを、その一対の背面が縦方向に並ぶように配置し、他のプリズムを、その一対の背面が横方向に並ぶように配置したことを特徴としている。
【0013】
本願の第3の発明では、上記第1または第2の発明に係る光学式センサチップにおいて、上記プリズムを石英または透明セラミックスで構成するとともに、上記ベース材をセラミックスで構成したことを特徴としている。
ここで、プリズムを構成する透明セラミックスとしては、例えばアルミナ、アルミン酸イットリウム、酸化イットリウム、単結晶サファイア等を用いることができる。また、ベース材を構成するセラミックスとしては、例えばアルミナ、窒化珪素、炭化珪素、窒化アルミニウム、コージライト、ムライト、ジルコニア等を用いることができるが、アルミナは、耐熱性が高く成形し易いため好ましい。
【0014】
本願の第4の発明では、上記第3の発明に係る光学式センサチップにおいて、上記ベース材に上記光ファイバーを接続するためのフェルールを線膨張係数が8ppm/℃以下のセラミックスで構成するとともに、該フェルールと上記光ファイバーを耐熱性接着剤によって固着したことを特徴としている。
ここで、線膨張係数が8ppm/℃以下の熱膨張による形状変化が比較的小さいセラミックスとしては、例えばアルミナ、窒化珪素、炭化珪素、窒化アルミニウム、コージライト、ムライト等を用いることができる。また、耐熱性接着剤としては、例えばシリカ系接着剤、アルミナ系接着剤、窒化アルミニウム系接着剤、マグネシア系接着剤、ジルコニア系接着剤等を用いることができるが、シリカ系接着剤は、線膨張係数が小さく熱膨張による形状変化が小さいため好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本願発明では次のような効果が得られる。
(a)本願の第1の発明
本願の第1の発明に係る光学式センサチップによれば、
上記ベース材側には折曲した二面をもつように二等辺三角形状に切り込まれたプリズム取付部が形成され、該折曲した二面には、その両端縁に沿って延びる帯状の高位部が形成されるとともに、該高位部に挟まれた中間部分は該高位部よりも高さの低い低位部とされており、上記プリズムは、光の入射面及び出射面となる前面と該前面の後方に位置して光の反射面となる一対の背面
を備え、その一対の背面を上記プリズム取付部の折曲した二面に対向するように配置し且つその両端縁を上記高位部に衝合させるとともに、上記前面と一対の背面以外の1面または2面において固着されているので、
上記プリズムの上記一対の背面と上記プリズム取付部の折曲した二面の間には空間部が形成され空気等の気体層が不可避的に存在し、接着剤等も付着して
いないことから、入射光は上記背面で確実に全反射し、これによってガス濃度の測定精度が高められる。
【0016】
(b)本願の第2の発明
本願の第2の発明に係る光学式センサチップによれば、上記(a)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記照射用光ファイバーと受光用光ファイバーを縦方向に並設する一方、上記プリズムを光路上に複数個配設するとともに、該複数のプリズムのうち、光路の略中間位置に配設されるプリズムを、その一対の背面が縦方向に並ぶように配置しているので、上記照射用光ファイバーからの照射光は、一の平面上に形成される光路に沿って進むが、これが光路の略中間位置に配設された上記プリズムに入射されると、該プリズムにおいてその出射位置が入射位置よりも上側あるいは下側へ変化し、それ以降はこの変化した出射位置を含む他の平面上に形成される光路に沿って進んで上記受光用光ファイバーに入射される、即ち、光路が上下二つの平面上においてそれぞれ形成されることから、例えば、一の平面上のみに光路が形成される場合に比して、光路長を2倍に延長することができる。
【0017】
この結果、例えば、性能面から要求される光路長を同じとすれば、光路長が延長される分だけ光学式センサチップ1を小型にしてそのコンパクト化を図ることができる。また、2倍に延長された光路長を利用すれば、照射光が測定対象ガスを通過する距離を長くして、光学式センサチップのガス濃度の測定精度を高めることもできる。
【0018】
(c)本願の第3の発明
本願の第3の発明に係る光学式センサチップによれば、上記(a)または(b)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記プリズムを石英または透明セラミックスで構成するとともに、上記ベース材をセラミックスで構成したので、上記プリズム及びベース材が共に高い耐熱性及び耐腐食性をもつことになり、この結果、上記光学式センサチップは過酷条件下での使用が可能となりその適用範囲の拡大が図れるとともに、使用上の信頼性が向上する。
【0019】
(d)本願の第4の発明
本願の第4の発明に係る光学式センサチップによれば、上記(c)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記ベース材に上記光ファイバーを接続するためのフェルールを線膨張係数が8ppm/℃以下のセラミックスで構成したことで、上記フェルールの耐熱性及び耐腐食性によって光ファイバーを高温環境及び腐食環境から保護することができ、さらに、フェルールの高温環境での熱膨張による形状変化を小さくし、フェルールに固着されている光ファイバーに過度の引張力が加わらないようにして破断等を防ぎ、該光ファイバーの耐久性を向上させることができる。
なお、フェルールを、ベース材と同じ材質や線膨張係数が近似した材質によって構成すると、温度環境が急激に変化した場合等にフェルールの破損を防ぐことができるため好ましい。
【0020】
また、上記フェルールと上記光ファイバーを耐熱性接着剤によって固着したことで、高温環境においてフェルールから光ファイバーが抜け落ちたり、位置ずれを生じたりすることを防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
《第1の実施形態》
図1は、本願発明の第1の実施形態に係る光学式センサチップ1を備えたガス濃度測定システムの構成図である。このガス濃度測定システムは、本願発明の要旨に係る光学式センサチップ1の他に、光源装置2と受光装置3を備え、上記光源装置2において発振した光を、照射用光ファイバー4を介して上記光学式センサチップ1に伝送し、該照射用光ファイバー4の先端から測定対象ガス中に照射するとともに、各プリズム21〜24で反射した反射光を、受光用光ファイバー5を介して上記受光装置3に伝送する。また、上記受光装置3においては、上記受光用光ファイバー5から伝送された反射光に基づいて、ガス通過時の吸光度から測定対象ガスの濃度を定量的に求めるとともに、光吸収スペクトルのピーク波長からガス種を特定するようになっている。
【0023】
以下、上記光学式センサチップ1の構成等を具体的に説明する。
【0024】
上記光学式センサチップ1は、
図2及び
図3に示すように、ベース材10に、照射用光ファイバー4と照射用レンズ8A、受光用光ファイバー5と受光用レンズ8B、及び四個のプリズム21〜24を取り付けて構成される。
【0025】
1:ベース材10
上記ベース材10は、略長矩形の平面形体をもつセラミックス焼結体(アルミナ)で構成され、その長手方向の一端寄り部位と他端寄り部位は、それぞれ厚肉の第1基台部11及び第2基台部12とされており、これら各基台部11,12は薄肉の連結部13を挟んで離間対向している。これら各基台部11,12と上記連結部13の三者で囲まれた空間部は照射光の光路スペースとなる。
【0026】
なお、この実施形態では上記ベース材10を一体構造としているが、本願発明は係る構造に限定されるものではなく、例えば、複数ピースに分割形成し、これを接合して一体化する構造とすることもできる。
【0027】
1−1:第1基台部11側の構造
1−1−a:フェルール取付部14
上記第1基台部11の幅方向の一端寄り部位はフェルール取付部14とされ、ここには照射孔15と、受光孔16が、縦方向に所定間隔をもって平行に、且つ上記第2基台部12側へ指向した状態で形成されている。
【0028】
そして、
図3及び
図4に示すように、下段側に位置する上記照射孔15には、上記受光用光ファイバー5の先端に固定された照射用フェルール6Aが嵌挿され、且つ接着剤34によって固定されている。また、上記照射用フェルール6Aの前方側には、照射用レンズ8Aが取り付けられている。
【0029】
ここで、フェルールの構造を、
図4に示す受光用フェルール6Bを例にとって具体的に説明する。上記受光用フェルール6Bは、セラミックス焼結体(アルミナ)で構成され、その軸心部には小径の貫通穴60が設けられる一方、その軸方向の一端面には皿状に凹入する凹部61が、他端面には上記凹部61より小径の凹部62が、それぞれ設けられている。
【0030】
そして、上記受光用フェルール6Bの上記貫通穴60内に上記凹部61側から凹部62側に向けて受光用光ファイバー5の先端部を挿入し、該受光用光ファイバー5の先端を上記凹部62に充填した耐熱性のシリカ系接着剤33によって接着固定するとともに、上記凹部61側は、該凹部61に充填した耐熱性のシリカ系接着剤33によって接着固定している。この場合、上記凹部61側の接着剤33は、該凹部61内に留まることなく該凹部61から外方に向けて大きく砲弾型に盛り上げられている。
【0031】
このように構成された上記受光用フェルール6Bは、上記受光孔16内に嵌挿され、且つ耐熱性のシリカ系接着剤34によって接着固定されることで上記ベース材10側に取り付けられる。なお、上記受光用光ファイバー5は、心材31とその周囲を被覆するコート32で構成されている(上記照射用光ファイバー4も同様である)。
【0032】
このように上記受光用フェルール6Bと受光用光ファイバー5を、耐熱性のシリカ系接着剤33によって接着固定したことで、高温環境においてフェルール6Bから光ファイバー5が抜け落ちたり、位置ずれを生じたりすることを防ぐことができる。
また、シリカ系接着剤は、線膨張係数が約0.7ppm/℃と小さく、高温環境での熱膨張による形状変化が小さいことから、高温環境においてフェルール6Bへの追従性が高く、さらに、光ファイバー5に過度の引張力を加えることがないため破断等を防ぐことができる。なお、光ファイバー5の心材31を石英で構成した場合、線膨張係数は約0.6ppm/℃であり、上記シリカ系接着剤の線膨張係数と近似した値となる。
【0033】
1−1−b:第2プリズム取付部18
上記第1基台部11の幅方向略中央位置の前面側(上記連結部13寄りの面)には、該第1基台部11の上面11a側から下方に向けて二等辺三角形状に切り込まれた状態で第2プリズム取付部18が形成されている。
【0034】
上記第2プリズム取付部18の折曲した2面には、
図2、
図3、
図5、
図6に示すように、上下両端縁側を横方向へ延びる帯状の高位部18b、18bが形成されるとともに、これら上下一対の高位部18b、18bに挟まれた中間部分は該高位部18b、18bよりも高さの低い低位部18aとされている。
【0035】
そして、この第2プリズム取付部18には、石英または透明セラミックスで構成された第2プリズム22が取り付けられる。即ち、上記第2プリズム22は、その直交する二面、即ち、背面22a,22bを上記第2プリズム取付部18の折曲した二面に対向するように配置し、該背面22a,22bの上下両端縁部を上記第2プリズム取付部18の上下一対の高位部18b、18bにそれぞれ衝合させる。この衝合状態で、該第2プリズム22の下面22dを、上記第2プリズム取付部18に対応する上記連結部13の上面に接着剤35によって接着固定する(
図5参照)。
【0036】
この第2プリズム取付部18への第2プリズム22の取付状態においては、
図6に示すように、該第2プリズム22の背面22a,22bと上記第2プリズム取付部18の低位部18aとの間に、該低位部18aと高位部18bとの段差寸法に対応する厚さの空間部37が形成されている。
1−1−c:第4プリズム取付部20
【0037】
上記第1基台部11の前面側(上記連結部13寄りの面)で且つ上記第2プリズム取付部18の側方位置には、該第1基台部11の側面11bから上記第2プリズム取付部18側に向けて二等辺三角形状に切り込まれた状態で第4プリズム取付部20が形成されている。したがって、この第4プリズム取付部20の稜線は、上記第2プリズム取付部18の稜線方向と直交することになる。
【0038】
上記第4プリズム取付部20の折曲した2面には、
図2、
図3、
図7、
図8に示すように、左右両端縁側を縦方向へ延びる帯状の高位部20b、20bが形成されるとともに、これら左右一対の高位部20b、20bに挟まれた中間部分は該高位部20b、20bよりも高さが低い低位部20aとされている。
【0039】
そして、この第4プリズム取付部20には、石英または透明セラミックスで構成された第4プリズム24が取り付けられる。即ち、上記第4プリズム24は、その直交する二面、即ち、背面24a,24bを上記第4プリズム取付部20の折曲した二面に対向するように配置し、該背面24a,24bの上下両端縁部を上記第4プリズム24の左右一対の高位部20b、20bにそれぞれ衝合させる。この衝合状態で、該第4プリズム24の下面24dを、上記第4プリズム取付部20の底面20cに接着剤36によって接着固定する(
図7、
図8参照)。
【0040】
この第4プリズム取付部20への上記第4プリズム24の取付状態においては、
図7に示すように、該第4プリズム24の背面24a,24bと上記第4プリズム取付部20の低位部20aとの間に、該低位部20aと高位部20bとの段差寸法に対応する厚さの空間部37が形成されている。
【0041】
1−2:第2基台部12側の構造
1−2−a:第1プリズム取付部17及び第3プリズム取付部19
上記第2基台部12の前面側(上記連結部13寄りの面)には、該第2基台部12の上面12a側から下方に向けて二等辺三角形状に切り込まれた状態で第1プリズム取付部17と第3プリズム取付部19が、横方向に隣接して形成されている。これら第1プリズム取付部17と第3プリズム取付部19の構造は、上記第1基台部11側の上記第2プリズム取付部18と同様とされている。即ち、上記第1プリズム取付部17の折曲した二面の上下両端縁側には高位部17b,17bが設けられるとともに、該高位部17b,17bに挟まれた中間部位は低位部17aとされている。また、上記第3プリズム取付部19の折曲した二面の上下両端縁側には高位部19b,19bが設けられるとともに、該高位部19b,19bに挟まれた中間部位は低位部19aとされている。
【0042】
そして、
図2、
図3に示すように、上記第1プリズム取付部17には第1プリズム21が、上記第3プリズム取付部19には第3プリズム23がそれぞれ取り付けられるとともに、これらの取付状態においては、上記第1プリズム21の背面21a、21bと上記第1プリズム取付部17の折曲した二面の間、及び上記第3プリズム23の背面23a、23bと上記第3プリズム取付部19の折曲した二面の間には、それぞれ空間部37が形成されている。
【0043】
1−2−b:各部材間の相対関係
上記第2基台部12側に設けられた上記第1プリズム21と第3プリズム23と、上記第1基台部11側に設けられた上記照射孔15と受光孔16と上記第2プリズム22及び上記第4プリズム24との平面視における相対関係は以下のように設定されている。
【0044】
上記照射孔15と上記受光孔16は、上記第1プリズム21の幅方向外側の背面21aに対向している。上記第1プリズム21の幅方向内側の背面21bは,上記第2プリズム22の一方の背面22bに対向している。上記第2プリズム22の他方の背面22aは,上記第3プリズム23の幅方向内側の背面23aに対向している。上記第3プリズム23の幅方向外側の背面23bは、上記第4プリズム24の下側の背面24aに対向している。上記第4プリズム24の上側の背面24bは、上記第3プリズム23の外側の背面23bに対向している。
【0045】
1−2−c:光路
上記照射孔15と受光孔16、及び上記各プリズム21〜24が上記の如き相対関係に設定されていることで、
図2に示すように、上記第1基台部11側の上記第2プリズム22と第4プリズム24と、上記第2基台部12側の上記第1プリズム21と第3プリズム23の間において、上下二つの光路が形成される。
【0046】
第1の光路は、
図2に矢流線で示すように、上記照射用光ファイバー4の軸線を含む水平面上に形成される往路側の光路であって、上記照射用光ファイバー4から照射された後、上記第1プリズム21にその前面21cの下方寄り位置から入射して左右二つの背面21a,21bでの全反射により折り返した後、上記第2プリズム22にその前面22cの下方寄り位置から入射して左右二つの背面22b,22aでの全反射により折り返し、さらに上記第3プリズム23にその前面23cの下方寄り位置から入射して左右二つの背面23a,23bでの全反射により折り返した後、上記第4プリズム24にその前面24cの下方寄り位置から入射する光路である。
【0047】
第2の光路は、
図2に矢流線で示すように、上記第4プリズム24での全反射により上記第3プリズム23側へ折り返される復路側の光路であって、上記第4プリズム24側から上記第3プリズム23にその前面23cの上方寄り位置から入射して左右二つの背面23b,23aでの全反射により折り返した後、上記第2プリズム22にその前面22cの上方寄り位置から入射して左右二つの背面22a,22bでの全反射により折り返し、さらに上記第1プリズム21にその前面21cの上方寄り位置から入射して左右二つの背面21b,21aでの全反射により折り返した後、上記受光用光ファイバー5に入射する光路である。
なお、本実施形態においては、照射孔15と受光孔16の配置を置き替えても差し支えなく、同じ光路長が確保される。
【0048】
1−3:作用効果
このように上記照射用光ファイバー4から照射された後、上記受光用光ファイバー5に入射されるまでの間に上記第1の光路と第2の光路という上下二段の光路が形成されることで、例えば、一の平面上に形成される光路のみ(即ち、上記第1の光路と第2の光路の何れか一つのみ)の場合に比して、2倍の光路長が確保される。
【0049】
この結果、2倍の光路長を持つ光学式センサチップ1においては、上記照射用光ファイバー4から照射された後、上記受光用光ファイバー5に入射される光線が測定対象ガスを含んだ空気中を通過する距離が倍増することから、ガス濃度の測定精度が向上することになる。また、例えば、性能面から要求される光路長を同じとすれば、光路長が2倍に延長される分だけ光学式センサチップ1を小型にしてそのコンパクト化を図ることが可能となる。
【0050】
一方、上述の如き光学式センサチップ1のガス濃度の測定精度は、上記各プリズム21〜24において入射光が全反射されることが前提条件であって、この全反射性が損なわれると当初想定の性能を得ることができないことになる。したがって、上記各プリズム21〜24において全反射が確保されるように、該各プリズム21〜24の上記ベース材10に対する取付構造を考慮することが必要である。
【0051】
即ち、プリズムでの全反射の条件の一つは、反射面である背面への光の入射角がプリズム(石英または透明セラミックス)の臨界角より大きいことであるが、この条件は、本実施形態においてはプリズムの前面に対してその光が垂直方向から入射するように構成したことで満たされている。
【0052】
他の条件の一つは、プリズムの反射面である背面の裏面側が屈折率の大きい媒質に接触していないことである。光の全反射は、光が屈折率の大きい媒質から小さい媒質へ進むとき起こる現象であって、また全反射が起こる可能性は両媒質の屈折率の差が大きいほど高くなる。例えば、プリズムの背面の裏面側に空気が存在している場合には、プリズム(石英または透明セラミックス)の屈折率が「1.5程度」であるのに対して空気の屈折率が「1.0程度」であるため、ほぼ確実に全反射が起こると考えられる。これに対して、プリズムの背面の裏面側に接着剤とか水が存在している場合には、接着剤の屈折率は一般に「1.6〜1.7程度」であり、水の屈折率は「1.3程度」であるため、いずれもプリズムの屈折率との差が小さいため全反射が起こりにくくなる。したがって、プリズムの背面で全反射を確実に起こさせてガス濃度の測定精度を高めるためには、該背面の裏面側に接着剤とか水を付着させることなく、空気に接触させることが必要であるといえる。
【0053】
このような観点から、この実施形態では、上記ベース材10の各プリズム取付部17〜20に高位部と低位部を設け、高位部にプリズムの背面を接触させることで、該背面と低位部の間に、高位部と低位部の段差寸法に相当する厚さの空間部37を形成し、これによって上記各プリズム21〜24における全反射を確実にしている。
【0054】
即ち、この実施形態の光学式センサチップ1では、上述のように光の光路長を長くすることと、各プリズムでの全反射を確実ならしめることの相乗効果によって高性能化(ガス濃度の測定精度の向上)を実現している。
【0055】
さらに、この実施形態の光学式センサチップ1では、上記各プリズム21〜24を石英または透明セラミックスで構成するとともに、上記ベース材10をセラミックスで構成したので、上記各プリズム21〜24及びベース材10が共に数百℃の耐熱性と高い耐腐食性をもつことになる。この結果、上記光学式センサチップ1は、過酷条件下での使用が可能となりその適用範囲の拡大が図れるとともに、使用上の信頼性が向上することになる。
【0056】
また、この実施形態の光学式センサチップ1では、上記ベース材10に上記各光ファイバー4,5を接続するためのフェルール6A,6Bをセラミックスで構成したことで、上記フェルール6A,6Bの耐熱性及び耐腐食性によって光ファイバー4,5を高温環境及び腐食環境から保護してその信頼性を高めることができる。
【0057】
また、上記フェルール6A,6Bと上記各光ファイバー4,5を、硬化後においても該フェルール6A,6Bよりも柔らかいシリカ系接着剤によって固着したことで、上記フェルール6A,6Bに対して上記各光ファイバー4,5が上下左右方向に動いた際には該シリカ系接着剤部分が追従して変形することで該各光ファイバー4,5とフェルール6A,6Bとの接触部分における応力集中が可及的に回避され、該各光ファイバー4,5の耐久性が向上することになる。
【0058】
なお、この実施形態では、三個の横置きプリズムと一個の縦置きプリズムを用いることで上下二つの光路を構成しているが、この実施形態の技術思想は、1個の縦置きのプリズムを備えれば、横置きのプリズムの数に限定されることなく成立し得るものであり、したがって、この実施形態の構成に限定されることなく横置きプリズムの配置個数を適宜増減設定することができる。因みに、次述の第2の実施形態における光学式センサチップ1は、一個の縦置きプリズムと二個の横置きプリズムで光路を構成したものであり、第3の実施形態における光学式センサチップ1は、一個の縦置きプリズムと一個の横置きプリズムで光路を構成したものである。
《第2の実施形態》
【0059】
図9には、本願発明の第2の実施形態に係る光学式センサチップ1を示している。この実施形態の光学式センサチップ1は、その基本構成を上記第1の実施形態の光学式センサチップ1と同じにするものであって、これと異なる点は、合計三個のプリズム41〜43によって上下二段の光路を構成した点である。
【0060】
即ち、この光学式センサチップ1では、上記ベース材10の上記第1基台部11側に上下二段に上記照射用光ファイバー4と受光用光ファイバー5を配置するとともに、これら各光ファイバー4,5の側方に、一対の背面が横方向に並ぶ横置き配置で第2プリズム42を取り付けている。
【0061】
一方、上記第2基台部12側には、第1プリズム41を一対の背面が横方向に並ぶ横置き配置で、また第3プリズム43を一対の背面が縦方向に並ぶ縦置き配置で、それぞれ取り付けている。
【0062】
そして、これら三個のプリズム41〜43によって、
図9に矢流線で示すように、上記照射用光ファイバー4から照射後、上記第1プリズム41の下方寄り位置で折り返して上記第2プリズム42に入射し、さらに該第2プリズム42で折り返して上記第3プリズム43の下方寄り位置に入射する第1の光路と、該第3プリズム43で折り返して上記第2プリズム42の上方寄り位置に入射し、さらに該第2プリズム42で折り返して上記第1プリズム41の上方寄り位置に入射し、ここで折り返して上記受光用光ファイバー5に入射する第2の光路を形成している。
なお、本実施形態においては、照射用光ファイバー4と受光用光ファイバー5の配置を置き替えても差し支えなく、同じ光路長が確保される。
【0063】
このように、上下二段の光路を構成することで光路長を延長し、これによってガス濃度の測定精度の向上が図れるとともに、光学式センサチップ1のコンパクト化が可能になるという効果は、上記第1の実施形態の光学式センサチップ1の場合と同様である。さらに、この実施形態の光学式センサチップ1に特有の効果としては、光路の折り返し点が少ない分だけ上記第1の実施形態の光学式センサチップ1よりもその幅寸法を小さくでき、さらなるコンパクト化が促進される点が挙げられる。
【0064】
また、この実施形態の光学式センサチップ1では、上記各プリズム41〜43の背面の裏面側に空間部を形成した点、及び係る構成に基づく効果、上記各プリズム41〜43を石英または透明セラミックスで、上記ベース材10をセラミックスで、それぞれ構成した点、及び係る構成に基づく効果、さらに上記ベース材10に上記各光ファイバー4,5を接続するためのフェルール6A,6Bをセラミックスで構成した点、及び係る構成に基づく効果は、上記第1の実施形態の場合と同様であるため、第1の実施形態における該当説明を援用し、ここでの説明を省略する。
《第3の実施形態》
【0065】
図10には、本願発明の第3の実施形態に係る光学式センサチップ1を示している。この実施形態の光学式センサチップ1は、その基本構成を上記第1の実施形態の光学式センサチップ1及び第2の実施形態の光学式センサチップ1と同じにするものであって、その特徴とする点は、上記第2の実施形態の光学式センサチップ1よりもさらにそのコンパクト化を図った点である。
【0066】
この実施形態の光学式センサチップ1では、合計二個のプリズム44,45によって上下二段の光路を構成している。即ち、上記ベース材10の上記第1基台部11側に上下二段に上記照射用光ファイバー4と受光用光ファイバー5を配置するとともに、これら各光ファイバー4,5の側方に、一対の背面が縦方向に並ぶ縦置き配置で第2プリズム45を取り付ける一方、上記第2基台部12側には、一対の背面が横方向に並ぶ横置き配置で第1プリズム44を取り付けている。
【0067】
そして、これら二個のプリズム44,45によって、
図10に矢流線で示すように、上記照射用光ファイバー4から照射後、上記第1プリズム44の下方寄り位置で折り返して上記第2プリズム45に入射する第1の光路と、該第2プリズム45で折り返して上記第1プリズム44の上方寄り位置に入射し、ここで折り返して上記受光用光ファイバー5に入射する第2の光路を形成している。
なお、本実施形態においては、照射用光ファイバー4と受光用光ファイバー5の配置を置き替えても差し支えなく、同じ光路長が確保される。
【0068】
このように上下二段の光路を構成することで、光路長を延長し、これによってガス濃度の測定精度の向上を図るとともに、光学式センサチップ1のコンパクト化を可能とするという効果は、上記第1及び第2の実施形態の光学式センサチップ1の場合と同様である。さらに、この実施形態の光学式センサチップ1に特有の効果としては、光路の折り返し点が上記第2の実施形態の光学式センサチップ1の場合よりもさらに少ない分だけ上記第2の実施形態の光学式センサチップ1よりもその幅寸法をさらに小さくできる点が挙げられる。
【0069】
また、この実施形態の光学式センサチップ1では、上記各プリズム44,45の背面の裏面側に空間部を形成した点、及び係る構成に基づく効果、上記各プリズム44,45を石英または透明セラミックスで、上記ベース材10をセラミックスで、それぞれ構成した点、及び係る構成に基づく効果、さらに、上記ベース材10に上記各光ファイバー4,5を接続するためのフェルール6A,6Bをセラミックスで構成した点、及び係る構成に基づく効果は、上記第1の実施形態の場合と同様であるため、第1の実施形態における該当説明を援用し、ここでの説明を省略する。
《第4の実施形態》
【0070】
図11及び
図12には、本願発明の第4の実施形態に係る光学式センサチップ1を示している。この実施形態の光学式センサチップ1は、上記第1〜第3の実施例に係る光学式センサチップ1が上下二段の光路を形成していたのに対して、一段の光路を形成するように構成したものである。
【0071】
即ち、この実施形態の光学式センサチップ1では、上記ベース材10の上記第1基台部11の左右両端寄り位置にそれぞれ照射孔15と受光孔16を設け、この照射孔15に照射用フェルール6Aを介して照射用光ファイバー4を、上記受光孔16に受光用フェルール6Bを介して受光用光ファイバー5を取り付けている。
【0072】
また、上記照射孔15と受光孔16の中間位置に、上記第1基台部11の上面11aから下方に向けて二等辺三角形状に切れ込む第2プリズム取付部52を形成し、該第2プリズム取付部52には第2プリズム48を、該第2プリズム48の一対の背面48a、48bの裏面側に空間部を形成した状態で固定している。
【0073】
一方、上記ベース材10の上記第2基台部12側には、該第2基台部12の上面12aから下方に向けて二等辺三角形状に切れ込む第1プリズム取付部51と第3プリズム取付部53を横方向に並設状態で形成し、該第1プリズム取付部51には第1プリズム47を、その一対の背面47a、47bの裏面側に空間部を形成した状態で固定し、また上記第3プリズム取付部53には第3プリズム49を、その一対の背面49a、49bの裏面側に空間部を形成した状態で固定している。
【0074】
そして、これら三個のプリズム47〜49によって、
図11に矢流線で示すように、上記照射用光ファイバー4から照射後、上記第1プリズム47で折り返して上記第2プリズム48に入射し、さらに該第2プリズム48で折り返されて上記第3プリズム49に入射するとともに、該第3プリズム49で折り返されて上記受光用光ファイバー5に入射する光路が形成される。
なお、本実施形態においては、照射孔15と受光孔16の配置を置き替えても差し支えなく、同じ光路長が確保される。
【0075】
このように一の平面上において折り返される光路を形成することで、例えば、照射用光ファイバー4と受光用光ファイバー5を同軸上で離間対向させてこれら両光ファイバー4,5の間に直線的な光路を形成する場合に比して、光路長を延長でき(この実施形態の場合には、4倍の光路長が得られる)、その結果、ガス濃度の測定精度の向上を図るとか、上記光学式センサチップ1のコンパクト化を図ることができる。
【0076】
なお、この実施形態の光学式センサチップ1では、上記各プリズム47〜49を石英または透明セラミックスで、上記ベース材10をセラミックスで、それぞれ構成した点、及び係る構成に基づく効果、さらに、上記ベース材10に上記各光ファイバー4,5を接続するためのフェルール6A,6Bをセラミックスで構成した点、及び係る構成に基づく効果は、上記第1の実施形態の場合と同様であるため、第1の実施形態における該当説明を援用し、ここでの説明を省略する。
【0077】
また、この実施形態では三個のプリズムで光路を形成しているが、この実施形態に係る技術思想は横置き配置されるプリズムを奇数個備えることで成立し得るものであり、係る条件の下でプリズムの配置個数を増減設定することは可能である。