(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263425
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】車両における樹脂製部品の取付け構造
(51)【国際特許分類】
B60R 19/04 20060101AFI20180104BHJP
B60R 19/50 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
B60R19/04 F
B60R19/50 B
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-74622(P2014-74622)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-196433(P2015-196433A)
(43)【公開日】2015年11月9日
【審査請求日】2017年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 学
【審査官】
梶本 直樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−201180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/04
B60R 19/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外装部材に設けられた開口部に嵌入して装着される樹脂製部品を備えており、
この樹脂製部品は、前面部が車両外方を向くように設定される本体部と、この本体部の背面側に設けられたボックス形状部と、を備えており、
このボックス形状部は、前記樹脂製部品を前記外装部材に取り付けるための取付け用突起が背後に向けて突設された背面壁部と、前記本体部から背後に向けて起立して前記背面壁部を支持する複数の起立壁部とを有し、かつ前記ボックス形状部の内部は、前記本体部の側縁部の背後において外方を向いて開口する側面開口部を有する凹状空間とされている、車両における樹脂製部品の取付け構造であって、
前記ボックス形状部の背面壁部のうち、前記取付け用突起を挟んで前記側面開口部とは反対側の位置、または前記複数の起立壁部のうち、前記側面開口部に対面する位置には、前記側面開口部から前記ボックス形状部内に流入した空気を前記樹脂製部品の背後に流出可能とする孔部が設けられていることを特徴とする、車両における樹脂製部品の取付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば自動車のフロントバンパにベゼルを取り付けるといった場合に適用される車両における樹脂製部品の取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両における樹脂製部品の取付け構造の具体例として、
図5に示すような構造がある。同図は、後述する本発明の実施形態を示す
図1のIb−Ib断面に対応する箇所の従来構造図である。
図5に示す構造においては、自動車のフロントバンパ1に設けられた開口部10に、ベゼル2が嵌入して装着されている。ベゼル2をフロントバンパ1に固定させるための手段として、ベゼル2の本体部20の背面側に、ボックス形状部Bを形成し、このボックス形状部Bの背面壁部22に、フロントバンパ1への取り付けを図るための取付け用突起21を突設する手段が採用されている。
このような構成によれば、たとえば取付け用突起21をベゼル2の本体部20の背面部に直接突設する場合とは異なり、本体部20の表面に、取付け用突起21の形成に起因するヒケを生じないようにすることが可能である。また、取付け用突起21の形成箇所近傍の機械的強度を高めることもできる。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、改善すべき余地がある。
【0004】
すなわち、ベゼル2とフロントバンパ1との間には、ある程度の幅の隙間C1を生じるが、車両走行時においては、この隙間C1に走行風が進入し、ボックス形状部Bの側面開口部24の横に空気流れが発生する。その際、ボックス形状部B内に流入していた空気が、側面開口部24の横の空気流れの作用により強制的に流出し、前記空気流れと衝突する現象を生じる。このような現象を生じたのでは、比較的大きな風切音(キャビティトーン)が発生する。車両走行時の静寂性を高める上では、このような不具合を防止することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−198466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、簡易な構成によってキャビティトーンの発生を適切に防止することが可能な車両における樹脂製部品の取付け構造を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明により提供される車両における樹脂製部品の取付け構造は、車両の外装部材に設けられた開口部に嵌入して装着される樹脂製部品を備えており、この樹脂製部品は、前面部が車両外方を向くように設定される本体部と、この本体部の背面側に設けられたボックス形状部と、を備えており、このボックス形状部は、前記樹脂製部品を前記外装部材に取り付けるための取付け用突起が背後に向けて突設された背面壁部と、前記本体部から背後に向けて起立して前記背面壁部を支持する複数の起立壁部とを有し、かつ前記ボックス形
状部の内部は、前記本体部の側縁部の背後において外方を向いて開口する側面開口部を有する凹状空間とされている、車両における樹脂製部品の取付け構造であって、前記ボックス形状部の背面壁部のうち、前記取付け用突起を挟んで前記側面開口部とは反対側の位置、または前記複数の起立壁部のうち、前記側面開口部に対面する位置には、前記側面開口部から前記ボックス形状部内に流入した空気を前記樹脂製部品の背後に流出可能とする孔部が設けられていることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、車両の走行時に、樹脂製部品に設けられているボックス形状部の側面開口部の横に空気流(走行風)が発生した場合、側面開口部からボックス形状部内に進入した空気の多くは、ボックス形状部の所定位置に設けられている孔部を通過して樹脂製部品の背後に流出することとなる。したがって、ボックス形状部内に進入した空気が側面開口部を通過してその横に再流出することは抑制され、ボックス形状部内からの流出空気流と、ボックス形状部の側面開口部の横を通過する空気流との衝突に起因するキャビティトーンの発生が適切に防止または抑制される。その結果、風切音を低減し、車両走行時の静寂性を高めることができる。
【0010】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(a)は、本発明に係る車両における樹脂製部品の取付け構造の一例を示す概略斜視図であり、(b)は、(a)のIb−Ib断面図である。
【
図2】
図1(b)に示すボックス形状部の断面斜視図である。
【
図3】
図1(b)に示すボックス形状部を成形する金型の一例を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
なお、本実施形態においては、説明の便宜上、
図5に示した従来技術と同一または類似の要素には、同一の符号を用いている。
【0013】
図1に示す車両における樹脂製部品の取付け構造Aにおいては、フロントバンパ1と、このフロントバンパ1に設けられた左右一対の開口部10に嵌入して装着される一対のベゼル2とを有している。フロントバンパ1およびベゼル2は、ともに樹脂成形品であり、ベゼル2は、たとえばフォグランプ用の孔部29を有するものである。
【0014】
ベゼル2は、前面部が車両前方を向くように設定される本体部20と、この本体部20の背面側に設けられたボックス形状部Bとを備えている。ボックス形状部Bは、取付け用突起21が一体的に突設された背面壁部22と、本体部20からその背後に向けて起立して背面壁部22を支持する3つの起立壁部23(23a〜23c)とを有している(
図2も参照)。取付け用突起21は、先端寄り部分に設けられた係止用の爪部21aと、この爪部21aを変位可能とするための切欠き溝21bとを有しており、フロントバンパ1の開口部10の奥部側壁部11に形成された孔部13に挿通して、その周縁部に抜け止め状態に係止可能なものである。
【0015】
ボックス形状部Bの内部は、本体部20の側縁部20aの背後において外方を向いて開口する側面開口部24を有する凹状空間とされている。ただし、本実施形態では、背面壁
部22の先端は、側縁部20aの先端よりも適当な寸法L1だけ本体部20の幅方向内側(起立壁部23b側)に位置するように構成されている。また、背面壁部22のうち、取付け用突起21よりも幅方向内側(取付け用突起21を挟んで側面開口部24とは反対側)には、空気通過用の孔部25が設けられている。図面では省略しているが、ベゼル2には、前記したボックス形状部B以外としても、フロントバンパ1への取り付けを図るための突起部などが適宜設けられている。
【0016】
次に、前記した樹脂製部品の取付け構造Aの作用について説明する。
【0017】
まず、ベゼル2とフロントバンパ1の開口部10の側壁部12との間には、隙間C1が形成されており、車両の走行時においては、この隙間C1内に走行風が進入する。この走行風は、ボックス形状部Bの側面開口部24の横を通過してボックス形状部Bの背後に廻り込み、フロントバンパ1の後方に抜ける。一方、側面開口部24からボックス形状部B内に流入した空気の多くは、空気通過用の孔部25からベゼル2の背後に流れていく。このため、ボックス形状部B内の空気が側面開口部24を介して隙間C1側に流出する現象は抑制されることとなり、この空気流と隙間C1を車両後方向けて進行する空気流とが激しく衝突することは回避され、キャビティトーンの発生が適切に防止または抑制される。
【0018】
孔部25は、走行風の流れ方向において、取付け用突起21よりも下流側に位置しているため、孔部25からの空気流出を円滑に行なわせることが可能である。本実施形態とは異なり、孔部25が取付け用突起21の上流側に位置している場合には、孔部25から流出した空気が取付け用突起21に衝突するが、本実施形態によれば、そのような不具合もない。さらに、ボックス形状部Bの外側を廻り込んできた空気流は、孔部25の近辺においては流速が遅くなった状態にあるために、このような領域に孔部25からの空気流を合流させても、キャビティトーンは生じ難いものとなる。
【0019】
本実施形態においては、既述したように、背面壁部22の先端が本体部20の先端よりも適当な寸法L1だけ本体部20の幅方向内側に位置しているために、隙間C1を流れる空気流に起因して、ボックス形状部B内の空気が隙間C1側に流出することがより抑制される効果が得られる。したがって、キャビティトーンをより効率良く防止することができる。このようなことから、本実施形態によれば、車両走行時の風切音の低減効果を高いものとすることができる。
もちろん、本実施形態によれば、ボックス形状部Bが設けられていることにより、取付け用突起21が設けられている箇所の機械的強度を大きくする効果や、取付け用突起21の形成箇所に大きなヒケが生じても、このヒケはベゼル2の本体部20により隠れ、外部から見えないようにすることができるといった利点も得られる。
【0020】
前記したベゼル2は、
図3に示すような成形用金型5を用いて適切に樹脂成形することが可能である。すなわち、同図において、ベゼル2に対応するキャビティ2’は、固定型50,51、およびスライド型52を用いて形成されている。スライド型52は、同図の矢印D1方向にスライド可能である。ここで、金型5の型締めを行なう場合、固定型50とスライド型52とは、孔部25が形成される箇所(同図の矢印n1で示す箇所)において、互いに当接させることが可能である。したがって、固定型50とスライド型52との相対的な位置決めを正確に行なわせ、かつ射出時の圧力に起因してスライド型52がガタツキを生じないように設定することができる。その結果、ベゼル2を品質よく成形することが可能となる。
【0021】
図4は、本発明の他の実施形態を示している。
同図においては、空気通過用の孔部25が、側面開口部24に対向する起立壁部23(23b)に設けられている。このような構成においても、ボックス形状部B内の空気をベ
ゼル2の背面側に円滑に流出させることが可能であり、前記実施形態と同様な効果を得ることが可能である。
【0022】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る車両における樹脂製部品の取付け構造の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0023】
本発明における取付け用突起は、ボックス形状部の背面壁部に一体成形されたものに限らず、たとえばボックス形状部の背面壁部に、ベゼルとは別体で形成されたクリップピンを取り付けることにより構成されたものも含む概念である。
本発明でいう樹脂製部品は、フォグランプ用のベゼルに限らず、それ以外のベゼル、あるいはベゼル以外の部品とすることもできる。また、樹脂製部品の取付け対象は、フロントバンパに限らず、他の外装部材とすることもできる。本発明でいう外装部材は、車両外板も含む概念である。
【符号の説明】
【0024】
A 車両における樹脂製部品の取付け構造
B ボックス形状部
1 フロントバンパ(車両の外装部材)
10 開口部(フロントバンパの)
2 ベゼル(樹脂製部品)
20 本体部
21 取付け用突起
22 背面壁部
23(23a〜23c) 起立壁部
24 側面開口部
25 孔部