(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御電流の最大値は、前記発電機の発電容量および前記蓄電ユニットのインバータ容量のうちいずれか小さい方であることを特徴とする請求項1に記載の電力供給システム。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
図1は、受電電力一定制御が可能な発電ユニット10を説明するための説明図である。
図1に示すように、発電ユニット10は、発電機12と、発電機用変流器14と、発電機制御部16とを含んで構成される。発電機12は、電力事業者からの電力供給路20と構内に配された負荷設備22とに接続され、他のエネルギーを電気エネルギーに変換して電力を生成し、生成した電力を負荷設備22に供給する。かかる発電機としては、電動機や燃料電池等、他の様々な装置を適用できる。発電機用変流器14は、受電点において一次巻線を配した貫通体(鉄心、コア)に電力供給路20が挿通(クランプ)され、電力供給路20の電流値を計測値に変成して発電機制御部16に送信する。発電機制御部16は、CPUやDSPで構成され、発電機用変流器14で変成した計測値が所定値(例えば0)となるように(受電点が平準化されるように)発電機12の出力電力をフィードバック制御する。
【0017】
このように、発電ユニット10において、発電機制御部16は、発電機用変流器14で変成した計測値、すなわち、受電点を流れる電流値が、所定値(ここでは仮に0とする)となるように発電機12の出力電力を制御するので、
図1の(a)に示す電力推移のように、負荷設備22において負荷変動が生じた場合、
図1の(b)に示す電力推移のように、その変動分に相当する電力を発電機12に出力させることができる。こうして、受電点の電力変動は、
図1の(c)に示す電力推移のように、理論上0が維持される。ただし、本実施形態においては、説明の便宜上、受電点の電力(電流)を0として説明するが、負荷変動による逆潮流防止等、系統保護の観点から、実際は電力供給路20から電力供給を受ける(買電)ように、所定値として有意な値が設定される。また、所定値は、発電機12の発電容量等に基づいて決定される。
【0018】
本実施形態では、上記のような受電電力一定制御が可能な発電ユニット10に備わる発電機用変流器14や発電機制御部16といった既存の資源を無駄にする(改造する)ことなく、そのまま有効利用し、負荷設備22に適切に電力を供給する技術を前提としている。以下では、このような本実施形態の前提となる電力供給システム100を説明する。
【0019】
(前提となる技術:電力供給システム100)
図2は、前提となる電力供給システム100の概略的な構成を示した説明図である。
図2に示すように、電力供給システム100は、発電ユニット10(発電機12、発電機用変流器14、発電機制御部16)と、追加制御部110とを含んで構成される。発電ユニット10は、
図1を用いて説明したものをそのまま用いる。追加制御部110は、CPUやDSPで構成され、電力供給路20と共に、発電機用変流器14の貫通体に挿通された追加制御路112に制御電流を流し、発電機制御部16を通じて発電機12の出力電力を間接的に制御する。
【0020】
図3および
図4は、追加制御部110による発電機12の出力電力の制御を説明するための説明図である。ここで、
図3および
図4に示す(a)、(b)、(c)の電力推移は、
図2の(a)、(b)、(c)の方向の電力推移であり、
図3および
図4に示す(d)の電流推移は、
図2の(d)の方向の電流推移である。
【0021】
追加制御部110が、
図2(d)の方向に
図3(d)に示すような正の電流を追加制御路112に流すと、発電機用変流器14中に追加された分の電流が流れ、発電機制御部16は、その電流の流れを受電点の電力変動によるものと認識することとなる。そうすると、発電機制御部16は、発電機用変流器14で変成した計測値が所定値となるように発電機12の出力電力を制御するので、発電機12の電力出力を高める。したがって、追加制御部110が電流を流している間、
図3(b)に示すように、発電機12の電力出力が上昇し、上昇した分(ΔP)と等しい電力が、例えば、
図3(c)に示すように、受電点を通って電力供給路20側に出力される。
【0022】
また、追加制御部110が、
図2(d)の方向に
図4(d)に示すような負の電流を追加制御路112に流すと、発電機用変流器14中に追加された分の電流が流れ、発電機制御部16は、
図3同様、その電流の流れを受電点の電力変動によるものと認識することとなる。そうすると、発電機制御部16は、発電機用変流器14で変成した計測値が所定値となるように発電機12の出力電力を制御するので、発電機12の電力出力を低減する。したがって、追加制御部110が電流を流している間、
図4(b)に示すように、発電機12の電力出力が下降し、下降した分(ΔP)と等しい電力が、例えば、
図4(c)に示すように、受電点を通って電力供給路20から補充される。
【0023】
このように、既存の発電ユニット10を、発電機用変流器14および発電機制御部16を外すことなくそのまま有効利用しつつ、追加制御部110が、発電機用変流器14の貫通体に挿通された追加制御路112に電流を流すことで、発電機制御部16に、電力供給路20の電流が変化したかのように認識させ、発電機12の出力電力を個別に制御することが可能となる。
【0024】
上述したような追加制御部110を用いた発電ユニット10の出力電力制御は、様々な用途に適用できる。以下、追加制御部110を用いた発電ユニット10の一例として蓄電ユニットを用いる例を挙げて説明する。
【0025】
図5は、蓄電ユニット40を用いた電力供給システムを説明するための説明図である。かかる実施例では、
図1と比較して、構内に蓄電ユニット40が設けられている点が異なる。蓄電ユニット40は、例えば、蓄電池等で構成され、連系運転時には、電力供給路20において剰余した電力を充電し、また、自立運転時には、発電機12で生成された電力を充電する。また、蓄電ユニット40は、充電した電力を必要時に出力することができる。
【0026】
このように、蓄電可能な蓄電ユニット40を発電ユニット10に適用した場合、
図5に示すように、電力供給路20、発電機12、蓄電ユニット40、および、負荷設備22を結線し、発電機用変流器14の貫通体には、それらの接続点より電力事業者側の電力供給路20を挿通することが考えられる。かかる
図5の構成では、連系運転が実行されている間は問題が生じないが、スイッチ42により連系を切り、運転状態が自立運転に切りかわると、問題が生じうる。例えば、
図5のような構成では、自立運転において受電電力が所定値となるように発電機12を制御すると、その所定値の正負により、すなわち、受電電力一定制御が買電方向に設定しているか売電方向に設定しているかで、発電機12の発電状態が決まり、買電方向では常に発電機12の発電が停止し、売電方向では常に発電機12が定格で発電することとなる。これに伴い、蓄電ユニット40は、買電方向では電力供給システム100内の負荷設備22への電力を賄うべく常に放電し、売電方向では発電機12の余剰電力を常に充電することとなる。ただし、売電方向でも負荷設備22の容量が発電機の定格を超えると、蓄電ユニット40も放電することとなる。このように、自立運転では、電力の移動方向が決まり、発電機12や蓄電ユニット40の有効活用ができなくなる。
【0027】
(電力供給システム200)
本実施形態では、このような状況下においても、負荷設備22、蓄電ユニット40、発電機12を1の系統として総合的にみた場合の他の系統に対する電力変動を平準化しつつ、蓄電ユニット40の充放電を適切に実現することを目的とする。
【0028】
図6は、電力供給システム200の概略的な構成を示した説明図である。
図6に示すように、電力供給システム200は、発電ユニット10(発電機12、発電機用変流器14、発電機制御部16)と、蓄電ユニット40と、追加制御部110とを含んで構成される。
【0029】
発電ユニット10は、
図1を用いて説明したものをそのまま用いる。蓄電ユニット40は、電力供給路20における、発電機用変流器14より電力事業者側に接続される。また、発電機用変流器14には、前提となる技術同様、電力供給路20と共に追加制御路112も発電機用変流器14の貫通体に挿通される。
図6の構成では、
図5と異なり、蓄電ユニット40と発電機12との間の電力供給路20を、発電機用変流器14の貫通体に挿通させているのが理解できる。
【0030】
ところで、発電ユニット10では、発電機12の立ち上げ時に、発電機用変流器14の正常動作を確認している。具体的に、立ち上げ時において、発電機12自体で電力を消費し、発電機制御部16は、この電力の消費を、発電機用変流器14を通じて検出することで、発電機用変流器14に異常(例えば断線)がないことを把握し、発電機12を正規に起動している。ここでは、発電機用変流器14の貫通体に電力供給路20が挿通される構成によって、電力事業者から電力が供給されない自立運転時においても、発電機12の立ち上げ時に、電力供給路20を通じて蓄電ユニット40から発電機12に電力が供給され、その電力を、発電機用変流器14を通じて検出可能なので、発電機用変流器14のフェイルによって発電機12を立ち上げることができないといった事態を回避することが可能となる。
【0031】
そして、追加制御部110は、前提となる技術同様、追加制御路112に制御電流を流して発電機12の出力電力を制御する。ただし、本実施形態では、追加制御部110は、蓄電ユニット40の充電状態に応じ、蓄電ユニット40が充電および放電を繰り返せるように(充放電可能に)制御電流を流す。
【0032】
図7は、追加制御部110の処理の流れを説明するためのフローチャートである。かかるフローチャートは、所定時間間隔の割込処理として実行される。まず、追加制御部110は、蓄電ユニット40の充電状態を導出する(S350)。充電状態は、充電容量を満充電に対する比(%)で示し、出力電圧、出力電流および蓄電池の温度から導出する方法や蓄電ユニットの放電電力と充電電力の履歴から導出する方法がある。かかる導出方法は既存の技術なので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0033】
次に、追加制御部110は、導出した充電状態が第1閾値(例えば30%)未満であるか否か判定する(S352)。そして、充電状態が第1閾値未満であれば(S352におけるYES)、蓄電ユニット40が充電できるように、追加制御路112に正(
図6の矢印の方向)の制御電流を流す(S354)。また、充電状態が第1閾値未満でなければ(S352におけるNO)、追加制御部110は、導出した充電状態が第2閾値(例えば95%)以上であるか否か判定する(S356)。そして、充電状態が第2閾値以上であれば(S356におけるYES)、蓄電ユニット40が放電できるように、追加制御路112に負(
図6の矢印の逆方向)の制御電流を流す(S358)。また、充電状態が第2閾値以上でなければ(S356におけるNO)、前回までの制御電流の方向を維持する。
【0034】
続いて、追加制御部110は、制御電流の電流値を決定する。具体的に、追加制御部110は、充電モードが速度優先モードであるか否か判定し(S360)、速度優先モードであれば(S360におけるYES)、制御電流として最大値を設定する(S362)。また、速度優先モードでなければ、すなわち、効率優先モードであれば(S360におけるNO)、制御電流として調整値を設定する(S364)。
【0035】
ここで、充電モードは、効率優先モードと速度優先モードとがあり、前者は、十分に充電時間に余裕がある連系運転時および自立運転時、後者は、停電時や緊急処理時等、迅速な充電が必要な自立運転時に用いられる。また、制御電流の最大値は、正の制御電流が流れている(充電状態の)場合、発電機12の発電容量および蓄電ユニット40のインバータ容量のうちいずれか小さい方であり、負の制御電流が流れている(放電状態の)場合、蓄電ユニット40のインバータ容量である。また、制御電流の調整値は、上記最大値以下の値であり、蓄電ユニット40の充電効率および発電機12の発電効率のうちいずれか一方または双方が高くなる値である。
【0036】
ただし、後述するように、発電機用変流器14における電流値のスケールを合わせるため、追加制御路112を発電機用変流器14の貫通体自体に複数回(例えば5回)巻回している場合、制御電流の最大値は、巻回後に貫通体を流れる値に相当するので、追加制御部110が制御する制御電流の値は、実際、制御電流の最大値/巻回数となる。
【0037】
こうして、充電状態に応じて、制御電流の方向を切り換えることで、自立運転となった場合であっても、負荷設備22、蓄電ユニット40、発電機12間で電力融通を実質的に完結させて、負荷設備22、蓄電ユニット40、発電機12を1の系統として総合的にみた場合の他の系統に対する電力変動を平準化しつつ、蓄電ユニット40の充放電を適切に実現することが可能となる。
【0038】
(追加制御路112)
ただし、本実施形態では、発電機用変流器14の貫通体に電力供給路20と追加制御路112とがいずれも挿通されているので、発電機12を追加制御部110による制御電流で制御する場合、その制御電流によって発電機用変流器14が受信する電流の変化幅と、電力供給路20によって発電機用変流器14が受信する電流の変化幅を同等としなければならない。このような発電機用変流器14が受信する電流の変化幅を大きくするためには、以下のような手段が考えられる。
(1)追加制御路112に印加する電圧値Vを高める。
(2)追加制御路112の抵抗値Rを小さくする。
(3)追加制御路112を発電機用変流器14の貫通体自体に複数回巻回する。
【0039】
ただし、(1)や(2)のいずれの手段も、追加制御路112においてジュール熱(V
2/R)によるエネルギーの消費を伴うため、実用的ではない。また、(1)や(2)の手段では、追加制御部110自体が、そもそも、電力供給路20から供給される電流と同等の電流を生成する能力を有さなければならない。
【0040】
そこで、ここでは、(3)の追加制御路112を発電機用変流器14の貫通体自体に複数回巻回する手段について検討する。このように、追加制御路112を発電機用変流器14の貫通体自体に複数回巻回することで、ジュール熱によるエネルギーの消費を抑えつつ、制御電流によって発電機用変流器14が受信する電流の変化幅と、電力供給路20によって発電機用変流器14が受信する電流の変化幅のスケールを合わせることができる。
【0041】
図8は、追加制御路112を説明するための説明図である。追加制御路112は、発電機用変流器14の貫通体14aの貫通孔14bに挿通されるように、例えば、5回巻回されている。こうして、電力供給路20の電流に対し、本来必要な制御電流をIとし、巻回数をNとすると、追加制御部110は、I/Nの電流を制御できれば足りる。
【0042】
かかる追加制御路112の巻回数は、説明の便宜上、5回としたが、3〜30回、より望ましくは5〜10回とするとよい。ここで、巻回数を3回以上としているのは、巻回数が1回や2回だと、結局、追加制御路112に流れる電流自体が大きくなって、ジュール熱の消費を抑えられないからである。また、巻回数を30回以下としているのは、30回を超えると、外部からのノイズが巻回数分増幅してから制御電流に乗るため、制御電流がノイズの影響を受けやすくなるからである。
【0043】
参考として、ノイズの原因としては、例えば、以下の3つが考えられる。
(a)電磁誘導による起電力の影響:巻回数をN、電力供給路20に流れる電流をI
0、貫通体14aの半径をrとすると、追加制御路112には、起電力ΔV=N/2πr×dI
0/dtが誘起される。
(b)サージ雑音の電磁接合による影響:電力供給路20の配線と追加制御路112の配線が近接している場合、電力供給路20に流れるサージ雑音が電磁接道により追加制御路112に伝わる。
(c)放射電磁界イミュニティの影響:アマチュア無線機や携帯電話からの電波が、追加制御路112に乗る。
【0044】
ところで、追加制御部110は、制御電流を制御する機能を有するが、以下の理由により、制御電流による制御精度が劣る場合がある。
(i)追加制御路112に印加する電圧源として定電圧源、例えば商用の100Vしか利用できない。
(ii)追加制御部110の制御電流の可変幅がそもそも小さい。
(iii)制御電流の分解能がそもそも低い。
【0045】
そこで、本実施形態では、追加制御路112の巻回数もしくは抵抗値を可変とすることで、定電圧源であるか否かに拘わらず、制御電流の可変幅を変更したり、分解能を変更する。
【0046】
図9は、追加制御路112を説明するための他の説明図である。
図9(a)において、追加制御路112は、発電機用変流器14の貫通体14aの貫通孔14bに挿通されるように、貫通体14aに追加制御路112を5回巻回している。そして、追加制御路112の可変部位112aでは、巻回の1ターン毎に接点を設け、その接点の接続態様によって、巻回数を可変する。また、
図9(b)のように、追加制御路112に抵抗値が可変な可変抵抗112bを設けることによって、追加制御路112の抵抗値Rを変更し、制御電流(V/R)を可変させることもできる。かかる可変部位112aや可変抵抗112bの変更は、追加制御部110から自動的に行うとしてもよいし、電力の利用態様に応じて手動で行うとしてもよい。
【0047】
こうして、追加制御部110の制御電流の可変能力とは独立して、制御電流を可変することで、制御電流の可変幅を、追加制御部110の制御電流の可変能力と、上記可変部位112a等の可変能力とを乗じた範囲に広げることができる。また、可変部位112a等によって、追加制御部110の制御電流の分解能を可変できるので、分解能の必要な制御にも対応可能となる。
【0048】
以上、説明したように、電力供給システム100、200によって、発電ユニット10に元々備わる発電機用変流器14や発電機制御部16といった資源を無駄にすることなく、受電電力一定制御が可能な発電ユニット10から負荷設備22に適切に電力を供給することが可能となる。
【0049】
また、電力供給システム200によって、自立運転時においても、発電機12を正常に立ち上げることができ、さらに、蓄電ユニット40の充放電を適切に実現することが可能となる。
【0050】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0051】
なお、本明細書の追加制御部110の処理として説明した各工程は、必ずしもフローチャートして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んだり、速度優先モードの判定S360以降の処理を行わないとしてもよい。