(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記黒基準補正値算出部で算出された黒基準補正値を更新するか否かを判定する更新判定部をさらに有し、この更新判定部の判定結果に基づいて、前記更新部は黒基準補正値を更新する請求項1または2記載の通帳プリンタ。
【背景技術】
【0002】
従来、通帳プリンタに搭載されるイメージセンサの基準補正は、工場出荷時、シェーディング補正を行う際に、補正用媒体を使用して黒基準補正および白基準補正が行われる。しかし、工場出荷後の運用中においては、装置故障や保守サービス時にでなければ、イメージセンサの基準補正は行われないのが普通である。
【0003】
特に、通帳プリンタが搭載されるATM(Automated Teller Machine)のように、防犯上高いセキュリティが要求される装置においては、誰もが簡単に内部を開けてイメージセンサの基準補正を行うことは困難である。また、道路に面した室外に設置する場合や、
ビル内部の屋内に設置する場合など設置環境に大きな差がある。設置環境が異なるとイメージセンサが外光の影響を受ける可能性があるため、工場出荷時に行われる基準補正が最適値でなくなる可能性が生じる。さらに、イメージセンサの劣化などにより暗電流が増加した場合にも、基準値の補正が必要になる。
【0004】
通帳プリンタの場合は、通帳にドットプリンタで印刷された黒文字を読み取り、指定のページ行にページ送りする必要があるため、特に黒基準補正が重要である。上述したように、設置場所の外光の影響、イメージセンサの劣化などが原因の場合には、黒基準が変化してしまうため、黒基準補正が簡単に行えることが必要である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について
図1から
図9を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態における通帳プリンタの要部構成図である。同図には通帳搬送方向と直交する方向から見た通帳プリンタ1の側方断面が示されている。通帳プリンタ1は、通帳を挿入し排出するための通帳挿入・排出口11(以下通帳挿入口と称する)と、通帳挿入を感知する挿入センサ12、通帳を搬送する搬送路13(点線で示す)と、搬送路13に設けられた複数の搬送ローラ対14と、通帳情報の読取り及び読取りした画像による文字認識を行う光学スキャナ・OCR装置(光学スキャナ及びOCR装置)15とを備える。この光学スキャナ・OCR装置15には、通帳に印字された文字を撮像するためのイメージセンサ15aが搭載される。イメージセンサ15aとしては、CCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor Image Sensor)、CIS(Contact Image Sensor)などがある。
【0012】
更に通帳プリンタ1は、搬送ローラ対14によって搬送される通帳の搬送方向下流側に設けられたドットインパクト方式の印字ヘッド16を有するキャリア17と、この印字ヘッド16と搬送路13を挟んで対向配置されたプラテン18と、通帳の位置を検出する位置センサ19、通帳の磁気ストライプから磁気データの読取り及び磁気ストライプへの磁気データの書込みを行う磁気センサを有する磁気処理部20と、冊子状の通帳のページめくりを行うページめくり機構21と、ホストコンピュータなどの上位装置22との間で通信を行う通信部23と、本発明の基準補正プログラムを含む制御ファームウエアを保持するROM24と、これらの各部を制御する制御部25とを備える。また、制御部25により各種操作をGUI(Graphical User Interface)にて行うモニタ26を有する。なお、カード挿入・排出口、取引明細を印刷し出力する機構などは図示していない。
【0013】
通帳挿入口11に通帳が挿入されると、挿入センサ12がこの通帳を感知する。通帳は、搬送路13上を搬送され、所定の位置で磁気データの読み取り処理、通帳のページ送り処理、印字処理が行なわれる。印字が終了すれば、通帳挿入口11から通帳が排出される。
【0014】
図2は、通帳の見開き状態の上面図である。本実施形態では、通帳は一般的なものを用いる。見開きの各ページ(上ページ/下ページ)が搬送方向に並ぶ。見開き状態の通帳が通帳挿入口11から挿入されると、通帳プリンタ1は、綴じ目を通帳搬送方向とほぼ直交させたまま通帳を筐体内部へ引込む。
【0015】
図3は通帳プリンタの制御系のブロック構成図である。制御部25は、通帳プリンタ1の各部を集中的に制御するCPU(Central Processing Unit)31と、CPU31に接続されたバスライン32と、通帳プリンタを統合的に動作させるための制御ファームウエアが格納されるROM(Read Only Memory)33と、主にCPU31の作業エリアとして使われるRAM(Random Access Memory)34と、上位装置22などからコマンド及び印字データを受信し、通帳プリンタ1との仲介を行うインターフェース回路35を有している。
【0016】
さらに制御部25は、各種センサを制御するためのセンサ制御回路36、機構を制御する機構制御回路37と、印字ヘッド16を制御する印字ヘッド制御回路38、および、モニタ26の表示を制御する表示部39とが接続されている。
【0017】
センサ制御回路36は、挿入センサ12、イメージセンサ15a、位置センサ19、磁気センサを有する磁気処理部20などを制御する。また各センサを照明する光源を有する場合は、光源および照明回路も制御する。
【0018】
機構制御回路37は、主として搬送ローラ14を動かす搬送モータ(図示せず)を制御し、通帳挿入口11のシャッター開閉動作、搬送動作の順送り・逆送り、所定位置への位置決め、ページめくり動作を行う。
【0019】
印字ヘッド制御回路38は、印字ヘッド16を通帳搬送方向と直交する方向に往復動させ通帳の所定の行、欄に印字を行う。
【0020】
図4は、ROM33内に実装されるファームウエアの機能ブロック構成図である。ROM33には、通帳プリンタを統合的に制御するファームウエアが格納されているが、
図4では、本実施形態に必要な機能ブロックのみを記載している。
【0021】
本実施形態のファームウエアの機能ブロックは、イメージセンサ15aの基準補正を行う動作イベントを検出するイベント検出部41、イベントが生じた時に基準補正を行うタイミングを定義した動作モードを選択するタイミング設定部42、黒基準補正値を算出する黒基準補正値算出部43、算出した黒基準補正値を更新するか否かを判定する更新判定部44、更新判定部の判定結果に基づき基準補正値を更新する更新部45、および黒基準補正値算出時に機構を制御する機構制御部46を有している。機構制御部46は、さらに通帳挿入口11のシャッターを制御するシャッター制御部461、通帳プリンタ1内を照明するすべての光源を強制消灯する照明制御部462、および通帳の指定のページまでページをめくる制御を行うページめくり制御部463を有する。なお、ページめくり制御部463の動作は第2の実施形態で詳しく説明する。
【0022】
図5は、イベント検出部41で検出されるイベントについての状態遷移図である。イベント検出部41では、電源が投入されたことを検出した状態(電源投入時S51)、通帳プリンタ1がアイドルである状態(アイドル時S52)、ユーザにより通帳が挿入された状態(通帳挿入時S53)、通帳プリンタ1に搭載されている各種センサ類が自動調整される時の状態(センサアジャスト時S54)、および工場出荷時あるいはメインテナンス時に行われるシェーディング補正時の状態(シェーディング補正時S55)を有している。矢印は各状態間の状態遷移を表している。本実施形態で例示した状態に限られることはなく、更に基準補正を行う状態を追加、削除しても構わない。
【0023】
シェーディング補正時S55においては、補正媒体を使用して黒基準補正と白基準補正の両方が行われる。本実施形態では、その他の状態S51〜S54においては、黒基準補正のみの補正を行うことを特徴とする。なお、通帳挿入時S53において、白基準補正が点線で示されているが、これは第2の実施形態で説明する。
【0024】
以上のようにして構成された通帳プリンタ1の黒基準補正について
図6の基準補正のフローチャート図を用いて説明する。説明にあたり
図3、
図4などを参照する。
【0025】
まずステップST601では、イベント検出部41がイベントを検出する。そしてステップST602では、イベント検出された各状態におけるタイミング設定を読み込み、次のステップに進むかどうか判定する。
【0026】
図7は、各状態のタイミング設定画面である。この設定画面はユーザのGUI操作によりモニタ26に表示される。あるいはインターフェース回路35に接続された保守用端末および上位装置から同様のタイミング設定が行える。
【0027】
図7に示すように、イベントが検出される状態は、
図5の状態遷移図で示した状態のうち、工場出荷時や保守時に行なわれる「シェーディング補正時」を除いた「センサアジャスト時」、「電源投入時」、「通帳挿入時」、「アイドル時」である。
【0028】
また基準補正を行うタイミングを動作モードで分類する。動作モードは、「リアルタイムモード」、「タイマーモード」、「カウントモード」の他、動作モードを設定しないこともできる。
【0029】
「リアルタイムモード」は、イベントを検出した時に必ず行う動作モードである。「タイマーモード」は、状態が遷移せず確定している状態において、決められた所定の時間に行う動作モードである。また、「カウントモード」は、各状態のイベントの検出回数を記憶しておき、所定のイベント検出回数に対して1回の基準補正行う動作モードである。
【0030】
図7に示す実施形態では、「センサアジャスト時」状態S54では、「カウントモード」が選択され、10回のイベント検出に対して1回、イメージセンサ15aの基準補正が行われる。ここでは詳細に図示していないが、センサの種別や検出するカウント値についても適宜任意の値に選択変更が可能である。
【0031】
「電源投入時」状態S51には、「設定しない」が選択されているため、イベントを検出してもイメージセンサ15aの基準補正は行われない。
【0032】
「通帳挿入時」状態S53には、「リアルタイムモード」が選択されている。したかって通帳が挿入された時には必ずイメージセンサ15aの基準補正が行われる。さらに、取得した基準値が異常値であった時に、複数回の基準値を取得するリトライ動作を行わないことが選択されている。リトライ動作を行う場合には、回数を指定できる。
【0033】
「アイドル時」状態S52には、「タイマーモード」が選択されている。屋内に置かれた通帳プリンタは通常深夜には継続してアイドル状態になることから、深夜3時にイメージセンサ15aの基準補正が行われる。これにより、外光の影響が少ない時間帯に黒基準補正を行うことが可能となる。また、タイマー設定はイベントを検出してからの経過時間を設定することも可能である。
【0034】
基準補正を行うタイミングであると判定されれば(ステップST602:Yes)、ステップST603に進む。基準補正のタイミングでなければ(ステップST602:No)、ステップST601に戻りイベントの検出を続ける。
【0035】
ステップST603では、黒基準補正の準備のため、通帳挿入口11のシャッターを閉める。シャッターが閉まっていれば(ステップST603:Yes)、ステップST604に進む。シャッターが閉まらない場合には(ステップST603:No)、「通帳挿入口が閉まらない」旨のエラーメッセージをモニタ26に表示し終了する。
【0036】
ステップST604では、さらに黒基準補正の準備のため、各種センサなどに使用しているすべて照明を強制的に消灯する。すべての照明が消灯できたならば、ステップST604:Yes)、ステップST605に進む。すべての照明が消灯ができない場合には(ステップST604:No)、例えば「イメージセンサの照明が消灯できない」旨のエラーメッセージをモニタ26に表示し終了する。
【0037】
ステップST603、ST604が正常に行われたのなら、通帳プリンタ1内部は原理的には真暗になる。ただし通帳プリンタ1の設置場所によっては外光の影響が出る可能性がある。本実施形態は、外光の明るさを基準とする黒基準補正を行うことで、外光の影響を補正できる。さらには、イメージセンサから離れた位置にある照明あるいは動作確認用のLEDなどが消灯できない場合にも、同様に黒基準補正が可能となる。
【0038】
ステップST605では、黒基準補正を行う。黒基準補正は、照明を消灯した状態で読み取ったイメージセンサの画素値を画素単位で取得する。
【0039】
ステップST606では、黒基準補正で取得した各画素の画素値が、所定の範囲内にあるか否かを判定する。このステップは、およそ黒とは考えられない画素値が取得された場合などに対処する例外処理である。この判定基準となる所定の範囲は、実験などにより求められた最適値が設定される。各画素の画素値が、所定の範囲内にあれば(ステップST606:Yes)、次のステップST608に進む。各画素の画素値が、所定の範囲外にあれば(ステップST606:No)、ステップST607に進み、ステップST605の黒基準補正で取得した画素値は使用しない。現在まで使用してきた黒基準補正値を継続して使用する。場合によっては工場出荷時あるいは、前回の保守時に取得した黒基準補正値に戻す処理を行う。またこのステップにおける判定処理は、各画素の画素値の平均値が所定の範囲にあるか否かによって判定してもよい。
【0040】
ステップST608では、ステップST605の黒基準補正で取得した画素値をメモリに格納する。そしてこれ以降の黒基準補正値に反映する。黒基準補正値は、取得した各画素の画素値を例えば変換テーブルなどを用いて下限基準画素値(例えば0)に変換する。
【0041】
ステップST609では、各種センサなどに使用している照明について、ステップST604で行った強制消灯を解除し、照明を点灯可能状態に復帰させる。
【0042】
なお、
図6の点線矢印で示すように、イベント検出時に必ず黒基準補正を行うのであれば、タイミング判定処理(ステップST602)を行わなくてもよい。また、黒基準補正で取得した黒基準補正値を必ず更新するのであれば、更新判定処理(ステップST606)を行わなくてもよい。
【0043】
以上述べたように、通帳プリンタにおいては通帳にドットプリンタで印刷された黒文字を読み取り、指定のページ行にページ送りする必要がある。したがって特に黒基準補正が重要である。したがって第1の実施形態によれば、設置場所の外光の影響、イメージセンサの劣化などにより黒基準が変化しても黒基準補正が自動的に簡単に行えるという効果を奏する。
【0044】
さらに、黒基準補正を行うタイミングを、通帳プリンタの各動作状態について詳細に設定できるため、いつでも良好な黒文字の判定が行える。「リアルタイムモード」では、例えば通帳挿入ごとに基準補正が行えるため、通帳の印字濃淡に関わらず、印字の読み取りが正確になる。
【0045】
「タイマーモード」では、外光の影響が少ない時間に基準補正が行われるため、ダイナミックレンジの広い基準補正が可能となる。
【0046】
また「カウントモード」では、イベント検出のカウント数に応じて基準補正を行うことができるため、不必要な補正を防止できる。また、これらの動作モードを組み合わせて所望のタイミングで黒基準補正を行うことも可能である。
【0047】
(第2の実施形態)
本実施形態では、黒基準補正に加え、白基準補正についても考察する。特に通帳挿入時に白基準補正が行える実施形態について説明する。
【0048】
図8は、補正用通帳の見開き状態の上面図である。白基準補正は工場出荷時もしくは保守サービス時に行われる。しかし、イメージセンサの劣化や白基準データの消失などによって、正しく基準補正ができなくなる可能性がある。
図8に示す補正用通帳は、所定のページに白基準補正用パターン71、および黒基準補正用パターン72が印刷されている。また、補正用の文字列73が好ましくは濃度を変えて印刷されているものとする。符号74は、基準補正が正常に行われたかどうかのメッセージを示している。
【0049】
図9に示す通帳挿入時のフローチャート図を用いて詳細に説明する。大まかなフローは、
図6と同様である。
【0050】
まずステップST901では、通帳挿入を検出する。通帳が挿入されるとイベント検出がなされる(ステップST902)。
【0051】
ステップST903では、挿入された通帳が補正用通帳であるか否かを判定する。挿入された通帳が補正用通帳である場合には(ステップST903:Yes)、白基準補正用パターン71が印刷された所定のページまでページ送りを行い(ステップST904)、白基準補正を行う(ステップST905)。補正用通帳かどうかを判定するには、通帳の磁気ストライプ領域に識別可能なデータを記録しておく方法などが考えられる。補正用通帳でない場合には(ステップST903:No)、ステップST906に進む。
【0052】
ステップST906では、通帳挿入口11のシャッターを閉じ、さらに照明を消灯し(ステップST907)、黒基準補正を行う(ステップST908)。なお、この時、補正用通帳70に黒基準補正用パターン72が形成されている場合には、通帳を搬送方向に移動させ、通帳に印刷された黒基準補正用パターン72がイメージセンサ15aの読取位置に来るようにする。
【0053】
ステップST909では、白基準補正ステップと黒基準補正ステップで取得した各画素の画素値がそれぞれが所定の範囲内にあるか否かを判定する。各画素の画素値が黒白それぞれ、どちらも所定の範囲内にあれば(ステップST909:Yes)、それぞれの補正値をメモリに格納する(ステップST911)。各画素の画素値が黒白どちらかが所定の範囲外にあれば(ステップST909:No)、補正値を更新しない(ステップST910)。
【0054】
ステップST912では、強制消灯していた照明を解除する。そしてステップST913では、ステップST911で更新された基準補正値、もしくは以前の基準補正値に基づいて記帳動作を行う。記帳動作においては、文字列73を読み取り、次の行に補正を行った日時と基準補正が正常に終了したかどうかのメッセージ74を印刷する。そして通帳を排出する(ステップST914)。
【0055】
以上述べたように第2の実施形態によれば、第1の実施形態の効果に加え、補正用通帳を用意することで、保守者でない一般銀行員においても簡単に基準補正を行うことが可能となる。また、本実施形態では、挿入する通帳を補正用通帳に限定しない。一般預金者の通帳においても基準補正用パターンを用意しておけば、同様の基準補正を行うことが可能である。
【0056】
また、本実施形態は、ファームウエアの改変により実現でき機構の追加は不必要であり、装置の低価格化に貢献する。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。