(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
移動体の周辺に存在する物体上の複数の点の各々の前記移動体を基準とする位置であって、かつ前記移動体に搭載された計測手段によって計測された前記位置を各時刻tについて取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された時刻tの前記点に対応する位置の各々と、過去に取得された前記点に対応する位置の各々とに基づいて、時刻tにおける前記移動体の運動量を推定する運動量推定手段と、
前記運動量推定手段によって推定された前記移動体の運動量に基づいて、前記移動体の運動量の試行量を複数生成し、生成された前記複数の試行量の各々について、前記時刻tの前記点に対応する位置の各々に対して前記試行量を用いて座標変換して得られる点の位置の各々と、前記計測手段によって過去に計測された前記点に対応する位置の各々とを比較して、前記試行量の確からしさを表すスコアを算出し、前記複数の試行量の各々について算出された前記スコアと、前記複数の試行量とに基づいて、時刻tにおける前記移動体の運動量の推定の不良地点らしさを算出する不良地点らしさ算出手段と、
を含む運動量推定装置。
移動体の周辺に存在する物体上の複数の点の各々の前記移動体を基準とする位置であって、かつ前記移動体に搭載された計測手段によって計測された前記位置と、前記移動体の運動状態をとを各時刻tについて取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された時刻tの前記点に対応する位置の各々と、過去に取得された前記点に対応する位置の各々とに基づいて、時刻tにおける前記移動体の運動量を推定する運動量推定手段と、
前記取得手段によって取得された時刻tの前記移動体の運動状態に基づいて、時刻tにおける前記移動体の運動量を算出する運動量算出手段と、
前記運動量推定手段によって推定された前記移動体の運動量に基づいて、前記移動体の運動量の試行量を複数生成し、生成された前記複数の試行量の各々について、前記時刻tの前記点に対応する位置の各々に対して前記試行量を用いて座標変換して得られる点の位置の各々と、前記計測手段によって過去に計測された前記点に対応する位置の各々とを比較して、前記試行量の確からしさを表すスコアを算出し、前記複数の試行量の各々について算出された前記スコアと、前記複数の試行量とに基づいて、前記移動体の運動量の重み付き共分散行列を算出する分散行列算出手段と、
前記分散行列算出手段によって算出された重み付き共分散行列に基づいて、カルマンフィルタで用いられる観測雑音の共分散を決定し、決定された前記観測雑音の共分散に基づいて、カルマンゲインを算出し、前記運動量推定手段によって推定された前記移動体の運動量、及び前記運動量算出手段によって算出された前記移動体の運動量を観測値として、算出された前記カルマンゲインを用いたカルマンフィルタに従って、時刻tにおける前記移動体の運動量を推定する状態推定手段と、
を含む運動量推定装置。
前記不良地点らしさ算出手段は、前記運動量推定手段によって推定された前記移動体の運動量に基づいて、前記移動体の運動量を含む所定の範囲から、サンプリングによって、前記移動体の運動量の試行量を複数生成する
請求項1又は請求項2記載の運動量推定装置。
前記取得手段によって取得された時刻tの前記点に対応する位置の各々に基づいて、移動体の周辺に存在する複数の視線誘導標の各々の前記移動体を基準とする位置を各時刻tについて取得する視線誘導標候補抽出手段を更に含み、
前記運動量推定手段は、前記視線誘導標候補抽出手段によって取得された時刻tの前記視線誘導標に対応する位置の各々と、過去に取得された、前記視線誘導標に対応する位置の各々とに基づいて、時刻tにおける前記移動体の運動量を推定する
請求項1〜請求項4の何れか1項記載の運動量推定装置。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<本発明の実施の形態の概要>
大型車(バス、トラック)の運転者の居眠りや異常による高速道路上での衝突事故や逸脱事故を低減するためには、運転者が運転不能な場合に、センサで走路端を検知して、その走路端へ車両を自動で横付けして停車する運転支援システムが有用である。
【0029】
このような運転支援システム構築のためには、センサ情報で静止物と移動物とを判別する必要があり、その前提として自車両の運動量を推定する必要がある。
【0030】
従来法としては、レーザレーダ等の測距情報の時系列照合により、自車両の運動量を算出する方法が提案されていた。
【0031】
レーザレーダの測距情報の時系列照合により自車両の運動量を算出する場合、
図1(A)に示すように、走行シーンが市街地であるときには、レーザレーダのスキャンデータの時系列照合が容易であることがわかる。
【0032】
しかし、
図1(B)に示すように、高速道路に頻出するトンネルやガードレールなどの単調な走行シーンでは、測距センサによって計測された路側物形状の変化に乏しく、レーザレーダのスキャンデータの時系列照合が困難となるため、車両の運動量の推定精度が劣化するという問題点があった。
【0033】
そこで、本発明の実施の形態では、レーザレーダ等の測距センサによる自車両の運動量推定の良好・不良状態を、推定された運動量推定値の分散から推定する。レーザレーダによる車両の運動量推定の分散(X軸方向とZ軸方向)の例を
図2に示す。なお、X軸方向は車両の横方向を表し、Z軸方向は車両進行方向を表す。
【0034】
上記
図1(A)に示すように、車両の走行シーンが市街地であるときには、レーザレーダのスキャンデータの時系列照合が容易であるため、車両の運動量推定の分散は例えば
図2(A)に示すような分布となる。一方、上記
図1(B)に示すように、高速道路に頻出するトンネルやガードレールなどの単調な走行シーンでは、車両の運動量推定の分散は例えば
図2(B)に示すような分布となる。
【0035】
そこで、本発明の実施の形態では、レーザレーダ等の測距センサによる自車両の運動量推定の良好・不良状態を自車両の運動量推定値の分散から推定し、不良時は車両CAN(Controller Area Network)情報にて代替する。
【0036】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。本発明の実施の形態では、自車両の運動量の推定の不良地点らしさを算出し、不良地点らしさに応じて自車両の運動量を推定する運動量推定装置に本発明を適用した場合を例に説明する。
【0037】
[第1の実施の形態]
<運動量推定装置のシステム構成>
図3に示すように、第1の実施の形態に係る運動量推定装置10は、自車両の速度V[m/s]を逐次検出する車速センサ12と、自車両のヨーレートω[rad/s]を逐次検出するヨーレートセンサ14と、車両周辺に存在する物体上の複数の点の各々の車両を基準とする位置を逐次計測する測距センサ16と、車両の運動量を推定するコンピュータ18と、推定された車両の運動量に基づいて、走行環境を認識する走行環境認識装置32とを備えている。測距センサ16は計測手段の一例である。
【0038】
車速センサ12は、1秒間の車輪回転数N[回/秒]を計数して、車輪回転数N[回/秒]と既知の車輪径R[m]とから、算出式V=π×N×Rに従って、車両の速度V[m/s]を検出する。
【0039】
測距センサ16は、自車両に搭載され、自車両周辺に存在する物体上の複数の点の各々の、自車両を基準とする位置を各時刻tについて計測する。本発明の実施の形態では、測距センサとして、レーザレーダを用いる場合を例に説明する。レーザレーダは車両先端部に組み込まれ、自車両の周辺の走行環境のスキャンデータを取得する。以下では、説明の都合上、レーザレーダは路面から高さh、車両の進行方向の向きで水平に設置されているものとする。
【0040】
レーザレーダは、投光部と受光部から構成されていて、投光部より発射されたレーザ光が対象物に反射されて受光部で検知するまでのTOF(Time of Flight)を計測することにより測距を行う。測距の結果、距離画像と反射輝度画像とが得られる。
図4にレーザレーダによる測距情報の一例を示す。また、
図5に、レーザレーダによる計測によって得られた距離画像と反射輝度画像との一例を示す。
【0041】
コンピュータ18は、CPUと、RAMと、後述する運動量推定処理ルーチンを実行するためのプログラムを記憶したROMとを備え、機能的には次に示すように構成されている。コンピュータ18は、車速センサ12によって検出された自車両の速度と、ヨーレートセンサ14によって検出された車両のヨーレートとを、車両情報として逐次取得する車両情報取得部20と、測距センサ16によって計測された自車両周辺に存在する物体上の複数の点に対応する位置の各々を取得する測距情報取得部22と、取得した車両情報に基づいて、自車両の運動量を算出する車両運動量変換部24と、測距情報取得部22によって取得された測距情報に基づいて、自車両の運動量を推定する時系列照合部26と、時系列照合部26によって推定された自車両の運動量に基づいて、時刻tにおける車両の運動量の推定の不良地点らしさを算出し、推定の不良地点であるか否かを判定する不良推定地点判定部28と、を備えている。なお、車両運動量変換部24は、車両運動量算出手段の一例であり、時系列照合部26は、車両運動量推定手段の一例であり、不良推定地点判定部28は、不良地点らしさ算出手段の一例である。
【0042】
車両情報取得部20は、車速センサ12によって検出された自車両の速度と、ヨーレートセンサ14によって検出された自車両のヨーレートとを、自車両の運動状態として各時刻tについて取得する。
【0043】
測距情報取得部22は、測距センサ16によって計測された自車両周辺に存在する物体上の複数の点の各々に対応する位置を各時刻tについて取得する。
【0044】
車両運動量変換部24は、車両情報取得部20によって取得された時刻tの自車両の運動状態に基づいて、時刻tにおける自車両の運動量を算出する。
具体的には、車両運動量変換部24は、車両情報取得部20によって自車両の運動状態として取得された自車両の速度V[m/s]とヨーレートω[rad/s]とから、以下の算出式に従って、計測周期時間T当たりの自車両の運動量Δx[m]、Δz[m]、Δθ[rad]を計算する。
【0045】
Δx=0.5×ω×V×T
2
Δz=V×T
Δθ=ω×T
【0046】
上記算出式によって算出された計算値は、幾何学的な関係に基づくΔx、Δz、Δθの予測値である。
本発明の実施の形態では、上記の算出式によって車両の運動量を算出するが、車両運動方程式を適用して、より高精度な予測値を算出しても良い。
【0047】
時系列照合部26は、測距情報取得部22によって取得された時刻tの複数の点に対応する位置の各々と、過去に取得された複数の点に対応する位置の各々とに基づいて、時刻tにおける自車両の運動量を推定する。
【0048】
具体的には、時系列照合部26は、測距情報取得部22によって取得された過去のスキャンデータと最新のスキャンデータを照合し、路側物は対地固定していると仮定して、自車両の運動量Δx[m]、Δz[m]、Δθ[rad]を推定する。スキャンデータの時系列照合は、既知のiterative closest pointアルゴリズム等により計算することができる。また、過去の時刻のスキャンデータを走行平面に対応させた2次元マップに蓄積しておき、最新のスキャンデータと当該2次元マップとを照合して、自車両の運動量を推定してもよい。
【0049】
不良推定地点判定部28は、時系列照合部26によって推定された自車両の運動量に基づいて、自車両の運動量の試行量を複数生成する。次に不良推定地点判定部28は、生成された複数の試行量の各々について、時刻tの点に対応する位置の各々に対して試行量を用いて座標変換して得られる点の位置の各々と、測距センサ16によって過去に計測された点に対応する位置の各々とを比較して、試行量の確からしさを表すスコアを算出する。
【0050】
次に、不良推定地点判定部28は、複数の試行量の各々について算出されたスコアと、複数の試行量とに基づいて、時刻tにおける自車両の運動量の推定の不良地点らしさを算出する。
【0051】
そして、不良推定地点判定部28は、推定された時刻tにおける自車両の運動量の推定の不良地点らしさが予め定められた閾値以上の場合に、推定の不良地点であると判定し、推定された時刻tにおける自車両の運動量の推定の不良地点らしさが予め定められた閾値未満の場合に、推定の不良地点でないと判定する。
【0052】
具体的には、不良推定地点判定部28では、時系列照合部26によって推定された自車両の運動量の推定値Δx、Δz、Δθの分散を推定し、トンネルなどの分散が増大する、推定の不良地点に自車両が存在するかどうかを判定する。
【0053】
不良推定地点判定部28は、時系列照合部26によって推定された自車両の運動量の推定値Δx、Δz、Δθの分散を以下の(1)〜(4)の手順で計算する。
【0054】
(1)サンプリング
まず、不良推定地点判定部28は、時系列照合部26によって推定された自車両の運動量に基づいて、自車両の運動量を含む所定の範囲から、サンプリングによって、自車両の運動量の試行量を以下のように複数生成する。
【0055】
はじめに、不良推定地点判定部28は、探索範囲Δx
a、Δz
a、Δθ
aを設定する。探索範囲Δx
a、Δz
a、Δθ
aは、車両の速度や加速度等から予め設定される。そして、自車両の運動量の推定値Δxについて、Δx−Δx
a〜Δx+Δx
aの範囲から、一様分布確率に基づき、M個サンプリングして、 Δx
iを試行量の要素とする(iは0〜M−1の番号)。
【0056】
次に、不良推定地点判定部28は、自車両の運動量の推定値Δzについて、同様に、Δz−Δz
a〜Δz+Δz
aの範囲から、一様分布確率に基づき、M個サンプリングして、 Δz
iを試行量の要素とする。
【0057】
そして、不良推定地点判定部28は、自車両の運動量の推定値Δθについて、同様に、Δθ−Δθ
a〜Δθ+Δθ
aの範囲から、一様分布確率に基づき、M個サンプリングして、 Δθ
iを試行量の要素とする。
【0058】
そして、自車両の運動量の試行量を表すベクトルx
i^が、
【0059】
x
i^=[Δx+Δx
i,Δz+Δz
i,Δθ+Δθ
i]
【0060】
のようにM個求められる。なお、記号に付された「^」は、当該記号が行列または多次元配列またはベクトルであることを表わしている。
【0061】
(2)コスト算出
次に、不良推定地点判定部28は、上記(1)でサンプリングされた自車両の運動量の試行量x
i^に基づいて、最新のレーザレーダの計測点群(測距情報取得部22によって取得された時刻tの複数の点に対応する位置の各々)を座標変換して、1時刻前のレーザレーダの計測点群(測距情報取得部22によって取得された時刻t−1の複数の点に対応する位置の各々)と重ねあわせて照合して、照合度合をM個のコストc
iとして求める。なお、最新のレーザレーダの計測点群を座標変換して、1時刻前のレーザレーダの計測点群との距離を算出して、当該距離をM個のコストc
iとして求めてもよい。
【0062】
また、別の方法としては、最新のレーザレーダの計測点群を試行量x
i^に基づき座標変換して、過去のスキャンデータを走行平面に対応させて蓄積した2次元マップと照合して、その照合値の合計をコストc
iとして求めてもよい。例えば、最新のレーザレーダの計測点群の立体物領域を試行量x
i^に基づき座標変換して、過去のスキャンデータを走行平面に対応させて蓄積した2次元マップの立体物領域と照合して、その照合値の合計をコストc
iとして求めてもよい。
【0063】
(3)コストの正規化
次に、不良推定地点判定部28は、上記(2)で求めたコストc
iの総和が1となるように、各コスト値c
iをコストの総和で除算して正規化して、試行量の確からしさを表すスコアp
iを算出する。スコアp
iは、自車運動量Δx
i、Δz
i、Δθ
iの確からしさを示す。
【0064】
p
i=c
i/sum(c
i)・・・(1)
【0065】
なお、sum(c
i)は、各iのコストの総和を表す。
【0066】
(4)重み付き共分散行列V^の算出
次に、不良推定地点判定部28は、上記(3)で算出したスコアp
iに基づいて、以下の式(2)により、x
i^の重み付き共分散行列V^を算出する。
【0068】
そして、不良推定地点判定部28は、上記式(2)の重み付き共分散行列V^のΣ
i(p
iΔz
i2)の項に着目し、Σ
i(p
iΔz
i2)の値を自車両の運動量の推定の不良地点らしさとし、自車両の運動量の推定の不良地点らしさが予め定められた閾値よりも大きい場合には、自車両の運動量の推定の不良地点であると判定する。なお、本発明の実施の形態では、予め定められた閾値として車両の速度の分散を用いる。車両の速度の分散の値は予め計測して設定しておく。
【0069】
出力部30は、不良推定地点判定部28によって、自車両の運動量の推定の不良地点であると判定された場合に、車両運動量変換部24によって算出された自車両の運動量を出力し、不良推定地点判定部28によって、自車両の運動量の推定の不良地点でないと判定された場合に、時系列照合部26によって推定された自車両の運動量を出力する。このように、出力部30は、推定の不良地点に自車両が存在する場合は、時系列照合部26によって推定された自車両の運動量の推定値の代わりに、車両運動量変換部24によって算出された自車両の運動量の推定値へ置換する。
【0070】
走行環境認識装置32は、測距センサ16によって計測された自車両周辺に存在する物体上の複数の点の各々の自車両を基準とする位置と、出力部30によって出力された自車両の運動量と基づいて、当該自車両周辺に存在する物体が移動しているか又は静止しているかを認識する。具体的には、走行環境認識装置32は、出力部30によって出力された自車両の運動量をキャンセルすることによって、当該自車両周辺に存在する物体が移動しているか又は静止しているかを認識する。
【0071】
<運動量推定装置の10の動作>
次に、第1の実施の形態に係る運動量推定装置の10の動作について説明する。まず、車両のドライバの運転操作により自車両が走行し、車速センサ12によって自車両の速度が逐次検出され、ヨーレートセンサ14によって自車両のヨーレートが逐次検出され、測距センサ16によって自車両周辺に存在する物体上の複数の点の各々の自車両を基準とする位置が逐次計測されているときに、コンピュータ18において、
図6に示す運動量推定処理ルーチンが実行される。
【0072】
ステップS100において、車両情報取得部20によって、車速センサ12によって検出された自車両の速度と、ヨーレートセンサ14によって検出された自車両のヨーレートとを、自車両の運動状態として受け付ける。
【0073】
ステップS102において、測距情報取得部22によって、測距センサ16によって計測された自車両周辺に存在する物体上の複数の点の各々に対応する位置を受け付ける。
【0074】
ステップS104において、車両運動量変換部24によって、上記ステップS100で受け付けた自車両の運動状態に基づいて、自車両の運動量を算出する。
【0075】
ステップS106において、時系列照合部26によって、上記ステップS102で受け付けた複数の点に対応する位置の各々と、過去に取得された複数の点に対応する位置の各々とに基づいて、現時刻tにおける自車両の運動量を推定する。
【0076】
ステップS108において、不良推定地点判定部28によって、上記ステップS106で推定された自車両の運動量に基づいて、自車両の運動量を含む所定の範囲から、サンプリングによって、自車両の運動量の試行量x
i^を複数生成する。
【0077】
ステップS110において、不良推定地点判定部28によって、上記ステップS108で生成された複数の試行量x
i^の各々について、現時刻tの点に対応する位置の各々に対して試行量を用いて座標変換して得られる点の位置の各々と、測距センサ16によって過去に計測された点に対応する位置の各々とを比較して、上記式(1)に従って、試行量の確からしさを表すスコアp
iを算出する。
【0078】
ステップS112において、不良推定地点判定部28によって、複数の試行量x
i^の各々について上記ステップS110で算出されたスコアp
iと、複数の試行量x
i^とに基づいて、上記式(2)に示すように、自車両の運動量の推定の不良地点らしさを含む重み付き共分散行列V^を算出する。
【0079】
ステップS114において、不良推定地点判定部28によって、上記ステップS112で算出された重み付き共分散行列V^のうち、自車両の運動量の推定の不良地点らしさΣ
i(p
iΔz
i2)が、予め定められた閾値以上であるか否かを判定する。自車両の運動量の推定の不良地点らしさΣ
i(p
iΔz
i2)が、予め定められた閾値以上である場合には、現時刻tに推定された自車両の運動量の推定は、不良地点におけるものであるとして、ステップS116へ進む。一方、自車両の運動量の推定の不良地点らしさΣ
i(p
iΔz
i2)が、予め定められた閾値未満である場合には、現時刻tに推定された自車両の運動量の推定は、不良地点におけるものでないとして、ステップS118へ進む。
【0080】
ステップS116において、出力部30によって、上記ステップS104で算出された自車両の運動量を結果として出力する。
【0081】
ステップS118において、出力部30によって、上記ステップS106で推定された自車両の運動量を結果として出力する。
【0082】
そして、ステップS120において、時刻tを1インクリメントして、ステップS100へ戻る。
【0083】
走行環境認識装置32は、測距センサ16によって計測された自車両周辺に存在する物体上の複数の点の各々の自車両を基準とする位置と、上記ステップS116又は上記ステップS118で結果として出力された自車両の運動量と基づいて、当該自車両周辺に存在する物体が移動しているか又は静止しているかを認識する。
【0084】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る運動量推定装置によれば、車両周辺に存在する物体上の複数の点の各々の車両を基準とする位置を各時刻tについて取得し、取得された時刻tの点に対応する位置の各々と、過去に取得された点に対応する位置の各々とに基づいて、時刻tにおける車両の運動量を推定し、推定された車両の運動量に基づいて、車両の運動量の試行量を複数生成し、生成された複数の試行量の各々について、時刻tの点に対応する位置の各々に対して試行量を用いて座標変換して得られる点の位置の各々と、測距センサによって過去に計測された点に対応する位置の各々とを比較して、試行量の確からしさを表すスコアを算出し、複数の試行量の各々について算出されたスコアと、複数の試行量とに基づいて、時刻tにおける車両の運動量の推定の不良地点らしさを算出することにより、車両の運動量の推定の不良地点を検出することができる。
【0085】
また、車両の運動状態を各時刻tについて取得し、取得された時刻tの車両の運動状態に基づいて、時刻tにおける車両の運動量を算出し、推定された時刻tにおける車両の運動量の推定の不良地点らしさが予め定められた閾値以上の場合に、時刻tの車両の運動状態に基づいて算出された車両の運動量を出力し、推定された時刻tにおける前記移動体の運動量の推定の不良地点らしさが予め定められた閾値未満の場合に、測距センサによって取得された測距情報に基づいて推定された車両の運動量を出力することにより、車両の運動量を精度良く推定することができる。
【0086】
また、高速道路のトンネルやガードレール等の単調な走行シーンにて、車両の運動量推定の劣化を防ぐことができる。
【0087】
また、測距センサによる車両の運動量推定の分散値を常時監視することにより、不良推定状態を判定することが可能となり、適切なタイミングで車両CAN情報に切り替えることができる。これにより、高速道路でロバストな静止物と移動物の判別ができ、誤認識を低減することが可能となる。
【0088】
<第2の実施の形態>
次に、第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0089】
第2の実施の形態では、視線誘導標の位置を検出し、検出された視線誘導標の位置に基づいて、自車両の運動量を推定する点が第1の実施の形態と異なっている。
【0090】
図7に示すように、第2の実施の形態に係る運動量推定装置210は、自車両の速度V[m/s]を逐次検出する車速センサ12と、自車両のヨーレートω[rad/s]を逐次検出するヨーレートセンサ14と、自車両周辺に存在する物体上の複数の点の各々の自車両を基準とする位置を逐次計測する測距センサ16と、自車両の運動量を推定するコンピュータ218と、推定された自車両の運動量に基づいて、走行環境を認識する走行環境認識装置32とを備えている。
【0091】
コンピュータ218は、車両情報取得部20と、測距情報取得部22と、車両運動量変換部24と、測距情報取得部22によって取得された測距情報に基づいて、視線誘導標候補を抽出する視線誘導標候補抽出部225と、視線誘導標候補抽出部225によって抽出された視線誘導標候補に基づいて、自車両の運動量を推定する時系列照合部226と、不良推定地点判定部28と、出力部30とを備えている。
【0092】
測距情報取得部22は、測距センサ16によって計測された自車両周辺に存在する物体上の複数の点の各々に対応する位置を各時刻tについて取得すると共に、測距センサ16によって出力された反射輝度画像を各時刻tについて取得する。
視線誘導標候補抽出部225は、測距情報取得部22によって取得された時刻tの点に対応する位置の各々及び反射輝度画像に基づいて、自車両周辺に存在する複数の視線誘導標各々の自車両を基準とする位置を各時刻tについて取得する。
【0093】
具体的には、視線誘導標候補抽出部225は、測距情報取得部22によって取得された反射強度画像から、局所的に反射強度値が高くなる点を視線誘導標候補点として抽出する。例えば、視線誘導標候補抽出部225は、反射強度画像を1次元ラプラシアンオペレータにより水平方向にスキャンし、スキャンによって得られた値が設定閾値以上となる点を視線誘導標候補として抽出する。
図8に、反射強度画像を1次元ラプラシアンオペレータによって水平方向にスキャンする場合の一例を示す。また、
図9に、反射強度画像から抽出された視線誘導標候補の一例を示す。
【0094】
また、視線誘導標候補抽出部225は、反射強度画像の同一スキャンライン上の視線誘導標を組み合わせて対を生成する。そして、視線誘導標候補抽出部225は、対となる視線誘導標の間隔が車幅程度(例えば、1.48〜2.5m)であって、かつ対となる視線誘導標が同一距離にあり、
図10に示すように、当該視線誘導標の間に視線誘導標候補と同一距離の立体物がある場合は、車両ランプ部を誤検出していると判定して、当該視線誘導標候補を除外する。
そして、視線誘導標候補抽出部225は、測距情報取得部22によって取得された時刻tの点に対応する位置の各々から、時刻tの視線誘導標に対応する位置の各々を取得する。
【0095】
時系列照合部226は、視線誘導標候補抽出部225によって取得された時刻tの視線誘導標に対応する位置の各々と、過去に取得された視線誘導標に対応する位置の各々とに基づいて、時刻tにおける自車両の運動量を推定する。
【0096】
具体的には、時系列照合部226は、
図11に示すように、視線誘導標候補抽出部225によって抽出された視線誘導標候補の測距値から車両座標系の座標値を計算する。時系列照合部226は、現在の時刻tにおける視線誘導標候補と、1フレーム前の時刻t−1における視線誘導標候補を既知のRANSAC法により対応づける。すなわち、時系列照合部226は、視線誘導標の位置は対地に固定と仮定し、自車両の運動量Δx,Δz,Δθを既知のRANSAC法で推定する。
【0097】
<運動量推定装置の210の動作>
次に、第2の実施の形態に係る運動量推定装置210の動作について説明する。まず、自車両のドライバの運転操作により車両が走行し、車速センサ12によって自車両の速度が逐次検出され、ヨーレートセンサ14によって自車両のヨーレートが逐次検出され、測距センサ16によって自車両周辺に存在する物体上の複数の点の各々の自車両を基準とする位置が逐次計測され、反射輝度画像が逐次出力されているときに、コンピュータ218において、
図12に示す運動量推定処理ルーチンが実行される。なお、第1の実施の形態と同様の処理については、同一符号を付して説明を省略する。
【0098】
ステップS102において、測距情報取得部22によって、測距センサ16によって計測された自車両周辺に存在する物体上の複数の点の各々に対応する位置、及び測距センサ16によって出力された反射輝度画像を受け付ける。
ステップS205において、視線誘導標候補抽出部225によって、上記ステップS102で取得された時刻tの点に対応する位置の各々及び反射輝度画像に基づいて、自車両周辺に存在する複数の視線誘導標各々の自車両を基準とする位置を各時刻tについて取得する。
【0099】
ステップS206において、時系列照合部226によって、上記ステップS205で取得された時刻tの視線誘導標に対応する位置の各々と、過去に取得された視線誘導標に対応する位置の各々とに基づいて、時刻tにおける自車両の運動量を推定する。
【0100】
なお、第2の実施の形態に係る運動量推定装置210の他の構成及び作用については、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0101】
以上説明したように、第2の実施の形態に係る車両挙動予測装置によれば、車両周辺に存在する複数の視線誘導標各々の車両を基準とする位置を各時刻tについて取得し、取得された時刻tの視線誘導標に対応する位置の各々と、過去に取得された視線誘導標に対応する位置の各々とに基づいて、時刻tにおける車両の運動量を推定することにより、車両の運動量を精度良く推定することができる。
【0102】
<第3の実施の形態>
次に、第3の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0103】
第3の実施の形態では、各センサによって検出された自車両の運動状態から算出された車両の運動量と、測距センサ16によって検出された測距情報から推定された自車両の運動量とを組み合わせて自車両の運動量を推定する点が、第1の実施の形態と異なっている。
【0104】
第3の実施の形態では、車速センサ12によって検出された自車両の速度、及びヨーレートセンサ14によって検出されたヨーレートから算出された自車両の運動量と、測距センサ16によって検出された測距情報から推定された自車両の運動量とを、カルマンフィルタを用いて組み合わせて算出する場合を例に説明する。
【0105】
具体的には、算出した重み付き共分散行列V^に基づいて、各センサによって検出された自車両の速度及びヨーレートから算出された自車両の運動量と、測距センサ16によって検出された測距情報から推定された自車両の運動量とを、既知のカルマンフィルタよって融合する。以下、図面を参照して、第3の実施の形態について説明する。
【0106】
図13に示すように、第3の実施の形態に係る運動量推定装置310は、自車両の速度V[m/s]を逐次検出する車速センサ12と、自車両のヨーレートω[rad/s]を逐次検出するヨーレートセンサ14と、自車両周辺に存在する物体上の複数の点の各々の自車両を基準とする位置を逐次計測する測距センサ16と、自車両の運動量を推定するコンピュータ318と、推定された自車両の運動量に基づいて、走行環境を認識する走行環境認識装置32とを備えている。
【0107】
コンピュータ318は、車両情報取得部20と、測距情報取得部22と、車両運動量変換部24と、時系列照合部26と、時系列照合部26によって推定された自車両の運動量に基づいて、重み付き共分散行列を算出する分散行列算出部327と、車両運動量変換部24によって算出された自車両の運動量と、時系列照合部26によって推定された自車両の運動量と、分散行列算出部327によって算出された重み付き共分散行列とに基づいて、自車両の運動量を推定する状態推定部328と、出力部30とを備えている。
【0108】
分散行列算出部327は、第1の実施の形態の不良推定地点判定部28と同様に、時系列照合部26によって推定された自車両の運動量に基づいて、自車両の運動量の試行量を複数生成する。
【0109】
次に、分散行列算出部327は、不良推定地点判定部28と同様に、生成された複数の試行量の各々について、現時刻tの点に対応する位置の各々に対して試行量を用いて座標変換して得られる点の位置の各々と、測距センサ16によって過去に計測された点に対応する位置の各々とを比較して、当該試行量の確からしさを表すスコアを算出する。
【0110】
そして、分散行列算出部327は、不良推定地点判定部28と同様に、複数の試行量の各々について算出されたスコアと、複数の試行量とに基づいて、上記式(2)に示す重み付き共分散行列V^を算出する。
【0111】
状態推定部328は、分散行列算出部327によって算出された重み付き共分散行列V^に基づいて、カルマンフィルタで用いられる観測雑音の共分散を決定し、決定された観測雑音の共分散に基づいて、カルマンゲインを算出する。
【0112】
次に、状態推定部328は、車両運動量変換部24によって推定された自車両の運動量、及び時系列照合部26によって算出された自車両の運動量を観測値として、算出されたカルマンゲインを用いたカルマンフィルタに従って、時刻tにおける自車両の運動量を推定する。そして、状態推定部328は、推定された時刻tにおける自車両の運動量を出力する。
【0113】
具体的には、状態推定部328は、車両運動量変換部24によって算出された自車両の運動量と、時系列照合部26によって推定された自車両の運動量とから、カルマンフィルタによって自車両の運動量を推定する。
【0114】
カルマンフィルタで使用する運動モデルの一例を以下に示す。
【0116】
このとき、x^は状態ベクトル、F^は更新行列、w^は共分散行列がQ^で表されるシステムノイズ項である。
また、状態ベクトルx^は次式で表される。
【0118】
状態ベクトルx^の各要素は、自車両の運動量Δx(横方向移動量)、Δz(進行方向移動量)、Δθ(方位角方向移動量)と、それらの時間に対する1次微分項Δx
・,Δz
・,Δθ
・である。ここでは、単純な質点モデルと見なして、更新行列F^を次式のように設定した。もし、車両運動モデルが既知であれば、それを適用することにより、より推定精度を改善することができる。Tは更新時間[sec]である。
【0120】
また、観測モデルは以下の式で表される。このとき、z^は観測値ベクトル、H^は観測行列である。v^は観測ノイズである。
【0122】
このとき、観測値ベクトルz^は、車両運動量変換部24によって算出された自車両の運動量Δx
C、Δz
C、Δθ
Cと、時系列照合部26によって推定された自車両の運動量Δx
L、Δz
L、Δθ
Lとを要素とするベクトルである。
【0124】
このとき、観測行列H^は次式で表される。
【0126】
また、観測ノイズv^の分散行列R^は次式で設定する。
【0128】
このとき、V^
car及びV^
lidarは3行x3列の行列となる。0^は3行x3列の零行列である。V^
lidarには分散行列算出部327によって算出された重み付き共分散行列V^を代入すれば良い。また、V^
carは、車両運動量変換部24で取得された計測周期時間T当たりの自車両の運動量Δx[m]、Δz[m]、Δθ[rad]の実測値から、実測値の分散を算出して設定する。
【0129】
そして、下記のようなカルマンフィルタの既知の更新式により、車両運動量変換部24によって算出された自車両の運動量Δx
C、Δz
C、Δθ
Cと、時系列照合部26によって推定された自車両の運動量Δx
L、Δz
L、Δθ
Lとの2つの自車両の運動量を観測値z^として、V^
carとV^
lidarとの重みを考慮して融合し、逐次更新することにより、時々刻々の自車両の運動量の推定値x^が得られる。第3の実施の形態では、kが時刻に対応する。また、P^は誤差共分散行列、K^はカルマンゲインである。P^の初期値としては、例えば、観測値z^の初期値のばらつきの範囲を考慮して、比較的大きめの値を設定しておく。
【0131】
ここで、添え字「p,k」が付与された値は、時刻k−1までに利用可能なデータに基づき予測された時刻kの事前推定値を表す。また、添え字「k」が付与された値は、時刻kまでに利用可能なデータに基づき推定された時刻kの事後推定値を表す。
【0132】
カルマンフィルタによる推定処理は、予測ステップとフィルタリングステップとを含んで構成される。
【0133】
(1)予測ステップ
まず、予測ステップにおける処理について説明する。状態推定部328は、予測ステップにおいて、前回のフィルタリングステップで算出された時刻k−1の状態ベクトルx^
k−1と、更新行列F^とに基づいて、上記式(10)に従って、時刻kの状態ベクトルx^
p,kを算出する。
【0134】
そして、状態推定部328は、更新行列F^と、前回のフィルタリングステップで推定された共分散行列P^
k−1と、システムノイズw^の共分散行列Q^とに基づいて、上記式(11)に従って、事前誤差共分散行列P^
p,kを算出する。
【0135】
(2)フィルタリングステップ
次に、フィルタリングステップにおける処理について説明する。状態推定部328は、分散行列算出部327によって算出された重み付き共分散行列V^を、観測ノイズv^の分散行列R^のV^
lidarに代入し、観測ノイズv^の分散行列R^を決定する。
【0136】
そして、状態推定部328は、フィルタリングステップにおいて、予測ステップで算出された事前誤差共分散行列P^
p,kと、観測行列H^と、決定された観測ノイズv^の分散行列R^とに基づいて、上記式(12)に従って、カルマンゲインK^を算出する。
【0137】
次に、状態推定部328は、算出されたカルマンゲインK^と、予測ステップで算出された時刻kにおける状態ベクトルx^
p,kと、上記式(7)で示したz^=[Δx
C,Δz
C,Δθ
C,Δx
L,Δz
L,Δθ
L]と、観測行列H^とに基づいて、上記式(13)に従って、時刻kにおける状態ベクトルx^
kを推定する。
【0138】
そして、状態推定部328は、前回のフィルタリングステップで推定された共分散行列P^
k−1と、算出されたカルマンゲインK^と、観測行列H^とに基づいて、上記式(14)に従って、事後誤差共分散行列P^
kを算出する。
【0139】
フィルタリングステップで算出された各値(カルマンゲインK^、状態ベクトルx^
k、事後誤差共分散行列P^
k)は、次回の予測ステップにおける処理で用いられる。
【0140】
また、状態推定部328は、推定された時刻kにおける状態ベクトルx^
kのうち、自車両の運動量[Δx,Δz,Δθ]を出力する。
【0141】
出力部30は、状態推定部328によって出力された自車両の運動量を出力する。
【0142】
走行環境認識装置332は、測距センサ16によって計測された自車両周辺に存在する物体上の複数の点の各々の自車両を基準とする位置と、出力部30によって出力された自車両の運動量と基づいて、当該自車両周辺に存在する物体が移動しているか又は静止しているかを認識する。具体的には、走行環境認識装置32は、出力部30によって出力された車両の運動量をキャンセルすることによって、当該自車両周辺に存在する物体が移動しているか又は静止しているかを認識する。
【0143】
<運動量推定装置の310の動作>
次に、第3の実施の形態に係る運動量推定装置310の動作について説明する。まず、自車両のドライバの運転操作により車両が走行し、車速センサ12によって自車両の速度が逐次検出され、ヨーレートセンサ14によって自車両のヨーレートが逐次検出され、測距センサ16によって自車両周辺に存在する物体上の複数の点の各々の自車両を基準とする位置が逐次計測されているときに、コンピュータ318において、
図14に示す運動量推定処理ルーチンが実行される。
【0144】
ステップS308において、分散行列算出部327によって、上記ステップS106で推定された自車両の運動量に基づいて、自車両の運動量を含む所定の範囲から、サンプリングによって、自車両の運動量の試行量x
i^を複数生成する。
【0145】
ステップS310において、分散行列算出部327によって、上記ステップS308で生成された複数の試行量x
i^の各々について、現時刻tの点に対応する位置の各々に対して試行量を用いて座標変換して得られる点の位置の各々と、測距センサ16によって過去に計測された点に対応する位置の各々とを比較して、上記式(1)に従って、試行量の確からしさを表すスコアp
iを算出する。
【0146】
ステップS312において、分散行列算出部327によって、複数の試行量x
i^の各々について上記ステップS310で算出されたスコアp
iと、複数の試行量x
i^とに基づいて、上記式(2)に示すように、重み付き共分散行列V^を算出する。
【0147】
ステップS314において、状態推定部328によって、上記ステップS312で算出された重み付き共分散行列に基づいて、カルマンフィルタで用いられる観測雑音の共分散を決定し、決定された観測雑音の共分散に基づいて、カルマンゲインを算出する。そして、状態推定部328によって、上記ステップS104で算出された自車両の運動量、及び上記ステップS106で推定された自車両の運動量を観測値として、算出されたカルマンゲインを用いたカルマンフィルタに従って、時刻kにおける自車両の運動量を推定する。ステップS314は、
図15に示す状態推定処理ルーチンによって実現される。
【0148】
<状態推定処理ルーチン>
まず、ステップS400において、状態推定部328によって、上記ステップS312で算出された重み付き共分散行列V^を取得する。
【0149】
ステップS402において、状態推定部328によって、前回のステップS410で算出された時刻k−1の状態ベクトルx^
k−1と、更新行列F^とに基づいて、上記式(10)に従って、時刻kの状態ベクトルx^
p,kを算出する。
【0150】
ステップS404において、状態推定部328によって、更新行列F^と、前回のステップS412で推定された共分散行列P^
k−1と、システムノイズw^の共分散行列Q^とに基づいて、上記式(11)に従って、事前誤差共分散行列P^
p,kを算出する。
【0151】
ステップS406において、状態推定部328によって、分散行列算出部327によって算出された重み付き共分散行列V^を、観測ノイズv^の分散行列R^のV^
lidarに代入し、観測ノイズv^の分散行列R^を決定する。
【0152】
ステップS408において、状態推定部328によって、上記ステップS404で算出された事前誤差共分散行列P^
p,kと、観測行列H^と、上記ステップS406で決定された観測ノイズv^の分散行列R^とに基づいて、上記式(12)に従って、カルマンゲインK^を算出する。
【0153】
ステップS410において、状態推定部328によって、上記ステップS408で算出されたカルマンゲインK^と、上記ステップS402で算出された時刻kにおける状態ベクトルx^
p,kと、上記式(7)で示したz^=[Δx
C,Δz
C,Δθ
C,Δx
L,Δz
L,Δθ
L]と、観測行列H^とに基づいて、上記式(13)に従って、時刻kにおける状態ベクトルx^
kを推定する。
【0154】
ステップS412において、状態推定部328によって、前回のステップS412で算出されたフィルタリングステップで推定された共分散行列P^
k−1と、上記ステップS408で算出されたカルマンゲインK^と、観測行列H^とに基づいて、上記式(14)に従って、事後誤差共分散行列P^
kを算出する。
【0155】
ステップS414において、上記ステップS410で算出された時刻kにおける状態ベクトルx^
kのうち、自車両の運動量[Δx,Δz,Δθ]を結果として出力して、状態推定処理ルーチンを終了する。
【0156】
次に、運動量推定処理ルーチンに戻り、ステップS316において、出力部30によって、上記ステップS314で出力された自車両の運動量を結果として出力して、ステップS318において、時刻kを1インクリメントして、ステップS100へ戻る。
【0157】
走行環境認識装置332は、測距センサ16によって計測された自車両周辺に存在する物体上の複数の点の各々の自車両を基準とする位置と、上記ステップS316で結果として出力された自車両の運動量と基づいて、当該自車両周辺に存在する物体が移動しているか又は静止しているかを認識する。
【0158】
なお、第3の実施の形態に係る運動量推定装置の他の構成及び作用については、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0159】
以上説明したように、第3の実施の形態に係る運動量推定装置310によれば、時系列照合部26によって推定された車両の運動量に基づいて、車両の運動量の試行量を複数生成し、生成された複数の試行量の各々について、時刻kの点に対応する位置の各々に対して試行量を用いて座標変換して得られる点の位置の各々と、測距センサ16によって過去に計測された点に対応する位置の各々とを比較して、試行量の確からしさを表すスコアを算出し、複数の試行量の各々について算出されたスコアと、複数の試行量とに基づいて、複数の試行量の重み付き共分散行列を算出し、算出された重み付き共分散行列に基づいて、カルマンフィルタで用いられる観測雑音の共分散を決定し、決定された観測雑音の共分散に基づいて、カルマンゲインを算出し、時系列照合部26によって推定された車両の運動量、及び車両運動量変換部24によって算出された車両の運動量を観測値として、算出されたカルマンゲインを用いたカルマンフィルタに従って、時刻kにおける車両の運動量を推定することにより、車両の運動量を精度良く推定することができる。
【0160】
カルマンフィルタに従って、時刻kにおける車両の運動量を推定することにより、車両運動量変換部24によって算出された車両の運動量と、時系列照合部26によって推定された車両の運動量とについて、陽に切換判定をする必要がなくなる。
【0161】
なお、上記の実施の形態では、移動体として車両を対象とする場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、他の移動体を対象としてもよい。
【0162】
また、上記の実施の形態では、測距センサとして、レーザレーダを用いる場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば車載したステレオカメラを用いても良い。この場合には、ステレオカメラによって撮影されたステレオ画像に基づいて、自車両周辺に存在する物体上の複数の点の各々に対応する位置を算出すればよい。
【0163】
また、上記の実施の形態では、車両の運動状態として、車速センサ12によって検出された自車両の速度と、ヨーレートセンサ14によって検出された自車両のヨーレートとを、取得する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、他のセンサによって得られた車両の運動状態を取得してもよい。例えば、ハンドル角センサによって、ハンドルの操舵角を車両の運動状態として取得してもよい。
【0164】
また、上記の実施の形態では、車両の運動量を推定する運動量推定装置に本発明を適用させた場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、時刻tにおける車両の運動量の推定の不良地点らしさのみを算出する装置に本発明を適用させても良い。
【0165】
また、上記の第1及び第2の実施の形態における不良推定地点判定部28は、上記式(2)の重み付き共分散行列V^のΣ
i(p
iΔz
i2)の項に着目し、Σ
i(p
iΔz
i2)の値を自車両の運動量の推定の不良地点らしさとする場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、上記式(2)の重み付き共分散行列V^の他の要素の値を自車両の運動量の推定の不良地点らしさとしてもよい。
【0166】
なお、本発明のプログラムは、記録媒体に格納して提供することができる。