特許第6263457号(P6263457)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住化スタイロンポリカーボネート株式会社の特許一覧 ▶ 東洋紡株式会社の特許一覧

特許6263457帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成形品
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263457
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20180104BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20180104BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   C08L69/00
   C08L67/02
   C08K5/098
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-172882(P2014-172882)
(22)【出願日】2014年8月27日
(65)【公開番号】特開2016-47877(P2016-47877A)
(43)【公開日】2016年4月7日
【審査請求日】2017年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】396001175
【氏名又は名称】住化ポリカーボネート株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河越 昭人
(72)【発明者】
【氏名】雲林院 敏文
(72)【発明者】
【氏名】小林 幸治
(72)【発明者】
【氏名】光永 弘幸
【審査官】 松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−249805(JP,A)
【文献】 特開2009−155490(JP,A)
【文献】 特開2014−051541(JP,A)
【文献】 特表2003−531229(JP,A)
【文献】 特開2001−172375(JP,A)
【文献】 特開昭62−045622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 − 101/16
CA/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、カルボン酸成分とグリコール成分とからなるポリエーテルエステル(B)5〜40重量部、及び有機金属塩化合物(C)0.05〜1.0重量部を含有してなり、
前記ポリエーテルエステル(B)のカルボン酸成分が、
(I)2,6−ナフタレンジカルボン酸化合物、
(II)3つ以上のカルボキシル基を有する化合物、及び
(III)以下の(式1)で表されるスルホン酸塩基を含有するカルボン酸化合物
を構成成分として含み、
前記ポリエーテルエステル(B)のグリコール成分が、
(IV)炭素数2〜10のアルキレングリコール、
(V)ジエチレングリコール、及び
(VI)ポリアルキレングリコール
を構成成分として含み、
全カルボン酸成分を100モル%、全グリコール成分を100モル%としたとき、前記(I)〜(VI)各成分の共重合量(モル%)が、以下の(式2)で表される関係を満足することを特徴とする、帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物。
(式1)
【化4】
(式中、Xは炭素数6〜20の2価の芳香族基又は炭素数1〜8のアルキレン基を示し、Mは金属イオン、テトラアルキルホスホニウムイオン又はテトラアルキルアンモニウムイオンを示す)
(式2)
(I)/(II)/(III)=55〜75/5〜15/20〜30、かつ、
(IV)/(V)/(VI)=82〜98/0〜15/1.5〜5
【請求項2】
前記ポリエーテルエステル(B)の含有量が、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、10〜30重量部である、請求項1に記載の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
前記有機金属塩化合物(C)が、p−トルエンスルホン酸の金属塩である、請求項1に記載の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
前記有機金属塩化合物(C)の含有量が、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、0.15〜0.8重量部である、請求項1に記載の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂に特定のポリマーと有機化合物の金属塩とが併用された、ポリカーボネート樹脂が本来有する耐衝撃性を維持しつつ、耐熱性及び持続的な帯電防止性に優れたポリカーボネート樹脂組成物、及びそれからなる成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性、耐熱性、透明性等に優れており、電気/電子、光学、建材、医療、食品、車両等の各分野において幅広く使用されている。しかし、ポリカーボネート樹脂をはじめとするプラスチックを用いた製品は、一般的に、その電気絶縁性の高さ故に帯電した静電気が消散しにくいという特徴を有している。そのため、製品の使用中に、埃の付着、静電気による破壊や誤動作等の不具合に繋がる可能性があり、ポリカーボネート樹脂への持続的な帯電防止性能の付与が求められていた。
【0003】
帯電防止性能をポリカーボネート樹脂へ付与する従来からの手法として、ポリカーボネート樹脂にジグリセリン脂肪酸エステルを配合する方法(特許文献1)や、ホスホニウムスルホネートを配合する方法(特許文献2)が提案されている。これらの方法は、帯電防止性やコストパフォーマンスの点で優れることから、広く採用されている技術的手法であるが、ジグリセリン脂肪酸エステルやホスホニウムスルホネートは、製品表面に移行することにより帯電防止性を発現させることから、製品の水洗や拭き取りによって帯電防止性が低下するといった問題点があった。
【0004】
また、製品の水洗や拭き取りによる影響を受けずに帯電防止性能を発現させるための手法として、ポリエーテルエステルアミドを配合する方法(特許文献3)やポリエーテルオリゴマーを配合する方法(特許文献4)等、ポリマー型の帯電防止剤を用いる方法が提案されている。これらの方法は、安定した帯電防止性能が得られる点で優れているが、帯電防止性能を発現させるためには、ポリマー型の帯電防止剤の添加量を多くする必要があり、樹脂組成物としての耐熱性や耐衝撃性等の機械的物性が大きく損なわれるといった問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平02−196852号公報
【特許文献2】特開昭62−230835号公報
【特許文献3】特開昭62−273252号公報
【特許文献4】特開平05−222289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、ポリカーボネート樹脂が本来有する耐衝撃性等を維持しつつ、耐熱性及び持続的な帯電防止性を有するポリカーボネート樹脂組成物、及びそれからなる成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、
ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、カルボン酸成分とグリコール成分とからなるポリエーテルエステル(B)5〜40重量部、及び有機金属塩化合物(C)0.05〜1.0重量部を含有してなり、
前記ポリエーテルエステル(B)のカルボン酸成分が、
(I)2,6−ナフタレンジカルボン酸化合物、
(II)3つ以上のカルボキシル基を有する化合物、及び
(III)以下の(式1)で表されるスルホン酸塩基を含有するカルボン酸化合物
を構成成分として含み、
前記ポリエーテルエステル(B)のグリコール成分が、
(IV)炭素数2〜10のアルキレングリコール、
(V)ジエチレングリコール、及び
(VI)ポリアルキレングリコール
を構成成分として含み、
全カルボン酸成分を100モル%、全グリコール成分を100モル%としたとき、前記(I)〜(VI)各成分の共重合量(モル%)が、以下の(式2)で表される関係を満足することを特徴とする、帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物、及びそれからなる成形品を提供するものである。
【0008】
(式1)
【化1】
(式中、Xは炭素数6〜20の2価の芳香族基又は炭素数1〜8のアルキレン基を示し、Mは金属イオン、テトラアルキルホスホニウムイオン又はテトラアルキルアンモニウムイオンを示す)
(式2)
(I)/(II)/(III)=55〜75/5〜15/20〜30、かつ、
(IV)/(V)/(VI)=82〜98/0〜15/1.5〜5
【発明の効果】
【0009】
本発明の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物によれば、ポリカーボネート樹脂が本来有する耐衝撃性等を維持しつつ、耐熱性及び持続的な帯電防止性を実現することができる。特に、本発明の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物は、水洗後の帯電防止性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は、以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
【0011】
本発明の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物(以下、単に「ポリカーボネート樹脂組成物」ともいう)は、ポリカーボネート樹脂(A)、特定のポリエーテルエステル(B)、及び有機金属塩化合物(C)を含有する。本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、必要に応じて、その他の成分を含有してもよい。
【0012】
ポリカーボネート樹脂(A)とは、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、又はジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体であり、代表的なものとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0013】
前記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル等のジヒドロキシジアリールエーテル類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。これらは、単独で又は2種類以上を混合して使用される。これらの他に、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
【0014】
さらに、前記ジヒドロキシジアリール化合物と、例えば以下に示す3価以上のフェノール化合物とを混合使用してもよい。3価以上のフェノール化合物としては、例えば、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタンおよび2,2−ビス−[4,4−(4,4’−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル]−プロパン等が挙げられる。
【0015】
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量は、通常10000〜100000、好ましくは15000〜35000、さらに好ましくは17000〜28000である。該ポリカーボネート樹脂(A)を製造する際には、分子量調節剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。
【0016】
なお、ポリカーボネート樹脂(A)の屈折率は、通常1.584〜1.586程度の範囲である。
【0017】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、特定のポリエーテルエステル(B)を含有する。本発明に使用されるポリエーテルエステル(B)は、カルボン酸成分とグリコール成分とからなり、該カルボン酸成分が、
(I)2,6−ナフタレンジカルボン酸化合物、
(II)3つ以上のカルボキシル基を有する化合物、及び
(III)以下の(式1)で表されるスルホン酸塩基を含有するカルボン酸化合物
を構成成分として含み、該グリコール成分が、
(IV)炭素数2〜10のアルキレングリコール、
(V)ジエチレングリコール、及び
(VI)ポリアルキレングリコール
を構成成分として含む構造を有している。ポリエーテルエステル(B)は、(II)成分が共重合されているので、分岐構造を有しており、エステルを形成する官能基を1つ有する(III)成分がポリマー末端に共重合しているポリマーである。
【0018】
(式1)
【化2】
(式中、Xは炭素数6〜20の2価の芳香族基又は炭素数1〜8のアルキレン基を示し、Mは金属イオン、テトラアルキルホスホニウムイオン又はテトラアルキルアンモニウムイオンを示す)
【0019】
本発明に使用されるポリエーテルエステル(B)において、全カルボン酸成分を100モル%、全グリコール成分を100モル%としたとき、前記(I)〜(VI)各成分の共重合量(モル%)が、以下の(式2)で表される関係を満足する。これにより、該ポリエーテルエステル(B)をポリカーボネート樹脂(A)に混練した際に、表面抵抗値、全光線透過率、耐熱性、耐衝撃性の目標値を達成することができる。
【0020】
(式2)
(I)/(II)/(III)=55〜75/5〜15/20〜30、かつ、
(IV)/(V)/(VI)=82〜98/0〜15/1.5〜5
【0021】
ポリエーテルエステル(B)は、分岐構造及び末端が封鎖された構造を有するので、該ポリエーテルエステル(B)中の全カルボン酸成分と全グリコール成分との関係は、等モル量でない場合がある。ポリエーテルエステル(B)中の全カルボン酸成分と全グリコール成分との関係(絶対量)は、全カルボン酸成分100モル%に対して、全グリコール成分105〜130モル%程度となる場合が多い。
【0022】
ポリエーテルエステル(B)のカルボン酸成分における(I)成分としては、2,6−ナフタレンジカルボン酸や、そのアルキルエステルが挙げられるが、入手が容易であるという点から、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルが好ましい。
【0023】
(II)成分としては、以下で説明する屈折率を満足するためには、芳香族環を含む化合物であることが好ましい。具体的には、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸が好ましい成分として挙げられる。重合によりポリエーテルエステル(B)を製造する際に用いる原料化合物としては、入手が容易であるという点から、無水トリメリット酸が好ましい。
【0024】
(III)成分としては、以下で説明する屈折率を満足するためには、芳香族環を含む化合物であることが好ましい。具体的には、m−スルホ安息香酸ナトリウム、o−スルホ安息香酸ナトリウム、p−スルホ安息香酸ナトリウムが好ましい成分として挙げられる。重合によりポリエーテルエステル(B)を製造する際に用いる原料化合物としては、入手が容易であるという点から、m−スルホ安息香酸ナトリウムが好ましい。m−スルホ安息香酸ナトリウムは、以下の(式3)で表される構造を有する化合物である。
【0025】
(式3)
【化3】
【0026】
ポリエーテルエステル(B)のカルボン酸成分は、(I)成分、(II)成分、及び(III)成分の合計で100モル%となることが好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば全カルボン酸成分中、5モル%以下の範囲で、他のカルボン酸成分を含んでいてもよい。
【0027】
ポリエーテルエステル(B)のグリコール成分における(IV)成分としては、直鎖状のアルキレングリコールが好ましい。この中でも、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、及び1,10−デカンジオールから選ばれる1種類以上であることがより好ましく、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、及び1,6−ヘキサンジオールから選ばれる1種類以上であることがさらに好ましい。
【0028】
(V)成分としては、ジエチレングリコールを原料化合物として用いてもよく、(IV)成分としてエチレングリコールを用いる場合には、重合中にエチレングリコールが縮合して副生したジエチレングリコールであってもよい。
【0029】
(VI)成分としては、数平均分子量が500〜6000のポリアルキレングリコールが好ましい。ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、及びこれらの共重合体が挙げられるが、この中でも、ポリエチレングリコールが好ましい。特に、数平均分子量が500〜6000のポリエチレングリコールを好適に使用することができ、数平均分子量が3200〜4500のポリエチレングリコールをより好適に使用することができる。
【0030】
ポリエーテルエステル(B)のグリコール成分は、(IV)成分、(V)成分、及び(VI)成分の合計で100モル%となることが好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば全グリコール成分中、5モル%以下の範囲で、他のグリコール成分を含んでいてもよい。
【0031】
前記のとおり、ポリエーテルエステル(B)において、全カルボン酸成分を100モル%、全グリコール成分を100モル%としたとき、前記(I)〜(VI)各成分の共重合量(モル%)は、以下の(式2)で表される関係を満足し、さらには以下の(式2’)で表される関係を満足することが好ましい。
【0032】
(式2)
(I)/(II)/(III)=55〜75/5〜15/20〜30、かつ、
(IV)/(V)/(VI)=82〜98/0〜15/1.5〜5
(式2’)
(I)/(II)/(III)=60〜70/7〜14/20〜27、かつ、
(IV)/(V)/(VI)=84〜98/0〜14/1.5〜4
【0033】
なお、(IV)成分が1,4−ブタンジオールであるグリコール成分の組成(a)、及び(IV)成分がエチレングリコールと1,6−ヘキサンジオールとであるグリコール成分の組成(b)が特に好ましく、各々の組成において、各成分の共重合量は、以下の関係を満足することが好ましい。
【0034】
前記組成(a)の場合、(IV)〜(VI)各成分の共重合量(モル%)は、以下の関係を満足することが好ましい。
(IV)/(V)/(VI)=96〜98/0/2〜4
【0035】
前記組成(b)の場合、(IV)〜(VI)各成分の共重合量(モル%)は、以下の関係を満足することが好ましい。
(IV)/(V)/(VI)=84〜88/10〜14/2〜4
【0036】
また、エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、(V)成分、及び(VI)成分の共重合量(モル%)は、以下の関係を満足することが好ましい。
エチレングリコール/1,6−ヘキサンジオール/(V)/(VI)
=67〜71/15〜19/10〜14/2〜4
【0037】
ポリエーテルエステル(B)の還元粘度は、通常、0.30dl/g以上、さらには0.35dl/g以上であることが好ましく、0.60dl/g以下、さらには0.55dl/g以下、特に0.50dl/g以下であることが好ましい。還元粘度が0.30dl/g未満の場合は、溶融粘度が低く、ポリカーボネート樹脂(A)との溶融粘度差が大きくなり、ポリカーボネート樹脂組成物の透明性の低下やブリードアウトの懸念があるので好ましくない。還元粘度が0.60dl/gを超える場合は、ポリエーテルエステル(B)を製造する際の原料化合物の重合時、(II)成分として無水トリメリット酸を用いていると、該無水トリメリット酸の影響で三次元架橋が生じるおそれがあるので好ましくない。重合時に三次元架橋が生じなくても、還元粘度が0.60dl/gを超えるポリエーテルエステル(B)は、ポリカーボネート樹脂組成物を製造する際の熱履歴で三次元架橋が生じる可能性があるので、やはり好ましくない。なお、還元粘度0.30dl/gは、数平均分子量で3000程度となる。
【0038】
ポリエーテルエステル(B)の屈折率は、1.570〜1.585の範囲、さらには1.575〜1.579の範囲であることが好ましい。屈折率が前記範囲を外れたポリエーテルエステル(B)を用いると、ポリカーボネート樹脂(A)との屈折率差が大きいので、ポリカーボネート樹脂組成物に充分な透明性が付与されない場合がある。
【0039】
一般的に、ポリエステル樹脂は、オリゴマー調製後、減圧下で重合を行う。本発明に使用されるポリエーテルエステル(B)を製造する際のオリゴマー調製法としては、常圧反応法、加圧反応法等が挙げられる。(IV)成分として1,4−ブタンジオールを用いる際は、加圧反応法を適用するとテトラヒドロフランへの副生が促進されるので、常圧反応法を適用することが好ましい。また1,4−ブタンジオールは、プロトンによりテトラヒドロフランへの副生が促進されるので、(IV)成分として1,4−ブタンジオールを用い、(III)成分としてm−スルホ安息香酸ナトリウムを用いる際は、プロトンソースとなるm−スルホ安息香酸ナトリウムを二段階で添加することが好ましい。具体的には、共重合に供するm−スルホ安息香酸ナトリウムの1/2量を仕込み時に添加し、オリゴマー調製途中で残りの1/2量を添加する方法等が挙げられる。
【0040】
ポリエーテルエステル(B)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して5〜40重量部である。ポリエーテルエステル(B)の含有量が5重量部未満では、ポリカーボネート樹脂組成物において持続的な帯電防止性が認められない。ポリエーテルエステル(B)の含有量が40重量部を超えると、ポリカーボネート樹脂組成物の耐熱性が低下する。ポリエーテルエステル(B)の好適な含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して10〜30重量部である。
【0041】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、有機金属塩化合物(C)を含有する。本発明に使用される有機金属塩化合物(C)としては、例えば、芳香族スルホン酸の金属塩、パーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩等が挙げられ、好適には、p−トルエンスルホン酸の金属塩、4−メチル−N−(4−メチルフェニル)スルフォニル−ベンゼンスルフォンアミドのカリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、ジフェニルスルホン−3−3’−ジスルホン酸カリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム等を使用することができる。この中でも、p−トルエンスルホン酸の金属塩、例えばp−トルエンスルホン酸ナトリウムが、ポリカーボネート樹脂組成物の透明性が向上し、コストパフォーマンスに優れる点で特に好適である。
【0042】
有機金属塩化合物(C)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0.05〜1.0重量部である。有機金属塩化合物(C)の含有量が0.05重量部未満では、ポリカーボネート樹脂組成物の帯電防止性の改良効果が認められない。有機金属塩化合物(C)の含有量が1.0重量部を超えると、熱安定性が悪くなり、その結果、ポリカーボネート樹脂組成物の耐衝撃性が低下する。有機金属塩化合物(C)の好適な含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0.15〜0.8重量部である。
【0043】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて前記ポリカーボネート樹脂(A)、ポリエーテルエステル(B)、及び有機金属塩化合物(C)以外の公知の各種添加剤、ポリマー等を添加することができる。
【0044】
各種添加剤、ポリマー等としては、例えば、耐光安定剤;蛍光増白剤;酸化防止剤;例えばパラフィンワックス、n−ブチルステアレート、合成蜜蝋、天然蜜蝋、グリセリンモノエステル、モンタン酸ワックス、ポリエチレンワックス、ペンタエリスリトールテトラステアレート等の滑剤;例えば酸化チタン、カーボンブラック、染料等の着色剤;炭酸カルシウム、クレー、シリカ、ガラス繊維、ガラス球、ガラスフレーク、カーボン繊維、タルク、マイカ、各種ウィスカー類等の充填剤;流動性改良剤;臭素系化合物、リン系化合物、シリコーン系化合物等の難燃剤;エポキシ化大豆油、流動パラフィン等の展着剤;他の熱可塑性樹脂;例えば、ポリブタジエン、ポリアクリル酸エステル、エチレン−プロピレン系ゴム等のゴムに、メタアクリル酸エステル、スチレン、アクリロニトリル等の化合物をグラフト重合してなるゴム強化樹脂等の耐衝撃改良剤等が挙げられる。
【0045】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の構成成分であるポリカーボネート樹脂(A)、ポリエーテルエステル(B)、及び有機金属塩化合物(C)の配合方法については特に制限はないが、例えば、タンブラー、リボンブレンダー、高速ミキサー等により一括混合した後、混合物を通常の一軸押出機又は二軸押出機を用いて溶融混練し、ペレット化させる方法、あるいは、各々の成分を別々に計量し、複数の供給装置から押出機内へ投入して、溶融混合する方法、さらには、ポリカーボネート樹脂(A)に有機金属塩化合物(C)を高濃度に配合し、一度溶融混合してペレット化し、マスターバッチとした後、該マスターバッチとポリエーテルエステル(B)とを、所望の比率により混合する方法、等を採用することができる。そして、これらの成分を溶融混合する際の、押出機に投入する位置、押出温度、スクリュー回転数、供給量等、状況に応じて任意の条件を選択し、ペレット化することができる。また、前記マスターバッチとポリエーテルエステル(B)とを、所望の比率により乾式混合した後、成形加工機に直接投入し、成形品とすることも可能である。
【0046】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、通常、任意の形状に成形して成形品(樹脂組成物成形体)として用いる。この成形品の形状、寸法等に制限はなく、その成形品の用途に応じて任意に設定すればよい。成形品の例としては、例えば、IC関連製品の生産ライン用の部材、耐熱性及び持続的な帯電防止性が求められるパネル部材等が挙げられる。
【0047】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物を成形する方法としては、特に制限はなく、ポリカーボネート樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用することができる。例えば、公知の射出成形法、押出成形法、射出・圧縮成形法等を採用することができる。
【0048】
かくして得られる本発明の成形品は、前記したように、ポリカーボネート樹脂の優れた性質である耐衝撃性等を損なうことなく、耐熱性及び持続的な帯電防止性を有する実用的な成形品として用いることができる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。ただし本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲においては、任意に変更乃至改変して実施することができる。なお、特に断りのない限り、実施例中の「%」及び「部」は、それぞれ重量基準に基づく「重量%」及び「重量部」を示す。
【0050】
実施例及び比較例に用いた各成分は以下のとおりである。
【0051】
<ポリカーボネート樹脂(A)>(以下、「PC」という)
・ビスフェノールAとホスゲンとから合成されたポリカーボネート樹脂
・住化スタイロンポリカーボネート(株)製、カリバー200−13
・粘度平均分子量:21500
・屈折率:1.584
【0052】
<ポリエーテルエステル(B)1>(以下、「PEE1」という)
・以下の共重合組成のポリエーテルエステル
(カルボン酸成分)
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル/無水トリメリット酸/m−スルホ安息香酸ナトリウム=65/11/24(モル%)
(グリコール成分)
1,4−ブタンジオール/ポリエチレングリコール(#4000、製造者測定の水酸基価から算出される数平均分子量3500)=97/3(モル%)
・全カルボン酸成分100モル%に対して、全グリコール成分112モル%
・屈折率:1.578
・還元粘度:0.45dl/g
【0053】
<PEE1の合成>
攪拌機付きステンレススチール製オートクレーブ(容量2L)に、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル220.9g(0.90モル)、無水トリメリット酸25.6g(0.13モル)、m−スルホ安息香酸ナトリウム32.8g(0.15モル)、ポリエチレングリコール139.7g(0.04モル)及び1,4−ブタンジオール479.4g(5.3モル)と、触媒としてテトラ−n−ブトキシチタン0.6gと、安定剤としてIrganox1330(BASF社製、Irganoxは登録商標)1gとを、150℃で仕込み、200℃まで昇温しながら、常圧下で120分間反応を行った。200℃で、m−スルホ安息香酸ナトリウム32.8g(0.15モル)、1,4−ブタンジオール47.9g(0.53モル)及びテトラ−n−ブトキシチタン0.45gを添加し、再度220℃まで昇温しながら、常圧下で60分間反応を行い、オリゴマー混合物を得た。
【0054】
その後、60分間かけて240℃まで昇温しながら、反応系の圧力を徐々に下げて13.3Pa(0.1Torr)とし、さらに240℃、13.3Paの条件下でポリエステル重縮合反応を行った。放圧に続き、微加圧下の樹脂を冷水にストランド状に吐出して急冷し、その後20秒間冷水中で保持した後、カッティングして、長さ約3mm、直径約2mmのシリンダー形状を有するポリエーテルエステルのペレットを得た。
【0055】
得られたポリエーテルエステルの組成及び組成比の決定は、NMR装置(VARIAN社製、500−MHz)を用い、共鳴周波数500MHzでのH−NMR測定(プロトン型核磁気共鳴分光測定)にて行った。なお、溶媒には重クロロホルム/トリフルオロ酢酸=85/15(重量比)を用いた。
【0056】
屈折率は、ヒートプレス(テスター産業(株)製)にて0.1mm厚程度のサンプルを作製し、プリズムカプラ(Metricon社製、Model 2010、波長:632.2nm(He−Ne)、使用プリズム:200−P−4(Prism N=2.15988)、測定タイプ:Bulk/substrate)を用いて測定した。得られたポリエーテルエステルは、イオン性モノマーであるm−スルホ安息香酸ナトリウムが共重合されているので、ヒートプレス後の放置時間、測定時間に水分を吸収する。よって、屈折率測定後、カールフィッシャー水分率計(温度:150℃)で水分量を確認し、水分率を0に外挿した値を屈折率とした。
【0057】
還元粘度は、得られたポリエーテルエステル0.05gを混合溶媒(フェノール/テトラクロロエタン(質量比)=6/4)25cmに溶解し、ウベローデ粘度管を用いて30℃で測定した。
【0058】
<ポリエーテルエステル(B)2>(以下、「PEE2」という)
・以下の共重合組成のポリエーテルエステル
(カルボン酸成分)
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル/無水トリメリット酸/m−スルホ安息香酸ナトリウム=69/9/22(モル%)
(グリコール成分)
1,6−ヘキサンジオール/エチレングリコール/ジエチレングリコール/ポリエチレングリコール(#4000、製造者測定の水酸基価から算出される数平均分子量3500)=69/17/12/2(モル%)
・全カルボン酸成分100モル%に対して、全グリコール成分112モル%
・屈折率:1.576
・還元粘度:0.43dl/g
【0059】
<PEE2の合成>
攪拌機付きステンレススチール製オートクレーブ(容量2L)に、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル229.9g(0.94モル)、無水トリメリット酸17.8g(0.09モル)、m−スルホ安息香酸ナトリウム65.4g(0.29モル)、ポリエチレングリコール116.0g(0.033モル)、1,6−ヘキサンジオール125.3g(1.1モル)及びエチレングリコール113.14g(1.82モル)と、触媒としてテトラ−n−ブトキシチタン0.45gと、安定剤としてIrganox1330(BASF社製、Irganoxは登録商標)1gとを、150℃で仕込み、200℃まで昇温しながら、常圧下で120分間反応を行った。200℃でテトラ−n−ブトキシチタン0.45gを添加し、再度220℃まで昇温しながら、常圧下で60分間反応を行い、オリゴマー混合物を得た。
【0060】
その後、60分間かけて240℃まで昇温しながら、反応系の圧力を徐々に下げて13.3Pa(0.1Torr)とし、さらに240℃、13.3Paの条件下でポリエステル重縮合反応を行った。放圧に続き、微加圧下の樹脂を冷水にストランド状に吐出して急冷し、その後20秒間冷水中で保持した後、カッティングして、長さ約3mm、直径約2mmのシリンダー形状を有するポリエーテルエステルのペレットを得た。
【0061】
得られたポリエーテルエステルの組成及び組成比の決定は、前記PEE1と同様にして行った。なお、ジエチレングリコールは、エチレングリコールの縮合により副生したものであり、これが他の成分と共重合した。また、屈折率及び還元粘度も、前記PEE1と同様にして求めた。
【0062】
<有機金属塩化合物(C)>(以下、「金属塩」という)
・p−トルエンスルホン酸ナトリウム
【0063】
<ポリカーボネート樹脂組成物のペレットの製造>(実施例1〜6及び比較例1〜4)
前記各成分を、後の表1に示す配合比率にてタンブラーに投入し、10分間乾式混合した後、二軸押出機((株)日本製鋼所製、TEX30α、軸直径:30mmφ、L/D=41)を用い、溶融温度230℃にて混錬し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
【0064】
<試験片の作製>
得られたペレットについて、それぞれ110℃×4時間の条件にて(ただし、比較例2は、80℃×4時間の条件を採用)事前に乾燥を行った後、射出成形機((株)日本製鋼所製、J100E2P)を用い、シリンダー設定温度260℃の条件にて、平板試験片(縦50mm、横50mm、厚み2mm)を作製した。また、シリンダー設定温度250℃の条件にて、JIS K 7139「プラスチック−試験片」にて規定の方法に準拠してダンベル試験片を作製後、2次加工により荷重たわみ試験用の試験片(縦80mm、横10mm、厚み4mm)及びノッチ付きシャルピー衝撃試験用の試験片(縦80mm、横10mm、厚み4mm)を作製した。
【0065】
以下、各評価項目及び測定方法について説明する。評価結果は、後の表1に示す。
【0066】
1.帯電防止性
平板試験片を水道水で1分間水洗し、23℃、相対湿度50%の条件で24時間状態調節をした後、高抵抗率計((株)三菱化学アナリテック製、ハイレスタUP)を使用し、印加電圧1000V、サンプリング時間10秒の条件で表面固有抵抗を測定した。帯電防止性の評価基準は以下のとおりである。
(評価基準)
良好(○):表面固有抵抗が1×1013Ω/□未満の場合
不良(×):表面固有抵抗が1×1013Ω/□以上の場合
【0067】
2.耐熱性
荷重たわみ試験用の試験片を用い、HDT試験装置((株)東洋精機製作所製、HDT Tester)により、ISO 75−2「Plastics -- Determination of temperature of deflection under load -- Part 2: Plastics and ebonite」にて規定の方法に準拠して荷重たわみ温度を測定した。耐熱性の評価基準は以下のとおりである。
(評価基準)
良好(○):荷重たわみ温度が105℃以上の場合
不良(×):荷重たわみ温度が105℃未満の場合
【0068】
3.耐衝撃性
ノッチ付きシャルピー衝撃試験用の試験片を用い、シャルピー衝撃試験装置((株)東洋精機製作所製、DIGITAL IMPACT TESTER)により、ISO 179−1、2「Plastics -- Determination of Charpy impact properties -- Part 1: Non-instrumented impact test, Part 2: Instrumented impact test」にて規定の方法に準拠してノッチ付きシャルピー衝撃強さを測定した。耐衝撃性の評価基準は以下のとおりである。
(評価基準)
良好(○):ノッチ付きシャルピー衝撃強さが10kJ/m以上の場合
不良(×):ノッチ付きシャルピー衝撃強さが10kJ/m未満の場合
【0069】
4.総合判定
帯電防止性、耐熱性及び耐衝撃性の評価に基づいて判定した。評価基準は以下のとおりである。
(評価基準)
良好(○):全て良好である場合
不良(×):1つでも不良がある場合
【0070】
【表1】
【0071】
表1に示すとおり、本発明の構成を満足する場合(実施例1〜6)には、持続的な帯電防止性、耐熱性及び耐衝撃性の全てにおいて充分な性能を有していた。
【0072】
一方、本発明の構成を満足しない場合(比較例1〜4)には、いずれの場合も何らかの欠点を有していた。
【0073】
比較例1は、ポリエーテルエステル(B)(PEE1)の含有量が規定量よりも少ない場合であり、耐熱性及び耐衝撃性は満足するものの、表面固有抵抗が大きく、帯電防止性に劣っていた。
【0074】
比較例2は、ポリエーテルエステル(B)(PEE1)の含有量が規定量よりも多い場合であり、帯電防止性及び耐衝撃性は満足するものの、荷重たわみ温度が低く、耐熱性に劣っていた。
【0075】
比較例3は、有機金属塩化合物(C)の含有量が規定量よりも少ない場合であり、耐熱性及び耐衝撃性は満足するものの、表面固有抵抗が大きく、帯電防止性に劣っていた。
【0076】
比較例4は、有機金属塩化合物(C)の含有量が規定量よりも多い場合であり、帯電防止性及び耐熱性は満足するものの、ノッチ付きシャルピー衝撃強さが小さく、耐衝撃性に劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物は、水と接触する環境下での使用、製品の繰り返し使用や長期間の使用等が可能である。また、本発明の帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物は、耐衝撃性を必要とし、かつ埃の付着が敬遠されるIC関連製品の生産ライン用の部材や、耐熱性及び持続的な帯電防止性が求められるパネル部材等に好適に用いられ、その実用上の利用価値は極めて高い。