特許第6263464号(P6263464)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263464
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】エレベーター装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 7/06 20060101AFI20180104BHJP
   B66B 7/02 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   B66B7/06 N
   B66B7/06 G
   B66B7/02 Z
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-215239(P2014-215239)
(22)【出願日】2014年10月22日
(65)【公開番号】特開2016-79024(P2016-79024A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】横溝 大樹
【審査官】 三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−252932(JP,A)
【文献】 特開2009−137711(JP,A)
【文献】 特開2011−026021(JP,A)
【文献】 実公昭63−026377(JP,Y2)
【文献】 実公昭55−051727(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/00−7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路と、前記昇降路に設けられた乗りかごと、釣り合いおもりと、前記乗りかご及び前記釣り合いおもりに接続された主ロープと、前記主ロープが巻きかけられたシーブを有する巻上機と、前記昇降路の垂直方向に延び、前記乗りかごの昇降を案内するガイドレールと、を有するエレベーター装置において、
長手部材であって前記ガイドレールに一端が固定され他端が前記昇降路の昇降路壁に向かうように設置されたブラケットと、前記ブラケットの前記他端に固定され前記ブラケットと直交し、保護線支持部を有する直交部材と、前記ブラケットの前記ガイドレール側の端部及び前記昇降路壁に固定され前記保護線支持部に支持された保護線と、を有することを特徴とするエレベーター装置。
【請求項2】
前記直交部材の前記保護線支持部と前記昇降路壁とを結ぶ部分の前記保護線は、前記ブラケットと平行であることを特徴とする請求項1記載のエレベーター装置。
【請求項3】
前記昇降路壁は、前記乗りかごに設けられたかごドアに対向する前側壁を有し、
前記保護線は、一端が前記ブラケットの前記ガイドレール側の端部に固定され、他端が前記前側壁に固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のエレベーター装置。
【請求項4】
前記乗りかごは、前記かごドアの開閉方向に突出した突起部を有し、
前記保護線は、前記突起部を回避するよう引き回されていることを特徴とする請求項3記載のエレベーター装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーター装置に関し、特に、昇降路内の長尺物の引掛りを防止することが可能なエレベーター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターの昇降路内にあっては、複数のブラケットが昇降体を案内するガイドレールに取付けられていると共に、このブラケットに、位置検出スイッチ、インダクタープレート、制御ケーブル等の機器が設置されている。また、エレベーターには、乗りかご及び釣合おもりを吊持する主ロープ、乗りかごに設けられたケーブル(テールコード等)、及び調速機に備えられる調速機ロープ(ガバナーロープ)等の長尺物があり、地震等が発生した際、これらの長尺物に揺れが生じてブラケットに引掛り、機器や長尺物を損傷する恐れがある。この対策として、従来、長尺物の引掛りを防止するためにブラケットと昇降路壁との間に保護線を張っている。
【0003】
また、エレベーターの長尺物引掛かり防止装置として、例えば特許文献1には、エレベーターの昇降路壁に連結される第1端と、昇降路壁から昇降路内に突出した機器取付腕に連結される第2端とを持ち、上記昇降路壁と上記機器取付腕との間をエレベーターの可動ケーブルに対して閉塞して上記可動ケーブルの上記機器取付腕への引掛りを防ぐエレベーターのケーブル引掛り防止装置において、上記第1端と上記第2端との間に互いにスライド式に摺動可能に嵌合した摺動嵌合部を持ち、上記第1端と上記第2端との間の距離が可変にされていることを特徴とするエレベーターのケーブル引掛り防止装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011‐26021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述したような従来技術では、ブラケット(取付腕)の延伸方向に乗りかごからの出入口機器等の突起物がある場合、保護線等をブラケットの延伸方向に張ることができず、突起物を避けるために斜めに(迂回して)張ることになる。この場合、この保護線等の張力によりブラケットにたわみが発生し、次のような問題があった。
【0006】
ブラケットに取付ける機器の1つであるインダクタープレートは、乗りかごに取付けられた位置検出器がインダクタープレートを感知することで、乗りかごの位置を検出している。しかし、昇降路を上方から見た垂直投影において、インダクタープレート感知時の位置検出器とインダクタープレートの相対位置は決まっており、位置がずれると位置検出器はインダクタープレートを感知しない。また、インダクタープレートは、昇降路内に複数設置されており、全てのインダクタープレートを乗りかごに取付けられた位置検出器と同じ相対位置に設置しなければならない。よって、保護線等の張力によりブラケットにたわみが発生し、このブラケットに取付けたインダクタープレートの位置がずれる場合、全てのブラケットに同じたわみを発生させなければならないが、この作業は非常に困難である。
【0007】
本発明は、前述した従来技術の実状からなされたもので、その目的は、ブラケットにたわみを極力発生させずに保護線を張ることができるエレベーター装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、昇降路と、前記昇降路に設けられた乗りかごと、釣り合いおもりと、前記乗りかご及び前記釣り合いおもりに接続された主ロープと、前記主ロープが巻きかけられたシーブを有する巻上機と、前記昇降路の垂直方向に延び、前記乗りかごの昇降を案内するガイドレールと、を有するエレベーター装置において、
長手部材であって前記ガイドレールに一端が固定され他端が前記昇降路の昇降路壁に向かうように設置されたブラケットと、前記ブラケットの前記他端に固定され前記ブラケットと直交し、保護線支持部を有する直交部材と、前記ブラケットの前記ガイドレール側の端部及び前記昇降路壁に固定され前記保護線支持部に支持された保護線と、を有することを特徴とするエレベーター装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ブラケットにたわみを極力発生させずに保護線を張ることができるエレベーター装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係るエレベーター装置を模式的に示す図である。
図2】本発明に係るエレベーター装置を模式的に示す上面図である。
図3図2の要部拡大上面図である。
図4】従来の保護線取付け構造を模式的に示す上面図である。
図5】乗りかごからの出入口機器等の突起物がある場合の従来の保護線取付け構造を模式的に示す上面図である。
図6】乗りかごに出入口機器等の突起物がある場合の本発明に係る保護線取付け構造を模式的に示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に示した実施例により説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は本発明に係るエレベーター装置を模式的に示す図であり、図2は本発明に係るエレベーター装置を模式的に示す上面図である。図1及び図2に示すように、本発明に係るエレベーター装置100は、昇降路壁1(前側壁1a、横側壁1b、後側壁1c(図2))により囲まれて形成される昇降路2内に、乗客を乗せる乗りかご3と、主ロープ31を介して乗りかご3と接続されたつり合いおもり4と、主ロープ31が巻きかけられたシーブ(図示せず)を有する巻上機32とを有する。さらに、昇降路2の昇降路壁1に設けたレール支持部材(図示せず)を介して昇降路2内に垂直方向に設置された左右一対のかご用ガイドレール(以下、ガイドレールとも称する)5と、昇降路壁1に設けたレール支持部材(図示せず)を介して昇降路2内に垂直方向に設置された左右一対のおもり用ガイドレール6とを備えている。乗りかご3は、かごドア33を有し、かごドア33は前側壁1aに対向する。
【0013】
そして、乗りかご3は、ガイドシュー(図示せず)を介してかご用ガイドレール5により案内されて上下方向に昇降移動すると共に、つり合いおもり4は、ガイドシュー(図示せず)を介しておもり用ガイドレール6により案内されて上下方向に昇降移動する。
【0014】
かご用ガイドレール5には、ガイドレール5に直交するように、ブラケット7a及び7bが支持されており、このブラケット7a及び7bには、昇降路2内に設けられる塔内機器(例えば、インダクタープレート8、調速機ロープ振れ止め9、制御ケーブルサポート10、金網11、制御箱12、及び位置検出スイッチ13等(図2))が取付けられている。本実施例では、ブラケット7aは、乗りかご3のかごドア33方向に延長された前側ブラケットであり、ブラケット7bは、乗りかご3のかごドア33と反対方向に延長された後側ブラケットである。
【0015】
また、本実施例では長尺物として、主ロープ31や、乗りかご3に設けられたテールコード17やケーブル(図示せず)及び調速機ロープ(図示せず)が昇降路2内に設けられている。
【0016】
さらに、昇降路壁1aとブラケット7a及び昇降路壁1cとブラケット7bとの間には、ブラケット7a及び7bに長尺物が引っ掛ることを防止するためにそれぞれ保護線14a及び14bが設けられている。
【0017】
図3図2におけるエレベーター装置の要部拡大上面図である。前側ブラケット7aの一端は、ガイドレール5に固定されており、他端(前側壁1a側の端部)は直交部材15を有する。直交部材15は、保護線支持部18を有し、前側ブラケット7aに直交するよう、横側壁1bに向かって延長された部材である。保護線14aの一端は、前側ブラケット17aの端部(ガイドレール5に固定されている側の端部)に固定され、前側壁1aに向かって、前側ブラケット7aの延伸方向に沿って引き回され、直交部材15の保護線支持部18に支持され(直交部材15に係止され)前側壁1aに固定される。
【0018】
上記のように保護線14aを張ることで、ブラケット7aに長尺物が引っ掛ることを防止することができる。すなわち、ブラケット7aと昇降路壁1aとの間から、長尺物がブラケット7aに回り込むことを防ぐことができる。また、上記態様によれば、ブラケット7aにたわみを極力発生させずに保護線14aを張ることができる。
【0019】
ここで、従来の態様について説明する。図4は従来の保護線取付け構造を模式的に示す上面図である。図4に示すように、保護線14aの一端がブラケット7aの端部(前側壁1a側)に固定され、他端が前側壁1aに固定されている。すなわち、保護線14aは、ブラケット7aから前側壁1aに直接設けられている。
【0020】
図5は乗りかご3に出入口機器等の突起物16がある場合の従来の保護線取付け構造を模式的に示す上面図である。乗りかご3のかごドア付近には、出入口機器等の突起物16がある。この場合、保護線14aは、この突起物16を避けるように張られる。ブラケット7aと保護線14aのなす角度θが、0°に近い角度で保護線14aを張れる場合は問題ない。しかし、図5のように、突起物16がある場合、θを0°に近い角度で保護線14aを張ることはできず、θが大きくなると保護線14aの張力T1の分力F1により、ブラケット7aにたわみが発生してしまう。
【0021】
図6は乗りかご3に出入口機器16等の突起物がある場合の本発明に係る保護線取付け構造を模式的に示す上面図である。本発明では、ブラケット7aの端部に直交部材15を設けることで、ブラケット7aと保護線14aのなす角度θは0°に近い角度にすることができる。すなわち、ブラケット7aと、保護線支持部18から昇降路壁1aの間の保護線14aとがほぼ平行となる。この結果、ブラケット7aのたわみを低減することができ、インダクタープレートの検出精度の低下等を防止することができる。直交部材15の長さを調節することにより、ブラケット7aと、保護線支持部18から昇降路壁1aの間の保護線14aのなす角度θを適宜調整することができる。なお、この場合でも保護線14aの張力T2の分力F2により直交部材15にたわみが発生し、ブラケット17aがわずかにたわむが、分力F2によるブラケット17aのたわみは上記F1と比較して無視できるほど小さいため、問題になることはない。
【0022】
上述した実施例では、乗りかご3がかごドア33側に突起物を有することが多い点を考慮して、前側ブラケット17aに直交部材15を設けたが、直交部材15を設ける位置に特に限定は無く、ブラケットから昇降路内の突起物を避けて昇降路壁へ保護線を張る必要がある場合に、どの位置のブラケットにも適用できることは言うまでもない。
【0023】
以上、本発明によれば、ブラケットにたわみを極力発生させずに保護線を張ることができるエレベーター装置を提供することができることが示された。
【0024】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記実施例は本発明を分かりやすく説明する為に詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0025】
1,1a,1b,1c…昇降路壁、2…昇降路、3…乗りかご、4…つり合いおもり、5…かご用ガイドレール、6…おもり用ガイドレール、7a,7b…ブラケット、8…インダクタープレート、9…調速機ロープ振れ止め、10…制御ケーブルサポート、11…金網、12…制御箱、13…位置検出スイッチ14a,14b,14c…保護線、15…直交部材、17…テールコード、18…保護線支持部、31…主ロープ、32…巻上機、33…かごドア、100…エレベーター装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6