(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記水分散性樹脂が:ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂、アクリル−シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリビニルアセテート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、不飽和カルボン酸系樹脂およびコポリマーからなる群から選択される、請求項1または2に記載のインク組成物。
共溶媒が:多価アルコール、多価アルコールアルキルエーテル、多価アルコールアリールエーテル、窒素含有複素環式化合物、アミド、アミン、アンモニウム化合物、硫黄含有化合物、プロピレンカーボネート、およびエチレンカーボネートからなる群から選択される水溶性有機溶媒を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のインク組成物。
前記インク組成物が、水溶性有機溶媒の混合物を含み、前記各水溶性有機溶媒が、前記インク組成物合計量に対して、1重量%〜50重量%の量で存在する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のインク組成物。
水溶性有機溶媒の前記混合物が、第1比誘電率を有する第1水溶性有機溶媒および第2比誘電率を有する第2水溶性有機溶媒を含み、ここで、前記第1比誘電率および前記第2比誘電率間の差は、5より大きい、請求項5に記載のインク組成物。
【発明を実施するための形態】
【0030】
詳細な説明
プリントアーチファクト
いかなる理論にも束縛されることを希望しないが、以下に記載するメカニズムは、前記プリントアーチファクト縞入り、合一、プディングおよびディウェッティングのそれぞれについての説明を提供するものであると考えられる。存在するプリントアーチファクトは、以下に例示するものに限定されない。
【0031】
縞入り
プリントされた画像における白色スポットまたは白色エリア/領域は、受信媒体上に到達した、吐出されたインク液滴が不十分に拡張する場合に生じ得る。受信媒体上でのインク液滴の拡張は、多くのインクおよび媒体特性の微妙なバランスにより決定され、その中でも、前記インクおよび前記プリント媒体の表面の表面張力の違いである。一般に、前記プリント媒体の表面のより低い表面張力を有するインクのインク液滴は、拡張挙動を示す。スキャンインクジェットプリントプロセスにおいては、白色スポットを、マルチパスプリント原理(multi−pass printing principle)を適用することによりマスクしてもよく、これにより、インク滴が、前記プリントエリアを越えたプリントステーションの第2またはさらなるパスにおいて、前記白色スポット中にプリントされてもよい。ページワイドアレイを使用する、高生産性シングルパスプリントプロセスにおいては、白色エリアをこの方法で補償することはできない。かかるプリントプロセスにおいては、前記白色スポットを規則的に配置して、特には媒体移動方向に配向させてもよく、これは前記プリント画像においては縞入りとして観察され得る。特にモノクロフルカバーエリアにおいては、暗色および明色(または白色であっても)の平行線が交互に並ぶこと(alternating)は、前記プリント画像上で目に見え得る。
【0032】
合一
合一は、プリント媒体の表面上で起こり得るプロセスであり、ここで、2個のまたはそれ以上のインク滴は、単一の滴に一体化される。このプロセスが、滴ずれ(displacement)することなく起こる場合には、表面上で、前記滴は、互いに結合してフィルムを創出するであろう。しかしながら、前記合一プロセスが滴ずれを伴う場合には、隣接したプリントされた滴の前記合一は、プディングと称されるプロセスである、液溜り(puddle)の形成につながるであろう。この場合には、前記プリントされたインク滴はもはや前記媒体表面上の意図した位置には存在しないが、それらは前記媒体表面を渡って隣接するインク滴との共通位置へ移動する。
【0033】
プディング
プディングは、2個の(またはそれ以上の)インク液滴が、前記インク液滴が互いに接触するように、互いに十分近くにプリントされる場合に起こり得る。結果として、液滴は、合一の間に互いに向かって移動し得る。前記液滴のずれは、通常対称的ではない。最後に噴射された液滴は、最も多く移動する傾向にある。このずれのメカニズムは、〜100μsの時間スケールで起こる。
【0034】
別の極めて速いメカニズムが、いわゆる前駆体フィルムにより起こっていて、これは前記プリントされたインク滴の外周でのインクフィルムであり、前記インク滴の前記プリント媒体との衝突の結果である。前記フィルムは、2個の(またはそれ以上の)隣接する滴間の結合ブリッジを表し、滴ずれを伴い得る前記インク液滴の合一を開始し得る。上記メカニズムと同様に、このメカニズムは〜100μsの時間スケールで起こる。
【0035】
プディングにつながるさらに別のメカニズムは、より複雑なメカニズムであり、インクの前記プリント媒体中への側方吸収を含む。インクの前記プリント媒体中への前記側方吸収により、前記プリント媒体により隣接するインク液滴間で結合ブリッジを形成し得、前記インク液滴は、前記インク液滴が互いに接触しないように、互いに十分に離れてプリントされる。このメカニズムは、合一につながり、最終的にはプディングにつながり得る。このメカニズムの前記時間スケールは、典型的には、〜1msのオーダーである。
【0036】
ディウェッティング
液溜りはまた、脱ぬれ(de−wetting)メカニズムにより形成され得る。このメカニズムにおいて、初めにインクフィルムが、インク滴の合一により形成され得る。前記インクフィルムの乾燥中に、インク構成成分の不均一な蒸発が生じ得、これにより、前記インクフィルムの局所表面エネルギーの変化をもたらし得る。結果として、前記フィルムは、(不規則に)割れ、ずれのようなマランゴニ流が生じ、最終的には、前記プリント媒体の表面上でのプディング構造をもたらし得る。このメカニズムは、典型的には、〜1sの時間スケールで起こる。
【0037】
インク組成物
本発明のインク組成物は、水分散性樹脂、水分散性着色剤、水、共溶媒、界面活性剤および任意に他の添加剤を含む。前記インクの構成成分を、次のセクションで詳細に説明する。
【0038】
水分散性樹脂(ラテックス樹脂)
本発明の前記インクジェットインクは、記録媒体への顔料固着性(fixability)の観点から、水分散性樹脂を含有する。前記水分散性樹脂としては、フィルム形成性に優れ、高撥水性、高耐水性、および高耐候性を有する、水分散性樹脂が、高耐水性および高画像濃度(高発色能)を有する画像の記録に役立つ。前記水分散性樹脂の例には、合成樹脂および天然ポリマー化合物が含まれる。
【0039】
前記合成樹脂の例には、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、フッ素系樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリビニルアセテート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、不飽和カルボン酸系樹脂および例えば、スチレン−アクリレートコポリマー樹脂、スチレン−ブタジエンコポリマー樹脂などのコポリマーが含まれる。
【0040】
前記天然ポリマー化合物の例には、セルロース、ロジン、および天然ゴムが含まれる。
【0041】
態様において、本発明に使用される前記水分散性樹脂は、例えば、カルボキシル基またはスルホン酸基などの水溶性官能基を有する樹脂製であってもよい。
【0042】
態様において、本発明の前記インク組成物は、前記水分散性樹脂の高速凝集効果を生み出す観点から、小さい解離速度を有するカルボキシル基を有する樹脂を含む。カルボキシル基は、pH変化により影響を受けやすいため、分散状態は容易に変化し、その凝集特性は高い。本発明の態様のインク組成物の使用に好適な樹脂の例は:アクリル樹脂、ビニルアセテート樹脂、スチレンブタジエン樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリルスチレン樹脂、ブタジエン樹脂およびスチレン樹脂、である。前記水分散性樹脂の前記樹脂構成成分については、分子中に、親水性部位および疎水性部位の両方を有するポリマーであることが好ましい。疎水性部分を有することにより、疎水性部分が、前記水分散性樹脂の内側に向かって整列され、親水性部位が、前記水分散性樹脂の外側に向かって効率的に整列されるであろうことが可能となる。結果として液体のpH変化に応答する分散状態の変化は、より大きくなり、前記インクの凝集が、より効率的に行われるであろう。
【0043】
商業的に入手可能な水分散性樹脂エマルションの例には:Joncryl 537および7640(スチレンアクリル樹脂エマルション、Johnson Polymer社製)、マイクロジェルE−1002およびE−5002(スチレンアクリル樹脂エマルション、日本ペイント社製)、Voncoat 4001(アクリル樹脂エマルション、大日本インキ化学工業社製)、Voncoat 5454(スチレンアクリル樹脂エマルション、大日本インキ化学工業社製)、SAE−1014 (スチレンアクリル樹脂エマルション、日本ゼオン社製)、Jurymer ET−410 (アクリル樹脂エマルション、日本化薬社製)、Aron HD−5およびA−104(アクリル樹脂エマルション、東亜合成社製)、Saibinol SK−200(アクリル樹脂エマルション、サイデン化学社製)、およびZaikthene L(アクリル樹脂エマルション、住友精化社製)、DSM Neoresinのアクリルコポリマーエマルション、例えば、NeoCryl製品ライン、特にアクリルスチレンコポリマーエマルションであるNeoCryl A−662、NeoCryl A−1131、NeoCryl A−2091、NeoCryl A−550、NeoCryl BT−101、NeoCryl SR−270、NeoCryl XK−52、NeoCryl XK−39、NeoCryl A−1044、NeoCryl A−1049、NeoCryl A−1110、NeoCryl A−1120、NeoCryl A−1127、NeoCryl A−2092、NeoCryl A−2099、NeoCryl A−308、NeoCryl A−45、NeoCryl A−615、NeoCryl BT−24、NeoCryl BT−26、NeoCryl BT−36、NeoCryl XK−15、NeoCryl X−151、NeoCryl XK−232、NeoCryl XK−234、NeoCryl XK−237、NeoCryl XK−238−NeoCryl XK−86、NeoCryl XK−90およびNeoCryl XK−95、が含まれる。しかしながら、前記水分散性樹脂は、これらの例に限定されない。
【0044】
前記フッ素系樹脂としては、フルオロオレフィン単位を有するフッ素系樹脂微粒子が好ましい。これらのうち、フルオロオレフィン単位およびビニルエーテル単位を含有する、フッ素含有樹脂微粒子が特に好ましい。前記フルオロオレフィン単位は特に限定されず、意図する用途に従って好適に選択されてもよい。それらの例には、−CF
2CF
2−、−CF
2CF(CF
3)−、および−CF
2CFCl−が含まれる。
【0045】
前記ビニルエーテル単位は、特に限定されず、意図する用途に従って好適に選択されてもよい。それらの例には、−C(R
a)HC(OR
b)−が含まれ;式中、R
aは、水素原子またはメチル基であり;および式中、R
bは、−CH
2R
C、−C
2H
4R
C、−C
3H
6R
c、−C
4H
8R
Cおよび−C
5H
10R
cからなる群から選択されてもよく、式中、R
cは、水素原子(−H)、ヒドロキシ基(−OH)またはカルボキシル基(−COOH)からなる群から選択される。
【0046】
フルオロオレフィン単位およびビニルエーテル単位を含有する、フッ素含有ビニルエーテル系樹脂微粒子としては、前記フルオロオレフィン単位および前記ビニルエーテル単位が交互にコポリマー化された、交互コポリマーが好ましい。かかるフッ素系樹脂微粒子としては、好適に合成された化合物を使用してもよく、商業的に入手可能な製品を使用してもよい。前記商業的に入手可能な製品の例には、大日本インキ化学工業社製のFLUONATE FEM−500およびFEM−600、DICGUARD F−52S、F−90、F−90M、F−90NおよびAQUAFURFURAN TE−5A;旭硝子社製のLUMIFLON FE4300、FE4500、FE4400、ASAHI GUARD AG−7105、AG−950、AG−7600、AG−7000、およびAG−1100が含まれる。
【0047】
前記水分散性樹脂を、ホモポリマー、コポリマーまたは複合樹脂の形態で使用してもよく、単一相構造またはコアシェル構造を有する全ての水分散性樹脂およびパワーフィードエマルション重合(power-feed emulsion polymerization)により調製されたものを、使用してもよい。
【0048】
前記水分散性樹脂としては、自身に親水性基を有することによりある程度の自己分散性を有する樹脂、ならびに自身に分散性はないが、界面活性剤および/または親水性基を有する別の樹脂の使用により分散性を付与された樹脂を使用することができる。これらの樹脂の中でも、ポリエステル樹脂またはポリウレタン樹脂のアイオノマーのエマルション重合または懸濁重合により得られた樹脂のエマルションが、最も好ましい。不飽和モノマーのエマルション重合の場合においては、樹脂分散体を、水エマルション中の前記モノマー中の分散されたモノマー相中での重合反応を開始することにより得る。重合開始剤、界面活性剤、連鎖移動剤、キレート剤およびpH調整剤を、水エマルション中の前記モノマーに添加してもよい。このように、前記樹脂構成成分を変更することができるので、水分散樹脂を容易に得ることができ、所望の特性を容易に得ることができる。
【0049】
前記不飽和モノマーとしては、不飽和カルボン酸、単官能基または多官能基の(メタ)アクリル酸エステルモノマー、(メタ)アクリル酸アミドモノマー、芳香族ビニルモノマー、ビニルシアノ化合物モノマー、ビニルモノマー、アリル化合物モノマー、オレフィンモノマー、ジエンモノマー、および不飽和炭素を有するオリゴマーを、単独でまたは組み合わせて使用してもよい。これらのモノマーを組み合わせることにより、特性または得られる樹脂を、柔軟に修飾することができる。得られた樹脂の前記特性をまた、重合反応またはグラフト反応により、オリゴマータイプの重合開始剤を使用して修飾することができる。
【0050】
前記不飽和カルボン酸の例には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸およびマレイン酸が含まれる。
【0051】
前記単官能基の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの例には、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、メタクリロキシエチルトリメチルアンモニウム塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、グリシジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、およびアクリロキシエチルトリメトキシアンモニウム塩が含まれる。
【0052】
前記多官能基の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの例には、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリブチレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’−ビス(4−アクリロキシプロピルオキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、ジトリメチロールテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、およびジペンタエリトリトールヘキサアクリレートが含まれる。
【0053】
前記(メタ)アクリル酸アミドモノマーの例には、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチアクリルアミド、メチレン−ビス−アクリルアミド、および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸が含まれる。前記芳香族ビニルモノマーの例には、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、4−t−ブチルスチレン、クロロスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン、およびジビニルベンゼンが含まれる。
【0054】
前記ビニルシアノ化合物モノマーの例には、アクリロニトリル、およびメタクリロニトリルが含まれる。
【0055】
前記ビニルモノマーの例には、ビニルアセテート、塩化ビニリデン、ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルピロリドン、ビニルスルホン酸またはその塩、ビニルトリメトキシシラン、およびビニルトリエトキシシランが含まれる。
【0056】
前記アリル化合物モノマーの例には、アリルスルホン酸またはその塩、アリルアミン、塩化アリル、ジアリルアミン、およびジアリルジメチルアンモニウム塩が含まれる。
【0057】
前記オレフィンモノマーの例には、エチレンおよびプロピレンが含まれる。前記ジエンモノマーの例には、ブタジエン、およびクロロプレンが含まれる。
【0058】
不飽和炭素を有する前記オリゴマーの例には、メタクリロイル基を有するスチレンオリゴマー、メタクリロイル基を有するスチレン−アクリロニトリルオリゴマー、メタクリロイル基を有するメチルメタクリレートオリゴマー、メタクリロイル基を有するジメチルシロキサンオリゴマー、およびアクリロイル基を有するポリエステルオリゴマーが含まれる。
【0059】
強アルカリまたは強酸の存在下で、前記水分散性樹脂は、例えば、未熟さもしくは制御不能な不安定化および/または膨張および/または例えば、分散破損(dispersion breakage)および加水分解などの分子鎖の破損に見舞われ得、これにより、前記水分散性樹脂のpHは、好ましくは、4〜12であり、特に、水分散性着色剤との混和性の観点から、6〜11であることがより好ましく、7〜9であることがなおより好ましい。
【0060】
前記水分散性樹脂は、好ましくは、前記水分散性着色剤を紙の表面上に定着する機能を有し、通常の温度で被膜を形成し、着色材料の固着性を改善する。したがって、前記水分散性樹脂の最低フィルム形成温度(MFFT)は、好ましくは、60℃またはそれより低く、より好ましくは、45℃またはそれより低く、なおより好ましくは、30℃またはそれより低い。代替的に、より高いMFFTを有する、典型的には100℃までのMFFTを有する水分散性樹脂を、可塑化共溶媒と組み合わせて、前記ラテックス組成物の前記MFFTを低下させるために使用してもよい。さらに、前記水分散性樹脂のガラス転移温度が、−40℃またはそれより低い場合には、前記樹脂被膜の増加した粘着性により印刷物中にタック(tuck)が生じ得る。よって、前記水分散性樹脂は、好ましくは、−30℃またはそれより高いガラス転移温度を有する。
【0061】
本発明の前記インク中で添加される前記水分散性樹脂の含量は、好ましくは、前記インクの合計重量に基づいて1〜40重量%であり、1.5〜30重量%であることがより好ましく、2〜25重量%であることがなおより好ましい。なおより好ましくは、前記インクジェットインク中に含有される前記水分散性樹脂の量は、固体含有量として、前記インク組成物合計量に対して、2.5〜15重量%であり、より好ましくは、3〜7重量%である。
【0062】
前記水分散性樹脂の平均粒径(D50)は、好ましくは、10nm〜1μmであり、より好ましくは、10〜500nmであり、なおより好ましくは、20〜200nmであり、特別に好ましくは、50〜200nmである。
【0063】
前記平均粒径(D50)が、10nm以下である場合には、前記画像品質を改善するかまたは前記画像の転移特性を強化する有意な効果は、凝集が生じた場合であっても十分に期待できない。
【0064】
前記水分散性樹脂の平均粒径(D50)は、前記分散液体の粘度に関係する。同一の組成を有する水分散性樹脂の場合には、粒径が小さくなるほど、同一の固体含有量では粘度がより高くなる。前記水分散性樹脂の前記粒径(D50)は、好ましくは、50nmまたはそれより大きく、得られたインクが過度に高い粘度を有することを防止する。
【0065】
前記水分散性樹脂の平均粒径(D50)が、1μmまたはそれより大きい場合には、前記インクジェットヘッドからの前記インクの吐出特性または前記インクの保管安定性が悪化する可能性がある。前記インク吐出安定性を損なわないために、前記水分散性樹脂の前記平均粒径(D50)は、好ましくは、200nmまたはそれより小さく、より好ましくは、150nmまたはそれより小さい。
【0066】
さらに、前記ポリマー粒子の粒径分布に具体的な制限は全くなく、前記ポリマー粒子は、幅広い粒径分布を有することができるか、または前記ポリマー粒子は、単一分散タイプの粒径分布を有することができる。
【0067】
態様において、本発明の前記インク組成物は、互いとの混合物中で(in admixture with each other)、上記で引用した合成樹脂、合成コポリマー樹脂および天然ポリマー化合物から選択される、2種または3種以上の水分散性樹脂を含む。
【0068】
水分散性着色剤
水分散性着色剤は、前記着色剤が水分散性である限り、顔料または顔料の混合物、染料または染料の混合物あるいは顔料および染料を含む混合物であってもよい。
【0069】
本発明の前記インクジェットインクにおいて、顔料は、耐候性の観点から水分散性着色剤として主として使用され、染料は、耐候性を損なわない範囲内で含有され得る。前記顔料は、特に限定されず、意図する用途に従って好適に選択されてもよい。
【0070】
本発明において使用可能な顔料の例には、いかなる限定もなく、一般に知られるものが含まれ、水分散性顔料または油分散性顔料のいずれかが使用可能である。例を挙げると、例えば、不溶性顔料またはレーキ顔料などの有機顔料、および例えば、カーボンブラックなどの無機顔料が、好ましく使用可能である。
【0071】
前記不溶性顔料の例は、特に限定されないが、好ましくは、アゾ、アゾメチン、メチン、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、キナクリドン、アントラキノン、ペリレン、インジゴ、キノフタロン、イソインドリノン、イソインドリン、アジン、オキサジン、チアジン、ジオキサジン、チアゾール、フタロシアニン、またはジケトピロロピロール染料である。例えば、黒色および色インクについての無機顔料および有機顔料を例示する。これらの顔料を、単独でまたは組み合わせて使用してもよい。前記無機顔料としては、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加えて、例えば、接触法、炉法(furnace method)および熱的方法などの既知の方法により製造されたカーボンブラックを使用することが可能である。
【0072】
前記有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、濃縮顔料、キレートアゾ顔料などを含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、およびキノフタロン顔料など)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックを使用することが可能である。これらの中で、特に、水との高い親和性を有する顔料が、好ましく使用される。
【0073】
好ましく使用可能な具体的顔料を、以下にリスト化する。
【0074】
マゼンタ色または赤色の顔料の例には:C.I. Pigment Red 1,C.I. Pigment Red 2,C.I. Pigment Red 3,C.I. Pigment Red 5,C.I. Pigment Red 6,C.I. Pigment Red 7,C.I. Pigment Red 15,C.I. Pigment Red 16,C.I. Pigment Red 17,C.I. Pigment Red 22,C.I. Pigment Red 23,C.I. Pigment Red 31,C.I. Pigment Red 38,C.I. Pigment Red 48:1,C.I. Pigment Red 48:2(パーマネントレッド 2B(Ca)),C.I. Pigment Red 48:3,C.I. Pigment Red 48:4,C.I. Pigment Red 49:1,C.I. Pigment Red 52:2;C.I. Pigment Red 53:1,C.I. Pigment Red 57:1(ブリリアントカーミン(Carmin) 6B),C.I. Pigment Red 60:1,C.I. Pigment Red 63:1,C.I. Pigment Red 64:1,C.I. Pigment Red 81.C.I. Pigment Red 83,C.I. Pigment Red 88,C.I. Pigment Red 101(ベンガラ),C.I. Pigment Red 104,C.I. Pigment Red 106,C.I. Pigment Red 108(カドミウムレッド),C.I. Pigment Red 112,C.I. Pigment Red 114,C.I. Pigment Red 122(キナクリドンマゼンタ),C.I. Pigment Red 123,C.I. Pigment Red 139,C.I. Pigment Red 44,C.I. Pigment Red 146,C.I. Pigment Red 149,C.I. Pigment Red 166,C.I. Pigment Red 168,C.I. Pigment Red 170,C.I. Pigment Red 172,C.I. Pigment Red 177,C.I. Pigment Red 178,C.I. Pigment Red 179,C.I. Pigment Red 185,C.I. Pigment Red 190,C.I. Pigment Red 193,C.I. Pigment Red 209,C.I. Pigment Red 219およびC.I. Pigment Red 222,C.I. Pigment Violet 1 (ローダミンレーキ),C.I. Pigment Violet 3,C.I. Pigment Violet 5:1,C.I. Pigment Violet 16,C.I. Pigment Violet 19,C.I. Pigment Violet 23およびC.I. Pigment Violet 38、が含まれる。
【0075】
オレンジ色または黄色の顔料の例には:C.I. Pigment Yellow 1,C.I. Pigment Yellow 3,C.I. Pigment Yellow 12,C.I. Pigment Yellow 13,C.I. Pigment Yellow 14,C.I. Pigment Yellow 15,C.I. Pigment Yellow 15:3,C.I. Pigment Yellow 17,C.I. Pigment Yellow 24,C.I. Pigment Yellow 34,C.I. Pigment Yellow 35,C.I. Pigment Yellow 37,C.I. Pigment Yellow 42(鉄黄),C.I. Pigment Yellow 53,C.I. Pigment Yellow 55,C.I. Pigment Yellow 74,C.I. Pigment Yellow 81,C.I. Pigment Yellow 83,C.I. Pigment Yellow 93,C.I. Pigment Yellow 94,C.I. Pigment Yellow 95,C.I. Pigment Yellow 97,C.I. Pigment Yellow 98,C.I. Pigment Yellow 100,C.I. Pigment Yellow 101,C.I. Pigment Yellow 104,C.I. Pigment Yellow 408,C.I. Pigment Yellow 109,C.I. Pigment Yellow 110,C.I. Pigment Yellow 117,C.I. Pigment Yellow 120,C.I. Pigment Yellow 128,C.I. Pigment Yellow 138,C.I. Pigment Yellow 150,C.I. Pigment Yellow 151,C.I. Pigment Yellow 153およびC.I. Pigment Yellow 183;C.I. Pigment Orange 5,C.I. Pigment Orange 13,C.I. Pigment Orange 16,C.I. Pigment Orange 17,C.I. Pigment Orange 31,C.I. Pigment Orange 34,C.I. Pigment Orange 36,C.I. Pigment Orange 43,およびC.I. Pigment Orange 51、が含まれる。
【0076】
緑色またはシアン色の顔料の例には:C.I. Pigment Blue 1,C.I. Pigment Blue 2,C.I. Pigment Blue 15,C.I. Pigment Blue 15:1,C.I. Pigment Blue 15:2,C.I. Pigment Blue 15:3(フタロシアニンブルー),C.I. Pigment Blue 16,C.I. Pigment Blue 17:1,C.I. Pigment Blue 56,C.I. Pigment Blue 60,C.I. Pigment Blue 63,C.I. Pigment Green 1,C.I. Pigment Green 4,C.I. Pigment Green 7,C.I. Pigment Green 8,C.I . Pigment Green 10,C.I. Pigment Green 17,C.I. Pigment Green 18およびC.I. Pigment Green 36、が含まれる。
【0077】
上記の顔料に加えて、赤色、緑色、青色または中間色が要求される場合には、以下の顔料を個別にまたはそれらを組み合わせて用いることが好ましい。用いることが可能な顔料の例には:C.I. Pigment Red 209,224,177,および194,C.I. Pigment Orange 43,C.I. Vat Violet 3,C.I. Pigment Violet 19,23,および37,C.I. Pigment Green 36,および7,C.I. Pigment Blue 15:6、が含まれる。
【0078】
さらに、黒色の顔料の例には:C.I. Pigment Black 1,C.I. Pigment Black 6,C.I. Pigment Black 7およびC.I. Pigment Black 11、が含まれる。本発明において使用可能な黒色インクの顔料の具体的な例には、カーボンブラック(例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラックおよびチャンネルブラックなど);(C.I. Pigment Black 7)または金属系顔料(例えば、銅、鉄(C.I. Pigment Black 11など)、および酸化チタン;ならびに有機顔料(例えば、アニリンブラック(C.I. Pigment Black 1)など)、が含まれる。
【0079】
態様において、前記着色剤は、水不溶性またはわずかに可溶性着色材料がアニオン性ポリマー樹脂でコーティングされた、ポリマーエマルションを含有する。
【0080】
この態様の前記水分散性顔料としては、顔料をアニオン性ポリマー樹脂でコーティングすることにより得られるポリマーエマルションが、好ましく使用される。顔料をアニオン性ポリマー樹脂でコーティングすることにより得られる前記ポリマーエマルションは、顔料がアニオン性ポリマー樹脂コーティング層によりカプセル化された、コアアンドシェル分散性顔料(core−and−shell dispersible pigment)とも称される、エマルションである。代替的に、顔料が、ポリマー樹脂分散粒子の表面上に吸着されてもよい。この態様における使用のための好適なアニオン性ポリマー樹脂の例には、ビニルポリマー、ポリエステルポリマー、およびポリウレタンポリマーが含まれる。例えば、日本国特許出願公開(JP−A)である、特開2000−53897号公報および特開2001−139849号公報に開示された前記アニオン性ポリマーを使用することができる。
【0081】
態様において、前記着色剤は、少なくとも1つの親水性基をその表面上に有し、分散剤の非存在下で水分散性を示す顔料(本明細書において、これ以降、他に「自己分散性顔料」と称する)を含有する。
【0082】
この態様の前記自己分散性顔料は、少なくとも1つの親水性基が、直接または別の原子団を介して、前記顔料の表面に結合するように前記表面が修飾された顔料である。前記表面修飾を達成するために、例えば、以下の方法:
− 特定の官能基(例えば、スルホン酸基およびカルボキシル基などの官能基)を、顔料の表面と化学的に結合させる方法;または
− 顔料の表面を、少なくとも1種の次亜ハロゲン酸(例えば、HOCl、HOF、HOI、HOBrなど)またはその塩を使用して、湿式酸化処理を施す方法、
を用いる。
【0083】
これらの方法のうち、カルボキシル基が、顔料の表面と結合し、前記顔料が水中に分散されている形態が好ましい。顔料の表面が修飾され、カルボキシル基が前記顔料の表面と結合しているので、分散安定性のみならず、より高いプリント品質を得ることができ、プリント後の記録媒体の耐水性がさらに改善される。
【0084】
前記自己分散性顔料としては、イオン性(例えば、カーボンブラックなど)を有する自己分散性顔料が好ましく、アニオン性親水性基を有するアニオン性(すなわち、負に帯電した)自己分散性カーボンブラックが、特に好ましい。
【0085】
前記アニオン性親水性基の例には、−COOM、−SO
3M、−PO
3HM、−PO
3M
2、−SO
2NH
2、および−SO
2NHCOR
d(式中、Mは、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表し;およびR
dは、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基または置換基を有してもよいナフチル基を表す)が含まれる。これらの中で、−COOMおよび−SO
3Mが、着色顔料の表面と結合するために好ましく使用される。ここで、親水性基における「M」としては、アルカリ金属または有機アンモニウムが使用される。前記アルカリ金属の例には、リチウム、ナトリウムおよびカリウムが含まれる。前記有機アンモニウムの例には、モノメチルアンモニウム〜トリメチルアンモニウム、モノエチルアンモニウム〜トリエチルアンモニウム、およびモノメタノールアンモニウム〜トリメタノールアンモニウムが含まれる。
【0086】
前記アニオン性着色顔料を得る方法としては、例を挙げると、−COONaを着色顔料の表面内に導入する方法として、着色顔料を次亜塩素酸ナトリウムで酸化処理する方法;着色顔料の表面をスルホン化する方法;および着色顔料を着色顔料の表面と反応させる方法、が例示され得る。
【0087】
前記親水性基を、別の原子団を介してカーボンブラックの表面と結合させてもよい。
【0088】
前記別の原子団の例には、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基または置換基を有してもよいナフチル基が含まれる。前記置換基の具体的な例には、−C
2H
4COOM(式中、Mは、アルカリ金属または第四級アンモニウムを表す)、および−PhSO
3M(式中、Phは、フェニル基を表し、Mは、アルカリ金属または第四級アンモニウムを表す)が含まれる。
【0089】
前記水分散性顔料の平均粒径(D50)は、好ましくは、0.01μm(10nm)〜0.25μm(250nm)であり、より好ましくは、20nm〜200nmであり、分散安定性および吐出信頼性の観点から、前記インクジェットインク中で40nm〜150nmであることが、なおより好ましい。
【0090】
前記インクジェットインク中に含有される前記水分散性顔料の量は、固体含量として、好ましくは、0.5重量%〜15重量%、より好ましくは、0.8重量%〜10重量%、およびなおより好ましくは、1重量%〜6重量%である。前記水分散性顔料の量が、0.5重量%より少ない場合には、前記インクの発色能および画像濃度が低下する。15重量%より多い場合には、好ましくないことに、前記インクの粘度が増加し、インク吐出安定性の低下を引き起こす。
【0091】
溶媒
水は環境に優しいものとして挙げられるため、望ましい溶媒である。本発明において、インク全体に対する水の含量は、好ましくは、20重量%〜80重量%である。水の含量が、30重量%〜75重量%であることがより好ましく、40重量%〜70重量%であることがなおより好ましい。
【0092】
共溶媒
前記インクの溶媒として、前記インクの吐出特性または前記インク物性を調整する目的のために、前記インクは、好ましくは、水に加えて、水溶性有機溶媒を含有する。本発明の効果が損なわれない限り、特に前記水溶性有機溶媒のタイプについての制限は全くない。
【0093】
前記水溶性有機溶媒の例には、多価アルコール、多価アルコールアルキルエーテル、多価アルコールアリールエーテル、窒素含有複素環式化合物、アミド、アミン、アンモニウム化合物、硫黄含有化合物、プロピレンカーボネート、およびエチレンカーボネートが含まれる。
【0094】
前記溶媒の例には:グリセリン(グリセロールとも称される)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、好ましくは200グラム/mol〜1000グラム/molの分子量を有するポリエチレングリコール(例えば、PEG 200、PEG 400、PEG 600、PEG 800、PEG 1000など)、グリセロールエトキシレート、ペタ(peta)エリトリトールエトキシレート、好ましくは200グラム/mol〜1000グラム/molの分子量を有するポリエチレングリコール(ジ)メチルエーテル、トリメチロールプロパン、ジグリセロール(ジグリセリン)、トリメチルグリシン(ベタイン)、N−メチルモルホリン N−酸化物、デカグリセロール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、2−ピロリジノン、ジメチルイミダゾリジノン、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテル、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオールおよび1,2−ブタンジオール、が含まれる。
【0095】
前記水溶性有機溶媒は、大気中に放置された場合でも大量の水を保持し、これにより、前記インク組成物に流動性を付与する。この場合において、前記水溶性有機溶媒として高平衡含水量を有する水溶性有機溶媒を使用することにより、前記インク組成物中の前記水が蒸発して平衡状態に達した場合であっても、前記インクの粘度の過剰な増加を防止することが可能となる。
【0096】
高平衡含水量を有する水溶性有機溶媒の例には、23℃および80%の相対湿度、RHの環境下で、30質量%またはそれより高い、より好ましくは、40%の平衡含水量を有する水溶性有機溶媒(本明細書において、これ以降、「水溶性有機溶媒A」と称する)が含まれる。用語「平衡含水量」は、水溶性有機溶媒および水の混合物が、特定の温度および特定の湿度で空中に置かれ、前記溶液中の水の蒸発および前記水溶性有機溶媒中への空中の水の吸収が平衡状態にある場合の含水量を意味する。より具体的には、平衡含水量を、塩化カリウム飽和水溶液およびデシケーターを使用して測定することができる。前記デシケーターの内部温度を、23℃±1℃に維持し、その内部湿度を、80%±3%に維持する。次いで、有機溶媒水溶液の各サンプルを、1g秤量し、ペトリ皿に注ぎ、前記ペトリ皿を前記デシケーター中に置き、前記サンプルの質量変化がなくなるまで保管し、前記サンプルの平衡含水量を、有機溶媒中に吸収された水の測定量に基づいて、以下の方程式により決定することができる。
平衡含水量(%)=有機溶媒中に吸収された水の量/(有機溶媒の量+有機溶媒中に吸収された水の量)×100
前記態様に好ましく使用される水溶性有機溶媒Aとしては、23℃および80% RHの環境下で、30質量%またはそれより高い平衡含水量を有する多価アルコールが例示される。
【0097】
かかる水溶性有機溶媒Aの具体的な例には:
1,2,3−ブタントリオール(33hPaの圧力で沸点(bp)175℃、平衡含水量(EWC)38質量%);1,2,4−ブタントリオール(24hPaでbp 190℃〜191℃、ewc 41質量%)、グリセリン(グリセロールとも称される)(bp 290℃、ewc 49質量%)、ジグリセリン(20hPaでbp 270℃、ewc 38質量%)、トリエチレングリコール(bp 285℃、ewc 39質量%)、テトラエチレングリコール(bp 324℃〜330℃、ewc 37質量%)、ジエチレングリコール(bp 245沸点℃、ewc 43質量%)、および1,3−ブタンジオール(bp 203℃〜204℃、ewc 35質量%)、が含まれる。
【0098】
これらの中で、グリセリンおよび1,3−ブタンジオールが、特に好ましく使用される。なぜなら、これらの材料が水を含有する場合には、これらの物質の粘度は減少し、前記顔料分散を、凝集させることなく安定的に維持することができるからである。前記水溶性有機溶媒Aを、使用される前記水溶性有機溶媒の合計量に対して、30重量%またはそれ以上の、好ましくは、40重量%またはそれ以上の、より好ましくは、50重量%またはそれ以上の量で使用することが望ましい。なぜなら、吐出安定性を保証することができ、得られたインクは、前記インク吐出装置を維持するために使用される器具への、廃棄インク(waste ink)の付着を防止することに優れているからである。
【0099】
前記インク組成物は、23℃および80% RHの環境下で、30質量%またはそれより低い平衡含水量を有する水溶性有機溶媒(本明細書において、これ以降、「水溶性有機溶媒B」と呼ぶ)を、前記水溶性有機溶媒Aの一部の代わりにまたは前記水溶性有機溶媒Aに加えて、含んでもよい。
【0100】
前記水溶性有機溶媒Bの例には、多価アルコール、多価アルコールアルキルエーテル、多価アルコールアリールエーテル、窒素含有複素環式化合物、アミド、アミン、硫黄含有化合物、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、および他の水溶性有機溶媒が含まれる。
【0101】
前記多価アルコールの具体的な例には、ジプロピレングリコール(bp 232℃)、1,5−ペンタンジオール(bp 242℃)、3−メチル−1,3−ブタンジオール(bp 203℃)、プロピレングリコール(bp 187℃)、2−メチル−2,4−ペンタンジオール(bp 197℃)、エチレングリコール(bp 196℃〜198℃)、トリプロピレングリコール(bp 267℃)、ヘキシレングリコール(bp 197℃)、ポリエチレングリコール(粘度制御液体から固体へ)、ポリプロピレングリコール(bp 187℃)、1,6−ヘキサンジオール(bp 253℃〜260℃)、1,2,6−ヘキサントリオール(bp 178℃)、トリメチロールエタン(固体、融点(mp)199℃〜201℃)、およびトリメチロールプロパン(固体、mp 61℃)が含まれる。
【0102】
前記多価アルコールアルキルエーテルの例には、エチレングリコールモノエチルエーテル(bp 135℃)、エチレングリコールモノブチルエーテル(bp 171℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(bp 194℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(bp 197℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(bp 231℃)、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル(bp 229℃)、およびプロピレングリコールモノエチルエーテル(bp 132℃)が含まれる。
【0103】
前記多価アルコールアリールエーテルの例には、エチレングリコールモノフェニルエーテル(bp 237℃)、およびエチレングリコールモノベンジルエーテルが含まれる。
【0104】
前記窒素含有複素環式化合物の例には、2−ピロリドン(bp 250℃、mp 25.5℃、ewc 47質量%〜48質量%)、N−メチル−2−ピロリドン(bp 202℃)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジオノン(bp 226℃)、ε−カプロラクタム(bp 270℃)、およびγ−ブチロラクトン(bp 204℃〜205℃)が含まれる。
【0105】
前記アミドの例には、ホルムアミド(bp 210℃)、N−メチルホルムアミド(bp 199℃〜201℃)、N,N−ジメチルホルムアミド(bp 153℃)、およびN,N−ジエチルホルムアミド(bp 176℃〜177℃)が含まれる。
【0106】
前記アミンの例には、モノエタノールアミン(bp 170℃)、ジメタノールアミン(bp 268℃)、トリエタノールアミン(bp 360℃)、N,N−ジメチルモノエタノールアミン(bp 139℃)、N−メチルジエタノールアミン(bp 243℃)、N−メチルエタノールアミン(bp 159℃)、N−フェニルエタノールアミン(bp 282℃〜287℃)、3−アミノプロピルジエチルアミン(bp 169℃)、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジエチルモノエタノールアミン、トリプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N−エチル−モノエタノールアミン、N,N−ジ−n−ブチルモノエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、N−n−ブチルモノエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミンおよびジグリコールアミンが含まれる。
【0107】
前記硫黄含有化合物の例には、ジメチルスルホキシド(bp 139℃)、スルホラン(bp 285℃)、およびチオジグリコール(bp 282℃)が含まれる。
【0108】
他の固体水溶性有機溶媒としては、糖が好ましい。前記糖の例には、単糖、二糖、オリゴ糖(三糖および四糖を含む)、および多糖が含まれる。
【0109】
それらの具体的な例には、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、およびマルトトリオースが含まれる。ここで、上記の多糖は、幅広い意味の多糖を意味し、これには、例えば、オルシクロデキストリン(orcyclodextrin)およびセルロースなどの自然界に広く存在する物質が含まれてもよい。これらの糖の誘導体には、糖の還元糖(例えば、一般式:HOCH
2(CHOH)
nCH
2OH(式中、nは、2〜5の整数である)により表される糖アルコール)、酸化糖(例えば、アルドン酸およびウロン酸など)、アミノ酸およびチオ酸が含まれる。これらの中で、糖アルコールが好ましい。糖アルコールの具体的な例には、マルチトールおよびソルビトールが含まれる。
【0110】
態様において、前記水溶性有機溶媒の混合物が、本発明のインク組成物に含まれてもよい。前記個別の有機溶媒は、好ましくは、前記インク組成物合計量に対して、1重量%〜50重量%の量で、より好ましくは、1重量%〜40重量%の量で、なおより好ましくは、1重量%〜25重量%の量で存在する。
【0111】
態様において、前記インク組成物に含まれる水溶性有機溶媒の前記混合物を使用して、水溶性有機溶媒のかかる混合物を含むインク組成物の安定性(信頼性)を最適化し、プリント品質を改善してもよい。例を挙げると、例えば、縞入りおよび/または合一および/またはプディングおよび/またはディウェッティングなどの、特に、インク液滴の媒体上での拡張中にまたは前記インクの乾燥中に生じる、表面張力に関連する推進力に拘束される無極性媒体上での問題を解決するかまたは少なくとも軽減することである。
【0112】
かかる混合物は、第1比誘電率を有する第1水溶性有機溶媒および第2比誘電率を有する第2水溶性有機溶媒を含んでもよく、ここで、前記第1比誘電率および第2比誘電率間の差は、5より大きく、好ましくは、8より大きく、より好ましくは、10〜50であり、より好ましくは、15〜40である。
【0113】
本発明の意味において、前記水溶性有機溶媒の前記比誘電率(すなわち、真空の誘電率、ε
0≒8.85×10
−12C/(V
*m)に対するもの)は、それらの極性の尺度である。したがって、上記の基準に従って、前記第1水溶性有機溶媒および前記第2水溶性有機溶媒を選択することにより、前記第1および第2水溶性有機共溶媒は、極性が異なる。上記のとおり、前記第1水溶性有機溶媒および前記第2水溶性有機溶媒の前記比誘電率の差が5より大きい限り、前記第1および第2水溶性有機溶媒を、上記の前記水溶性有機溶媒のいずれから選択してもよい。好ましくは、両方の水溶性有機溶媒は、グリセロール(比誘電率、ε
r=42.5);プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール、ε
r=32.1);ジエチレングリコール(ε
r=31.82);1,2−ペンタンジオール(ε
r=17.31);1,4−ペンタンジオール(ε
r=26.74);1,5−ペンタンジオール(ε
r=26.2);2,3−ペンタンジオール(ε
r=17.37);2,4−ペンタンジオール(ε
r=24.69);エチレングリコールジアセテート(ε
r=7.7);ヘキシレングリコール(ε
r=23.4);トリエチレングリコール、PEG400(ε
r=12.4)、PEG600(ε
r=12.7)、(ε
r=23.69)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(ε
r=7.62);ブチルフェニルエーテル(ε
r=3.73);ビス(2−メトキシエチル)エーテル(ε
r=7.23);ビス(2−ヒドロキシプロピル)エーテル(ε
r=20.38);ジペンチルエーテル(ε
r=2.80);ビス(3−メチルブチル)エーテル(ε
r=2.82);テトラエチレングリコールジメチルエーテル(ε
r=7.68);ペンタエチレングリコール(ε
r=18.16);ベンジルフェニルエーテル(ε
r=3.75);ジベンジルエーテル(ε
r=3.82);テトラエチレングリコールジブチルエーテル(ε
r=5.15);ジデシルエーテル(ε
r=2.64);オクタデコキシエタノール(ε
r=3.56);テトラエチレングリコール(ε
r=20.44);2−ブトキシエタノール(ε
r=9.43);プロピレングリコールメチルエーテル(例えば、DOWANOL(登録商標) PMとして商業的に入手可能なもの;ε
r=11.97);ジプロピレングリコールメチルエーテル(例えば、DOWANOL DPM、ε
r=10.44);プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(例えば、DOWANOL PMA、ε
r=8.04);プロピレングリコールn−プロピルエーテル(例えば、DOWANOL PnP、ε
r=8.82);ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル(例えば、DOWANOL DPnP、ε
r=8.48);プロピレングリコールn−ブチルエーテル(例えば、DOWANOL PnB、ε
r=7.97)、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル(例えば、DOWANOL DPnB、ε
r=7.76);トリエチレングリコールモノメチルエーテル(メトキシトリグリコール(DOW)、ε
r=13.33);ジエチレングリコールモノエチルエーテル(例えば、CARBITOL(登録商標) Solvent (LG)(DOW)、ε
r=13.01);ジエチレングリコールモノメチルエーテル(例えば、Methyl CARBITOL Solvent(DOW)、ε
r=14.81);ジエチレングリコールモノブチルエーテル(例えば、Butyl CARBITOL (DOW)、ε
r=10.15);ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(例えば、Hexyl CARBITOL (DOW)、ε
r=8.72);ジエチレングリコールn−ブチルエーテルアセテート(例えば、Butyl CARBITOL Acetate (DOW)、ε
r=6.95);エチレングリコールモノプロピルエーテル(例えば、Propyl CELLOSOLVE(登録商標) Solvent (DOW)、ε
r=10.93);エチレングリコールモノブチルエーテル(例えば、Butyl CELLOSOLVE (DOW)、ε
r=9.36);エチレングリコールモノヘキシルエーテル(例えば、Hexyl CELLOSOLVE (DOW)、ε
r=7.38);エチレングリコールn−ブチルエーテルアセテート(例えば、Butyl CELLOSOLVE Acetate (DOW)、ε
r=6.57);トリエチレングリコールモノエチルエーテル(エトキシトリグリコール(DOW)、ε
r=11.91);トリエチレングリコールモノブチルエーテル(ブトキシトリグリコール(DOW)、ε
r=9.64);エチル3−エトキシプロピオネート(例えば、UCAR(登録商標)Ester EEP (DOW)、ε
r=5.84)からなる群から選択される。
【0114】
25よりも小さい、好ましくは、20よりも小さい、より好ましくは、15よりも小さい誘電率を有する水溶性有機溶媒を、前記インク組成物に添加することにより、無極性基板上で、特に機械コーティングされたまたはオフセットコーティングされた媒体上で前記インクの滴の拡張が改善され、拡張因子(すなわち、ドットゲイン)を増加させ、縞入りを減少させる。前記インク液滴の拡張後、前記インクの表面張力は、好ましくは、ディウェッティングを回避するために低く維持されなければならない。しかしながら、低い誘電率を有する水溶性有機溶媒(無極性溶媒)の前記使用は、前記樹脂分散体(ラテックス)の安定性および/または顔料分散には好ましくない。前記顔料および/または前記樹脂分散体の不安定化は、前記イメージングデバイス(例えば、(インクジェット)プリントヘッドなど)中で凝固を誘発し得るため、ノズルの目詰まりが生じ得、ノズル不具合につながり、結果として前記イメージングデバイスの信頼性欠如となる。上記の水溶性有機溶媒の前記混合物は、極性(すなわち、比較的高い誘電率を有する)および無極性(すなわち、比較的低い誘電率を有する)共溶媒を含み、ここで、前記極性共溶媒は、前記顔料および/または前記樹脂分散体の安定性を提供し、これにより前記イメージングデバイスの信頼性を提供する。前記無極性溶媒は、基板上で、特に機械コーティングされたまたはオフセットコーティングされた媒体上で、インク液滴の拡張挙動の改善を提供し、これにより前記プリント品質の改善を提供する。
【0115】
態様において、前記インク組成物は、少なくとも1種のオリゴマーまたはポリマー共溶媒を含み、特に、上記で定義したポリエチレングリコールおよびポリエチレングリコール(ジ)メチルエーテルからなる群から選択された、少なくとも1種を含む。かかる共溶媒のさらなる利点は、それらが、乾燥の際に(水の蒸発により)、プリントされたインク滴に粘度増加を提供することである。かかる粘度増加は、拡張したインク滴が隣接するインク滴と合一することを防止する。
【0116】
例えば、プディングおよびディウェッティングなどのプリントアーチファクトを、前記インク組成物中でオリゴマーおよび/またはポリマー共溶媒を使用することにより、防止するかまたは少なくとも軽減する。この態様のさらなる利点は、媒体巻き上がり(curling)が効率的に減少することである。
【0117】
オリゴマーおよびポリマー共溶媒は、好ましくは、0重量%〜30重量%の、より好ましくは、2重量%〜27重量%の、なおより好ましくは、5重量%〜25重量%の量で存在する。
【0118】
前記インク組成物中に含有される前記水溶性有機溶媒の合計量は、特に限定されない。しかしながら、前記インク組成物合計量に対して、好ましくは、0重量%〜75重量%、およびより好ましくは、10重量%〜70重量%、およびなおより好ましくは、15重量%〜60重量%である。前記水溶性有機溶媒の量が、80重量%より多い場合には、前記インク組成物の乾燥時間は長過ぎる。前記量が10重量%より少ない場合には、前記インク組成物中の水はより迅速に蒸発し、これは、前記インク組成物の安定性を著しく減少させ得る。
【0119】
前記インクジェットインク中の前記水分散性着色剤の前記水溶性有機溶媒に対する質量比は、インクジェットヘッドからの吐出安定性に影響を与える。例えば、前記水溶性有機溶媒の添加量が、前記水分散性着色剤の高い固体含量にもかかわらず低い場合には、ノズルのインクメニスカス付近の水の蒸発が進み、吐出不良が生じ得る。前記インクジェットインクに含有される前記水溶性有機溶媒の合計量は、好ましくは、20重量%〜50重量%であり、より好ましくは、20重量%〜45重量%である。前記水溶性有機溶媒の量が20重量%より少ない場合には、前記吐出安定性は低下し得、廃棄インクが、前記インク吐出装置を維持するために使用される器具に付着し得る。対照的に、前記水溶性有機溶媒の前記量が50重量%より多い場合には、紙にプリントされたインクの乾燥が低下し得、さらに、普通紙にプリントされた文字の質が低下し得る。
【0120】
態様において、アミノアルコールを、特には、N−アルキル−ジアルカノールアミンを、共溶媒として少量、すなわち、前記インク組成物合計量に対して、3重量%より少ない、好ましくは、2重量%より少ない、より好ましくは、0.5重量%くらいの量で使用する。かかるインク処方物において、共溶媒を安定化させる全画分を、(前記インクジェットヘッド中の)前記インク安定性を、(前記インクジェットヘッド中の)インク安定性および受信媒体上での拡散特性を妥協することなく、有意に減少させることができる。
【0121】
本態様のインク組成物は、好ましくは、0重量%〜40重量%の、好ましくは、10重量%〜35重量%の、より好ましくは、20重量%〜30重量%の共溶媒の合計量を含む。
【0122】
好適なアミノアルコールの例は:トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン(metyldiethanolamine)、N−エチルジエタノールアミン、N−n−ブチル−モノエタノールアミンおよびN−n−ブチルジエタノールアミン、である。
【0123】
界面活性剤
本発明の前記インクは、インク吐出特性および/または記録媒体の表面のぬれ性、ならびに形成され、その中の白色スポットを減少させる前記画像の画像濃度および彩度を改善するために、界面活性剤を含むことが好ましい。記録媒体の表面上の前記インクの拡散を改善するために、およびプディングを減少させるために、前記インク組成物の動的表面張力を、界面活性剤により、35mN/mまたはそれより低く、好ましくは、34mN/mまたはそれより低く、より好ましくは、33mN/mまたはそれより低く、なおより好ましくは、32mN/mまたはそれより低く調整することが好ましい。前記インク組成物の静的表面張力は、好ましくは、(0.1Hzでの測定において)30mN/mより低い。
【0124】
界面活性剤の例は、特に限定されない。以下を、挙げることができる。
【0125】
前記界面活性剤の例には、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、特にベタイン界面活性剤、シリコーン界面活性剤、およびフッ素系界面活性剤が含まれる。特に、前記表面張力を30mN/mまたはそれより低い表面張力を低下させることができる、アセチレン界面活性剤、シリコーン界面活性剤およびフッ素系界面活性剤から選択される少なくとも1種が、好ましく使用される。
【0126】
カチオン性界面活性剤の例には:脂肪族アミン塩、脂肪族第四級アンモニウム塩、ベンズアルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩が含まれる。
【0127】
アニオン性界面活性剤の例には:ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルフェートの塩、脂肪族酸石けん、N−アシル−N−メチルグリシン塩、N−アシル−N−メチル−β−アラニン塩、N−アシルグルタメート、アシル化ペプチド、アルキルスルホン酸塩、アルキルベゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホスクシネート(例えば、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム(DSS);代替的名称:ドキュセートナトリウム,Aerosol OTおよびOT)、アルキルスルホアセテート、α−オレフィンスルホネート、N−アシル−メチルタウリン、スルホン化油、高級アルコールスルフェート塩、第二級高級アルコールスルフェート塩、アルキルエーテルスルフェート、第二級高級アルコールエトキシスルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルフェート、モノグリスルフェート、脂肪族酸アルキルオールアミドスルフェート塩、アルキルエーテルホスフェート塩およびアルキルホスフェート塩が含まれる。
【0128】
両性界面活性剤の例には:カルボキシベタインタイプ、スルホベタインタイプ、アミノカルボン酸塩およびイミダゾリウムベタインが含まれる。
【0129】
非イオン性界面活性剤の例には:ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン第2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、水素化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪族エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミン酸化物、アセチレングリコール、エトキシル化アセチレングリコール、アセチレンアルコールが含まれる。
【0130】
表面張力を減少させる観点から、これらの界面活性剤の一部が、フッ素原子またはケイ素原子でさらに置換されていることが好ましい。
【0131】
フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換された2〜16個の炭素原子を有する界面活性剤が好ましく、フッ素置換された4〜16個の炭素原子を有する界面活性剤がより好ましい。フッ素置換された炭素原子の数が2より小さい場合には、フッ素系界面活性剤特有の効果が得られないことがある。16より大きい場合には、保管安定性の悪化などが生じ得る。
【0132】
前記フッ素系界面活性剤の例には、非イオン性フッ素系界面活性剤、アニオン性フッ素系界面活性剤、および両性フッ素系界面活性剤が含まれる。
【0133】
非イオン性フッ素系界面活性剤の例には、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物(adduct)、およびパーフルオロアルキレンエーテル基を側鎖として有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が含まれる。これらの中で、泡特性が低いため、パーフルオロアルキレンエーテル基を側鎖として有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が好ましい。
【0134】
前記フッ素系界面活性剤としては、商業的に入手可能な製品を使用してもよい。
【0135】
前記商業的に入手可能な製品の例には、SURFLON S−Hl、S−112、S−113、S−121、S−131、S−132、S−141およびS−145(これら全ては、旭硝子社により製造されたものである)、FLUORAD FC−93、FC−95、FC−98、FC−129、FC−135、FC−170C、FC−430およびFC−431(これら全ては、住友3M社により製造されたものである)、MEGAFAC F−470、F−1405およびF−474(これら全ては、大日本インキ化学工業社により製造されたものである)、ZONYL TBS、FSP、FSA、FSN−100、FSN、FSO−100、FSO、FS−300およびUR(これら全ては、デュポン・ド・ヌムール・アンド・カンパニーにより製造されたものである)、FT−110、FT−250、FT−251、FT−400S、FT−150およびFT−400SW(これら全ては、株式会社ネオスにより製造されたものである)、ならびにPOLYFOX PF−136A、PF−156A、PF−151N、PF−154、およびPF−159 (これら全ては、OMNOVA Solutions社により製造されたものである)が含まれる。これらの中で、ZONYL FS−300(デュポン・ド・ヌムール・アンド・カンパニーにより製造されたもの)、FT−110、FT−250、FT−251、FT−400S、FT−150、FT−400SW(株式会社ネオスにより製造されたもの)、およびPOLYFOX PF−151N(OMNOVA Solutions社により製造されたもの)が、プリント品質に、特に発色能におよび染料水平化(dye−leveling)特性に優れている点で好ましい。
【0136】
前記シリコーン界面活性剤は、特に限定されず、意図する用途に従って好適に選択されてもよい。
【0137】
前記シリコーン界面活性剤の例には、側鎖修飾ポリジメチルシロキサン、両端修飾ポリジメチルシロキサン、一端修飾ポリジメチルシロキサン、および側鎖/両端修飾ポリジメチルシロキサンが含まれる。修飾された基として、ポリオキシエチレン基またはポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル修飾シリコーン界面活性剤が、特に好ましい。それらが、水系界面活性剤として優れた物性を示すためである。
【0138】
前記シリコーン界面活性剤を好適に合成してもよく、または市販の製品を使用してもよい。前記市販の製品は、BYK Chemie社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニングシリコーン社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学株式会社などから容易に入手可能である。
【0139】
前記ポリエーテル修飾シリコーン界面活性剤は、特に限定されず、意図する用途に従って好適に選択されてもよい。それらの例には、式1により表されるポリアルキレンオキシド構造が、ジメチルポリシロキサンのSi部分側鎖において誘導された化合物が含まれる。
【0140】
【化1】
式中、X=−R(C
2H
4O)
a(C
3H
6O)
bR’である。
【0141】
式1において、1、x、y、aおよびbは、それぞれ整数であり;Rは、アルキル基を表し、R’は、アルキレン基を表す。
【0142】
前記ポリエーテル修飾シリコーン界面活性剤としては、市販の製品を使用してもよい。
【0143】
前記市販の製品の例には、KF−618、KF−642およびKF−643(信越化学工業株式会社により製造されたもの);EMALEX−SS−5602およびSS− 1906EX(日本エマルジョン株式会社により製造されたもの);FZ−2105、FZ−2118、FZ−2154、FZ−2161、FZ−2162、FZ−2163およびFZ−2164(東レ・ダウコーニングシリコーン社により製造されたもの);ならびにBYK−33、BYK 331、BYK 341、BYK 348、BYK 349、BYK 3455、BYK−387(BYK Chemie社により製造されたもの);Tegowet 240、Tegowet 245、Tegowet 250、Tegowet 260(Evonikにより製造されたもの);Silwet L−77(Sabicにより製造されたもの)が含まれる。
【0144】
このセクションにおいて言及した全ての界面活性剤を、単独で使用してもよく、またはそれらを複数組み合わせて使用してもよい。
【0145】
驚くべきことに、10Hz(すなわち、0.1sの接触時間)の周波数で測定された動的表面張力が、ドットゲイン(すなわち、プリントされたドットの直径/空気中のインクの液滴の直径)と極めて良好に相関することが見出された。
図1を参照のこと。
【0146】
態様において、界面活性剤を、例えば、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(AOT)、Dynol 607のようなエトキシル化アセチレングリコール(Air Products)などのジアルキルスルホコハク酸塩およびそれらの組み合わせからなる群から選択してもよい。これらの界面活性剤は、本発明の水性ラテックスインク組成物の動的表面張力を、35mN/mにより低く減少させることができる。ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(AOT)により、10Hzで極めて低い動的表面張力を得ることができる(35mN/mにより低いもの)。しかしながら、より多い量で使用される場合には、前記プリント品質は、ディウェッティングにより低下させ得る。代替物は、Dynol 607のようなエトキシル化アセチレングリコールである。
【0147】
エトキシル化アセチレングリコールは、式2に示される一般構造を有する。
【0148】
【化2】
式中、R
1およびR
4は、3〜10個の、好ましくは、3〜6個の炭素原子を有する、同一のまたは異なったアルキルラジカルであり、好ましくは、R
1およびR
4は、同一であり、R
2およびR
3は、同一であるかまたは異なり、メチルおよびエチルから選択され、好ましくは、R
2およびR
3の両方は、メチルであり、xおよびyは、共に整数であり、1〜60の範囲の合計を有する。
【0149】
エトキシル化アセチレングリコールの具体的な例は、エトキシル化3−メチル−1−ノニン−3−オール、エトキシル化7,10−ジメチル−8−ヘキサデシン−7,10−ジオール、エトキシル化4,7−ジメチル−5−デシン−4,7−ジオール、エトキシル化2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、およびエトキシル化2,5,8,11−テトラメチル−6−ドデシン−5,8−ジオールである。これらを互いに組み合わせて使用することができる。
【0150】
態様において、式2のエトキシル化アセチレングリコールを、本発明のインク組成物中で界面活性剤単独としてまたは他の界面活性剤と組み合わせて使用し、式中、xおよびyは、互いに独立しており、それぞれは、0〜25の、好ましくは、0〜20の、より好ましくは、0〜15の範囲であり、xおよびyの少なくとも1つは、0より大きい。
【0151】
一般に、エトキシル化アセチレングリコールはポリマーであり、前記ポリエトキシ側鎖の長さが異なることがあり(xおよび/またはyが異なることがあり)、および/または前記アセチレングリコールの1つのアルコール基のみがポリエトキシ側鎖により置換されている(すなわち、x=0またはy=0である)ため、質量分布を有する。
【0152】
態様において、本発明のインク組成物中で界面活性剤として使用される前記エトキシル化アセチレングリコールの数平均分子量(M
n)は、300g/mol〜800gr/molの、好ましくは、350gr/mol〜700gr/molの、より好ましくは、400gr/mol〜600gr/molの範囲にある。
【0153】
態様において、本発明のインク組成物中で界面活性剤として使用される前記エトキシル化アセチレングリコールの重量平均分子量(M
w)は、350g/mol〜850gr/molの、好ましくは、400gr/mol〜750gr/molの、より好ましくは、450gr/mol〜650gr/molの範囲にある。
【0154】
態様において、本発明のインク組成物中で界面活性剤として使用される前記エトキシル化アセチレングリコールの分散度因子(D=M
w/M
n)は、1〜2の、好ましくは、1〜1.5の、より好ましくは、1〜1.2の範囲にある。
【0155】
態様において、xおよびyの合計の数平均は、2〜15の、好ましくは、3〜12の、なおより好ましくは、6〜10の範囲にある。xおよびyの合計の数平均を、方程式1によって計算してもよい。
【0157】
【数2】
は、xおよびyの合計の数平均であり;
M
nは、エトキシル化アセチレングリコール界面活性剤の数平均分子量あり;
M
acetylene glycolは、前記アセチレングリコールの分子量(例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールについては、224gr/mol、2,5,8,11−テトラメチル−6−ドデシン−5,8−ジオールについては、254gr/mol)であり;および
M
ethoxyは、44gr/molのエトキシ単位の分子量である。
【0158】
態様において、前記結合されたエトキシ側鎖M
n,ethoxyの数平均分子量は、100gr/mol〜500gr/molの、好ましくは、150gr/mol〜400gr/molの、より好ましくは、200〜350gr/molの範囲にある。
【0159】
態様において、前記結合されたエトキシ側鎖M
w,ethoxyの重量平均分子量は、150gr/mol〜700gr/molの、好ましくは、200gr/mol〜600gr/molの、より好ましくは、250〜500gr/molの範囲にある。
【0160】
商業的に入手可能なエトキシル化アセチレングリコール界面活性剤の構造特性を、表1に示す。M
wは、前記界面活性剤の重量平均分子量であり、Dは、前記界面活性剤の分散度因子(すなわち、M
w/M
n)である。
【0161】
態様において、エトキシル化ドデシンを、本発明のインク組成物中で界面活性剤単独としてまたは他の界面活性剤と組み合わせて使用する。本発明者らは、かかる界面活性剤が、本発明の目的に関し、大いに好適であることを見出した。
【0162】
表1 エトキシル化アセチレングリコール界面活性剤の構造特性
【0163】
【表1】
1)SECで決定されるもの(方法は、実験部分を参照)
2)SECから計算されるもの(方法は、実験部分を参照)
3)NMRで決定されるもの(方法は、実験部分を参照)
4)LC−MSで決定されるもの(方法は、実験部分を参照)
エトキシル化ドデシンの好適な例は、エトキシル化2,5,8,11−テトラメチル−6−ドデシン−5,8−ジオールであり、式3により表され、Dynol(登録商標)(Air Products)の、例えば、Dynol 604およびDynol 607の取引名称で商業的に入手可能である。
【0164】
【化3】
式中、mおよびnは、整数であり、合計は、2〜50、好ましくは、4〜10である。Dynol 604およびDynol 607の構造特性を、表1に示す。式2および式3を参照して、表1におけるxおよびyは、それぞれ式3におけるmおよびnである。
【0165】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明のインク組成物中で界面活性剤の混合物を使用して、ドットゲインおよびディウェッティングの両方を、機械コーティングされたまたはオフセットコーティングされた媒体を含む幅広い範囲の媒体上で最適化できることを見出した。
【0166】
したがって、本発明のインクは、界面活性剤の混合物を含み、前記混合物は、本明細書の上記において開示した前記界面活性剤から好適に選択される、少なくとも2種の界面活性剤を含む。
【0167】
態様において、界面活性剤の前記混合物は、以下:
− 例えば、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(AOT)などのジアルキルスルホコハク酸塩;
− 例えば、BYK 348、BYK 349(BYK)、Silwet L−77(Sabic)、Tegowet 240(Evonik)のようなエトキシル化シロキサンなどのシリコーン界面活性剤;
− Dynol 607(Air Products)などのエトキシル化アセチレングリコール、
の群からの少なくとも2種の界面活性剤を含む。
【0168】
本発明のインク組成物中で使用される界面活性剤の前記混合物により、前記インク組成物の、35mN/mより低い動的表面張力および21mN/mより高い静的表面張力が提供される。
【0169】
態様において、前記インク組成物は、上記のとおり極性および無極性共溶媒の共溶媒の混合物、ならびに前記プリントされたインクドットの乾燥中に低い表面張力を維持するために好適に選択された界面活性剤の混合物を含み、これにより、プディングおよび/またはディウェッティングを防止するかまたは少なくとも軽減する。
【0170】
いかなる理論にも束縛されることを希望しないが、プディングおよび/またはディウェッティングは、前記インクの表面張力および前記媒体の表面張力の差が変化することにより生じ得ると考えられている。一方では、前記共溶媒および前記界面活性剤の濃度は、水の蒸発により、前記プリントされたインクドットの乾燥中に増加する。他方では、前記共溶媒および前記界面活性剤の濃度は、(水と共に)前記共溶媒および/または前記界面活性剤の前記媒体への(部分的な)吸収により減少し得る。したがって、水の蒸発により、吸収は濃度増加に、部分的に反対に作用し得る。しかしながら、一般にはおよび特に(水の)吸収に乏しい媒体(例えば、MC−コーティングされた媒体など)上では、水の蒸発は、吸収より優先的である。したがって、共溶媒および/または界面活性剤の濃度は、乾燥中に増加するであろうし、前記インクの前記表面張力を、本発明の共溶媒および/または界面活性剤により広く決定してもよい。前記界面活性剤の一部はまた、前記媒体の表面に付着してもよく、これにより前記媒体および前記インク両方の表面張力の変化をもたらし得、よって、前記インクの表面張力および前記媒体の表面張力の差に影響を与える。
【0171】
一般的に、無極性共溶媒は、低い表面張力を有し、一方で、極性共溶媒は、比較的高い表面張力を有する。本発明の前記インク組成物の表面張力を減少させるために選択される界面活性剤は、通常、水溶液系の表面張力を減少させることができる。しかしながら、プリントされたインクドットの乾燥に際し、前記水溶液系はますます有機溶媒系に変わる。該選択された界面活性剤は、有機溶媒系の表面張力を減少させるのにより不適である。したがって、乾燥の際には、前記プリントされたインクドットの表面張力は増加し、プディングおよびディウェッティングのリスクを増加させる。この態様の界面活性剤の前記混合物は、前記インク組成物合計量の表面張力(静的および動的)を減少させることができる第1界面活性剤を含み、水と良好に働く界面活性剤である。本発明の意味において、前記第1界面活性剤は、前記第1タイプおよび/または前記第3タイプの界面活性剤を含む。この態様の界面活性剤の前記混合物は、乾燥するインク組成物の表面張力を減少させることができる第2界面活性剤を含み、極性溶媒と良好に働く界面活性剤である。本発明の意味において、前記第2界面活性剤は、前記第2タイプの界面活性剤を含む。
【0172】
態様において、界面活性剤の前記混合物の前記第1界面活性剤を、例えば、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(AOT)などのジアルキルスルホコハク酸塩および例えば、エトキシル化2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールおよびエトキシル化2,5,8,11−テトラメチル−6−ドデシン−5,8−ジオール(Dynol(登録商標))などのエトキシル化アセチレングリコール(前記第1タイプの界面活性剤)またはそれらの組み合わせからなる群から選択する。
【0173】
態様において、界面活性剤の前記混合物の前記第1界面活性剤を、ジアルキルスルホコハク酸塩(前記第3タイプの界面活性剤)およびエトキシル化ドデシン(前記第2タイプの界面活性剤)または両方の組み合わせから選択する。
【0174】
態様において、前記第1界面活性剤を、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(AOT;前記第3タイプの界面活性剤)およびDynol 607であるエトキシル化2,5,8,11−テトラメチル−6−ドデシン−5,8−ジオール(前記第2タイプの界面活性剤)または両方の組み合わせから選択する。
【0175】
態様において、前記第2界面活性剤は、シリコーン界面活性剤(前記第2タイプの界面活性剤)、特にエトキシル化シロキサン界面活性剤であり、式4に示す一般式4を有する。
【0176】
【化4】
式中、mは、1〜25の、好ましくは、1〜20の、より好ましくは、2〜15の範囲の整数であり、nは、1〜10の、好ましくは、1〜8の、より好ましくは、1〜5の整数である。
【0177】
態様において、本発明のインク組成物中で界面活性剤として使用される前記エトキシル化シロキサンの数平均分子量(M
n)は、300g/mol〜1000gr/molの、好ましくは、350gr/mol〜950gr/molの、より好ましくは、450gr/mol〜850gr/molの範囲にある。
【0178】
態様において、本発明のインク組成物中で界面活性剤として使用される前記エトキシル化シロキサンの重量平均分子量(M
w)は、600g/mol〜1600gr/molの、好ましくは、700gr/mol〜1500gr/molの、より好ましくは、800gr/mol〜1400gr/molの範囲にある。
【0179】
態様において、本発明のインク組成物中で界面活性剤として使用される前記エトキシル化シロキサンの分散度因子(D=M
w/M
n)は、1〜2の、好ましくは、1〜1.95の、より好ましくは、1.3〜1.9の範囲にある。
【0180】
態様において、前記第2界面活性剤は、BYK 348、BYK 349、Silwet L−77およびTegowet 240からなる群から選択されるエトキシル化シロキサン界面活性剤である。これらの界面活性剤の構造特性を、式4を参照して表2に示す。特に、BYK 349が、この態様の目的に好適であることを示した。
【0181】
態様において、前記第1界面活性剤を、ジアルキルスルホコハク酸塩(前記第3タイプの界面活性剤)およびエトキシル化ドデシン(前記第1タイプの界面活性剤)または両方の組み合わせから選択し、前記第2界面活性剤は、好ましくは、BYK 348、BYK 349、Silwet L−77およびTegowet 240からなる群から選択される、エトキシル化シロキサン界面活性剤(前記第2タイプの界面活性剤)である。
【0182】
本発明者らは、エトキシル化ドデシン(例えば、式3によるもの)およびエトキシル化シロキサンを含む界面活性剤混合物が、本発明の意味において、大いに良好に作用することを見出した。かかる混合物は、本発明のインク組成物の静的および動的表面張力を有意に減少させることができ、前記表面張力は、インク組成物の乾燥中に低いままである。
【0183】
態様において、界面活性剤の前記混合物は、前記第2界面活性剤とは異なるシリコーン界面活性剤(前記第2タイプの界面活性剤)である第3界面活性剤を、特に前記第2界面活性剤とは異なるエトキシル化シリコーン界面活性剤を含み、好ましくは、BYK 348、BYK 349(BYK)、Silwet L−77(Sabic)、Tegowet 240(Evonik)からなる群から選択される。
【0184】
特に、BYK 348およびTegowet 240の混合物が、この態様の目的に好適であることを示した。
【0185】
界面活性剤のかかる混合物を含むインクは、プリント品質の有意な改善を示す。特に、かかるインク組成物がシングルパスプリントにおいて使用される場合には、かかるインク組成物は、縞入り(すなわち、前記プリントにおける白色エリア)を改善する。
【0186】
態様において、界面活性剤の前記混合物は、アセチレングリコールおよびシリコーン界面活性剤を含み、特には、本出願の例1において例示されるエトキシル化シロキサンである。
【0187】
表2 式4を満たすシロキサン界面活性剤の構造特性
【0188】
【表2】
1)SECで決定されるもの(方法は、実験部分を参照)
2)NMRで決定されるもの(方法は、実験部分を参照)
3)LC−MSで決定されるもの(方法は、実験部分を参照)
態様において、界面活性剤の前記混合物は、アセチレングリコールおよびシリコーン界面活性剤を含み、特には、本出願の例1において例示されるエトキシル化シロキサンである。
【0189】
態様において、界面活性剤の前記混合物は、エトキシル化アセチレングリコールおよびシリコーン界面活性剤を含み、特には、本出願の例2、3および9において例示されるエトキシル化シロキサンである。
【0190】
態様において、界面活性剤の前記混合物は、エトキシル化アセチレングリコール、シリコーン界面活性剤を含み、特には、本出願の例4〜8において例示されるエトキシル化シロキサンおよび例えば、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(AOT)などのジアルキルスルホコハク酸塩である。
【0191】
態様において、界面活性剤の前記混合物は、本出願の例10において例示されるエトキシル化アセチレングリコールおよびフッ素系界面活性剤を含む。
【0192】
態様において、界面活性剤の前記混合物は、本出願の例11において例示されるアセチレングリコールおよびエトキシル化アセチレングリコールを含む。
【0193】
態様において、前記第1界面活性剤、前記第2界面活性剤および前記第3界面活性剤は、前記インク組成物合計量に対して、0.01重量%〜3重量%の、好ましくは、0.1重量%〜2重量%の、より好ましくは、0.3重量%〜1重量%の量で、個別に存在してもよい。
【0194】
前記インクジェットインク中に含有される前記界面活性剤の合計量は、前記インク組成物合計量に対し、好ましくは、0.01重量%〜3.0重量%であり、より好ましくは、0.5重量%〜2重量%である。前記界面活性剤の量が0.01重量%より少ない場合には、前記界面活性剤を添加する効果は、実質的に減少するかまたはほんのわずかである。3.0重量%より多い場合には、記録媒体への浸透性は、必要以上に高くなることがあり、画像濃度の低下およびインクの裏抜け(ink−strikethrough)の発生を引き起こす可能性がある。
【0195】
浸透剤
本発明の前記インク組成物は、任意に、プリント媒体中で前記インク組成物の吸収を促進する化合物である、浸透剤をさらに含んでもよい。本発明において使用される浸透剤は、好ましくは、水中での浸透性および溶解性を満足する目的のために、8〜11個の炭素原子を有する非湿潤性ポリオール化合物またはグリコールエーテル化合物の少なくとも1種を含む。
【0196】
これらの浸透剤の中で、好ましいのは、一般式5により表される1,3−ジオール化合物である。
【0197】
【化5】
式中:
R’は、メチル基またはエチル基を表し;
R’’は、水素原子またはメチル基を表し;および
R’’’は、エチル基またはプロピル基(n−プロピルおよびイソプロピルを含む)を表す。
【0198】
一般式5を満たす浸透剤の特定の例は:2−エチル−1,3−ヘキサンジオール[溶解度:4.2%(25℃)]および2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール[溶解度:2.0%(25℃)]である。
【0199】
非湿潤性ポリオール化合物の例には、例えば、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール;3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール;2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール;2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール;2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール;2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール;および5−ヘキセン−1,2−ジオールなどの、脂肪族ジオールが含まれる。
【0200】
単独でまたは上記のものと組み合わせて使用可能な他の浸透剤は、それらが前記インク組成物中に溶解でき、所望の物性を有するように設計されていれば特に限定されず、意図する用途に従って好適に選択されてもよい。それらの例には、多価アルコールのアルキルまたはアリールエーテル(例えば、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、およびテトラエチレングリコールクロロフェニルエーテルなど);および低級アルコール(例えば、エタノールなど)が含まれる。
【0201】
前記インクジェットインク中に含有される前記浸透剤の量は、前記インク組成物合計量に対し、0重量%〜4.0重量%、好ましくは、0.1重量%〜3.0重量%、より好ましくは、0.5重量%〜2.0重量%である。
【0202】
前記浸透剤の量が0.1重量%より少ない場合には、迅速な乾燥を得ることができないことがあり、画像にじみ(合一)を引き起こす可能性がある。4.0重量%より多い場合には、着色剤および水分散性樹脂の分散安定性が損なわれ、容易にノズルの目詰まりが引き起こされ得、記録媒体の浸透性が必要以上に高くなり、画像濃度の低下およびインクの裏抜けの発生を引き起こす可能性がある。
【0203】
前処理液体
本発明のインクを使用するインクジェットプロセスのプリント品質を改善するために、特に機械コーティングされたまたはオフセットコーティングされた媒体上で、前処理ステップを、インクジェットプリントの前に適用してもよい。
【0204】
かかる前処理ステップで使用される前処理液体は、前記受信媒体の表面張力を増加させ、前記受信媒体上での前記インクの拡散を強化し得る。前記前処理液体はまた、前記インクジェットインクを凝集させること、または前記インク中に溶解された固体構成成分の溶解性を減少させることにより前記インクジェットインクを増粘化させる(前記インクジェットインクの粘度を増大させる)ことができてもよい。後者の側面に関連し、前記前処理液体は、好ましくは、多価金属塩、酸およびカチオン性樹脂の少なくとも1種を含有する。多価金属塩を含有する前記前処理液体をインクに接触させることにより、前記前処理液体に含有されるカチオンが、前記顔料、前記(分散)樹脂中のアニオンまたは前記インク中に存在する他の成分と相互作用して、前記インクの前記成分の凝集沈殿をもたらすであろう。これは、前記インクのにじみまたは斑点形成を防止することができる。
【0205】
前記前処理液体中に含有される主要な溶媒は、好ましくは、水(水溶性前処理液体)であり、必要な場合には、水溶性有機溶媒または界面活性剤が含有されてもよい。
【0206】
前処理液体中で適用することができる多価金属塩としては、2以上の価数の金属の塩を使用することができる。好ましいカチオンの例には:例えば、Ca
2+、Cu
2+、Ni
2+、Mg
2+、Zn
2+およびBa
2+などの二価金属イオン;例えば、Al
3+、Fe
3+、Cr
3+およびY
3+などの三価金属イオン;例えば、Zr
4+などの四価金属イオンが含まれる。前記複数の中では、Ca
2+、Mg
2+およびAl
3+が好ましい。
【0207】
塩のタイプとしては、周知の塩を使用することができる。例は:炭酸、硫酸、硝酸、塩酸、有機酸、ホウ酸およびリン酸の塩である。必要な場合には、前記多価金属塩を溶解するためにpH値を調整することも好ましい。前記複数の中では、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸アルミニウムおよび塩化アルミニウムが好ましい。
【0208】
前処理液体に適用することができる酸の種類としては、これらに具体的な制限はない。4.5より小さいpKa値を有する酸を使用することが好ましい。かかる酸の例には:例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸および炭酸などの無機酸;例えば、カルボン酸およびスルホン酸などの有機酸が含まれる。より好ましい酸は、4.5より小さいpKa値を有する有機酸である。以下の酸は、具体的により好ましい:クエン酸、イソクエン酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、クエン酸、2−ピロリドン−5−カルボン酸、安息香酸、安息香酸誘導体、サリチル酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、ベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸誘導体、ピルビン酸、オキサル酢酸である。
【0209】
正の電荷を有し、前処理液体に適用可能なカチオン性樹脂の種類としては特に制限はないが、第四級アミンを有する樹脂が、前記前処理液体中での少量の添加により高い効果を獲得することができることから、好ましい。
【0210】
樹脂カチオン性特性を与える基としては、樹脂中で金属カチオンまたは窒素カチオンを組み入れることが好ましい。例えば、ポリアリルアミン、ポリアミン、カチオン修飾アクリレート樹脂、カチオン修飾メタクリル樹脂、カチオン修飾ビニル樹脂、カチオン性ポリウレタン樹脂、それらのコポリマーを挙げることができる。
【0211】
前記前処理液体に中で、例えば、前記インクの固体成分を凝集させるかまたは前記インクの粘度を増加させる上記化合物以外の、液体特性を調整する界面活性剤または共溶媒などの添加剤を組み入れることが好ましい。
【0212】
前記前処理液体に組み入れることができる前記共溶媒の例には:グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、デカグリセロール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、2−ピロリジノン、ジメチルイミダゾリジノン、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテル、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオールおよび1,2−ブタンジオールが含まれる。有機溶媒の含有量には特に制限はないが、前記前処理液体に全体に対し、20重量%〜60重量%であることが好ましい。
【0213】
コーティングされたプリント紙上への前処理液体の塗布条件に好適な液体特性を調整するために、混合された複数の溶媒を使用することが好ましい。コーティング特性、乾燥特性、画像品質および安全性の観点から、溶媒の一部として水が含まれることが特に好ましい。
【0214】
コーティングされたプリント紙上への適用に好適な液体特性を調整するために、前記前処理液体が、界面活性剤を含有することが好ましい。本発明に適用できる界面活性剤には:カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤および非イオン性界面活性剤が含まれる。例えば、本発明の前記インクについて示した同様の界面活性剤もまた、前記前処理液体に使用することができる。
【0215】
さらに、前記前処理液体は、種々の目的のために、様々な添加剤を含有してもよい。かかる添加剤の例には:多糖、粘度改変剤、比抵抗制御剤、フィルム形成剤、UV吸収剤、抗酸化剤、抗変色剤、防腐剤、または防錆剤が含まれる。それらの具体的な例には:流動パラフィンの微小油滴(minute oil droplet)、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェートまたはシリコーン油;UV吸収剤;抗変色剤;および光学的光沢剤が含まれる。
【0216】
受信媒体に、特に機械コーティングされたまたはオフセットコーティングされた媒体に塗布される前記前処理液体の好ましい量は、0.05ml/m
2〜20ml/m
2、好ましくは、0.1ml/m
2〜10ml/m
2、より好ましくは、0.5ml/m
2〜5ml/m
2である。
【0217】
受信媒体
本発明のインクまたはインクのセット(シアン、マゼンタ、イエローおよびブラック、CMYB)を使用するプリントプロセスにおける使用に好適な受信媒体は、いかなるタイプにも限定されない。前記受信媒体を、意図する用途に応じて好適に選択してもよい。
【0218】
好適な受信媒体は、例えば、普通紙(例えば、Oce Red Labelなど)などの高吸水性(strongly water absorbing)媒体から、例えば、プラスチックシート(例えば、PE、PP、PVCおよびPETフィルムなど)などの非吸水性媒体に及び得る。プリント品質を最適化するために、媒体が高吸水性コーティングを含む、インクジェットコーティングされた媒体が知られている。
【0219】
本発明の意味において特に関心がある中では、機械コーティングされた(MC)媒体(オフセットコーティングされた媒体としても知られるもの)および光沢(コーティングされた)媒体である。MC媒体は、例えば、オフセットプリントなどの従来のプリントプロセスにおける使用のために設計され、かかるプリントプロセスに使用されるインクに使用される溶媒に対して良好な吸収特性を示し、前記溶媒は通常有機溶媒である。MCおよび光沢媒体は、水およびよって水溶性インクに対して不利な吸収挙動(普通紙より劣り、プラスチックシートよりは良好である)を示す。
【0220】
機械コーティングされたまたはオフセットコーティングされた媒体は、基層およびコーティング層を含む。
【0221】
前記基層は、主に木材繊維または合成繊維と組み合わせた木材繊維を含む不織繊維材料製の紙のシートであってもよい。前記基層は、木材パルプまたはリサイクルパルプ製であってもよく、漂白されていてもよい。
【0222】
前記基体の内部充填剤として、従来の白色顔料を使用してもよい。例えば、以下の物質を、白色顔料として使用してもよい:例えば、沈降炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、粘土、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サテンホワイト(satin white)、ケイ酸アルミニウム、珪藻土、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、合成シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、炭酸マグネシウム、またはマグネシウム水和物などの無機顔料;および例えば、スチレンプラスチック顔料、アクリルプラスチック顔料、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、またはメラミン樹脂などの有機顔料である。これらを単独でまたは組み合わせて使用してもよい。
【0223】
前記基体を製造する際に使用される内部サイジング(sizing)剤としては、中性製紙に使用される中性ロジンサイズ、アルケニル無水コハク酸(ASA)、アルキルケテンダイマー(AKD)、または石油樹脂サイズを使用してもよい。特に、中性ロジンサイズおよびアルケニル無水コハク酸が好ましい。アルキルケテンダイマーは、高いサイジング効果を有し、したがって、少量で十分なサイジング効果を提供する。しかしながら、アルキルケテンダイマーは、記録紙(媒体)の表面の摩擦係数を減少させるため、アルキルケテンダイマーを使用する記録紙製造により、インクの記録装置中で搬送される際にスリップを生じ得る。
【0224】
前記基体の厚さは、特に限定されず、意図する用途に従って好適に選択されてもよい。しかしながら、好ましくは、50μm〜300μmである。前記基体の坪量は、好ましくは、45g/m
2〜290g/m
2である。
【0225】
前記コーティング層は、(白色)顔料、バインダを含んでもよく、必要に応じて、界面活性剤および他の構成成分をさらに含んでもよい。
【0226】
無機顔料または無機顔料の組み合わせおよび有機顔料を、前記顔料として使用することができる。
【0227】
前記無機顔料の例には、カオリン、タルク、重炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、アモルファスシリカ、チタンホワイト、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛およびクロライトが含まれる。これらの中で、その有意な光沢性(glossability)により、カオリンが特に好ましい。前記カオリンの添加量は、前記コーティング層中の前記バインダの100部に対して、50質量部以上である。カオリンの量が、50質量部より少ない場合には、光沢度(glossiness)について十分な効果を得ることができない。
【0228】
前記有機顔料の例には、例えば、スチレン−アクリルコポリマー粒子、スチレン−ブタジエンコポリマー粒子、ポリスチレン粒子またはポリエチレン粒子などの(水性)分散体が含まれる。これらの有機顔料を組み合わせて使用してもよい。
【0229】
前記有機顔料の添加量は、好ましくは、前記コーティング層中の前記顔料の合計量の100質量部に対して、2質量部〜20質量部である。前記有機顔料は有意な光沢度を有し、その比重は無機顔料と比較して小さいため、高いバルク性、高い光沢および満足のいく表面コーティング性を有するコーティングを得ることができる。
【0230】
水性樹脂を、好ましくは、バインダに使用する。水溶性樹脂および水分散性樹脂の少なくとも1種を、前記水性樹脂に好ましく使用する。前記水溶性樹脂は特に限定されず、前記水溶性樹脂を、意図する用途に応じて好適に選択することができる。
【0231】
それらの例には、ポリビニルアルコール、および例えば、アニオン修飾ポリビニルアルコール、カチオン修飾ポリビニルアルコールまたはアセタール修飾ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール修飾生成物;ポリウレタン;ポリビニルピロリドン、および例えば、ポリビニルピロリドンおよび酢酸ビニルのコポリマー、ビニルピロリドンおよびジメチルアミノエチルメタクリレートのコポリマー、第四級化ビニルピロリドンおよびジメチルアミノエチルメタクリレートのコポリマーまたはビニルピロリドンおよびメタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリドのコポリマーなどのポリビニルピロリドンの修飾生成物;例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース;例えば、カチオン化ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロースの修飾生成物;例えば、ポリエステル、ポリアクリル酸(エステル)、メラミン樹脂またはそれらの修飾生成物あるいはポリエステルおよびポリウレタンコポリマーなどの合成樹脂;ならびに、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミド、酸化デンプン、リン酸エステル化デンプン、自己修飾デンプン、カチオン化デンプン、種々の修飾デンプン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸ナトリウムおよびアルギン酸ナトリウムが含まれる。これらの水溶性樹脂を、単独でまたは組み合わせて使用してもよい。
【0232】
前記水分散性樹脂は特に限定されず、前記水分散性樹脂を、意図する用途に応じて好適に選択することができ、その例には、ポリビニルアセテート、エチレン−ビニルアセテートコポリマー、ポリスチレン、スチレン−(メタ)アクリル酸エステルコポリマー、(メタ)アクリル酸エステルコポリマー、ビニルアセテート−(メタ)アクリル酸(エステル)コポリマー、スチレン−ブタジエンコポリマー、エチレン−プロピレンコポリマー、ポリビニルエーテルおよびシリコーン−アクリルコポリマーが含まれる。さらに、例えば、メチロール化メラミン、メチロール化ウレア、メチロール化ヒドロキシプロピレンウレアまたはイソシアネートなどの架橋剤もまた含んでもよく、前記水分散性樹脂が、例えば、N−メチロールアクリルアミドなどの単位を含有するコポリマーと自己架橋してもよい。これらの水性樹脂の複数をまた、同時に使用することができる。
【0233】
前記水性樹脂の添加量は、好ましくは、前記顔料の100質量部に対して、2質量部〜100質量部、より好ましくは、3質量部〜50質量部である。前記水性樹脂の量は、前記記録媒体の前記液体吸収特性が所望の範囲となるように決定される。
【0234】
プリントプロセス
本発明の前記インクが好適に使用され得るプリントプロセスを、
図3および
図4に示す添付の図面を参照して説明する。
【0235】
図3および4は、インクジェットプリントシステムおよびインクジェットマーキングデバイスそれぞれを図示する。
【0236】
図3は、受信媒体の、特に機械コーティングされたまたはオフセットコーティングされた媒体のシートPを、矢印50および51により指示される搬送方向へ、輸送システム12を活用して輸送することを示す。輸送システム12は、1つ(
図3に示すもの)または2つ以上のベルトを含む駆動ベルトシステムであってもよい。代替的に、これらのベルトの1つまたは2つ以上を、1つまたは2つ以上のドラムと交換してもよい。輸送メカニズムを、前記プリントプロセスの各ステップにおける前記シート輸送の必要性(例えば、シートレジストレーション(registration)精度など)に応じて好適に配置してもよく、よって、1つまたは2つ以上のベルトおよび/または1つまたは2つ以上のドラムを含んでもよい。受信媒体の前記シートの適切な搬送のために、前記シートは前記輸送メカニズムに固定されなければならない。固定の方法は、特に限定されず、静電気固定、機械的固定(例えば、クランプでの固定など)および真空固定から選択してもよい。これらの中で、真空固定が好ましい。
【0237】
以下に記載する前記プリントプロセスは、以下のステップ:媒体前処理、画像形成、乾燥定着ならびに任意の後処理を含む。
【0238】
媒体前処理
前記受信媒体上での、特に例えば、機械コーティングされたまたはオフセットコーティングされた媒体上などでの前記インクの拡張およびピン留め(pinning)(すなわち、顔料および水分散性ポリマー粒子の定着)を改善するために、前記受信媒体を前処理してもよく、すなわち、前記媒体上に画像をプリントする前に処理してもよい。前記前処理ステップは、以下:
− 前記受信媒体を予備加熱して、前記使用されたインクの前記受信媒体上での拡散を強化するステップおよび/または前記使用されたインクの前記受信媒体中への吸収を強化するステップ;
− 前記使用されたインクにより前記受信媒体のぬれ性を改善して、前記インク組成物の前記分散された固体画分の安定性を制御するために、受信媒体の表面張力を増加させるためのプライマー(primer)前処理ステップ(プライマー前処理を、例えば、塩酸、硫酸、酢酸、リン酸および乳酸などのガス状酸(gaseous acid)の気相中で、または液相中で、前記受信媒体を前処理液体でコーティングすることにより行ってもよい。前記前処理液体は、溶媒としての水、1種または2種以上の共溶媒、例えば、界面活性剤などの添加剤、および多価金属塩、酸およびカチオン性樹脂(上記で詳細に説明したもの)から選択される少なくとも1種の化合物を含んでもよい。);
− コロナまたはプラズマ処理ステップ、
の1つまたは2つ以上を含んでもよい。
【0239】
プライマー前処理
前記前処理液体の塗布方法として、あらゆる従来の既知の方法を使用することができる。塗布方法の具体的な例には:ローラーコーティング、インクジェット塗布、カーテンコーティングおよびスプレーコーティングが含まれる。前記前処理液体が塗布される回数は、特に限定されない。1度で塗布されてもよいし、2回またはそれ以上で塗布されてもよい。前記コーティングされたプリント紙のしわを防止することができ、前記表面前処理液体により形成された前記フィルムが、2ステップまたはそれ以上で塗布することにより、しわを有しない均一で乾いた表面を生成するため、2回またはそれ以上での塗布が好ましい。
【0240】
特にローラーコーティング(
図3の14を参照)法は、吐出特性を考慮する必要がなく、記録媒体に前記水性前処理液体を均一に塗布できるため、このコーティング法が好ましい。さらに、ローラー法または他の手段で記録媒体に適用される前記前処理液体の量を:前記前処理液体の物性;ならびに、ローラー塗工機中のローラーの前記記録媒体への接触圧および前記前処理液体の塗工機に使用されるローラー塗工機中のローラーの回転速度を制御することにより好適に調整できる。前記前処理液体の塗布エリアとして、前記プリントされた部分のみに、または前記プリントされた部分および前記プリントされていない部分の表面全体に塗布することが可能であってもよい。しかしながら、前記前処理液体が、前記プリントされた部分にのみ塗布される場合には、乾燥後の前記前処理液体中の水で前記コーティングされたプリント紙中に含有されるセルロースが膨張することにより引き起こされる、前記塗布エリアおよび非塗布エリアの間での不規則性が生じ得る。次いで、均一な乾燥の観点から、前処理液体をコーティングされたプリント紙の表面全体に塗布することが好ましく、ローラーコーティングを、表面全体のコーティング法として好ましく使用する。
【0241】
コロナまたはプラズマ処理
コロナまたはプラズマ処理を、前処理ステップとして、受信媒体のシートをコロナ放電またはプラズマ処理に曝露することにより使用してもよい。特に、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレンテレフタラート(PET)フィルムなどの媒体、および機械コーティングされたまたはオフセットコーティングされた媒体上で使用される場合には、前記インクの付着および拡張を、前記媒体の表面エネルギーを増加させることにより改善することができる。機械コーティングされたまたはオフセットコーティングされた媒体により水の吸収を促進することができ、これは前記画像のより迅速な定着および前記受信媒体上でのより少ないプディングを誘発し得る。異なる気体または気体混合物を前記コロナまたはプラズマ処理における媒体として使用することにより、前記受信媒体の表面特性を変調してもよい。例は、空気、酸素、窒素、二酸化炭素、メタン、フッ素ガス、アルゴン、ネオンおよびそれらの混合物である。空気中でのコロナ処理が、最も好ましい。
【0242】
図3は、受信媒体Pの前記シートが、第1前処理モジュール13に搬送されて通過してもよいことを示し、前記モジュールは、例えば、放熱器(radiation heater)などの予備ヒーター、コロナ/プラズマ処理ユニット、ガス状酸処理ユニットまたは上記のあらゆる組み合わせを含んでもよい。任意におよびその後に、前記水性前処理液体の所定量を、水性前処理液体塗布部材14において、前記受信媒体Pの表面に塗布する。具体的には、前記水性前処理液体を、前記水性前処理液体の貯蔵タンク15から、二重ロール16および17から構成される前記水性前処理液体塗布部材14に提供する。前記二重ロールの各表面を、例えば、スポンジなどの多孔質樹脂で覆ってもよい。前記水性前処理液体を補助ロール16にまず提供した後、前記水性前処理液体を主ロール17に輸送して、所定量を前記受信媒体Pの表面上に塗布する。その後、前記水性前処理液体が供給された前記コーティングされたプリント紙Pを、前記水性前処理液体中の含水量を所定の範囲まで減少させるために、任意に加熱して、前記水性前処理液体塗布部材14の下流位置に取り付けられた乾燥ヒーターから構成された乾燥部材18により乾燥する。前記受信媒体Pに提供された前記提供された前処理液体中の含水合計量に基づき、1.0重量%〜30重量%の量に含水量を減少させることが好ましい。
【0243】
前記輸送メカニズム12が前処理液体で汚染されることを防止するために、洗浄ユニット(示さず)を、取り付けてもよく、および/または前記輸送メカニズムを、上記のとおり複数のベルトもしくはドラムから構成してもよい。後者の方策は、前記輸送メカニズムの、特に前記プリント領域内の前記輸送メカニズムの上流部分の汚染を防止する。
【0244】
画像形成
画像形成を、インクジェットインクを負荷したインクジェットプリンタを用いるやり方で行い、インク液滴を、デジタル信号に基づいて前記インクジェットヘッドからプリント媒体上に吐出する。
【0245】
シングルパスインクジェットプリントおよびマルチパス(すなわち、スキャン)インクジェットプリントの両方を画像形成に使用してもよいが、高速プリントを効率的に実行するため、シングルパスインクジェットプリントが好ましく使用される。シングルパスインクジェットプリントは、インクジェットマーキングモジュールの下を受信媒体の単一通過することによりインク液滴を前記受信媒体上に堆積して、前記画像の全てのピクセルを形成することによる、インクジェット記録法である。
【0246】
図3において、11は、111、112、113および114で示され、それぞれが異なる色(例えば、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックなど)のインクを吐出するように配置された4個のインクジェットマーキングデバイスを含むインクジェットマーキングモジュールを表す。各ヘッドの前記ノズルピッチは、例えば、約360dpiである。本発明において、「dpi」は、2.54cm毎のドット数を示す。
【0247】
シングルパスインクジェットプリントに使用するためのインクジェットマーキングデバイス111、112、113、114は、両端矢印52で示される、少なくとも所望のプリント範囲の幅の長さLを有し、前記プリント範囲は、矢印50および51で示される、前記媒体輸送方向に垂直である。前記インクジェットマーキングデバイスは、少なくとも該所望のプリント範囲の幅の長さを有するシングルプリントヘッドを含んでもよい。前記インクジェットマーキングデバイスはまた、前記個別のインクジェットヘッドのつながった長さが前記プリント範囲の幅全体を覆うように、2個またはそれ以上のインクジェットヘッドをつなげることにより構築されてもよい。かかる構築されたインクジェットマーキングデバイスはまた、プリントヘッドのページワイドアレイ(PWA)とも称される。
図4Aは、7個の個別のインクジェットヘッド(201、202、203、204、205、206、207)を含むインクジェットマーキングデバイス111(112、113、114は同一であってもよい)を示し、これらは、2つの平行な列に配置され、第1の列は4個のインクジェットヘッド(201〜204)を含み、第2の列は3個のインクジェットヘッド(205〜207)を含み、これらは、前記第1の列の前記インクジェットヘッドに対して、ジグザク配置に配置されている。前記ジグザグ配置により、実質的に前記インクジェットマーキングデバイスの長さ方向に等距離であるノズルのページワイドアレイが提供される。前記ジグザグ配置はまた、前記第1の列および前記第2の列のインクジェットヘッドが重複する前記エリアのノズルの冗長を提供してもよい。
図4Bの70を参照。前記第2の列の前記インクジェットヘッドの前記ノズルの前記位置が、前記インクジェットマーキングデバイスの長さ方向に、前記ノズルピッチの半分でシフトするように、例えば、インクジェットヘッドの第2の列を配置することなどにより、前記インクジェットマーキングデバイスの長さ方向に前記ノズルピッチを減少させるために、ジグザグをさらに使用してもよく、前記ノズルピッチは、インクジェットヘッド中の隣接するノズル間の距離d
nozzleである(
図4Bにおける80の詳細図を表す
図4Cを参照)。インクジェットヘッドのより多い列を使用することにより、解像度をさらに増加させ得、その各々は、各列の前記ノズルの前記位置が、他の全ての列の前記ノズルの前記位置に対して、長さ方向にシフトするように配置されている。
【0248】
インクを吐出することによる画像形成において、用いられるインクジェットヘッド(すなわち、プリントヘッド)は、オンデマンドタイプまたは連続タイプのインクジェットヘッドのいずれかであってもよい。インク吐出システムとしては、電気機械変換システム(例えば、単一キャビティタイプ、二重キャビティタイプ、ベンダータイプ、ピストンタイプ、せん断モードタイプ、または共有壁(shared wall)タイプなど)または電気熱変換システム(例えば、熱インクジェットタイプ、またはバブルジェット(登録商標)タイプなど)のいずれかが使用可能であり得る。これらの中で、現在の画像形成法において30μmまたはそれより小さい直径のノズルを有するピエゾタイプインクジェット記録ヘッドを使用することが好ましい。
【0249】
図3は、前処理後に、前記受信媒体Pが前記インクジェットマーキングモジュール11の上流部に搬送されることを示す。次いで、前記受信媒体Pの幅全体が覆われるように、配置された各インクジェットマーキングデバイス111、112、113および114から各色インクが吐出されることにより、画像形成が実施される。
【0250】
任意に、前記画像形成を、前記受信媒体の温度制御されている間に行ってもよい。この目的のために、温度制御デバイス19を配置して、前記インクジェットマーキングモジュール11の下の前記輸送メカニズム(例えば、ベルトまたはドラムなど)の表面の温度を制御してもよい。前記温度制御デバイス19を使用して、前記受信媒体Pの表面温度を、例えば、30℃〜60℃の範囲に制御してもよい。前記温度制御デバイス19は、前記受信媒体の表面温度を該範囲内に制御するために、例えば、放熱器などのヒーター、および例えば、冷風などの冷却手段を含んでもよい。
【0251】
その後およびプリントの間、前記受信媒体Pを、前記インクジェットマーキングモジュール11の下流部分に搬送する。
【0252】
乾燥定着
前記受信媒体上に画像が形成された後、前記プリントを乾燥しなければならず、前記画像を前記受信媒体上に定着されなければならない。乾燥は、溶媒の、特に前記選択された受信媒体に対して吸収特性に乏しい溶媒の蒸発を含む。
【0253】
図3は、例えば、放熱器などのヒーターを含んでもよい乾燥定着ユニット20を図示する。画像が形成された後、前記プリントを、前記乾燥定着ユニット20に搬送して通過させる。前記プリントを、前記プリントされた画像中に存在する溶媒であるかなりの量の水が蒸発するように加熱する。蒸発およびこれによる乾燥の速度を、乾燥定着ユニット20中の空気リフレッシュ速度(air refresh rate)を増加させることにより強化してもよい。同時に、前記プリントが最低フィルム形成温度より高い温度まで加熱されるので、前記インクのフィルム形成が生じる。前記プリントが前記乾燥定着ユニット20を離れる際に、乾燥およびロバストプリントが得られるように、前記乾燥定着ユニット20中の前記プリントの滞留時間および前記乾燥定着ユニット20が動作する温度を最適化する。上記のとおり、前記乾燥定着ユニット20中の前記輸送メカニズム12は、前記プリント装置の前記前処理およびプリントセクションから分離されてもよく、ベルトまたはドラムを含んでもよい。
【0254】
後処理
前記プリントロバスト性(robustness)または例えば、光沢レベルなどのプリントの他の特性を増加させるために、前記プリントを後処理してもよく、これは、前記プリントプロセスにおいて任意のステップである。
【0255】
態様において、前記プリントを積層することにより、前記プリントを後処理してもよい。
【0256】
態様において、前記プリントされた記録媒体上で透明保護層を形成するように、前記後処理ステップは、後処理液体を、前記インクジェットインクが塗布された前記コーティング層の表面上に塗布する(例えば、噴射することなどによる)ステップを含む。前記後処理ステップにおいて、前記後処理液体を、前記記録媒体上の画像の表面全体にわたって塗布してもよく、または画像の表面の特定の部分にのみ塗布してもよい。前記後処理液体を塗布する方法は、特に限定されず、前記後処理液体のタイプに応じて種々の方法から選択される。しかしながら、前記前処理液体をコーティングする方法またはインクジェットプリント法に使用したものと同一の方法が、好ましく使用される。これらの方法の中で、インクジェットプリント法が、前記プリントされた画像および前記使用された後処理液体塗布機間の接触を回避すること;使用されるインクジェット記録装置の構造;および前記後処理液体の保管安定性、の観点から特に好ましい。前記後処理ステップにおいて、前記後処理液体の乾燥付着量が、0.5g/m
2〜10g/m
2、好ましくは、2g/m
2〜8g/m
2となり、これにより前記記録媒体上で保護層が形成されるように、透明樹脂を含有する後処理液体を、形成された画像の表面上に塗布する。前記乾燥付着量が、0.5g/m
2より少ない場合には、画像品質(画像濃度、彩度、光沢度および固着性)の改善はほとんど得られない。前記乾燥付着量が、10g/m
2より多い場合には、前記保護層の乾燥が低下し、前記画像品質の改善効果が飽和するため、コスト効率性において不利である。
【0257】
後処理液体としては、記録媒体にわたって透明保護層を形成することができる構成成分(例えば、水分散性樹脂、界面活性剤、水および必要に応じて添加剤など)を含む水溶液を、好ましく使用する。前記後処理液体中に含まれる前記水分散性樹脂は、好ましくは、−30℃またはそれより高い、より好ましくは、−20℃〜100℃の範囲のガラス転移温度(T
g)を有する。前記水分散性樹脂の最低フィルム形成温度(MFFT)は、好ましくは、50℃またはそれより低く、より好ましくは、35℃またはそれより低い。前記水分散性樹脂は、前記画像の光沢度および固着性を改善するために、放射線硬化性であってもよい。
【0258】
前記水分散性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル−シリコーン樹脂、フッ素樹脂などが、好ましく使用される。前記水分散性樹脂を、前記インクジェットインクに使用したものと同一の材料から好適に選択することができる。固体含有量として、含有される前記水分散性樹脂の量は、前記保護層中で、好ましくは、1質量%〜50質量%である。前記後処理液体に含まれる前記界面活性剤は、特に限定されず、前記インクジェットインクに使用したものから好適に選択することができる。前記後処理液体の他の構成成分の例には、抗真菌剤、消泡剤およびpH調整剤が含まれる。
【0259】
ここまで、前記画像形成ステップが、全てが同一の装置で行われる(
図3を参照)、前記前処理ステップ(例えば、(水性)前処理液体の塗布など)ならびに乾燥定着ステップに沿って行われるように、前記プリントプロセスを説明した。しかしながら、前記プリントプロセスは、上述した態様に限定されない。ベルトコンベアー、ドラムコンベアーまたはローラーを通して2つまたはそれ以上の機械を接続する方法、ならびに水性前処理液体を塗布する前記ステップコーティング溶液を乾燥する前記(任意の)ステップ、インクジェットインクを吐出して画像を形成する前記ステップ、および前記プリントされた画像を乾燥して定着させる前記ステップを行う。しかしながら、上記で定義した直列の画像形成法で画像形成を実施することが好ましい。
【0260】
例
材料
例において使用される全ての材料を、特段の断りがない限り、納入業者から得られたまま使用する。前記使用された材料の業者は、具体的な例において示す。
【0261】
前記例において使用される前記受信媒体は、前記機械コーティングされた媒体である、Hello gloss(Sappi製のMagno Star);DFG(UPMから得られた、Digifinesse gloss)、TC+(Oceから得られた、Top Coated Plus Gloss)、TCP Gloss(Oceから得られた、Top Coated Pro Gloss)、Hello Matt(Sappi製のMagno Matt)、TCproS(Oceから得られた、Top Coated Pro Silk)およびMD(三菱から得られた、MD1084)である。
【0262】
測定手法
粒径
前記顔料分散の粒径測定を、商業的に入手可能な粒径分析計である、光散乱法、電気泳動法、またはレーザードップラー法を用いた、Malvern ゼータサイザー ナノシリーズ(ナノ−S)で実施する。透過電子顕微鏡での少なくとも100個の粒子の粒子画像写真(photographic particle image)により測定を実施し、その後、例えば、Image−Pro(Media Cybernetics社製)などの画像分析ソフトウエアを使用してこれらの画像を統計学的に処理することも可能である。
【0263】
表面張力
前記(最大)泡圧法により、Sita泡張力計のSITA online t60モデルを使用して、表面張力を測定する。試験されるべき前記液体(例えば、本発明のインクなど)の表面張力を、特段の断りがない限り、30℃で測定する。静的表面張力を、0.1Hzの周波数で決定する。動的表面張力は、10Hzでのものである。
【0264】
粘度
粘度を、特段の断りがない限り、Haake(登録商標)レオメーター、type Haake Rheostress(登録商標) RS 600を使用して、フラットプレートジオメトリーで、32℃の温度で測定する。粘度を、特段の断りがない限り、10s
−1〜1000s
−1の範囲でのせん断速度
【0266】
ドットゲイン
標準ドットゲインを、特段の断りがない限り、UPM digifinesse光沢媒体(機械コーティングされた媒体)上にプリントすることにより、専用実験セットアップ(dedicated experimental set−up)において、特段の断りがない限り、90μmのドット距離(中心から中心)で測定する。インク組成物の液滴を、Dimatix Jet Module model DMC−11610で、3〜5kHzの周波数および15〜22Vの噴射圧(jetting voltage)で噴射する。
【0267】
ジェットノズルに、拡散LED源を使用してストロボ照射する。前記ジェットノズルのデジタル画像を、Lumenera高速CCDカメラ LM165cタイプでキャプチャーする。前記液滴サイズ(直径)を、2個の(隣接する)ジェットノズル間の既知の距離を参照して、デジタルに決定する。前記ドットサイズを、Zeiss Stemi SV1顕微鏡を使用して全拡大係数66で決定する。前記ドットゲインを、前記プリント媒体上の平均ドットサイズおよび空中での前記インクの平均液滴サイズの比として決定する。
【0268】
前記実際のドットゲインを、実際のインクジェットプリンタを使用することにより決定する。この場合において、前記プリントヘッド供給業者(例えば、京セラなど)により特定された液滴直径を使用する。プリント媒体上の前記ドットサイズを、上記で具体化したものと同じ方法で測定する。
前記実際のドットゲインは、(例えば、系統的誤差などにより)標準ドットゲインと異なっていてもよい。本発明において、用語ドットゲインは、特段の断りがない限り、実際のドットゲインを示す。
【0269】
被膜品質(ロッド被膜実験)
湿式インク組成物の層を、8μmの厚さを有するコーティング層を提供するロッドを使用して、RK Print Coat Instruments U.K.のロッド塗工機で塗布する。TCP Gloss(Oceから得られたTop Coated Pro Gloss)を、受信基板として使用する。前記被膜品質を、視覚的に検査し、以下の評定:
A:前記インク組成物の乾燥中に滑らかなままである、滑らか(均一)コーティング;
B:前記インク組成物の乾燥中に(視覚的)変化のない、やや滑らかコーティング;
C:前記インク組成物の乾燥中にいくらかディウェッティングが生じる(乾燥中、前記コーティング層中にいくつかの穴が現れる)もの;
D:前記インク組成物の乾燥中にディウェッティングが生じる(乾燥中、前記コーティング層中に穴が現れる)もの;
E:瞬時のディウェッティングが生じる(前記インク組成物を塗布した後瞬時に、前記コーティング層中に穴が現れる)もの、
により分類する。
【0270】
構造分析:サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、核磁気共鳴(NMR)および液体クロマトグラフィー質量分析(LC−MS)
SEC
SEC測定を、以下の仕様:
− アイソクラティックポンプ;
− カラム:2×PL−gel Mixed C + guard (d
p=5μm、7.5×300mm);
− 三重検出(Triple detection)(Viscotek Model 302)、
を有するHPLC装置で行う。
【0271】
前記サンプルを、テトラヒドロフラン(THF)中に3〜4mg/gの濃度で溶解する。溶離液は、流速0.7ml/minで前記カラム中に送り出される、1%酢酸(Hac)およびテトラヒドロフラン(THF)の混合物を含む。
【0272】
屈折率信号を、前記サンプルの分子分布のキャリブレーションおよび決定に使用する。
【0273】
キャリブレーションは、低分子量標準ポリスチレン(small polystyrene standards)に基づくため、前記Mn、MwおよびMzは関係を有する。
【0274】
NMR
NMR測定を、5mm CPTCI 1H−13C/15N/D Z−GRD Z 75810/0002クライオプローブを装備したNMR DPX−400で行う。前記サンプル(例えば、界面活性剤など)を、重水素化クロロホルムに溶解する。前記サンプルの化学構造を、1および2次元プログラムを使用して調査する。定量的プロトンNMRを使用して、前記化学構造を定量化する。
【0275】
LC−MS
LC−MS測定を、以下の仕様:
− HPLC:低圧混合物での4本の管のグラジエントポンプ(Waters);
− カラム:Acclaim Surfactantカラム(Dionex− Thermo Fisher);
− ELSD(光散乱検出器):Alltech 2000E、40℃;
− MS:ESI−TOF−MS(Micromass LCT)、
を有する装置で行う。
【0276】
前記サンプルを、THF:ACNの比 70:30 v/v%のテトラヒドロフラン(THF)およびアセトニトリル(ACN)の混合物中に溶解する。THF:ACN混合物中の前記サンプルの濃度は、1.5mg/gである。以下の勾配プログラムを使用する。(A=UHQ(すなわち、超高品質水(Ultra High Quality Water))+0.1M NH
4Ac(酢酸アンモニウム);B=ACN+0.2mL HAc/L(Hacは、酢酸である))0min 75% A→25min 15% A→30min 15% A→30.5min 75% A→終了時間 35min、1ml/minの全流量である。
【0277】
実験
実験1:ラテックスインク組成物の調製
113.6グラムのNeoCryl A−1127ラテックス(DSMから得たもの、44重量% ラテックス、前記ラテックス粒子は、±60nmの平均粒径D50を有する。)、285.7グラムのPro−Jet Cyan APD 1000顔料分散体(14重量% 顔料分散体、FujiFilm Imaging Colorantsから得たもの)、190グラムのグリセリン(Sigma Aldrichから得たもの)、190グラムの1,2−プロパンジオール(Sigma Aldrichから得たもの)、10グラムのジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、AOT(Sigma Aldrichから得たもの)および210.7グラムの脱塩水を、容器中で混合し、約60分間撹拌し、1μmの孔サイズを有するPall Profile Star absoluteガラスフィルターでろ過した。
【0278】
得られたインク組成物は、以下:
− 5重量% NeoCryl A−1127 ラテックス(前記インク組成物合計量に対しての固体の量);
− 4重量% Pro−jet Cyan APD 1000顔料(前記インク組成物合計量に対しての固体の量);
− 19重量% グリセロール;
− 19重量% 1,2 プロパンジオール(プロピレングリコール);
− 1重量% AOT;および
− 52重量% 水、
を含む。
【0279】
実験2〜11:ラテックスインク組成物の調製
実験1を、それぞれ、Surfynol 104(2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、Air Productsから得たもの)、Surfynol 440(エトキシル化2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、Air Productsから得たもの)、Dynol 604(Air Productsから得たもの)、Dynol 607(Air Productsから得たもの)、BYK 331、BYK 341、BYK 348、BYK 349(BYKから得たもの)、Tegowet 240(Evonikから得たもの)およびSilwet L−77(Sabicから得たもの)である、異なる界面活性剤で繰り返した。実験2〜11において、前記それぞれの界面活性剤を、前記インク組成物合計量に対して、1重量%の量で添加した。
【0280】
実験2〜11において得られた前記インク組成物の中で、30℃での静的(0.1Hz)、動的(10Hz)表面張力および標準ドットゲインを測定した。結果を表3に示す。前記動的表面張力およびドットゲインの間の相関関係も表3に示す。
【0281】
表3は、実験1〜11の前記インク組成物の被膜品質の観点から、前記エトキシル化アセチレングリコール界面活性剤の中では、Dynol 607が好ましく、前記シロキサン界面活性剤の中では、BYK 348、BYK 349、Tegowet 240および/またはSilwet L−77が好ましいことを示す。
【0282】
表3 実験1〜11によるインクの、表面張力、標準ドットゲイン(UPM Digifinesse glossプリント媒体上でのもの)および被膜品質
【表3】
1)決定されず
2)ロッド被膜実験で決定されるもの:A=滑らかコーティング;B=やや滑らかコーティング;C=乾燥中にいくらかディウェッティング;D=乾燥中にディウェッティング;E=瞬時のディウェッティング(測定方法を参照)。
【0283】
図1は、1重量% 界面活性剤を含有するインクの動的表面張力(x軸)および前記ドットゲイン(y軸)間の相関関係を図式で示す。
図1は、前記ドットゲインが、動的表面張力(曲線1)と良好な相関関係を有することをはっきりと示す。
【0284】
比較例A 2種の界面活性剤を含むラテックスインク組成物の調製
AOTおよびBYK 349(AOT単独の代わりのもの)ならびにPro−Jet Black APD 1000(FujiFilm Imaging Colorantsから得たもの)からなる界面活性剤の混合物で、実験1を繰り返した。前記構成成分の量を、得られるインク組成物が、以下:
− 5重量% Neocryl A−1127ラテックス(前記インク組成物合計量に対しての固体の量);
− 4重量% Pro−Jet Black APD 1000顔料(前記インク組成物合計量に対しての固体の量);
− 19.5重量% グリセロール;
− 19.5重量% プロピレングリコール;
− 0.4重量% AOT(前記第3タイプの界面活性剤);
− 0.25重量% BYK 349(前記第2タイプの界面活性剤);および
− 51.35重量% 水、
を含むように調節した。
【0285】
全ての量は、前記インク組成物合計量に対してのものである。界面活性剤の合計量は、0.65重量%を含んだ。
【0286】
前記インク組成物の表面張力は、0.1Hzで26.5mN/mおよび10Hzで34.0mN/mであった。2.16の標準ドットゲイン(UPM Digifinesse glossプリント媒体上でのもの)を得た。
【0287】
例1 2種の界面活性剤の混合物を含むラテックスインク組成物の調製。
【0288】
Surfynol 104およびBYK 349(AOTの代わりのもの)からなる界面活性剤の混合物で、実験1を繰り返した。前記構成成分の量を、得られるインク組成物が、以下:
− 5重量% Neocryl A−1127ラテックス(前記インク組成物合計量に対しての固体の量);
− 4重量% Pro−Jet Cyan APD 1000顔料(前記インク組成物合計量に対しての固体の量);
− 19.0重量% グリセロール;
− 19.0重量% プロピレングリコール;
− 1.0重量% surfynol 104(前記第1タイプの界面活性剤);
− 0.6重量% BYK 349(前記第2タイプの界面活性剤);および
− 51.4重量% 水、
を含むように調節した。
【0289】
全ての量は、前記インク組成物合計量に対してのものである。界面活性剤の合計量は、1.6重量%を含んだ。
【0290】
前記インク組成物の表面張力は、0.1Hzで25.4mN/mおよび10Hzで34.0mN/mであった。2.21の標準ドットゲイン(UPM Digifinesse glossプリント媒体上でのもの)を得た。
【0291】
例2 2種の界面活性剤の混合物を含むラテックスインク組成物の調製。
【0292】
Surfynol 440およびBYK 349(AOTの代わりのもの)からなる界面活性剤の混合物で、実験1を繰り返した。前記構成成分の量を、得られるインク組成物が、以下:
− 5重量% Neocryl A−1127ラテックス(前記インク組成物合計量に対しての固体の量);
− 4重量% Pro−Jet Cyan APD 1000顔料(前記インク組成物合計量に対しての固体の量);
− 19.0重量% グリセロール;
− 19.0重量% プロピレングリコール;
− 1.0重量% surfynol 440(前記第1タイプの界面活性剤);
− 0.6重量% BYK 349(前記第2タイプの界面活性剤);および
− 51.4重量% 水、
を含むように調節した。
【0293】
全ての量は、前記インク組成物合計量に対してのものである。界面活性剤の合計量は、1.6重量%を含んだ。
【0294】
前記インク組成物の表面張力は、0.1Hzで24.5mN/mおよび10Hzで33.4mN/mであった。2.31の標準ドットゲイン(UPM Digifinesse glossプリント媒体上でのもの)を得た。
【0295】
例3 2種の界面活性剤の混合物を含むラテックスインク組成物の調製。
【0296】
Dynol 607およびBYK 349(AOTの代わりのもの)からなる界面活性剤の混合物で、実験1を繰り返した。前記構成成分の量を、得られるインク組成物が、以下:
− 5重量% Neocryl A−1127ラテックス(前記インク組成物合計量に対しての固体の量);
− 4重量% Pro−Jet Cyan APD 1000顔料(前記インク組成物合計量に対しての固体の量);
− 19.0重量% グリセロール;
− 19.0重量% プロピレングリコール;
− 1.0重量% Dynol 607(前記第1タイプの界面活性剤);
− 0.6重量% BYK 349(前記第2タイプの界面活性剤);および
− 51.4重量% 水、
を含むように調節した。
【0297】
全ての量は、前記インク組成物合計量に対してのものである。界面活性剤の合計量は、1.6重量%を含んだ。
【0298】
前記インク組成物の表面張力は、0.1Hzで25.1mN/mおよび10Hzで34.2mN/mであった。2.37の標準ドットゲイン(UPM Digifinesse glossプリント媒体上でのもの)を得た。
【0299】
例4 3種の界面活性剤の混合物を含むラテックスインク組成物の調製。
【0300】
995グラムの比較例Aの前記ラテックスインク組成物を、5グラムのDynol 607と混合して撹拌した。本例の前記インク組成物は、以下:
− 4.98重量% Neocryl A−1127ラテックス(前記インク組成物合計量に対しての固体の量);
− 3.98重量% Pro−Jet Black APD 1000顔料(前記インク組成物合計量に対しての固体の量);
− 19.4重量% グリセリン;
− 19.4重量% プロピレングリコール;
− 0.4重量% AOT(前記第3タイプの界面活性剤);
− 0.25重量% BYK 349(前記第2タイプの界面活性剤);
− 0.50重量% Dynol 607(前記第1タイプの界面活性剤);および
− 51.09重量% 水、
を含んだ。
【0301】
全ての量は、前記インク組成物合計量に対してのものである。界面活性剤の合計量は、1.15重量%を含んだ。
【0302】
前記インク組成物の表面張力は、0.1Hzで25.9mN/mおよび10Hzで31.5mN/mであった。2.27の標準ドットゲイン(UPM Digifinesse glossプリント媒体上でのもの)を得た。
【0303】
例5 3種の界面活性剤の混合物を含むラテックスインク組成物の調製。
【0304】
990グラムの比較例Aの前記ラテックスインク組成物を、10グラムのDynol 607と混合して撹拌した。本例の前記インク組成物は、以下:
− 4.95重量% Neocryl A−1127ラテックス(前記インク組成物合計量に対しての固体の量);
− 3.96重量% Pro−Jet Black APD 1000顔料(前記インク組成物合計量に対しての固体の量);
− 19.31重量% グリセリン;
− 19.31重量% プロピレングリコール;
− 0.4重量% AOT(前記第3タイプの界面活性剤);
− 0.25重量% BYK 349(前記第2タイプの界面活性剤);
− 1.00重量% Dynol 607(前記第1タイプの界面活性剤);および
− 50.84重量% 水、
を含んだ。
【0305】
全ての量は、前記インク組成物合計量に対してのものである。界面活性剤の合計量は、1.65重量%を含んだ。
【0306】
前記インク組成物の表面張力は、0.1Hzで26.0mN/mおよび10Hzで31.1mN/mであった。2.32の標準ドットゲイン(UPM Digifinesse glossプリント媒体上でのもの)を得た。
【0307】
例6 3種の界面活性剤の混合物を含むラテックスインク組成物の調製。
【0308】
980グラムの比較例Aの前記ラテックスインク組成物を、20グラムのDynol 607と混合して撹拌した。本例の前記インク組成物は、以下:
− 4.90重量% Neocryl A−1127ラテックス(前記インク組成物合計量に対しての固体の量);
− 3.92重量% Pro−Jet Black APD 1000顔料(前記インク組成物合計量に対しての固体の量);
− 19.11重量% グリセリン;
− 19.11重量% プロピレングリコール;
− 0.39重量% AOT(前記第3タイプの界面活性剤);
− 0.25重量% BYK 349(前記第2タイプの界面活性剤);
− 2.00重量% Dynol 607(前記第1タイプの界面活性剤);および
− 50.32重量% 水、
を含んだ。
【0309】
全ての量は、前記インク組成物合計量に対してのものである。界面活性剤の合計量は、2.64重量%を含んだ。
【0310】
前記インク組成物の表面張力は、0.1Hzで26.1mN/mおよび10Hzで31.6mN/mであった。2.40の標準ドットゲイン(UPM Digifinesse glossプリント媒体上でのもの)を得た。
【0311】
例7 3種の界面活性剤の混合物を含むラテックスインク組成物の調製。
【0312】
Dynol 607の代わりにSurfynol 440で、例5を繰り返した。前記構成成分の量を、得られるインク組成物が、以下:
− 4.95重量% Neocryl A−1127ラテックス(前記インク組成物合計量に対しての固体の量);
− 3.96重量% Pro−Jet Black APD 1000顔料(前記インク組成物合計量に対しての固体の量);
− 19.31重量% グリセリン;
− 19.31重量% プロピレングリコール;
− 0.4重量% AOT(前記第3タイプの界面活性剤);
− 0.25重量% BYK 349(前記第2タイプの界面活性剤);
− 1.00重量% Surfynol 440(前記第1タイプの界面活性剤);および
− 50.84重量% 水、
を含むように調節した。
【0313】
全ての量は、前記インク組成物合計量に対してのものである。界面活性剤の合計量は、1.65重量%を含んだ。
【0314】
前記インク組成物の表面張力は、0.1Hzで25.1mN/mおよび10Hzで31.8mN/mであった。2.38の標準ドットゲイン(UPM Digifinesse glossプリント媒体上でのもの)を得た。
【0315】
比較例B 極性および無極性共溶媒ならびに2種の界面活性剤の混合物を含むラテックスインク組成物の調製。
【0316】
無極性共溶媒(1,2 プロパンジオールの代わりのもの)としてのジプロピレングリコールメチルエーテル(DOW Chemical Companyから得たもの)で、比較例Aを繰り返した。前記構成成分の量を、得られるインク組成物が、以下:
− 5重量% Neocryl A−1127ラテックス(前記インク組成物合計量に対しての固体の量);
− 4重量% Pro−Jet Black APD 1000顔料(前記インク組成物合計量に対しての固体の量);
− 19.5重量% グリセリン(極性共溶媒;ε
r=42.5);
− 19.5重量% ジプロピレングリコールメチルエーテル(無極性共溶媒;ε
r=10.44);
− 0.4重量% AOT(前記第3タイプの界面活性剤);
− 0.25重量% BYK 349(前記第2タイプの界面活性剤);および
− 51.35重量% 水、
を含むように調節した。
【0317】
前記共溶媒の相対的誘電定数間の差は、Δε
r=32.06である。
【0318】
前記インク組成物の表面張力は、0.1Hzで26.2mN/mおよび10Hzで35.6mN/mであった。2.05の標準ドットゲイン(UPM Digifinesse glossプリント媒体上でのもの)を得た。
【0319】
例8 極性および無極性共溶媒ならびに3種の界面活性剤の混合物を含むラテックスインク組成物の調製。
【0320】
990グラムの比較例Bの前記ラテックスインク組成物を、10グラムのDynol 607と混合して撹拌した。本例の前記インク組成物は、以下:
− 4.95重量% Neocryl A−1127ラテックス(前記インク組成物合計量に対しての固体の量);
− 3.96重量% Pro−Jet Black APD 1000顔料(前記インク組成物合計量に対しての固体の量);
− 19.31重量% グリセリン(極性共溶媒;ε
r=42.5);
− 19.31重量% ジプロピレングリコールメチルエーテル(無極性共溶媒;ε
r=10.44);
− 0.40重量% AOT(前記第3タイプの界面活性剤);
− 0.25重量% BYK 349(前記第2タイプの界面活性剤);
− 1.00重量% Dynol 607(前記第1タイプの界面活性剤);および
− 50.84重量% 水、
を含んだ。
【0321】
前記インク組成物の表面張力は、0.1Hzで26.5mN/mおよび10Hzで34.4mN/mであった。2.28の標準ドットゲイン(UPM Digifinesse glossプリント媒体上でのもの)を得た。
【0322】
例9 ポリマー共溶媒および3種の界面活性剤の混合物を含むラテックスインク組成物の調製。
【0323】
ラテックスインク組成物を、実験1と同様のやり方で調製した。ラテックスとして、Neocryl A−662ラテックス(DSMから得たもの、40重量%ラテックス、前記ラテックス粒子は、±100nmの平均粒径D50を有し、前記ラテックスは、MFFT>90℃および97℃のT
gを有する。)を、Neocryl A−1127の代わりに使用した。PEG600(Sigma Aldrichから得たもの)を、グリセロールの代わりにポリマー共溶媒として使用した。BYK 348、Tegowet 240およびDynol 607を含む界面活性剤の混合物を使用した。前記構成成分の量を、得られるインク組成物が、以下:
− 6.8重量% Neocryl A−662ラテックス(前記インク組成物合計量に対しての固体の量);
− 4重量% Pro−Jet Cyan APD 1000顔料(前記インク組成物合計量に対しての固体の量);
− 21.5重量% PEG600(ポリマー共溶媒);
− 5重量% 1,2 プロパンジオール;
− 0.87重量% Dynol 607(前記第1タイプの界面活性剤);
− 0.35重量% BYK 348(前記第2タイプの界面活性剤);
− 0.35重量% Tegowet 240(前記第2タイプの界面活性剤);および
− 61.13重量% 水、
を含むように調節した。
【0324】
前記インク組成物の表面張力は、0.1Hzで23.5mN/mおよび10Hzで30.0mN/mであった。2.68の実際のドットゲイン(UPM Digifinesse glossプリント媒体上でのもの)を得た。
【0325】
例10 2種のラテックスおよび2種の界面活性剤の混合物を含むラテックスインク組成物の調製。
【0326】
ラテックスインク組成物を、実験1と同様のやり方で調製した。ラテックスであるNeocryl A−662ラテックス(DSMから得たもの、40重量%ラテックス、前記ラテックス粒子は、±100nmの平均粒径D50を有し、前記ラテックスは、MFFT>90℃および97℃のT
gを有する。)およびNeocryl XK−237(DSMから得たアクリルラテックス)の混合物を、Neocryl A−1127の代わりに使用した。共溶媒として、グリセロール(Sigma Aldrichから得たもの)およびベタイン(すなわち、Sigma Aldrichから得たトリメチルグリシン)を使用した。Dynol 607(Air Productsから得たもの)およびZonyl FS−300(Sigma Aldrichから得たフッ素系界面活性剤)を含む界面活性剤の混合物を使用した。前記構成成分の量を、得られるインク組成物が、以下:
− 9.5重量% Neocryl A−662ラテックス(前記インク組成物合計量に対しての固体の量);
− 2.5重量% Neocryl XK−237ラテックス(前記インク組成物合計量に対しての固体の量);
− 1.9重量% Pro−Jet Cyan APD 1000顔料(前記インク組成物合計量に対しての固体の量);
− 15.3重量% グリセロール;
− 15.3重量% ベタイン;
− 0.95重量% イソプロピルアルコール(Sigma Aldrich);
− 0.96重量% ジプロピレングリコールメチルエーテル(Sigma Aldrich)
− 0.96重量% 1,2−ヘキサンジオール(Sigma Aldrich)
− 0.29重量% Vantex−T(Tamincoから得た、N,N−ジエタノール−n−ブチルアミン)
− 0.94重量% Dynol 607(前記第1タイプの界面活性剤);
− 0.41重量% Zonyl FS−300(前記第2タイプの界面活性剤);および
− 50.99重量% 水、
を含むように調節した。
【0327】
前記インク組成物の表面張力は、0.1Hzで24.5mN/mおよび10Hzで32.9mN/mであった。2.7の実際のドットゲイン(UPM Digifinesse glossプリント媒体上でのもの)を得た。
【0328】
例11 2種のラテックスおよび2種の界面活性剤の混合物を含むラテックスインク組成物の調製。
【0329】
ラテックスインク組成物を、実験1と同様のやり方で調製した。ラテックスであるNeocryl A−662ラテックス(DSMから得たもの、40重量%ラテックス、前記ラテックス粒子は、±100nmの平均粒径D50を有し、前記ラテックスは、MFFT>90℃および97℃のT
gを有する。)およびLubrijet N−240(Lubrizol Ltd GBから得たアクリルラテックス、40重量%ラテックス、前記ラテックス粒子は、±60nmの平均粒径D50を有し、前記ラテックスは、MFFT<10℃および28℃のT
gを有する。)の混合物を、Neocryl A−1127の代わりに使用した。共溶媒として、グリセロール(Sigma Aldrichから得たもの)およびベタイン(すなわち、Sigma Aldrichから得たトリメチルグリシン)を使用した。Surfynol 104(Air Productsから得たアセチレングリコール)およびDynol 604(Air Productsから得たエトキシル化アセチレングリコール)を含む界面活性剤の混合物である。前記構成成分の量を、得られるインク組成物が、以下:
− 4.0重量% Neocryl A−662ラテックス(前記インク組成物合計量に対しての固体の量);
− 4.0重量% Lubrijet N−240ラテックス(前記インク組成物合計量に対しての固体の量);
− 2.2重量% Pro−Jet Cyan APD 1000顔料(前記インク組成物合計量に対しての固体の量);
− 13.0重量% グリセロール;
− 13.0重量% ベタイン;
− 0.3重量% Vantex−T(Tamincoから得た、N,N−ジエタノール−n−ブチルアミン)
− 0.5重量% エチレングリコール(Sigma Aldrichから得たもの);
− 0.5重量% Surfynol 104(前記第1タイプの界面活性剤);
− 0.3重量% Dynol 604(前記第1タイプの界面活性剤);および
− 62.2重量% 水、
を含むように調節した。
【0330】
前記インク組成物の表面張力は、0.1Hzで27.3mN/mおよび10Hzで34.0mN/mであった。2.5の実際のドットゲイン(UPM Digifinesse glossプリント媒体上でのもの)を得た。
【0331】
例1〜11ならびに比較例AおよびBのラテックスインクのインク特性を、表4にまとめる。
【0332】
表4は、比較例A、例5および6の前記ラテックスインク組成物の全てが2.8またはそれより高い実際のドットゲイン(UPM Digifinesse gloss上でのもの)を示すことを示す。該例の前記インクの標準ドットゲインは、Dynol 607濃度の増加に伴って増加する。しかしながら、前記実際のドットゲインは、1重量%のDynol 607濃度で最適条件を有するようである。
【0334】
【表4】
1)前記実際のドットゲインを、比較例Aの前記インクについて26.7μm(10pl)であり;例5の前記インクについて26.3μm(9.5pl)であり;例6の前記インクについて26μm(9.2pl)である、液滴サイズ3の(実際のプリンタ中の)京セラ タイプKJ4Bプリントヘッドで決定する。表4に示す前記実際のドットゲイン値を、UPM digifinesse glossプリント媒体で決定する。
2)決定されず
例12 異なる媒体上での、比較例Aならびに例5、6、9、10および11の前記ラテックスインクのドットゲインの決定。
【0335】
比較例Aならびに例5、6、9、10および11の前記インクを、多数の異なる受信媒体上にプリントした。該媒体上の前記実際のドットゲインを決定した。結果を表5に示す。
【0336】
表5 多岐にわたる受信媒体上での比較例(CE)A、例5、6、9、10および11の前記インクの実際のドットゲイン
【0337】
【表5】
4)決定されず
表5は、例5、6、9、10および11の前記ラテックスインク組成物が、幅広い媒体上で2.5またはそれより高い実際のドットゲインを示したことを示す。
【0338】
例5:試験された7個の媒体のうち6個;
例6:試験された7個の媒体のうち5個;
例9:試験された4個の媒体中4個。TCP Gloss、Hello Mattおよび三菱 MD1084上の例9の前記インクの前記ドットゲインは決定されなかった。したがって、合計7個の媒体のうち少なくとも4個が、2.5より高いドットゲインを示した;
例10:試験された4個の媒体のうち4個(すなわち、7個の媒体のうち少なくとも4個);
例11:試験された6個の媒体のうち3個(すなわち、7個の媒体のうち少なくとも3個だが、7個の媒体のうち多くとも4個)、である。
【0339】
比較例Aの前記インクで、試験された7個の媒体のうち3個のコーティングされた媒体が、2.5またはそれより高い実際のドットゲインを示した。したがって、本発明のインク組成物がプリントされ、2.5またはそれより高いドットゲインをもたらした媒体(例えば、例5、6、9、10および11など)の範囲は、従来技術のインク(例えば、比較例Aなど)と同等か、またはそれより大きい。
【0340】
表5は、1重量%のDynol 607を含む例5の前記ラテックスインク組成物が、前記試験された7個の媒体のうち4個について2.8またはそれより高いドットゲインを示すことを示す一方で、比較例A(Dynol 607なし)および例6(2重量%のDynol 607)の前記インクは、それぞれ前記試験された7個の媒体のうち1個または2個について2.8またはそれより高いドットゲインを示すのみである。
【0341】
例9(0.87重量%のDynol 607)の前記インク組成物は、前記試験された4個の媒体のうち1個について2.8またはそれより高い実際のドットゲインを示すことを示す。この例の前記インクは、乾燥中に前記インクの粘度を高めるポリマー共溶媒(PEG 600)を含む。
【0342】
図2は、比較例A(
図2のインクX、曲線2)および例9(
図2のインクY、曲線3)の前記インクの乾燥挙動を示す。
図2は、乾燥時間(x軸)に関数としての粘度(y軸)を示す。
図2は、ポリマー共溶媒を含有するインク(インクY)が、モノマー共溶媒を含むインク(インクX)より経時的に迅速な粘度増加を示すことを、明確に示す。例6の前記インクは、「粘度増加インク」とみなされてもよい。粘度増加挙動は、乾燥の際にプリントされたインク滴が拡張することを制限し、よって、合一または画像にじみを防止するかまたは少なくとも軽減する。合一レベルの減少を、矢印4で示す。
【0343】
本発明の例1〜11の前記インクは、機械コーティングされたまたはオフセットコーティングされた媒体上での優れた信頼性および良好なプリント品質を示した。
【0344】
本発明の詳細な態様を、本明細書において開示する;しかしながら、前記開示された態様は、本発明の単なる例であって、それは、種々の形態で具体化されることができることが理解されなければならない。したがって、本明細書において開示された具体的な構造および機能の詳細は、限定するものとして解釈されてはならず、単に特許請求の範囲の根拠として、および当業者が事実上のおよび適切に詳細な構造において本発明を種々に用いることを教示するための代表的根拠として解釈されなければならない。特に、別個の従属項に示され、記載された特徴を、組み合わせて適用してもよく、かかる従属項の泡揺る組み合わせを、本明細書により開示する。