(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水面に浮く浮台(3)上に、発電機(4)と、波によって上下動するフロート(5)と、フロート(5)が上下動する動力を発電機(4)の回転軸(4a)の回転力に変換する動力伝達機構(7)とを備えた波力発電装置であって、
浮台(3)の波を受ける波当壁(9)に上下方向の案内レール(11)が固着され、この案内レール(11)に波当壁(9)に当たる波によって上下動するフロート(5)が支持され、このフロート(5)に動力伝達機構(7)の作動杆(33)が上方に突設されており、
前記案内レール(11)は波当壁(9)に対面しかつ波を受ける後壁部(12)と、この後壁部(12)から前方突出した左右一対の側壁部(13)とが形成されており、
前記フロート(5)は、案内レール(11)の左右側壁部(13)間に位置する台車部(18)と、この台車部(18)の前面に設けたフロート部(17)とが設けられていることを特徴とする波力発電装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の場合、海面を伝わる波が上下動する高さの範囲でフロートが上下動するため、比較的フロートの上下動が小さく、大きな電力を得ることができないという問題があった。
本発明は上記問題点に鑑み、打ち寄せる波によってフロートを上下動させて大きな電力を得ることができる波力発電装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明における課題解決のための具体的手段は、次の通りである。
この技術的課題を解決する本発明の技術的手段は、水面に浮く浮台3上に、発電機4と、波によって上下動するフロート5と、フロート5が上下動する動力を発電機4の回転軸4aの回転力に変換する動力伝達機構7とを備えた波力発電装置であって、
浮台3の波を受ける波当壁9に上下方向の案内レール11が固着され、この案内レール11に波当壁9に当たる波によって上下動するフロート5が支持され、このフロート5に動力伝達機構7の作動杆33が上方に突設されて
おり、
前記案内レール11は波当壁9に対面しかつ波を受ける後壁部12と、この後壁部12から前方突出した左右一対の側壁部13とが形成されており、
前記フロート5は、案内レール11の左右側壁部13間に位置する台車部18と、この台車部18の前面に設けたフロート部17とが設けられている点にある。
いる点にある。
【0006】
また、本発明の他の技術的手段は、前記
案内レール11の左右側壁部13は浮台3の波当壁9の下部から上部まで略全長に亘って設けられており、
前記フロート5は、フロート部17の下部前側に前上がり傾斜した傾斜面19が形成されている点にある。
【0007】
また、本発明の他の技術的手段は、
前記動力伝達機構7は、作動杆33に上下方向に設けたラック34と、このラック34に噛合されている第1ピニオン35と、該第1ピニオン35から作動杆33の上昇する動力を一方向クラッチ37を介して伝達する第1ピニオン軸38と、ラック34に噛合されている第2ピニオン40と、該第2ピニオン40から作動杆33の下降する動力を一方向クラッチ41を介して伝達する第2ピニオン軸42とを備えており、
前記動力伝達機構7は、第1ピニオン35と第2ピニオン40とが上下に配置して1本のラック34に噛合され、第1ピニオン軸38の回転と第2ピニオン軸42の回転とを1台の発電機4の回転軸4aに同一方向に伝達する伝動手段が設けられ、作動杆33のラック34とは反対側に、作動杆33と当接して第1ピニオン35及び第2ピニオン40とラック34との噛合を確保するバックアップ部材49が設けられている点にある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、浮台の波を受ける波当壁にフロートを支持していることにより、波当壁に海面を伝わる波が当たると、波当壁に波が衝当して大きく跳ね上がり、波濤となって波の高さの数倍になり、また、波が引くときにも、波の底より更に深く下降し、このため、海面を伝わる波が上下動する高さよりもフロートを大きく上下動させることができ、発電機でより大きな電力を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜
図6は本発明の第1実施形態を示している。
図1〜
図6において、波力発電装置1は、水面に浮く浮台3に、発電機4と、波によって上下動するフロート5と、フロート5が上下動する動力を発電機4の回転軸4aの回転力に変換する動力伝達機構7とを備えている。
【0011】
浮台3は、コンクリートによって形成された内部空洞の浮きドックであり、アンカーによって係留されており、例えば長手方向の長さが50m、幅方向の長さが15m、高さが6m程度に設定され、幅方向の一端部が波を受ける波当壁9とされている。従って、浮台3を海に設置する場合、幅方向の一端部の波当壁9側を波が来る方向に向けて海に浮かべ、風向きに応じて波当壁9の方向を変更できるようになっている。
【0012】
波当壁9に上下方向の案内レール11が固着されている。案内レール11は平面視で後壁部12と左右一対の側壁部13とを有する断面コの字状に形成され、波当壁9の上下方向の略全長に亘る長さ又はそれ以上の長さを有し、左右側壁部13の前端部に左右方向内方に突出した突出部15が設けられて、左右に案内溝14が形成されている。この案内レール11は浮台3の長手方向に一定間隔をおいて多数列状に配置固定されている。
【0013】
フロート5は、フロート部17と台車部18とを有し、フロート部17はプラスチック等で内部空間の直方体形状に形成され、フロート部17の下部前側に前上がりに傾斜した傾斜面19が形成されている。
台車部18は、台車本体21の上部と下部とにコロ体22が左右方向の両側に設けられ、コロ体22は台車本体21に左右方向の支持軸廻りに回転自在に支持されている。コロ体22は案内レール11の左右の案内溝14に上下方向に転動自在に保持され、これにより台車部18は案内レール11に沿って上下方向に移動自在に保持され、フロート部17は台車本体21の前面側に固着されている。
【0014】
而して、フロート5が台車部18を介して案内レール11に上下動自在に支持され、波当壁9に当たる波濤と引波とによって波当壁9に沿って上下動するように構成されている。
発電機4は浮台3上に設けた伝動部ケース25に収納されている。伝動部ケース25は、浮台3上の各案内レール11の上方に配置され、各案内レール11に対応して浮台3の長手方向に間隔をおいて多数配設されている。
【0015】
各伝動部ケース25は、上下壁と左右一対の側壁27と、左右側壁27の後端部間を開閉自在に閉塞する後蓋28と左右側壁27の前端部から前方に突設した左右一対の支持壁29とを有し、左右の支持壁29は前方に向けて小幅になった三角板形状に形成されている。左右側壁27の前端部間は、
図4に2点鎖線で示すように、後述するピニオン35,40を突出させる開口を形成した前壁30によって閉塞されている。
【0016】
一方の側壁27には後述する第1ピニオン軸38、第2ピニオン軸
42及び中間軸57に対応して軸受孔31が設けられると共に、これら軸受孔31を着脱自在に塞ぐ蓋体32が設けられている。
動力伝達機構7は、浮台3に各案内レール11に対応して長手方向に間隔をおいて多数配設されている。動力伝達機構7の一部が伝動部ケース25内に収納されている。
【0017】
動力伝達機構7は、フロート5に上方突設した作動杆33と、作動杆33に上下方向に設けたラック34と、ラック34に噛合されている第1ピニオン35と、該第1ピニオン35から作動杆33の上昇する動力を一方向クラッチ37を介して伝達する第1ピニオン
軸38と、ラック34に噛合されている第2ピニオン40と、該第2ピニオン40から作動杆33の下降する動力を一方向クラッチ41を介して伝達する第2ピニオン軸42とを備えている。
【0018】
而して、第1ピニオン軸38は、作動杆33の上昇動作に連動して矢印a方向に回転し、第2ピニオン軸42は、作動杆33の下降動作に連動して矢印d方向に回転するようになっている。
また、動力伝達機構7には、第1ピニオン軸38の回転を発電機4の回転軸4aに伝達する第1伝動手段45と、第2ピニオン軸42の回転を発電機4の回転軸4aに伝達する第2伝動手段46とが設けられ、作動杆33のラック34とは反対側に、作動杆33と当接して第1ピニオン35及び第2ピニオン40とラック34との噛合を確保するバックアップ部材49が設けられている。
【0019】
作動杆33は前後方向に一定幅を有する上下方向に長い杆状に形成され、作動杆33の後部にラック34が形成されている。作動杆33はフロート5から上方に突出し、その下部側が案内レール11内にあって案内レール11に沿って上方に配置され、上部側は案内レール11から上方に突出して左右支持壁29間に挿通されている。
第1ピニオン軸38と第2ピニオン軸42とは上下に離間して配置され、それぞれ伝動部ケース25の左右側壁27に回転自在に支持されている。第1ピニオン35と第2ピニオン40とは上下に配置され、作動杆33の1本のラック34にそれぞれ噛合されている。
【0020】
第1伝動手段45は、第1ピニオン軸38に外嵌固定した第1駆動スプロケット51と、発電機4の回転軸4aに外嵌固定した第1受動スプロケット52と、第1駆動スプロケット51と第1受動スプロケット52とに巻回した第1チェーン53とを有し、第1ピニオン軸38の回転を発電機4の回転軸4aに矢印f方向に伝達するように構成されている。
【0021】
第2伝動手段46は、伝動部ケース25に回転自在に支持した中間軸57と、第2ピニオン軸42に外嵌固定した駆動ギヤ58と、中間軸57に外嵌固定した受動ギヤ59と、中間軸57に外嵌固定した第2駆動スプロケット61と、発電機4の回転軸4aに外嵌固定した第2受動スプロケット62と、第2駆動スプロケット61と第2受動スプロケット62とに巻回した第2チェーン63とを有し、第2ピニオン軸42の回転を発電機4の回転軸4aに矢印f方向に伝達するように構成されている。中間軸57は、第2ピニオン軸42の後方に左右方向に配置され、左右の側壁27又は伝動部ケース25に突設した中間側壁等に回転自在に支持されている。
【0022】
而して、第1伝動手段45及び第2伝動手段46は、第1ピニオン軸38の回転及び第2ピニオン軸42の回転を1台の発電機4の回転軸4aに同一方向に伝達するように構成されている。
バックアップ部材49は、コロ体65を有しており、左右支持壁29の前部に左右方向の支持軸66が連結固定され、この支持軸66にコロ体65が回転自在に外嵌され、コロ体65は作動杆33の前面を転動するようになっている。
【0023】
上記第1実施形態によれば、浮台3を海等にその波当壁9を沖に向けて浮かべておく。浮台3に向けて波がくると、波当壁9に波が衝当して大きく跳ね上がって波濤となり、例えば海面の波の高さの2倍余りの高さになり、また、波が引くときには、波の底の高さが海面を伝わる波の底の高さの1.5倍余りに深く下降する。このため、波濤は海面波が上下動する高さの数倍もフロート5を大きく上下動させることができる。
【0024】
また、浮台3に向けて波がくると、波がフロート5の傾斜面19に当たって、波濤から上方に向かう力を受け、フロート5がスムーズかつ確実に上昇する。
フロート5が上昇するときは、台車部18のコロ体22が案内レール11の左右の案内溝14を上方向に転動し、フロート5が下降するときは、台車部18のコロ体22が案内レール11の左右の案内溝14を下方向に転動し、フロート5が波の上下動に対応して波当壁9に沿ってスムーズに上下移動する。
【0025】
フロート5が上昇すると、第1ピニオン35と第2ピニオン40とが矢印a,c方向に
回転し、第1ピニオン35から作動杆33の上昇する動力が第1ピニオン軸38に伝達され、第1ピニオン軸38が矢印a方向に回転する。このとき、作動杆33の上昇する動力は第2ピニオン40から第2ピニオン軸42には伝達されず、第2ピニオン軸42は停止している。
【0026】
第1ピニオン軸38の回転は第1駆動スプロケット51と第1チェーン53と第1受動スプロケット52とを介して発電機4の回転軸4aに伝達され、発電機4の回転軸4aを矢印f方向に回転させる。その結果、フロート5(作動杆33)が上昇する動力が発電機4で電力に変換される。
フロート5が下降すると、第1ピニオン35と第2ピニオン40とが矢印b、d方向に回転し、第2ピニオン40から作動杆33の上昇する動力が第2ピニオン軸42に伝達され、第2ピニオン軸42が矢印d方向に回転する。このとき、作動杆33の上昇する動力は第1ピニオン35から第1ピニオン軸38には伝達されず、第1ピニオン軸38は停止している。
【0027】
第2ピニオン軸42の回転は駆動ギヤ58と受動ギヤ59とを介して中間軸57に伝達され、中間軸57を矢印e方向に回転させる。この中間軸57の回転は第2駆動スプロケット61と第2チェーン63と第2受動スプロケット62とを介して発電機4の回転軸4aに伝達され、発電機4の回転軸4aを矢印f方向に回転させる。その結果、フロート5が下降する動力が発電機4で電力に変換される。
【0028】
従って、作動杆33が上昇する動力と下降する動力との両方を1台の発電機4の回転軸4aに伝達することが可能になり、フロート5が上昇する動力と下降する動力の両方が1台の発電機4によって電力に変換され、より大きな電力を効率よく取り出すことができる。
また、作動杆33に設けた1本のラック34で、第1ピニオン35と第2ピニオン40とを介して第1ピニオン軸38と第2ピニオン軸42との両方に、フロート5が上昇する動力と下降する動力とを1台の発電機4で発電させることができ、発電機4の台数やラック34の個数を減らすることができ、全体の構成部材を少なくして波力発電装置1を安価かつ容易に製造することができる。
【0029】
図7は第2実施形態を示し、フロート5に上方突設した作動杆33が平面視コの字状に形成され、作動杆33の左右後部に第1ラック34(34a)と第2ラック34(34b)とが上下方向に設けられ、作動杆33の上部後方に、第1ラック34aに噛合する第1ピニオン35と、第2ラック34bに噛合する第2ピニオン40と、第1ピニオン35から作動杆33の上昇する動力を一方向クラッチ37を介して伝達する第1ピニオン軸38と、第2ピニオン40から作動杆33の下降する動力を一方向クラッチ37を介して伝達する第2ピニオン軸42とが設けられている。
【0030】
而して、動力伝達機構7は、作動杆33と第1ラック34aと第2ラック34bと第1ピニオン35と第2ピニオン40と第1ピニオン軸38と第2ピニオン軸42とを備えている
また、発電機4は伝動部ケース25の左右に一対設けられており、第1ピニオン軸38を一方の発電機4の回転軸4aに連結固定し、第2ピニオン軸42を他方の発電機4の回転軸4aに連結固定し、フロート5が上昇する動力で一方の発電機4を回転し、フロート5が下降する動力で他方の発電機4を回転するようにしている。その他の点は前記実施形態の場合と同様の構成である。
【0031】
なお、前記実施形態では、浮台3上に、フロート5が左右方向に多数設けられ、これら多数の各フロート5に対応して1台又は2台ずつ発電機4が設けられているが、これに代え、例えば各フロート5に対応する第1ピニオン軸38又は第2ピニオン軸42の複数を互いに連結し、この連結したピニオン軸38,42を1台の発電機4の回転軸4aに連結することにより、複数のフロート5に対応して1台の発電機4を設け、複数のフロート5が上下動する動力を1台の発電機4の回転軸4aの回転力に変換して、1台の発電機4で電力を取り出すようにしてもよい。
【0032】
また、前記実施形態では、フロート5の上下動をラック34とピニオン35,40とを
介して発電機4の回転軸4aに伝達するようにしているが、これに代え、作動杆33にコロを押し当てて、作動杆33の上下動でコロが回転するようにし、このコロの回転を発電機4の回転軸4aに伝達して発電するようにしてもよい。
また、発電機4側を正転と逆転のどちらの回転によっても電力を取り出せるようにし、フロート5が上昇するときに発電機4を正転回転させ、フロート5が下降するときに発電機4を逆転回転させて、フロート5の上下動により電力を取り出すようにしてもよい。