(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記固体燃料の燃焼条件の変更時に、酸素濃度、一酸化炭素濃度及び前記固体燃料中の硫黄分含有率に基づいて、前記燃焼バーナからの前記燃焼ガスの供給量及び前記追加空気ノズルからの前記追加空気の供給量の少なくとも一方を制御する、請求項1に記載のボイラ。
前記燃焼バーナと前記追加空気ノズルとの間で前記火炉の内壁面に沿って水平に保護ガスを吹き込む保護ガスノズルを備え、前記制御部は、前記レーザ分析部で検出された酸素濃度、一酸化炭素濃度及び前記固体燃料中の硫黄分含有率に基づいて、前記保護ガスノズルからの前記保護ガスの供給量を制御する、請求項1又は請求項2に記載のボイラ。
前記制御部は、前記固体燃料の燃焼条件の変更時に、酸素濃度、一酸化炭素濃度及び前記固体燃料中の硫黄分含有率に基づいて、前記保護ガスノズルからの前記保護ガスの供給量を制御する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のボイラ。
固体燃料の燃焼条件の変更時に、酸素濃度、一酸化炭素濃度及び前記固体燃料中の硫黄分含有率に基づいて、前記燃焼バーナからの前記燃焼ガスの供給量及び前記追加空気ノズルからの前記追加空気の供給量の少なくとも一方を制御する、請求項7に記載のボイラの燃焼制御方法。
前記第2ステップにおいて、レーザにより検出された酸素濃度、一酸化炭素濃度及び前記固体燃料中の硫黄分含有率に基づいて、前記燃焼バーナと当該燃焼バーナより上方に設けられた追加空気ノズルとの間で前記火炉の内壁面に沿って水平に吹き込まれる保護ガスの供給量を制御する、請求項7又は請求項8に記載のボイラの燃焼制御方法。
固体燃料の燃焼条件の変更時に、酸素濃度、一酸化炭素濃度及び前記固体燃料中の硫黄分含有率に基づいて、前記保護ガスの供給量を制御する、請求項9に記載のボイラの燃焼制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、硫黄含有燃料を燃焼させるボイラの火炉では、火炉のバーナ部の最上段の追加燃焼用空気ノズル(OFA:Over Fire Air)と追加空気ノズル(AA:Additional Air)との間の領域などでは、火炉内の空気が不足して炉壁付近の空気が不足して酸素濃度が低下する場合があり、また炉壁の中央部付近では火炎と炉壁までの距離が近く、高温領域となる場合がある。このような場合には、炉壁の中央部付近に低酸素、かつ、高温となる還元雰囲気にある領域が形成されるので、腐食成分である硫化水素(H
2S)が発生しやすくなり、炉壁の内面に腐食が発生する場合がある。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、硫化水素による炉壁の腐食を防ぐことができ、耐久性の向上を図ることが可能なボイラ及びボイラの燃焼制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のボイラは、中空形状をなして鉛直方向に沿って設置される火炉と、固体燃料と燃焼用空気とを混合した燃料ガスを前記火炉内に向けて吹き込むことで火炎旋回流を形成可能な燃焼バーナと、前記燃焼バーナより上方に設けられ、追加空気を前記火炉内に向けて吹き込む追加空気ノズルと、前記燃焼バーナより上方の領域に設けられ、レーザにより前記火炉内の酸素濃度及び一酸化炭素濃度を検出するレーザ分析部と、前記レーザ分析部で検出された酸素濃度、一酸化炭素濃度及び前記固体燃料中の硫黄分含有率に基づいて、前記燃焼バーナからの前記燃焼ガスの供給量及び前記追加空気ノズルからの前記追加空気の供給量の少なくとも一方を制御する制御部とを具備することを特徴とする。
【0007】
このボイラによれば、レーザによって火炉内の酸素濃度及び一酸化炭素濃度を検出し、検出された酸素濃度及び一酸化炭素濃度と固体燃料中の硫黄分含有率との関係に基づいて燃焼ガスの供給量を制御するので、火炉内に発生する硫化水素濃度を間接的に高い精度で検出することが可能となり、火炉内を硫化水素の発生を低減できる適切な酸素濃度に制御することが可能となる。これにより、ボイラは、硫化水素の発生量を低減してボイラの長期間の運転が可能になるだけでなく、酸素の供給量を適切に制御できるので、NOx及び固体燃料の未燃分の発生を低減することが可能となると共に、火炉の炉壁近傍の還元性雰囲気が軽減されるので、スラッギングを防止することも可能となる。
【0008】
本発明のボイラおいては、前記制御部は、前記固体燃料の燃焼条件の変更時に、酸素濃度、一酸化炭素濃度及び前記固体燃料中の硫黄分含有率に基づいて、前記燃焼バーナからの前記燃焼ガスの供給量及び前記追加空気ノズルからの前記追加空気の供給量の少なくとも一方を制御することが好ましい。この構成により、ボイラは、燃焼条件の変更時に対応した適切な時期に燃焼条件を制御することができる。
【0009】
本発明のボイラおいては、前記燃焼バーナと前記追加空気ノズルとの間で前記火炉の内壁面に沿って水平に保護ガスを吹き込む保護ガスノズルを備え、前記制御部は、前記レーザ分析部で検出された酸素濃度、一酸化炭素濃度及び前記固体燃料中の硫黄分含有率に基づいて、前記保護ガスノズルからの前記保護ガスの供給量を制御することが好ましい。この構成により、ボイラは、保護ガスによっても燃焼条件を制御することができるので、燃焼条件の制御が容易となる。
【0010】
本発明のボイラおいては、前記制御部は、前記固体燃料の燃焼条件の変更時に、酸素濃度、一酸化炭素濃度及び前記固体燃料中の硫黄分含有率に基づいて、前記保護ガスノズルからの前記保護ガスの供給量を制御することが好ましい。この構成により、ボイラは、燃焼条件の変更時に対応した適切な時期に燃焼条件を制御することができる。
【0011】
本発明のボイラおいては、前記保護ガスノズルから吹き込む保護ガス量は、追加空気量の一部が用いられることが好ましい。この構成により、ボイラは、保護ガスを追加空気の一部から確保することで、火炉に供給する空気量を変更することがなく、安定したボイラ効率を維持することができる。
【0012】
本発明のボイラおいては、前記保護ガスは、前記火炉から排出された排ガスの少なくとも一部が用いられることが好ましい。この構成により、ボイラは、保護ガスとして排ガスを火炉に供給することで、火炉の内壁面の高温化を抑制することができる。
【0013】
ボイラの燃焼制御方法は、固体燃料と燃焼用空気とを混合した燃料ガスを火炉内に向けて吹き込む燃焼バーナより上方の領域の酸素濃度及び一酸化炭素濃度をレーザにより検出する第1ステップと、検出された前記酸素濃度、一酸化炭素濃度及び前記固体燃料中の硫黄分含有率に基づいて、前記燃焼バーナからの前記燃焼ガスの供給量及び前記燃焼ガスノズルより上方に設けられた追加空気ノズルからの追加空気の供給量の少なくとも一方を制御する第2ステップとを含むことを特徴とする。
【0014】
このボイラの燃焼制御方法によれば、レーザによって火炉内の酸素濃度及び一酸化炭素濃度を検出し、検出された酸素濃度及び一酸化炭素濃度と固体燃料中の硫黄分含有率との関係に基づいて燃焼ガスの供給量を制御するので、火炉内に発生する硫化水素濃度を間接的に高い精度で検出することが可能となり、火炉内を硫化水素の発生を低減できる適切な酸素濃度に制御することが可能となる。これにより、ボイラの燃焼制御方法は、硫化水素の発生量を低減してボイラの長期間の運転が可能になるだけでなく、酸素の供給量を適切に制御できるので、NOx及び固体燃料の未燃分の発生を低減することが可能となると共に、火炉の炉壁近傍の還元性雰囲気が軽減されるので、スラッギングを防止することも可能となる。
【0015】
ボイラの燃焼制御方法においては、固体燃料の燃焼条件の変更時に、酸素濃度、一酸化炭素濃度及び前記固体燃料中の硫黄分含有率に基づいて、前記燃焼バーナからの前記燃焼ガスの供給量及び前記追加空気ノズルからの前記追加空気の供給量の少なくとも一方を制御することが好ましい。この構成により、ボイラの燃焼制御方法は、燃焼条件の変更時に対応した適切な時期に燃焼条件を制御することができる。
【0016】
ボイラの燃焼制御方法においては、前記第2ステップにおいて、レーザにより検出された酸素濃度、一酸化炭素濃度及び前記固体燃料中の硫黄分含有率に基づいて、前記燃焼バーナと当該燃焼バーナより上方に設けられた追加空気ノズルとの間で前記火炉の内壁面に沿って水平に吹き込まれる保護ガスの供給量を制御する。この方法により、ボイラは、保護ガスによっても燃焼条件を制御することができるので、燃焼条件の制御が容易となる。
【0017】
本発明のボイラの燃焼制御方法においては、前記制御部は、前記固体燃料の燃焼条件の変更時に、酸素濃度、一酸化炭素濃度及び前記固体燃料中の硫黄分含有率に基づいて、前記保護ガスノズルからの前記保護ガスの供給量を制御することが好ましい。
【0018】
本発明のボイラの燃焼制御方法においては、固体燃料の燃焼条件の変更時に、酸素濃度、一酸化炭素濃度及び前記固体燃料中の硫黄分含有率に基づいて、前記保護ガスの供給量を制御することが好ましい。この方法により、ボイラは、燃焼条件の変更時に対応した適切な時期に燃焼条件を制御することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、硫化水素による炉壁の腐食を防ぐことができ、耐久性の向上を図ることが可能なボイラ及びボイラの燃焼制御方法を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態により何ら限定されるものではない。また、以下の実施の形態は、適宜変更して実施可能である。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態に係る石炭焚きボイラ10の模式図であり、
図2は、石炭焚きボイラにおける燃焼バーナの平面図であり、
図3は、燃焼バーナの断面を示す
図2のIII−III断面図であり、
図4は、石炭焚きボイラにおける燃焼領域の平面図である。
【0023】
図1に示すように、石炭焚きボイラ10は、コンベンショナルボイラであって、火炉11と燃焼装置12とを有している。火炉11は、四角筒の中空形状をなして鉛直方向に沿って設置され、この火炉11を構成する火炉壁が伝熱管により構成されている。本実施の形態に係るボイラ10は、石炭(瀝青炭、亜瀝青炭など)を粉砕した微粉炭を微粉燃料(固体燃料)として用い、この微粉炭を燃焼バーナにより燃焼させ、この燃焼により発生した熱を回収することが可能な微粉炭焚きボイラである。
【0024】
燃焼装置12は、この火炉11を構成する火炉壁(伝熱管)の下部に設けられている。この燃焼装置12は、火炉壁に装着された複数の燃焼バーナ21,22,23,24,25を有している。そして、燃焼装置12は、周方向に沿って4個の燃焼バーナが均等間隔で配設されたものが1セットとして、鉛直方向に沿って5セット、つまり、5段配置されている。なお、この燃焼バーナ21,22,23,24,25は、CCF(Circular Corner Firing)燃焼方式であり、火炉11の形状や一つの段における燃焼バーナの数、段数はこの実施の形態に限定されるものではない。
【0025】
各燃焼バーナ21,22,23,24,25は、微粉炭供給管26,27,28,29,30を介して微粉炭機(ミル)31,32,33,34,35に連結されている。この微粉炭機31,32,33,34,35は、ハウジング内に鉛直方向に沿った回転軸心をもって粉砕テーブル(不図示)が駆動回転可能に支持され、この粉砕テーブルの上方に対向して複数の粉砕ローラが粉砕テーブルの回転に連動して回転可能に支持されて構成されている。これにより、石炭が複数の粉砕ローラと粉砕テーブルとの間に投入されると、ここで所定の大きさまで粉砕され、搬送用空気(1次空気)により分級された微粉炭を微粉炭供給管26,27,28,29,30から燃焼バーナ21,22,23,24,25に供給することができる。
【0026】
火炉11は、各燃焼バーナ21,22,23,24,25の装着位置に風箱36が設けられており、この風箱36に空気ダクト37の一端部が連結されており、この空気ダクト37は、他端部に送風機38が装着されている。これにより、送風機38により送られた燃焼用空気(2次空気)を空気ダクト37から風箱36に供給し、この風箱36から各燃焼バーナ21,22,23,24,25に供給することができる。
【0027】
ここで、燃焼装置12について詳細に説明するが、この燃焼装置12を構成する各燃焼バーナ21,22,23,24,25は、ほぼ同様の構成をなしていることから、最上段に位置する燃焼バーナ21についてのみ説明する。
【0028】
燃焼バーナ21は、
図2に示すように、火炉11における4つの角部に設けられる燃焼バーナ21a,21b,21c,21dから構成されている。各燃焼バーナ21a,21b,21c,21dは、微粉炭供給管26から分岐した各分岐管26a,26b,26c,26dが連結されると共に、空気ダクト37から分岐した各分岐管37a,37b,37c,37dが連結されている。
【0029】
火炉11の各角部にある各燃焼バーナ21a,21b,21c,21dは、火炉11に対して、微粉炭と搬送用空気が混合した微粉燃料混合気を吹き込むと共に、その微粉燃料混合気の外側に燃焼用空気を吹き込む。そして、各燃焼バーナ21a,21b,21c,21dからの微粉燃料混合気に着火することで、4つの火炎F1,F2,F3,F4を形成することができ、この火炎F1,F2,F3,F4は、火炉11の上方から見て(
図2参照)反時計周り方向に旋回する火炎旋回流となる。
【0030】
また、
図1に示すように、火炉11は、燃焼装置12の上段部に追加燃焼用空気供給装置41が設けられている。この追加燃焼用空気供給装置41は、火炉壁に装着された複数の追加燃焼用空気ノズル42,43を有している。この追加燃焼用空気ノズル42,43は、周方向に沿って4個均等間隔で配設されたものが1セットとして、鉛直方向に沿って2セット、つまり、2段配置されている。追加燃焼用空気供給装置41(追加燃焼用空気ノズル42,43)は、火炉11における燃焼バーナ21の装着位置より上方に配置されている。この追加燃焼用空気供給装置41は、火炉11に対して追加燃焼用空気(Over Fire Air)を吹き込むものである。追加燃焼用空気ノズル42,43は、燃焼バーナ21,22,23,24,25と同様に、火炉11における4つの角部に設けられる複数の追加燃焼用空気ノズルから構成されており、火炎旋回流と同様の追加燃焼用空気旋回流を形成する。そして、この追加空気ノズル42,43は、空気ダクト37から分岐した第1分岐空気ダクト44の端部が連結されている。
【0031】
このボイラ10においては、送風機38により送られた燃焼用空気を第1分岐空気ダクト44から追加燃焼用空気供給装置41に供給することができる。そして、各追加燃焼用空気ノズル42,43は、燃焼バーナ21,22,23,24,25が吹き込んだ微粉燃料混合気の上方に追加燃焼用空気を吹き込むことができる。
【0032】
火炉11は、燃焼装置12より上方に追加空気供給装置51が設けられている。この追加空気供給装置51は、火炉壁に装着された複数の追加空気ノズル52を有している。この追加空気ノズル52は、周方向に沿って4個均等間隔で配設されたものが1セット、つまり、1段配置されている。追加空気供給装置51(追加空気ノズル52)は、火炉11における燃焼バーナ21の装着位置より所定距離だけ上方に配置されている。この追加空気供給装置51は、火炉11に対して追加空気(Additional Air)を吹き込むものである。追加空気ノズル52は、燃焼バーナ21,22,23,24,25と同様に、火炉11における4つの角部に設けられる複数の追加空気ノズルから構成されており、火炎旋回流と同様の追加空気旋回流を形成する。そして、この追加空気ノズル52は、空気ダクト37から分岐した第2分岐空気ダクト53の端部が連結されている。
【0033】
このボイラ10においては、送風機38により送られた燃焼用空気を第2分岐空気ダクト53から追加空気供給装置51に供給することができる。そして、追加空気ノズル52は、燃焼バーナ21,22,23,24,25が吹き込んだ微粉燃料混合気及び追加燃焼用空気ノズル42,43が吹き込んだ追加燃焼用空気の所定距離だけ上方に追加空気を吹き込むことができる。
【0034】
火炉11は、燃焼装置12に保護ガス供給装置61が設けられている。この保護ガス供給装置61は、火炉壁に装着された複数の保護ガスノズル62,63,64を有している。この保護ガスノズル62,63,64は、周方向に沿って4個均等間隔で配設されたものが3セット、つまり、3段配置されている。保護ガス供給装置61(保護ガスノズル62,63,64)は、火炉11における燃焼バーナ21と同位置に配置されている。この保護ガス供給装置61は、火炉11に対して保護ガス(Wall Protection Air)としての空気を吹き込むものである。この保護ガスノズル62,63,64は、空気ダクト37から分岐した第3分岐空気ダクト65の端部が連結されている。
【0035】
本実施の形態において、燃焼装置12と保護ガス供給装置61は、一体に構成されている。燃焼バーナ21,22,23,24,25は、微粉燃料混合気を火炉11内に向けて吹き込むことで火炎旋回流を形成する。保護ガスノズル62,63,64は、燃焼バーナ21,22,23,24,25による微粉燃料混合気の吹き込み方向より炉壁側に空気(保護ガス)を吹き込む。なお、保護ガスノズル62,63,64は、ほぼ同様の構成となっている。
【0036】
また、火炉11は、燃焼バーナ21,22,23,24,25の上方に、燃焼バーナ21,22,23,24,25と追加空気ノズル52との間の領域の酸素濃度及び一酸化炭素濃度をレーザで検出するレーザ分析部100が設けられている。このレーザ分析部100で検出された酸素濃度及び一酸化炭素濃度は、燃焼バーナ21,22,23,24,25からの燃料ガスの供給量、追加空気ノズル52からの追加空気の供給量及び保護ガスノズル62,63,64からの保護ガスの供給量を制御する制御部200に送信される。制御部200は、レーザ分析部100で検出した酸素濃度及び一酸化炭素濃度に基づいて、燃焼バーナ21,22,23,24,25からの燃料ガスの供給量、追加空気ノズル52からの追加空気の供給量及び保護ガスノズル62,63,64からの保護ガスの供給量を制御して火炉11内の炉壁近傍の酸素濃度を1体積%以上に調整して火炉11内の硫化水素及びNOxを低減すると共に、未燃焼の燃料ガスを低減する。
【0037】
図2及び
図3に示すように、燃焼バーナ21は、火炉11における4つの角部に設けられる燃焼バーナ21a,21b,21c,21dから構成されている。保護ガスノズル62も、同様に、火炉11における4つの角部に設けられる保護ガスノズル62a,62b,62c,62dから構成されている。ここで、燃焼バーナ21aは、微紛燃料混合気を噴射する燃料ノズル81と、断面リング形状をなして燃料ノズル81の外側から2次空気を吹き込み可能な2次空気ノズル82とを有し、保護ガスノズル62aは、2次空気ノズル82における一側部のみに配置される。
【0038】
そして、各保護ガスノズル62a,62b,62c,62dは、第3分岐空気ダクト65から分岐した各分岐管65a,65b,65c,65dが連結されている。そして、各保護ガスノズル62a,62b,62c,62dは、火炉11の内壁面に沿って水平に空気を吹き込むことができる。これにより、送風機38により送られた燃焼用空気を第3分岐空気ダクト65から保護ガス供給装置61に供給することができる。そして、保護ガスノズル62,63,64(62a,62b,62c,62d)は、燃焼バーナ21,22,23,24,25が吹き込んだ微粉燃料混合気の外側に空気を吹き込むことができる。この場合、保護ガスノズル62(62a,62b,62c,62d),63,64が吹き込む空気量は、全空気量比で1%〜5%程度であり、ノズル流速は、20m/s〜100m/sである。
【0039】
本実施の形態において、保護ガス供給装置61は、保護ガスノズル62,63,64が火炉11の内壁面と各燃焼バーナ21,22,23,24,25からの火炎との間に空気を吹き込むものである。そのため、
図2に示すように、燃焼バーナ21a,21b,21c,21dは、火炉11内に微粉燃料混合気を吹き込んで火炎F1,F2,F3,F4を形成し、火炎旋回流を形成可能である。一方、保護ガスノズル62a,62b,62c,62dは、この火炎F1,F2,F3,F4の外側に空気を吹き込んで空気流A1,A2,A3,A4を形成可能である。
【0040】
本実施の形態では、燃焼装置12と保護ガス供給装置61とが一体に構成されることで、燃焼バーナ21,22,23に保護ガスノズル62,63,64が装着されることで、燃焼バーナ21,22,23及び保護ガスノズル62,63,64が燃焼バーナとして構成される。ここで、上方の3段の燃焼バーナ21,22,23に保護ガスノズル62,63,64を設けたが、この構成に限定されるものではない。ボイラ10の形態に応じて上方の1段の燃焼バーナ21にのみ保護ガスノズル62を設けてもよく、また、全ての燃焼バーナ21,22,23,24,25に保護ガスノズルを設けてもよい。
【0041】
そして、火炉11に供給する1次空気量(搬送用空気量)、2次空気量、追加燃料用空気量、追加空気量、保護ガス量としての空気量は、ボイラの形態に応じて設定されている。ボイラの形態に応じて燃焼バーナ21,22,23,24,25が吹き込む1次空気量及び2次空気量、追加燃焼用空気ノズル42,43が吹き込む追加燃料用空気量、追加空気ノズル52が吹き込む追加空気量が設定され、保護ガスノズル62が吹き込む保護ガス量は、追加空気量の一部が用いられる。
【0042】
上述したように、燃焼バーナ21,22,23,24,25は、微粉炭と搬送用空気が混合した微粉燃料混合気(燃料ガス)及び2次空気を火炉11内に向けて吹き込むことで火炎旋回流を形成することができる。また、追加燃焼用空気ノズル42,43は、燃焼バーナ21,22,23,24,25の上段で、追加燃焼用空気を火炉11内に向けて吹き込むことができる。また、追加空気ノズル52は、燃焼バーナ21,22,23,24,25の上方で、追加空気を火炉11内に向けて吹き込むことができる。
【0043】
また、保護ガスノズル62,63,64は、燃焼バーナ21,22,23,24,25と同位置で、保護ガスとしての空気を火炉11の内壁面に沿って水平に吹き込むことができる。すると、
図4に示すように、保護ガスノズル62a,62b,62c,62dは、燃焼バーナ21a,21b,21C,21dからの火炎F1,F2,F3,F4と、各炉壁11A,11B,11C,11Dの内壁面との間に空気流A1,A2,A3,A4を形成する。そのため、空気流A1,A2,A3,A4により火炎F1,F2,F3,F4が火炉11の内壁面に直接接触することが抑制され、特に、内壁面における水平方向中間部領域11a,11b,11c,11dの加熱が防止される。
【0044】
なお、本実施の形態の燃焼装置12を構成する各燃焼バーナ21,22,23,24,25は、中心部に油燃料を噴射可能な油ノズルと、この油ノズルの外側に微粉燃料混合気を噴射可能な燃料ノズルと、この燃料ノズルの外側に2次空気を噴射可能な2次空気ノズルを有している。これにより、ボイラ起動時に、各燃焼バーナ21,22,23,24,25は、油燃料を火炉11内に噴射して火炎を形成し、その後、微粉燃料混合気と2次空気を火炉11内に噴射して火炎を形成している。
【0045】
そして、
図1に示すように、火炉11は、上部に煙道70が連結されており、この煙道70に、対流伝熱部として排ガスの熱を回収するための過熱器(スーパーヒータ)71,72、再熱器(リヒータ)73,74、節炭器(エコノマイザ)75,76,77が設けられており、火炉11での燃焼で発生した排ガスと水との間で熱交換が行われる。
【0046】
煙道70は、その下流側に熱交換を行った排ガスが排出される排ガス管78が連結されている。この排ガス管78は、空気ダクト37との間にエアヒータ79が設けられ、空気ダクト37を流れる空気と、排ガス管78を流れる排ガスとの間で熱交換を行い、燃焼バーナ21,22,23,24,25に供給する燃焼用空気を昇温することができる。
【0047】
そして、排ガス管78は、図示しないが、脱硝装置、電気集塵機、誘引送風機、脱硫装置が設けられ、下流端部に煙突が設けられている。
【0048】
次に、本実施の形態に係る石炭焚きボイラ10の全体動作について説明する。石炭焚きボイラ10は、微粉炭機31,32,33,34,35が駆動すると、生成された微粉炭が搬送用空気と共に微粉炭供給管26,27,28,29,30を通して燃焼バーナ21,22,23,24,25に供給される。また、加熱された燃焼用空気が空気ダクト37から風箱36を介して各燃焼バーナ21,22,23,24,25に供給される。また、加熱された燃焼用空気が空気ダクト37から分岐した各分岐空気ダクト44,53,65により追加燃焼用空気ノズル42,43、追加空気ノズル52、保護ガスノズル62に供給される。
【0049】
燃焼バーナ21,22,23,24,25は、微粉炭と搬送用空気とが混合した微粉燃料混合気と2次空気を火炉11に吹き込み、このときに着火することで燃焼領域Aに火炎旋回流を形成することができる。また、このとき、追加燃焼用空気ノズル42,43は、追加燃焼用空気を火炉11に吹き込むことで、燃焼領域Aを適正に形成することができる。この火炉11では、微粉燃料混合気と2次空気及び追加燃焼用空気が燃焼して火炎旋回流が生じ、燃焼領域Aで火炎旋回流が生じると、火炉11内を燃焼ガス(排ガス)が旋回しながら上昇して還元領域Bに至る。
【0050】
このとき、火炉11にて、燃焼バーナ21,22,23,24,25は、空気の供給量が微粉炭の供給量に対して理論空気量未満となるように設定されることで、燃焼領域Aの上方の還元領域Bが還元雰囲気に保持される。そのため、微粉炭の燃焼により発生したNOxがこの還元領域Bで還元される。
【0051】
そして、追加空気ノズル52は、追加空気を火炉11の還元領域Bの上方に吹き込む。すると、燃焼完結領域Cにて、排ガスと追加空気が反応することで微粉炭の酸化燃焼が完結され、微粉炭の燃焼によるNOxの発生量が低減される。
【0052】
火炉11の燃焼領域Aや還元領域Bでは、低酸素雰囲気で、且つ、高温雰囲気となることから、腐食成分である硫化水素(H
2S)が発生しやすく、炉壁の内面に腐食が発生するおそれがある。そこで、本実施の形態では、火炉11にて、保護ガスノズル62,63,64が燃焼領域Aにある内壁面に沿って空気を吹き込む。この空気は、炉壁に沿って火炎旋回流より外側に吹き込まれることから、火炎が火炉11の内壁面に直接接触することがなく、炉壁の低温化により腐食の発生が抑制される。
【0053】
また、保護ガスノズル62,63,64から火炉11の内壁面と火炎旋回流との間に空気が吹き込まれることで、この領域が高酸素領域となり、硫化水素の発生が抑制されることから、炉壁の腐食が抑制される。更に、火炉11は、燃焼領域Aや還元領域Bの壁面近傍が高酸素雰囲気で、且つ、低温雰囲気に抑制されることから、フライアッシュの溶融を抑制することができ、スラッギングを防止することができる。
【0054】
なお、保護ガスノズル62,63,64は、還元領域Bに空気が上昇することで、この還元領域Bを乱すことが考えられるが、保護ガスノズル62,63,64から空気は、火炎旋回流の外側であることから、この空気がNOx還元作用に悪影響を及ぼすことはほとんどない。
【0055】
そして、給水ポンプ(不図示)から供給された水は、節炭器75,76,77によって予熱された後、蒸気ドラム(不図示)に供給され火炉壁の各水管(不図示)に供給される間に加熱されて飽和蒸気となり、図示しない蒸気ドラムに送り込まれる。更に、蒸気ドラム(不図示)の飽和蒸気は過熱器71,72に導入され、燃焼ガスによって過熱される。過熱器71,72で生成された過熱蒸気は、タービンなどの発電プラント(不図示)に供給される。また、タービンでの膨張過程の中途で取り出した蒸気は、再熱器73,74に導入され、再度過熱されてタービンに戻される。なお、火炉11をドラム型(蒸気ドラム)として説明したが、この構造に限定されるものではない。
【0056】
その後、煙道70の節炭器75,76,77を通過した排ガスは、排ガス管78にて、図示しない脱硝装置にて、触媒によりNOxなどの有害物質が除去され、電気集塵機で粒子状物質が除去され、脱硫装置により硫黄分が除去された後、煙突から大気中に排出される。
【0057】
次に、本実施の形態に係るボイラ10のレーザ分析部100の構成について詳細に説明する。
図5は、本実施の形態に係るレーザ分析部100の模式図である。
図5に示すように、本実施の形態に係るレーザ分析部100は、レーザ光を火炉内に向けて送光する送光素子101を備える。この送光素子101は、例えば、レーザダイオードなどによって構成され、O
2の分析用の送光素子101a、COの分析用の送光素子101b及びH
2O用の送光素子101cなど分析対象となる排ガスG中のガス成分の波長に応じて複数設けられる。送光素子101は、光ファイバ102を介してマルチプレクサ103に接続される。このマルチプレクサ103は、複数波長のレーザ光を1つの経路に伝送する。これにより、ボイラ10の周囲を簡素化することが可能となる。
【0058】
マルチプレクサ103は、光ファイバ102を介して複数の送光素子101からの信号を切替える光スイッチ104に接続されている。この光スイッチ104には、コリメータなどの複数の送光光学系105が接続されている。この複数の送光光学系105には、断面視における火炉11の縦方向及び横方向に複数並設されている。また、火炉11には、複数の送光光学系105からの光を受光するフィルタ及びレンズなどの複数の受光光学系106が配置されている。この受光光学系106は、複数の受光光学系106によって受光されたレーザ光を切替える光スイッチ107を介してマルチプレクサ108に接続されている。このマルチプレクサ108には、フォトダイオードなどによって構成される複数の受光素子109が接続される。この複数の受光素子109は、例えば、O
2の分析用の受光素子109a、COの分析用の受光素子109b及びH
2O用の受光素子109cなど分析対象となる排ガスG中のガス成分の波長に応じて複数設けられる。これらの複数の受光素子109は、パーソナルコンピュータなどの演算装置110に接続される。このレーザ分析部100においては、光スイッチ104、送光素子105、受光素子106及び光スイッチ107がボイラ10の近傍に配置される。このように配置することにより、ボイラ10の周囲の簡素化及び送光素子101及び受光素子109などの精密機器のボイラ10からの隔離が可能となる。
【0059】
次に、
図6Aから
図6Dを参照して、火炉11内のガス成分の濃度算出方法について説明する。
図6から
図6Dは、火炉11内のガス成分の濃度算出方法の説明図である。なお、
図6Aから
図6Dにおいては、説明の便宜上、レーザ分析部100の一部の構成要素のみを示している。
図6Aに示すように、複数の送光素子101から送光されたレーザ光Lは、火炉11内を格子状に照射されて排ガスGを透過して複数の受光素子109にそれぞれ受光される。この受光素子109で受光されるレーザ光Lは、透過経路でのガス濃度及びガス温度の平均値に対応した排ガス中のガス成分の平均吸収スペクトルを有する。
【0060】
次に、
図6Bに示すように、送光素子101から送光されるレーザ光の交点部Pのみにガスが存在すると仮定して演算装置110がCT処理を実行する。これにより、各交点部Pにおけるガス濃度及びガス温度の組み合わせに応じた測定データの吸収スペクトルが得られるかを逆算により求めることが可能となる。演算装置110は、例えば、各交点部Pにおける初期値と各受光素子109によって得られた吸収スペクトルの測定値とをそれぞれ計算する。各交点部Pにおける初期値と各受光素子109における吸収スペクトルの測定値とをそれぞれ比較し、比較した結果が合致した場合には、計算値に基づいて各交点部Pにおけるガス濃度及びガス温度を算出してCT処理を終了する。また、比較した結果が合致しない場合には、初期値を補正して再度各受光素子109によって得られた吸収スペクトルと補正した初期値とを比較する。このようにして、
図6Cに示すように、レーザ光Lの交点部P毎のガス濃度及びガス温度を算出する。最後に、
図6Dに示すように、各交点部Pのガス濃度及びガス温度に基づいてBスプライン補間処理により火炉11内のガス濃度の2次元分布を算出する。この結果、ガス濃度の高濃度領域A1、中濃度領域A2及び低濃度領域A3などの分布を測定することが可能となる。
【0061】
図7は、一般的な火炉内11内の酸素濃度分布を示す図である。なお、
図7においては、火炉11の排ガスのガス流れ方向に対する垂直断面を模式的に示している。
図7に示すように、一般的な火炉11では、火炉11内の壁面近傍に酸素濃度の高濃度領域A1及び中濃度領域A2だけでなく、酸素濃度が低い低濃度領域A3が形成される場合がある。このような火炉11の壁面近傍に形成された低濃度領域A3では、硫化水素が発生して火炉11の壁面が腐食する場合がある。
【0062】
本発明者らは、火炉11内のガス成分の相関関係及び微粉炭燃料中の硫黄分含有率に着目した。そして、本発明者らは、レーザ分析部100を用いた酸素濃度及び一酸化炭素濃度の検出及び微粉炭燃料中の硫黄分含有率に基づく硫化水素指標を求めることにより、火炉11内の硫化水素濃度を間接的に正確に分析して燃焼条件を制御して硫化水素の発生を効果的に防ぐことができることを見出し、本発明を完成させるに至った。以下、本発明者らが調べた内容について説明する。
【0063】
図8Aは、火炉11内の酸素濃度と硫化水素濃度との関係を示す図である。
図8Aに示すように、火炉11で発生した硫化水素は、酸素によって分解されるので、火炉11内の硫化水素濃度は、酸素濃度が増大するにつれて急激に低下する。また、火炉11内の硫化水素濃度は、酸素濃度が1%未満になると急増する。この結果から、火炉11内の酸素濃度を所定値以上に保つことにより硫化水素濃度の発生を防ぐことができることが分かる。
【0064】
図8Bは、火炉11内の一酸化炭素濃度と硫化水素濃度との関係を示す図である。
図8Bに示すように、火炉11内の硫化水素濃度は、還元性雰囲気で生成する一酸化炭素濃度が増大するにつれて急増する。この結果から、火炉11内の酸素濃度を低下させて還元性雰囲気にすることにより、硫化水素が発生しやすくなることが分かる。
【0065】
図8Cは、微粉炭燃料中の硫黄分含有量と火炉11内の硫化水素濃度との関係を示す図である。
図8Cに示すように、火炉11内の硫化水素濃度は、用いる微粉炭燃料中の硫黄分含有量が増大するにつれて増大することが分かる。なお、微粉炭燃料中の硫黄分は、硫化水素の他にSOx成分となるので、微粉炭燃料中の硫黄分含有量と硫化水素濃度とは必ずしも一致しない。
【0066】
本発明者らは、これらの火炉11内の酸素濃度、一酸化炭素濃度及び微粉炭燃料中の硫黄分含有量と火炉11の硫化水素濃度に基づく相関関係である下記式に示す硫化水素指標値(f
H2S)を見出した。
【数1】
(式中、f
H2Sは、硫化水素指標を表し、[CO]は、計測点の一酸化炭素濃度(体積%)を表し、[O
2]は、計測点の酸素濃度(体積%)を表し、[Fuel−S]は、微粉炭燃料中の硫黄分含有率(質量分率)を表す。a,b,m,nは、微粉炭燃料の種類及びボイラの形式などによって決定される係数であり、a>b、m>n及びm≧1の関係を満たす。)
【0067】
図8Dは、硫化水素指標値(f
H2S)と火炉11内の硫化水素濃度との関係を示す図である。
図8Dに示すように、上記式に基づいて求めた硫化水素指標値(f
H2S)と火炉11内の硫化水素濃度とは略正比例の関係となる。したがって、上記式に基づいて求めた硫化水素指標値(f
H2S)に基づいて、制御部200が、火炉11の燃焼バーナ21,22,23,24,25による燃焼ガスの供給量、追加空気ノズル52からの追加空気の供給量及び保護ガスノズル62,63,64からの保護ガスの供給量を制御して、火炉11内の酸素濃度を所定値(例えば、1体積%以上)に保つことにより、火炉11内の硫化水素濃度の発生を低減することが可能となる。
【0068】
図9は、本実施の形態に係る硫化水素指標値を用いた燃焼制御を実施した火炉11内の酸素濃度を示す図である。
図9に示すように、硫化水素指標値を用いて燃焼制御を行うことにより、火炉11壁面近傍では、酸素濃度の低濃度領域がなくなり、酸素濃度が所定値(例えば、1体積%以上)の中濃度領域及び高濃度領域となっていることが分かる。これらの結果から、本実施の形態では、レーザ分析部100によって測定された火炉11内の酸素濃度及び一酸化炭素濃度と微粉炭燃料中に含まれる硫黄分含有率に基づいて、制御部200が燃焼条件を制御することにより、火炉11壁面近傍に生じる酸素濃度の低濃度領域を低減できることが分かる。
【0069】
以上説明したように、上記実施の形態によれば、レーザ分析部100でレーザによって火炉11内の酸素濃度及び一酸化炭素濃度を検出し、検出された酸素濃度及び一酸化炭素濃度と固体燃料中の硫黄分含有率との関係に基づいて、制御部200が燃焼ガスの供給量を制御するので、火炉11内の硫化水素を間接的に高い精度で検出することが可能となり、火炉11内を硫化水素の低減できる適切な酸素濃度に制御することが可能となる。これにより、ボイラ10は、硫化水素の発生量を低減してボイラ10の長期間の運転が可能になるだけでなく、酸素の供給量を適切に制御できるので、NOx及び固体燃料の未燃分の発生を低減することが可能となると共に、火炉11の炉壁近傍の還元性雰囲気が軽減されるので、スラッギングを防止することも可能となる。
【0070】
なお、上述した実施の形態においては、追加燃焼用空気ノズル42と追加空気ノズル52との間にレーザ分析部100を設けた例について説明したが、レーザ分析部100は、追加燃焼用空気ノズル42の上方に設けるものであれば特に制限はない。例えば、
図10Aに示すように、追加燃焼用空気ノズル42と追加空気ノズル52との間に第1レーザ分析部100Aを設けると共に、追加空気ノズル52の上方に第2レーザ分析部100Bを設けてもよい。このように火炉11内の異なる箇所に複数のレーザ分析部100を設け、それぞれの検出結果に応じて制御部200が燃焼条件を制御することにより、より一層正確に硫化水素濃度を低減することが可能となる。また、
図10Bに示すように、レーザ分析部100を追加燃焼用空気ノズル42と追加空気ノズル52との間に設けずに、追加空気ノズル52の上方に設けてもよい。
【0071】
また、本実施の形態では、燃焼バーナ21,22,23,24,25が火炉11内に微粉燃料混合気を吹き込んで着火することで火炎旋回流が形成され、発生した燃焼ガスが燃焼領域Aから旋回しながら上昇する。微粉燃料混合気は、空気量が微粉炭燃料に対して理論空気量未満となるように設定されることで、燃焼領域Aの上方に還元領域Bが形成され、ここで、微粉炭燃料の燃焼により発生したNOxが還元される。その後、追加空気ノズル52が火炉11内に向けて追加空気を吹き込むことで、微粉炭の酸化燃焼が完結される。このとき、保護ガスノズル62から燃焼領域Aで、火炉11の内壁面に沿って水平方向に空気を吹き込むことで、燃焼ガスと火炉11の内壁面との直接的な接触が抑制され、炉壁の腐食を防止して耐久性を向上することができる。
【0072】
さらに、本実施の形態では、燃焼バーナ21,22,23として、燃料ガスを吹き込み可能な燃料ノズル81と、燃料ノズル81の外側から2次空気を吹き込み可能な2次空気ノズル82とを設け、保護ガスノズル62,63,64を2次空気ノズル82における一側部のみに配置し、火炎旋回流の外側に向けて空気を吹き込み可能としている。これにより、燃焼バーナ21,22,23と保護ガスノズル62,63,64を一体に構成することで、装置の小型化及び低コスト化を可能とすることができる。
【0073】
また、本実施の形態では、燃焼バーナ21,22,23,24,25を火炉11の角部に配置し、保護ガスノズル62,63,64を燃焼バーナ21,22,23と同位置に配置し、一方の内壁面に沿って空気を噴射する。これにより、燃焼バーナ21,22,23と保護ガスノズル62,63,64を火炉11の角部に配置したとき、保護ガスノズル62,63,64は、一方の内壁面に沿って空気を噴射するため、火炎旋回流と火炉11の内壁面との間に適正に空気を供給することができる。
【0074】
さらに、本実施の形態では、ボイラの形態に応じて燃焼バーナ21,22,23,24,25から吹き込む燃焼用空気量と追加空気ノズル52から吹き込む追加空気量とが設定され、保護ガスノズル62,63,64から吹き込む空気量を追加空気量の一部から用いている。これにより、空気を追加空気の一部から確保することで、火炉11に供給する空気量を変更することがなく、安定したボイラ効率を維持することができる。
【0075】
また、本実施の形態では、燃料ノズル81と2次空気ノズル82と保護ガスノズル62を一体にして構成している。これにより、装置の小型化及び低コスト化を可能とすることができる。
【0076】
なお、上述した実施の形態では、微粉炭燃料を用いる石炭焚きボイラについて説明したが、ボイラとしては、固体燃料がバイオマス又は石油コークスであるボイラであってもよく、油焚きボイラであってもよい。