特許第6263496号(P6263496)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263496
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/10 20060101AFI20180104BHJP
   A61G 5/00 20060101ALI20180104BHJP
   A61G 5/14 20060101ALI20180104BHJP
   A47C 9/00 20060101ALI20180104BHJP
   A47C 7/50 20060101ALI20180104BHJP
   A47C 7/02 20060101ALI20180104BHJP
   A61G 5/02 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   A61G5/10 709
   A61G5/00 704
   A61G5/14 701
   A47C9/00 Z
   A47C7/50 A
   A47C7/02 Z
   A61G5/02 704
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-95407(P2015-95407)
(22)【出願日】2015年5月8日
(65)【公開番号】特開2016-144621(P2016-144621A)
(43)【公開日】2016年8月12日
【審査請求日】2017年1月25日
(31)【優先権主張番号】特願2015-14960(P2015-14960)
(32)【優先日】2015年1月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010032
【氏名又は名称】フランスベッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大山 啓
【審査官】 山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−204768(JP,A)
【文献】 特開2012−205677(JP,A)
【文献】 特開2007−020810(JP,A)
【文献】 特開平09−240345(JP,A)
【文献】 特開平09−263168(JP,A)
【文献】 特開2005−323839(JP,A)
【文献】 特開2006−034469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/10
A47C 7/02
A47C 7/50
A47C 9/00
A61G 5/00
A61G 5/02
A61G 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
この本体の上面側に配置される座部と、
前記本体の前面側に設けられる第1のリンク機構と、
この第1のリンク機構に連結されて前記本体の前面側で上昇位置と接地位置との間で垂直方向に上下動可能に設けられたフットレストと、
前記座部を前記本体の上面側で上下方向に移動可能に連結するとともに、前記第1のリンク機構と連動するよう設けられ前記第1のリンク機構を作動させて前記フットレストを垂直方向下方へ移動させたときに前記座部を上昇させる第2のリンク機構を具備し、
前記座部に着座した利用者が前記フットレストを踏み込みながら立ち上がることで、前記フットレストは前記接地位置まで垂直方向下方に移動し、前記座部は上方へ変位することを特徴とする椅子。
【請求項2】
前記フットレストは、垂直方向に対して水平な状態で上下動するようになっていることを特徴とする請求項1記載の椅子。
【請求項3】
前記フットレストは、前記第1のリンク機構に対し、高さ調整機構によって垂直方向に高さ調整可能に設けられていることを特徴とする請求項1記載の椅子。
【請求項4】
前記フットレストの下面には接地したときに床面に当たるすべり止め手段が設けられていることを特徴とする請求項1記載の椅子。
【請求項5】
前記本体には前輪と後輪が設けられていることを特徴とする請求項4記載の椅子。
【請求項6】
前記第1のリンク機構は、
一端を前記本体の前面側の上下方向の中途部に枢着した第1のリンクと、
一端を前記本体の前面側の上部に連結した第2のリンクと、
前記第1のリンクと前記第2のリンクの他端をこれら第1、第2のリンクの一端の間隔と同じになるよう枢着した連結部材によって構成され、
前記第2のリンク機構は、
一端が前記第2のリンクの一端に、この第2のリンクの回動連動するよう連結され他端が前記座部の前端側に枢着された第4のリンクと、
一端が前記第4のリンクよりも前記本体の上面の後方に枢着され他端が前記座部の後端側に枢着された第5のリンクによって構成されていることを特徴とする請求項1記載の椅子。
【請求項7】
前記第1のリンク機構は、前記フットレストを前記本体の前面に接近する方向へ移動させながら上昇位置から接地位置へ下降させ、
前記第2のリンク機構は、前記座部を前記本体の前方へ移動させながら上昇させるよう構成されていることを特徴とする請求項1記載の椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は着座した利用者が立ち上がるのを補助する機能を備えた椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、椅子には車輪が付いた車椅子と呼ばれる椅子や車輪がついていない通常の椅子などがある。とくに、車椅子の場合、老人などの足腰が不自由な利用者が利用することが多い。
【0003】
ところで、利用者が前記車椅子に着座した状態から立ち上がる際、足腰が不自由であると、介護者に介助してもらわないと自力で立ち上がることができないということがあり、不便である。また、介助者が介助する場合であっても、利用者に掛かる負担が少ない方が望ましい。
【0004】
そこで、最近では着座した利用者が比較的容易に立ち上がることができるようにした椅子が提案されている。そのような先行技術として特許文献1に示されるものが知られている。
【0005】
特許文献1に示された椅子は、フレームの前足と後脚の間に回動枠が回動可能に設けられている。この回動枠の後端には、回動枠とともに起伏回動する座部が設けられ、先端にはフットレストが設けられる。前記回動枠は、たとえばガススプリングなどによって前記座部が上昇する方向に付勢されている。
【0006】
利用者は前記座部に着座して前記フットレストに足を載せて座る。起立するときには、前記フットレストに足を載せた状態で、前記フレームの両側に設けられた肘掛けに手を掛けて立ち上がる。
【0007】
それによって、前記回動枠が回動して前記座部が上昇するから、利用者は臀部が前記座部によって前方へ押し上げられて立ち上がることができるようになっている。つまり、利用者は前記回動枠の回動によって立ち上がるのが補助されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−275295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述した構成の椅子によると、座部に着座した利用者が立ち上がる場合、前記回動枠が回動するから、この回動によって利用者の足を載せたフットレスト及び臀部が載置された座部が一緒に回動することになる。
【0010】
そのため、フットレストに載せた利用者の足は椅子の前面前方に対して所定間隔離れた位置から、前記前面に近付く方向に回動させられることになり、臀部は座部によって斜め前方に向かって押し上げられることになる。
【0011】
つまり、利用者の身体は、前記回動枠の回動によって脚部が後方へ回動させられながら、上半身が回転方向の斜め前方に押されることになるから、身体には前記回動枠によって回動方向の力を受けることになる。
【0012】
その結果、利用者は前記脚部の動きや上半身に作用する力によって身体が前方にふらつき易くなるため、立ち上がるときの安定性が損なわれるということがある。しかも、前方へのふらつきに対応するため、肘掛けを把持する手に力を入れるようになるから、両腕に比較的大きな負荷が掛かるということがある。
【0013】
つまり、上述したように利用者が立ち上がる際に回動枠を回動させる構成であると、足腰が不自由な老人などの場合、容易に、しかも安定性よく立ち上がることができないということがある。
【0014】
この発明は、利用者が身体を前方へふらつかせることなく、安定性よく立ち上がることができるようにした椅子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は、本体と、
この本体の上面側に配置される座部と、
前記本体の前面側に設けられる第1のリンク機構と、
この第1のリンク機構に連結されて前記本体の前面側で上昇位置と接地位置との間で垂直方向に上下動可能に設けられたフットレストと、
前記座部を前記本体の上面側で上下方向に移動可能に連結するとともに、前記第1のリンク機構と連動するよう設けられ前記第1のリンク機構を作動させて前記フットレストを垂直方向下方へ移動させたときに前記座部を上昇させる第2のリンク機構を具備し、
前記座部に着座した利用者が前記フットレストを踏み込みながら立ち上がることで、前記フットレストは前記接地位置まで垂直方向下方に移動し、前記座部は上方へ変位することを特徴とする椅子にある。
【0016】
この発明は、本体と、
この本体に回転可能に設けられた車輪と、
前記本体の前面側で上昇位置と接地位置との間で垂直方向に上下動可能に設けられたフットレストと、
前記本体の上面側に配置され前記フットレストの下降方向の動きに連動して上昇する座部と、
前記座部の上昇に連動して前記車輪の回転を阻止するブレーキ機構と
を具備したことを特徴とする椅子にある。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、座部に着座した利用者が足を載せるフットレストは、第1のリンク機構によって上昇位置と接地位置との間で垂直方向に上下動する。
【0018】
そのため、着座した利用者が立ち上がる際、前記フットレストに載せた足を垂直方向下方に移動させることになるから、身体に回転方向の力を受けることなく、立ち上がることができるから、利用者は安定性よく、しかも比較的楽に立ち上がることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】この発明の第1の実施の形態を示す車椅子の正面図。
図2】車椅子のフットレストが上昇した位置にある状態を示す側面図。
図3】車椅子のフットレストが下降した位置にある状態を示す側面図。
図4】フットレスの高さ位置を調整するための高さ調整機構の断面図。
図5】この発明の第2の実施の形態を示す座部が下降してブレーキ機構が解除された状態にある椅子の側面図。
図6図5に示す状態の椅子のブレーキ機構の拡大図。
図7】座部が上昇してブレーキ機構が作動した状態にある椅子の側面図。
図8図7に示す状態の椅子のブレーキ機構の拡大図。
図9】座部が下降してブレーキ機構が作動した状態にある椅子の側面図。
図10図9に示す状態の椅子のブレーキ機構の拡大図。
図11】スライドリンクに設けられた係合ピンが回動リンクのテーパ面にスライドした状態を示すブレーキ機構の拡大図。
図12】この発明の第3の実施の形態を示す座部が下降してブレーキが解除された状態にある椅子の側面図。
図13】座部が上昇してブレーキが作動した状態にある椅子の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1乃至図4はこの発明の第1の実施の形態を示す。図1は車椅子1の正面図で、図2図3は側面図である。この車椅子1は本体としての車体2を備えている。この車体2は矩形枠状に形成された一対のサイドフレーム3を複数の横パイプ4によって所定間隔で平行に連結して構成されている。
【0024】
なお、前記車体2は、一対のサイドフレーム3を横パイプ4に代わり、リンクなどによって幅方向に折り畳み可能に連結する構成であってもよい。つまり、前記車体2を幅方向に扁平に折り畳める構成としてもよい。
【0025】
前記一対のサイドフレーム3の前端のパイプの下部には前輪6が設けられ、後端のパイプの中途部には後輪7が設けられている。前記前輪6と後輪7は接地面である床面Fに対して同じ高さで接地するようになっている。
【0026】
なお、前記前輪6を回転可能に支持した支持アーム8は前記サイドフレーム3の前端のパイプに対して水平方向に回転可能に取付けられている。それによって、前記車椅子1は前記前輪6によって走行方向を変換できるようになっている。
【0027】
前記一対のサイドフレーム3の後端のパイプは上方に向かって延出され、その上端部は後方に向かって湾曲されている。前記パイプの湾曲部の端部には、介助者が前記車椅子1を走行操作するときに把持するためのグリップ9が装着されている。
【0028】
なお、図示しないが、前記グリップ9の近くにはブレーキレバーが設けられている。そして介助者が前記車椅子1を操作しているときに前記ブレーキレバーを把持すれば、前記後輪7にブレーキをかけることができるようになっている。
【0029】
前記一対のサイドフレーム3の後端の上方に延出された一対のパイプ間には、たとえば図1に鎖線で示すように背部を構成するキャンバス10が着脱可能に張設される。なお、キャンバス10に代わり、クッション体を設けるようにしてもよい。
【0030】
前記車体2の幅方向の両端部の上面、つまり一対の各サイドフレーム3の上端には側面形状がL字状の肘掛け11がそれぞれ設けられている。つまり、前記肘掛け11は、一端を前記サイドフレーム3の前端のパイプの上端に連結し、他端を前記サイドフレーム3の後端のパイプの上方に延出された部分の中途部に連結されている。
【0031】
なお、前記サイドフレーム3の前端のパイプと、前記肘掛け11を同一のパイプで一体形成しても差し支えない。
【0032】
図2図3に示すように、一対のサイドフレーム3の前端側、つまり前記車体2の前面側には第1のリンク機構12が設けられている。この第1のリンク機構12は一端を前記サイドフレーム3の前端のパイプに枢着した第1のリンク13を有する。前記サイドフレーム3の前端のパイプの上端に位置する前記肘掛け11の下端部には前記第1のリンク13と同じ長さの第2のリンク14の一端が枢着されている。
【0033】
前記第1のリンク13と第2のリンク14の他端は、連結部材としての第3のリンク15の一端と他端にそれぞれ枢着されている。前記第1のリンク13と第2のリンク14の一端間と他端間の距離は同じ、つまり前記第1のリンク13と第2のリンク14は平行若しくはほぼ平行になるよう連結されている。
【0034】
前記第3のリンク15は前記サイドフレーム3の前端のパイプと平行になるよう垂直に配置されている。それによって、前記第3のリンク15、前記第1のリンク13、第2のリンク14及び前記サイドフレーム3の前端のパイプの一部とで平行リンクを構成していている。
【0035】
なお、第1のリンク13と第2のリンクの他端を連結部材としての前記第3のリンク15によって連結したが、この第3のリンク15に代わって前記固定筒21に上下方向に所定間隔で離間した一対のフランジを設け、各フランジに第1のリンク13と第2のリンクの他端を枢着するようにしてもよい。
【0036】
図1に示すように、一対の第3のリンク15にはそれぞれ高さ調整機構17を介してフットレスト18が後述するよう水平に設けられている。前記高さ調整機構17は、図4に示すように前記第3のリンク15に連結固定された固定筒21を有する。この固定筒21は下端が開放し、内部には下端から突出した可動筒22がスライド可能に挿入されている。前記可動筒22には下端に締付けナット23が螺合されたおねじ部24aを有する高さ調整軸24が挿通されている。
【0037】
前記高さ調整軸24の先端には下面が斜面25aに形成された押圧子25が偏心して連結されている。前記可動筒22の上端は前記押圧子25の斜面25aと対応する角度の斜面22aに形成されている。
【0038】
前記締付けナット23をねじ込んで前記高さ調整軸24を下方へスライドさせると、前記押圧子25の斜面25aが前記可動筒22の斜面22aに圧接しながらスライドし、その外周面の一部が前記固定筒21の内周面に圧接する。それによって、前記固定筒21に対して前記可動筒22がスライド不能に保持されるようになっている。
【0039】
前記締付けナット23を緩めた状態で、前記固定筒21に対して前記可動筒22を所定の突出長さにスライドさせ、その位置で前記締付けナット23を締付ければ、前記可動筒22を前記固定筒21の下端から所定の長さで突出させて固定できるようになっている。つまり、前記高さ調整機構17は固定筒21と可動筒22とがなす垂直方向の長さ寸法を設定できるようになっている。
【0040】
前記一対の可動筒22の前記固定筒21の下端から突出した外周面には、支軸27が水平かつ前記車体2の前後方向の前方に向かって取付けられている。この支軸27には前記フットレスト18の幅方向の一端部に設けられた受け部29が回転可能に取付けられている。それによって、前記フットレスト18は図1に矢印rで示すように前記車体2の幅方向に回転するよう装着されている。
【0041】
つまり、前記フットレスト18は、図1に示すように前記車体2の幅方向内方に向かって倒伏した水平な状態と、幅方向外方に向かって回動させることで、ほぼ垂直に起立した状態との間で回動させることができるようになっていて、それぞれの状態で保持可能となっている。
【0042】
前記一対のフットレスト18の下面にはすべり止め手段としてのゴムや樹脂などの摩擦係数の高い材料によって板状に形成されたすべり止め部材31が貼着されている。利用者が立ち上がる際、後述するように前記フットレスト18に載せた足に体重をかけると、その重量によって前記第1のリンク機構12が作動して前記一対のフットレスト18が図3に示すように下降する。
【0043】
下降したフットレスト18は、下面に設けられた前記すべり止め部材31が床面Fに圧接する。つまり、フットレスト18は水平な状態で垂直に下降するため、前記すべり止め部材31が設けられた下面全体が床面Fに当たる。
【0044】
それによって、利用者がフットレスト18を下降させて立ち上がる際、車椅子1が床面Fに対してずれ動くのが阻止されるようになっている。つまり、車椅子1から利用者が立ち上がるとき、車椅子1がずれ動いて利用者の姿勢が不安定になるのを防止できるようになっている。
【0045】
なお、前記すべり止め手段は前記フットレスト18の下面にゴムや樹脂などの板状の材料を貼着する代わりに、前記フットレスト18の下面を、たとえば凹凸面などのような摩擦係数が高くなる形状にしてもよい。
【0046】
図2図3に示すように、前記車体2の上面側には、矩形状の座部32が第2のリンク機構33によって上下方向に移動可能に設けられている。前記第2のリンク機構33は、一端が前記第1のリンク機構12の第2のリンク14の一端と同じ部位に枢着された第4のリンク34を有する。この第4のリンク34は前記第2のリンク14に一体的に回動するよう設けられている。
【0047】
なお、前記第2リンク14と前記第4のリンク34を別体とせず、前記第2リンク14の一端に前記第4のリンク34を所定の角度で屈曲した状態で一体形成し、それらの境界部分を前記サイドフレーム3の前端のパイプに枢着するようにしてもよい。
【0048】
前記第4のリンク34の他端は前記車体2の後方に向かって延出され、前記座部32の前端側の部分、この実施の形態では前端部の下部に枢着されている。前記座部32の後端側の下部には、一端を前記車体2の上面の前記第4のリンク34よりも後端側に枢着された第5のリンク35の他端が枢着されている。この第5のリンク35は前記第4のリンク34と同じ長さに設定されている。
【0049】
前記第4のリンク34と第5のリンク35は、一端を前記第4のリンク34の中途部に枢着し、他端を前記第5のリンク35の中途部に枢着した第6のリンク36によって連結されている。それによって、前記第4のリンク34が回動したとき、その動きが前記第6のリンク36によって前記第5のリンク35に確実に伝達されようになっている。
【0050】
前記第4のリンク34、前記第5のリンク35、前記座部32の下面を構成ずる部材、及び前記車体2の上面を構成する部材によって平行リンクを構成している。つまり、前記第4のリンク34と前記第5のリンク35は平行若しくはほぼ平行に設けられている。
【0051】
前記第4のリンク34と第5のリンク35は同方向に回動するから、その回動方向に応じて前記座部32は水平な状態で前記車体2の上面から上昇する方向或いは上昇した状態から下降する方向に駆動されるようになっている。そのとき、前記座部32は上昇するだけでなく、前記第4、第5のリンク34,35の回動に応じて図3に矢印fで示すように車体2の前方にわずかに移動することになる。
【0052】
なお、前記第1のリンク機構12と第2のリンク機構33は外力を加えることで、動かすことができるようになっている。前記フットレスト18と前記座部32に荷重(外力)を加えない状態では、図2に示すように第2のリンク機構33によって前記座部32が下降限まで下降し、前記第1のリンク機構12によって前記フットレスト18が上昇限まで上昇するよう前記座部32とフットレスト18の重量が設定されている。
【0053】
したがって、図2に示す状態において、前記フットレスト18に荷重を加えれば、図3に示すように前記フットレスト18を下降方向へ変位させることができるようになっている。
【0054】
なお、前記座部32が下降し、前記フットレスト18が上昇した位置で、前記第1、第2のリンク機構12,33が作動しないよう、どちらか一方のリンク機構をピンなどのストッパによって動作不能に保持するようにしてもよい。
【0055】
また、ストッパによってどちらか一方のリンク機構を動作不能に保持する代わりに、第2のリンク機構33の第4又は第5のリンク34,35のどちらか一方をガススプリングやばねなどの付勢手段によって起立方向である、前記座部32が上昇する方向に付勢してもよい。
【0056】
そのようにすれば、利用者が前記座部32に着座したとき、この座部32が前記付勢手段の付勢力に抗して下降し、前記フットレスト18が上昇する。そして、利用者が立ち上がる際、前記座部32は前記付勢手段の付勢力によって利用者の臀部を上方へ押圧する。そのため、利用者が立ち上がるのを補助することになる。
【0057】
このような構成の車椅子1において、座部32に着座して両足をそれぞれフットレスト18に載せた利用者が立ち上がるときの動作について説明する。
【0058】
前記座部32に着座した利用者は両手で肘掛け11を把持し、座部32に掛かる体重を減少させながら、フットレスト18を両足によって下方へ押圧する。フットレスト18が下方へ押圧されると、第1のリンク機構12が作動して前記フットレスト18が図2に矢印dで示すように水平な状態で垂直方向下方へ変位する。
【0059】
このとき、前記第1のリンク機構12の第1、第2のリンク13,14は、車体2側に枢着された一端を支点として前記フットレスト18側の他端が下方へ変位する。それによって、前記フットレスト18は図3に示すように車体2の前面にわずかに近寄りながら、下降することになる。
【0060】
前記第1のリンク機構12を作動させると、その作動に第2のリンク機構33が連動する。つまり、前記第1のリンク機構12の第2のリンク14が回動すると、その回動に前記第2のリンク機構33の第4のリンク34が連動する。
【0061】
それによって、前記第4のリンク34は図2に示すように倒伏した状態から、図3に示すように起立する方向に回動するから、この第4のリンク34の回動に、前記座部32、及び第6のリンク36を介して第5のリンク35が連動する。
【0062】
つまり、図2に示すように下降位置にあった座部32は、第4、第5のリンク35の回動上昇に応じて水平な状態で車体2の前方へわずかに移動しながら、図3に示すように上昇する。
【0063】
それによって、利用者は下降するフットレスト18によって両足を垂直方向下方へ伸ばしながら、上昇する座部32によって臀部を垂直方向上方へ押し上げられて起立することになる。
【0064】
このように、利用者は水平な状態にある前記フットレスト18を、両足によって垂直方向下方に押し下げながら立ち上がる。そのため、立ち上がるとき、利用者は屈曲させた脚部を垂直方向下方へ伸ばすことになるから、前記フットレスト18の動きによって脚部の膝から下の部分を前記車体2の後方に屈曲させるという回転方向の力を受けることなく、立ち上がることができる。
【0065】
つまり、利用者は立ち上がる際、フットレスト18が垂直に下降するため、脚部を屈曲させる外力を受けることがないから、下半身をふらつかせるようなことなく、安定した状態で立ち上がることができる。
【0066】
しかも、前記座部32は水平な状態で上方へ変位する。そのため、利用者は座部32の動きによって臀部が上方へ押し上がられる際、上半身が前方へ押さることがほとんどない。つまり、利用者は上半身にも回転方向の力を受けることがないから、そのことによっても安定した姿勢で立ち上がることができる。
【0067】
前記フットレスト18は垂直方向下方へ変位するとき、第1のリンク機構12の動きによって前記車体2の前面にわずかに近付く方向へ水平に変位する。前記座部32は上昇するとき、第2のリンク機構33の動きによって前記車体2の後方から前方に向かってわずかに移動する。
【0068】
それによって、前記座部32に着座した利用者が立ち上がるとき、前記フットレスト18の位置が利用者に近付きながら、臀部が前方にずれることになるから、前記フットレスト18を比較的容易に下降させることができる。
【0069】
前記フットレスト18を床面Fに当たるまで踏み込むと、このフットレスト18の下面に設けられたすべり止め部材31が床面Fに圧接する。つまり、水平な状態で垂直に下降する前記フットレスト18は、その下面全体が均一かつ確実に床面Fに当たる。
【0070】
そのため、車体2に設けられた前輪6や後輪7によって前記車体2が動き易い状態にあっても、利用者が立ち上がるときには床面Fに圧接した前記すべり止め部材31によって車体2が動くのが制限されるから、そのことによっても利用者は安定した状態で立ち上がることができることになる。
【0071】
前記フットレスト18は高さ調整機構17によって垂直方向の高さを調整することができる。そのため、前記フットレスト18の高さ位置を変えることで、異なる身長の利用者であっても、使い易い状態で使用することができる。
【0072】
しかも、前記フットレスト18の高さ位置を変えても、水平な状態で垂直に上下動する前記フットレスト18は、上述したようにずれ止め部材31が設けられた下面が床面Fに対して同じ条件で確実に圧接する。そのため、身長の異なる利用者であっても、車椅子1から安定した状態で立ち上がることができる。
【0073】
第1の実施の形態では、座部32を作動させる第2のリンク機構33の第4のリンク34と第5のリンク35を同じ長さにしたが、第5のリンク35を第4のリンク34よりも長くしてもよい。
【0074】
そのようにすれば、第2のリンク機構33が作動して座部32が上昇する際、この座部32は前方に向かって低く傾斜した状態で上昇するから、利用者の臀部を前方に向かって押しながら上昇させることになる。
【0075】
なお、その場合、利用者の臀部は座部32によって斜め上方に押されることになるが、脚部が垂直に下降するから、そのことによって立ち上がる際の安定性を確保することが可能である。
【0076】
前記フットレスト18の垂直方向の高さを高さ調整機構17によって調整できるようにしたが、高さ調整機構17としては上述した構成に代わって、たとえば可動筒22を固定筒21に対して差し込みピンやねじなどによって段階的に高さ調整する構成であってもよく、その構成はなんら限定されるものではない。
【0077】
第1の実施の形態では、車椅子に適用した例を挙げて説明したが、車輪が設けられていない、車椅子以外の通常の椅子であっても、上述した構成を適用することができる。
【0078】
図5乃至図11はこの発明の第2の実施の形態の車椅子1Aを示す。なお、第1の実施の形態と同一部分には同一記号を付して説明を省略する。
【0079】
この第2の実施の形態は、前記後輪7が回転するのを阻止するブレーキ機構41を備えている。前記ブレーキ機構41は、前記車体2の上部一側に前後方向に沿って垂設された平板状の基部材42を有する。この基部材42の下端部にはガイド長孔43が前後方向に沿って形成されている。
【0080】
前記ガイド長孔43にはスライドリンク44がその長手方向の中途部に設けられたガイドピン45をスライド可能に係合させて設けられている。なお、図示はしないが、前記ガイドピン45は前記ガイド長孔43の幅寸法よりも大径な頭部を有する。それによって、前記ガイドピン45が前記ガイド長孔43から外れないようになっている。
【0081】
前記スライドリンク44の一端には係合ピン46が設けられている。この係合ピン46には回動リンク47の先端部に係合している。この回動リンク47の先端部(他端)はテーパ状のテーパ面47a(図6図11に示す。)に形成されている。
【0082】
前記基部材42の前端側には取付け部材48が設けられている。この取付け部材48には前記回動リンク47の基端部(一端)が支軸48aによって枢着されている。つまり、前記回動リンク47と前記支軸48aは一体的になっていて、前記支軸48aが前記取付け部材48に回動可能に取付けられている。
【0083】
前記取付け部材48の中途部にはブレーキリンク49の基端(一端)が回動可能に取付けられている。このブレーキリンク49の先端部は前記後輪7の外周面に対向していて、その先端(他端)にはブレーキ部材51が設けられている。
【0084】
前記回動リンク47の基端を枢着した前記支軸48aには第1の連動リンク52の一端が一体的、つまり前記支軸48aとともに回動するよう連結されている。前記ブレーキリンク49の中途部には第2の連動リンク53の一端が枢着されている。前記第1の連動リンク52の他端と、前記第2の連動リンク53の他端は枢着されている。
【0085】
前記第1の連動リンク52と前記第2の連動リンク53は、前記座部32が下降位置にあるときには図6に示すように逆への字状に屈曲し、前記座部32が上昇位置にあるときには図8に示すようにほぼ直線状になっている。
【0086】
この第2の実施の形態では、前記座部32を前記車体2に連結した前記第4のリンク34の一端は、前記第5のリンク35の一端よりも前記車体2の低い位置に枢着されている。
【0087】
それによって、前記第4のリンク34と前記第5のリンク35は非平行状態となっていて、図7図8に示すように前記座部32を上昇させたとき、この座部32は前方に向かって低く傾斜するようになっている。
【0088】
この第2の実施の形態では、前記第1の実施の形態のように前記第4のリンク34と第5のリンク35が前記第6のリンク36によって連結されていない。
【0089】
前記第1のリンク機構12の第1のリンク13と第2のリンク14の一端は、第1の実施の形態に示されたように、連結部材としての前記固定筒21に設けられた前記第3のリンク15に枢着する代わりに、前記固定筒21の上部に所定間隔で設けられた連結部材としての一対の連結部材15aに枢着されている。
【0090】
なお、前記第4のリンク34と第5のリンク35は、前記座部32が水平な状態で上昇するよう平行に設けてもよい。つまり、第1の実施の形態に示されているように、同じ長さの前記第4のリンク34と第5のリンク35一端と他端を、これらが平行になるよう、それぞれ前記車体2と前記座部32の同じ高さ位置に枢着するようにしてもよい。
【0091】
前記第5のリンク35の前記車体2に支軸55によって枢着された端部には、第1の伝達リンク54の一端が、前記第5のリンク35と回動支点を同じにし、しかも前記支軸55と一体的に回動するよう連結されている。
【0092】
前記第1の伝達リンク54の他端には第2の伝達リンク56の一端が枢着されている。前記第2の伝達リンク56の他端は前記スライドリンク44の他端に枢着されている。それによって、前記第1の伝達リンク54と前記第2の伝達リンク56は、前記座部32が上昇及び下降したときの前記第5のリンク35の動き(回動)を前記スライドリンク44に伝達する伝達手段を構成している。
【0093】
前記回動リンク47の基端と、前記第1の連動リンク52の一端を前記取付け部材48に枢着した支軸48aには操作レバー61の基端が、前記回動リンク47と一体的に回動するよう連結されている。
【0094】
それによって、前記操作レバー61は、図5図6に示すようにほぼ垂直に起立した状態と、図7図8に示すように前記車体2の前方に傾斜する状態との間で、回動させることができるようになっている。
【0095】
図5に示すように、前記フットレスト18が上昇して前記座部32が下降位置にあり、前記操作レバー61がほぼ垂直に起立した状態では、図6に示すように前記第1の連動リンク52と前記第2の連動リンク53は逆への字状に屈曲している。その状態で前記ブレーキリンク49は、先端部に設けられたブレーキ部材51が前記後輪7の外周面から離れる状態に回動している。
【0096】
図5に示すように、前記座部32が下降した状態から、その座部32に着座した利用者が前記フットレスト18に足を載せて立ち上がると、前記フットレスト18は利用者の荷重によって前記第1のリンク機構12を作動させて下降する。
【0097】
前記第1のリンク機構12が作動すると、その作動に前記第2のリンク機構33が連動する。つまり、前記第1のリンク機構12の前記第2のリンク14の回動に連動して、図6に示すように倒伏状態にあった前記第4のリンク34が図8に示すように起立方向回動し、この第4のリンク34の回動に前記座部32を介して前記第5のリンク35が連動する。それによって、前記座部32が図7図8に示すように前方に向かって低く傾斜した状態で上昇する。
【0098】
前記座部32が上昇して前記第5のリンク35が起立方向に回動すると、その回動に前記第1の伝達リンク54が連動する。つまり、前記第1の伝達リンク54は前記支軸55を支点として前記第5のリンク35と一体的に図6に矢印aで示す反時計方向に回動する。
【0099】
前記第1の伝達リンク54が回動すると、この第1の伝達リンク54に一端が連結された前記第2の伝達リンク56が前記第1の伝達リンク54の回動方向、つまり図6に矢印bで示す方向に移動する。その移動に前記第2の伝達リンク56に連結された前記スライドリンク44が連動する。
【0100】
つまり、前記スライドリンク44は、中途部に設けられたガイドピン45が前記基部材42に形成されたガイド長孔43にガイドされながら、前記車体2の後方に向かってスライドする。図8は前記スライドリンク44がスライドした状態を示している。
【0101】
前記スライドリンク44がスライドすると、このスライドリンク44の一端に設けられた前記係合ピン46と前記回動リンク47の先端部との係合によって、前記回動リンク47が前記支軸48aを支点としてこの支軸48aとともに図6に矢印cで示す反時計方向に回動する。
【0102】
それによって、それまで図6に示すように逆への字状に屈曲していた前記第1の連動リンク52と前記第2の連動リンク53が、前記支軸48aを起点として図8に示すようにほぼ直線状になる。その結果、前記第2の連動リンク53の一端に中途部が枢着された前記ブレーキリンク49が図8に矢印dで示すように、前記取付け部材48に枢着された基端を支点として反時計方向に回動する。
【0103】
図8に示すように、前記ブレーキリンク49が反時計方向に回動すると、その先端に設けられた前記ブレーキ部材51が前記後輪7の外周面に圧接するから、前記後輪7が回転不能に保持される。つまり、利用者が前記フットレスト18に足を載せ、このフットレスト18を下降させながら立ち上がると、前記前記ブレーキ機構41のブレーキが自動的に作動するから、利用者が立ち上がったときに車体2が動くことが防止される。
【0104】
一方、図5図6に示すように前記座部32が下降した状態で、ほぼ垂直に起立した状態にある前記操作レバー61を、図10に示すように矢印eで示すように前記車体2の前方、つまり反時計方向に回動させると、図6に示すようにほぼ逆への字状に屈曲した前記第1の連動リンク52と前記第2の連動リンク53が回動してほぼ直線状になる。
【0105】
それによって、前記ブレーキリンク49が前記第2の連動リンク53に押圧されて回動するから、前記ブレーキリンク49の先端に設けられた前記ブレーキ部材51が前記後輪7の外周面に圧接してブレーキが掛けられる。
【0106】
つまり、利用者が前記座部32に着座したままの状態であっても、前記ブレーキ機構41を作動させてブレーキを掛け、車椅子1Aが動くのを防止することができる。
【0107】
利用者が前記座部32に着座した状態でブレーキを掛けた状態において、前記座部32に着座した利用者がブレーキがかけられた状態を解除するには、前記操作レバー61を図10に矢印eで示す方向と逆方向である、時計方向に回動操作する。
【0108】
それによって、ほぼ直線状態にある前記第1の連動リンク52と第2の連動リンク53がほぼ逆への字状に屈曲するから、前記ブレーキリンク49によるブレーキがかけられた状態を解除することができる。
【0109】
また、図9図10に示すように前記後輪7にブレーキがかけられた状態で、前記座部32に着座した利用者が前記フットレスト18を下降させながら立ち上がると、前記第2のリンク機構33が作動して前記座部32が上昇する。
【0110】
それによって、前記第1のリンク機構12と第2のリンク機構33が作動して、前記スライドリンク44が図10に矢印fで示す方向にスライドする。
【0111】
しかしながら、前記回動リンク47は予め反時計方向に回動していて、前記スライドリンク44の一端に設けられた前記係合ピン46と、前記回動リンク47の先端部とが離れた状態にある。
【0112】
そのため、前記スライドリンク44が前記ガイド長孔43に沿ってスライドしても、前記ブレーキリンク49が回動することがない。つまり、前記ブレーキ部材51によってブレーキは掛けられたままの状態が維持される。
【0113】
図7図8に示すように、前記座部32が上昇して前記後輪7にブレーキがかけられた状態において、利用者が着座して前記座部32を下降させると、前記スライドリンク44は図8に矢印gで示す方向へスライドする。
【0114】
しかしながら、そのとき、前記スライドリンク44の先端部に設けられた前記係合ピン46は前記回動リンク47を押圧しないから、前記スライドリンク44のスライドによって前記回動リンク47が回動させられることがない。
【0115】
したがって、前記後輪7にブレーキがかけられた状態において、利用者が上昇した前記座部32に座ってこの座部32を下降させても、前記後輪7にかけられたブレーキが自動的に解除されることがない。
【0116】
前記座部32を下降させた状態において、前記後輪7にかけられたブレーキを解除するには、前記車体2の前方側に倒伏している前記操作レバー61を、図10に矢印eで示す方向と逆方向である、時計方向、つまり起立する方向に回動させる。
【0117】
それによって、それまで直線状になっていた第1の連動リンク52と第2の連動リンク53は図6に示すように逆への字状に屈曲して前記ブレーキリンク49を、先端の前記ブレーキ部材51が前記後輪7から離れる方向に回動させることができるから、前記後輪7のブレーキが解除されることになる。
【0118】
このように、第2の実施の形態の車椅子1Aによれば、利用者が前記フットレスト18に足を載せ、このフットレスト18を下降させながら立ち上がると、前記フットレスト18の上昇に連動して前記座部32が上昇する。
【0119】
前記座部32が上昇すると、その上昇に連動してブレーキ機構41が作動し、前記車椅子1Aの後輪7の回転が阻止される。つまり、利用者が車椅子1Aから立ち上がれば、前記後輪7に自動的にブレーキが掛けられる。
【0120】
したがって、利用者が前記肘掛け11を掴んで車椅子1Aから立ち上がった状態で、身体を安定させるためなどに、たとえば車椅子1Aの前記肘掛け11を掴む手に力を入れるなどして前記車椅子1Aに不用意な外力を与えるようなことがあっても、前記車椅子1Aは動くことがないから、利用者は立ち上がった姿勢を安定した状態で維持することができる。
【0121】
前記ブレーキ機構41は、利用者が前記座部32に座った状態であっても、前記操作レバー61を操作することで、作動させることができる。そのため、たとえば利用者が前記座部32に座った状態で休憩するような場合、前記操作レバー61を操作してブレーキをかけておけば、前記車椅子1Aが不用意に動き出すのを防止することができる。
【0122】
図7図8に示すように前記座部32が上昇して後輪7にブレーキがかけられた状態で、利用者が着座して前記座部32を下降させても、前記後輪7のブレーキが解除されることがない。
【0123】
利用者が着座した状態で、前記後輪7のブレーキを解除するためには、図10に示すように、前記車体2の前方に倒伏した状態にある前記操作レバー61を、図6に示すように手動でほぼ垂直になる状態に回動させる。
【0124】
それによって、前記ブレーキリンク49が回動して前記後輪7のブレーキを解除することができる。つまり、利用者が座部32に着座しても、前記操作レバー61を操作するまでは車椅子1Aが不用意に動くということがない。
【0125】
前記座部32は、前記高さ調整機構17によって前記座部32の上昇高さを変えることができる。前記座部32の上昇高さを高くした場合、前記スライドリンク44のスライド距離が大きくなる。
【0126】
図11に示すように、前記回動リンク47の下端部がテーパ面47aに形成されている。そのため、前記スライドリンク44のスライド距離が大きくなっても、このスライドリンク44に設けられた前記係合ピン46は前記テーパ面47aに沿ってスライドするため、前記座部32の上昇が阻止されることがない。つまり、前記テーパ面47aの長さ分に応じて前記座部32の上昇高さを高くすることができる。
【0127】
図12図13はこの発明の第3の実施の形態を示す車椅子1Bである。この実施の形態は第2の実施の形態に示された第2のリンク機構33の変形例である。
【0128】
この実施の形態の前記第2のリンク機構33は、前記座部32の前端側の下面に一端が所定の傾斜角度で連結固定された1つの連動リンク63によって構成されている。この連動リンク63の他端は、前記第1のリンク機構12の前記車体2の前端側の上部に枢着された前記第2のリンク14の一端に一体的に取付けられている。つまり、前記連動リンク63は前記第2のリンク14と一体的に回動するようになっている。
【0129】
なお、この実施の形態では、前記連動リンク63が前記第2のリンク14と別体に形成されているが、これらは一体、つまり前記第2のリンク14と前記連動リンク63とが屈曲した状態で連続して一体的に形成されていて、これらの屈曲した境界部分を前記サイドフレーム3の前端部に枢着するようにしてもよい。
【0130】
前記第2のリンク14と前記連動リンク63の枢着箇所には、前記連動リンク63と一体的に回動するよう押圧アーム64が一端を連結して設けられている。この押圧アーム64の他端は、前記スライドリンク44の先端に設けられた連動ピン65に係合している。
【0131】
この第3の実施の形態では、前記押圧アーム64の他端が前記連動ピン65に係合するよう、前記スライドリンク44が第2の実施の形態の前記スライドリンク44よりも長尺に形成されている。
【0132】
なお、前記スライドリンク44には、前記第2の実施の形態と同様、前記連動ピン65よりも後端側に前記回動リンク47の先端部に係合する前記係合ピン46、この係合ピン46よりも後端側に前記基部材42に形成されたガイド長孔43に係合する前記ガイドピン45が順次設けられている。
【0133】
このような構成の車椅子1Bによれば、図12に示すように座部32が倒伏し、フットレスト18が上昇した状態において、前記座部32に利用者が着座し、前記フットレスト18に足を載せて立ち上がると、前記フットレスト18が下降し、その下降に前記座部32が連動する。
【0134】
それによって、前記座部32は図13に示すように前端側を支点として後方が上昇する方向に回動する。つまり、前記座部32は傾斜して回動上昇する。
【0135】
前記座部32が回動上昇すると、前記押圧アーム64が一端を支点として他端が後方に向かって回動しながら、その他端である、先端部で前記スライドリンク44の先端部に設けられた前記連動ピン65を押圧する。
【0136】
それによって、前記スライドリンク44が図13に示すように後方に向かってスライドさせられるから、前記スライドリンク44の中途部に設けられた係合ピン46によって前記ブレーキリンク49が押圧されて回動する。
【0137】
前記ブレーキリンク49が回動すれば、それまで逆への字状に屈曲していた第1の連動リンク52と第2の連動リンク53がほぼ直線状になるとともに、前記ブレーキリンク49の先端部に設けられたブレーキ部材51が前記後輪7に圧接する。
【0138】
つまり、利用者が前記フットレスト18を下降させながら前記座部32から立ち上がると、前記後輪7に自動的にブレーキがかけられる。
【0139】
図13に示すように回動上昇した前記座部32に利用者が着座すると、前記座部32は前記第2のリンク機構33を構成する前記連動リンク63とともに倒伏方向に回動する。そのとき、前記座部32の回動に前記第2のリンク機構33が連動して前記フットレスト18が上昇する。
【0140】
しかしながら、前記ブレーキリンク49は前記座部32の上昇と、前記フットレスト18の上昇に連動することがないから、前記後輪7はブレーキが掛かられたままの状態にある。つまり、ブレーキがかかられた車椅子1Bに利用者が単に座るだけでは、前記後輪7のブレーキがかけられた状態は解除されない。そのため、利用者が車椅子1Bに着座しても、その車椅子1Bが不要に動くことがない。
【0141】
前記座部32に着座した利用者が前記後輪7のブレーキを解除するには、図13に示すように前方に倒伏した状態にある前記操作レバー61を、図12に示すようにほぼ垂直となるまで後方へ回動させる。
【0142】
それによって、前記ブレーキリンク49を前記ブレーキ部材51が後輪7から離れる方向に回動させることができるから、前記後輪7のブレーキを解除することができる。
【0143】
このとき、前記操作レバー61とともに前記回動リンク47が回動するから、前記スライドリンク44が前記車体2の前方向にスライドし、その先端が前記押圧アーム64の先端に当接する。つまり、図12に示す状態に戻ることになる。
【0144】
このように、第3の実施の形態の椅子1Bにおいても、第2の実施の形態と同様、利用者が上昇した状態の座部32に着座し、この座部32を下降させた際、後輪7のブレーキはかけられた状態にあり、その状態を解除するためには前記操作レバー61を操作しなければならない。
【0145】
したがって、利用者が着座することで、前記車椅子1Bが不用意に動くのを防止することができる。しかも、利用者が前記フットレスト18を下降させるとともに、座部32を上昇させた後、前記座部32から立ち上がると、前記後輪7には自動的にブレーキがかけられる。したがって、利用者が前記車体2につかまりながら、立ち上がっても、前記車体2が不用意に動くということもない。
【符号の説明】
【0146】
2…車体、3…サイドフレーム、11…肘掛け、12…第1のリンク機構、13…第1のリンク、14…第2のリンク、15…第3のリンク、17…高さ調整機構、18…フットレスト、31…すべり止め部材、32…座部、33…第2のリンク機構、34…第4のリンク、35…第5のリンク、41…ブレーキ機構、44…スライドリンク、45…ガイドピン、46…係合ピン、47…回動リンク、49…ブレーキリンク、51…ブレーキ部材、61…操作レバー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13