(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263517
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】エアセルユニット、マットレス、クッション及び介護ロボット
(51)【国際特許分類】
A47C 27/10 20060101AFI20180104BHJP
A47C 27/08 20060101ALI20180104BHJP
A47C 20/08 20060101ALI20180104BHJP
A61G 7/05 20060101ALI20180104BHJP
A61G 7/14 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
A47C27/10 Z
A47C27/08 G
A47C20/08 A
A61G7/05
A61G7/14
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-226381(P2015-226381)
(22)【出願日】2015年11月19日
(65)【公開番号】特開2017-93550(P2017-93550A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2016年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】515322172
【氏名又は名称】株式会社エトス
(73)【特許権者】
【識別番号】510108858
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立長寿医療研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100082337
【弁理士】
【氏名又は名称】近島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】古田 勝経
(72)【発明者】
【氏名】根本 哲也
(72)【発明者】
【氏名】近藤 和泉
(72)【発明者】
【氏名】原田 敦
(72)【発明者】
【氏名】佐山 行宏
【審査官】
山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−136396(JP,A)
【文献】
特開2010−125280(JP,A)
【文献】
特開平03−267013(JP,A)
【文献】
特開2012−200406(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0164229(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/10
A47C 20/08
A47C 27/08
A61G 7/05
A61G 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに重ね合わされ周囲が接着されて気体層を形成する第1のシート及び第2のシートと、前記第1のシート及び前記第2のシートを点状の複数箇所で固着する第1の固着部と、複数の前記第1の固着部に囲まれて前記第1のシート及び前記第2のシートの重ね合わせ方向に前記第1の固着部よりも突出して設けられ、前記重ね合わせ方向に弾性変形可能な第1のセル部と、を有する第1のエアセルと、
互いに前記重ね合わせ方向に重ね合わされ周囲が接着されて気体層を形成する第3のシート及び第4のシートと、前記第3のシート及び前記第4のシートを点状の複数箇所で固着する第2の固着部と、複数の前記第2の固着部に囲まれて前記重ね合わせ方向に前記第2の固着部よりも突出して設けられ、前記重ね合わせ方向に弾性変形可能な第2のセル部と、を有する第2のエアセルと、
前記第1のエアセル及び前記第2のエアセルを、互いに前記重ね合わせ方向に重ね合わせとなるように、かつ、前記重ね合わせ方向に直交する方向に相対移動可能に連結すると共に、前記第1のエアセル及び前記第2のエアセルの間が大気に連通して分離した中間層と、を備え、
前記第1の固着部と前記第2のセル部とは前記重ね合わせ方向に対向して配置されると共に、前記第2の固着部と前記第1のセル部とは前記重ね合わせ方向に対向して配置される、
ことを特徴とするエアセルユニット。
【請求項2】
前記第1の固着部は、平面視において矩形の角となる位置に配置され、前記第2の固着部は、前記矩形の中央部に配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載のエアセルユニット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエアセルユニットを備える、
ことを特徴とするマットレス。
【請求項4】
前記エアセルユニットを、前記直交する方向に沿って隣接して3つ有し、各エアセルユニットにおける前記第1のエアセル及び前記第2のエアセルの空気圧をそれぞれ独立して制御可能である、
ことを特徴とする請求項3に記載のマットレス。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のエアセルユニットを備える、
ことを特徴とするクッション。
【請求項6】
被介護者を支持する支持具と、
前記支持具を移動させる駆動部と、
前記駆動部を制御する制御部と、
前記支持具の前記被介護者を支持する部位に設けられる請求項5に記載のクッションと、を備える、
ことを特徴とする介護ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空でクッション性を有するエアセルユニットと、これを利用するマットレス、クッション及び介護ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気非透過性の合成樹脂製のシートを重ね合わせて中空に固着したエアセルを複数並べ、各エアセルの空気圧を適宜調圧可能にしたマットレスが普及している。エアセルを利用したマットレスは、利用者を適度な面圧で支持することができ、例えば、床ずれの予防など、介護用に好適である。
【0003】
このようなエアセルを利用したマットレスとして、例えば、4枚のシート(上から順に第1のシート〜第4のシート)を重ね合わせ、第1のシートと第2のシート、第2のシートと第3のシート、第3のシートと第4のシートをそれぞれ複数の点状に接着して各シートの間で3層のエアセルを形成したものが知られている(特許文献1参照)。このマットレスでは、第1のシートと第2のシートからなる第1のエアセルの接着部と、第2のシートと第3のシートからなる第2のエアセルの接着部とを、互いに重ならないように互い違いとなる矩形の角となる位置に配置している。また、第2のシートと第3のシートからなる第2のエアセルの接着部と、第3のシートと第4のシートからなる第3のエアセルの接着部とを、互いに重ならないように互い違いとなる矩形の角となる位置に配置している。このマットレスによれば、互いに固着された3層のエアセルが重ねられることにより、底着きの回避を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−136396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1のマットレスでは、第1のシート〜第4のシートの間で重なり合ったシート同士が接着され、特に第1のエアセルと第3のエアセルとは平面視において同じ位置に固定されることになり、従って、3層のエアセル同士の水平方向への位置関係は相対的に固定されたままになってしまう。
【0006】
ここで、一般的に介護用に使用されるマットレスについては、利用者の床ずれを予防するために、利用者に接触して支持する面の面圧を下げることが望まれている。そのために、マットレスと利用者とはできるだけ広い面積で接触することが好ましい。これに対し、特許文献1のマットレスでは、3層のエアセル同士の水平方向への位置関係が相対的に固定されているので、利用者の重量を重力方向に沿って真下から支持するに留まり、利用者の体形や姿勢に応じて利用者を側方から包み込むような作用はない。このため、利用者がマットレス上で寝返り等により移動する際、利用者の支持面が小面積で移動して、長時間に亘って利用者を低い面圧で支持するには十分でない。また、例えば、第2のシートが一部破損して、第1のエアセルと第2のエアセルとの空気が連通した場合、空気がマットレスの限定箇所に偏って溜まってしまい、利用者を移動してしまう虞がある。このため、特許文献1のマットレスは、利用者をあらゆる環境において低い面圧で支持するには十分でない。
【0007】
そこで、本発明は、支持対象物を支持する面積をどのような状況においても広くすることで、面圧の低下を促進可能なエアセルユニット、マットレス、クッション及び介護ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のエアセルユニットは、互いに重ね合わされ周囲が接着されて気体層を形成する第1のシート及び第2のシート
と、前記第1のシート及び前記第2のシートを点状の複数箇所で
固着する第1の固着部
と、複数の前記第1の固着部に囲まれて前記第1のシート及び前記第2のシートの重ね合わせ方向に前記第1の固着部よりも突出して設けられ、前記重ね合わせ方向に弾性変形可能な第1のセル部と、を有する第1のエアセルと、互いに
前記重ね合わせ方向に重ね合わされ周囲が接着されて気体層を形成する第3のシート及び第4のシート
と、前記第3のシート及び前記第4のシートを点状の複数箇所で
固着する第2の固着部
と、複数の前記第2の固着部に囲まれて前記重ね合わせ方向に前記第2の固着部よりも突出して設けられ、前記重ね合わせ方向に弾性変形可能な第2のセル部と、を有する第2のエアセルと、前記第1のエアセル及び前記第2のエアセルを、互いに
前記重ね合わせ方向に重ね合わせとなるように、かつ、
前記重ね合わ
せ方向に直交する方向に相対移動可能に連結すると共に、前記第1のエアセル及び前記第2のエアセルの間が大気に連通して分離した中間層と、を備え、前記第1の固着部と
前記第2のセル部とは前記重ね合わせ方向に対向して配置されると共に、前記第2の固着部と
前記第1のセル部とは前記重ね合わせ方向に対向して配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1のエアセル及び第2のエアセルは中間層が介在して重ね合わせた方向に直交する方向(以下、平面方向という)に自由度が高く相対移動可能であり、かつ、第1の固着部と
第2のセル部とは重ね合わせ方向X(図1等参照)に対向して配置されると共に、第2の固着部
と第1のセル部とは重ね合わせ方向に対向して配置されており、第1のエアセル及び第2のエアセルの対向する凹凸面が嵌り合っている。そして、エアセルユニットに支持対象物の荷重を掛けると、第1のエアセル及び第2のエアセルを互いに押圧する力が作用する。この時、第1のエアセル及び第2のエアセルの対向する凹凸面が変形し、様々な角度で押し合って荷重の大きい方から小さい方に移動する分力が発生し、第1のエアセル及び第2のエアセルを平面方向に相対移動させる。
【0010】
また、第1のエアセル及び第2のエアセルの空気圧を適切に調整することにより、支持対象物を支持するエアセルユニットの部分が凹み、凹んだ部分の空気は周囲に逃げて、支持対象物を包み込むように膨張する。膨張に伴い、第1のエアセル及び第2のエアセルは異なる態様で変形するが、互いに自由度が高く水平方向に相対移動するので、変形しつつも受ける荷重に応じて最も収まりの良い状態に自然に位置し、結果的に支持対象物を広い面積で支持するようになる。
【0011】
これらの理由により、本発明によれば、支持対象物の周囲に位置するエアセルユニットの部位は、支持対象物の荷重が掛かる前に比べて膨張し、膨張した部分が支持対象物を周囲から包み込むように変形する。このため、支持対象物を荷重の作用方向だけでなく広い面積で接触して支持することができるので、支持する荷重の分散を図り、支持対象物との接触面における面圧を低下することができる。
【0012】
また、第1〜第4のシートのいずれかが破損しても、第1のエアセル又は第2のエアセルの気体が大気に逃げるだけで、他方のエアセルに影響を及ぼすことはなく、エアセルユニット上の支持対象物を移動してしまうことはない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の実施形態に係るエアセルの概略の分解斜視図である。
【
図2】第1の実施形態に係るエアセルの概略の説明図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【
図3】第1の実施形態に係るエアセルの概略の断面図であり、(a)は
図2(a)のA−A線、(b)は
図2(a)のB−B線、(c)は
図2(a)のC−C線、(d)は
図2(a)のD−D線で切断した状態を示す。
【
図4】第1の実施形態に係るマットレスの概略の斜視図である。
【
図5】第1の実施形態に係るマットレスに利用者が横臥した状態の概略の断面図である。
【
図6】実施例に係るマットレスに利用者が横臥した状態の圧力分布を示す模式図である。
【
図7】第2の実施形態に係る介護ロボットの概略の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態を、
図1〜
図6を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、エアセルユニット1の一例としてマットレス50に適用した場合について説明している。
【0015】
まず、このマットレス50に適用されるエアセルユニット1について、
図1〜
図3を用いて詳細に説明する。
図1に示すように、エアセルユニット1は、互いに重ね合わせた上側の第1のエアセル10及び下側の第2のエアセル20と、これら第1のエアセル10及び第2のエアセル20の間に介在された中間層30とを備えている。
【0016】
第1のエアセル10は、互いに重ね合わされ周囲が接着されて気体層を形成する第1のシート11及び第2のシート12を、点状の複数箇所である第1の固着部13により固着して形成されている。第1のシート11及び第2のシート12は、いずれも可撓性を有する例えばウレタン等の合成樹脂製としている。第1の固着部13は、平面視において正方形の角となる位置に配置されている。本実施形態では、第1のシート11及び第2のシート12は、第1の固着部13において加熱により接着(溶着)することで固着されている。
また、第1のエアセル10は、複数の第1の固着部13に囲まれて第1のシート11及び第2のシート12の重ね合わせ方向Xに第1の固着部13よりも突出して設けられ、重ね合わせ方向Xに弾性変形可能な第1のセル部14を有している。
【0017】
第1のエアセル10は1つの気体層(空気室)を有しており、外部から空気室に空気を供給することで膨らませることができる。本実施形態では、第1のエアセル10が軽く膨らむ程度に空気を入れている。第1のエアセル10の一部に外部から荷重を掛けると荷重の掛かった部分が凹み、凹んだ部分の空気は周囲に逃げて、荷重が掛かった部分を包み込むように膨張する(
図5参照)。
【0018】
第2のエアセル20は、互いに
重ね合わせ方向Xに重ね合わされ周囲が接着されて気体層を形成する第3のシート21及び第4のシート22を、点状の複数箇所である第2の固着部23により固着して形成されている。第3のシート21及び第4のシート22は、第1のシート11及び第2のシート12と同様に、いずれも可撓性を有する例えばウレタン等の合成樹脂製としている。第2の固着部23は、平面視において正方形の角となる位置に配置されている。本実施形態では、第3のシート21及び第4のシート22は、第2の固着部23において加熱により接着することで固着されている。
また、第2のエアセル20は、複数の第2の固着部23に囲まれて重ね合わせ方向Xに第2の固着部23よりも突出して設けられ、重ね合わせ方向Xに弾性変形可能な第2のセル部24を有している。
【0019】
第2のエアセル20は1つの気体層(空気室)を有しており、外部から空気室に空気を供給することで膨らませることができる。本実施形態では、第2のエアセル20が軽く膨らむ程度に空気を入れている。第2のエアセル20の一部に外部から荷重を掛けると荷重の掛かった部分が凹み、凹んだ部分の空気は周囲に逃げて、荷重が掛かった部分を包み込むように膨張する(
図5参照)。
【0020】
中間層30は、第1のエアセル10及び第2のエアセル20を、互いに重ね合わせとなるように、かつ、重ね合わせた方向に直交する方向(以下、水平方向という)に自由度が高く相対移動可能に連結すると共に、第1のエアセル10及び第2のエアセル20の間を大気に連通して分離して形成されている(
図3参照)。第1のエアセル10を構成する第1のシート11及び第2のシート12、並びに第2のエアセル20を構成する第3のシート21及び第4のシート22は、
図2(b)に示すように、その接着された周縁部10a,20aが広く形成されている。そして、例えば、これら周縁部10a,20aに鳩目により多数の穴が形成されており、これらの穴を通るように紐25が周囲を取り巻くように掛けられて、紐25の端が抜け止め固定されている。これにより、第1のエアセル10及び第2のエアセル20は、水平方向に相対移動可能に、かつ互いに重ね合わさるように一体に連結されると共に、両エアセル10,20の間が空気に連通して分離される中間層30が形成される。尚、中間層30は、紐25による連結に限られず、第1のエアセル10及び第2のエアセル20の周縁の適宜な箇所を溶着等により固着することで一体化して構成してもよい。この場合、第1のエアセル10及び第2のエアセル20の間に介在される中間層30を大気に連通させるため、第1のエアセル10及び第2のエアセル20の周縁の一部を開放する。
【0021】
ここで、中間層30において、第1の固着部13と第2の固着部23とは、互い違いに配置されている。本実施形態では、
図2(a)に示すように、第2の固着部23は、第1の固着部13が配置される正方形の中央部に配置されている。
即ち、第1の固着部13と第2のセル部24とは重ね合わせ方向Xに対向して配置されると共に、第2の固着部23と第1のセル部14とは重ね合わせ方向Xに対向して配置される。これにより、第1のエアセル10及び第2のエアセル20は、無荷重の際には
図3(a)〜
図3(d)に示すように各凹凸が嵌り合った状態で位置している。また、
図3(a)に示すように、エアセルユニット1の第1の固着部13と第2の固着部23とを結ぶ直線(
図2(a)中のA−A線)上では、各固着部13,23はエアセルユニット1の上面及び下面に露出し、凹凸を形成する。
図3(b)に示すように、エアセルユニット1の第1の固着部13を結び第2の固着部23の間を通過する直線(
図2(a)中のB−B線)上では、第1の固着部13はエアセルユニット1の上面に露出して凹凸を形成するが、エアセルユニット1の下面は平坦になる。
図3(c)に示すように、エアセルユニット1の第2の固着部23を結び第1の固着部13の間を通過する直線(
図2(a)中のC−C線)上では、第2の固着部23はエアセルユニット1の下面に露出して凹凸を形成するが、エアセルユニット1の上面は平坦になる。
図3(d)に示すように、エアセルユニット1の各固着部13,23の間を通過する直線(
図2(a)中のD−D線)上では、エアセルユニット1の上面及び下面は平坦になる。尚、
図3(a)〜(d)は概略図であって、実際は各固着部13,23に影響されて正確に平坦になるとは限らない。
【0022】
上述したエアセルユニット1を製造する際は、まず第1のシート11及び第2のシート12を重ね合わせ、その両側から両シート11,12を挟んで熱溶着用の電極を当てて、第1の固着部13において溶着を行い、第1のエアセル10を形成する。また、第3のシート21及び第4のシート22を重ね合わせ、その両側から両シート21,22を挟んで熱溶着用の電極を当てて、第2の固着部23において溶着を行い、第2のエアセル20を形成する。更に、第1のエアセル10及び第2のエアセル20の周縁部10a,20aを紐25により結束して、エアセルユニット1を形成する。尚、本実施形態では、各シート11,12,21,22の固着方法として加熱による接着である溶着を適用した場合について説明したが、これには限られず、例えば接着剤を利用した接着等、他の接着方法を用いてもよい。
【0023】
次に、上述したエアセルユニット1を備えるマットレス50について、
図4を用いて詳細に説明する。このマットレス50は、長手方向に沿って隣接する第1〜第3のエアセルユニット1〜3を有している。本実施形態では、横臥した利用者に対し、第1のエアセルユニット1は頭部及び胸部を支持し、第2のエアセルユニット2は腹部を支持し、第3のエアセルユニット3は脚部を支持するよう、それぞれ配置されている。
【0024】
第1〜第3のエアセルユニット1〜3の第1のエアセル10は、連続した1枚の第1のシート11及び1枚の第2のシート12を固着して形成されている。即ち、第1〜第3のエアセルユニット1〜3の第1のエアセル10は、第1のシート11及び第2のシート12を第1の固着部13において溶着し、第1〜第3のエアセルユニット1〜3の境界部分を区切るように溶着することで形成されている。同様に、第1〜第3のエアセルユニット1の第2のエアセル20は、連続した1枚の第3のシート21及び1枚の第4のシート22を第2の固着部23において溶着し、第1〜第3のエアセルユニット1〜3の境界部分を区切るように溶着することで形成されている。
【0025】
マットレス50の長手方向の両端部では、第1のエアセル10及び第2のエアセル20が、互いに溶着されて離れないように一体化されている。また、マットレス50の短手方向の両端部では、第1のエアセル10及び第2のエアセル20は、互いに溶着されずに開放されている。第1のエアセル10及び第2のエアセル20の間には中間層30が介在され、マットレス50の短手方向の両端部において大気に開放されている。即ち、マットレス50の周縁部は、長手方向の両端部において第1のエアセル10と第2のエアセル20とが溶着されると共に、短手方向の両端部において紐25により第1のエアセル10と第2のエアセル20とが連結され、第1のエアセル10及び第2のエアセル20は、中間層30の介在により各エアセル10,20の可撓範囲において水平方向に相対移動可能である。
【0026】
第1〜第3のエアセルユニット1〜3の第1のエアセル10及び第2のエアセル20は、それぞれ空気管40を介してポンプ41に連結されている。ポンプ41は不図示の制御部に接続され、制御部は各エアセルユニット1〜3における第1のエアセル10及び第2のエアセル20の合計6個の空気室の空気圧をそれぞれ独立して制御可能である。これにより、このマットレス50では、制御部が第1〜第3のエアセルユニット1〜3の6個の空気室の空気圧を適宜調整することにより、利用者に対して身体の部位に応じた適切な体圧分散を図って支持することができる。
【0027】
次に、上述したマットレス50に利用者Uが横臥した場合の動作について、
図4及び
図5を用いて詳細に説明する。まず、制御部によりポンプ41が駆動され、マットレス50の第1〜第3のエアセルユニット1〜3に空気が充填されて、マットレス50が適切な空気圧に調整される。
【0028】
図5に示すように、利用者Uがマットレス50(ここでは、例えば第1のエアセルユニット1)に横臥すると、利用者Uの身体が第1のエアセルユニット1を下方に押圧する。身体の真下に位置する第1のエアセルユニット1の部位では、身体の荷重によって各エアセル10,20が凹み、その内部の空気が周囲の荷重の掛かっていない部位に押しやられる(図中、矢印)。また、同時に、第1のエアセル10及び第2のエアセル20は異なる態様で変形するが、中間層30において第1のエアセル10及び第2のエアセル20が水平方向に自由度が高く相対移動するので、第1のエアセル10及び第2のエアセル20は変形しつつも受ける荷重に応じて最も収まりの良い状態に自然に位置するようになる。これらの理由により、身体の周囲に位置する第1のエアセルユニット1の部位は、利用者Uが横臥する前に比べて膨張し、膨張した部分が身体を周囲から包み込むように変形する。
【0029】
また、利用者Uが寝返り等により姿勢を変えた場合、第1のエアセルユニット1に対して荷重の作用する位置が変動する。この場合、第1のエアセル10及び第2のエアセル20の各内部では空気が自由に移動できるので、利用者Uの移動に追従して変形し、常に利用者Uを周囲から包み込んだ状態になる。このため、利用者Uの身体を真下だけでなく広い面積で接触して支持することができるので、支持する体重の分散を図り、身体との接触部における面圧を著しく低下することができる。
【0030】
上述したように本実施形態のマットレス50によれば、利用者Uの身体の周囲に位置する第1のエアセルユニット1の部位は、利用者Uの身体の荷重が掛かる前に比べて膨張し、膨張した部分が利用者Uの身体を周囲から包み込むように変形する。このため、利用者Uの身体を荷重の作用方向だけでなく広い面積で接触して支持することができるので、支持する荷重の分散を図り、利用者Uの身体との接触面における面圧を著しく低下することができる。このため、マットレス50における寝返りのし易さや包み込まれるような安心感により、利用者Uは快適な横臥状態を取ることができる。更に、体圧分散能を向上したことで、特に外力に対する抵抗の弱い高齢者をも適切に支持することができ、また、このマットレス50によれば、利用者Uの身長や体型によらず柔軟に変形可能であるので、様々な利用者Uに違和感を与えることなく全身を支持することができる。
【0031】
また、本実施形態のマットレス50によれば、第1の固着部13は正方形の角となる位置に配置され、第2の固着部23は正方形の中央部に配置されることで、互い違いに配置されている。このため、第1のエアセル10及び第2のエアセル20の対向面において、水平方向に対して均一な力が発生するので、利用者Uを支持する際の面圧の偏りを抑制することができる。
【0032】
また、本実施形態のマットレス50によれば、2枚のシート11,12を溶着して形成した第1のエアセル10と、2枚のシート21,22を溶着して形成した第2のエアセル20とを溶着して形成しているので、3枚のシートを互い違いに重ねて溶着して形成した場合に比べて電極の設置が容易になり溶着作業を簡易化することができる。しかも、本実施形態のマットレス50は、3枚のシートを互い違いに溶着して形成したマットレスのように真ん中のシートの破損によって他の部位が大きく膨張してしまう事態は起こり得ず、マットレス50の空気の偏りにより利用者が意図に反して移動することを防止できる。
【0033】
尚、上述した本実施形態のマットレス50では、第1の固着部13は正方形の角となる位置に配置され、第2の固着部23は正方形の中央部に配置される場合について説明したが、これには限られない。例えば、第1の固着部13は矩形の角となる位置に配置され、第2の固着部23は矩形の中央部に配置されるようにしてもよく、あるいは第1の固着部13は三角形等の多角形の角となる位置に配置され、第2の固着部23は三角形等の多角形の中央部に配置されるようにしてもよい。いずれの場合も、第1のエアセル10及び第2のエアセル20の対向面において、水平方向に対して均一な力が発生するので、利用者Uを支持する際の面圧の偏りを抑制することができる。
【0034】
(実施例)
上述した第1の実施形態に係るマットレス50を用いて、利用者U(身長155cm、体重50kg)が横臥した状態で圧力分布を測定した。その結果を
図6に示す。同図に示すように、マットレス50に荷重が掛かった部位は、体型に比べて広かった。これにより、本実施例におけるマットレス50によれば、利用者Uは広い面積で包み込まれるように支持されることが確認された。
【0035】
更に、面圧の測定の結果、全ての部位で面圧を10mmHg程度に抑えることができた。従来のエアセルを用いたマットレスでは、面圧は20〜25mmHg程度であったので、本実施例におけるマットレス50によれば、面圧を大幅に低減できることが確認された。
【0036】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態を、
図7を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、エアセルユニット1の一例としてクッション60に適用した場合について説明している。本実施形態では、クッション60は、エアセルユニット1を備えている。また、このクッション60は、介護ロボットに適用されている。尚、エアセルユニット1の構成は第1の実施形態と同様であるので、符号を同じくして詳細な説明を省略する。
【0037】
図7に示すように、介護ロボットは、利用者(被介護者)Uを支持する支持具71と、支持具71を移動させる駆動部72と、駆動部72を制御する制御部73とを備えている。本実施形態では、支持具71は、水平で平行な2本のアーム形状であり、各アームの上側に利用者Uを支持し、駆動部72によって昇降可能としている。
【0038】
支持具71の利用者Uを支持する部位には、クッション60が設けられている。これにより、支持具71に利用者Uを支持する際は、クッション60が利用者Uに当接するので、広い面積で接触することで、面圧を低減しながらも高い保持性を維持することができる。
【0039】
上述した本実施形態のクッション60では、介護ロボットの利用者Uに接触する部位に適用した場合について説明したが、これには限られず、クッション60を、例えば、着座用、その他のクッションとして適用してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1…第1のエアセルユニット(エアセルユニット)、2…第2のエアセルユニット(エアセルユニット)、3…第3のエアセルユニット(エアセルユニット)、10…第1のエアセル、11…第1のシート、12…第2のシート、13…第1の固着部、20…第2のエアセル、21…第3のシート、22…第4のシート、23…第2の固着部、30…中間層、50…マットレス、60…クッション、71…支持具、72…駆動部、73…制御部、U…利用者(被介護者)。