特許第6263555号(P6263555)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6263555呼吸装置によって設定される圧力の自動調整システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263555
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】呼吸装置によって設定される圧力の自動調整システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/00 20060101AFI20180104BHJP
【FI】
   A61M16/00 332A
【請求項の数】24
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2015-558394(P2015-558394)
(86)(22)【出願日】2014年2月10日
(65)【公表番号】特表2016-507312(P2016-507312A)
(43)【公表日】2016年3月10日
(86)【国際出願番号】EP2014052529
(87)【国際公開番号】WO2014131605
(87)【国際公開日】20140904
【審査請求日】2016年2月3日
(31)【優先権主張番号】102013203177.7
(32)【優先日】2013年2月26日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515233591
【氏名又は名称】ハミルトン メディカル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ノヴォトニ ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ラウブシェール トーマス
【審査官】 久島 弘太郎
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0228143(US,A1)
【文献】 特表2003−534867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸装置(100)によって設定される圧力の自動調整システムであって、
少なくとも吸気相の最後および関連する呼気相の最後において人の胸郭を通る少なくとも2次元断面(E)に沿った電気インピーダンス分布(EIT_ei_xy、EIT_ee_xy)を検出する電気インピーダンストモグラフィ装置(20)と、
前記吸気相の最後の前記検出された電気インピーダンス分布(EIT_ei_xy)および前記呼気相の最後の前記検出された電気インピーダンス分布(EIT_ee_xy)を複数のEITピクセル(xy)に分割し、それぞれのEITピクセルに関連づけられた、前記吸気相の最後の前記電気インピーダンスの値(EIT_ei_xy)および前記呼気相の最後の前記電気インピーダンスの値(EIT_ee_xy)を求める装置と、
下記の比較に基づいて、前記呼吸装置(100)によって設定される前記圧力を自動調整する装置であって、当該比較は、
(i)個々のEITピクセル(xy)に関連する前記吸気相の最後の前記電気インピーダンスの前記値(EIT_ei_xy)と、前記それぞれの個々のEITピクセルに関連する前記呼気相の最後の前記電気インピーダンスの前記値(EIT_ee_xy)との間のずれの、
(ii)前記EITピクセルの全体に基づいて求められる、前記吸気相の最後の前記電気インピーダンスの前記値と前記呼気相の最後の前記電気インピーダンスの前記値との間のずれとの比較である、装置と、を備える
システム。
【請求項2】
個々のEITピクセル(xy)に関連づけられた前記吸気相の最後の前記電気インピーダンスの前記値(EIT_ei_xy)と前記それぞれの個々のEITピクセル(xy)に関連する前記呼気相の最後の前記電気インピーダンスの前記値(EIT_ee_xy)との間の前記ずれ、および/または、前記EITピクセルの全体に基づいて求められる、前記吸気相の最後の前記電気インピーダンスの前記値と前記呼気相の最後の前記電気インピーダンスの前記値との間の前記ずれが、前記吸気相の最後の前記電気インピーダンスと前記呼気相の最後の前記電気インピーダンスとのそれぞれの値の間の差として定義される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
個々のEITピクセル(xy)に関連づけられた前記吸気相の最後の前記電気インピーダンスの前記値(EIT_ei_xy)と前記それぞれの個々のEITピクセル(xy)に関連する前記呼気相の最後の前記電気インピーダンスの前記値(EIT_ee_xy)との間の前記ずれ、および/または、前記EITピクセルの全体に基づいて求められる、前記吸気相の最後の前記電気インピーダンスの前記値と前記呼気相の最後の前記電気インピーダンスの前記値との間の前記ずれが、前記吸気相の最後の前記電気インピーダンスと前記呼気相の最後の前記電気インピーダンスとのそれぞれの値の間の比として定義される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記EITピクセルの全体に基づいて求められる、前記吸気相の最後の前記電気インピーダンスの前記値と前記呼気相の最後の前記電気インピーダンスの前記値との間の前記ずれが、前記EITピクセルのそれぞれに対する前記吸気相の最後の前記電気インピーダンスの前記値(EIT_ei_xy)と前記EITピクセルの前記それぞれに対する前記呼気相の最後の前記電気インピーダンスの前記値(EIT_ee_xy)とのすべての差の最大値である、
請求項1〜3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記呼吸装置(100)によって設定される前記圧力の前記自動調整装置が、それぞれのEITピクセル(xy)に関連づけられた、前記吸気相の最後の前記電気インピーダンスの前記値(EIT_ei_xy)と前記呼気相の最後の前記電気インピーダンスの前記値(EIT_ee_xy)との間の前記ずれを、前記EITピクセルの全体に基づいてそれぞれ求められる、前記吸気相の最後および/または前記呼気相の最後の前記電気インピーダンスの前記値とも比較する、
請求項1〜4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記呼吸装置(100)によって設定される前記圧力の前記自動調整装置が、前記比較に基づいて所定条件を満たすEITピクセル(xy)を求め、前記条件を満たすEITピクセルの割合が所定の閾値(k5、k6)を超える場合に、前記圧力の補正を行う、
請求項1〜5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
下記比較に基づいて、前記呼吸装置によって設定される呼気終末陽圧(PEEP)を自動調整する装置であって、当該比較が、
(i)一方は、個々のEITピクセル(xy)に関連する前記吸気相の最後の前記電気インピーダンスの前記値(EIT_ei_xy)と、前記それぞれの個々のEITピクセルに関連する前記呼気相の最後の前記電気インピーダンスの前記値(EIT_ee_xy)との間のずれの、
(ii)他方は、前記EITピクセルの全体に基づいて求められる、前記吸気相の最後の前記電気インピーダンスの前記値(EIT_ei_gesamt)と、前記呼気相の最後の前記電気インピーダンスの前記値とのずれ、ならびに前記EITピクセルの全体に基づいて求められる、前記呼気相の最後の前記電気インピーダンスの前記値との比較である、前記呼気終末陽圧(PEEP)を自動調整する装置を備える、
請求項1〜6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記EITピクセルの全体に基づいて求められる前記呼気相の最後の前記電気インピーダンスの前記値が、前記EITピクセルのそれぞれに対する前記呼気相の最後の前記電気インピーダンスのすべての値の最小値(EIT_ee_min)である、
請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記呼吸装置(100)によって設定される呼気終末陽圧(PEEP)を自動調整する前記装置は、前記比較が肯定であるEITピクセル(xy)を、虚脱した肺胞を有する肺領域(52a/58a、52b/58b)に関連付ける、
請求項7または8に記載のシステム。
【請求項10】
EITピクセル(xy)と虚脱した肺胞を含む肺領域(52a/58a、52b/58b)との関連付けが、以下の2つの条件
EIT_ei_xy−EIT_ee_xy<k1×max(すべてのあり得るxyに対する、EIT_ei_xy−EIT_ee_xy)
および
EIT_ee_xy<k2×min(すべてのあり得るxyに対する、EIT_ee_xy)
式中、
EIT_ei_xy:それぞれのEITピクセルに関連する前記吸気相の最後の電気インピーダンス値
EIT_ee_xy:それぞれのEITピクセルに関連する前記呼気相の最後の電気インピーダンス値
0≦k1≦1、特に0.3≦k1≦0.7、特に0.4≦k1≦0.6、特にk1=0.5、
k2≧1、特に1.0≦k2≦1.6、特に1.2≦k2≦1.4、特にk2=1.3
が満たされる場合に行われる、
請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記呼吸装置(100)によって設定される呼気終末陽圧(PEEP)を自動調整する前記装置は、前記比較が肯定であるEITピクセル(xy)の割合が、EITピクセル(xy)の総数において所定の第1の閾値(k5)を超える場合、後続する呼吸周期に対する前記呼気終末陽圧の前記値を所定量増大させる、
請求項7〜10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記比較が所定時間間隔で繰り返され、EITピクセルの総数における、前記比較が肯定であるEITピクセル(xy)の割合が前記第1の閾値(k5)未満となるまで、前記後続する呼吸周期に対する前記呼気終末陽圧(PEEP)が増大する、
請求項7〜11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記第1の閾値(k5)の前記値が、前記呼気終末陽圧(PEEP)の値の増大によって大きくなるように選択される、
請求項11または12に記載のシステム。
【請求項14】
下記の比較に基づいて、前記呼吸装置(100)によって設定される最高気道内圧(Paw_max)を自動調整する装置であって、前記比較が、
(i)一方は、個々のEITピクセル(xy)に関連づけられた前記吸気相の最後の前記電気インピーダンスの前記値(EIT_ei_xy)と、前記それぞれの個々のEITピクセル(xy)に関連する前記呼気相の最後の前記電気インピーダンスの前記値(EIT_ee_xy)との間のずれの、
(ii)他方は、前記EITピクセルの全体に基づいて求められる、前記吸気相の最後の前記電気インピーダンスの前記値と、前記呼気相の最後の前記電気インピーダンスの前記値との間のずれ、ならびに前記EITピクセルの全体に基づいて求められる前記吸気相の最後の前記電気インピーダンスの前記値との比較である、装置を備える、
請求項1〜13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記EITピクセルの全体に基づいて求められる前記吸気相の最後の前記電気インピーダンスの前記値が、前記EITピクセル(xy)のそれぞれに対する前記吸気相の最後の前記電気インピーダンスのすべての値の最大値(EIT_ei_xy)である、
請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記呼吸装置(100)によって設定される最高気道内圧(Pqw_max)の自動調整の前記装置が、比較が肯定であるEITピクセル(xy)を過伸展した肺胞を有する肺領域(62a/66a、62b/66b)に関連付ける、
請求項14または15に記載のシステム。
【請求項17】
EITピクセル(xy)の、過伸展した肺胞を有する肺領域(62a/66a、62b/66b)への関連付けが、以下の2つの条件
EIT_ei_xy−EIT_ee_xy<k3×max(すべてのあり得るxyに対する、EIT_ei_xy−EIT_ee_xy)、
および
EIT_ei_xy>k4×max(すべてのあり得るxyに対する、EIT_ei_xy)
式中、
EIT_ei_xy:それぞれのEITピクセルに関連づけられた前記吸気相の最後の電気インピーダンス値
EIT_ee_xy:それぞれのEITピクセルに関連づけられた前記呼気相の最後の電気インピーダンス値
0≦k3≦1、特に0.3≦k3≦0.7、特に0.4≦k3≦0.6、特にk3=0.5、
0≦k4≦1、特に0.5≦k4≦0.9、特に0.6≦k4≦0.8、特にk4=0.7
が満たされる場合に行われる、
請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記呼吸装置(100)によって設定される最高気道内圧(Paw_max)を自動調整する前記装置は、前記比較が肯定であるEITピクセル(xy)の割合が、EITピクセル(xy)の総数において所定の第2の閾値(k6)を超える場合、後続する呼吸周期に対する前記最高気道内圧(Paw_max)の前記値を所定量低減させる、
請求項14〜17のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
前記比較が、所定時間間隔で繰り返され、EITピクセルの前記総数における前記比較が肯定であるEITピクセル(xy)の割合が前記第2の閾値(k6)未満となるまで、前記後続する呼吸周期に対する前記最高気道内圧(Paw_max)が低減する、
請求項14〜18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記最高気道内圧(Paw_max)の値の低減に伴い、前記第2の閾値(k6)の前記値が大きくなるように選択される、
請求項18から19に記載のシステム。
【請求項21】
前記電気インピーダンストモグラフィ装置(20)は、電気インピーダンス分布を所定格子に配置されたEITピクセル(xy)に関連づけられた電気インピーダンス値の形態で検出し、
前記検出された電気インピーダンス分布を複数のEITピクセル(xy)に分割する前記装置が、前記電気インピーダンスのそれぞれの値をそれぞれの格子要素に正確に関連付ける、
請求項1〜20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
前記電気インピーダンストモグラフィ装置(20)が、電気インピーダンス分布を所定格子に配置された基本EITピクセル(xy)に関連づけられた電気インピーダンス値の形態で検出し、前記検出された電気インピーダンス分布を複数のEITピクセル(xy)に分割する前記装置が、前記基本EITピクセルのそれぞれを正確に1つのEITピクセル(xy)に関連付け、前記EITピクセル(xy)の各々に対して前記電気インピーダンスの関連する値を求める、
請求項1〜21のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項23】
心臓の影響による迅速時間可変成分を前記検出された電気インピーダンス値からフィルタリングによって除去するフィルタ装置をさらに具備する、
請求項1〜22のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか一項に記載の前記呼吸装置によって設定される圧力の自動調整システムを具備する呼吸装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸装置によって指定されるかまたは設定される圧力、特に呼気終末陽圧および/または最高気道内圧の自動調整システムに関する。本発明はまた、設定された圧力、特に呼気終末陽圧および/または最高気道内圧を調整するこうしたシステムが設けられる機械呼吸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
機械呼吸の今日の一般的な形態では、呼吸ガスは患者に陽圧で供給される。これが、呼吸中の気道内圧または肺胞内圧が、少なくとも吸気相(the inspiration phase)の間の
肺胞を包囲する胸膜間隙内の圧力より大きい理由である。呼気相(the expiration phase)の間、呼吸装置によって気道には圧力がかけられず、その結果、肺組織は弛緩し、気道内圧または肺胞内圧は低下する。この種の陽圧呼吸には、環境によっては、呼気相の最後に、気道内および肺胞内それぞれの圧力状態が、肺胞の一部の虚脱があるほど好ましくないものになるという影響がある可能性がある。そして、肺容量の虚脱部分は、後続する呼吸周期において新たに再開通させなければならなくなる。肺の機能的残留容量は、激しく損なわれ、それより、酸素飽和度が低下し、また肺組織が永久的に損傷を受けることになる。
【0003】
呼気相の最後に肺胞の虚脱を防止するために、陽圧機械呼吸は、通常、PEEPと手短く呼ばれる、いわゆる呼気終末陽圧を用いて行われる。この手法により、多くの場合、酸素飽和度の向上を達成することができる。
【0004】
PEEPを用いる呼吸では、呼吸装置は、永久的に、すなわち吸気相の間および呼気相の間両方において、所定の陽圧、すなわちPEEPを気道にかける。したがって、PEEPは、呼気相の終了後にも依然としてかけられる。最高気道内圧は、気道が呼吸装置によって最高負荷を受ける吸気相の最後にかけられる。
【0005】
理想的には、PEEPは、呼気相の間に肺胞内圧が、胸膜間隙内の圧力の影響の下で肺胞組織が虚脱しない胸膜間隙内の圧力を下回らないか、または少なくともある程度までしか下回らないように、十分大きく設定されるべきである。
【0006】
一方、PEEPの値が高すぎる場合、特に吸気相の間、悪影響がある可能性がある。それは、吸気相の間、肺組織は、非常に高い気道内圧で過伸展する可能性があるためである。呼気相の最後の最高気道内圧を肺組織の過伸展がまだ発生しない値に制限する必要があることにより、高PEEPにおいて、あり得る換気圧、すなわち呼気時の圧力と吸気時の最大圧力との間に圧力差に制限があることになる。
【0007】
さらに、多数の研究によって、PEEPの値が高いことにより、静脈血の心臓に戻る流れが妨げられ、それに対応して心血管系に悪影響があることも示唆されている。
【0008】
臨床診療では、PEEPまたはあり得る最大換気圧および最高気道内圧等の圧力は、それぞれ、集中治療室の医師または看護師によって、患者の所与の生理学的パラメータに基づいて、またはいわゆる「ARDSnetガイドライン」(たとえば、The Acute Respiratory Distress Syndrome Network、The New England Journal of Medicine, 2000、342
、第1301〜1308頁またはGrasoら著、American Journal of Respiratory Critical Care、2007、176、第761〜767頁を参照)等の既知の治療基準に基づいて設定される。こうした
設定は、通常、先行して行われ、医師または看護師によって散発的にしか再調整されない
【0009】
所定のガイドラインは、当然ながら、患者の実際の状態を反映するように適合されておらず、単に経験値を与えるのみである。しかしながら、患者の現状に基づいて各患者に対して個々に、PEEPまたは最高気道内圧等、呼吸に対して確定的な圧力の調整を行う努力がなされている。
【0010】
虚脱したまたは過伸展した肺胞に関する情報を導出する既知の方法にはかなりの時間がかかり、その間、通常の呼吸周期において患者の呼吸が可能ではない。これは、たとえば、たとえばBrochard L.著、Critical care、2006、10、第156〜158頁に記載されているように、「スーパーシリンジ法(super syringe method)」を用いて記録された静圧/容量曲線(P/V曲線)による状況である。さらに、呼吸の間、肺胞の虚脱が肺の個々の領域では観察されるが他の領域では観察されない不均質な肺の状態が極めて頻繁に発生している。呼吸周期にわたる変化しない呼吸パラメータにより、肺胞が、呼気相の間、肺のいくつかの領域において虚脱し、吸気相の間、肺の他の領域において過伸展することさえあり得る。既知の方法は、こうした状況を解決するように適合されていない。
【0011】
Bikkerら著、Critical Care、2010、14(3)、R100、Tanaka,Hら著、American Journal of Respiratory and Critical Care、2004、169(7)、第791〜800頁または米国特許第65
02984B1号に記載されている電気インピーダンストモグラフィ(EIT)方法により、基本的に、肺の状態に関する、特に肺胞の開放および虚脱または肺胞の過伸展に関するリアルタイム情報を取得するのを可能にする方法が利用可能になる。EITは、患者のベッドのかたわらで直接行うことができる非侵襲性方法であり、肺の異なる領域に関して空間的に識別された情報を提供する。EITによって、病的状態のある肺の領域を「正常に動作している」領域から識別することができる。
【0012】
たとえば、欧州特許第1593341B1号は、肺の肺胞開放および肺胞虚脱を局所的に判断するEITベースの方法を提案している。これに関して利用される効果は、患者の呼吸運動によって影響を受ける、EITによって得られるインピーダンス信号の変化が、虚脱した肺胞の領域より肺がまだ虚脱していない領域における方が大きいということにある。呼吸運動によってもたらされるEITインピーダンス信号の変化を求めるために、たとえば、EITインピーダンス信号における最小値と最大値との間の距離を用いることができる。
【0013】
肺の状態に関して時間および空間で分解される情報を取得する可能性が高いため、EITを肺疾患の経過を評価する診断手段として使用することができるように多くの努力がなされてきた。こうした情報を機械呼吸に使用するのを可能にしたいという要望もある。
【0014】
米国特許出願公開第2010/0228143A1号は、EIT信号に基づいて患者の機能的な肺特性を求める装置および方法について記載している。EIT信号は、患者の胸郭を通る断面における電気インピーダンスの空間分布を反映する。胸郭の断面を横切って分散されたさまざまなEITピクセルに対するインピーダンス信号は、断面全体にわたって積分された大域的電気インピーダンスを求めるために使用される。大域的電気インピーダンスの時間の経過により、呼吸周期は識別され、さまざまな時間の相に分割される。さらに、胸部断面は、いくつかの領域に分割され、呼吸周期の各相において、かつ各領域に対する、それぞれの大域的電気インピーダンスに対する下位領域の電気インピーダンスの比が求められる。このように取得された、個々の領域に対するインピーダンス比の時間曲線により、肺を横切る換気中ガス分布、すなわち、呼吸周期の過程における呼吸に対する肺の個々の領域の寄与を求めることができる。この情報を、たとえばPEEPまたは1回換気量等、さまざまな呼吸パラメータを求めるためにも用いることが示唆される。
【0015】
しかしながら、EITを肺状態の診断に使用可能にすることに関するすべての研究および努力にも関らず、大部分人の介入なしに閉ループ制御という意味でEIT信号を用いて機械呼吸を制御することができる、機械呼吸において適用される圧力を制御または調節するシステムが、今日まで利用可能とはなっていない。
【0016】
本発明の根底をなす目的は、呼吸装置によって設定される所定圧力の完全にまたは少なくとも大部分が自動化された患者に関連する調整または再調整を可能にするシステムを示すことにある。たとえば、呼吸装置によって設定される圧力は、呼気終末陽圧であり得る。さらにまたは別法として、完全にまたは少なくとも大部分が自動化された患者関連ベースで、呼吸装置によって設定される最高気道内圧または別の圧力を調整または再調整することが可能であるべきである。特に、呼吸装置によって設定される圧力の調整または再調整は、呼吸(breathing)周期または呼吸(respiration)周期(以下、両用語は同義で用いられる)において可能な限り少ない介入で可能となるべきであり、場合によっては、医師または看護師の介入の必要がまったくないかまたはほんのわずかであるべきである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的を満たすために、本発明は、呼吸装置によって設定または指定される圧力の自動調整システムであって、少なくとも吸気相の最後および関連する呼気相の最後において人の胸郭を通る少なくとも2次元断面に沿った電気インピーダンス分布を検出する電気インピーダンストモグラフィ(EIT)装置と、吸気相の最後および呼気相の最後の検出された電気インピーダンス分布を複数のEITピクセルに分割し、それぞれのEITピクセルに関連する、吸気相の最後および呼気相の最後の電気インピーダンスの値を求める装置と、(i)個々のEITピクセルに関連する吸気相の最後の電気インピーダンスの値と、それぞれの個々のEITピクセルに関連する呼気相の最後の電気インピーダンスの値との間のずれの、(ii)EITピクセルの全体に基づいて求められる、吸気相の最後の電気インピーダンスの値と呼気相の最後の電気インピーダンスの値との間のずれとの比較に基づく、呼吸装置によって設定される圧力の自動調整装置とを備えるシステムを提案する。
【0018】
最高気道内圧(以下、簡単にPaw_maxとも呼ぶ)および/または呼気終末陽圧(以下、簡単にPEEPとも呼ぶ)等、呼吸装置によって設定される圧力の自動確定の基礎は、電気インピーダンストモグラフィ(以下、簡単にEITとも呼ぶ)によって取得される、患者の胸郭を通る少なくとも2次元断面を横切る電気インピーダンスの分布の結果である。こうしたデータは、非侵襲的に既知のEIT装置を用いて、患者のベッドのかたわらでリアルタイムに取得することができる。EITデータは、一般に、逆投影アルゴリズムにより、胸郭の周囲に円周方向に分散されるように配置された複数の電極における、2つの隣接する電極の各々の間の電位差の印加に反応する、電位の測定値に基づいて求められる。最新のEIT装置では、インピーダンス分布の計算は、数値アルゴリズムを用いて自動的に行われる。そして、インピーダンス分布は、各々が、胸部断面に配置された複数のEITピクセルのうちの1つに関連する、数値的に計算されたEIT値の形態で存在する。EITピクセルは、胸部断面を覆う規則的なまたは不規則な格子を形成する。EITデータが、異なる形態で、たとえば胸部断面を横切るインピーダンスの近似分布として存在する場合、対応するラスタ化を行うことができる。こうしたラスタ化から得られるEITピクセル分布は、1つまたは複数の呼吸圧の自動確定用の入力量として直接利用することができる。
【0019】
胸部断面における特定のゾーンの分布に従って、たとえば特定の器官に関連する領域を他の領域から識別し、または患者が仰臥位にある時に幾分か背側の領域と幾分か腹側の領域との間に単なる粗い識別を行うために、ラスタ化を行うことも考えられる。
【0020】
以下、簡単のために、2次元胸部断面を横切るEITピクセルの格子を想定する。EITデータを評価するために記載される概念はまた、たとえば米国特許第6501198B1号に記載されているように、胸郭のいくつかの断面を平行にスキャンすることができ、それにより3次元EIT画像を生成する、EIT装置にも適用可能である。
【0021】
本発明は、EITピクセル毎に提供されるインピーダンスデータを評価する基本概念に従う。この目的で、個々のEITピクセルに関連するインピーダンス値は、各々、吸気の最後にかつ関連する呼気の最後に互いに比較され、それによって生じるずれが、ピクセルの全体を代表する、吸気の最後のインピーダンスと関連する呼気の最後のインピーダンスとの間のずれともう一度比較される。この比較は、そのように得られた比較結果により、機械呼吸において設定される圧力、特に最高気道内圧Paw_maxおよび/または呼気終末陽圧PEEPに対する影響の妥当な行使を導出することができる、というものである。したがって、このように進むことにより、大部分人の介入なしに人工呼吸器により、所望の呼吸圧の自動調整または追跡が可能になる。
【0022】
たとえば、吸気の最後および関連する呼気の最後の個々のEITピクセルに各々関連するインピーダンス値の間の上述したずれ、および/または、ピクセルの全体を表す、吸気の最後のインピーダンスと関連する呼気の最後のインピーダンスとの上述した差を、吸気の最後および呼気の最後のそれぞれのインピーダンス値の間の差の形態で定義することができる。別法として、吸気の最後および呼気の最後のそれぞれのインピーダンス値の間の比として扱われるずれを定義することも考えられる。差の形成および比の形成もまた、望ましい場合は組み合わせることができる。さらに他のパラメータを、それらが吸気の最後と呼気の最後との間のそれぞれのインピーダンス値の相対的な変化に対する尺度を構成する限り、利用することも考えられる。
【0023】
上述した比較は、「はい/いいえ(yes/no)」テストの形態とることができる。これは、所定の条件が満たされるか否か、またはこの条件が満たされていないか否かに関する比較によって、検査が行われることを意味する。このように、比較は、所望の呼吸圧に対して人工呼吸器が影響を与えるべきであるか否か、すなわち、それぞれの設定された圧力を増大あるいは低減させなければならないか否か、またはこの圧力を不変の形態で維持することができるか否かを判断するための単純な基準を提供する。
【0024】
吸気相のそれぞれの最後および呼気相の関連する最後を、それぞれ、単一呼吸周期で求めることができる。しかしながら、適切な平均および/または積分によっていくつかの呼吸周期からもたらされる基礎として、呼吸周期にわたってインピーダンスパターンを用いることも可能である。
【0025】
実施形態によれば、EITピクセルの全体に基づいて求められる、吸気相の最後の電気インピーダンスの値と呼気相の最後の電気インピーダンスの値とのずれは、EITピクセルのそれぞれに対する吸気相の最後の電気インピーダンスの値と、EITピクセルの前記それぞれに対する呼気相の最後の電気インピーダンスの値とのすべての差の最大値であり得る。そして、比較により、この呼吸周期の間の胸部断面における最大インピーダンス変化に比較して、それぞれのEITピクセルに関連する呼吸周期中のインピーダンス変化が、幾分か小さいか、幾分か大きいか、または幾分か平均であるかに関する情報が提供される。こうしたデータを用いて、呼吸圧に対してどれくらい影響を与えるべきであるかにおいて、経験値およびエキスパートシステムから導出することが、極めて容易にかつ安全に可能である。
【0026】
さらなる実施形態では、さらに、呼吸装置によって設定される圧力の自動調整装置が、
それぞれのEITピクセルに関連する、吸気相の最後の電気インピーダンスの値と呼気相の最後の電気インピーダンスの値との間のずれを、すべてのEITピクセル各々の全体に基づいてそれぞれ求められる、吸気相の最後および/または呼気相の最後の電気インピーダンスの値とも比較するようにすることができる。こうした、吸気相の最後の電気インピーダンスの値との比較により、それぞれのEITピクセルに関連する、呼吸周期の間のインピーダンス変化が、胸部断面における、最高気道内圧が幾分か小さいピクセルに属するか、幾分か大きいピクセルに属するかまたは幾分か平均であるピクセルに属するかという旨の情報が提供される。したがって、呼気相の最後の電気インピーダンスの値との比較により、それぞれのEITピクセルに関連する、呼吸周期の間のインピーダンス変化が、胸部断面における、呼気相の最後に残っている気道内圧が、幾分か小さいピクセルに属するか、幾分か大きいピクセルに属するかまたは幾分か平均であるピクセルに属するかに関する情報が提供される。したがって、吸気相の最後のインピーダンスと呼気相の最後のインピーダンスとの間のインピーダンス変化のために妥当である呼吸圧に対する影響の行使が、最高気道内圧および/または呼気終末陽圧に対して幾分か適用されるべきであるか否かに関して、極めて明確に識別することが可能である。
【0027】
具体的な実施形態では、ピクセル毎の上述した比較を、呼吸装置によって設定される圧力の自動調整用の装置が、比較により、所定条件を満たすEITピクセルを確定し、条件を満たすEITピクセルの割合が所定閾値を超える時に、設定された圧力の補正を実施することができる。これにより、本質的に、生理学的に望ましくない状態の終結を可能にする、胸部断面におけるEITピクセルの総数におけるEITピクセルの割合が求められる。これに関して、個々のEITピクセルに対して異なるサイズを選択し、または個々のEITピクセルを、割合の計算において異なるように重み付けすることが考えられる。この条件は、生理学的発見に基づいて求めることができる。条件が満たされた時、これは、生理学的に望ましくない状態、たとえば、呼気相の間の肺胞の虚脱または吸気相の間の肺胞の過伸展を示す。
【0028】
呼吸装置によって設定される呼気終末陽圧(PEEP)が自動的に調整または再調整されるべきである場合、たとえば、(i)一方は、個々のEITピクセルに関連する吸気相の最後の電気インピーダンスの値と、それぞれの個々のEITピクセルに関連する呼気相の最後の電気インピーダンスの値との間のずれの、(ii)他方は、EITピクセルの全体に基づいて求められる、吸気相の最後の電気インピーダンスの値と呼気相の最後の電気インピーダンスの値との間のずれ、ならびにEITピクセルの全体に基づいて求められる、呼気相の最後の電気インピーダンスの値との比較に基づいて、虚脱した肺胞をかなりの量含む、胸部断面におけるEITピクセルの割合を求めることができる。この割合が、所定の第1閾値を超える場合、PEEPの調整が低すぎており、PEEPを増大させることによって肺内のガス交換を改善することができると想定することができる。
【0029】
たとえば、EITピクセルの全体に基づいて求められる、呼気相の最後の電気インピーダンスの値は、EITピクセルのそれぞれに対する呼気相の最後の電気インピーダンスのすべての値の最小値であり得る。したがって、最低インピーダンスのEITピクセルを基準量とし、すべてのEITピクセルから、最低インピーダンスを有するEITピクセルの部分量が求められる。EITピクセルのこの部分量は、本質的に、虚脱した肺胞を含むEITピクセルに対するすべてのあり得る候補を含む。すべてのEITピクセルに基づいて求められたインピーダンスの変化に関する、それぞれのEITピクセルの呼吸周期にわたるインピーダンスの変化のピクセル毎の比較(この比較は、さらに部分量に対して提供される)により、虚脱した肺胞を含むEITピクセルを比較的正確に推断することができる。
【0030】
記載するタイプの比較の結果として、呼吸装置によって設定される呼気終末陽圧の自動
調整用の装置は、比較が肯定(positive)であるEITピクセルを、虚脱した肺胞を有する肺領域に関連付けることができる。この文脈で「肯定」という用語は、それぞれのEITピクセルが、虚脱した肺胞の特性であるとみなされる所定条件を満たすことを意味する。
【0031】
具体的な実施形態では、EITピクセルの虚脱した肺胞を含む肺領域との関連付けは、以下の2つの条件
EIT_ei_xy−EIT_ee_xy<k1×max(すべてのあり得るxyに対する、EIT_ei_xy−EIT_ee_xy)
および
EIT_ee_xy<k2×min(すべてのあり得るxyに対する、EIT_ee_xy)
式中、
EIT_ei_xy:それぞれのEITピクセルに関連する吸気相の最後の電気インピーダンス値
EIT_ee_xy:それぞれのEITピクセルに関連する呼気相の最後の電気インピーダンス値
0≦k1≦1、特に0.3≦k1≦0.7、特に0.4≦k1≦0.6、特にk1=0.5、
k2≧1、特に1.0≦k2≦1.6、特に1.2≦k2≦1.4、特にk2=1.3
が満たされる場合に実施することができる。
【0032】
呼気終末陽圧の的確な自動調整または追跡は、比較が肯定であるEITピクセルの割合がEITピクセルの総数において所定の第1の閾値を超えた場合に、呼吸装置が、後続する呼吸周期に対する呼気終末陽圧の値を所定量増大させる場合に達成される。第2の閾値を、5%と25%との間とすることができ、特に10%とすることができる。第1の時間に対してPEEPの値を設定するために、最初に、比較的低いPEEP値(たとえば、10cmHO)が使用され、呼吸装置は、呼気中の虚脱した肺胞の割合が第1の閾値未満に低下するまで、PEEPを段階的に(たとえば、段階毎に1cmHO)増大させる。その後、呼気中の虚脱した肺胞の割合が第1の閾値に達するかまたはそれを超えることが再度検出されるまで、PEEPは安定して維持される。これに対して、PEEPは、値が再度第1の閾値未満に低下するまで、再度段階的に高くなるように選択される。患者の呼吸の間、所定の間隔で比較を繰り返すことができ、EITピクセルの総数における比較が肯定であるEITピクセルの割合が第1の閾値未満である限り、後続する呼吸周期に対する呼気終末陽圧を増大させることができる。低いPEEPレベルから開始するこのPEEPの自動調整または再調整により、概してPEEPに対して上限も求められ、呼吸の間に気圧障害がもたらされないように関係する。これに関して、たとえばPEEPが常に25cmHO未満であり続けるように、安全であると思われるPEEPに対する上限を手動で設定することが十分であり得る。
【0033】
さらに、第1の閾値の値が、PEEPの値の増大によって高くなるように選択されるようにすることができる。これには、PEEPのレベルの増大において、EITピクセルの割合がますます高くなることによって肺胞が虚脱した場合にのみ、さらなる増大が発生するという効果がある。したがって、虚脱した肺胞を含むEITピクセルの割合が、PEEPの増大により低減しないかまたはわずかにしか低減しない場合、PEEPの値が永久に増大しないことを確実にすることができる。たとえば、PEEPの各増大により、第1の閾値を、0.3%と3%との間の量、特に1%増大させることができる。
【0034】
呼気終末陽圧に加えてまたはその代りとして、呼吸装置によって設定される最高気道内圧Paw_maxが自動的に調整または再調整される場合、たとえば、(i)一方は、個
々のEITピクセルに関連する吸気相の最後の電気インピーダンスの値と、それぞれの個々のEITピクセルに関連する呼気相の最後の電気インピーダンスの値との間のずれの、(ii)他方は、EITピクセルの全体に基づいて求められる、吸気相の最後の電気インピーダンスの値と、呼気相の最後の電気インピーダンスの値との間のずれ、ならびにEITピクセルの全体に基づいて求められる吸気相の最後の電気インピーダンスの値との比較に基づいて、かなりの量の過伸展した肺胞を有する、胸部断面におけるEITピクセルの割合を求めることができる。この割合が、PEEPを設定するための第1の割合閾値とは無関係の所定の第2の割合閾値を超える場合、最高気道内圧の調整が高すぎ、最高気道内圧を低減させることにより、肺組織に対する引張りを低減させるかまたは肺組織を保護することができると想定することができる。最高気道内圧の低減(PEEPは変化させず)を、最大換気圧の低減を介して達成することができる。後続する呼吸周期においてPEEPに対してより低い値を選択することが妥当である場合、最高気道内圧を低減させる際にPEEPの低減を考慮することができ、それにより、最大換気圧に対する影響が少なくとも部分的に補償される。
【0035】
たとえば、EITピクセルの全体に基づいて求められる吸気相の最後の電気インピーダンスの値は、EITピクセルのそれぞれに対する吸気相の最後の電気インピーダンスのすべての値の最大値であり得る。これは、インピーダンスが最高である胸部断面におけるEITピクセルが、すべてのEITピクセルから、吸気相の最後に最高インピーダンスを有するEITピクセルのさらなる部分量を求めるための基準量として使用されることを意味する。過伸展した肺胞を含むあり得るEITピクセルは、このさらなる部分量に含まれるべきであり、それにより、肺胞の過伸展が実際に発生したピクセルの探索が、この部分量の範囲内のみで行われることになる。吸気の最後と呼気の最後との間のインピーダンスの変化の提案されるピクセル毎の比較が、この部分量のすべてのEITピクセルに対して行われる場合、過伸展した肺胞を有するEITピクセルを比較的正確に特定することができる。
【0036】
本明細書において上述したものと同様に、呼吸装置によって設定される最高気道内圧の自動調整用の装置は、比較が肯定であるEITピクセルを、過伸展した肺胞を有する肺領域に関連付けることができる。「比較の肯定」は、この場合もまた、それぞれのEITピクセルが、肺胞の過伸展の特性であるとみなされる所定条件を満たすことを意味する。
【0037】
実施形態では、EITピクセルの過伸展した肺胞を有する肺領域との関連付けは、以下の2つの条件
EIT_ei_xy−EIT_ee_xy<k3×max(すべてのあり得るxyに対する、EIT_ei_xy−EIT_ee_xy)、
および
EIT_ei_xy>k4×max(すべてのあり得るxyに対する、EIT_ei_xy)
式中、
EIT_ei_xy:それぞれのEITピクセルに関連する吸気相の最後の電気インピーダンス値
EIT_ee_xy:それぞれのEITピクセルに関連する呼気相の最後の電気インピーダンス値
0≦k3≦1、特に0.3≦k3≦0.7、特に0.4≦k3≦0.6、特にk3=0.5、
0≦k4≦1、特に0.5≦k4≦0.9、特に0.6≦k4≦0.8、特にk4=0.7
が満たされる場合に行うことができる。
【0038】
的確な自動調整または再調整はまた、呼吸装置によって設定される最高気道内圧の自動調整装置が、EITピクセルの総数における比較が肯定であるEITピクセルの割合が所定の第2の閾値を超える場合に、後続する呼吸周期に対する最高気道内圧の値を所定量低減させる場合に、最高気道内圧に対しても達成することができる。第2の閾値を、5%と25%との間の範囲とすることができ、特に、10%とすることができる。最高気道内圧の値を最初に設定するために、最高気道内圧に対して最初は比較的高い値(たとえば40cmHO)が使用され、呼吸装置は、吸気中の過伸展した肺胞の割合が第2の閾値未満に低下するまで、最高気道内圧を段階的に(たとえば、段階毎に1cmHO)低下させる。その後、吸気中の伸展した肺胞の割合が再度第2の閾値に達するかまたはそれを超えることが再度検出されるまで、最高気道内圧は安定して維持される。これに反応して、最高気道内圧は、その値が再度第2の閾値未満に低下するまで、段階的に再度低減する。患者の呼吸の間、所定間隔で比較を繰り返すことができ、EITピクセルの総数における比較が肯定であるEITピクセルの割合が第2の閾値未満になるまで、後続する呼吸周期に対する最高気道内圧を低減させることができる。最高気道内圧の初期値を手動で設定することができる。概して、最適に設定される値を超えているが、わずかな数の呼吸周期にわたる呼吸が患者の肺組織に対して深刻な損傷をもたらすことがないように依然として十分低い値が選択される。
【0039】
初期最高気道内圧に対する通常の値は、たとえば40cmHOである。
【0040】
さらに、最高気道内圧を設定する際においても、第2の閾値の値が、最高気道内圧の値の低減によって高くなるように選択されるようにすることができる。この措置により、例外的な場合に、過伸展した肺胞を含むEITピクセルの割合が、最高気道内圧の低減によって低減しないかまたはわずかにしか低減しない場合に、呼吸装置が、最高気道内圧をゼロまで低減させないことが確実になる。むしろ、PEEPを適度に上回る最高気道内圧が常に得られるように、最高気道内圧の低減による第2の閾値の増大が選択される。たとえば、最大呼吸圧の各低減により、第2の閾値を0.3%と3%との間の量、特に1%増大させることができる。
【0041】
さらなる実施形態では、電気インピーダンストモグラフィ装置は、所定格子に配置されたEITピクセルに関連する電気インピーダンス値の形態で電気インピーダンス分布を検出することができる。EIT装置がインピーダンス値の適切にラスタ化された画像をすでにもたらす場合、検出された電気インピーダンス分布を複数のEITピクセルに分割する装置は、電気インピーダンスのそれぞれの値をそれぞれの格子要素に正確に関連付けることができる。別法として、EIT基本ピクセルの形態でEITによって提供されるラスタ化はまた、計算により、胸部断面の画像を示すEITピクセルの形態で別の所望のラスタ化に変換することができ、対応するインピーダンス値をEITピクセルの各々に関連付けることができる。
【0042】
EIT装置によって検出されるEIT信号には、呼吸(breathing)周期または呼吸(respiration)周期それぞれとは無関係であるより高周波数の信号成分が重畳することが多い。一例は心臓因子であり、それは、心血管系の活動もまた胸部断面のいくつかの領域においてインピーダンスに影響を及ぼすためである。心臓因子が相対的に著しく高いクロック周波数を受ける場合、こうした干渉効果をフィルタ装置によってフィルタリングで除去することができる。
【0043】
フィルタ装置は、たとえば、EIT信号の信号経路において接続されている、適切なカットオフ周波数を有するローパスフィルタまたはバンドパスフィルタである。心臓の影響をフィルタリングで除去するために対応するローパス機能を有する呼吸装置は、たとえば独国特許出願公告第10301202B3号から既知である。
【0044】
本発明はまた、上述した特徴のうちの少なくとも1つを有する呼吸装置によって設定される圧力の自動調整システムを備える、機械呼吸用の装置にも関する。呼吸装置は、たとえば集中治療室において、患者の永久的な呼吸のために設計することができ、特に、医師または看護師による介入はわずかに散発的であって、大部分自動的に上述した圧力の調整を実施することができる。
【0045】
さらなる態様によれば、本発明は、呼吸装置によって設定される圧力、特に呼気終末陽圧(PEEP)および最高気道内圧(Paw_max)の自動調整方法であって、電気インピーダンストモグラフィ(EIT)装置を用いて、電気インピーダンス分布が、少なくとも吸気相の最後および関連する呼気相の最後において人の胸郭を通る少なくとも2次元断面に沿って検出され、吸気相の最後および呼気相の最後における検出された電気インピーダンス分布が、複数のEITピクセルに分割され、吸気相の最後および呼気相の最後の電気インピーダンスのそれぞれの値が、EITピクセルの各々に関連付けられ、呼吸装置によって設定される圧力が、(i)個々のEITピクセルに関連する吸気相の最後の電気インピーダンスの値と、それぞれの個々のEITピクセルに関連する吸気相の最後の電気インピーダンスの値との間のずれの、(ii)EITピクセルの全体に基づいて求められる、吸気相の最後の電気インピーダンスの値と呼気相の最後の電気インピーダンスの値との間のずれとの比較に基づいて求められる、方法に関する。特に上述したさらなる展開特徴のうちの1つまたはいくつかに従って、こうした方法をさらに展開させることができる。
【0046】
本発明について、図面に示す実施形態を用いて以下詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】胸部断面に沿って電気インピーダンス信号を検出するEIT装置を備えた呼吸装置の本質的な要素の非常に簡略化した概略図を示す。
図2a】健康な肺の場合の吸気相の最後の図1の胸部断面を横切るEITピクセルの規則的な格子の形態でラスタ化された電気インピーダンス値の概略図を示す。
図2b】健康な肺の場合の関連する呼気相の最後の図1の胸部断面を横切るEITピクセルの規則的な格子の形態でラスタ化された電気インピーダンス値の概略図を示す。
図2c図2aおよび図2bのラスタ化されたEITピクセルの概略図を示し、吸気相の最後と呼気相の最後との間のインピーダンス差が、胸部断面におけるすべてのEITピクセルの間の吸気相の最後と呼気相の最後との最大インピーダンス差より少なくとも0.5倍であるピクセルは、暗色で陰影が付けられて示されており、対応するインピーダンス差が最大インピーダンス差の0.5倍未満であるすべてのEITピクセルは、明色で陰影が付けられて示されている。
図2d図2aおよび図2bのラスタ化されたEITピクセルの概略図を示し、吸気相の最後のインピーダンス値が、胸部断面におけるすべてのEITピクセルの間の吸気相の最後の最大インピーダンスの0.7倍を超えるEITピクセルは、暗色で陰影が付けられて示されており、インピーダンス値が最大インピーダンスの少なくとも0.7倍であるピクセルは、明色で陰影が付けられている。
図2e図2aおよび図2bのラスタ化されたEITピクセルの概略図を示し、呼気相の最後のインピーダンス値が、胸部断面におけるすべてのEITピクセルの間の呼気相の最後の最小インピーダンスの少なくとも1.3倍に等しいEITピクセルは、暗色で陰影が付けられて示されており、インピーダンス値が最小インピーダンスの1.3倍未満であるピクセルは、明色で陰影が付けられている。
図3a図2a〜図2eに対応するが、呼気相の間に虚脱した肺胞がある肺に対する図を示す。
図3b図2a〜図2eに対応するが、呼気相の間に虚脱した肺胞がある肺に対する図を示す。
図3c図2a〜図2eに対応するが、呼気相の間に虚脱した肺胞がある肺に対する図を示す。
図3d図2a〜図2eに対応するが、呼気相の間に虚脱した肺胞がある肺に対する図を示す。
図3e図2a〜図2eに対応するが、呼気相の間に虚脱した肺胞がある肺に対する図を示す。
図4a図2a〜図2eに対応するが、吸気相の間に過伸展した肺胞がある肺に対する図を示す。
図4b図2a〜図2eに対応するが、吸気相の間に過伸展した肺胞がある肺に対する図を示す。
図4c図2a〜図2eに対応するが、吸気相の間に過伸展した肺胞がある肺に対する図を示す。
図4d図2a〜図2eに対応するが、吸気相の間に過伸展した肺胞がある肺に対する図を示す。
図4e図2a〜図2eに対応するが、吸気相の間に過伸展した肺胞がある肺に対する図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1は、呼吸装置100の本質的な要素を、非常に概略的な表現でかつブロック図の形態で示し、呼吸装置100は、呼吸ガス流および呼吸圧をそれぞれ生成しかつ呼吸を制御する人工呼吸器10とともに、電気インピーダンス(EIT)装置20を備えている。EIT装置は、概略的に14で描かれている患者の組織における電気インピーダンスの値を、図1では文字Eで示しかつ本例では背側から腹側に延在している人工呼吸患者14の胸郭を通る断面に沿って検出する役割を果たす。検出されたデータから、EIT装置20は、胸部断面Eを横切る電気インピーダンスの経路を反映する画像を計算する。
【0049】
図1では、呼吸装置100は、呼吸ホース12を用いて人工呼吸患者の気管(windpipe)(気管(trachea))に挿管されている状態で示されている。患者14は、一般に集中
治療室において、病院ベッド16に仰臥位で横たわっている。呼吸装置100のチューブは、呼吸周期の吸気相の間に気道に呼吸ガスを供給するために、通常患者の口の開口(図示せず)を介して、気道内に一定距離押し込まれる。吸気相に続く呼気相の間、呼気は、同様にチューブ14を介して排出され、チューブは人工呼吸器10に接続されたその端部において第1端部および第2端部に分岐している。チューブの第1端部は、吸気圧PInspの下で呼吸ガスを加えるために、気道入口弁を介して人工呼吸器10の気道入口コネクタに接続されている。チューブの第2端部は、呼気圧PExpを加えるために、気道出口弁を介して人工呼吸器10の気道出口コネクタに接続されている。気道入口弁および気道出口弁は、周期的に繰り返す呼吸周期の間、吸気圧PInspまたは呼気圧PExpを呼吸ホース12にかけるために、交互に開放される。
【0050】
吸気圧PInspおよび呼気圧PExpはともに、周期的に繰り返す呼吸周期を発生させるために、所定の時間パターンに従って人工呼吸器10によって生成される。各呼吸周期において、吸気相の間に吸いこまれる呼吸ガスは、図1において矢印18aによって示すように、患者14の肺に向かって流れる。後続する呼気相の間、吐き出される呼吸ガスは、矢印18bによって示すように、患者の肺から人工呼吸器10まで戻るように流れる。吸気相の間、気道入口弁は、通常開放されたままであり、一般に呼気圧PExpより大きい吸気圧PInspが、気道入口にかけられる。呼気相の間、気道入口弁18は閉鎖され、気道出口弁が開放される。この状況では、呼気圧PExpが、気道入口にかけられる。
【0051】
本発明に関連して、あらゆる形態の既知の呼吸パターン、たとえば圧力制御呼吸モード、容量制御呼吸モード、または圧力制御態様および容量制御態様を組み合わせる呼吸モードもまた使用することができる。吸気圧PInspの時間的経過および場合によっては呼気圧PExpの時間的経過も人工呼吸器10によって確定される単なる機械制御呼吸モードに加えて、患者の自発呼吸努力が機械呼吸を補助することができるか、または機械呼吸が患者の自発呼吸努力を補助するのに役立つ、呼吸モードも考えられる。こうしたタイプの呼吸では、吸気圧PInspおよび呼気圧PExpそれぞれの時間的経過、ならびに多くの場合入口弁18および出口弁24それぞれの位置は、人工呼吸器10のみによって確定されるのではなく、患者の自発呼吸努力によっても影響を受ける。
【0052】
呼吸ガスは、周囲空気を含む可能性があるが、通常、周囲空気の酸素含有量より高いFiO2と呼ばれることが多い所定の割合の純酸素を含む。さらに、呼吸ガスはまた、一般に加湿されている。
【0053】
気道入口における呼吸ガスの流れは、図示しない気道入口流量センサを用いて求められる。気道入口流量センサは、入口容量と入口容量と連通している出口容量との圧力差dPを検出することに基づき、気道入口における呼吸ガス質量流量を求めることができる。出口容量の圧力信号から気道入口圧Pawの値を同時に導出することは極めて容易に可能である。気道入口圧Pawは、吸気中に肺にかけられる圧力である。この圧力は、肺内で実際に主流となっている呼吸圧より幾分か高い。機械呼吸中、吸気相の間の各呼吸周期における呼吸圧は、吸気相の最後に、恐らくは一定期間維持される高い最終値に達するまで、低い開始値から勾配状に増大する。呼吸周期のこの相において、肺内では最大気道圧Paw_maxが発生する。最大気道圧Paw_maxは、概して、完全な圧力平衡が生成される場合、吸気相の最後に気道入口において測定することができる。そして、吸気相の最後に測定された気道入口圧Pawは、極めて適切に近似して最高気道内圧を反映する。吸気相に呼気相が続くため、こうした完全な圧力平衡は、多くの場合、吸気相の最後におよそ1秒間〜5秒間、短時間の閉塞操作が人為的に行われない限り、すなわち、気道入口弁および気道出口弁が同時に閉鎖されたままでない限り、実際の用途では達しない。しかしながら、こうした操作は、呼吸周期を中断し、したがって、呼吸中に規則的に行われない。
【0054】
呼気相の間、気道入口に換気圧はかけられず、むしろ、肺内に存在する空気が、肺組織の弛緩運動の結果として肺から押し出される。しかしながら、呼気相の間もまた、呼吸ホース12およびしたがって気道入口には、陽圧がかけられることが多い。この圧力は、呼気終末陽圧、または簡単にPEEPと呼ばれ、肺のいくつかの部分における肺胞が、呼気相の間、脆弱化した肺組織に作用する胸郭からの圧力下で虚脱するのを防止するものである。PEEPによる呼吸の間、呼吸ガス流を最終的に駆動する換気圧は、呼吸圧とPEEPとの差として現れる。
【0055】
肺の肺胞内で主流となっている圧力は、気道入口圧Pawと、それぞれ肺に入りかつ肺から出る呼吸ガスの流れとによって決まる。気道入口と肺胞との間の圧力が平衡している時、肺胞内圧Palyは気道入口圧に等しい。こうした圧力平衡の結果、呼吸ガスの流れは静止することになる。たとえば、(長さがおよそ1秒間〜5秒間である)短時間の閉塞操作により、圧力平衡をもたらすことができる。気道内のガス流が停止すると、肺胞内圧Palvは、気道入口圧Pawを求めることによって求めることができる。連続した呼吸周期では、実際には、呼気相の最後に気道入口において圧力Pawの最小値が測定される。しかしながら、圧力は、通常、設定されたPEEPをわずかに上回る。
【0056】
生理学的呼吸の場合とともに機械呼吸の場合において、呼吸ガスの流れは、肺胞内圧Palvと気道入口圧Pawとの圧力差によって求められる。
【0057】
単なる生理学的呼吸の場合、肺胞内圧Palvと気道入口圧Pawとの間の負の圧力差、すなわち真空が、胸郭の拡張と、胸郭と肺との間に形成された胸膜間隙内の圧力の関連する低下とにより、吸入のために生成される。呼気は、胸部の弛緩と肺組織の弾性回復とによって受動的に発生する。この理由で、生理学的呼吸の場合の胸膜間隙内の圧力は、常に肺胞内圧より低い。
【0058】
機械呼吸では、呼吸ガスは、陽圧、すなわち正の換気圧によって肺内に圧送される。この理由で、機械呼吸の場合の気道入口圧Paw=PInspは、吸気相の間、肺胞内圧Palvより大きく、肺胞内圧は、胸膜間隙内の圧力Pplより大きい。呼気の間、気道入口に、肺胞内圧Palvより低い気道内圧PExpがかけられ、それにより、呼吸ガスは肺胞から流れ出る。非常に小さい気道内圧PExpの場合、呼気の最後において、肺内に依然として非常にわずかなガスのみが存在する場合、胸膜間隙内の圧力Pplは、肺の肺胞の一部が虚脱するような程度まで肺胞内圧Palvを上回ることになる可能性がある。
【0059】
肺胞の虚脱は、同様に呼気相において気道入口に追加の陽圧が同様に掛けられる場合に、防止することができる。そして、正の気道内圧が、永久的に、すなわち呼気相の間および吸気相の間の両方において、気道入口にかけられる。正の気道内圧は、呼気終末陽圧またはPEEPと呼ばれる。
【0060】
図1において、数字20は、さらなる電気インピーダンストモグラフィ(EIT)装置を示す。EIT装置20は、ケーブル接続22によって、患者の胸部の高さで胸郭の周囲に縛られた胸部ベルト30に接続されている。胸部ベルト30には、その長さに沿って、規則的な間隔で電極(図示せず)が設けられている。電極は、患者14の胸郭の周囲の皮膚に直接当接する。したがって、EIT装置20は、ケーブル接続22および胸部ベルト30上に配置された電極を介して、患者14の体内に電流を導通させることができる。そして、胸部ベルトの電極は、患者14の体内を流れる電流を検出するセンサとしての役割を果たすことができる。EIT装置20は、胸部ベルト30の電極を個々に制御することができる。したがって、EIT装置20は、胸部ベルトの2つのそれぞれの任意の電極(一般には、計算の理由で隣接している電極である)の間に電圧を印加するように適合されている。こうした電圧の印加に応じて、患者の胸郭内に電流が流れる。また、胸部ベルト30の残りの電極を介して、EIT装置20は、すべて胸郭の周囲で、電圧の印加に応じて胸部ベルトの2つのそれぞれの電極の間で胸郭内を流れるこれらの電流を検出することができ、その電流から、空間的に分解された方法で、電気インピーダンスの対応する値を導出することができる。したがって、胸部ベルト14によって画定された胸部断面Eにおける電気インピーダンスの分布を、リアルタイムにかつ非侵襲的に検出することができる。
【0061】
EITを用いて提供されるインピーダンス信号により、または胸部断面における電気インピーダンスの空間分布により、肺内に存在する呼吸ガスを推断することができる。胸部断面における電気インピーダンスの分布は、肺内に存在する呼吸ガスの直接的な尺度である。ガス含有量の高い領域は、EIT画像において高インピーダンスの値として現れ、ガス含有量の低い領域は、低インピーダンスの領域として現れる。EITによって送出される電気インピーダンス信号の空間的変化および/または時間変化により、基本的に、呼気中の外部からの圧力下での肺胞の虚脱とともに、吸気中の気道入口からの圧力下での肺胞の過伸展を認識することが可能である。したがって、EITによって提供されるインピーダンス画像を、機械呼吸において事前設定される特定のガス圧、特にPEEPおよび/または最高気道内圧を調整するための基礎として使用することができる。これを、EIT測定を行い、このようにして得られた胸部断面におけるインピーダンスパターンを観察し、その後、前記圧力をそれに従って調整する医師または看護師によって、手動で実施するこ
とができる。
【0062】
本発明は、大部分自動化された調整、すなわち、PEEPまたは最高気道内圧Paw_max等、機械呼吸に関連する圧力の、原則に従って人の介入なしに可能である調整に対する基礎として、EITによって取得される電気インピーダンスの空間的に分解されかつ時間分解された値を使用することを提案する。これは、EITによって取得されるインピーダンス分布の特定の種類の評価を用いて達成される。この評価は、胸部断面Eにおける個々のEITピクセルに関連する電気インピーダンスの値の、胸部断面におけるすべてのEITピクセルの全体の特徴的特性を反映する電気インピーダンスの値との比較に基づく。この比較は、胸部断面のすべてのEITピクセルに対して、EITピクセル毎に評価される。1つまたはいくつかの所定条件を満たすEITピクセルの関連する発生により、たとえば、PEEPに対する設定値が肺胞の虚脱を防止するために十分高いか否か、および/または最高気道内圧Paw_maxに対する設定値が、肺胞の過伸展を防止するために十分低いか否かに関して、基準を導出することができる。この概念の背景にある原理について、以下、図2a〜図2e、図3a〜図3eおよび図4a〜図4e用いて説明するものとする。
【0063】
図2a〜図2e、図3a〜図3eおよび図4a〜図4eは、胸部断面Eを、各々円形の形態で簡略化して示す。胸部断面Eは、全体で胸郭内の断面E全体を充填する個々のEITピクセルの格子状パターンに分割される。図2aおよび図2bにおいて、EITピクセルのそれぞれが、例示のためにxyで参照される。このEITピクセルは、行x(例では、上方から数えて行8)にかつ列y(例では、左から数えて28列)に位置し、それにより、すべてのEITピクセルを、一対の数値x(=行)およびy(=列)によって明確に識別することができる。こうしたEITピクセルxyの配置を、EIT装置20によって直接提供することができることが留意されるべきである。しかしながら、EIT装置によって送出される任意のインピーダンス分布から、図2a〜図2eに示すように、EITピクセルxyの配置を計算することが同様に考えられる。さらに、図2a〜図2eに示すようなEITピクセルの規則的なパターンは、必ずしも必要ではない。個々のEITピクセルxyはまた、完全に不規則に配置することも可能であり、かつ/または完全に異なるサイズおよび/または完全に異なる形状を有することができる。しかしながら、EITピクセルのいずれとも関連しない患者の肺によって取得される胸部断面Eの領域は大部分あるべきではない。
【0064】
図2aおよび図2bは、健康な肺40の場合の各EITピクセルxyに対する、吸気相の最後のインピーダンス値EIT_ei_xy(図2a)と関連する呼気相の最後のインピーダンス値EIT_ee_xy(図2b)とを概略的に示す。2つの図において、電気インピーダンスの値は、各々グレー値によって符号化されており、暗い位置は、それぞれインピーダンスEIT_ei_xyおよびEIT_ee_xyが高いEITピクセルxyに対応し、明るい位置は、それぞれインピーダンスEIT_ei_xyおよびEIT_ee_xyが低いEITピクセルxyに対応している。高電気インピーダンスの値は、呼吸ガスの含有量が高い領域を示し、低インピーダンスの値は、呼吸ガスの含有量が低い領域を示す。図2aおよび図2bは、肺の右肺葉40aおよび肺の左肺葉40bを含む、患者14の肺40を明確に示す。
【0065】
肺40以外の他の気管によるEIT信号またはインピーダンス値の成分は、図2aおよび図2b(すべての続く図2c〜図2e、図3a〜図3e、図4a〜図4eと同様)では除かれている。たとえば、たとえば独国特許出願公告第10301202B1号に記載されているように、心臓の影響によるEIT信号成分は、対応するローパスフィルタまたはバンドパスフィルタを適用することにより、呼吸周波数に比較して明確に高い心臓の周波数によって、最初に取得されたEIT信号からフィルタリングによって除去することがで
きる。
【0066】
図2aにおいて、すなわち吸気相の最後において、肺40に関連する個々のEITピクセルxyは、概して、図2bにおける、すなわち呼気相の最後におけるそれぞれ関連するEITピクセルxyより暗い色で陰影が付けられている。これは、少なくとも健康な肺において、吸気相の最後に、肺のいかなる領域も、呼気相の最後より全体でより高い割合の呼吸ガスを含むべきであるという事実に従う。
【0067】
これは、図2cから比較的明確に見つけることができる。この図は、図2aおよび図2bのラスタ化されたEITピクセルのさらなる概略図を示す。しかしながら、図2cは、胸部断面Eにおける各EITピクセルxyに対して、吸気相の最後に検出されたインピーダンスEIT_ei_xyと呼気相の最後に検出されたインピーダンスEIT_ee_xyとのインピーダンス差を示す。図2cにおけるインピーダンス差の表現は、所定条件を満たすすべてのEITピクセルxyに暗色で陰影が付けられており、この条件を満たさない他のすべてのEITには明色で陰影が付けられているという意味で、「2値化されている」。図2cの場合、所定条件は、上述したインピーダンス差が、胸部断面EのすべてのEITピクセルxyの間で発生する吸気相の最後のインピーダンスEIT_ei_xyと呼気相の最後のインピーダンスEIT_ee_xyとの間の最大インピーダンス差EIT_ei_xy−EIT_ee_xyの少なくとも0.5倍であるすべてのEITピクセルxyが、暗く陰影が付けられている。これは、以下のような式に表される。
以下が当てはまる場合、EITピクセルxyは暗色で陰影が付けられる。
EIT_ei_xy−EIT_ee_xy≧0.5×max(すべてのあり得るxyに対する、EIT_ei_xy−EIT_ee_xy)
式中、
EIT_ei_xy:それぞれのEITピクセルに関連する吸気相の最後の電気インピーダンス値
EIT_ee_xy:それぞれのEITピクセルに関連する呼気相の最後の電気インピーダンス値。
【0068】
それとは対照的に、対応するインピーダンス差が最大インピーダンス値の0.5倍未満であるすべての他のEITピクセルは、図2cにおいて明色で陰影が付けられている。
【0069】
肺40の実質的にすべての領域において、インピーダンス差は、この例で定義される閾値より大きいことを容易に理解することができる。閾値が、吸気の最後と呼気の最後と間に胸部断面Eにおいて発生する最大インピーダンス差の半分であると判断されるという事実により、この発見から、すべてのEITピクセルxyに対して、インピーダンス差が最大インピーダンス差に比較してわずかに小さい値の周囲で分散されているということになる。これは、肺のすべての領域に関して、呼気の最後の肺胞の残っている残存容積に比較して、吸気の最後の呼吸ガスによる肺胞の充填に関して、明確な差が見えることを意味する。これは、肺のすべての領域が正常に作動し、虚脱した肺胞も過伸展した肺胞も存在しないという旨の強い示唆である。
【0070】
図2dは、図2cに極めて類似するラスタ化されたEITピクセルxyを含む胸部断面Eの図を示す。図2cは、図2aにすでに示す吸気の最後のインピーダンス分布の2値化されたものを最終的に示す。図2cにおいて暗く陰影が付けられているのは、関連する吸気相の最後のインピーダンス値EIT_xy_eiが、吸気相の最後に胸部断面EにおけるすべてのEITピクセルxyの間で発生する最大インピーダンスEIT_ei_maxの0.7倍を超える、図2aのEITピクセルxyである。明色で陰影が付けられているのは、関連する吸気相EIT_xy_eiの最後のインピーダンス値が、吸気相の最後に胸部断面EにおけるすべてのEITピクセルxyの間で発生する最大インピーダンスEI
T_ei_maxの最大で0.7倍である、すべての残りのEITピクセルxyである。これは、以下のような式で表される。
以下が当てはまる場合、図2dにおいてEITピクセルxyは暗色で陰影が付けられる。EIT_ei_xy>0.7×EIT_ei_max、
以下が当てはまる場合、図2dにおいてEITピクセルxyは明色で陰影が付けられる。EIT_ei_xy≦0.7×EIT_ei_max、
式中、EIT_ei_max=max(すべてのあり得るxyに対する、EIT_ei_xy)。
【0071】
図2dにおいて、吸気の最後に高い呼吸ガス圧が主流となっている傾向がある肺の2つの肺葉40a、40bの夫々の中心領域44a、44bとともに、吸気の最後に低い呼吸ガス圧が主流となっている傾向があるそれぞれの周辺領域46a、46bを認識することは極めて容易に可能である。しかしながら、図2cに示すように、吸気の最後と呼気の最後とのインピーダンス差は、肺40のすべての領域において閾値を超え、それは、吸気の最後に高い呼吸ガス圧が主流となっているかまたは単に適度な呼吸ガス圧が主流となっているかに関らず、肺のすべての領域における肺胞が、ガスの交換に通常関係することを示す。
【0072】
図2eは、図2dに極めて類似するラスタ化されたEITピクセルxyを含む胸部断面Eの別の図を示す。図2eは、図2bにおいてすでに示す呼気の最後のインピーダンス分布の2値化されたものを最終的に示す。図2eにおいて暗く陰影が付けられているのは、関連する呼気相の最後のインピーダンス値EIT_ee_xyが、呼気相の最後に胸部断面EにおけるすべてのEITピクセルxyの間で発生する、最小インピーダンスEIT_ei_minの少なくとも1.3倍である、図2bのEITピクセルxyである。明色で陰影が付けられているのは、関連する呼気相の最後のインピーダンス値EIT_ee_xyが、呼気相の最後に胸部断面EにおけるすべのEITピクセルxyの間で発生する最小インピーダンスEIT_ei_minの1.3倍未満であるすべての残りのEITピクセルxyである。これは、以下のような式で表される。
以下が当てはまる場合、図2edにおいてEITピクセルxyは暗色で陰影が付けられる。
EIT_ee_xy≧1.3×EIT_ee_min、
以下が当てはまる場合、図2eにおいてEITピクセルxyは明色で陰影が付けられる。EIT_ei_xy<1.3×EIT_ee_min、
式中、EIT_ee_min=min(すべてのあり得るxyに対する、EIT_ee_xy)。
【0073】
図2eにおいて、呼気の最後に、2つの肺葉40a、40bの中心領域48a、48bに周辺領域50a、50bより高い呼吸ガス圧が残っている傾向があることを見ることができる。図2cは、それにも関らず、肺40のすべての領域において、吸気の最後のインピーダンスと呼気の最後のインピーダンスとの間の差が、選択された閾値より明確に高いことを示し、それは、肺のすべての領域における肺胞が、通常、ガス交換に関係していることを示す。
【0074】
図2a〜図2eに関して健康な肺に対して示す条件は、肺胞が、低すぎるPEEPがかけられることにより吸気中に部分的に虚脱した肺の場合(図3a〜図3eを参照)、または、肺胞が、過剰に高い呼吸ガス圧がかけられることにより吸気中に過伸展した肺の場合(図4a〜図4eを参照)は、異なる。図3a〜図3eおよび図4a〜図4eに示す例は、それぞれ、図2a〜図2eの図に対応しているが、それぞれ、呼気中に部分的に虚脱した肺胞を含む肺と吸気中に部分的に過伸展した肺胞を含む肺とに対する。すべての図において、図2a〜図2eと同じ参照数字が使用されており、繰返しを避けるために、図2
図2eに関連する、示されている要素のそれぞれの記述を参照されたい。
【0075】
健康な肺の場合と同様に、部分的に虚脱した肺胞を含む肺の場合(図3aおよび図3b)および部分的に過伸展した肺胞を含む肺の場合(図4aおよび図4b)もまた、吸気の最後のインピーダンス値は、概して、呼気の最後より高いことを理解することができる。
【0076】
しかしながら、図3aおよび図3bにおいて、肺の両肺葉40a、40bの下方中心領域52a、52bにおいて、呼気の最後および吸気の最後両方におけるインピーダンス値が、図2aおよび図2bに示す健康な肺の場合よりわずかに低いことがすでに示されている。図3cに示すインピーダンス差EIT_ei_xy−EIT_ee_xyの画像を見ると、肺の両肺葉の下方中心領域52a、52bにおいて、インピーダンス差が、選択された閾値(選択された例では、最大インピーダンス差の0.5倍である)未満であることが即座に明らかである。これは、この領域における肺胞が、呼気相の最後より吸気相の最後の方が呼吸ガスによってわずかにより多く充填されているという旨の暗示である。
【0077】
図4aおよび図4bにおいて、両肺葉40a、40bの中心領域62a、62bでは、呼気の最後および吸気の最後の両方のインピーダンス値が、図2aおよび図2bに示す健康な肺よりわずかに高いことを推測することができる。図4cに示すインピーダンス差EIT_ei_xy−EIT_ee_xyの画像を見ると、ここでもまた、肺の両肺葉40a、40bの中心領域62a、62bにおけるインピーダンス差は、選択された閾値(選択された例では、最大インピーダンス差の0.5倍である)未満であることが即座に明らかである。これは、この領域における肺胞が、吸気相の最後および呼気相の最後の両方において呼吸ガスが同様に充填されるという旨の暗示である。
【0078】
したがって、吸気相の最後のインピーダンスEIT_ei_xyと呼気相の最後のインピーダンスEIT_ee_xyとの差の評価を用いて、各EITピクセルxyに対し、このEITピクセルxyに関連する肺胞が、実質的に健康であるかまたは病理学的変化があるかを識別することができる。さらにはこの識別を、肺が、まったく同一の呼吸周期に対して、過伸展した肺胞を含む領域および虚脱した肺胞を含む領域両方を有する場合に行うことができ、それは、両方の場合(図3cおよび図4cを参照)において、識別に同じ閾値を用いることができるためである。しかしながら、病的領域52a、52b、62a、62bにおける肺胞が、呼気相の間に虚脱したか、または吸気相の間に過伸展したかに関する識別は可能ではない。
【0079】
しかしながら、図3d、図3eおよび図4dおよび図4eに示すように、吸気相の最後および呼気相の最後それぞれにおける胸部断面Eにおけるインピーダンスの2値化された値を見ると、以下を理解することができる。
【0080】
呼気相の間に虚脱した肺胞を含む肺の肺葉の領域52a、52bにおけるEITピクセルxyに対して、呼気の最後のインピーダンス値EIT_ee_xyは同様に低い。これは、図3eにおいて、これらのEITピクセルのすべてが、明色で陰影が付けられた領域58a、58bに属し、したがって、呼気の最後の最小インピーダンス値の周囲の極めて狭い制限された領域内に位置するインピーダンス値を有するという事実から理解することができる。これから、以下のようになる。すなわち、図3cによるインピーダンス差EIT_ei_xy−EIT_ee_xyの2値化図および図3eによる呼気の最後のインピーダンスEIT_ee_xyの2値化図の両方において明色で陰影が付けられているすべてのEITピクセルxyは、かなりの程度まで虚脱した肺胞を有する。自動呼吸システムにおいて、両基準を極めて容易に検査することができ、それにより、人の介入なしに、呼吸パラメータに対して選択された設定が、呼気中に肺の一部において肺胞が虚脱するために補正される必要があるか否かを認識することができる。こうした場合、たとえば、呼吸
システムが、わずかに高いPEEPを自動的に調整するようにすることができる。
【0081】
吸気相の間に過伸展した肺胞を含む肺の肺葉の領域62a、62bにおけるEITピクセルxyに対して、吸気の最後のインピーダンス値EIT_ei_xyは同様に高い。これは、図4dにおいて、これらのEITピクセルのすべてが暗色で陰影が付けられた領域66a、66bに属し、したがって、吸気の最後の最大インピーダンス値の周囲の極めて狭い制限された領域に位置するインピーダンス値を有するという事実から理解することができる。これから、以下のようになる。すなわち、インピーダンス差EIT_ei_xy−EIT_ee_xyの2値化図において、図3cに従って明色で陰影が付けられるとともに、吸気の最後のインピーダンス値EIT_ei_xyの2値化図において、図4dに従って暗色で陰影が付けられるEITピクセルxyのすべてが、かなりの程度まで過伸展した肺胞を有する。また、自動呼吸システムにおいて、これらの2つの基準を極めて容易に検査することができ、それにより、人の介入なしに、呼吸パラメータに対して選択された調整が、吸気中に肺の一部において肺胞が過伸展したために補正される必要があるか否かを認識することができる。こうした場合、たとえば、呼吸システムが、わずかに低い最大呼吸圧Paw_maxを自動的に調整するようにすることができる。
【0082】
まったく同一の呼吸周期の間、肺胞が吸気相の間に過伸展する肺の領域および呼気相の間に肺胞が虚脱する肺の領域の両方がある状況では、2つの上述した累積的な状況の相互に分離した検査によりこうした領域を識別することもまた容易に可能である。過伸展した肺胞を含む肺領域と虚脱した肺胞を含む肺領域とが発生する結果として、一方では、肺胞の虚脱を抑制するためにPEEPが増大し、他方では、肺胞の過伸展を抑制するために、最高気道内圧がまた低減する。これは、後続する呼吸周期における換気圧の対応する低減によって達成される。これはまた、自動動作手続きで実施することができる。
【0083】
したがって、本発明は、生理学的パラメータの変化がある場合に、医師または看護師の介入なしに、PEEPおよび/または最大呼吸圧等、本質的な呼吸圧を調整することができる、大部分自動的に動作する呼吸装置の可能性を提供する。
【0084】
たとえば、PEEPの調整または追跡を、PEEPに対する相対的に低い初期値から開始して、各呼吸周期の後または所定数の呼吸周期の後に記録されたそれぞれのEITデータが、上述したように評価され、上述した基準のうちの両方が存在する、すなわち、以下が当てはまるEITピクセルxyの割合が求められるという点で、行うことができる。
EIT_ei_xy−EIT_ee_xy<k1×max(すべてのあり得るxyに対する、EIT_ei_xy−EIT_ee_xy)
および
EIT_ee_xy<k2×min(すべてのあり得るxyに対する、EIT_ee_xy)
式中、
EIT_ei_xy:それぞれのEITピクセルに関連する吸気相の最後の電気インピーダンス値
EIT_ee_xy:それぞれのEITピクセルに関連する呼気相の最後の電気インピーダンス値
0≦k1≦1、特に0.3≦k1≦0.7、特に0.4≦k1≦0.6、特にk1=0.5、
k2≧1、特に1.0≦k2≦1.6、特に1.2≦k2≦1.4、特にk2=1.3。
【0085】
EITピクセルxyの総数における比較が肯定であるEITピクセルxyの割合が、所定の第1の閾値k5を超える場合、呼吸装置は、後続する呼吸周期に対するPEEPの値を所定量増大させる。第1の閾値k5は、たとえば、5%〜25%の範囲とすることがで
き、特に10%であり得る。PEEPは、たとえば、第1の閾値k5を超える場合に、各々1cmHO、増大させることができる。PEEPに対する開始値として、調整のために依然として上方の許容差を残す適度な値、たとえば10cmHOを使用することが妥当である。
【0086】
そして、この比較は、所定の時間間隔で繰り返される。それぞれの後続する呼吸周期に対するPEEPは、EITピクセルxyの総数における比較が肯定であるEITピクセルxyの割合が第1の閾値k5未満である限り、増大する。またこれに従い、比較は所定の時間間隔で繰り返される。比較が肯定であるEITピクセルの割合が第1の閾値k5未満である限り、PEEPは変化しないままである。比較のうちの1つにより、この場合もまた、比較が肯定であるEITピクセルxyの割合が閾値k5に対応するかまたはそれより大きくなる場合、PEEPはこの場合もまた増大する。
【0087】
第1の閾値k5の値を、設定されたPEEPの値の増大に従って高く選択することができる。そうすることにより、呼吸システムが、虚脱した肺胞を含むEITピクセルxyの割合がPEEPの増大に応じて変化しない場合に、PEEPを増大させ続けることを防止する。PEEPを、PEEPに対する10cmHOの初期値から開始して段階毎に1cmHO増大させる上述した例では、たとえば、0.3%〜3%、特に1%、PEEPの各増大において第1の閾値k5の値を増大させることができる。
【0088】
最高気道内圧Paw_maxの自動化された調整または追跡に対して、たとえば、最高気道内圧Paw_maxに対する比較的高い初期値から開始して、それぞれ、各呼吸周期の後、または所定数の呼吸周期の後、それぞれの記録されたEITデータは、上述したように評価され、以下の2つの条件が満たされるEITピクセルxyの割合が求められる。EIT_ei_xy−EIT_ee_xy<k3×max(すべてのあり得るxyに対する、EIT_ei_xy−EIT_ee_xy)
および
EIT_ei_xy>k4×max(すべてのあり得るxyに対する、EIT_ei_xy)
式中、
EIT_ei_xy:それぞれのEITピクセルに関連する吸気相の最後の電気インピーダンス値
EIT_ee_xy:それぞれのEITピクセルに関連する呼気相の最後の電気インピーダンス値
0≦k3≦1、特に0.3≦k3≦0.7、特に0.4≦k3≦0.6、特にk3=0.5、
0≦k4≦1、特に0.5≦k4≦0.9、特に0.6≦k4≦0.8、特にk4=0.7。
【0089】
EITピクセルxyの総数における比較が肯定であるEITピクセルxyの割合が、所定の第2の閾値k6を超える場合、呼吸装置は、後続する呼吸周期に対する最高気道内圧Paw_maxの値を、所定量、低減させる。第1の閾値k6は、たとえば、5%〜25%の範囲とすることができ、特に、10%であり得る。最高気道内圧Paw_maxは、たとえば、第2の閾値k6を超える場合に、各々1cmHO低減させることができる。最高気道内圧Paw_maxに対する開始値として、幾分か高い値、たとえば40cmHOを用いることが妥当である。
【0090】
そして、この比較は、所定の時間間隔で繰り返される。それぞれの後続する呼吸周期に対する最高気道内圧Paw_maxは、EITピクセルxyの総数における比較が肯定であるEITピクセルxyの割合が第2の所定値k6未満である限り、低減する。またこれ
に従い、比較は所定の時間間隔で繰り返される。比較が肯定であるEITピクセルの割合が第2の閾値k6未満である限り、最高気道内圧Paw_maxは変化しないままである。比較のうちの1つにより、この場合もまた、比較が肯定であるEITピクセルxyの割合が閾値k6に対応するかまたはそれより大きくなる場合、最高気道内圧Paw_maxはこの場合もまた低減する。
【0091】
第2の閾値k6の値は、設定された最高気道内圧Paw_maxの値の低減に従って高く選択することができる。そうすることにより、呼吸システムは、過伸展した肺胞を含むEITピクセルxyの割合が最高気道内圧Paw_maxの低減に応じて変化しない場合に、最高気道内圧Paw_maxを低減させ続けることを防止する。最高気道内圧Paw_maxを、最高気道内圧Paw_maxに対する40cmHOの初期値から開始して段階毎に1cmHO低減させる上述した例では、たとえば、0.3%〜3%、特に1%、Paw_maxの各低減において第2の閾値k6の値を増大させることができる。
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図3a
図3b
図3c
図3d
図3e
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e