(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263562
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】包装用容器の蓋
(51)【国際特許分類】
B65D 43/03 20060101AFI20180104BHJP
【FI】
B65D43/03
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-15349(P2016-15349)
(22)【出願日】2016年1月29日
(65)【公開番号】特開2017-132516(P2017-132516A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2016年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】兼子 敏明
【審査官】
吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−095347(JP,A)
【文献】
特開2009−012840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 43/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視円形の開口を有する容器本体の開口内面に内嵌合する包装用容器の蓋の収納方法であって、該蓋は、中央に位置する平面視円形の天面壁と、該天面壁の周囲から降下して連接された周側壁と、該周側壁の下端から外周方向に連接された底面壁と、該底面壁の外周から上昇して連接された嵌合壁と、該嵌合壁の上端から外周方向に連接されたフランジから構成されていて、
前記フランジの外周部には外方向に突出した少なくとも一つの突出片が形成され、前記周側壁には内方向に凹んだ係合部が少なくとも一つ設けられており、前記包装用容器の蓋を、円周方向において、前記突出片同士が同位置、前記係合部同士が同位置になるように、複数枚重ねてなる列を作製し、前記列を、隣接する列が互いに前記突出片によって干渉しない位置に配置する包装用容器の蓋の収納方法。
【請求項2】
前記係合部の側壁の傾斜角を周側壁の傾斜角よりも小さくした請求項1記載の包装用容器の蓋の収納方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体と該容器本体に内嵌合される蓋とからなる包装用容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂シートを材料として、真空成型や熱盤成形等の熱成形によって容器の蓋を成形する場合、連続して同一形状の蓋を成形した後、次の工程で型抜き(外周を切断)し、複数枚重ねて集積する。その際、蓋が円形であると静電気や振動が要因で回転してしまい、蓋の中心軸に対する回転方向の方向性が一定に保てない現象が発生する。
【0003】
成形・型抜きした容器の蓋は多数重ねた状態で袋の中に収容して出荷される。蓋の外周部に摘み等の突出片が設けられた蓋の場合、中心軸に対する回転方向のバラツキがあると、前記突出片に負荷が集中し、該突出片は袋の中で強度が保てず、突出片自体に変形、折れ、割れが生じたり、突出片が包装袋を切断してしまうことがある。
そのため、前記突出片の位置を統一した方向に揃えることにより、突出片と包装袋とが点接触の状態から面接触の状態とさせて、負荷の分散を図り、一カ所へ集中的な負荷が掛かることを防止する必要がある。
【0004】
また、集積し袋詰めした容器の蓋を箱に収容する際に、前記突出片がランダムな方向を向いていると、蓋の中心から突出片先端までを半径とする蓋収容空間が必要となり、無駄な空間を要して効率的な収容ができない。
【0005】
特許文献1の
図1及び特許文献2の
図4には、内嵌合蓋の外周部に摘みとなる突出片が設けられている蓋が掲載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−114063号公報
【特許文献2】特開2008−24338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、外周部に摘み等の突出片が設けられた内嵌合円形蓋を集積する際に、該蓋が回転することを防止し、突出片を統一した方向に揃えることができる構造を有する容器の蓋を提供することにある。
【0008】
そこで本発明は、蓋の形状を工夫することで突出片の位置を揃え、その問題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、平面視円形の開口を有する包装用容器本体の開口内面に内嵌合する蓋
の収納方法に係るものであって、該蓋は、中央に位置する平面視円形の天面壁と、該天面壁の周囲から降下して連接された周側壁と、該周側壁の下端から外周方向に連接された底面壁と、該底面壁の外周から上昇して連接された嵌合壁と、該嵌合壁の上端から外周方向に連接されたフランジと、から構成されてい
て、前記フランジの外周部には外方向に突出した少なくとも一つの突出片が形成され、前記周側壁には内方向に凹んだ係合部が少なくとも一つ設けられており、前記包装用容器の蓋を、円周方向において、前記突出片同士が同位置、前記係合部同士が同位置になるように、複数枚重ねてなる列を複数列、作製し、前記列を、隣接する列が互いに前記突出片によって干渉しない位置に配置する包装用容器の蓋の収納方法である。
【0010】
本発明は、容器本体に内嵌合される蓋の周側壁に係合部を形成することによって、蓋を集積した際に上下の蓋の係合部が係合して、蓋の外周部に設けられた突出片の位置を一定方向へ揃えるものである。その際、前記係合部の側壁の傾斜角は周側壁の傾斜角より小さいことが好ましい。
前記係合部の側壁の傾斜角を周側壁の傾斜角より小さくすることによって、上下の蓋は係合部のクリアランスが小さくなって係合状態が確実となり、集積時の安定した位置決め効果が得られる。
【0011】
前記係合部の形状は、平面視において半円形・矩形・三角形などの形状とすることができるが、周側壁の内方向に凹んでいれば特に限定されるものではない。
【0012】
前記係合部は、その大きさが特に限定されるものでは無く、蓋を上下に重ねた際に係合部同士が相互に係合する大きさと深さを有していればよく、底面壁まで到達していても良い。
前記係合部を深くすることによって、浅い場合と比較して、上下に重なった蓋の係合部の干渉面積が広くなり、より安定した回転防止効果を得られる。
また、前記係合部の位置や数は、特に限定されるものでは無い。
【0013】
前記蓋の素材としては、二軸延伸ポリスチレンシート・非結晶ポリエチレンテレフタレート・透明ポリプロピレン等の透明素材が一般的に使用されるが、所謂共蓋となる本体に合わせた合成樹脂シートやそれ以外の合成樹脂シートであってもよい。
【0014】
前記蓋の成形方法としては、前記合成樹脂シートを加熱して成形する方法が用いられ、具体的には圧空成形・真空圧空成形・真空成型・熱盤成形などの加熱成形方法が用いられる。
【0015】
前記合成樹脂シートの厚みとしては、0.1〜1.0mmの範囲が汎用品に使用が可能で、より好ましくは0.2〜0.5mmの厚みが蓋のシートに適している。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、包装用容器の蓋の周側壁に係合部を形成することにより、蓋を重ねて集積した際に、蓋の外周部に形成された突出片の位置を一定方向へ揃えることができる構造に関するものであり、突出片の位置を一定方向へ揃えることにより個々の突出片に掛かる負荷を小さくし、突出片自体の変形、折れ、割れを防止し、更に、突出片が包装袋を切断することを防止する効果を発揮する。
また、集積し袋詰めした蓋を箱に収納する際に、箱内の無駄な空間をなくし効率的な収納ができる効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明を適用した実施形態による蓋の斜視図である。
【
図2】(A)は、本発明を適用した実施形態による蓋を集積した状態を示す係合部の断面図である。(B)は、本発明を適用した実施形態による蓋の係合部の側壁の傾斜を示す断面図である。
【
図3】(A)は、従来の蓋を箱に収納した状態を示す模式図である。(B)は、本発明を適用した実施形態による蓋を箱に収納した状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本発明の実施形態の蓋は、平面視円形の開口を有する包装用容器本体の開口内面に内嵌合する蓋Xに係るものであって、
図1に示したように、中央に位置する平面視円形の天面壁1と、該天面壁1の周囲から降下して連接された周側壁2と、該周側壁2の下端から外周方向に連接された底面壁7と、該底面壁7の外周から上昇して連接された嵌合壁6と、該嵌合壁6の上端から外周方向に連接されたフランジ3と、から構成されている。
【0019】
前記フランジ3の外周部には外方向に突出した一つの突出片4が形成され、前記周側壁2には内方向に凹んだ係合部5が一つ形成されている。本実施形態においては、突出片4及び係合部5がそれぞれ一つ形成されているが、突出片4及び係合部5は一つに限定されるものではなく複数形成されていてもよい。
【0020】
本発明の実施形態の蓋は、容器本体に内嵌合される蓋の周側壁2に係合部5を形成することによって、
図2(A)に示したように、蓋を集積した際に上下の蓋X,X…の係合部5,5…が係合して、蓋Xの外周部に設けられた突出片4の位置を一定方向へ揃えるものである。その際、
図2(B)に示したように、前記係合部5の側壁5aの傾斜角αは周側壁2の傾斜角βより小さいことが好ましい。
前記係合部の側壁5aの傾斜角αを周側壁2の傾斜角βより小さくする(α<β)ことによって、上下の蓋の係合部5,5…は係合部相互のクリアランスが小さくなって遊びがなくなり集積時の安定した位置決め効果が得られる。
周側壁2の傾斜角βを小さくし過ぎると重ねた蓋が傾いてしまい整然とした集積が困難となる虞があるが、係合部の側壁5aの傾斜角αのみを小さくした場合には集積に及ぼす影響は小さい。
【0021】
前記係合部5の形状は、
図1に示したような平面視において半円形に表れる形状に限らず、矩形や三角形などの形状としてもよく、周側壁の内側に凹んでいれば形状は特に限定されるものではない。
【0022】
前記係合部5は、その大きさが特に限定されるものでは無く、蓋を上下に重ねた際に係合部5,5…同士が相互に係合する大きさと深さを有していればよく、
図1及び
図2に示したように底面壁7まで到達していても良い。
係合部5を深くすることによって上下に重なった蓋の係合部5,5…の干渉面積が広くなり、浅い場合と比較して、より安定した回転防止効果が得られる。
また、係合部5の位置や数は、特に限定されるものではない。
【0023】
本発明の実施形態においては蓋の素材として二軸延伸ポリスチレンシートを使用したが、蓋の素材は、二軸延伸ポリスチレンシートに限らず、非結晶ポリエチレンテレフタレート・透明ポリプロピレン等の透明素材が一般的に使用され、所謂共蓋となる本体に合わせた合成樹脂シートやそれ以外の合成樹脂シートであってもよい。
【0024】
本発明の実施形態においては熱盤成形による合成樹脂シート加熱成形方法を用いたが、蓋の成形方法としては、熱盤成形に限らず、圧空成形・真空圧空成形・真空成型などの加熱成形方法が用いられる。
【0025】
本発明の実施形態においては0.25mmのシートを使用したが、合成樹脂シートの厚みとしては、0.1〜1.0mmの範囲が汎用品に使用が可能で、より好ましくは0.2〜0.5mmの厚みが成形性・経済性、強度等の点から蓋のシートに適している。
【0026】
図3(A)において二点鎖線で示すように、蓋を箱Yに収納する際に、前記突出片4がランダムな方向を向いていると、蓋の中心から突出片4先端までを半径とする蓋収容箱空間が必要となり、無駄な空間を必要として効率的な収納ができない。
本発明の実施形態の蓋Xは、
図3(B)に破線で示すように、突出片4が一定位置に揃っているため、突出片4を箱のコーナー方向Y1に向けることによって最小限の収容空間で済み蓋の効率的な収納が可能となる。
【0027】
蓋を集積し袋詰めした複数の集積蓋X1を箱Yに収納する際、本発明の実施形態の蓋Xの場合は
図3(B)に示すように無駄な空間がなく箱Yに収納できるのに対し、係合部5がない蓋の場合は
図3(A)に示すように箱Yに入りきれず、より大きな容積の箱が必要となる。
【0028】
また、本発明の実施形態の蓋Xは、多数枚重ねた状態で袋の中に収容する際、前記突出片4が一定位置に揃っているため、個々の突出片4,4…には同じ方向からの負荷が分散して掛かることになり、突出片4の変形、折れ、割れが発生しにくくなると共に、突出片4が包装袋を切断することを抑制できる効果が得られる。
【符号の説明】
【0029】
1 天面壁
2 周側壁
3 フランジ
4 突出片
5 係合部
6 嵌合側壁
7 底面壁