(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
透液性の表面シートと、不透液性の裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に設けられた吸収体とを有する本体と、ヒップホールド部とを備えた吸収性物品であって、
前記本体は、前後方向に所定の長さ及び該前後方向と直交する方向に所定の幅を有する形状であり、
前記ヒップホールド部は、前記本体の後方側部から突出する側部領域において、前記本体の前後方向中心線からの幅が最も大きい部分を含む第1凸部と、前記第1凸部より前方に隣接する第1凹部と、前記第1凹部より前方に隣接する第2凸部とを有し、
前記第1凸部の外形線が曲線を有し、前記前後方向中心線からの幅が最も大きい位置である前記第1凸部の頂点と前記第1凸部の頂点における曲率円の中心とを通る第1仮想線上に、剛性が高められた1つ又は複数の剛性部分を含む剛性エリアが設けられており、
複数の前記剛性エリアが、前記第1仮想線上に並んで配置されており、前記前後方向中心線により近い剛性エリアの面積が、前記前後方向中心線からより遠い剛性エリアの面積に比べて小さい、吸収性物品。
前記ヒップホールド部は、前記第1凸部より後方に隣接する第2凹部を有し、前記剛性エリアが、前記第1凹部の底点と前記第2凹部の底点とを通る第2仮想線を跨るように配置されている、請求項1に記載の吸収性物品。
前記側部領域の周縁部に複数のドット状エンボスが設けられており、前記剛性エリアにおける前記剛性部分の面積が、前記ドット状エンボス1つの面積の10倍以上25倍以下である、請求項4に記載の吸収性物品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の吸収性物品では、熱エンボス加工が後部フラップの全域に施されているため、フラップ部が硬くなり、装着感が低下し得る。
【0008】
また、特許文献2の吸収性物品では、フラップ部が凹み部で折れやすくなっているため、フラップ部の突出する部分のめくれが生じやすくなっている。
【0009】
上記の点に鑑みて、本発明は、臀部の形状に沿って良好にフィットでき、且つヒップホールド部のめくれを防止し、装着感に優れた吸収性物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の第一の態様は、透液性の表面シートと、不透液性の裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に設けられた吸収体とを有する本体と、ヒップホールド部とを備えた吸収性物品であって、前記本体は、前後方向に所定の長さ及び該前後方向と直交する方向に所定の幅を有する形状であり、前記ヒップホールド部は、前記本体の後方側部から突出する側部領域において、前記本体の前後方向中心線からの幅が最も大きい部分を含む第1凸部と、前記第1凸部より前方に隣接する第1凹部と、前記第1凹部より前方に隣接する第2凸部とを有し、前記第1凸部の外形線が曲線を有し、前記第1凸部の頂点と前記第1凸部の頂点における曲率円の中心とを通る第1仮想線上に、剛性が高められた1つ又は複数の剛性部分を含む剛性エリアが設けられている。
【0011】
上記第一の態様では、ヒップホールド部は、側部領域において、本体の前後方向中心線からの幅が最も大きい部分を含む第1凸部と、第1凸部より前方に隣接する第1凹部と、第1凹部より前方に隣接する第2凸部とを有する。そのため、吸収性物品を装着する際にヒップホールド部を臀部に沿うように当てた時、第1凸部と第2凸部との間の第1凹部の存在によって、第1凸部と第2凸部とは互いに相手側に影響を及ぼすことなく独立に変形することができる。これにより、ヒップホールド部は臀部の曲面形状(丸み)に沿って変形することができるので、ヒップホールド部の身体へのフィット性を高めることができる。
【0012】
しかしながら、吸収性物品を装着する際、或いはヒップホールド部と臀部との接触状態、臀部への体重の掛かり具合等によっては脚や臀部を動かした際に、ヒップホールド部の外周領域に比較的大きな力が負荷される場合がある。その場合には、凸部(の一部)がめくれて、肌側又は下着側に折れ曲がったり、小さなシワやヨレが発生したりすることがある(以下、「めくれ又はヨレ」という場合がある)。そして、このようなめくれやヨレは、幅が最も大きい部分を含む第1凸部において起こりやすい。
【0013】
これに対し、本態様では、第1凸部の頂点と第1凸部の頂点における曲率円の中心とを通る第1仮想線(の延長)上に、剛性が高められた1つ又は複数の剛性部分を含む剛性エリアを設けることによって、第1凸部及び/又はその近傍に適度な剛性を付与することができる。そのため、第1凸部のめくれを防止することができる。
【0014】
本発明の第二の態様によれば、前記ヒップホールド部は、前記第1凸部より後方に隣接する第2凹部を有し、前記剛性エリアが、前記第1凹部の底点と前記第2凹部の底点とを通る第2仮想線(の延長)を跨るように配置されている。
【0015】
本発明の第二の態様では、剛性エリアを、第1凹部の底点と第2凹部の底点とを結ぶ第2仮想線を跨るように配置する。第1凸部のめくれは、第1凸部の両側にある第1凹部の底点と第2凹部の底点とを結んだ線で折れ曲がることによって特に発生しやすい。そのため、第1凹部の底点と第2凹部の底点とを結んだ線上に、剛性エリアを設けておくことで、第1凸部でのめくれをより一層防止することができる。
【0016】
本発明の第三の態様によれば、前記剛性部分又は前記剛性エリアが細長形状を有しており、該細長形状の長手方向が、前記第1仮想線に略平行になっている。
【0017】
本発明の第三の態様では、剛性部分又は前記剛性エリアを細長形状とし、細長形状の長手方向が第1仮想線に略平行になるよう配置することで、剛性部分又は剛性エリアが、第1仮想線X1の方向でより広い範囲にわたって延在することになる。その結果、剛性を高める効果が一層高まり、第1凸部でのめくれをさらに良好に防止することができる。
【0018】
本発明の第四の態様によれば、前記剛性部分が、エンボス加工された部分である。
【0019】
上記第四の態様では、剛性部分をエンボスとすることで、剛性部分の剛性を向上させることができる。また、剛性部分が圧搾されているので、ヒップホールド部が肌に押し付けられることがあっても生じる違和感は小さく、装着感に優れた吸収性物品を提供することができる。
【0020】
本発明の第五の態様によれば、前記側部領域の周縁部に複数のドット状エンボスが設けられており、前記剛性エリアにおける剛性部分の面積が、前記ドット状エンボス1つの面積より10倍以上25倍以下である。
【0021】
上記第五の態様では、側部領域の周縁部に複数のドット状エンボスを設け、剛性エリアにおける剛性部分の面積を、ドット状エンボス1つの面積の10倍以上25倍以下とすることで、ヒップホールド部全体として、めくれ防止及び装着感の両方をバランス良く有する適度な剛性を付与することができる。
【0022】
本発明の第六の態様によれば、前記剛性エリア内で、複数の前記剛性部分が放射状に配置され、花形形状が形成されている。
【0023】
上記第六の態様では、剛性エリア内で複数の剛性部分を放射状に配置し、花形形状とすることで、剛性を高める効果を維持しつつ、複数の剛性部分の各面積を小さくすることができる。これにより、剛性部分が肌に当った時の違和感を最小限にする、又はなくすことができる。また、審美性も向上する。
【0024】
本発明の第七の態様によれば、複数の前記剛性エリアが、前記第1仮想線上に並んで配置されており、前記中心線により近い剛性エリアの面積が、前記中心線からより遠い剛性エリアの面積に比べて小さい。
【0025】
上記第七の態様では、剛性エリアを複数配置し、中心線により近い剛性エリアの面積を、中心線からより遠い剛性エリアの面積に比して小さくすることで、より肌に密着しやすい位置での剛性エリアをより小さく形成することができる。これにより、凸部のめくれ防止効果を維持しつつ、剛性の高い部分が肌に密着した場合であっても違和感を抑えることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一態様によれば、ヒップホールド部のめくれを防止し、装着感に優れた吸収性物品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の態様について図面を参照しながら説明する。
【0029】
吸収性物品1は、
図1及び
図2に示すように、不透液性の裏面シート2と、透液性の表面シート3と、これら両シート2、3間に設けられた吸収体4とを有する本体(吸収性物品本体)8とを備えている。吸収体4の形状保持等のために、吸収体4は、クレープ紙又は不織布等からなる被包シート5によって包まれていてもよい。吸収性物品1は、さらに、
図1に示すように、後述のヒップホールド部H、及びウィングWGを備えたウィング部Wを有しており、ヒップホールド部H及びウィング部Wの間には中間部Mが存在する。中間部Mは、ウィングWGの後方の終端から、第2凸部42の前方の終端までの領域とすることができる。
【0030】
吸収性物品1を使用する場合は、ウィング部W側が前方方向を向き、ヒップホールド部H側が後方方向を向くように下着に装着する。本体8は、
図1に示すように、全体としては、前後方向に所定の長さaを有する細長い形状であり、前後方向と直交する方向に一定の幅bを有している。そして、吸収性物品1は、前後方向に延びる中心線CLに対し略線対称の形状になっている。
【0031】
吸収体4の前方及び後方の端縁部では、裏面シート2の外縁と表面シート3の外縁とが、ホットメルト等の接着剤やヒートシール、超音波シール等の接着手段によって接合されている。また、表面シート3側にはその両側部に、それぞれ前後方向(長手方向)に沿ってサイド不織布7が設けられている。サイド不織布7は、本体8の側方に部分的に突出し、同じく側方に突出する裏面シート2に積層され、ホットメルト等の接着剤やヒートシール、超音波シール等の接着手段によって接合されており、これにより、ヒップホールド部Hの側部領域10及びウィングWGが形成されている。
【0032】
裏面シート2としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シート等の少なくとも遮水性を有するシート材を用いることができる。ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布の積層シート等を用いることができる。また、ムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられることがさらに望ましい。このような遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートを用いることができる。
【0033】
表面シート3は、経血、おりもの、尿等の体液を速やかに透過させる透液性のシートである。表面シート3としては、有孔又は無孔の不織布や多孔性プラスチックシート等が好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等の合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、及びこれらの混紡繊維、並びに綿等の天然繊維を単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、不織布の加工法としては、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等が挙げられる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、スパンボンド法はドレープ性に富む不織布を製造できる点で好ましく、サーマルボンド法は嵩高でソフトな不織布を製造できる点で好ましい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維、サイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維を用いることができる。
【0034】
裏面シート2と表面シート3との間に介在される吸収体4は、体液を吸収して保持できる材料であれば限定されないが、綿状パルプと吸水性ポリマーとを含むことが好ましい。吸水性ポリマーとしては、高吸水ポリマー粒状粉(superabsorbent polymer(SAP))、高吸水ポリマー繊維(superabsorbent fiber(SAF))及びこれらの組合せを用いることができる。パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられる。化学パルプの原料材としては、広葉樹材、針葉樹材等が用いられるが、繊維長が長いこと等から針葉樹材が好適に使用される。
【0035】
また、吸収体4には合成繊維を混合してもよい。合成繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等のポリアミド、及びこれらの共重合体を使用することができ、これらのうちの2種を混合して使用することもできる。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維、サイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。なお、疎水性繊維を親水化剤で表面処理し、体液に対する親和性を付与したものを用いることもできる。
【0036】
吸収体4の厚みは、約0.5〜25mmの範囲内とすることが好ましい。吸収体4は、前面にわたり均一な厚みを有していなくともよく、体液排出部位に対応した部分を膨出させた構造とすることもできる。また、吸収体4は、積繊又はエアレイド法によって製造されたものが好ましい。
【0037】
サイド不織布7としては、撥水処理不織布又は親水処理不織布を使用することができる。例えば、経血やおりもの等が浸透するのを防止する効果又は肌触り感を高める場合は、シリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いることが好ましい。また、ヒップホールド部Hにおける経血等の吸収性を高める場合には、不織布の材料として、親水処理された不織布を用いることが好ましい。不織布の種類としては、折り癖が付きにくく、シワに成りにくく柔らかいエアスルー不織布が好ましい。
【0038】
本態様においては、吸収性物品1は、透液性の表面シート3と、不透液性の裏面シート2と、前記表面シート3と前記裏面シート2との間に設けられた吸収体4とを有する本体8と、ヒップホールド部Hとを備えている。
【0039】
ヒップホールド部Hは、吸収性物品1の両側部後方から後端部にわたる部分の長さ及び幅を大きくすることによって形成された面積拡張部分であり、
図11に示すように、装着時に下着の臀部内面側に固定されることで、吸収性物品1の後方及び/又は斜め後方からの体液の漏れを阻止する機能を有する。ヒップホールド部Hは、
図1に示すように、吸収性物品1の本体8の両側部の後方から後端部にかけて延在する、サイド不織布7と裏面シート2とが積層されたフラップ状の部分を含む。
【0040】
ヒップホールド部Hは、本体8の後方側部から突出する側部領域10と、本体8の後端部から突出する後部領域20とを有している。ヒップホールド部Hの側部領域10は、主として裏面シート2とサイド不織布7とが貼り合せられて構成された領域を含み、後部領域20は、主として裏面シート2と表面シート3とが貼り合せられて構成された領域を含む。
【0041】
ヒップホールド部Hの側部領域10及び後部領域20は、吸収体4を有さず、本体8に比べて薄く構成されていることが好ましい。これにより、本体8よりもフレキシブルな動きをすることができる。但し、本体8で用いられる吸収体4より薄く構成された吸収体を、ヒップホールド部H内の側部領域10の裏面シート2とサイド不織布7との間に積層させることもできる。
【0042】
ヒップホールド部Hは、装着時に下着のクロッチ部分の後端に対応する位置を起点として、吸収性物品1の後端まで延びる部分とすることができる。
図1の例では、ヒップホールド部Hは、第2凸部42の前方の終端がある位置から吸収性物品1の後端までの前後方向にわたる部分とすることができる。例えば、ヒップホールド部Hの前後方向の長さは、50mm以上200mm以下であると好ましく、80mm以上180mm以下であるとより好ましい。また、吸収性物品1の全長は200mm以上450mm以下とすることができ、この全長に対してヒップホールド部Hの前後方向の長さは、10%以上50%以下であると好ましい。なお、ヒップホールド部Hは、吸収性物品1の幅が最も大きくなる部分を含み、その幅は、120mm以上230mm以下であると好ましい。
【0043】
さらに、ヒップホールド部Hには、その外周(外形線)に凹凸が設けられている。例えば、
図1に示すように、側部領域10において、本体8の前後方向中心線CLからの幅が最も大きい部分を含む第1凸部41と、第1凸部41より前方に隣接する第1凹部51と、第1凹部51より前方に隣接する第2凸部42とを有する。
【0044】
以下、ヒップホールド部Hの外周に凹凸部を形成することによる作用を説明する。
【0045】
ヒップホールド部Hは、全体としては平面状である。この様な平面状のヒップホールド部Hを臀部に当てた場合、臀部が曲面形状を有するために、平面形状と曲面形状との違いに起因して、特にヒップホールド部Hの外周領域に歪が生じ、シワが発生し得る。発生するシワの大きさや数はヒップホールド部H全体の面積(エリア)及び臀部の曲面の形状に関係するが、ヒップホールド部Hの外周に上述のような凸部及び凹部が形成されていない場合は、ヒップホールド部Hの外周領域の複数の箇所に大きなシワが発生し得る。この様な大きなシワは、臀部の肌に接することで装着者に違和感を与えるが、特に、長時間椅子に腰掛けている場合、或いは夜間仰向けに寝ている場合は、体重の一部が臀部に加わるため、その分、違和感乃至不快感は大きくなる。また、就寝中の姿勢の変化或いは着席中の姿勢の変化により臀部に掛かる体重の大きさや、臀部とヒップホールド部Hとの接触状態が変化することで、シワが一層大きくなり得る。さらに夜間等で、仰向け或いは横向きで寝ている場合は、そのようなシワにより生じた隙間から体液が外部に漏洩しやすくなる。
【0046】
これに対し、本態様では、ヒップホールド部Hの外形形状には、2つの凸部の間に凹部が存在しているため、例えば、第1凸部41にシワを発生させる力が作用しても、第1凹部51の存在によって第2凸部42に第1凸部41で発生する力が伝播しないために、第1凸部41に生じた力は第1凸部41のエリアに留まることになる。第2凸部42にシワを生じさせる力が作用した場合も同様である。このように、第1凸部41と第2凸部42とは互いに影響を及ぼすことなくそれぞれ独立に変形することができる。また、シワが発生しても、そのシワが大きくなることはない。
【0047】
よって、吸収性物品1を装着する際にヒップホールド部Hを臀部の曲面に沿うように当てた時、ヒップホールド部Hを、臀部の曲面に沿って変形させることができる。これにより、ヒップホールド部Hの臀部へのフィット性を向上させることができる。
【0048】
なお、図示の態様では、ヒップホールド部Hの側部領域10において第1凸部41、第1凹部51及び第2凸部42が設けられた構成となっているが、凸部及び凹部の数及び形状は図示の例に限られない。例えば、ヒップホールド部Hの側部領域10には、2〜5個の凸部を設けることができ、1〜5個の凹部を設けることができる。
【0049】
上述のように、ヒップホールド部Hは、外周に凹凸が設けられていることによって、身体へのフィット性が高められている。しかしながら、吸収性物品1を装着する際、或いはヒップホールド部Hと臀部との接触状態、臀部への体重の掛かり具合によっては、脚や臀部を動かした時等に凸部(の一部)がめくれて、肌側又は下着側に折れ曲がったり、小さなシワやヨレ(以下、「めくれ又はヨレ」という場合がある)が発生したりするおそれがある。そして、このようなめくれ又はヨレは、幅が最も大きい部分を含む第1凸部41において起こりやすい。
【0050】
これに対し、本態様では、
図1及び
図3に示すように、第1凸部41の外形線が曲線を有し、第1凸部41の頂点Pと第1凸部41の頂点Pにおける曲率円の中心Oとを通る第1仮想線X1(の延長)上に、剛性が高められた1つ又は複数の剛性部分60を含む剛性エリア70が設けられている。つまり、第1凸部41の頂点Pと、この第1凸部41の頂点P付近の曲線の微小部分を円弧に近似した場合の円の中心Oとを通る仮想線X1上に、剛性エリア70を配置する。これにより、第1凸部41がめくれやすい方向に沿って第1凸部41の領域の剛性を向上させることができる。よって、上述のヒップホールド部Hの身体へのフィット性を維持しつつ、幅が最も大きく幅方向の動きが大きい傾向を有する第1凸部41のめくれを防止することができる。
【0051】
なお、図示の例では、第1凸部41の外形線は曲線からなっているが、第1凸部41の外形線は一部に直線を有するものであってもよいし、その両側にある凹部の外形線への移行点で接線の傾きが不連続に変化するものであってもよい。これは、第1凸部41以外の凹部及び凸部についても同様である。
【0052】
本明細書において、剛性部分60とは、加工が施されて剛性が高められた部分を指す。剛性を高めるための加工手段については特に限定されないが、剛性部分60は、圧搾によって形成された圧搾部分であると好ましく、その中でも、熱エンボス加工、超音波エンボス加工等のエンボス加工された部分であるとより好ましい。
【0053】
剛性部分60は、その部分に樹脂組成物等を塗布して固化させたり、シートを積層させたりすることにより局所的に厚みを大きくすることによって形成することもできる。このような厚みを大きくした部分は、裏面シート2の側に設けてもよいし、裏面シート2とサイド不織布7との間に介在させてもよい。
【0054】
また、本明細書において、剛性エリア70とは、上述の1つ又は複数の剛性部分60とその周辺の部分とを含むエリア(領域)を指す。つまり、剛性エリア70とは、加工が施された剛性部分60を含み、さらに、直接的に加工が施された部分ではないが、剛性部分60の加工によって周囲よりも剛性が高められた部分を含むエリア(領域)である。例えば、剛性部分60がエンボス加工等の圧搾加工によって形成されている場合には、圧搾された部分の周辺において加工前後で厚みが変化した部分を含み得るし、さらにはその周辺の、厚みが変化した部分からの影響(熱等の影響を含む)によって剛性が変化した部分を含み得る。
【0055】
図面においては、剛性エリア70を、1つ又は複数の剛性部分60を取り囲む点線で示す。図示の剛性エリア70は、その概念を説明するために例示したものに過ぎず、その形状や大きさは、剛性部分60の形状、大きさ及び配置、並びに剛性部分60を加工する方法及び条件等によって変化する。
【0056】
剛性部分60の形状は特に限定されないが、平面視で、三角形や台形、菱形等の四角形及びその他の多角形、並びに円形、楕円形、アーモンド形、雨滴形、星形、ハート形、ダイヤ形、スペード形、クラブ形等とすることができる。形状の例を
図4に示す。
【0057】
図4(a)〜(e)は、1つの剛性エリア70に、それぞれ1つの剛性部分60が含まれた例であり、(a)楕円形、(b)長方形、(c)星形、(d)ハート形の剛性部分60、(e)円形が、それぞれ1つの剛性エリア70に含まれている。
【0058】
一方、
図4(f)〜(h)に示すように、1つの剛性エリア70には、複数の剛性部分60が含まれるようにしてもよい。その場合、剛性エリア70に含まれる剛性部分60の形状及び/又は大きさは、同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
図4(f)〜(h)の例では、複数の剛性部分60が近接して設けられ、その複数の剛性部分60の集合体によって1つのモチーフが形成されている。
【0059】
例えば、
図4(f)のように、2つの雨滴形の剛性部分60を並べることによって割れたハートのモチーフを形成し、剛性エリア70をハート形の形状とすることもできる。また、
図4(g)に示すように、雨滴形又は楕円形の複数の剛性部分60を放射状に配置し、それらの集合体によって花形形状のモチーフ及び剛性エリア70が形成されるようにすることもできる。このような花形のモチーフは、デザイン性が高く、審美性に優れる。さらに、
図4(h)に示すように、剛性部分60を小さなドット状のエンボスとし、その集合体によって楕円形状のモチーフを形成し、楕円形の剛性エリア70を形成することもできる。
【0060】
なお、図示の剛性エリア70の形状は例示に過ぎない。剛性エリア70の形状は、上述のように、含まれる剛性部分60の数、形状、大きさ、位置関係等によって異なり、平面視で、三角形や台形、菱形等の四角形及びその他の多角形、並びに円形、楕円形、アーモンド形、雨滴形、星形、ハート形、ダイヤ形、スペード形、クラブ形等とすることができる。
【0061】
剛性エリア70の剛性部分60の合計の面積は、2mm
2以上45mm
2以下であると好ましく、5mm
2以上29mm
2以下であるとより好ましい。このような範囲とすることで、ヒップホールド部Hの剛性を向上させて凸部のめくれを防止するとともに、ヒップホールド部Hの柔らかさを確保することができるので、フィット性が良く且つ装着感に優れた吸収性物品1を提供することができる。
【0062】
なお、側部領域10において、第1凸部41以外に凸部が存在する場合には、第1凸部41以外の凸部、例えば
図1及び
図3に示すように、第2凸部42や第3凸部43(第1凸部41より後方に隣接する第2凹部52の後方に隣接する凸部)においても、剛性部分60を含む剛性エリア70を設けることができる。この場合、第2凸部42及び第3凸部43においても、凸部の頂点とその曲率円の中心とを通る仮想線上に剛性エリア70を設けると、第2凸部42及び第3凸部43のめくれを防止することができる。
【0063】
さらに、ヒップホールド部Hは、
図3に示すように、第1凸部41より後方に隣接する第2凹部52を有し、剛性エリア70が、第1凹部51の底点Qと第2凹部52の底点Rとを通る第2仮想線(の延長)X2を跨るように配置されていると好ましい。
【0064】
上述のように、ヒップホールド部Hの外形線に凹凸が設けられていることで、身体へのフィット性が増すが、特定の状況下でヒップホールド部Hの凸部が比較的大きな力を受けた場合、凸部は付け根で折れやすい。例えば、第1凸部41は、その両側にある第1凹部51の底点Qと第2凹部52の底点Rとを結んだ線で折れやすく、めくれやすい。そこで、剛性エリア70を、第1凹部51の底点Qと第2凹部52の底点Rとを通る第2仮想線X2を跨るように配置することで、上記の折れを防止し、第1凸部41のめくれを一層防止することができる。
【0065】
剛性部分60が細長形状を有している場合には、
図5に示すように、その長手方向が、上述の第1仮想線X1に略平行になっていると好ましい。ここで、第1仮想線X1に略平行とは、第1仮想線X1に対する厳密な平行を指すのではなく、例えば±15°以下であってよく、±5°以下であることが好ましい。また、細長形状とは、
図5のような長方形や、楕円形、雨滴形、底辺が他の辺より短い二等辺三角形等、一方向の長さが他の方向の長さよりも長くなっている形状である。このように、細長形状の剛性部分60の長手方向が、第1仮想線X1に沿っていることによって、剛性が高められたエリアを、第1仮想線X1の方向にわたってより広く延在させることができ、その結果、本態様の剛性部分60によって得られるめくれ防止の効果をより一層高めることができる。
【0066】
また、剛性エリア70が全体として細長形状を有している場合には、
図6(b)並びに
図7(a)及び
図7(b)に示すように、その剛性エリア70の長手方向が、上述の第1仮想線X1に対して略平行になっていると好ましい。ここで、第1仮想線X1に略平行とは、第1仮想線X1に対する厳密な平行を指すのではなく、例えば±15°以下であってよく、±5°以下であることが好ましい。また、剛性エリア70の細長形状とは、長方形、楕円形、雨滴形、底辺が他の辺より短い二等辺三角形等、一方向の長さが他の方向の長さよりも長くなっている形状である。細長形状の剛性エリア70の長手方向が、第1仮想線X1に沿っていることによって、剛性が高められたエリアを、第1仮想線X1の方向にわたってより広く延在させることができるので、めくれ防止の効果をより一層高めることができる。
【0067】
なお、上記の条件が、剛性部分60及び剛性エリア70のうち一方によって満たされていれば、めくれ防止の効果を向上させることができる。例えば、同様に配置された同様の形状及び大きさの剛性部分60を含む剛性エリア70であり、剛性エリア70の向きのみが異なるものである。
図6(a)の例では、3つの剛性部分60のうち中央の楕円形の剛性部分60の長手方向が、上記の第1仮想線X1に対して略平行に配置されている。一方、
図6(b)の例では、楕円形の剛性エリア70の長手方向が上記の第1仮想線X1に対して略平行に配置されている。
図6(a)及び
図6(b)の例では、剛性エリア70全体の向きが互いに異なっているが、剛性部分60及び剛性エリア70のどちらかが上記の配置の方向の条件を満たしているので、いずれの場合であっても上記効果を奏することができる。
【0068】
図6(b)のように、剛性エリア70の細長形状の長手方向が第1仮想線X1に略平行になっている方が好ましく、剛性部分60及び剛性エリア70の両方が上記の条件を満たす形状となっているとより好ましい。
【0069】
なお、剛性部分60又は剛性エリア70の形状の輪郭上の2点を結んだ線分を2以上引いた場合に、長さの異なる線分を2以上引けるような形状であれば、細長形状を有するということができる。例えば、剛性部分60及び剛性エリア70が
図7(c)に示すような形状の場合、剛性エリア70の形状の輪郭上の2点を結んで得られる線分の中で最も長い線分STの方向を第1仮想線X1に対して略平行になるように配置すると、剛性の高いエリアを、第1仮想線X1の方向にわたってより広く延在させることができるので、凸部のめくれの防止効果を向上させることができる。
【0070】
第1仮想線X1上に配置する剛性エリア70は1つであってもよく、複数であってもよい。複数の剛性エリア70を設ける場合には、その形状及び/又は大きさは同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0071】
複数の剛性エリア70を第1仮想線X1上に配置する場合、外側に配置した剛性エリア70の大きさを最も大きくし、その剛性エリア70よりも内側に配置された剛性エリア70の大きさをより小さくすると好ましい。すなわち、前後方向中心線CLにより近い位置に配置された剛性エリア70の面積(又は剛性エリア70内の剛性部分60の面積)が、その剛性エリア70よりも中心線CLから遠い位置に配置された剛性エリア70(又は剛性エリア70内の剛性部分60の面積)の面積と比較して小さいことが好ましい。
図8に示すように、3つ以上の剛性エリア70を配置する場合には、内側に向かうにつれて剛性エリア70の大きさを徐々に小さくすることが好ましい。その場合、複数の面積の異なる剛性エリア70を相似とすることが好ましい。すなわち、剛性エリア70自体の形状及び剛性エリア70に含まれる剛性部分60の形状及び配置を相似とすることが好ましい。
【0072】
周縁の剛性エリア70がより大きく、周縁から離れた剛性エリア70が小さくなるよう配置することで、剛性エリア70及び剛性部分60によるめくれ防止の作用・機能を維持しつつ、臀部とヒップホールド部Hとの接触条件によって剛性エリア70が肌に当って押し付けられることがあっても、剛性部分60による違和感を抑えることができる。
【0073】
第1仮想線X1上での剛性エリア70を設ける位置は特に限定されないが、
図3及び
図8等に示すように、幅方向内側においては、吸収性物品本体8の手前までとする。また、幅方向外側では、ヒップホールド部Hの外形線に接するように設けることもできるが、ヒップホールド部Hの周縁部に後述のドット状エンボスDEが設けられている場合には、ドット状エンボスDEの手前までとするのが好ましい。
【0074】
剛性エリア70は、
図9に示すように、第2仮想線X2より幅方向外側に設けることもできる。このような配置によって、第1凸部41が外側に大きく突出している場合であっても第1凸部41の小さなシワが寄ったり、めくれたりすることを良好に防止することができるので、良好なフィット性が維持される。
【0075】
また、
図10に示すように、近接した複数の剛性部分60を第1仮想線X1に沿って連続的に並べて、本体8に至るまでの間に帯状の剛性エリア70を形成することもできる。これにより、めくれ防止の効果は向上する。この場合も、中心線CLに近づくほど剛性部分60の面積が小さくなるように配置しておくと、
図8を参照して上述したように剛性部分60が肌に当った時の違和感を抑え、装着感を向上させることができる。
【0076】
ヒップホールド部Hの側部領域10の周縁部には、
図1に示すように、複数のドット状エンボスDEを設けることができる。ドット状エンボスDEは、熱エンボス加工、超音波エンボス加工等のエンボス加工によって形成される小さなドット状の圧搾部の集合体であり、主として、吸収性物品の周縁部において裏面シート2とサイド不織布7との積層体を接合し、且つその部分の剛性を高めることを目的として設けられる。
【0077】
図1等の例では、ドット状エンボスDEの形状は円形であるが、三角形、台形、菱形等の四角形及びその他の多角形、並びに楕円形、雨滴形、星形、ハート形等にもすることができる。また、ドット状エンボスDEの1つ当たりの面積は、0.2mm
2以上1.8mm
2以下が好ましく、0.5mm
2以上0.8mm
2以下であることがより好ましい。この範囲とすることで、吸収性物品1の周縁が適切に接合され、且つ適度な剛性が付与される。
【0078】
ドット状エンボスDEが設けられている場合には、1つの剛性エリア70における剛性部分60の面積は、ドット状エンボスDE1つの面積の10倍以上25倍以下であると好ましい。ここで、剛性エリア70における剛性部分60の面積は、剛性エリア70内に複数の剛性部分60が設けられている場合には、剛性部分60の面積の合計とすることができる。剛性エリア70の面積を上記範囲とすることで、ヒップホールド部Hの周縁領域とそれより内側の領域とでバランスのとれた適度な剛性を得ることができる。
【0079】
剛性エリア70は、側部領域10に設けられた凸部及び凹部の形状及び/又は大きさに応じて、第1仮想線X1上にない任意の位置にも追加的に設けることができる。
【0080】
また、剛性エリア70は、ヒップホールド部Hの側部領域10以外の場所にも設けることができる。例えば、ヒップホールド部Hの後部領域20において、表面シート3と裏面シート2との積層体に剛性エリア70を設けることができる。また、剛性エリア70は、
図1に示すように、ヒップホールド部H以外の部分、ウィング部WのウィングWG、及びウィング部Wより前方の部分の側部にも設けることができる。このようにヒップホールド部Hの側部領域10以外の場所にも剛性エリア70を設ける場合も、凸部の頂点とその曲率円の中心とを通る仮想線上に設けることで、剛性エリア70を設けた部分の剛性を向上させることができ、その部分のめくれを防止することができる。
【0081】
なお、前後方向において、幅が最も大きくなる第1凸部41が配置される位置は、ヒップホール部Hの前後方向の長さの半分より後方とすることができる。ヒップホールド部Hは後方に行くほど幅方向に動きやすくなるので、第1凸部41がめくれる傾向が大きくなるが、そのような場合であっても、第1仮想線X1上に、剛性が高められた1つ又は複数の剛性部分60を含む剛性エリア70が設けられていることによって、第1凸部41のめくれを良好に防止することができる。
【解決手段】透液性の表面シートと、不透液性の裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に設けられた吸収体とを有する本体と、ヒップホールド部とを備えた吸収性物品であって、前記本体は、前後方向に所定の長さ及び該前後方向と直交する方向に所定の幅を有する形状であり、前記ヒップホールド部は、前記本体の後方側部から突出する側部領域において、前記本体の前後方向中心線からの幅が最も大きい部分を含む第1凸部と、前記第1凸部より前方に隣接する第1凹部と、前記第1凹部より前方に隣接する第2凸部とを有し、前記第1凸部の外形線が曲線を有し、前記第1凸部の頂点と前記第1凸部の頂点における曲率円の中心とを通る第1仮想線上に、剛性が高められた1つ又は複数の剛性部分を含む剛性エリアが設けられている。