特許第6263587号(P6263587)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6263587電解銅箔、該電解銅箔を含むリチウム二次電池用集電体及びリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263587
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】電解銅箔、該電解銅箔を含むリチウム二次電池用集電体及びリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/66 20060101AFI20180104BHJP
【FI】
   H01M4/66 A
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-170089(P2016-170089)
(22)【出願日】2016年8月31日
(65)【公開番号】特開2017-79208(P2017-79208A)
(43)【公開日】2017年4月27日
【審査請求日】2016年9月6日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0146488
(32)【優先日】2015年10月21日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】509023012
【氏名又は名称】エル エス エムトロン リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LS Mtron Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】チョン・ウンソン
(72)【発明者】
【氏名】チョン・サンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イ・ヒョヌ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・コンベ
(72)【発明者】
【氏名】キム・ドンウ
【審査官】 式部 玲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−187193(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/002996(WO,A1)
【文献】 特開2008−004462(JP,A)
【文献】 特開2014−037583(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/104999(WO,A1)
【文献】 特開2014−132106(JP,A)
【文献】 特開平11−273683(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/030626(WO,A1)
【文献】 特開2008−270154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/64−4/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム二次電池用集電体に適用される電解銅箔であって、
前記電解銅箔は、熱処理していない状態で得られたX線回折分析グラフ(X軸変数を回折角2θ、Y軸変数を回折されたX線の強度にして示されたグラフ)上に現れる(111)面に対するピーク曲線の半値幅が0.08以上0.15以下であり、
前記電解銅箔は、190℃で1時間熱処理した状態で得られたX線回折分析グラフ(X軸変数を回折角2θ、Y軸変数を回折されたX線の強度にして示されたグラフ)上に現れる(111)面に対するピーク曲線の半値幅が0.099以上0.11以下であることを特徴とする電解銅箔。
【請求項2】
前記電解銅箔は、表面に形成された保護層を備え、
前記保護層は、クロム酸塩、ベンゾトリアゾール及びシランカップリング剤のうち選択された少なくとも1つからなることを特徴とする請求項に記載の電解銅箔。
【請求項3】
前記電解銅箔は、0.3μm以上1.5μm以下の表面粗度(Rz)を有することを特徴とする請求項に記載の電解銅箔。
【請求項4】
前記電解銅箔は、M面の60度における光沢度が20GU以上500GU以下であることを特徴とする請求項に記載の電解銅箔。
【請求項5】
請求項に記載された電解銅箔からなるリチウム二次電池用集電体。
【請求項6】
請求項に記載されたリチウム二次電池用集電体を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解銅箔、該電解銅箔を含むリチウム二次電池用集電体及びリチウム二次電池に関し、より詳しくは、向上された品質により二次電池の特性を向上させることができる電解銅箔、そして該電解銅箔を含むリチウム二次電池用集電体及びリチウム二次電池に関する。
【0002】
本出願は、2015年10月21日出願の韓国特許出願第10−2015−0146488号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
リチウム二次電池は、他の二次電池に比べて相対的にエネルギー密度が高く、作動電圧が高いだけでなく、優れた保存及び寿命特性を示すなど多くの長所を有するため、パソコン、カムコーダー、携帯電話、携帯用CDプレーヤー、PDAなど各種の携帯用電子機器に広く使用されている。
【0004】
一般に、リチウム二次電池は、電解質を介在して配置された正極及び負極を含む構造を有し、前記正極は正極集電体に正極活物質が付着された構造を有し、前記負極は負極集電体に負極活物質が付着された構造を有する。
【0005】
リチウム二次電池において、負極集電体の素材としては主に電解銅箔が使用されるが、このような電解銅箔は二次電池の充放電によって二次電池の内部に苛酷条件が繰り返して形成されても二次電池の性能を維持できるように優れた物性を有しなければならない。
【0006】
前記電解銅箔が有するべき物性としては、例えば、電解銅箔の製造工程で電解銅箔に皺が発生しないこと、電解銅箔を用いて製造された二次電池が充放電を繰り返しても放電容量保持率が一定水準以上を示すことなどが挙げられる。
【0007】
一方、このような電解銅箔の優れた物性は電解銅箔が有する様々な因子を調節することで確保できるが、どの因子をどの範囲に調節すれば所望の物性が得られるかを明らかにすることは容易ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、リチウム二次電池の優れた性能発現のための重要な因子を見つけ出し、それを調節することで電解銅箔にリチウム二次電池の優れた性能発現のための物性を持たせることを目的とする。
【0009】
ただし、本発明がなそうとする技術的課題は、上述した課題に制限されず、他の技術的課題は下記する発明の説明から当業者に明確に理解できるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上述した技術的課題を解決するために鋭意研究し、その結果、常温での電解銅箔及び高温熱処理した電解銅箔に対するX線回折実験を通じて得られた2θ(回折角)−強度(intensity)グラフにおいて、電解銅箔の(111)面に対するピーク曲線が有する半値幅(FWHM:Full Width at Half Maximum)値が一定範囲を維持する場合、物性の優れた電解銅箔が得られることを見出した。また、本発明者らは、このような優れた物性を有する電解銅箔をリチウム二次電池用集電体に適用することで、充放電を繰り返しても優れたリチウム二次電池の特性を維持できることを見出した。
【0011】
このように優れたリチウム二次電池の特性を維持できる本発明の一実施例による電解銅箔は、リチウム二次電池用集電体に適用される電解銅箔であって、熱処理していない状態で得られたX線回折分析グラフ(X軸変数を回折角2θ、Y軸変数を回折されたX線の強度にして示されたグラフ)上に現れる(111)面に対するピーク曲線の半値幅が0.08以上0.15以下である。
【0012】
前記電解銅箔は、190℃で1時間熱処理した状態で得られたX線回折分析グラフ(X軸変数を回折角2θ、Y軸変数を回折されたX線の強度にして示されたグラフ)上に現れる(111)面に対するピーク曲線の半値幅が0.099以上0.11以下であり得る。
【0013】
前記電解銅箔は、表面に形成された保護層を備え、前記保護層はクロム酸塩(chromate)、ベンゾトリアゾール(benzotriazole)及びシランカップリング剤のうち選択された少なくとも1つからなり得る。
【0014】
前記電解銅箔は、0.3μm以上1.5μm以下の表面粗度を有し得る。
【0015】
前記電解銅箔は、表面の光沢度が20GU以上500GU以下であり得る。
【0016】
一方、本発明の一実施例によるリチウム二次電池用集電体は、上述した本発明の一実施例による電解銅箔からなり、本発明の一実施例によるリチウム二次電池は、このような本発明の一実施例によるリチウム二次電池用集電体を含んで構成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、特に皺発生の防止という側面で優れた物性を有する電解銅箔が得られ、リチウム二次電池に対する充放電が繰り返されてもリチウム二次電池の容量保持率の減少を最小化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施例を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【0019】
図1】本発明の一実施例による電解銅箔を示した断面図である。
図2】半値幅の意味を具体的に説明するための図である。
図3】半値幅の意味を具体的に説明するための図である。
図4】電解銅箔の皺発生有無を判断するための実験方法を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び請求範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。したがって、本明細書に記載された実施例及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0021】
図1を参照して本発明の一実施例による電解銅箔10の構成を説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施例による電解銅箔を示した断面図である。
【0023】
図1を参照すれば、本発明の一実施例による電解銅箔10は銅層11及び前記銅層11の表面11a、11bに選択的に形成される保護層12を含む。
【0024】
前記電解銅箔10は、リチウム二次電池の負極集電体として使用されることが望ましい。すなわち、リチウム二次電池において、負極活物質と結合される負極集電体としては電解銅箔10を用いることが望ましい。一方、正極活物質と結合される正極集電体としてはアルミニウム(Al)からなる箔(foil)を用いることが一般的である。
【0025】
したがって、本発明では前記電解銅箔10が使用される本発明の一実施例による二次電池用集電体が負極集電体に該当する場合を挙げて説明する。
【0026】
本発明の一実施例による電解銅箔10は、常温及び/または高温で測定された半値幅が一定範囲以内に制御された状態を維持する。
【0027】
ここで半値幅とは、図2に示されたように、銅箔試料に対するX線回折実験を通じて得られたグラフにおいて、銅箔試料の結晶面指数(111)面に対応するピーク曲線を用いて得られる値である。具体的に、前記半値幅とは、(111)面に対応するピーク曲線に現れた最大強度値の半分に該当する強度値に対応する2つの2θ値の差を意味する。
図2は、X軸変数(横軸)を回折角2θ、Y軸変数(縦軸)を回折されたX線の強度にして示されたX線回折分析グラフである。
【0028】
また、前記2θ値は、図3に示されたように、銅箔試料にX線を入射角θで照射したとき、回折されて出る角を意味する。
【0029】
本発明の一実施例による電解銅箔10は、製造工程過程において常温で(111)面に対して測定した半値幅が約0.08〜0.15の範囲を有する。ここで、常温とは、電解銅箔の製造工程のうち、特に熱処理などが施されない工程が行われる温度を意味し、例えば、銅箔を移動させるロール・ツー・ロール(Roll−To−Roll)工程などが行われる温度が常温に属する。
【0030】
このような半値幅の範囲は銅箔の皺発生を防止できる半値幅の範囲であって、このような半値幅が約0.08より小さい場合は、銅箔の皺発生に対する改善効果がなく、半値幅が約0.15より大きければ、銅箔の結晶粒が小さ過ぎる場合に該当するため、銅箔の強度及び延伸率を制御し難い。
【0031】
電解銅箔が有する常温における半値幅が上述した範囲から外れる場合、電解銅箔及びリチウム二次電池の製造過程で電解銅箔に皺が発生する恐れが高くなる。皺が発生すれば、集電体の表面に負極材が均一にコーティングできず、負極材のコーティング厚さのバラツキ及び外観不良が発生して製品品質の低下につながる恐れがある。
【0032】
一方、本発明の一実施例による電解銅箔10の常温における半値幅が上述した範囲内である場合、耐皺性の強い電解銅箔が得られ、このように耐皺性の強い電解銅箔を用いる場合、ロール・ツー・ロール工程で線速(生産速度)を高めることができるため、製品の全体的な生産性向上は勿論、製造された製品(電解銅箔及びリチウム二次電池)の品質向上という結果をもたらすことができる。
【0033】
一方、本発明の一実施例による電解銅箔10は、リチウム二次電池の製造工程で負極集電体として用られる電解銅箔が置かれる高温環境と同一/類似条件の熱処理(約190℃で1時間熱処理)を経た後、(111)面に対して測定された半値幅が約0.099〜0.11の範囲を有する。
【0034】
このような半値幅の範囲は、本発明の一実施例による電解銅箔10が適用された負極集電体を用いて製作したリチウム二次電池を繰り返して充放電する場合、優れたリチウム二次電池の容量保持率特性を示す範囲である。
【0035】
前記電解銅箔10の常温における半値幅及び高温熱処理後の半値幅は、後述する電解銅箔の製造過程でメッキのためのメッキ液(電解液)に含まれる銅、硫酸の濃度変化、メッキ液に選択的に添加される各種添加剤(無機添加剤、レベラー、光沢剤など)の濃度変化、メッキ時の電流密度の変化、及びメッキ液の温度変化などと関連し得る。
【0036】
一方、本発明の一実施例による電解銅箔10は、硫酸銅水溶液をメッキ液(電解液)として用いて、一定速度で回転するドラム型の負極と反対側に位置した正極との間にメッキ液を供給し、回転するドラム型の負極面に銅を電着、還元析出させることで製造され、約20μm未満の厚さで製造された(電解銅箔が薄いほど活物質付き集電体を二次電池内に多く収納できるため、高容量化に有利である一方、電解銅箔が厚いほど二次電池への適用時に高容量化し難いことがあり得るため、電解銅箔の厚さは20μmを超えないことが望ましい)。
【0037】
図1を再び参照すれば、電解メッキによって生成される電解銅箔は2つの異なる面を有する。すなわち、電解銅箔には、負極ドラムに接している面である光沢面(shiny side、S面)11a、及び析出によって結晶粒が成長する方向に位置した面である粗面(Matt side、M面)11bがある。このような電解銅箔のS面とM面の表面粗度(Rz)は、約0.3μmないし1.5μmの範囲で形成されることが望ましい。
【0038】
電解銅箔の表面粗度が約0.3μm未満と低過ぎる場合は、活物質と電解銅箔との結合力が劣り、リチウム二次電池の放電容量保持率が低下することがある。一方、電解銅箔の表面粗度が約1.5μmを超えて高過ぎる場合は、活物質と電解銅箔とが均一に接触し難くてリチウム二次電池の放電容量保持率が低下することがある。
【0039】
また、本発明の一実施例による電解銅箔10の表面で測定されるM面(Matt side)の60度における光沢度は約20〜500GU(gloss unit)の範囲であることが望ましい。光沢度が低過ぎれば、表面の粗度が高過ぎて表面が過度に不均一な場合に該当し、逆に光沢度が高過ぎれば、表面の粗度が低過ぎて表面が過度に滑らかな場合に該当するためである。
【0040】
一方、前記保護層12は、電解銅箔10の防錆処理のために銅層11の表面に選択的に形成されるものであり、クロム酸塩、ベンゾトリアゾール及びシランカップリング剤のうち選択された少なくとも1つからなり得る。前記保護層12は、電解銅箔10に対して防錆特性だけでなく、耐熱特性及び/または活物質との結合力増大特性を与える役割も果たせる。
【0041】
1.電解銅箔の製造
【0042】
【表1】
【0043】
(実施例)
表1のように、銅濃度が70〜80g/L、硫酸濃度が80〜110g/Lであるメッキ液を製造し、各種添加剤(無機金属、レベラー、光沢剤)を添加して約40〜45℃の温度、約45〜65ASDの電流密度条件で電解銅箔を製造した(ただし、必ずしもこのような範囲に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲内で適切に調節され得る)。
【0044】
ここで、無機金属としてはFe、W、Zn、Moなどが用いられ、レベラーとしてはゼラチン、コラーゲン、ポリエチレングリコール(PEG)が用いられ、光沢剤としてはビス(3‐スルホプロピル)ジスルフィド(SPS)、メルカプト‐プロパンスルホン酸(MPS)、3‐N,N‐ジメチルアミノジチオカルバモイル‐1‐プロパンスルホン酸(DPS)が用いられた。
一方、上記のような工程条件によって製造された電解銅箔を保護(防錆など)するため、表面にクロム酸塩処理を施した。
【0045】
(比較例)
表1のように、銅濃度が70〜80g/L、硫酸濃度が95〜105g/Lであるメッキ液に各種添加剤(実施例と同じ添加剤)を添加し、約45℃の温度、約50〜60ASDの電流密度条件で電解銅箔を製造した。
【0046】
2.電解銅箔の半値幅の測定及び半値幅による性能テスト
【0047】
【表2】
【0048】
(1)半値幅の測定方法
(常温での測定方法)
銅箔のX線回折分析条件:
モデル:D−8 Advance LynxEye(BRUKER社製)
本発明では以下の仕様を有する上記の装置を使用したが、X線回折分析が可能な装置であれば特に限定されない。
ターゲット:Cu
出力:40kV、40mA
波長:1.5406Å
測定範囲:20〜100deg
スキャン軸:Theta−2Theta
スキャン速度:2deg/分
上記の条件でX線回折分析を行い、得られた結果から電解銅箔の(111)面に対して現れるピークの半値幅を計算した。
【0049】
(高温での測定方法)
190℃で1時間の熱処理後、常温測定方法と同じ方法でX線回折分析を行った。分析結果に基づいて電解銅箔の(111)面に対して現れるピークの半値幅を計算した。
【0050】
(2)半値幅による効果
【0051】
(常温での効果)
図4に示されたように、1番ロールと2番ロールとの間の角度を1.5゜にしてミスアラインメント(misalignment)を人為的に生じさせた後、銅箔を進行させたときの銅箔への皺発生有無を確認した。
【0052】
表2に示されたテスト結果を見れば、特に実施例2と比較例4との比較を通じて、半値幅が約0.08以上を維持することが皺発生を防止する側面で有利であることが分かる。また、表2のテスト結果には示されていないが、半値幅が約0.15を超えれば、結晶粒が小さ過ぎる場合に該当し、銅箔の強度及び延伸率を制御し難いため、半値幅は約0.15以下に制御することが有利である。
【0053】
(高温での効果)
高温での半値幅による効果は、以下の条件で製作したリチウム二次電池を対象にし、500回の充放電試験を繰り返した後の容量保持率を測定することで把握した。このとき、リチウム二次電池の充電は、定電流定電圧(CCCV)モード、充電電圧4.3V、充電電流0.2C(5時間充電することで満充電される電流)の条件で実施し、放電は定電流(CC)モード、放電電圧3.0V、放電電流0.5C(2時間で満放電する電流)の条件で実施した。このように、繰り返して充放電した後、リチウム二次電池の容量保持率を測定した。
【0054】
表2に示されたテスト結果を見れば、特に実施例1と比較例2との結果比較を通じて、半値幅が約0.099以上に維持されることがリチウム二次電池の容量保持率の側面で有利であることが分かる。また、実施例5と比較例4との結果比較を通じて、半値幅が約0.11以下に維持されることがリチウム二次電池の容量保持率の側面で有利であることが分かる。
【0055】
リチウム二次電池の製造:
−正極板及び負極板の製造
【0056】
(正極材混合物の組成)
正極材(LiCoO):85wt%、導電材(アセチレンブラック):8wt%、バインダー(ポリフッ化ビニリデン):7wt%
【0057】
(負極混合物の組成)
負極材(グラファイトまたは炭素材):95〜98wt%、バインダー(ポリフッ化ビニリデン):2〜5wt%
【0058】
上記の材料にN‐メチルピロリドンを添加してスラリーを製造した後、それぞれアルミニウム箔からなる正極集電体及び電解銅箔からなる負極集電体の表面に塗布して溶剤を蒸発させ、圧延し一定サイズに切断して正極板及び負極板を製作した。
【0059】
−リチウム二次電池の組立て
正極板、セパレータ(親水処理した多孔質ポリエチレンフィルム)、負極板の3枚を順次積層して巻き取り、それを容器に入れて電解液を注入/密封することで円筒型電池を完成した。電池の規格は一般的な円筒型である18650型を使用した。電解液としては、エチレンカーボネート(EC)及びジメチルカーボネート(DMC)を体積比1:1に混合した溶媒に1MのLiPFを溶解させたものを使用した。
【0060】
上記の実験結果から、常温及び/または高温での半値幅が一定範囲以内に制御される場合、電解銅箔及びリチウム二次電池の生産性を向上させることができ、また充放電が繰り返されてもリチウム二次電池の容量保持率を高い水準で維持できることを明確に分かる。
【0061】
以上のように、本発明を限定された実施例と図面によって説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者によって本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0062】
10:電解銅箔
11:銅層
11a:光沢面
11b:粗面
12:保護層
図1
図2
図3
図4