【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0042】
実施例1〜14、比較例1〜8
20L容量加圧ニーダーを使用し、表1〜3の何れか1に示す配合比の配合物を、排出温度175℃の条件で溶融混練した。得られた組成物を、二軸押出機を使用し、ダイス設定温度210℃の条件でストランド状に押出し、水槽を使用して水冷し、カッティングすることにより、円柱状のペレットを得た。続いて得られたペレットを用い、加熱プレス機を使用し、温度220℃、予熱時間3分、加圧時間3分の条件で熱プレス後、直ちに温度30℃、加圧時間3分の条件で冷プレスして厚み1mmのプレスシートを得た。また同様にして2mm、3mm、6mmの各厚みのプレスシートをそれぞれ得た。以上の工程の製造性を下記の基準で評価した。また下記の試験(1)〜(8)を行った。結果を表1〜3の何れか1に示す。
〇:特に問題なく、各厚みのプレスシートを得ることができた
×:加圧ニーダーにおける溶融混練が過負荷で安定しない、造粒ができないなど、上記工程中の少なくとも何れか1において不具合があった。
【0043】
測定方法
(1)絶縁性:
JIS K6271法に従い、サンプルとして上記で得た1mm厚のプレスシートを用い、二重リング法で測定した。
(評価基準)絶縁抵抗率は10の14乗Ωcm以上を合格とした。
【0044】
(2)熱伝導性:
測定装置として京都電子工業株式会社製、「Kemtherm QTM―D3(商品名)」を使用し、サンプルとして上記で得た1mm厚のプレスシートを用い、25℃(室温)の条件で、JIS R2616に規定の熱線法により測定を行った。熱伝導の方向は試験片の厚さ方向である。
(評価基準)0.80W/(m・K)以上を合格とした。
【0045】
(3)難燃性:
UL94V0に従い測定した。サンプルには上記で得た1mm厚のプレスシートを用いた。
(評価基準)V−0水準であることを合格とした。
【0046】
(4)押出成形加工性:
40mm単軸押出機に圧縮比(CR)2.7のスクリュウ、及び7mm外径、1mm厚のチューブ成形金型を装着した装置を使用し、スクリュウ回転15r.p.m、金型出口樹脂温度230℃、引落率(得られたチューブの厚みに対する金型の厚み寸法の割合として算出する。)1.3の条件で、チューブの押出成形加工を行った。以下の基準で押出成形加工性と成形品の外観を評価した。
押出成形加工性:
○;偏肉が無く、寸法通りのものが得られる。
△;吐出ムラ(サージング)が若干認められ、部分的に偏肉が発生する。
×;吐出ムラ(サージング)が顕著に認められ、偏肉が激しい。
成形品(チューブ)の外観:
〇:チューブ表面に肌荒れ等の外観不良は認められない。
△;チューブ表面に部分的に肌荒れ等の外観不良が認められる。
×;チューブ表面に顕著な肌荒れ等の外観不良が認められる。
【0047】
(5)耐薬品性:
ヘキサフルオロリン酸リチウム水溶液(リチウム塩濃度1モル/リットル)に、上記で得た1mm厚プレスシートを、温度80℃で2時間、浸漬した後のプレスシートの状態を目視観察した。また成分(e)を含むサンプルについては、100℃で2時間浸漬する条件でも同様の試験を行った。評価基準は以下の通りである。
○:全く変化なし
△:シート形状が若干変化、もしくは膨潤が認められる、
×:シートの一部が溶解した
【0048】
(6)硬さ:
JIS K6253 (HDA 15秒後)に準拠し測定を行った。サンプルには、上記で得た6mm厚プレスシートを用いた。
(評価基準)90°未満を合格とした。
【0049】
(7)動的固体粘弾性特性:
JIS K7244−4:1999に従い、サンプルには上記で得た2mm厚プレスシートから10mm×40mmの大きさに打ち抜いたものを用い、−60℃で10分間保持し、昇温速度4℃/分で100℃まで昇温する温度プログラムで測定した。
〇:引張損失正接(tanδ)のピークが単一のピークとして−50℃〜0℃に観測される。
×:上記良好(〇)評価以外の場合。
【0050】
(8)脆化温度
JIS K7216−1980に従い測定した。サンプルには上記で得た2mm厚プレスシートからA形に打ち抜いたものを用いた。
(評価基準)−5℃以下を合格とした。
【0051】
使用した原材料
成分(a):
(a1)JSR株式会社の芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体の水素添加物(HSBR)「ダイナロン1320P(商品名)」、スチレン含有量10質量%、重量平均分子量300,000、JIS K7244−4:1999に従い測定した動的固定粘弾性特性の試験において、引張損失正接のピークが単一のピークとして−25℃近辺に観察される。
【0052】
比較成分(a’):
(a’1)デュポン・ダウ・エラストマージャパンのポリオレフィン系エラストマー樹脂(エチレン・オクテン−1ランダム共重合体)「エンゲージ8150(商品名)」。
【0053】
成分(b):
(b1)日本ポリプロ株式会社のポリプロピレン樹脂(PP)「FW4BT(商品名)」、融点139℃、メルトマスフローレート6.5g/10分。
【0054】
比較成分(b’):
(b’1)旭化成ケミカルズ株式会社の高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)「サンテックB470(商品名)」。
【0055】
成分(c):
(c1)神島化学工業株式会社の合成水酸化マグネシウム「マグシーズS−6(商品名)」、平均粒子径1.0μm、粒子表面をシラン化合物と脂肪酸とで処理。
(c2)神島化学工業株式会社の天然水酸化マグネシウム「EP3−A(商品名)」、平均粒子径7.1μm。
【0056】
比較成分(c’):
(c’1)昭和電工株式会社の水酸化アルミニウム「H42M(商品名)」、平均粒子径1.0μm、粒子表面をシラン化合物と脂肪酸とで処理。
【0057】
成分(d):
(d1)日本タルク株式会社の珪酸マグネシウム(Mg
3Si
4O
10(OH)
2)「タルクP−4(商品名)」、平均粒子径4.5μm。
(d2)神島化学工業株式会社の酸化マグネシウム「スターマグSL−WR(商品名)」。
(d3)神島化学工業株式会社の炭酸マグネシウム「MSPS(商品名)」。
(d4)電気化学工業株式会社の窒化ホウ素「SGB(商品名)」。
【0058】
成分(e):
(e1)旭化成ケミカルズ株式会社のスチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂(PPO)「ザイロンX9102(商品名)」。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
表1又は2に示すように、本発明の組成物は、難燃性、熱伝導性、電気絶縁性、耐薬品性、低温柔軟性、製造性、及び押出成形加工性をバランスよく発現しており、電池パックの保護部材として、好適に用いることができる。一方、表3に示すように、比較例は、難燃性、熱伝導性、電気絶縁性、耐薬品性、低温柔軟性、製造性、及び押出成形加工性の少なくとも何れか1に劣っており、電池パックの保護部材として用いることはできない。