特許第6263600号(P6263600)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6263600試料の熱分析及び/又は温度測定機器の較正をするための方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263600
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】試料の熱分析及び/又は温度測定機器の較正をするための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/18 20060101AFI20180104BHJP
【FI】
   G01N25/18 H
【請求項の数】5
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-236009(P2016-236009)
(22)【出願日】2016年12月5日
(65)【公開番号】特開2017-125842(P2017-125842A)
(43)【公開日】2017年7月20日
【審査請求日】2017年2月13日
(31)【優先権主張番号】10 2015 122 037.7
(32)【優先日】2015年12月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】301077552
【氏名又は名称】ネッチ ゲレーテバウ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 伸
(74)【代理人】
【識別番号】100173794
【弁理士】
【氏名又は名称】色部 暁義
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ブルナー
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー シンドラー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ リンデマン
【審査官】 北川 創
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3568304(JP,B2)
【文献】 特表2001−507126(JP,A)
【文献】 特開2014−032193(JP,A)
【文献】 特開2005−249427(JP,A)
【文献】 特開2008−304191(JP,A)
【文献】 M. Manuelian and R. Campbell,Thermal Diffusivity, Specific Heat, and Thermal Conductivity Measurment Using NETZSCH LFA 447 NanoflashTM,[online],2008年 5月16日,1-8頁,[2017年11月14日検索]、インターネット<URL:http://www.chem.mtu.edu/org/ctc/pdf/Nanoflash web page 1-29-09.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/00 − 25/72
G01K 1/00 − 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料(12)を熱分析するための方法であって、
・前記試料(12)の温度(T)を変化させる温度プログラムに従って、前記試料(12)を温度調整するステップと、
・前記温度プログラムの過程で、前記試料(12)の前記温度(T)を測定するステップと、
・前記温度プログラムの過程で、前記温度(T)の他に、前記試料(12)における少なくとも1つの物理的特性を測定するステップとを含む方法において、
前記試料(12)の前記温度(T)の測定が、
・前記試料(12)の第1表面領域を電磁励起ビームで照射し、前記照射により、前記試料(12)の第2表面領域から放出される熱放射強度を検出するステップと、
・検出された前記熱放射強度を評価することにより、前記試料(12)の温度伝導率(α)を算出するステップと、
・前記試料(12)における前記温度伝導率(α)の温度依存的な変化を表すデータを使用することにより、算出された前記温度伝導率(α)に基づいて前記試料(12)の前記温度を算出するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
試料(12‐1)を熱分析するための方法であって、
・前記試料(12‐1)の温度(T)を変化させる温度プログラムに従って、前記試料(12‐1)を温度調整するステップと、
・前記温度プログラムの過程で、前記試料(12‐1)の温度(T)を測定するステップと、
・前記温度プログラムの過程で、前記温度(T)の他に、前記試料(12‐1)における少なくとも1つの物理的特性を測定するステップとを含む方法において、
前記試料(12‐1)の前記温度(T)の測定が、
・前記試料(12‐1)に隣接するよう更なる試料(12‐2)を配置することにより、前記試料(12‐1)及び前記更なる試料(12‐2)を共に温度調整するステップと、
・前記更なる試料(12‐2)の第1表面領域を電磁励起ビームで照射し、前記照射により、前記更なる試料(12‐2)の第2表面領域から放出される熱放射強度を検出するステップと、
・検出された前記熱放射強度を評価することにより、前記更なる試料(12‐2)の温度伝導率を算出するステップと、
・前記更なる試料(12‐2)における前記温度伝導率(α)の温度依存的な変化を表すデータを使用することにより、算出された前記更なる試料(12‐2)における前記温度伝導率(α)に基づいて前記試料(12‐1)の前記温度を算出するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
試料(12)を熱分析するための装置(10)内にて、前記試料(12)の温度(T)を測定するために使用される温度測定機器(22)を較正するための方法であって、
・試料(12)を、熱分析をするための前記装置(10)内に配置するステップと、
・前記試料(12)の温度(T)を変化させる温度プログラムに従って、前記試料(12)を温度調整するステップと、
・前記温度プログラムの過程で、前記試料(12)の前記温度(T)を前記温度測定機器(22)により測定するステップと、
・前記温度プログラムの過程で、前記試料(12)の前記温度(T)を以下のサブステップ、即ち、
(i)前記試料(12)の第1表面領域を電磁励起ビームで照射し、前記照射により、前記試料(12)の第2表面領域から放出される熱放射強度を検出するサブステップと、
(ii)検出された前記熱放射強度を評価することにより、前記試料(12)の温度伝導率(α)を算出するサブステップと、
(iii)前記試料(12)における前記温度伝導率(α)の温度依存的な変化を表すデータを使用することにより、算出された前記温度伝導率(α)に基づいて前記試料(12)の前記温度(T)を算出するサブステップとにより測定するステップと、
・前記試料(12)の前記温度(T)に関する2つの測定結果を比較することにより、前記温度測定機器(22)を較正するステップとを含む方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の方法を実施するための手段(20,14,16,30,32)を備える装置。
【請求項5】
データ処理ユニット(20)上で実行され、かつ請求項1〜3の何れか一項に記載の方法を実施するプログラムコードを含むコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料を熱分析するための方法及び装置と、熱分析をする装置内で使用される温度測定機器を較正するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱分析においては、各材料から採取される試料に基づいて、材料特性が温度の関数として分析される。従って、正確な温度測定、即ち試料温度を正確に測定することが重要である。
【0003】
従来技術においては、試料温度の正確な測定を行うため、例えば熱素子又は電気抵抗温度計として構成された温度センサが既知である。このような温度センサは、試料に熱接触するよう配置されることにより、温度測定を行うことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、温度測定は、温度プログラム、即ち熱分析時における試料の温度変化によっては、誤差を生じ易いものである。これは、温度センサにより測定される温度が試料内部の温度ではなく、試料のエッジにおける温度だからである。
【0005】
このような測定誤差は、試料に直接に接触するよう配置されることができず、その代わりに温度調整可能な試料チャンバ内で試料に対して隣接するよう、即ち試料に対して離間するよう(多くのケースで使用される)温度センサであればより顕著に表れる。
【0006】
温度測定におけるこの問題は、使用される温度センサ又は該温度センサで構成される温度測定機器を適切に「較正」すれば大幅に解消することができる。このような温度測定機器又は温度センサの較正は、例えば、温度プログラムの過程で、既知の温度で溶融する1個以上の試料の温度を熱分析装置内にて測定し、測定溶融温度を、(例えば文献から)既知の溶融温度と比較すれば実現することができる。
【0007】
しかしながら、温度測定機器におけるこのような較正は、比較的コストがかかるため不利である。また、測定温度は、較正を行ったとしても必ずしも試料内部の平均温度を表しているわけではない。なぜなら、温度プログラムに応じて、試料内には多かれ少なかれ大きな温度勾配が存在する可能性があるからである。更に、温度センサの位置が僅かであっても変化した場合、較正はもはや正確ではなく、温度測定において系統誤差が生じるという欠点もある。
【0008】
これに加えて、熱分析における既知の温度測定においては、上述した較正の有無に関わらず、多くの温度センサ、例えば熱素子及び抵抗温度計は、長期的安定性を有さず、経時的なエージング及び/又は汚染によりその特性が失われるという問題もある。
【0009】
本発明の課題は、熱分析に際して、試料における温度測定の精度及び信頼性を向上させる新規な方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る第1態様は、試料を熱分析するための方法に関する。この方法は、
・試料温度を変化させる温度プログラムに従って、試料を温度調整するステップと、
・温度プログラムの過程で、試料温度を測定するステップと、
・温度プログラムの過程で、温度(T)に応じて異なる試料における少なくとも1つの物理的特性を測定するステップとを含む。
【0011】
上述した課題を解決するため、本発明に係るこの方法は、試料の温度測定が、
・試料の第1表面領域を電磁励起ビームで照射し、該照射により、試料の第2表面領域から放出される熱放射強度を検出するステップと、
・検出された熱放射強度を評価することにより、試料の温度伝導率を算出するステップと、
・試料における温度伝導率の温度依存的な変化を表すデータを使用することにより、算出された温度伝導率に基づいて試料温度を算出するステップとを含むことにより特徴付けられる。
【0012】
本発明に係る方法が含む各ステップ、即ち、試料の第1表面領域を電磁励起ビームで照射するステップと、試料の第2表面領域から放出される熱放射強度を検出するステップと、検出された熱放射強度を評価することにより、試料の温度伝導率を算出するステップとの組み合わせは、以下において「フラッシュ法」と称する。
【0013】
このように、本発明の根底にある考えは、従来技術において「フラッシュ法」とも称されることの多い手法により、試料の温度伝導率を算出し、試料における温度伝導率の温度依存的な変化を表す(例えば文献又は他の測定で既知の)データを使用することにより、算出された温度伝導率に基づいて試料温度を推定することである。
【0014】
試料の温度調整は、例えば、加熱及び/又は冷却を制御可能な試料チャンバ内にて行うことができる。測定中の試料は、試料チャンバ内における試料ホルダの収容部に収容される。
【0015】
試料チャンバ内における熱分析のための電気加熱手段及び/又は冷却手段は、例えば、プログラム制御方式の制御ユニット、例えばマイクロコントローラにより制御することができる。この場合、使用される温度プログラム、即ち温度に関する特定の時間変化は、加熱又は冷却出力を単純に制御することにより、又は加熱若しくは冷却出力を、試料の温度測定に基づいて制御することにより実現することができる。
【0016】
一実施形態において、試料の温度変化は、温度プログラムの過程で、少なくとも100 K、特に少なくとも200 Kに亘って変化させる。
【0017】
温度プログラムにより、基礎的な温度変化、即ち時間変化との関連で線形的な温度変化が提供されるか、又は時間変化との関連で他の温度変化が提供される。ほぼ一定の温度変化率を有する基礎的な温度変化の代替又は付加として、(例えば正弦波状の)温度変化も温度プログラムの過程で提供可能である。
【0018】
温度プログラムの過程においては、試料の温度測定の他に、試料における少なくとも1つの更なる物理的特性も測定される。この物理的特性としては、(例えば上述のフラッシュ法により測定される)温度伝導率に加えて、いわゆる熱機械分析又は膨張率測定において、試料に作用する力及び/又は寸法(例えば試料の長さ又は厚さ)も一例として含まれる。更に、試料表面における(光学的な)反射率も一例として含まれる。
【0019】
本明細書で使用される用語「温度伝導率」とは、温度降下に起因する熱伝導による温度及び/又は熱の空間分布に関して、時間的及び/又は空間的変化を定量化する物理的特性を表す。この場合、以下に定義される狭義の温度伝導率αが含まれる:
α=λ/p×c
ここに、
λは、試料の熱伝導率を表し、
pは、試料の密度を表し、
cは、比熱容量を表している。
【0020】
この場合、上述した定義に含まれる熱伝導率λは、温度勾配に応じた熱流密度の比例係数である:
dQ/dt=λ×A×(ΔT/L)
ここに、
dQ/dtは、熱流を表し、
Aは、熱流が流れる断面積を表し、
Lは、熱流が流れる層厚を表し、
ΔTは、厚さLを有する層におけるエッジ面の間の温度差を表している。
【0021】
ここで留意すべきことは、上記の定義による「温度伝導率α」と数学的に関連する変数、例えば上記の定義による「熱伝導率λ」は、本発明において「温度伝導率」として使用され得ることである。
【0022】
この点で本発明にとって重要なことは、検出された熱放射強度により算出された温度伝導率と、本発明による温度の算出(較正)に際して使用されるデータが表す温度伝導率とが、同じ定義又は物理的意味を有するということである。
【0023】
フラッシュ法における照射は、好適には、温度プログラムの過程において、1つ又は一連の励起パルス、例えば100 ms未満、特に50 ms未満の持続時間を有するパルスによって行われる。
【0024】
照射は、フラッシュランプ、例えば(ハロゲンフラッシュランプ)又は(好適にはパルス状に作動する)レーザーにより行うことができる。
【0025】
電磁励起ビームは、例えば、スペクトルの大部分が可視領域及び/又は赤外領域の電磁波を有することができる。
【0026】
照射は、例えば、試料の第1表面領域に亘って均一な照射電流密度により行うことができる。第1表面領域は、円形とすることができると共に、プレート状試料の平坦側に設けることができるか、又は平坦側(全体)により形成することができる。試料の第2表面領域は、好適には、第1表面領域とは同一ではなく、第1表面領域に対向するよう設けられる。
【0027】
プレート状試料が使用される場合、第1及び第2表面領域は、好適には、試料の互いに対向する平坦側に配置されるか又はこれら平坦側により形成される。
【0028】
第2表面領域から放出される熱放射強度の検出は、例えば、(好適には)イメージング検出器によって、又は(より好適には)熱放射を累積的に検出する赤外線(IR)検出器によって行うことができる。
【0029】
試料と熱放射強度を検出するために使用される検出器との間、及び/又は、試料と試料を照射するために使用される照射源(フラッシュランプ又はレーザー)との間には、光学システム、特に少なくとも1つの屈折素子及び/又は少なくとも1つの反射素子を含む光学撮像システムを設けることができる。これにより、励起ビーム及び/又は検出される熱放射に関して、フラッシュ法の精度を高めるビームガイドが有利に実現される。
【0030】
一実施形態において、本発明に係る方法は、(例えば円形の)プレート状試料に対して実施する。この場合、プレート状試料は、その表面に亘って見た場合に均一な厚さ(例えば0.1〜6 mm)を有するものとする。
【0031】
試料の材料には、金属材料又は半導体材料を使用することができる。本発明は、特に、温度伝導率αが1×10-6m2/sを超える範囲、例えば、1×10-6m2/s〜約5×10-4m2/sの範囲を有する試料において適している。
【0032】
検出された熱放射強度を評価することにより、試料における温度伝導率の算出をする場合、フラッシュ法に関する従来技術に既知の全ての方法を有利に利用することができる。温度伝導率の算出においては、原則的に、試料における少なくとも温度伝導率をモデルパラメータとして含み、かつ試料を記述する物理・数学的モデルが使用される。即ち、この物理・数学的モデルを使用すれば、時間に応じて(時間依存的に)測定される熱放射強度の変化に基づいてモデルパラメータとしての「温度伝導率」(及び/又は該温度伝導率の算出を可能にする少なくとも1つのモデルパラメータ)を、数学的曲線あてはめ(equalizing calculation、「フィット」)によって算出することができる。試料における温度伝導率の算出は、好適には、プログラム制御方式のデータ処理ユニット、特に制御ユニットにより実施される。このような制御ユニットは、例えば、熱分析をするための装置において制御可能な(全ての)素子を制御するために設けられる。
【0033】
試料における温度伝導率の温度依存的な変化を表すデータを使用することにより、算出された温度伝導率に基づいて試料温度を算出することも、プログラム制御方式のデータ処理ユニット、例えば、上述した制御ユニットにより有利に行うことができる。算出に使用されるこのユニットは、好適には、(例えば、フラッシュ法に使用される温度プログラム及び照射源の制御に必要なプログラムコードに加えて)ストレージを含み、該ストレージ内に、試料温度を算出するために必要なデータが記録される。これらデータは、例えば、(デジタル式の)「検索表」として記録することができるため、特定の温度伝導率に関連する(例えば文献から予め算出された)温度を読み出すことが可能である。
【0034】
試料の熱分析においては稀ではあるが、試料に関して算出された温度伝導率と、関連する温度とが互いに明確に割り当てられず、従って温度プログラムの過程で、同じ温度伝導率に複数の異なる温度が割り当てられることがある。この場合、試料温度の算出時に、適切な方法により試料温度の「概算」をし、この概算を基準として、正確な温度を温度伝導率に明確に割り当てれば十分である。概算をするための従来の温度測定機器とは別に、温度の概算は、温度プログラムの特性又は制御により実現することもできる。
【0035】
上述したように、試料を熱分析するための第1態様に係る方法は、
・試料温度を変化させる温度プログラムに従って、試料を温度調整するステップと、
・温度プログラムの過程で、試料の温度を測定するステップと、
・温度プログラムの過程で、温度に応じて異なる試料における少なくとも1つの物理的特性を測定するステップとを含む。
本発明に係る方法の第2態様では、試料温度の測定は、
・試料に隣接するよう更なる試料を配置することにより、試料及び更なる試料を共に温度調整するステップと、
・更なる試料の第1表面領域を電磁励起ビームで照射し、該照射により、更なる試料の第2表面領域から放出される熱放射強度を検出するステップと、
・検出された熱放射強度を評価することにより、更なる試料の温度伝導率を算出するステップと、
・更なる試料における温度伝導率の温度依存的な変化を表すデータを使用することにより、算出された温度伝導率に基づいて試料の温度を算出するステップとを含む。
【0036】
第2態様に係る方法の利点は、上述した第1態様に係る方法とは異なり、試料における温度伝導率の温度依存的な変化を表すデータが必要ないことである。
【0037】
本発明に係る第2態様における基本的な考えは、同一の温度調整において、(少なくとも)1個の「更なる試料」を「実際の」試料、即ち熱分析で分析すべき試料と共に分析することにより、更なる試料を試料温度の測定をするためのいわば手段とすることである。この場合、更なる試料における温度伝導率の温度依存的な変化が既知であるか、又は判明していれば十分である(第2態様に係る方法において、試料及び更なる試料は常に同一温度を有することが前提条件である)。
【0038】
同一の温度調整に「更なる試料」を使用すること、更なる試料における温度伝導率の温度依存性を表すデータが提供されることを別にすれば、第1態様に係る方法に関して上述した点は全て、本発明の第2態様に係る方法に関しても同様に適用することができる。このことは、特に、個々のステップを実施するための上述した装置における素子及びこれら素子の技術的特徴にも該当する。
【0039】
この場合に留意すべき唯一のことは、第2態様に係る方法にも適用されるフラッシュ法が、更なる試料(そして場合によってのみ試料)に確実に適用されることである。これにより、更なる試料を保持するために設けられる試料ホルダは、使用される励起ビーム源及び熱放射検出器に関して、照射及び検出が更なる試料(にのみ)行われるよう配置することが可能となる。
【0040】
第2態様に係る方法の更なる発展形態においては、温度プログラムの過程で、試料チェンジャーにより、同一の温度調整で使用される複数個の試料の間で(好適には自動制御可能な)交換が行われるため、(1個の)照射源及び(1個の)熱放射検出器を使用し、選択された試料を順次にフラッシュ法に基づいて分析することができる。この実施形態の実現においては、いわゆる試料チェンジャー、例えばリボルバのように回転可能な試料ホルダが使用される。回転可能な試料ホルダは、複数個の試料を同時に収容するための複数の収容部を有し、これら複数個の試料の1個を、試料チェンジャーの回転位置に応じて、照射装置及び検出器の間のビーム経路内に移動させることができる。
【0041】
このような試料チェンジャーを使用すれば、同一の測定過程又は温度プログラムで、(フラッシュ法を含む)熱分析を(少なくとも)1個の「試料」に関して有利に分析することができると共に、フラッシュ法を実施するための手段を使用して(少なくとも)1個の「更なる試料」をフラッシュ法で分析することにより、(少なくとも)1個の試料温度を測定することができる。
【0042】
試料チェンジャーの制御は、例えば、上述したプログラム制御方式の制御ユニットにより行うことができる。
【0043】
(同じ材料又は異なる材料)よりなる「更なる試料」が複数個使用されると共に、場合によって異なるデータが使用されるフラッシュ法に基づいて「試料の」温度が算出されるケースにおいては、試料温度の算出時に有利な冗長性が得られる。この冗長性に基づいて最終的に算出される温度は、例えば、「更なる試料」における個々の測定結果による平均値として算出される。
【0044】
本発明に係る第3態様においては、試料を熱分析するための装置内にて、試料温度を測定するために使用される(例えば従来の)温度測定機器を較正するための方法が提供される。この方法は、
・試料を、熱分析をするための装置内に配置するステップと、
・試料温度を変化させる温度プログラムに従って、試料を温度調整するステップと、
・温度プログラムの過程で、試料温度を測定機器により測定するステップと、
・温度プログラムの過程で、試料温度を以下のサブステップ、即ち、
(i)試料の第1表面領域を電磁励起ビームで照射し、該照射により、試料の第2表面領域から放出される熱放射強度を検出するサブステップと、
(ii)検出された熱放射強度を評価することにより、試料の温度伝導率を算出するサブステップと、
(iii)試料における温度伝導率の温度依存的な変化を表すデータを使用することにより、算出された温度伝導率に基づいて試料温度を算出するサブステップとにより測定するステップと、
・試料温度に関する2つの測定結果を比較することにより、温度測定機器を較正するステップとを含む。
【0045】
本発明の第3態様に係る方法は、試料温度を測定するための温度測定機器を使用する点、並びに温度測定機器を較正するための最終ステップを実施する点以外は、上述した第1及び第2態様に係る方法に含まれるステップと同様のステップを含む。これらステップは、有利に実施することができる。
【0046】
従って、例えば、試料を収容するための1個の収容部を有すると共に、装置における温度調整可能な試料チャンバ内に配置された試料ホルダを使用すれば試料を配置することができる。この試料に基づいて温度測定機器の較正をする場合、該試料における温度伝導率の温度依存的な変化を表すデータが必要になる。ただし、温度測定機器が既に較正されていれば、(上記データを必要とすることなく)同じ装置により、(既知又は未知の)試料を熱分析することができる。
【0047】
代替的に、試料の交換は、例えば、少なくとも2つ以上の収容部を有すると共に、制御可能な試料チェンジャーにより行うことができる。この代案では、複数個の試料を(1つ)の測定過程(温度プログラム)で熱分析することができるため有利である。この場合、既に較正された温度測定機器を温度プログラムの過程で使用することもできるし、又は温度測定機器の較正がまだ行われていないか或いは較正した後に時間が経ち過ぎている場合には、温度測定機器を較正することもできる(この較正では、複数個の試料の少なくとも1個が、フラッシュ法による付加的な温度測定に使用される試料として、温度プログラムが終了した後に温度測定機器を後発的に較正するために使用される)。
【0048】
本発明に係る第4態様においては、試料の熱分析及び/又は温度測定機器を較正するための手段を備える装置が提供される。
【0049】
これら手段(装置における素子)の具体的な構成に関しては、上述した実施形態の全てが包含される。
【0050】
熱分析をするための装置の例示的な実施形態において、該装置は、
・試料チャンバを備え、該チャンバ内に収容された試料ホルダにより(少なくとも)1個の試料がチャンバ内に配置され、
・加熱手段及び/又は冷却手段を含む温度調整手段を備え、これにより試料温度を経時的に変化させる温度プログラムに従って試料が温度調整され、
・温度プログラムの過程で、試料温度の他に、試料における少なくとも1つの物理的特性を測定するための(任意の)温度測定機器を備え、
・試料の第1表面領域を電磁励起ビームで照射するための照射源を備え、
・照射に起因して、試料の第2表面領域から放出される熱放射強度を検出する検出器を備え、
・検出された熱放射強度を評価することにより、試料の温度伝導率を算出するための評価ユニット、特に、(例えば装置における制御可能な全素子を制御する制御ユニットの一部として構成された)プログラム制御方式の評価ユニットを備え、該評価ユニットは、好適には、(少なくとも1個の)試料における温度伝導率の温度依存的な変化を表すデータを記録するためのストレージを含むと共に、このデータを使用することにより、算出された温度伝導率に基づいて試料温度が算出されるよう構成される。
【0051】
本発明の第1態様に係る方法は、特に装置におけるこの実施形態により実施することができる。
【0052】
(第1態様に係る方法を実施するための代替又は付加として)第2態様に係る方法を実施するためには、(少なくとも)1個の「更なる試料」を収容するための更なる試料ホルダ、及び/又は、複数の収容部を有するマルチプル試料ホルダ(特に変位可能又は回転可能な試料チェンジャー)が必要である。更に、(少なくとも)1個の「更なる試料」おいては、照射源、検出器及び評価ユニットにより、フラッシュ法を適用して試料温度の算出が可能でなければならない。
【0053】
(第1態様及び/又は第2態様に係る方法を実施するための代替又は付加として)第3態様に係る方法を実施するためには、装置は、較正すべき温度測定機器(例えば、少なくとも1個の熱素子及び/又は少なくとも1個の抵抗温度計)を必要とする。原則的には、(1個の)試料を収容するための1個の試料ホルダがあれば十分ではあるが、第3態様に係る方法においても、マルチプル試料ホルダ又は制御可能な試料チェンジャーの使用が有利である。
【0054】
本発明に係る第5態様においては、プログラムコードを含むコンピュータプログラム製品が提供される。このプログラムコードにより、本明細書に記載の方法がデータ処理ユニット上、特に、装置における上述の制御ユニット上で実行される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】試料を熱分析するための例示的な実施形態に係る装置を示す説明図である。
図2】温度に応じた温度伝導率α(文献値)を異なる材料に関して示すプロット図である。
図3】温度に応じた温度伝導率α(文献値)をシリコンに関して両対数で示すプロット図である。
図4】温度に応じた温度測定の不確実さを、シリコンよりなる試料に対してフラッシュ法を用いたケースに関して示すプロット図である。
図5】試料を熱分析するための他の例示的な実施形態に係る装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、本発明を図示の例示的な実施形態に基づいて詳述する。
【0057】
図1は、試料12の熱分析をするための装置10の略図を示す。装置10は、試料チャンバ14を備え、該チャンバ14内には、試料12を収容するための試料ホルダ16が設けられている。図示の装置10は、試料12の温度Tが変化する所定の温度プログラムに従って試料12を温度調整するために、電気的加熱手段18を備える。電気的加熱手段18は、所定の温度プログラムに従って装置10における中央制御ユニット20により制御される。
【0058】
制御ユニット20は、プログラム制御方式の制御ユニット(マイクロコントローラ)として構成され、ヒューマン・マシンインターフェース(図示せず)を有する。使用者は、インターフェースにより、温度プログラムに関する詳細情報、例えば開始温度及び終了温度を設定することができるだけでなく、装置10が備える以下に記載の素子を制御するための詳細情報を設定することができる。
【0059】
装置10は、温度プログラムの過程で試料12の温度Tを測定するために、試料チャンバ14内に収容された熱素子22を備える。制御ユニット20は、熱素子22により、試料温度Tの測定を行い、試料チャンバ14内における温度、従って試料温度Tに関する時間分解データが制御ユニット20内のデジタルストレージに記録される。
【0060】
試料12に対して行われる熱分析は、試料12に関して、(試料温度Tの他に)少なくとも1つの物理的特性を、試料温度Tの関数として特定するために寄与するものである。
【0061】
このような物理的特性の測定において、図1に例示的にのみ示す光送信機24及び光検出器26は、やはり制御ユニット20に接続されることにより、物理的特性(例えば、光学的反射率、試料の長さ変化)が測定され、その時間物理的特性に関する分解データが制御ユニット20のストレージに記録される。
【0062】
素子24及び26で構成された図示の測定機器は、単なる例示にすぎない。即ち、熱分析に関する従来既知の測定機器は全て、本発明の測定機器(例えば、試料に作用する力の測定又は試料質量の測定に使用される測定機器)との関連で使用することができる。
【0063】
温度プログラムの実行時又は終了時に、試料における物理的特性の温度依存性又は温度依存的な変化に関するデータを生成し、制御ユニット20にそのデータを記録し、更なる評価を行うために使用者に提供することができる。
【0064】
装置10において、基本的には、熱素子22により行われる試料温度Tの測定精度には問題がある。装置10を使用する場合には、温度測定機器の較正を随時行い(及び/又は温度プログラムの変更後に行い)、これにより温度測定機器による温度測定精度を高めることが有利であることが判明している。
【0065】
装置10は、温度測定の較正を行うため、試料ホルダ16に保持された試料に「フラッシュ法」を実施するための手段を備える。これら手段は、試料の第1側(図1では下側)を電磁励起パルスにより加熱する照射源30(図示の実施形態では、例えば制御ユニット20によりパルス状に制御されるレーザー)と、試料の第1側とは反対側の試料の第2側(図1では上側)にて、照射によって放出される熱放射強度を検出するための検出器32とを含む。
【0066】
検出器32(図示の実施形態では赤外線検出器)は、図示のように制御ユニット20に接続されることにより、熱放射強度を表す検出信号が制御ユニット20に伝達される。素子30,32に基づくフラッシュ法は、以下のとおり実施される。まず、温度伝導率αによる温度依存的な変化が既知であるプレート状試料が試料ホルダ16に配置される。次いで、加熱手段18と接続された制御ユニット20により、所定の温度プログラムに従って試料チャンバ14内で異なる温度が生成され、これら温度が熱素子22で測定される。この所定の温度プログラムには、特に、較正後に、試料12を熱分析するための温度プログラムが該当する。「温度測定基準」として機能する試料は、温度プログラムの過程で、照射源30による短い照射パルスにより下側から加熱される。この場合、各照射パルスにより、一定の時間的遅延後に、試料上側の温度が上昇する。検出器22により測定される一時的な温度上昇に対して、制御ユニット22に記録されているか又は使用者が予め設定できる適切な数学的モデルを適用すると共に、試料厚さを考慮すれば、試料の温度伝導率αが直接に得られる。
【0067】
このように、測定された熱放射強度は、制御ユニット20にて評価されることにより、(照射パルスによって生じる各温度上昇に関して)試料の温度伝導率αが算出され、熱素子22によって同時に測定された温度Tに関連付けられて記録される。更に、試料における温度伝導率の温度依存的な変化を表すデータを使用することにより、制御ユニット20で試料温度Tに関するデータも得られる。これにより、一方では、熱素子22として構成される温度測定機器により、他方では、フラッシュ法に基づく温度測定により、温度調整の過程で、試料温度Tに関して複数の測定結果が得られる。その後、熱素子22として構成される温度測定機器の較正が、フラッシュ法によって算出された測定結果に基づいて行われるため、後続する温度測定では、熱素子22により、試料温度Tに関してより正確な測定結果を得ることができる。具体的に、図示の実施形態における較正においては、熱素子22によって提供される熱電電圧が、対応する温度に変換される。このように本発明において、温度測定機器の較正は、温度伝導率αにおける温度依存的な変化が既知の試料を測定し、その測定結果により、試料内部の温度を推定するという考えに基づいている。
【0068】
有利には、フラッシュ法を適用すれば、より僅かな系統誤差でより正確な試料温度Tが測定されるのみならず、より大きなロバスト性及び長期的安定性が保証される。
【0069】
図1の実施形態とは異なり、試料における上述した物理的特性の温度依存的な測定をするための測定機器は、フラッシュ法を実施するために(既に設けられている)手段、即ち照射源30及び検出器32で構成してもよい。この場合に装置10は、例えば、温度伝導率αの温度依存的な測定に関して、異なる試料12に使用することができる。この代案においても、素子30,32が接続された制御ユニット22は、熱素子22として構成される温度測定機器の較正をするための上述した方法を実施できるよう構成可能である。
【0070】
図1の実施形態とは異なり、「従来の」温度測定機器(この場合熱素子22)は、装置10に全く設けなくてもよい。このような実施形態は、図5を参照して以下に記載する。
【0071】
以下、本発明に使用され、かつ(素子30,32,20で構成される)「温度伝導率を測定するための温度計(以下、温度伝導率測定計とも称する)」の精度に関して説明する。
【0072】
この精度は、不確実さ「u」に基づいて考察される。フラッシュ法によって算出される試料温度Tの不確実さu(T)は、以下のとおり表すことができる:
u(T)=(dα/dT)-1×u(α) (方程式1)
ここに、
u(T)は、温度Tの不確実さを表し、
(dα/dT)は、温度依存的な温度伝導率αの上昇を表している。
【0073】
方程式1から明らかなように、予想される不確実さu(T)は、温度Tに対する温度伝導率αの依存度が大きいほど小さい。この点は、多くの材料において、温度Tが小さくなるほど顕著になる。図2では、幾つかの例示的な材料に基づいてこの点を示す。
【0074】
図2は、幾つかの異なる材料M1(タングステン)、M2(モリブデン(タイプ「SRM781」))、M3(グラファイト)、M4(鉄)及びM5(シリコン)に関して、温度Tに応じた温度伝導率αのプロットを示す。
【0075】
図2おいて例示的に記載した材料M1〜M5は全て、本発明の使用に適しており、特に1000 K未満の温度Tで適している。
【0076】
図3は、温度Tに応じたシリコン(材料M5)の温度伝導率αを、より広い温度範囲に関して両対数のプロットで再度示す。
【0077】
この場合、図3のプロットから明らかなように、フラッシュ法によって温度を測定する場合にシリコンを使用することは、極めて小さな温度Tまで有利である。図3において、温度伝導率αは、室温(約300 K)〜10 Kの間で温度が低下するに伴い、約5桁分上昇している。
【0078】
従って、一実施形態においては、温度測定に使用される材料の試料としてシリコンが用いられる。
【0079】
上述した方程式1に再度言及すると、温度伝導率αの不確実さu(α)が小さいほど、不確実さu(T)が小さいことが明らかである。フラッシュ法によって測定した温度伝導率αmessと、文献値αlitとを比較して試料温度Tを算出(較正)した場合、u(α)に関して以下の式が成り立つ:
【数1】
(方程式2)
ここに、
u(α)litは、温度伝導率αlit(文献値)の不確実さを表し、
u(α)messは、温度伝導率αmess(測定値)の不確実さを表している。
【0080】
文献値の不確実さu(α)litは、典型的には5%〜15%の範囲にあるのに対して、測定した温度伝導率の不確実さu(α)messは、典型的には約3%の範囲にある。
【0081】
この場合、「温度伝導率測定計」で測定された不確実さu(α)の全体の大部分は、温度伝導率αの文献値(又は本発明では、「データ」によって表される値)による不確実さu(α)litに基づく。
【0082】
本発明に係る他の実施形態において、温度伝導率測定計は、較正済みの他の温度計によって較正される。
【0083】
他の実施形態においては、較正済みの他の温度計により、複数個の同じタイプの温度伝導率測定計が較正される。これにより、複数個の温度伝導率測定計における平均値を表す「マスター曲線」<α(T)>が得られる。これにより、系統的な不確実さ、例えば試料厚さの不確実さによるものだけでなく、温度伝導率測定が連続的に再現されることによる不確実さを低減することができる。このような実施形態において、不確実さu(α)は、以下の式のとおり低減される:
【数2】
(方程式3)
この場合、u(α)kalは、温度伝導率測定計に対する較正の不確実さの全体を表し、u(α)reprは、温度伝導率測定計を使用した読み取りに際して、温度伝導率測定が連続的に再現されることによる不確実さを表している。他の実施形態において、u(α)reprについては、複数個の温度伝導率測定計を使用した読み取りに際して平均値を求めることにより(この点は、制御可能な試料チェンジャー、特に、装置における制御ユニットで自動制御可能な試料チェンジャーを使用すれば実現可能である)、及び/又は、1個の温度伝導率測定計で複数回の測定を実施して平均値を求めることにより低減することができる。
【0084】
これにより、u(α)を、測定値α全体の約1%の値に留めることが可能である。u(α)=1%×αであると仮定すれば、(フラッシュ法が適用される試料の材料である)「温度計材料」としてシリコンを使用した場合の温度伝導率の不確実さu(T)は、図4の例に示すとおりである。
【0085】
この場合、図4のプロットから明らかなように、室温(約300 K)未満の温度範囲では、不確実さu(T)を1 K未満に抑えることができる。
【0086】
図5は、試料を熱分析するための装置10を、修正を加えた例示的な実施形態に従って示す。
【0087】
図1に係る実施形態に対する第1の(任意の)修正点は、装置10が温度調整可能な試料チャンバ14内に、制御可能なマルチプル試料ホルダ16’を備え、そのホルダ16’が複数個の試料を収容するための複数個の収容部を有することである。図5には、2個の試料12-1,12-2を収容するための収容部が例示されている。自動制御可能な試料チェンジャー16’は、温度プログラムの過程で、電気駆動部40により制御可能(この場合回転可能)であるため、試料12-1,12-2の何れかを、照射源30及び検出器32で構成される「温度伝導率測定計」のビーム経路内に移動させることができる。
【0088】
図5に係る実施形態における装置10の第2の(任意の)修正点は、従来の温度測定機器(図1の熱素子22を参照)の配置及び作動が省略されていることである。この場合、従来の温度測定機器の代わりに、通常の温度プログラムの過程で温度を測定するために、試料12-1,12-2の少なくとも1個を、自動試料チェンジャー16’により、素子30及び32で構成される温度伝導率測定計によるビーム経路内に移動させることにより、上述したように試料チャンバ14内における実際の温度Tが算出される。
【0089】
試料収容部が2つしかない図示のマルチプル試料ホルダ16’の代案として、試料ホルダは、少なくとも3個(又はそれ以上)の試料を収容するよう構成してもよい。この構成には、例えば、温度伝導率の温度依存性が既知である複数個の「更なる試料」を、温度伝導率の温度依存性が未知である試料を熱分析する際に、温度伝導率測定計として使用できるという利点がある。この場合、複数個の更なる試料により、温度測定における有利な冗長性が得られる(即ち、温度測定における個別の測定結果の平均値を、算出された温度として使用できる)。
図1
図2
図3
図4
図5