(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0030】
用語「a」、「an」および「the」および要素を記述する文脈における(特に、以下の請求項の文脈における)同様の指示対象の使用は、特に指示しないか文脈と明らかに矛盾しない限り、単数と複数の両方をカバーするものと理解すべきである。本明細書における数値範囲の記述は、特に指示しない限り、範囲内に入る個々の値に個別に言及する簡便な方法として機能することを単に意図したものであり、そして各値は個別に記載されているかのように、明細書に取り込まれる。本明細書に記載した全ての方法は、特に指示がないかまたは明らかに文脈と矛盾しない限り、適切な順序で実施することができる。なんらか、またはすべての例、または例となる言語(例、「such as」)の使用は、実施態様をより良く明らかにすることを単に意図したものであり、特に記載しない限りクレームの範囲に限定を貸すものではない。明細書のどの言語もクレームしていない要素が必須であることを示していると理解すべきではない。
【0031】
「comprising」の表現は、「含むが、これに限定されない」ことを意味する。従って、他の言及していない物質、添加物、担体、または工程が存在してもよい。特に特定しない限り、「a」または「an」は1以上を意味する。
【0032】
特に指示しない限り、明細書や特許請求の範囲で用いられる成分の量、反応条件などを表す全ての数は、全ての例において用語「約」によって修飾されていると理解すべきである。従って、逆に指示されていないと、以下の明細書と添付された特許請求の範囲に記載されている数字パラメータは近似値である。各数字パラメータは少なくとも記載されている重要な数字の数に照らし、通常の丸めるテクニックを適用して、理解すべきである。用語「約」が、範囲を含めて、数字指定の前、例、温度、時間、量、および濃度の前に用いられた場合、(+)または(−)10%、5%または1%だけ変化してもよい近似値を示す。
【0033】
本明細書において、C
1−12、C
1−8、またはC
1−6などのC
m−nは、グループの前に用いられた場合、そのグループがm〜nこの炭素原子を含むことをいう。
【0034】
用語「アルコキシ」は−O−アルキルをいう。
【0035】
本明細書において、「ハロ」または「ハロゲン」または「ハライド」もフルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードをいう。
【0036】
用語「アルキル」は、1〜12個の炭素原子(即ち、C
1−C
12アルキル)または1〜8個の炭素原子(即ち、C
1−C
8アルキル)または1〜4個の炭素原子を持つ、一価の飽和脂肪族ヒドロカルビル基をいう。この用語は、例によって、メチル(CH
3−)、エチル(CH
3CH
2−),n−プロピル(CH
3CH
2CH
2−),イソプロピル((CH
3)
2CH−),n−ブチル(CH
3CH
2CH
2CH
2−),イソブチル((CH
3)
2CHCH
2−),sec−ブチル((CH
3)(CH
3CH
2)CH−),t−ブチル((CH
3)
3C−)、n−ペンチル(CH
3CH
2CH
2CH
2CH
2−),およびネオペンチル((CH
3)
3CCH
2−)などの直鎖および分岐したヒドロカルビル基を含む。
【0037】
用語「アリール」は、6−10個の環炭素原子を持つ一価の芳香族単環式または二環式環をいう。アリールの例としては、フェニルおよびナフチルが挙げられる。縮合する環は芳香性であっても、芳香性でなくてもよいが、結合点は芳香族炭素原子である、
【0038】
置換基と変数の組合せは安定な化合物を形成するものに限られる。本明細書において、用語「安定な」は、製造するのに十分な安定性を有し、そして化合物の完全性を十分な期間維持するため、本明細書で詳述する目的に有用である化合物をいう。
【0039】
本明細書では、用語「プロドラッグ」は、加水分解し、酸化し、もしくは生物学条件下(in vitroまたはin vivo)で反応して活性化合物を与えることができる化合物をいう。プロドラッグの例としては、これらに限定されないが、生物加水分解性アミド、生物加水分解性エステル、生物加水分解性カルバメート、生物加水分解性炭酸塩、生物加水分解性ウレイド、および生物加水分解性リン酸塩アナログ(例、モノリン酸塩、二リン酸塩、酸リン酸塩)などの生物加水分解性基を含む化合物の誘導体が挙げられる。
【0040】
本明細書では、「水和物」は水分子が一定の比率で化合物複合体構造の一体部分として結合している化合物の形態をいう。
【0041】
本明細書では、「溶媒和物」は溶媒分子が一定の比率で化合物複合体構造の一体部分として結合している化合物の形態をいう。
【0042】
「薬学的に許容される」とは、本明細書において、一般に安全で、毒性がなく、生物的にも他の点でも望ましくないものではなく、人への医薬用途だけでなく家畜への使用に対しても有用である医薬組成物を製造するのに有用であることを意味する。
【0043】
「薬学的に許容される塩」とは、上記の定義のように薬学的に許容され、そして望ましい薬理学的活性を持っている塩を意味する。そのような塩としては、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、硫酸、リン酸、酢酸、グリコール酸、マレイン酸、マロン酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、アスコルビン酸などの有機および無機酸と形成される酸付加塩が挙げられる。塩基付加塩は、ナトリウム、アンモニア、カリウム、カルシウム、エタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルグルカミン、コリンなどの有機および無機塩基で形成されてもよい。本明細書のいずれかの式の化合物または薬学的に許容される塩が挙げられる。
【0044】
その構造に基づいて、フレーズ「薬学的に許容される塩」は、本明細書では、化合物の薬学的に許容される有機または無機酸または塩基の塩をいう。代表的な薬学的に許容される塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類塩、アンモニウム塩、水溶性および水不溶性塩、例えば酢酸塩、アムソネート(4,4-ジアミノスチルベン-2,2-ジスルホン酸塩)、ベンゼンスルホン酸塩、ベンゾナート、炭酸水素塩、硫酸水素塩、酒石酸水素塩、ホウ酸塩、臭化物、酪酸塩、カルシウム、エデト酸カルシウム、カンシラート、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、クラブラリエート(clavulariate)、ジヒドロクロリド、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストレート、エシレート、フマレート、グルセプテート、グルコネート、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩化水素酸塩、ヒドロキシナフトエート、ヨウ化物、イソチオネート、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、臭化メチル、硝酸メチル、硫酸メチル、ムチン酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、N-メチルグルカミンアンモニウム塩、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩, オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩(1,1-メテン-ビス-2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸塩、アインボネート)、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ピクリン酸塩、ポリガラクツロ酸塩、プロピオン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩規制酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、スルホサリチル酸塩、スラメート、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクレート、トシレート、トリエチオダイド、および吉草酸塩などが挙げられる。
【0045】
本明細書において、「保護する基(protecting group)」または「保護基(protective group)」は技術分野で公知のように使用し、Greene, Protective Groups in Organic Synthesisにも記載されている。
【0046】
本明細書において、「ヒドロキシル保護基」または「ヒドロキシルを保護する基」は、T. W. Greene, Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley and Sons, 1991 (以下、 “Greene, Protective Groups in Organic Synthesis”)において定義されているようなアルコールまたはヒドロキシルを保護する基について一般的に理解されている定義をいう。
【0047】
本明細書において、「チオール保護基」または「チオールを保護する基」は、T. W. Greene, Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley and Sons, 1991 (以下、 “Greene, Protective Groups in Organic Synthesis”)において定義されているようなチオール基の保護について一般的に理解されている定義をいう。
【0048】
本明細書において、「酸保護基」または「酸を保護する基」は、T. W. Greene, Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley and Sons, 1991 (以下、 “Greene, Protective Groups in Organic Synthesis”)において定義されているようなカルボン酸基の保護について一般的に理解されている定義をいう。
【0049】
本明細書において、「アミン保護基」または「アミンを保護する基」は、T. W. Greene, Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley and Sons, 1991 (以下、 “Greene, Protective Groups in Organic Synthesis”)において定義されているようなアミン基の保護について一般的に理解されている定義をいう。
【0050】
本明細書において、実質的に純粋な化合物または異性体とは、一つの異性体が得られた異性体混合物の90%であり、好ましくは得られた異性体混合物の95%であり、またはより好ましくは得られた異性体混合物の98%であり、さらにより好ましくは得られた異性体混合物の99%であり、そして最も好ましくは得られた異性体混合物の99%以上であることをいう。
【0051】
一つの態様において、プロスタサイクリン誘導体を製造する方法を提供する。いくつかの実施態様におけるそのような誘導体としては、トレプロスチニルおよびベラプロストの誘導体が挙げられる。この方法はプロスタサイクリン誘導体の製造に有用な多くの中間体化合物の製造も含んでいる。
【0052】
一つの実施態様は、キラルリンカーチオールプロスタサイクリン誘導体およびPEG化されたプロスタサイクリン誘導体の製造方法を提供する。キラルリンカーチオールは、PEG化されたトレプロスチニル(PEG UT-15)やPEG化されたベラプロストなどのPEG化されたプロスタサイクリンの製造に用いられるコアとなる出発物質である。PEG化されたトレプロスチニル(PEG UT-15)やPEG化されたベラプロストなどのPEG化されたプロスタサイクリンは徐放製剤に用いてもよい。例えば、PEG UT-15はプロスタサイクリン類縁体トレプロスチニルの「徐放性」製剤に用いてもよい。一時的なリンカーチオール(TransCon linker)を介して高分子担体に結合したトレプロスチニルは、それを必要とする人間などの対象に投与された後のin vivo半減期の延長に導く。そのような投与は、例えば対象の体への皮下注射であってもよい。修飾されていないトレプロスチニルが、生理的pHおよび温度下でリンカーの加水分解により放出される。トレプロスチニルは、そのヒドロキシル基の一つでリンカーに結合し、そしてリンカーはチオスクシンイミド基を介してPEG担体に結合している。一つの実施態様において、トレプロスチニルは患者に皮下注射した後にPeg UT-15から放出されることを目的としている。製造方法は目的化合物を生産するためのはるかに効率的で商業的に実行可能な製造方法である。ペグ化されたベラプロストはプロスタサイクリン類縁体ベラプロストの「徐放性」製剤に用いてもよい。一時的なリンカーチオール(TransCon linker)を介して高分子担体に結合したベラプロストは、それを必要とする人間などの対象に投与された後のin vivo半減期の延長に導く。
【0053】
いくつかの実施態様において、ペグ化されたトレプロスチニルやペグ化されたベラプロストなどのペグ化されたプロスタサイクリンの「徐放性」製剤は、少なくとも12時間、または少なくとも15時間、または少なくとも18時間、または少なくとも21時間、または少なくとも24時間、または少なくとも27時間、または少なくとも30時間、または少なくとも36時間、または少なくとも42時間、または少なくとも48時間、または少なくとも54時間、または少なくとも60時間、または少なくとも72時間、または少なくとも84時間、または少なくとも96時間、または少なくとも5日間、または少なくとも6日間、または少なくとも7日間、または少なくとも8日間、または少なくとも9日間、または少なくとも10日間、または少なくとも11日間、または少なくとも12日間、または少なくとも13日間の放出半減期を持っていてもよい。いくつかの実施態様において、ペグ化されたトレプロスチニルやペグ化されたベラプロストなどのペグ化されたプロスタサイクリンの「徐放性」製剤は、水溶液または緩衝液中で、少なくとも12時間、または少なくとも15時間、または少なくとも18時間、または少なくとも21時間、または少なくとも24時間、または少なくとも27時間、または少なくとも30時間、または少なくとも36時間、または少なくとも42時間、または少なくとも48時間、または少なくとも54時間、または少なくとも60時間、または少なくとも72時間、または少なくとも84時間、または少なくとも96時間、または少なくとも5日間、または少なくとも6日間、または少なくとも7日間、または少なくとも8日間、または少なくとも9日間、または少なくとも10日間、または少なくとも11日間、または少なくとも12日間、または少なくとも13日間の放出半減期を持っていてもよい。いくつかの実施態様において、ペグ化されたトレプロスチニルやペグ化されたベラプロストなどのペグ化されたプロスタサイクリンの「徐放性」製剤は、人間などの哺乳類の血漿である血漿中で少なくとも12時間、または少なくとも15時間、または少なくとも18時間、または少なくとも21時間、または少なくとも24時間、または少なくとも27時間、または少なくとも30時間、または少なくとも36時間、または少なくとも42時間、または少なくとも48時間、または少なくとも54時間、または少なくとも60時間、または少なくとも72時間、または少なくとも84時間、または少なくとも96時間、または少なくとも5日間、または少なくとも6日間、または少なくとも7日間、または少なくとも8日間、または少なくとも9日間、または少なくとも10日間、または少なくとも11日間、または少なくとも12日間、または少なくとも13日間の放出半減期を持っていてもよい。
【0054】
本発明の製法はペグ化されたトレプロスチニルやペグ化されたベラプロストなどのペグ化されたプロスタサイクリンをより大規模に製造することを可能にする。例えば、いくつかの実施態様において、本発明の製法はペグ化されたトレプロスチニルやペグ化されたベラプロストなどのペグ化されたプロスタサイクリンの少なくとも5g、または少なくとも10g、または少なくとも20g、または少なくとも30g、または少なくとも40g、または少なくとも50g、または少なくとも60g、または少なくとも70g、または少なくとも80g、または少なくとも90g、または少なくとも100g、または少なくとも110g、または少なくとも120g、または少なくとも130g、または少なくとも140g、または少なくとも150g、または少なくとも160g、または少なくとも170g、または少なくとも180g、または少なくとも190g、または少なくとも200gを製造することができる。
【0055】
一つの実施態様は式Iの化合物、またはその水和物、溶媒和物、プロドラッグ、または薬学的に許容される塩の製造法を提供する。
【0056】
【化25】
式中、
XはOまたはCH
2であり;
ZはOまたはCH
2であり;
Lは
【化26】
であり;
pは0または1であり;
rは1−8であり;
tは1,2または3であり;そして
wは1,2または3である。
【0057】
いくつかの実施態様において、XはOであり、wは1であり、rは6であり、tは2であり、そしてLは
【化27】
である。
【0058】
いくつかの実施態様において、XはCH
2であり、wは2であり、rは6であり、tは2であり、そしてLは
【化28】
である。
【0059】
一つの実施態様において、式Iの化合物は式IAを有している。
【化29】
【0060】
他の実施態様において、式Iの化合物は式IBを有している。
【化30】
【0061】
他の実施態様は式IIの化合物、またはその水和物、溶媒和物、プロドラッグ、または薬学的に許容される塩の製造法を提供する。
【化31】
式中、Z、L、p、r、tおよびwは、本明細書で定義した通りである。
【0062】
一つの実施態様において、式IIの化合物は式IIAを有している。
【化32】
【0063】
他の実施態様において、式IIの化合物は式IIBを有している。
【化33】
【0064】
一つの実施態様は式IIIのメソ無水物から出発して、式Iの化合物、その水和物、溶媒和物、プロドラッグ、または薬学的に許容される塩の製造法を提供する。
【化34】
【0065】
一つの実施態様において、式IIIのメソ無水物はキラルリガンドの存在下で式IVのエステル化合物と直接カップリングして、式Vの化合物を提供することができる。
【化35】
式中、L、X、Z、p、w、およびR
1は、本明細書で定義した通りである。
【0066】
適切なキラルリガンドとしては、これらに限定されないが、キニン、キニジン、シンコニン、シンコニジン、ヒドロキニン、エピキニジン、エピシンコニジン、エピシンコニン、およびエピキニン、またはそれらの誘導体が挙げられる。いくつかの実施態様において、キラルリガンドはキニンまたはキニジン誘導体である。いくつかの実施態様において、キラルリガンドはヒドロキニン アントラキノン-1,4-ジイル ジエーテル ((DHQ)
2AQN)、ヒドロキニジン アントラキノン-1,4-ジイル ジエーテル ((DHQD)
2AQN)、ヒドロキニン1,4-フタラジンジイルジエーテル((DHQ)
2PHAL)、ヒドロキニジン1,4-フタラジンジイルジエーテル((DHQD)
2PHAL)、β-イソキニジン(β-IQD)などから選択される。一つの実施態様において、キラルリガンドは(DHQ)
2AQNまたは(DHQD)
2AQNである。
【0067】
いくつかの実施態様において、キラル化合物の存在下で式IIIのメソ無水物を式IVのエステル化合物とカップリングさせて式Vの化合物を生成させるための溶媒はアルコールであってもよい。適切な溶媒は当業者に明らかであるが、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、シクロヘキサノール、アリルアルコール、ベンジルアルコール、メトキシベンジルアルコール、ニトロベンジルアルコール、クロロベンジルアルコール、ジフェニルメタノール、シクロヘキシルメチルアルコール、シンナミルアルコールなどが挙げられるが、これらに限定されない。実例となる実施態様においては、アルコールはベンジルアルコールである。いくつかの実施態様において、キラル剤の存在下に式IIIのメソ無水物を式IVのエステル化合物とカップリングさせて式Vの化合物を生成させるための溶媒は芳香族溶媒、好ましくはトルエンなどの非極性芳香族溶媒である。
【0068】
適切な反応温度は、約100℃以下、約80℃以下、約60℃以下、約40℃以下、約20℃以下、約0℃以下、またはその他の適切な温度である。いくつかの実施態様において、反応は室温で行われている。適切な反応時間は温度と他の条件に依存し、約30時間以下、約20時間以下、約10時間以下、約5時間以下、約2時間以下、約1時間以下、またはその他の適切な時間であってもよい。より長い時間もまた適している。
【0069】
いくつかの実施態様において、式Vの化合物を生成させるためのキラル化合物の存在下での式IIIのメソ無水物と式IVのエステル化合物とのカップリングは、まずキニンなどのキラル剤と式Vの化合物の塩の生成し、次いで生成した塩を例えばHClなどの酸と反応させて酸として式Vの化合物を生成することを含んでいてもよい。いくつかの実施態様において、キニンなどのキラル剤と式Vの化合物の塩は結晶化する。そのような結晶化工程は式Vの化合物の高い光学純度(酸として)を増加させる。式Vの化合物の望ましい立体異性体の純度は少なくともまたは90%以上、または少なくともまたは91%以上、または少なくともまたは92%以上、または少なくともまたは93%以上、または少なくともまたは94%以上、または少なくともまたは95%以上、または少なくともまたは96%以上、または少なくともまたは97%以上、または少なくともまたは98%以上、または少なくともまたは99%以上、または少なくともまたは99.1%以上、または少なくともまたは99.2%以上である。
【0070】
結晶化反応は多数の溶媒中で行ってもよい。例えば、適切な溶媒としては、これらに限定されないが、アセトン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、アセトニトリル、トルエン、エチレン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコール、ジオキサン、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコール、ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、メチルエチルケトンまたはイソブチルメチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、MTBEまたはN-メチルピロリドン、およびそれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施態様において、溶媒組成物は2成分の溶媒混合物、例えば、酢酸エチル−ヘキサン、酢酸エチル−ヘプタン、イソプロピルアルコール−ヘプタンなどが挙げられる。
【0071】
キラル剤と式Vの化合物の塩の中和に用いられる適切な塩としては、これらに限られないが、希塩酸、硫酸、および硝酸などのマイルドな酸または酢酸、およびパラ‐トルエンスルホン酸などのマイルドな有機酸、またはアンバーリストなどのポリマーベースのスルホン酸などが挙げられる。
【0072】
式Vの化合物は、次いで適切なカップリング条件の下、式VIの化合物とカップリングさせて式VIIの化合物を提供する。
【化36】
式中、L、X、Z、p、r、w、R
1およびR
4は本明細書で定義した通りである。
【0073】
式VIのアミンを式Vの化合物のカルボン酸基にカップリングさせる適切な条件は当業者に明らかである。いくつかの実施態様において、カップリングはカップリング剤の存在下で適切な溶媒中で行われる。適切なカップリング剤としては、これらに限定されないが、N-エチル-N'-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-カルボジイミド塩酸塩(EDC)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DDC)、ジイソプロピルカルボジイミドN-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)、4,5-ジシアノイミダゾール、ジシクロペンチルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、1,1'-カルボニルジイミダゾール、シクロヘキシルイソプロピルカルボジイミド(CIC)、ビス[[4-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソリル)]-メチル]カルボジイミド、N,N'-ビス(2-オキソ-3-オキサゾリジニル)-ホスフィンクロリド (BOP-CI)、酸塩化物、クロロギ酸エチルなどが挙げられる。
【0074】
カップリング反応の適切な溶媒としては、これらに限定されないが、アルコール類、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、ケトン類、例えばアセトン、エチルメチルケトン、メチルイソブチルケトン、炭化水素類、例えばトルエン、キシレン、ヘキサン類、ヘプタン類、シクロヘキサン、ハロゲン化炭化水素類、例えばジクロロメタン、エチレンジクロリド、クロロホルム、エステル類、例えば酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸t−ブチル、エーテル類、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、極性非プロトン性溶媒、例えばN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、N-メチルピロリドン、ニトリル類、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル、水またはそれらの混合物が挙げられる。
【0075】
カップリング反応の適切な温度としては、約100℃以下、約80℃以下、約60℃以下、約40℃以下、約20℃以下、約0℃以下、またはその他の適切な温度である。適切なカップリング反応の時間は温度と他の条件に依存し、約30時間以下、約20時間以下、約10時間以下、約5時間以下、約2時間以下、約1時間以下、またはその他の適切な時間であってもよい。より長い時間もまた適している。
【0076】
式VIIの化合物は、次いで加水分解剤で加水分解され、カルボン酸保護基を取り除いて式VIIIの化合物を生成する。
【化37】
式中、L、X、Z、p、r、w、およびR
4は本明細書で定義した通りである。
【0077】
適切なカルボン酸保護基R
1は当該技術分野で公知であり、反応が化合物の他の官能基について行われている間、カルボン酸基をブロックまたは保護するために一般に用いられるカルボン酸基のエステル誘導体が挙げられる。カルボン酸保護基の例としては、アリル、4-ニトロベンジル、4-メトキシベンジル、3,4-ジメトキシベンジル、2,4-ジメトキシベンジル、2,4,6-トリメトキシベンジル、2,4,6-トリメチルベンジル、ペンタメチルベンジル、3,4-メチレンジオキシベンジル、ベンズヒドリル、4,4’-ジメトキシベンズヒドリル、2,2′4,4′-テトラメトキシベンズヒドリル、t-ブチル、t-アミル、トリチル、4-メトキシトリチル、4,4′-ジメトキシトリチル、4,4′,4′′-トリメトキシトリチル、2-フェニル-プロパ-2-イル、トリメチルシリル、t-ブチルジメチルシリル、フェナシル、2,2,2-トリクロロエチル、b-(トリ-メチルシリル)エチル、b-(ジ(n-ブチル)メチルシリル)エチル、p-トルエンスルホニルエチル、4-ニトロベンジルスルホニルエチル、アリル、シンナミル、1-(トリメチルシリルメチル)プロパ-1-エン-3-イルなどが挙げられる。いくつかの実施態様において、R
1はベンジル、tert-ブチル、ジメトキシベンジル、ニトロベンジルまたはジニトロベンジル基である。
【0078】
カルボン酸保護基を除去する適切な加水分解剤としては、これらに限定されないが、水酸化リチウム、水酸化バリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化トリメチルスズ、水酸化トリブチルスズ、塩基性条件下で水素の存在下におけるパラジウム‐炭素など、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0079】
加水分解反応の適切な溶媒としては、これらに限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、アセトン、エチルメチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、1,4−ジオキサン、酢酸n−ブチル、酢酸t−ブチル、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、トルエン、キシレン、アセトニトリル、プロピオニトリル、メチルt−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ブチロニトリル、またはそれらの組合せが挙げられる。いくつかの実施態様において、アルコール溶媒はメタノール、エタノールおよびイソプロピルアルコールでバリウムやリチウムの水酸化物などの加水分解剤と共に用いられている。実例となる実施態様においては、式VIIの化合物はジクロロエタン溶媒の存在下でトリメチルスズを用いて加水分解されている。
【0080】
加水分解反応の適切な温度は約100℃以下、約80℃以下、約60℃以下、約40℃以下、約20℃以下、約0℃以下、またはその他の適切な温度である。
【0081】
式VIIIの化合物は、次いでチオール保護基を除去して式IIの化合物を生成させるために脱保護反応に付される。
【化38】
式中、L、X、Z、p、r、w、およびR
4は本明細書で定義した通りである。
【0082】
適切なチオール保護基は当該技術分野で公知であり、ベンジル、4-メトキシベンジル (MBzl)、トリフェニルメチル(トリチル)、メトキシトリチル、tert-ブチル(tBu)、t-ブチルチオール、アセチル、3-ニトロ-2-ピリジンスルフェニルおよびアセトアミドメチル (Acm)が挙げられる。
【0083】
チオール保護基R
4は当該技術分野で公知の脱保護剤を用いて選択的に除去してもよい。いくつかの実施態様において、チオール保護基は、酸、例えば塩酸などの鉱酸、水性または無水の有機酸、例えば酢酸、TFAなどのカルボン酸類、またはメタンスルホン酸などのスルホン酸類で除去される。いくつかの実施態様において、チオール保護基は酸化的分解によって、例えば水銀(II)、ヨウ素、銀(I)またはタリウム(III)で処理することによって取り除いてもよい。いくつかの実施態様において、酸はDMSO、テトラメチレンスルホキシド、超酸化カリウム、過酸化ニッケル、トリチオ炭酸ジナトリウム、トリフェニルビスマスカルボナートなどの酸化剤と共に用いてもよい。いくつかの実施態様において、チオール保護基はトリチル基である。いくつかの実施態様において、トリチル基はトリフルオロ酢酸を用いて取り除いてもよい。いくつかの実施態様において、トリチル基は1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート(HFIPA)およびトリエチルシラン(TES)を用いて除去される。
【0084】
式IIの化合物は、適切なポリエチレングリコールマレイミド化合物とカップリングさせて式Iの化合物を生成させる。
【化39】
式中、L、Z、p、r、t、およびwは本明細書で定義した通りである。
【0085】
一つの実施態様において、ポリエチレングリコールマレイミド化合物次の構造を有している。
【化40】
【0086】
PEG部分(ポリエチレングリコール部分)は平均分子量約200〜約200,000を持つポリエチレングリコール含むのが好ましい。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールは約200〜約80000の平均分子量を持っている。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールはPEG 1500、PEG 4000、PEG 5000、PEG 8000、PEG 10,000、PEG 15,000、PEG 20,000 および PEG 25,000である。いくつかの実施態様において、ポリエチレングリコールはPEG 20,000である。
【0087】
リンカーチオールは、適切な溶媒中、適切なpHでPEG化合物と接触している。pHは適切な緩衝液を用いて望みの値に維持する。例えば、pHはリン酸緩衝液を用いて約6.5に維持することができる。この反応の適切な溶媒としては、これらに限定されないが、アセトン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、アセトニトリル、トルエン、エチレン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール、エチレングリコール、ジオキサン、1,2-ジクロロエタン、ジクロロメタン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコール、ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、メチルエチルケトンまたはイソブチルメチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドまたはN-メチルピロリドン、およびそれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施態様において、溶媒組成物としては2成分の溶媒混合物、例えば、アセトン−ヘキサン、酢酸エチル−ヘキサン、アセトン‐水、水‐オクタン、エタノール−水、ヘキサン‐シクロヘキサン、ヘキサン‐エタノール、クロロホルム−ヘキサン、ジエチルエーテル‐水、エタノール−メタノール、水‐ジクロロメタンなどが挙げられる。
【0088】
他の実施態様において、式IIIのメソ無水物は本明細書に記載した適切なアルコールの存在下でキラルリガンドを用いてキラルヘミエステルに脱対称化できる。
【化41】
式中、R
5はC
1−6アルキル、アリル、またはアリール基である。
【0089】
他の実施態様において、式IIIのメソ無水物は2つの工程で脱対称化することができる。メソ無水物は、まず上記のような適切なアルコールの存在下にキラルリガンドと処理して、それぞれのアミン塩としてキラルヘミエステルを製造する。アミン塩は次いで適切な溶媒組成物中で結晶化させることができ、次いでマイルドな酸で中和して両方のキラルヘミエステルを得る。
【化42】
式中、R
5はC
1−6アルキル、アリル、またはアリール基である。
【0090】
不斉モノエステル化のための適切なキラルリガンドおよびアルコール類は当業者に明らかであり、本明細書に記載されたとおりである。いくつかの実施態様において、キラルリガンドはキニンまたはキニジン誘導体である。いくつかの実施態様において、アルコール類はベンジルアルコールである。
【0091】
アミン塩の結晶化に用いられる適切な溶媒組成物としては、これらに限定されないが、アセトン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、アセトニトリル、トルエン、エチレン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール、エチレングリコール、ジオキサン、1,2-ジクロロエタン、ジクロロメタン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコール、ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、メチルエチルケトンまたはイソブチルメチルケトン、メチルtertiary-ブチルエーテル(MTBE)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドまたはN-メチルピロリドン、およびそれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施態様において、溶媒組成物としては2成分の溶媒混合物、例えば、アセトン−ヘキサン、酢酸エチル−ヘキサン、アセトン‐水、イソプロピルアルコール‐MTBE、水‐オクタン、エタノール−水、ヘキサン‐シクロヘキサン、ヘキサン‐エタノール、クロロホルム−ヘキサン、ジエチルエーテル‐水、エタノール−メタノール、水‐ジクロロメタンなどが挙げられる。
【0092】
アミン塩の中和に用いられる適切な酸は当業者に明らかであり、これらに限定されないが、希塩酸、硫酸、および硝酸などのマイルドな酸または酢酸、およびパラ‐トルエンスルホン酸などのマイルドな有機酸、またはアンバーリストなどのポリマーベースのスルホン酸などが挙げられる。
【0093】
上記の方法を用いて、ヘミエステルは高い光学純度、例えば、少なくともまたは90%以上、少なくともまたは91%以上、少なくともまたは92%以上、少なくともまたは93%以上、少なくともまたは94%以上、少なくともまたは95%以上、または少なくともまたは96%以上、少なくともまたは97%以上、少なくともまたは98%以上、少なくともまたは99%以上、少なくともまたは99.1%以上、少なくともまたは99.2%以上、少なくともまたは99.3%以上、少なくともまたは99.4%以上、少なくともまたは99.5%以上で得られる。いくつかの実施態様において、本発明の方法で製造されたヘミエステルは実質的に純粋である。他の実施態様において、本発明の方法で製造されたヘミエステルは約99%純度以上である。
【0094】
式IXのヘミエステルは、適切なカップリング条件下で式Xの化合物とカップリングさせることができる。
【化43】
式中、L
1、X、Z、p、w、R
1、R
5およびR
6は本明細書で定義した通りである。
【0095】
カルボン酸IXをアルコールXとカップリングさせる適切な条件は技術分野で公知である。適切な試薬としては、ルイスまたはブレンステッド酸などのエステル化剤、または適宜4−ジメチルアミノピリジンなどの触媒の存在下でのEDCまたはDCCなどのカップリング剤が挙げられる。
【0096】
側鎖(COOR
5またはCOOR
6)を持つシクロヘキサン上のカルボン酸基は、技術分野で公知の方法を用いて選択的に脱保護することができ、本明細書に記載されている。例えば、カルボン酸保護基の除去のための脱保護剤としては、これらに限定されないが、水酸化リチウム、水酸化バリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化トリメチルスズ、水酸化トリブチルスズ、塩基性条件下で水素の存在下におけるパラジウム‐炭素など、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0097】
リンカーL
1における適切なヒドロキシル保護基R
2は技術分野で公知であり、これらに限定されないが、メチル、t−ブチル、テトラヒドロピラニル、ベンジル、メトキシベンジル、ニトロベンジル、tertiary-ブチルジメチルシリル、tertiary-メチルジメチルシリル基、メトキシメチル、メトキシエトキシメチル、アリル、トリチル、エトキシエチル、1−メチル‐1−メトキシエチル、テトラヒドロピラニル、またはテトラヒドロチオピラニル基が挙げられる。一つの実施態様において、ヒドロキシ保護基はテトラヒドロピラニル(THP)である。いくつかの実施態様において、ヒドロキシル保護基はカップリング条件下で開裂してもよい。他の実施態様において、ヒドロキシル保護基は本明細書に記載したような適切な条件下で開裂する。例えば、ヒドロキシル保護基はp−トルエンスルホン酸のような酸の触媒量を用いて開裂できる。
【0098】
式XIの化合物は、次いで式VIの化合物とカップリングさせて式VIIの化合物を提供する。
【化44】
式中、L
1、X、Z、p、r、w、R
1およびR
6は本明細書で定義した通りである。
【0099】
適切なカップリング条件は当業者に明らかであり、式Vの化合物の式VIの化合物とのカップリングについて本明細書に記載されている。
【0100】
式VIIの化合物はカルボン酸保護基とチオール保護基の脱保護に付し、式IIの化合物を提供する。両方の保護基は例えばトリフルオロ酢酸などの強い酸を用いて一つの工程で開裂することができる。または、カルボン酸保護基を先ず開裂し、次いで本明細書に記載した条件を用いてチオール保護基を除去する。
【0101】
式IIの化合物は、さらに本明細書記載のように、ポリエチレングリコールマレイミド化合物とカップリングさせて式Iの化合物を提供する。
【0102】
別の実施態様において、式IXのヘミエステルは適切なカップリング条件下で式VIの化合物とカップリングさせて式XIIの化合物を提供する
【化45】
式中、L
1、Z、p、r、w、R
4、R
5およびR
6は本明細書で定義した通りであり、そしてR
7は酸保護基である。
【0103】
式VIのアミンを式IXの化合物のカルボン酸基にカップリングさせるための適切な条件は当業者に明らかであり、本明細書に記載されている。
【0104】
式XIIの化合物で、R
7は酸保護基である。適切な酸保護基は本明細書に記載されている通りである。いくつかの実施態様において、R
7はC
1−6アルキル基である。
【0105】
式XIIの化合物は、次いで 式Xの化合物をカップリングさせて、触媒で脱保護し、式IIの化合物を生成する。式IIの化合物は、本明細書に記載しているように、さらにポリエチレングリコールマレイミド化合物とカップリングさせて、式Iの化合物を提供する。
【化46】
式中、L、L
1、X、Z、p、r、w、R
4、R
5、R
6およびR
7は本明細書で定義した通りである。
【0106】
カルボン酸をアルコールとカップリングさせる適切な条件は技術分野で公知である。適切な試薬としては、ルイスまたはブレンステッド酸などのエステル化剤、または適宜4−ジメチルアミノピリジンなどの触媒の存在下でのEDCまたはDCCなどのカップリング剤が挙げられる。
【0107】
カルボン酸保護基R
1を除去する適切な条件は本明細書に記載した通りである。ヒドロキシル保護基R
2は酸または塩基で触媒された加水分解または接触水素化分解で取り除くことができる。例えば、テトラヒドロピラニル(THP)エーテル保護基は、例えば、酸加水分解によって取り除かれ、シリルエーテルは開裂させるためにフッ化水素またはフッ化テトラブチルアンモニウムが必要であり、そしてベンジルエーテル保護基は、例えば、水素化分解で除去できる。
【0108】
一つの態様において、式I、II、IA、IB、IIA、IIB、V、VII、VIII、IX、XまたはXIの実質的に純粋な化合物が本明細書に記載した方法で製造されている。これらの化合物は高い化学純度と高い光学純度の両方を有している。いくつかの実施態様において、式Iの化合物の純度は少なくとも90%、95%、97%、99%または99%以上である。他の実施態様において、式IIの化合物の純度は少なくとも90%、95%、97%、99%または99%以上である。
【0109】
本製法は既存の方法を凌ぐ大規模合成における利点を提供する。例えば、PEG UT-15を製造する既存の合成方法は望ましいリンカーの広範なキラル分離を含んでいて、最終生成物の全収率を低くしている。本発明の方法は、PEG化されたプロスタサイクリン誘導体、例えば、PEG UT-15の容易な立体選択的合成を、高価なキラル分離を必要とすることなく好収率で提供する。さらに、中間体と最終生成物のクロマトグラフ精製が除外されているので、生産コストのみならず、可燃性溶媒や生じた廃棄物の必要量を大きく減らすことができる。さらにまた、本製法で用いた塩生成法はカラムクロマトグラフよりはるかに容易な操作である。本方法の生成物はより高い純度を有している;例えば、本方法はHPLCで99%以上の光学純度を持つリンカーチオールの単一の異性体を供給する。それゆえ、より経済的で、安全で、速く、環境に優しく、操作しやすく、そしてより高い純度を提供する方法が提供される。
【0110】
他の実施態様は、式VIのアミン化合物を製造する方法を提供する。
【化47】
式中、rおよびR
4は本明細書で定義した通りであり、YはハロゲンそしてR
9はアミノ保護基である。
【0111】
式XIVの保護されたアミノアルコールは適切な条件下でハロゲン化することができ、式XVの化合物を生成する。いくつかの実施態様において、YはF、Cl、BrまたはIである。いくつかの実施態様において、YはIである。
【0112】
適切なハロゲン化条件としては、例えば、トリフェニルホスフィンおよびイミダゾールの存在下における化合物XIVのヨウ素または臭素との反応、化合物XIVの、四塩化炭素またはヘキサクロロアセトンの反応によって調製したin situのクロロホスホニウムイオンとの反応、化合物XIVのクロロジフェニルホスフィン、イミダゾールおよびハロゲンとの反応などが挙げられる。
【0113】
ハロゲン化された化合物XVを、本明細書記載のような適切なチオール保護化合物と反応させて、チオールが保護された化合物XVIを生成することができる。例えば、ハロゲン化された化合物XVは、塩基炭酸カリウムまたは1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン (DBU) の存在下、それぞれアセトニトリルまたはジメチルホルムアミドなどの適切な溶媒の存在下でトリフェニルメタンチオールと反応させることができる。適切な条件下でのアミノ保護基の脱保護、次いで酸、例えば塩酸での処理により、アミン化合物VIの酸塩が得られる。
【0114】
適切なアミノ保護化合物は当該技術分野で公知である。アミノ保護基の例としては、これらに限定されないが、トシレート(Tos)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、t−ブチルオキシカルボニル(Boc)、アセテート、およびトリフルオロアセテート基が挙げられる。用いた保護基により、アミノ保護基は酸性または塩基性条件下で開裂させることができる。例えば、トリフルオロアセテート保護基は塩基、例えば炭酸カリウムを用いて開裂できる。
【0115】
本明細書記載の式VIのアミン化合物の製造方法は公知の方法より明確でより効率的である。本方法の利点としては、ヒドラジンヒドラートのような発がん性化合物の使用を回避することや、純粋なアミン化合物を得るためのカラムクロマトの使用や繰り返してトリチュレーションすることを避けることが挙げられる。
合成法
【0116】
本明細書記載の化合物のいくつかの製造方法も提供する。反応は、好ましくは、薄層クロマトグラフ、
1H‐NMR等で観察しながら反応が実質的に完結するのに十分な時間の間、本明細書を読む当業者に明らかである適切な不活性溶媒中で行う。反応をスピードアップする必要がある場合、反応混合物は、当業者によく知られているように、加熱してもよい。必要であれば、最終および中間の化合物は、本明細書を読む当業者に明らかなように、結晶化、沈殿、カラムクロマトなどの種々の公知の方法によって精製する。
【0117】
以下の略記は明細書および/または添付の特許請求の範囲で使用し、それらは以下の意味を有している。
“HPLC”は、高速液体クロマトグラフィーを意味する。
“TFA”は、トリフルオロ酢酸を意味する。
“THP”は、テトラヒドロピラニルを意味する。
“PEG”は、ポリエチレングリコールを意味する。
“(DHQ)
2AQN” は、ヒドロキニン アントラキノン-1,4-ジイル ジエーテルを意味する。
“(DHQD)
2AQN”は、ヒドロキニジン (アントラキノン-1,4-ジイル) ジエーテルを意味する。
【0118】
説明のための非限定的な式(I)の化合物を合成するための方法を、以下に概略的に示す。
一般的方法I−メソ無水物からのペグ化プロスタサイクリンの立体特異的/エナンチオ選択的合成
【0119】
スキーム1は、メソ無水物7から酸中間体11の製造を示す。メソ無水物7は異なるキラルリガンド特にキニン9の存在下、種々のトレプロスチニルエステル8を用いて脱対称に付し、酸10の塩のキニン塩を得る。トレプロスチニルの種々のエステルの反応性における大きな違いが見られた。さらに、選択性も置換基によって変化した。テストした8a-fの種々のエステルのうち、トレプロスチニル8aのベンジルエステルは他のエステルに比べてより良い選択性を有することが観察された。酸10のキニン塩を中和して酸中間体11が得られた。酸中間体は次の工程にそのようなものとして使用するか、または塩形成と中和の方法により精製してもよい。
スキーム1 :トレプロスチニルアルコールでの直接メソ-無水物開環
【化48】
【0120】
スキーム2は酸中間体11からのリンカーチオール5合成を示す。酸中間体11はアミン側鎖12とのカップリングに付され、リンカーアミド13を得た。このリンカーアミド13は、アミド13のUT-15部分にあるベンジル基を開裂させるために、種々の条件下、例えば、水酸化バリウム、水酸化リチウムおよびPdC/H
2/K
2CO
3で、ベンジルエステルの加水分解に付した。しかしながら、反応はいくつかの副生成物を生成するか、または反応は観察されず、トリチル基の形で硫黄が存在するためのようである。
【0121】
アミド中間体13は、1,2-ジクロロエタン中の水酸化トリメチルスズを用いて非常にマイルドで選択的な加水分解を採用することにより、シクロヘキサン部分でUT-15エステル結合に影響することなく酸14に選択的に加水分解した。酸中間体14は、アミン側鎖のトリチル基の開裂に導くTFAで処理して、リンカーチオール5を生成した。リンカーチオールはHPLCとNMRデータで確認した。
スキーム2:トレプロスチニルエステルアルコールでの直接メソ-無水物開環
【化49】
【0122】
スキーム3に記載したように、リンカーチオール5は4 arm 20K Da PEGマレイミドとのカップリングに付し、PEG-UT-15 またはTranscon PEGトレプロスチニル(6)を得た。
スキーム3:PEG-UT-15に対するチオールリンカーのPEG化
【化50】
一般的方法II−キラルヘミエステルを経るペグ化プロスタサイクリン誘導体の立体特異的/エナンチオ選択的合成
【0123】
スキーム4は、容易に入手できるアキラルメソ無水物からのキラルヘミエステルの製造を示す。メソ無水物7は種々のアルコールを用いてキラルヘミエステルに直接脱対称化して、ヘミエステル15および16を得た。他の実施態様において、アキラルメソ無水物7は、アルコール、例えば、ベンジルアルコールの存在下でキニンおよびキニジンベースのリガンド(DHQ)
2AQN および(DHQD)
2AQNで処理し、そして光学純度91%〜99%(HPLCによる純度)のキラルベンジルヘミエステル19および20に脱対称化した。ヘミエステルは、キラルアミンとしてキニンを用い、ジアステレオマー塩の結晶化によってさらに精製した。他の実施態様において、メソ無水物7はベンジルアルコールの存在下、キニンおよびキニジンで処理し、そしてキラルベンジルヘミエステルをそれらのそれぞれのアミン塩(17および18)として得た。アミン塩は2成分の溶媒混合物(アセトン:ヘキサンまたは酢酸エチル:ヘキサン)中で結晶化し、次いでマイルドな酸(希塩酸、硫酸、硝酸、または酢酸、およびパラトルエンスルホン酸などのマイルドな有機酸、またはアンバーリストなどのポリマーベースのスルホン酸等)で中和して、キラルベンジルエステル19および20を99%以上のキラル純度で得た。
スキーム4:アルコールを用いたメソ‐無水物のキラルヘミエステルへの脱対称化に関する一般的ルート
【化51】
【0124】
スキーム5は、スキーム4で製造したキラルヘミエステルからキラルリンカーチオール5を製造する2つの経路を示す。出発物質としてキラルヘミエステル19および20を用いると、望みの立体化学配置をもっているキラルリンカーチオール5を得るための2つの可能な経路がある。経路1では、キラルヘミエステル19はアミンとカップリングさせて、リンカーアミド21を得た。リンカーアミド中間体21は種々の反応条件下で脱ベンジル化反応に付し、次いでトレプロスチニル成分とカップリングに付して、保護されたリンカーチオール23を得、これを脱保護してリンカーチオール5を得る。経路2では、キラル酸20はトレプロスチニル成分とカップリングさせて、一般構造22のエステル中間体を得、次いでスキーム6に示した一連の反応を通し、これを先ず保護されたリンカーチオールに、次いでリンカーチオール5に転換した。
スキーム5:カップリングしたリンカーを製造する経路
【化52】
【0125】
下記スキーム6に示したように、トレプロスチニルのtert-ブチルエステル24をキラルヘミエステル20とカップリングさせ、Pd/C触媒を用いた脱ベンジル化で酸中間体26を生じる保護されたベンジルエステル中間体25を得た。脱ベンジル化の工程中、フリーのカルボン酸官能基を持つ分子の本来の酸性の性質のために、側鎖の保護されたアルコールのTHP開裂が観察された。2,3の実験で、いくらかの開裂していないTHP中間体27がみられ、26と27の混合物が得られた。そのような場合、混合物は触媒量のパラ-トルエンスルホン酸と撹拌してTHP基を開裂し、酸中間体26を生成させた。もし望むなら、このTHP開裂は炭酸水素ナトリウムなどの塩基の触媒量を添加することにより防ぐことができる。酸中間体26は続いてアミン側鎖12とカップリングさせて望みの保護されたリンカー中間体28を得て、これをトリフルオロ酢酸を用いてトリチルとtert-ブチル基の脱保護に付すか、またはポリマーに結合した酸、シリカゲル等の酸性試薬を用いることによりまずt-ブチル基を取り除き、次いでトリチル基をTFAで開裂する2工程の方法によって、最終的にキラルリンカーチオール5を生成した。分析データを集め、HPLCおよびNMRデータは、望みのリンカーチオール5の生成を確認するためにAscendis Pharma A/Sから得られたリファレンスマーカーサンプルと比較した。データはリンカーチオール5の望みの構造と一致していることが判った。製法は5gスケールでスケールアップした。リンカーチオール5は、次いで4 arm 20K Da PEGマレイミドと最後のカップリングに付し、PEG-UT-15 (6)を得た。
スキーム6:リンカーを得るためのトレプロスチニル部分を経たカップリング
【化53】
一般的方法III-ヘミエステルのジアステレオマー塩結晶化によるペグ化プロスタサイクリン誘導体の立体特異的/エナンチオ選択的合成
【0126】
スキーム7に示したように、メソ無水物7をメチル、ベンジルおよびアリルアルコールなどの種々のアルコールと処理して、ヘミエステルのラセミ混合物(29および30;R=メチル)を得た。種々のジアステレオマー塩の結晶化法もキニン、キニジン、およびナフチルアミンなどのキラルアミンを用いてスクリーニングした。試験したアミングループの中で、キニンが望みのヘミエステル29の単一のジアステレオマー塩33の製造で99%純度の最もよいジアステレオ選択性を与えることが判った。全ての結果は
1NMRデータで確認した。ひとたびジアステレオマーキニン塩が得られると、それは簡単な1N HClでの中和により必要なキラルヘミエステル(29;R=Me)に転換させた。そのようにして得られたヘミエステルは、さらにリンカーアミドの合成に供した。製法は25gスケールにスケールアップした。
スキーム7:ジアステレオマー塩結晶化によるキラルヘミエステルの製造
【化54】
【0127】
スキーム8に示したように、キラルヘミエステル29およびアミン12をカップリングして、キラルリンカーアミド35を定量的収率で得た。
1NMRデータはアミド35に必要なリンカーが生成していることを明らかにした。
スキーム8:リンカーを得るためのアミンの酸とのカップリング
【化55】
【0128】
スキーム9に示したように、スキーム7で得られたキラルリンカーアミド35を加水分解し、望みのキラルシクロヘキサンアミドリンカー36を得、続いてこれをトレプロスチニル成分37とカップリングしてリンカーチオール5の生成に導く。リンカーチオール5は、次いで4 arm 20K Da PEGマレイミドとの最後のカップリングに付し、PEG-UT-15 (6)を得る。
スキーム9:リンカーのトレプロスチニル部分とのカップリング
【化56】
一般的方法IV-アミン側鎖の合成
【0129】
スキーム10はアミン側鎖12を合成するための新しい合成ルートを示す。保護したアミノアルコール化合物41をトリフェニルホスフィンとイミダゾールの存在下、ヨウ素と反応させて化合物42を生成させた。ヨード化合物42は塩基炭酸カリウムまたはDBUの存在下、トリフェニルメタンチオールと反応させて化合物43を生成させた。炭酸カリウムを用いてトリフルオロアセトアミド43を脱保護して、フリー塩基としてのアミン側鎖を生成し、これを塩酸を用いて塩酸塩12に転換した。
スキーム10:トリフルオロアセトアミド保護のアミノヘキサノールを用いるアミン側鎖
【化57】
一般的方法V-リンカーチオールの異性体の合成
【0130】
スキーム11は、リンカーチオール5の望ましい異性体の純度をチェックする分析マーカーとしてのリンカーチオール47の異性体の合成を示す。両方の異性体のHPLC比較を望ましいリンカーチオール5の純度と何らかの望ましくない異性体47の存在を測定するために用いた。
スキーム11:リンカーチオールの異性体の合成
【化58】
【実施例】
【0131】
上述のように一般的に記載した本発明は、以下の実施例を参照することにより、より容易に理解されるが、これらは説明のためのものであって、本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0132】
メソ無水物からのペグ化トレプロスチニル誘導体の立体特異的/エナンチオ選択的合成
【0133】
【化59】
ステップA:ベンジルエステルとメソ無水物のカップリング(7→11)
【0134】
シス-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物(メソ無水物)(7)(13.0 g)及びキニーネ(9, 36.48 g)の無水トルエン(370 mL)の懸濁液に、アルゴンの存在下に混合物の温度を5-10℃の間に維持しながら、トレプロスチニルベンジルエステル(8a、27.0 g)をゆっくり加えた。この反応混合物を室温で一晩機械撹拌した。約18時間後に1N塩酸(150 mL)で処理した。有機層を分離し、それを食塩水(1 x 50 mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)で乾燥させたのち濾過し、真空中で濃縮し、酸の中間体(11)を生成した。5-100%酢酸エチル(EtOAc)のヘキサン溶液を用いてこの粗生成物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。目的化合物を含める画分を収集し、真空中で濃縮し、純粋な酸(11, 26.4 g)を得た。この酸の中間体(5.4 g)をキニーネ塩(10)化学量相当のキニーネを用いて処理し、キニーネ塩(10)を形成し、イソプロピルアルコールとヘプタンの混合液で結晶化し、キニーネ塩(10, 5.4 g)を得た。得られた少量のキニーネ塩(10)を1N塩酸で中和し、高いキラル純度(99%, HPLC法)を有する酸の中間体(11)の分析試料を得た。この酸の中間体は必要に応じて塩の形を経由して中和法により精製した。
ステップB:酸とアミンのカップリング(11→13)
【0135】
磁気攪拌機及び攪拌棒を備えた250-mLの丸底フラスコに、酸の中間体(11) (11.6 g)のジクロロメタン溶液(120 mL)を入れた。室温下でこの溶液にジイソプロピルエチルアミン(9.4 g)及びアミン側鎖(12, 7.90 g)を加えたのち、EDCI (4.2 g)及びHOBt (2.98 g)を加えた。反応が完了するまでに室温で反応混合物を撹拌した。TLCにより反応の進行を観測した。約1-2時間後に水(200 mL)を加え、反応混合物をクエンチし、5-10分間撹拌した。この段階で有機層を抽出し、食塩水(50 mL)で洗浄したのちNa
2SO
4で乾燥させた。その後、濾過し、真空中で濃縮し、粗製のアミド中間体(13)を得た。5-25%EtOAcのヘキサン溶液を用いてこの粗生成物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。目的化合物を含める画分を収集し、真空中で濃縮し、純粋なアミド (14.6 g) を得た。
ステップC:ベンジルエステルの加水分解(13→14)
【0136】
磁気攪拌機及び攪拌棒を備えた250-mLの丸底フラスコに、アミド中間体(13, 7.4 g)の1,2-ジクロロメタン溶液(80 mL)を入れた。室温下でこの溶液にトリメチル水酸化スズ(4.7 g)を加え、反応混合物を55-60℃に加熱した。反応が完了するまで55-60℃で反応混合物を撹拌し、TLCにより反応の進行を観測した。約4-5時間後に水(100 mL) )を加え、反応混合物をクエンチし、5-10分間撹拌した。この段階で有機層を抽出し、食塩水(50 mL)で洗浄したのちNa
2SO
4で乾燥させた。その後濾過し、真空中で濃縮し、粗製の酸中間体(14)を得た。5-100%EtOAcのヘキサン溶液を用いてこの粗生成物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。目的化合物を含める画分を収集し、真空中で濃縮し、純粋な酸(5.4 g)を得た。
ステップD:トリチル基を開裂させリンカーチオールを得る。(14→5)
【0137】
磁気攪拌機及び攪拌棒を備えた50-mLの丸底フラスコに酸中間体(14, 0.95 g)のヘキサフルオロイソプロパノール(HFIPA) (10 mL)を入れた。室温下でこの溶液にトリエチルシラン(TES) (1.0 mL)及びトリフロロ酢酸(TFA)(1.0 mL)を順次に加えた。反応が完了するまでに反応混合物を室温下で撹拌した。TLCにより反応の進行を観測した。約15-30分後に水(3x20 mL)を加え、反応混合物をクエンチし、5-10分間撹拌した。この段階で有機層を抽出し、食塩水(10 mL)で洗浄したのちNa
2SO
4で乾燥させた。その後濾過し、真空中で濃縮し、粗製のリンカーチオール(5, 1.2 g)を得た。20-100%EtOAcのヘキサン溶液を用いてこの粗生成物(5)をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。目的のリンカーチオール(5)を含める画分を収集し、真空中で濃縮し、純粋なリンカーチオール (5, 0.53 g, キラル純度:99%; 化学純度:94.02%) を得た。
ステップE:ペグ化(5→6)
【0138】
磁気攪拌機及び攪拌棒を備えた500-mLの丸底フラスコに、4 arm 20 k Da PEG (1.43 g)を入れた。完全に溶解するまでに約5分間1:9 MeCN/H
2O (50 mL)に溶解させた。室温下でトレプロスチニルリンカーチオール(5 , 0.208 g, 4.4 eq.)をPEG溶液に加えた(120 mlのMeCN/H
2O 9:1に溶解)。リン酸塩緩衝液(pH 6.5, 15 ml, pH試験紙でpH値をチェックした。) を加え反応を開始させた。約3時間後に反応混合物のHPLC結果により反応が完了したことが示された。ジクロロメタン(DCM) (130 ml)及び5%クエン酸水溶液(100 mL)で反応混合物を希釈した。ジクロロメタン(2 x 40 mL)で水層を抽出し、水/飽和食塩水1:1 (100 mL)の混合液で合わせた有機層を洗浄した。この段階で有機層を合わせ、Na
2SO
4で乾燥させた。そして濾過し、室温において真空中で8-10 mLの容量までに濃縮させたのち、-20 °Cに冷却し、tert-ブチルメチルエーテル(MTBE) (150 mL)を2-3回に分けて加えた。このスラリーを-20 °Cで20分間撹拌した。その後濾過し、冷却したMTBE (30-40 mL)でケーキを洗浄した。室温において真空中で白色固体を乾燥させ、PEG-UT15(6, 1.43 g, 純度(HPLC法):91%)を得た。
実施例2. キラルヘミエステルを経由したペグ化プロスタサイクリン誘導体の立体特異的/エナンチオ選択的な合成
【化61】
【化62】
ステップA:ベンジルヘミエステルの調製(7→20)
【0139】
シス-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物(メソ無水物)(7)(39.52 g, 256.36 mmol, 1.0 eq)及びキニーネ(91.48 g, 281.98 mmol, 1.10 eq)の無水トルエン(600 mL)の懸濁液に、アルゴンの存在下で混合物の温度を20-25℃の間に維持しながら、ベンジルアルコール(83.17 g, 769.09 mmol, 3.0 eq)をゆっくり加えた(軽度な発熱反応)。反応混合物を室温で一晩機械撹拌した。約24時間後にTLC(EtOAc/Hexanes, 3:7)により反応混合物をチェックした結果、残存のメソ無水物はなかった。次に、この混合物をtert-ブチルメチルエーテル(MTBE) (100 mL)及び3M塩酸(150 mL)で順次に処理した。有機層を分離し、それを3M塩酸(1 x 50 mL)、水(2 x 100 mL)及び食塩水(1 x 40 mL)で順次に洗浄した。そしてNa
2SO
4で乾燥させたのち、濾過し、真空中で濃縮し、ベンジルヘミエステル(20)及び過剰なベンジルアルコールの粘性液体(115.18 g) (キラルHPLC法によるキラル純度は91.32%)を得た。この粗製のヘミエステル(115.18 g、化学純度を90%として換算した場合、60.52 gの化合物20に相当する。230.74 mmol, 1.0 eq)をアセトン(550 mL)に溶解し、その後室温においてアルゴンの存在下でキニーネ(74.86 g, 230.75 mmol, 1.0 eq)を加えた。淡褐色の透明な溶液を軽く加熱し、還流した。この間、ベンジルヘミエステルのキニーネ塩(18b)の固体が生成された。この混合物を加熱し、1時間還流し、塩を溶解させた。この塩が可溶であるため、透明な溶液が得られるまでにアセトンを更に加えた。アセトンの容量は合計で850 mLであった。56 ℃で撹拌しながらこの透明な溶液にヘキサン(1700 mL、アセトンの使用量の2倍)をゆっくり加えた。その後この溶液を室温までに冷却し、一晩撹拌した。18時間後にキニーネ塩(18b)をブフナー漏斗に収集し、ヘキサン(2 x 100 mL)でこの固体を洗浄し、ガラストレーに移したのち自然乾燥させた。乾燥させたキニーネ塩(18b)の重量は116.25 g (86.0%) (キラルHPLC法によるキラル純度は 99.76%)であった。
【0140】
類似した反応条件でさらに2ロットのベンジルヘミエステルのキニーネ塩(18b)を調製した。それらのキラル純度は99.5%であった。これらの3ロットのベンジルヘミエステルのキニーネ塩(18b)を合わせ(計374.90 g)、5-Lの撹拌機付き三つ口フラスコに移した。このキニーネ塩に水(1000 mL)及びtert-ブチルメチルエーテル(MTBE) (2000 mL)を加えた。そして、この懸濁液を撹拌しながら1.0M塩酸(1000 mL)をゆっくり加えた。この混合物を室温下で1時間撹拌した。有機層を分離し、1.0M塩酸(2 x 500 mL)、水(2 x 500 mL)及び食塩水(1 x 100 mL)で洗浄した。Na
2SO
4で乾燥させたのち濾過し、真空中で濃縮し、ベンジルヘミエステル (20) (166.4 g, HPLC法によるキラル純度は99.2%)の粘性のある半透明な液体を得た。ベンジルヘミエステル(19)は類似した実験法で合成した。
ステップB:ヘミエステルとトレプロスチニルのt-Bocエステルのカップリング(20→25)
【0141】
磁気攪拌機及び攪拌棒を備えた50-mLの二口丸底フラスコに、アルゴンの存在下でキラルベンジルヘミエステル(20, 0.182 g)のジクロロメタン溶液(10 mL)を入れた。この透明な溶液を撹拌しながらEDCI (0.480 g)及びDMAP (0.305 g)を加え、さらに10-15分間撹拌した。この混合物にトレプロスチニルのt-Bocエステル(24, 0.350 g)を加え、室温下で約5-6時間撹拌した。その後、水(10 mL)で反応混合物を洗浄した。有機層を抽出し、食塩水(10 mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させたのち、真空中で濃縮し、カップリングされた粗生成物(25)を得た。230-400メッシュのシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、酢酸エチルのヘキサン溶液のグラジェント溶媒(0-10 %)で溶出させた。目的化合物を含める画分を真空中で蒸発し、無色粘液の純粋な化合物(25) (0.400 g)を得た。これを後続のステップに用いた。
ステップC:ベンジルエステルの加水分解(25→26)
【0142】
磁気攪拌機及び攪拌棒を備えた100-mLの丸底フラスコに、カップリングされたベンジルエステル生成物(2.3g)のメタノール溶液(40 mL)を入れた。室温下で撹拌しながらこの溶液にPd/C (0.500g, 50%、湿物)を加えた。この反応混合物を蒸発し、風船を用いて水素ガスで加圧し、室温下で一晩(約16時間)水素化した。16時間後にTLCにより反応を観測した。この段階で反応混合物をCelite (約4 g)パットに通して濾過した。このCeliteパットをメタノール(約50 mL)で洗浄し、合わせた濾液を真空中で蒸発し、酸の粗生成物(26)を得た。250-400メッシュのシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーで精製し、酢酸エチルのヘキサン溶液のグラジェント溶媒(5-100 %)でカラムから生成物を溶出させた。目的の生成物を含める画分を真空中で蒸発し、純粋な酸(26, 1.63 g)を得た。
ステップD:アミンと酸のカップリング(26→28)
【0143】
磁気攪拌機及び攪拌棒を備えた100-mLの丸底フラスコに、酸中間体(26, 0.750 g)のジクロロメタン溶液(10 mL)を入れた。室温下でこの溶液にジイソプロピルエチルアミン(0.566 g)及びアミン側鎖(12, 0.539g)を加え、その後EDCI (0.288 g) 及び HOBt ( 0.202 g)を加えた。室温下で反応が完了するまでに反応混合物を撹拌した。TLCにより反応の進行を観測した。約1-2時間後に水(20 mL) を加え、反応混合物をクエンチし、5-10分間撹拌した。この段階で有機層を抽出し、食塩水(10 mL)で洗浄した。Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮し、アミド中間体(28)の粗生成物を得た。5-25% EtOAcのヘキサン溶液を用いてこの粗生成物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。目的の生成物を含める画分を収集し真空中で濃縮し、純粋なアミド(28, 0.78 g)を得た。
ステップE:t-Boc基とトリチル基の開裂(28→5)
【0144】
磁気攪拌機及び攪拌棒を備えた50-mLの丸底フラスコに、中間体28(0.075 g)のヘキサフルオロイソプロパノール(HFIPA)溶液(2.5 mL)を入れた。室温下でこの溶液にトリエチルシラン(TES) (0.15 mL)を加えたのち、トリフロロ酢酸(TFA) (0.15 mL)を加えた。反応が完了するまでに室温下で反応混合物を撹拌した。TLCにより反応の進行を観測した。約6-7時間後に水(3x20 mL)を加え、反応混合物をクエンチし、5-10分間撹拌した。この段階で有機層を抽出し、食塩水(10 mL)で洗浄した。Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮し、リンカーチオール(5)の粗生成物を得た。20-100% EtOAcのヘキサン溶液を用いてこの粗生成物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。目的生成物のリンカーチオール(5)を含める画分を収集し、真空中で濃縮し、純粋なリンカーチオール(5, 0.030 g, キラル純度:97%)を得た。
【0145】
リンカーチオール(47)の他の異性体は、上記の実験方法によりベンジルヘミエステル(19) の他の異性体から合成できる。
ステップF:ペグ化(5→6)
【0146】
磁気攪拌機及び攪拌棒を備えた500-mLの丸底フラスコに、4 arm 20 k Da PEG (1.43g)を入れ、完全に溶解するまで(約5分間)に1:9 MeCN/H
2O (50 mL)に溶かした。室温下でこのPEG溶液(120 mLのMeCN/H
2O 9:1に溶解したもの)にトレプロスチニルリンカーチオール5 (0.208 g, 4.4 eq.)を加えた。リン酸塩緩衝液(pH 6.5, 15 ml, pH試験紙でpH値をチェックした。) を加えて反応を開始させた。約3時間後に反応混合物のHPLC結果により反応が完了したことが示された。DCM (130 ml)及び 5 %クエン酸水溶液 (100 mL)で反応混合物を希釈した。ジクロロメタン(2 x 40 mL)で水層を抽出し、合わせた有機層を水/飽和NaCl 1:1 (100 mL)の混合物で洗浄した。この段階で合わせた有機層をNa
2SO
4,で乾燥させた。そして濾過し、室温において真空中で8-10 mlの容量まで濃縮させたのち、-20°Cまで冷却し、MTBE (150 mL)を2-3回に分けて加えた。そして、-20°Cでこのスラリーを20分間撹拌したのち、濾過した。ケーキを冷たいMTBE (30-40 mL)で洗浄した。室温において真空中で白色固体を乾燥させ、PEG-UT15 (6, 1.43 g, HPLC法による純度:91%)を得た。
実施例3. ヘミエステルのジアステレオマー塩結晶を経由したペグ化プロスタサイクリン誘導体の立体特異的/エナンチオ選択的な合成
【化63】
ステップA:メチルヘミエステルのラセミ体の合成(7→29, 30)
【0147】
メソ-無水物(7)をメタノール(10 vol. w/v)中で還流し、ヘミエステルのラセミ体混合物(29 及び20)を得た。55-60°Cでこの混合物(12.08 g)をキニーネ(21.28 g)のアセトン溶液(225 ml)で処理し、30分間撹拌した。この透明な溶液にヘキサン(650 ml)を加え、3時間撹拌しながら室温まで冷却させた。この段階で白色固体が溶液から析出した。濾過したのち、乾燥させ、キニーネ塩(34, 22 g)を得て、その構造はNMRで確認した。
【0148】
キニーネ塩(34, 1 g)をアセトン(20 ml)に入れ、55-60 °Cに加熱し、透明な溶液を得た。その後、一晩撹拌しながら室温まで冷却した。得られた白色固体を濾過し、乾燥させたのち、酸異性体のキニーネ塩29の純粋な生成物(490 mg)を得た。この塩を1N HClで中和し、キラル純度の高い遊離酸(29, 99%)を得た。
ステップB:メチルヘミエステルのラセミ体の合成(29→35)
【0149】
実施例1及び2で記載した実験方法を用いてアミンとのカップリングを行った。また、EDCIの代わりに塩化チオニルを用いて酸を活性化することによってカップリングもできる。
実施例4. アミン側鎖の合成
ヨウ化トリフルオロアセトアミノヘキシルの合成(42, R=COCF3)
【0150】
室温においてアルゴンの存在下でトリフェニルホスフィン(1.35 g, 0.0052 mol, 2.2 eq)のジクロロメタン溶液(15 mL)にヨウ素(1.31 g, 0.0052 mol, 2.2 eq)を加えた。この混合物を10分間撹拌したのちイミダゾール(0.35 g, 0.0052 mol, 2.2 eq)を加え、さらに10分間撹拌した。次にトリフルオロラセトアミノヘキサノール(41, R = COCF
3) (500 mg, 0.0023 mol, 1.0 eq)のジクロロメタン溶液(15 mL)を加えた。この反応混合物を2時間軽く還流し、TLC (EtOAc/Hexane, 1:4)により反応を観測した。反応が完了したのち、混合物をヘキサン(30 mL)で処理した。EtOAc/Hexane (1:4)混合物を用いて混合物をシリカゲルのパットに通し、純粋なヨード化合物(42, R = COCF
3) (710 mg)を得た。
トリフルオロアセトアミノヘキシルトリチルチオエーテルの合成(43):A法
【0151】
室温においてアルゴンの存在下でヨウ化トリフルオロアセトアミノヘキシル(42, R = COCF
3) (285 mg, 0.0088 mol, 1.0 eq)のアセトニトリル溶液(25 mL)に粉末化した炭酸カリウム(304 mg, 0.0220 mol, 2.5 eq)及びトリチルチオール(243 mg, 0.0088 mol, 1.0 eq)を加えた。室温下でこの反応混合物を一晩撹拌し、TLC(EtOAc/Hexane, 1:9)で観測した。20時間後に反応混合物をヘキサン(15 mL)で処理し、シリカゲルのパットに通した。そして、それを濾過し、真空中で濃縮し、トリフルオロアセトアミノヘキシルトリチルチオエーテル(43) (425 mg)を得た。
トリフルオロアセトアミノヘキシルトリチルチオエーテルの合成(43):B法
【0152】
室温においてアルゴンの存在下でヨウ化トリフルオロアセトアミノヘキシル(42, R = COCF
3) (400 mg, 0.0124 mol, 1.0 eq)のDMF溶液 (12 mL)にDBU (207 mg, 0.0136 mol, 1.1 eq)及びトリチルチオール(342 mg, 0.0124 mol, 1.0 eq)を加えた。室温下で反応混合物を一晩撹拌し、TLC(EtOAc/Hexane, 1:9)で観測した。20時間後にこの反応混合物を酢酸エチルで処理し、飽和した塩化アモニウム溶液(2 x)及び食塩水で洗浄した。その後Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮し、トリフルオロアセトアミノヘキシルトリチルチオエーテル(43) (560 mg)を得た。
アミノヘキシルトリチルチオエーテル塩酸塩(12)の合成
【0153】
室温下でトリフルオロアセトアミノヘキシルトリチルチオエーテル(43) (115 mg, 0.00024 mol, 1.0 eq)のメタノール/水(9:1)溶液(15 mL)に炭酸カリウム(0.051 mg. 0.00036 mol, 1.5 eq)を加えた。反応混合物は40
°Cで撹拌し、TLC(EtOAc/Hexane, 1:4)で反応を観測した。反応が完了したのち、真空中で混合物からメタノールを蒸発し、残留物を水及び酢酸エチルで処理した。有機層を分離し、食塩水で洗浄した。それをNa
2SO
4で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮し、アミノヘキシルトリチルチオエーテル(12) (80 mg)を得た。この化合物12を塩化水素のジオキサン溶液で処理したのち、反応液を濾過し、固体のアミノヘキシルトリチルチオエーテル塩酸塩(12)の (90 mg)を得た。
【0154】
スキーム12はペグ化したトレプロスチニルの調製法の1つの実施例の要約を示す。
【化64】
実験:
ステップ 1:トリオール(1)からトレプロスチニルベンジルエステル(2)の合成
【0155】
撹拌機及び温度プローブを備えた50-Lのジャケット付き反応装置に、benzindene triol(1) (1.0 kg)のアセトン溶液(12.0 L)を入れた。室温下でこの溶液に粉末化した炭酸カリウム(935.0 g)を加えたのち、ベンジルブロモ酢酸(828.0 g)を加えた。反応が完了するまでに室温下で反応混合物を撹拌した。TLC (MeOH/CH
2Cl
2, 1:9)により反応の進行を観測し、32時間後に反応の終了を確認した。この反応混合物を濾過し、濾過ケーキをアセトン(6.0 L)で洗浄した。真空中で濾液を濃縮し、トレプロスチニルベンジルエステル(2)の粘性のある淡黄色液体を得た。この粗生成物をヘキサン(5.0 L)と酢酸エチル(0.15 L)の混合物の中で撹拌し、粒状固体を得た。この固体を濾過し、真空中で乾燥させ、ベンジルエステル(1.36 kg, 94.5%)の易流動的な灰色がかった白色固体を得た。
ステップ2及び3:トレプロスチニルベンジルエステル(2)とシス-無水物(3)のカップリング及びキニーネ塩(5)の結晶化
【0156】
撹拌機及び温度プローブを備えた50-Lのジャケット付き反応装置に、ベンジルエステル(2) (300.0 g)のトルエン溶液 (3.95 L)を入れた。この溶液にキニーネ(4)(286.0 g)を加え、反応混合物を撹拌しながら-5〜-10℃に冷却した。そして、カルゴン存在下で反応混合物の温度を-5〜-10℃に維持しながらシス-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物(3)(92.31 g)を加えた。この反応混合物を-5〜-10℃で3-5時間機械撹拌した。1時間ごとにUPLCにより反応の進行を観測した。4-5時間後に反応の終了が確認された。温度を0〜10℃に維持しながら反応混合物を1N塩酸(2.18 L)で処理した。有機層を分離し、水層を酢酸エチル(3.0 L)で抽出した。合わせた有機層を水(2 x 5.0 L)で2回洗浄し、分離したのち、真空中で濃縮し、酸の中間体の粗生成物(681.0 g)を得た。5-100%酢酸エチルのヘキサン溶液を用いてこの粗生成物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。目的化合物を含める画分を収集し、真空中で濃縮し、純粋な酸(181.0 g)を得た。この酸の中間体(181.0 g)をキニーネ塩(5)化学量相当のキニーネを用いて処理し、キニーネ塩を形成し、アセトンとヘキサンの混合物を用いて結晶化し、キニーネ塩(5) (177.0 g)を得た。得られたキニーネ塩(5)を1M塩酸(0.63 L)で中和し、キラル的純粋なシクロヘキシルヘミエステル(6) (117.45 g; 30%)を得た。そのキラル純度は99%以上であった。
ステップ4:シクロヘキシルヘミエステル(6)とアミン側鎖(7)のカップリング
【0157】
撹拌機及び温度プローブを備えた50-Lのジャケット付き反応装置に、シクロヘキシルヘミエステル(6) (115.0 g) のジクロロメタン溶液 (2.5 L)を入れた。室温下でこの溶液にアミン側鎖(7) (77.77 g)を加えたのち、HOBt (29.40 g) を加えた。アルゴンの存在下でこの反応混合物にEDCI (42.25 g)及びジイソプロピルエチルアミン(58.93 g)を加えた。反応が完了するまでに室温下で反応混合物を撹拌した。TLCにより反応の進行を観測し、約3-4時間後に水(1.5 L)を加え、反応混合物をクエンチし、5-10分間撹拌した。この段階で有機層を抽出し、水層をジクロロメタン(2.0 L)で再度抽出した。合わせた有機層を水(1 x 2.0 L及び1 x 1.5 L)で2回洗浄し、分離し、40 ± 5 °Cにおいて真空中で濃縮し、アミド中間体(8) (204.0 g)の粗生成物を得た。0-45%酢酸エチルのヘキサン溶液を用いてこの粗生成物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。目的化合物を含める画分を収集し、真空中で濃縮し、精製されたジ保護したリンカーチオール(8) (163.11 g; 90.7%)を得た。
ステップ5:ジ保護したリンカーチオール(8)とトリメチル水酸化スズの加水分解
【0158】
撹拌機及び温度プローブを備えた50-Lのジャケット付き反応装置に、ジ保護したリンカーチオール(8) (161.0 g) のジクロロメタン溶液(2.0 L)を入れた。室温下でこの溶液にトリメチル水酸化スズ(123.28 g)を加え、反応混合物を35-40℃に加熱した。反応が完了するまでに35-40℃で反応混合物を撹拌した。TLCにより反応の進行を観測し、8-9時間後に反応混合物を水(2.0 L)で15-20℃に冷却させ、 5-10分間撹拌した。この段階で有機層を抽出し、水(3 × 3.0 L)で洗浄し、真空中で濃縮し、酸の中間体(9)の粗生成物 (292.0 g)を得た。5-100%酢酸エチルのヘキサン溶液及び5-20%メタノールのジクロロメタン溶液を順次に用いてこの粗生成物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。目的の生成物を含めた画分を収集し、40 ± 5 °Cにおいて真空中で濃縮し、精製されたトリチル保護したリンカーチオール(9) (140.0 g, 95.6 %)を得た。
ステップ6:化合物(9)のトリチル基を開裂させ、トレプロスチニルリンカーチオール(10)を得る。
【0159】
撹拌機及び温度プローブを備えた50-Lのジャケット付き反応装置に、トリチル保護したリンカーチオール(9)(138.0 g)のヘキサフルオロイソプロパノール(HFIPA) 溶液(1.5 L)を入れた。この溶液にトリエチルシラン(TES) (0.15 L)を加え、反応が完了するまでに室温下で反応混合物を撹拌した。UPLCにより反応の進行を観測し、3-4 時間後に水(1 × 2.0 L) を加え、反応混合物をクエンチし、撹拌しながらジクロロメタン(2.0 L)を加えた。この段階で有機層を分離し、水層をジクロロメタン(4.0 L)で抽出した。合わせた有機層を水(2 × 2.0 L)及び食塩水(2.0 L)で順次に洗浄した。その後、真空下において30 ± 5 °Cで濃縮し、リンカーチオール(10)の粗生成物(303.0 g)を得た。20-100%酢酸エチルのヘキサン溶液及び5-20%メタノールのジクロロメタン溶液を順次に用いてこの粗生成物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。目的のリンカーチオール(10)を含めた画分を収集し、真空中で濃縮し、純粋なトレプロスチニルリンカーチオール(10) (81.8 g, 81.1 %)を得た。
ステップ7:4-arm 20kDa PEGを用いたトレプロスチニルリンカーチオール(10)のペグ化
【0160】
撹拌機及び温度プローブを備えた100-Lのジャケット付き反応装置に、4-arm 20kDa PEG (270.0 g)及びMeCN:H
2O (1:9 ) (7.1 L)を順次に入れた。完全に溶解するまでに室温下でこの混合物を撹拌した。トレプロスチニルリンカーチオール(10) (41.0 g)をMeCN:H
2O混合物 (9:1) (17.8 L)に溶解し、室温下で上記の4-arm 20kDa PEG溶液に加えた。この段階でリン酸塩緩衝液(2.8 L)を反応混合物(pH 7.5)に加えた。反応が完了するまでに室温下で反応混合物を撹拌した。1時間ごとに反応混合物の一部を取り、UPLCにより反応の進行を観測した。約4時間後に反応混合物のUPLC結果が反応の終了を示した。反応混合物に5 %クエン酸溶液(12.0 L)を加え、反応混合物をクエンチした。その後、5%食塩水(2.7 L)及びジクロロメタン(21.0 L)を順次に加えた。この混合物を15-20分間撹拌したのち、有機層を分離した。水層をジクロロメタン(2 x 5.0 L)で抽出し、合わせた有機層を水と食塩水の混合物(1:1) (6.0 L)で洗浄し、Na
2SO
4 (3.7 kg)で乾燥させた。回転式蒸発用フラスコの中、真空下において25 ± 3 ℃で1.8 Lの容量まで濃縮した。真空中でこの濃縮された溶液をポリプロピレンフィルターに通して濾過した。このフラスコをジクロロメタンとアセトニトリルの混液(1:1) (2.4 L)で洗浄し、ポリプロピレンフィルターで濾過した。合わせた濾液を清潔な反応器に移し、この溶液を-25°Cに冷却させた。予め冷却したMTBE (21.5 L)をこの溶液に加え、-10〜-15 ℃で20-30分間撹拌した。得られた白色固体をポリプロピレンのAuroraフィルターで濾過し、そのケーキを冷たいMTBE (11.0 L)で洗浄した。この白色固体を室温で圧縮された乾燥空気(CDA)で乾燥させ、TransCon PEGトレプロスチニル (11) (TCP-UT15) (290.0 g, 73.7 %)を得た。
【0161】
スキーム13はペグ化したベラプロストの合成法の1つの実施例の説明を示す。
【化65】
ステップ1→2 (ベラプロストベンジルエステルの生成):Lot # D-1117-194
【0162】
ベラプロスト(遊離酸または遊離塩)(200 mg)のアセトン溶液(20 mL)に、ジメチルアミノピリジン(DMAP) (2 mg) 及びベンジルブロミド(117 mg)を室温下で加えた。透明な溶液になるまでに室温下で撹拌した。この溶液にヨウ化テトラブチルアンモニウム(50 mg)を加え、反応混合物を還流温度で2時間撹拌した。2時間後にTLC(MeOH/CH
2Cl
2, 1:9)により反応混合物をチェックし、反応が完了したことを認めた。真空中で反応混合物を蒸発し、粗生成物の油を得た。1N 塩酸(約5 mL)及び酢酸エチル(10 mL)で処理し、10分間撹拌した。有機層を分離し、食塩水(10 mL)で洗浄した。その後Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮し、エステル中間体(2)の粗生成物を得た。酢酸エチル及び10%メタノールのジクロロメタン溶液を順次に用いてこの粗生成物(2)をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、生成物を溶出させた。目的化合物を含めた画分を収集し、真空中で濃縮し、純粋なベラプロストベンジルエステル(2) (222 mg)を得た。目的化合物の生成は
1H NMRで確認した。
ステップ2→3 (ベラプロストベンジルエステルとメソ無水物のカップリング):Lot # D-1124-029
【0163】
化合物(2) (220 mg)のトルエン溶液(7 mL)に、キニーネ (191 mg)を入れたのち、シス-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物 (メソ無水物) (62 mg)を加えた。室温下で反応混合物を一晩撹拌した。約18時間後にこの反応混合物をシリカゲルのパットに載せ、0-100%酢酸エチルのヘキサン溶液を用いたフラッシュクロマトグラフィーで精製した。目的化合物を含めた画分を収集し、真空中で濃縮し、純粋な酸(3) (110 mg)を得た。目的化合物の生成は
1H NMRで確認した。
ステップ3→4 (アミンと酸のカップリング):Lot # D-1117-201
【0164】
磁気攪拌機及び攪拌棒を備えた25-mLの丸底フラスコに、酸の中間体(3) (86 mg)の ジクロロメタン溶液(7 mL)を入れた。室温下でこの溶液にアミン側鎖(6) (60 mg)、EDCI (33 mg)及びHOBt (23 mg)を加えたのち、ジイソプロピルエチルアミン(45 mg)を加えた。反応が完了するまでに室温下で反応混合物を撹拌した。TLCにより反応の進行を観測した。約1-2時間後に水(10 mL)を加え、反応混合をクエンチし、5-10分間撹拌した。この段階で有機層を食塩水(10 mL)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させた。続いて濾過し、真空中で濃縮し、アミド中間体(4)を得た。5-40%酢酸エチルのヘキサン溶液を用いてこの粗生成物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。目的化合物を含める画分を収集し、真空中で濃縮し、純粋なアミド(42 mg)を得た。目的化合物の生成は
1H NMRで確認した。
ステップ4→5 (ベンジルエステルの加水分解): Lot # D-1124-032
【0165】
室温下でアミド中間体(4) (40 mg)の1,2-ジクロロエタン溶液(5 mL)に、トリメチル水酸化スズ(25 mg)を入れ、反応混合物を65-70℃で撹拌した。反応が完了するまでに65-70℃で反応混合物を撹拌した。TLCにより反応の進行を観測した。約11時間後に反応混合物のTLC結果は僅かな生成物を示した。この段階で更にトリメチル水酸化スズ(50 mg)を加え、 65-70℃で反応混合物を更に5時間撹拌した。この段階で反応混合物のTLC結果は約40-50%の生成物及び未反応の原料を示した。水(10 mL)を加え、反応混合物をクエンチし、5-10分間撹拌した。この段階で有機層を抽出し、食塩水(5 mL)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させた。続いて濾過し、真空中で濃縮し、酸の中間体(5)の粗生成物を得た。0-100% 酢酸エチルのヘキサン溶液及び10%メタノールのジクロロメタン溶液を順次に用いてこの粗生成物をシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、生成物を溶出させた。純粋な生成物を含めた画分を収集し、真空中で濃縮し、純粋な化合物(20 mg)を得た。
【0166】
ペグ化トレプロスチニルおよびペグ化ベラプロストなどのペグ化プロスタサイクリン誘導体は、それを必要とする人間などの対象に投与することによって、多くの疾患を治療する医薬製剤に使用してもよい。例えば、ペグ化トレプロスチニルは、トレプロスチニルが有効であることが知られている疾患の治療に用いてもよい。同様に、ペグ化ベラプロストは、ベラプロストが有効であることが知られている疾患の治療に用いてもよい。トレプロスチニルが有効であることが知られている疾患としては、これらに限定されないが、肺高血圧症(原発性および二次性肺高血圧症および肺動脈性肺高血圧症を含む)、末梢血管疾患、重症間欠性跛行症、重症下肢虚血、虚血性病変、喘息、肺線維症、糖尿病性神経障害足部潰瘍、間質性肺疾患が挙げられる。ベラプロストが有効であることが知られている疾患としては、これらに限定されないが、肺高血圧症、血管性疾患が挙げられる。
【0167】
医薬製剤はペグ化トレプロスチニルおよびペグ化ベラプロストなどのペグ化プロスタサイクリン誘導体、および薬学的に許容される担体または賦形剤を含んでいてもよい。
【0168】
形容詞として本明細書で用いる場合、用語「pharmaceutical」は、受容する哺乳動物に実質的に有害でないことを意味する。「医薬製剤」は、担体、希釈剤、賦形剤および活性成分が製剤の他の成分と適合し、そのレシピエントに有害ではないことを意味する。
【0169】
ペグ化トレプロスチニルおよびペグ化ベラプロストなどのペグ化プロスタサイクリン誘導体は投与する前に製剤化することができる。製剤の選択は、有効量の決定と関係する同じ因子を考慮し、参加する医師により決定すべきである。
【0170】
ペグ化トレプロスチニルおよびペグ化ベラプロストなどのペグ化プロスタサイクリン誘導体の経口投与用の液体の剤形としては、溶液剤、乳剤、懸濁剤、シロップおよびエリキシル剤が挙げられ、これらは投与に前もって製剤化できる。
【0171】
そのような製剤における全活性成分は、重量で製剤の0.1%〜99.9%を含んでいる。ペグ化トレプロスチニルおよびペグ化ベラプロストなどのペグ化プロスタサイクリン誘導体は、1以上の追加の活性成分とともに、または唯一の活性成分として製剤化してもよい。
【0172】
本発明の医薬製剤は、よく知られた容易に入手できる成分を用いて、技術分野で公知の方法により調製できる。例えば、ペグ化トレプロスチニルおよびペグ化ベラプロストなどのペグ化プロスタサイクリン誘導体は、単独で、または他の活性成分と組み合わせ、一般的な賦形剤、希釈剤、または担体と製剤化して、錠剤、カプセル剤、懸濁剤、溶液剤、注射剤、噴霧剤、散剤などにする。
【0173】
非経口投与用の本発明の医薬製剤は、無菌の水性または非水性の溶液剤、分散剤、懸濁剤、または乳剤、および使用前に直ちに無菌の溶液剤や懸濁剤に戻せる無菌の散剤を含む。適切な無菌の水性または非水性の担体、希釈剤、溶媒または溶剤の例としては、水、生理食塩溶液、エタノール、ポリオール類(グリセロール、プロピレングリコール、ポリ(エチレングリコール)など)、および適切なそれらの混合物、植物オイル(オリーブ油など)、およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルが挙げられる。適当な流動性が、例えば、レシチンなどのコーティング物質の使用によって、分散剤や懸濁剤の場合は適当な粒子径の維持により、そして界面活性剤の使用により維持される
【0174】
非経口用製剤は、また保存剤、潤滑剤、乳化剤、および分散剤などの補助剤を含んでもよい。微生物の作用の防止は、抗菌剤や抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などを含めることによって確実にする。糖類、塩化ナトリウムなどの等張剤を含めることも望ましい。注射用製剤は、例えば、バクテリアを保持するフィルターを通してろ過するか、または混合物成分を混合する前か、または製造時または投与直前(二室式注射器パッケージの例におけるように)に、成分を前もって無菌化することにより無菌化する。
【0175】
経口投与用の固形製剤としては、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、および顆粒剤が挙げられる。そのような固形の剤形においては、ペグ化トレプロスチニルおよびペグ化ベラプロストなどのペグ化プロスタサイクリン誘導体は、クエン酸ナトリウム、またはリン酸二カルシウムなどの少なくとも一つの不活性な医薬担体、および/または(a)デンプン、乳糖やグルコース、マンニトールを含む糖類、およびケイ酸などの賦形剤または増量剤、(b)カルボキシメチル-セルロースおよび他のセルロース誘導体、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリ(ビニルピロリジン)、ショ糖およびアラビアゴムなどの結合剤、(c)グリセロールなどの湿潤剤、(d)寒天、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、ジャガイモまたはタピオカ澱粉、アルギン酸、ケイ酸塩および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、(e)グリセロールなどの保湿剤、(f)パラフィンなどの溶解抑制剤、(g)4級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、(h)セチルアルコールおよびグリセリンモノステアレートなどの湿潤剤、(i)カオリンおよびベントナイト粘土などの吸収剤、および(j)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリ(エチレングリコール)、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物、と混合される。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、製剤はまた緩衝剤を含んでもよい。
【0176】
同じタイプの固形製剤は、高分子量のポリ(エチレングリコール)だけでなく、乳糖などの賦形剤を用いてソフトまたはハードゼラチンカプセルに充填してもよい。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤および顆粒剤などの固形製剤は、腸溶性コーティングや製剤分野でよく知られた他のコーティングなどのコーティングや殻を施してもよい。コーティングは不透明化剤または、例えば、胃で活性成分を放出するための酸溶解性コーティング、または腸管で活性成分を放出するための塩基溶解性コーティングのような、活性成分を消化管の特定の部位で放出する薬剤を含んでいてもよい。カプセル製剤の丸剤の部分に作られたマイクロカプセルで、活性成分は徐放性コーティングの中に包み込んでもよい。
【0177】
ペグ化トレプロスチニルおよびペグ化ベラプロストなどのペグ化プロスタサイクリン誘導体の経口投与用の液体製剤としては、溶液剤、乳剤、懸濁剤、シロップおよびエリキシル剤が挙げられ、投与前に特定の多形型から製剤化される。活性成分に加え、液体製剤は水や他の医薬用溶媒、エタノール、イソプロパノール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3‐ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、オイル類(特に、綿の実、細かくしたナッツ、コーン、胚芽、オリーブ、ヒマシ、ゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリ(エチレングリコール)、ソルビトールの脂肪酸エステル、およびそれらの混合物などの溶解剤や乳化剤を含んでいてもよい。不活性希釈剤の他、液体経口製剤はまた潤滑剤、乳化および懸濁剤、および甘味剤、香味剤、および芳香剤などの補助剤を含んでもよい。液体懸濁剤は、活性成分に加え、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル類、微結晶性セルロース、アルミニウム金属水酸化物、ベントナイト粘土、寒天、およびトラガント、およびそれらの混合物などの懸濁剤を含んでいてもよい。
【0178】
一定の実施態様が説明され記載されているが、以下のクレームに定義されているような広い態様における技術から離れることなく、当業者においてそれらに変更や改良が加えられると解すべきである。
【0179】
本明細書で説明のために記載された実施態様は、明細書に具体的に開示されていない何らかの要素や、限定がなくても実施できる。従って、例えば、用語“comprising,” “including,” “containing,”などは広くそして限定することなく読まなければならない。さらに、本明細書で用いた用語や表現は記述の用語として用いたものであって、限定のために用いたものではなく、そしてそのような用語や表現の使用に、示し記載した特徴の何らかの等価物やそれらの部分を除外する意図はなく、クレームした技術の範囲内で様々な修飾が可能であることが認識できる。さらに、フレーズ “consisting essentially of”は、具体的に引用したこれらの要素およびクレームした技術の基本的で新規な特徴に実質的に影響を与えないそれら追加の要素を含むと理解するべきである。フレーズ “consisting of”は特定されていないいかなる要素も除外する。
【0180】
本発明はこの出願に記載した特定の実施態様に関して限定されることはない。当業者に明らかなように、多くの改良や変更を、その精神と範囲から離れることなく行うことができる。本明細書に列挙したものに加え、本発明の範囲内の機能的に等価な方法や組成物は、上述の記載から当業者に明らかである。そのような改良や変更は添付の特許請求の範囲の範囲内に入るように意図されている。本発明は、特許請求の範囲が権利を与えている等価物の全範囲とともに、添付の特許請求の範囲の用語によってのみ限定される。本発明は
特定の方法、試薬、化合物、組成物、または生物系に限定されないと理解すべきであり、これらはもちろん変えることができる。また、本明細書で使用した専門用語は特定の実施態様を記述する目的のためのみで、限定する意図がないことを理解すべきである。
【0181】
また、本発明の特徴や態様がマーカッシュグループの関係で記載されている場合、当業者はそれにより、マーカッシュグループの個々のメンバーまたはメンバーのサブグループの関係で記載されていることも認識するであろう。
【0182】
当業者に理解されているように、何かのまたは全ての目的のために、特に記載した明細書を提供する環系で、本明細書に記載した全ての範囲はまた、何らかのおよび全ての可能なサブの範囲およびそれらのサブの範囲の組合せを包含している。何かのリストした範囲は、十分に記載しそして同じ範囲を少なくとも等価の半分、1/3,1/4、1/5、1/10等に分割できることが容易にわかる。非限定的な例として、本明細書で議論する各範囲は下の三分の一、真中の三分の一、上の三分のなどに容易に分割できる。当業者に理解されているように、“up to,” “at least,” “greater than,” “less than,”などの全ての言語は、引用された数字を含んでおり、そして上述のように、続いてサブの範囲に分割できる範囲のことを言う。最後に、当業者に理解されているように、範囲は各個々のメンバーを含んでいる。
【0183】
この明細書で言及した全ての出版物、特許出願、発行された特許、および他の書類は、あたかも各個々の出版物、特許出願、発行された特許、または他の書類が具体的にそして個別にその全体が参考として援用されることを述べているかのように本明細書に参考として組み込まれる。参考として取り込んだテキストに含まれている定義は、それらが本明細書の定義と矛盾する範囲で除外される。
【0184】
他の実施態様は、以下の特許請求の範囲中に記載されている。