【文献】
Maria G.L. Petrucci et al.,A new catalytic hybrid material from simple acid-base hydrolytic chemistry,JOURNAL OF MOLECULAR CATALYSIS A: CHEMICAL,1999年,146 (1-2),309-315,特にScheme 1, 第311頁左欄
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜5では、高速で緻密な結晶性の単分子膜を製造するために加水分解触媒を用いる必要があり、また、有機薄膜形成用溶液中の水分量を厳密にコントロールするなどの煩雑な組成管理が必要であった。
上記式中、加水分解性基として、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、イソシアネート基、シアノ基、アミノ基、又はアミド基等が例示されている。しかし実際に使用されているのはアルコキシ基のみで、アミノ基については具体的な例や使用に関する記載はない。
非特許文献1には、加水分解触媒を用いずに浸漬法で単分子膜が得られると記載されているが、成膜に3日間かかり、膜厚が薄くて疎水性度が低く、後述するように、形成された膜が緻密な膜であるとは言い難い。
本発明は、かかる従来技術の実情に鑑みてなされたものであって、簡便かつ速やかに、無色透明で緻密な有機薄膜を形成するための方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究の結果、有機金属化合物の加水分解性基として置換又は非置換アミノ基を使用することにより、加水分解触媒を用いなくとも短時間で緻密な有機薄膜が成膜でき、しかも煩雑な有機薄膜形成用溶液の組成管理が不要であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)式(I)
R
1nMX
m−n (I)
(式(I)中、
R
1は置換基又は連結基を有していてもよい炭素数14〜30の脂肪族炭化水素基、置換基又は連結基を有していてもよい炭素数14〜30のハロゲン化脂肪族炭化水素基を表し、
Mは、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、スズ原子、チタン原子、及びジルコニウム原子からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属原子を表し、
Xは、水酸基又は−NR
22基を表し、Xのうち少なくとも2つは、−NR
22基を表し、R
2は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、又は、置換基を有していてもよいフェニル基を表し、R
2同士は、同一でも相異なっていてもよく、mはMの原子価を表す。
nは、1から(m−2)のいずれかの正の整数を表し、nが2以上の場合、R
1は、同一でも相異なっていてもよい。)
で表される有機金属化合物、
(2)式(I)で表される有機金属化合物が、トリス(N,N−ジメチルアミノ)オクタデシルシランである(1)に記載の有機金属化合物、
(3)(1)又は(2)に記載の有機金属化合物を含有する有機薄膜形成用溶液、及び
(4)有機薄膜が単分子膜である(3)に記載の有機薄膜形成用溶液に関する。
【0008】
さらに、
(5)式(I)
R
1nMX
m−n (I)
(式(I)中、
R
1は置換基又は連結基を有していてもよい炭素数14〜30の脂肪族炭化水素基、置換基又は連結基を有していてもよい炭素数14〜30のハロゲン化脂肪族炭化水素基を表し、
Mは、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、スズ原子、チタン原子、及びジルコニウム原子からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属原子を表し、
Xは、水酸基又は−NR
22基を表し、Xのうち少なくとも2つは、−NR
22基を表し、R
2は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、又は、置換基を有していてもよいフェニル基を表し、R
2同士は、同一でも相異なっていてもよく、mはMの原子価を表す。
nは、1から(m−2)のいずれかの正の整数を表し、nが2以上の場合、R
1は、同一でも相異なっていてもよい。)
で表される有機金属化合物を含有する有機薄膜形成用溶液を、基板と接触させることにより、前記基板表面に有機薄膜を形成する有機薄膜形成方法、及び
(6)有機薄膜が単分子膜である(5)に記載の有機薄膜形成方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、加水分解触媒を用いることなく、短時間で緻密な結晶性を有する有機薄膜を形成することができる。また、有機薄膜形成用溶液の煩雑な組成管理が不要であるため、前記溶液の調製を簡便に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.有機金属化合物
本発明の有機金属化合物は、式(I)
R
1nMX
m−n(I)
で表される化合物である。
上記式(I)中、R
1は置換基又は連結基を有していてもよい炭素数14〜30の脂肪族炭化水素基、置換基又は連結基を有していてもよい炭素数14〜30のハロゲン化脂肪族炭化水素基を表し、Mは、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、スズ原子、チタン原子、及びジルコニウム原子からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属原子を表し、Xは、水酸基又は−NR
22基を表し、Xのうち少なくとも2つは、−NR
22基を表し、R
2は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、又は、置換基を有していてもよいフェニル基を表し、R
2同士は、同一でも相異なっていてもよく、mはMの原子価を表す。nは、1から(m−2)のいずれかの正の整数を表し、nが2以上の場合、R
1は、同一でも相異なっていてもよい。
(m−n)は2以上であって、Xは同一であっても、相異なっていてもよい。以下に、各置換基について説明する。
【0012】
Xの「−NR
22基」は、アミノ基、あるいは1又は2個の置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基で置換されたアミノ基を意味する。
上記のうち、モノ置換アミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基、n−ペンチルアミノ基、アニリノ基等が挙げられる。
【0013】
上記のうち、ジ置換アミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジn−プロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、メチルエチルアミノ基、メチルn−プロピルアミノ基、メチルフェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基等が挙げられる。
「置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基」及び「置換基を有していてもよいフェニル基」の置換基としては、カルボキシル基;アミド基;イミド基;エステル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;水酸基;ハロゲン原子等が挙げられる。
【0014】
R
1の「置換基又は連結基を有していてもよい炭素数14〜30の脂肪族炭化水素基」の「炭素数14〜30の脂肪族炭化水素基」としては、炭素数14〜30のアルキル基、炭素数14〜30のアルケニル基、及び炭素数14〜30のアルキニル基が挙げられる。アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基は、直鎖でも分岐を有するものでもよい。
【0015】
炭素数14〜30のアルキル基としては、例えばテトラデシル基、パルミチル基、ステアリル基、エイコサニル基、ドコサニル基、テトラコサニル基、オクタコサニル基、トリアコンタニル基等;
炭素数14〜30のアルケニル基としては、例えばテトラデセニル基、パルミトレイニル基(9−ヘキサデセニル基)、オレイニル基(cis−9−オクタデセニル基)、バクセニル基(11−オクタデセニル基)、リノリル基(cis,cis−9,12−オクタデカジエニル基)、9,12,15−リノレニル基(9,12,15−オクタデカントリエニル基)、6,9,12−リノレニル基(9,12,15−オクタデカントリエニル基)、エレオステアリニル基(9,11,13−オクタデカトリエニル基)、8,11−エイコサジエニル基、5,8,11−エイコサトリエニル基、アラキドニル基(5,8,11,13−エイコサテトラエニル基)、ネルボニル基(cis−15−テトラコサエニル基)、ドコサヘキサエニル基、ペンタエイコサエニル基等;
炭素数14〜30のアルキニル基としては、例えば8−テトラデシニル基、8−ペンタデシニル基、8−ヘキサデシニル基、8−ヘプタデシニル基、8−オクタデシニル基、8−イコシニル基、8−ドコシニル基、ヘプタデカ−8,11−ジイニル基等が挙げられる。
【0016】
R
1の炭素数は14〜22であることが好ましく、炭素数16〜20であることがさらに好ましい。
【0017】
R
1の「置換基又は連結基を有していてもよい炭素数14〜30の脂肪族炭化水素基」の「置換基」としては、カルボキシル基;アミド基;イミド基;エステル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;または水酸基等が挙げられる。これらの置換基の数は0〜3であることが好ましい。
【0018】
R
1の「置換基又は連結基を有していてもよい炭素数14〜30の脂肪族炭化水素基」の「連結基」としては、具体例には、−O−、−S−、−SO
2−、−CO−、−C(=O)O−又は−C(=O)NR
51−(式中、R
51は、水素原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等のアルキル基;フェニル基;ベンジル基等を表す。)等が挙げられる。前記連結基が挿入される位置は、特に制限されないが、脂肪族炭化水素基の炭素−炭素結合間に存在するのが好ましい。
【0019】
置換基R
1の「置換基又は連結基を有していてもよい炭素数14〜30のハロゲン化脂肪族炭化水素基」の「炭素数14〜30のハロゲン化脂肪族炭化水素基」は、前記炭素数14〜30の脂肪族炭化水素基中の水素原子の1個以上がハロゲン原子に置換された基が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。さらに好ましくは2個以上がフッ素原子に置換されたフッ素化脂肪族炭化水素基であり、分岐構造を有する場合には、分岐部分は炭素数1〜4、好ましくは炭素数1〜2の短鎖であるのが好ましい。
【0020】
前記フッ素化脂肪族炭化水素基中、フッ素化アルキル基が好ましく、さらに末端炭素原子にフッ素原子が1個以上結合した基が好ましく、末端炭素原子にフッ素原子が3個以上結合した基がより好ましい。炭素鎖の末端にフッ素原子が置換しない脂肪族炭化水素基を有し、炭素鎖の内部にフッ素原子が置換した脂肪族炭化水素基を有する炭素鎖であっても構わない。末端に全てのアルキル基の水素原子がフッ素原子に置換されたペルフルオロアルキル基を有し、かつ、前記ペルフルオロアルキル基と後述する金属原子Mとの間に、−(CH
2)
h−(式中、hは1〜6の整数を表し、好ましくは2〜4の整数である。)で表されるアルキレン基を有する基が特に好ましい。
【0021】
フッ素化アルキル基中のフッ素原子数は、[(フッ素化アルキル基中のフッ素原子数)/(フッ素化アルキル基に対応する同一炭素数のアルキル基中に存在する水素原子数)×100]%で表現したときに、60%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
【0022】
置換基R
1の「置換基又は連結基を有していてもよい炭素数14〜30のハロゲン化脂肪族炭化水素基」の「置換基」及び「連結基」は、前記「置換基又は連結基を有していてもよい炭素数14〜30の脂肪族炭化水素基」の「置換基」及び「連結基」と同様である。前記連結基が挿入される位置は、特に制限されないが、ハロゲン化脂肪族炭化水素基の炭素−炭素結合間に存在するのが好ましい。
【0023】
Mは、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、スズ原子、チタン原子、及びジルコニウム原子からなる群から選ばれる1種の原子を表す。これらの中でも、原料の入手容易性、反応性等の観点からケイ素原子が特に好ましい。
【0024】
mは、Mの原子価であり、nは、1から(m−2)のいずれかの正の整数を表す。緻密な有機薄膜を製造する上ではnは1であるのが好ましい。
【0025】
式(I)で表される化合物のうち、nが1の場合の具体例としては、下記に示すものが挙げられる。なお、以下においては、金属原子Mがケイ素原子である化合物を代表例として示しているが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
CH
3(CH
2)
13Si[N(CH
3)
2]
3
CH
3(CH
2)
14Si[N(CH
3)
2]
3
CH
3(CH
2)
15Si[N(CH
3)
2]
3
CH
3(CH
2)
17Si[N(CH
3)
2]
3
CH
3(CH
2)
25Si[N(CH
3)
2]
3
CH
3(CH
2)
14Si[N(C
2H
5)
2]
3
CH
3(CH
2)
15Si[N(C
2H
5)
2]
3
CH
3(CH
2)
17Si[N(C
2H
5)
2]
3
CH
3(CH
2)
25Si[N(C
2H
5)
2]
3
CH
3(CH
2)
14Si[N(C
6H
6)
2]
3
CH
3(CH
2)
15Si[N(C
6H
6)
2]
3
CH
3(CH
2)
17Si[N(C
6H
6)
2]
3
CH
3(CH
2)
25Si[N(C
6H
6)
2]
3
【0027】
CH
3(CH
2)
13Si[NH(CH
3)]
3
CH
3(CH
2)
14Si[NH(CH
3)]
3
CH
3(CH
2)
15Si[NH(CH
3)]
3
CH
3(CH
2)
17Si[NH(CH
3)]
3
CH
3(CH
2)
25Si[NH(CH
3)]
3
CH
3(CH
2)
14Si[NH
2]
3
CH
3(CH
2)
15Si[NH
2]
3
CH
3(CH
2)
17Si[NH
2]
3
CH
3(CH
2)
25Si[NH
2]
3
CH
3(CH
2)
14Si[NH(C
6H
6)]
3
【0028】
CF
3(CH
2)
13Si[N(CH
3)
2]
3
CF
3(CH
2)
14Si[N(CH
3)
2]
3
CF
3(CH
2)
15Si[N(CH
3)
2]
3
CF
3(CH
2)
17Si[N(CH
3)
2]
3
CF
3(CH
2)
25Si[N(CH
3)
2]
3
CF
3(CH
2)
14Si[N(C
2H
5)
2]
3
CF
3(CH
2)
15Si[N(C
2H
5)
2]
3
CF
3(CH
2)
17Si[N(C
2H
5)
2]
3
CF
3(CH
2)
25Si[N(C
2H
5)
2]
3
CF
3(CH
2)
14Si[N(C
6H
6)
2]
3
【0029】
CH
3CH
2O(CH
2)
15Si[N(CH
3)
2]
3
CF
3CH
2O(CH
2)
15Si[N(CH
3)
2]
3
CH
3COO(CH
2)
15Si[N(CH
3)
2]
3
CH
3CH
2O(CH
2)
15Si[N(C
2H
5)
2]
3
CH
3COO(CH
2)
15Si[N(C
2H
5)
2]
3
CF
3COO(CH
2)
15Si[N(C
2H
5)
2]
3
CF
3(CF
2)
9(CH
2)
2Si[N(C
2H
5)
2)]
3
CF
3(CF
2)
5(CH
2)
2Si[N(C
2H
5)
2)]
3
CF
3(CF
2)
13(CH
2)
2Si[N(CH
3)
2]
3
CF
3(CF
2)
14(CH
2)
2Si[N(CH
3)
2]
3
CF
3(CF
2)
15CH=CHSi[N(CH
3)
2]
3
【0030】
CF
3(CF
2)
4O(CF
2)
2(CH
2)
10Si[N(CH
3)
2]
3
CF
3(CF
2)
4CONH(CH
2)
10Si[N(CH
3)
2]
3
CF
3(CF
2)
3O[CF(CF
3)CF(CF
3)O]
2CF(CF
3)−
CONH(CH
2)
3Si[N(CH
3)
2]
3
【0031】
CH
3(CH
2)
13Si[(N(CH
3)
2]
2[N(C
2H
5)
2]
CH
3(CH
2)
14Si[(N(CH
3)
2]
2[N(C
2H
5)
2]
CH
3(CH
2)
15Si[(N(CH
3)
2]
2[N(C
2H
5)
2]
CH
3(CH
2)
17Si[(N(CH
3)
2]
2[N(C
2H
5)
2]
CH
3(CH
2)
25Si[(N(CH
3)
2]
2[N(C
2H
5)
2]
CF
3(CH
2)
14Si[(N(CH
3)
2]
2[N(C
2H
5)
2]
CF
3(CH
2)
15Si[(N(CH
3)
2]
2[N(C
2H
5)
2]
CF
3(CH
2)
17Si[(N(CH
3)
2]
2[N(C
2H
5)
2]
CF
3(CH
2)
25Si[(N(CH
3)
2]
2[N(C
2H
5)
2]
CH
3(CH
2)
17Si[(N(CH
3)
2][N(C
2H
5)
2]
2
CF
3(CF
2)
13(CH
2)
2Si[(N(CH
3)
2][(N(C
2H
5)
2]
2
CH
3(CH
2)
14Si[(N(CH
3)
2]
2[N(C
6H
6)
2]
【0032】
CH
3CH
2O(CH
2)
15Si[N(CH
3)
2]
2(OH)
CF
3CH
2O(CH
2)
15Si[N(CH
3)
2]
2(OH)
CH
3COO(CH
2)
15Si[N(CH
3)
2]
2(OH)
これらの化合物は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
式(I)で表される有機金属化合物は、市販されていないものについては、公知の方法により合成することができるが、たとえば以下の方法により製造することができる。
【0035】
式中、R
1、R
2、M、n、及びmは式(I)と同じ意味であり、Yはハロゲン原子、アルコキシ基、フェノキシ基、アシルオキシ基、シアノ基、イソシアネート基等の脱離基を表す。
すなわち、有機溶媒中において、脱離基Yを有する有機金属化合物(1)とアミン化合物(2)とを、塩基の存在又は非存在下で0〜50℃で1〜24時間反応させることにより、有機金属アミノ誘導体(3)を合成することができる。
塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン等の有機塩基;炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸塩等が挙げられる。これらの中でも、有機塩基が好ましく、塩基非存在化の場合には、アミン化合物(2)を塩基に代用して過剰に用いるのが好ましい。塩基の使用量は特に制限されないが、好ましくは、有機金属化合物(1)中のY1モルに対して、1〜2倍モルである。
【0036】
反応に用いる溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば特に制限されない。例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類:ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類等が挙げられ、これらは脱水したのもが好ましい。
【0037】
いずれの反応においても、反応終了後は通常の有機合成化学における通常の後処理操作、分離・精製を行うことにより、目的物を単離することができる。目的物の構造は、NMRスペクトル、マススペクトル、IRスペクトルの測定、元素分析等を行うことにより、確認することができる。
【0038】
2.有機薄膜形成用溶液
本発明の有機薄膜形成用溶液は、式(I)で表される有機金属化合物を含有する溶液であれば、特に制限されない。有機薄膜形成用溶液は、例えば、有機金属化合物及び有機溶媒を含む混合物を攪拌するなどして調製することができる。
有機溶媒としては、炭化水素系溶媒、フッ化炭素系溶媒、及びシリコーン系溶媒が好ましく、炭化水素系溶媒がより好ましい。なかでも、沸点が100〜250℃のものが特に好ましい。
【0039】
具体的には、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油ナフサ、ソルベントナフサ、石油エーテル、石油ベンジン、イソパラフィン、ノルマルパラフィン、デカリン、工業ガソリン、灯油、リグロイン等の炭化水素系溶媒;CBr
2ClCF
3、CClF
2CF
2CCl
3、CClF
2CF
2CHFCl、CF
3CF
2CHCl
2、CF
3CBrFCBrF
2、CClF
2CClFCF
2CCl
3、Cl(CF
2CFCl)
2Cl、Cl(CF
2CFCl)
2CF
2CCl
3、Cl(CF
2CFCl)
3Cl等のフロン系溶媒、フロリナート(3M社製品)、アフルード(旭ガラス社製品)等のフッ化炭素系溶媒;ジメチルシリコーン、フェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエーテルシリコーン等のシリコーン系溶媒;が挙げられる。これらの溶媒は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
有機薄膜形成用溶液中の有機金属化合物の含有量は、特に制限されないが、より緻密な単分子膜を製造する観点から、有機薄膜形成用溶液に対し0.1〜30重量%の範囲であることが好ましい。
【0041】
3.有機薄膜の形成方法
以下に、本発明の有機薄膜形成用溶液を用いて基材上に有機薄膜を形成する方法について説明する。
【0042】
(基材)
有機薄膜の形成方法に用いる基材は、特に制限されない。基材としては、有機薄膜形成用溶液中の有機薄膜を形成する分子と相互作用し得る官能基を表面に有する基材でなくてもよいが、有機薄膜形成用溶液中の有機薄膜を形成する分子と相互作用し得る官能基を表面に有する基材であることが好ましく、活性水素を表面に有する基材であることが特に好ましい。活性水素を表面に有する基材を用いると、基材表面の活性水素と、有機薄膜形成用溶液中の分子とが、化学的な相互作用により基材表面に容易に化学吸着膜を形成することができる。ここで、有機薄膜形成用溶液中の有機薄膜を形成する分子と相互作用し得る官能基を表面に有する基材とは、有機薄膜形成用溶液中の有機薄膜を形成する分子と、化学結合し得る官能基を表面に有する基材を意味する。
【0043】
ここで活性水素とは、プロトンとして解離しやすいものをいい、活性水素を含む官能基としては、水酸基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、ホルミル基(−CHO)、イミノ基(=NH)、アミノ基(−NH
2)、チオール基(−SH)等が挙げられ、なかでも、水酸基が好ましい。
【0044】
基材表面に水酸基を有する基材として、具体的には、アルミニウム、銅、ステンレス、ニッケル等の金属;ガラス;シリコンウェハー;セラミックス;紙;天然繊維;皮革;その他親水性の物質;等からなる基材が挙げられる。なかでも、金属、ガラス、シリコンウェハー、セラミックス、紙、天然繊維、及び鉱物からなる基材が好ましい。
【0045】
プラスチック、ダイヤモンド、合成繊維のように表面に水酸基を持たない材質からなる基材には、予め基材表面を酸素含有のプラズマ雰囲気中で処理(例えば100Wで20分)したり、コロナ処理したりして親水性基を導入することができる。ポリアミド樹脂又はポリウレタン樹脂等からなる基材は、表面にイミノ基が存在しており、このイミノ基の活性水素と有機金属化合物のアルコキシシリル基等とが脱アルコール反応し、シロキサン結合(−Si−O−)を形成するので特に表面処理を必要としない。
【0046】
また、表面に活性水素を持たない基材を用いる場合、この基材の表面に、予めSiCl
4、SiHCl
3、SiH
2Cl
2、Cl−(SiCl
2O)
b−SiCl
3(式中、bは自然数)から選ばれる少なくとも一つの化合物を接触させた後、脱塩化水素反応させることにより、表面に活性水素を有するシリカ下地層を形成しておくこともできる。
【0047】
(有機薄膜の形成方法)
有機薄膜を形成させる方法は、特に制限はないが、ディップ法(浸漬法)、スプレーコート、スピンコート、ローラーコート、刷毛塗り、スクリーン印刷等が挙げられる。これらの中でも、ディップ法が好ましい。
【0048】
ディップ法とは、薄膜物質を含む溶液に基材を浸漬させて、基材表面に薄膜を形成させる方法である。
スプレーコートとは、薄膜物質を含む溶液を基材にスプレーすることにより基材表面に薄膜を形成させる方法である。
スピンコートとは、円盤上に設置した基材に薄膜物質溶液をのせ、円盤を回転させる事によりこれを均一な液膜とし、これを焼成し薄膜を形成させる方法である。
ローラーコートとは、ローラーで有機薄膜物質溶液を基材表面上に薄く塗布し薄膜を形成させる方法である。
刷毛塗りとは、刷毛で有機薄膜物質溶液を基材表面上に薄く塗布し薄膜を形成させる方法である。
スクリーン印刷とは、枠に張ったスクリーン(布)の上から、薄膜物質(ペースト)をのせ、加圧しながら摺動することにより基材上の薄膜を形成させる方法である。
また、ディップ法の場合において、基材を有機薄膜形成用溶液に浸漬する時間は基材の種類等にも左右され、一概にはいえないが、5分〜24時間とすることができ、5分〜10時間が好ましい。
【0049】
本発明の有機金属化合物由来の有機薄膜を形成する方法は、本発明の有機金属化合物を含有する有機薄膜形成用溶液に、ディップ法を用いて基材を接触させることにより製造することが好ましい。これにより、不純物がより少なくより緻密な有機薄膜を迅速に形成することができる。
【0050】
以下にディップ法による方法を説明する。
有機薄膜形成用溶液に基材を接触させる工程は、一度に長い時間行ってもよいし、複数回に分けて短時間で行ってもよい。また、有機薄膜の形成を促進するために超音波を用いることもできる。
【0051】
有機薄膜形成用溶液に基材を接触させる際の有機薄膜形成用溶液の温度は、該溶液が安定性を保てる範囲であれば特に制限されないが、通常、室温から溶液の調製に用いた溶媒の還流温度までの範囲である。有機薄膜形成用溶液を接触に好適な温度とするには、該有機薄膜形成用溶液を加熱してもよいし、基材そのものを加熱してもよいし、その両方を加熱してもよい。
【0052】
有機金属化合物由来の有機薄膜の製造方法は、有機薄膜を形成する工程より後に、基材を有機溶媒で洗浄する工程を含んでいてもよい。このような洗浄工程があると、有機薄膜を形成する工程で形成された有機薄膜の表面に付着した余分な試剤や不純物が除去される。また、このような洗浄工程を設けることにより、基材表面に形成された有機薄膜の膜厚を制御することができる。
【0053】
有機溶媒で洗浄する工程における有機溶媒は、特に制限されないが、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒が好ましい。
洗浄方法としては、基材表面の付着物を除去できる方法であれば特に制限されないが、例えば、上記のような有機溶媒中に基材を浸漬させる方法;真空中、又は常圧下で大気中に放置して、基材表面の付着物を蒸発させる方法;乾燥窒素ガス等の不活性ガスをブローして、基材表面の付着物を吹き飛ばす方法;等を例示することができる。また、より優れた洗浄効果が得られることから、基材を前述の有機溶媒に浸漬した状態で、超音波処理することが、より好ましい方法として挙げられる。
【0054】
有機溶媒で洗浄する工程より後に、洗浄した基材を乾燥する工程をさらに有することが好ましい。乾燥方法は特に制限はされず、基材表面の溶液をエアーナイフなどできってもよいし、自然乾燥させてもよいし、温風をあてるなどの方法が例示できるが、基材表面上に形成された有機薄膜に熱を加えることにより、有機薄膜がより安定化することから、温風をあてる方法が好ましい。
【0055】
なお、乾燥工程において基材を乾燥させる際に基材に熱を加えない場合でも、有機薄膜がより安定化することから、基材に熱を加える工程をさらに含んでいることが好ましい。加熱する温度は、基材及び有機薄膜の安定性によって適宜選択することができるが、例えば、40〜100℃の範囲を好ましく挙げることができる。
【0056】
(有機薄膜)
上記有機薄膜の製造方法を用いることにより、単分子膜、化学吸着膜、自己集合膜等の有機薄膜を得ることができる。
本発明における有機薄膜は、基材表面に分子が一層に並んでできる単分子膜であることが好ましく、化学吸着膜及び/又は自己集合膜であることがさらに好ましい。本発明において、自己集合膜とは、外部からの強制力なしに秩序だった構造を形成してなる膜を意味する。
【0057】
本発明における有機薄膜は、結晶性を有することが好ましい。この場合、結晶性とは、多結晶であっても、単結晶であっても構わない。
以下に、本発明の実施例を示すが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0058】
[実施例1]
(有機金属化合物の合成)
100mlの四つ口フラスコに温度計、コンデンサ、撹拌羽根をセットし、2M濃度のジメチルアミンTHF溶液16.2g(アルドリッチ社製)を仕込み、撹拌しながら5℃まで氷水で冷却した。
その中に、オクタデシルトリクロロシラン2.0g(ゲレスト社製)を脱水トルエン10gに溶解した溶液を1時間掛けて滴下し、反応を行った。
その後、室温で2時間反応させ、反応により析出したジメチルアミン塩酸塩を濾過、脱水トルエンで洗浄後、濾液を減圧濃縮し、油状物のトリス(N,N−ジメチルアミノ)オクタデシルシラン2.1gを得た。
1H(NMR、CDCl
3、400MHz)δ 0.89(t、3H)、1.26(brs、34H)、2.48(s、18H)
【0059】
(有機薄膜の形成)
得られたトリス(N,N−ジメチルアミノ)オクタデシルシラン0.5gを脱水トルエン99.5gに溶解し、有機薄膜形成溶液を調製した。
UVオゾン処理を行なったシリコンウエハーを、上記有機薄膜形成溶液に60分間浸漬し、NSクリーン100で洗浄後に60℃で乾燥させて、有機薄膜形成基板を得た。成膜面における静的接触角を測定したところ、水で110°、テトラデカンで40°を示した。
この膜のX線回折を行った結果、膜厚は2.39nmと面間隔は0.420nmであった。この結果から得られた膜は結晶性を有する自己集合単分子膜(SAM)であることが確認できた。
その結果を
図1及び2に示す。
【0060】
[比較例1]
(有機金属化合物の合成)
オクタデシルトリクロロシランの代わりにオクチルトリクロロシラン(アルドリッチ社製)を用いる以外は、実施例1と同様に反応を行い、トリス(N,N−ジメチルアミノ)オクチルシラン2.0gを得た。
【0061】
(有機薄膜の形成)
得られたトリス(N,N−ジメチルアミノ)オクチルシラン0.5gをトルエン99.5gに溶解し、有機薄膜形成溶液を調製した。
UVオゾン処理を行なったシリコンウエハーを、上記有機薄膜形成溶液に60分間浸漬し、NSクリーン100で洗浄後に60℃で乾燥させて、有機薄膜形成基板を得た。成膜面における静的接触角を測定したところ、水で94.2°、テトラデカンで7.0°を示した。X線回折を行った結果を
図3に示す。
この結果から得られた膜は、撥水性が不十分で結晶性を有する膜ではなかった。
【0062】
[比較例2]
(有機金属化合物の合成)
オクタデシルトリクロロシランの代わりにオクタデシルジメチルクロロシラン(アルドリッチ社製)を用いる以外は、実施例1と同様に反応を行い、N,N−ジメチルアミノ−オクタデシルジメチルシラン3.1gを得た。
【0063】
(有機薄膜の形成)
得られたN,N−ジメチルアミノ−オクタデシルジメチルシラン0.5gをトルエン99.5gに溶解し、有機薄膜形成溶液を調製した。
UVオゾン処理を行なったシリコンウエハーを、上記有機薄膜形成溶液に60分間浸漬し、NSクリーン100で洗浄後に60℃で乾燥させて、有機薄膜形成基板を得た。成膜面における静的接触角を測定したところ、水で94.2°、テトラデカンで7.4°を示した。X線回折を行った結果を
図4に示す。
この結果から得られた膜は、撥水性が不十分で結晶性を有する膜ではなかった。