特許第6263610号(P6263610)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263610
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】金属性フランジ接合ガスケット
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/08 20060101AFI20180104BHJP
   F16L 23/02 20060101ALN20180104BHJP
【FI】
   F16J15/08 G
   !F16L23/02 D
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-516513(P2016-516513)
(86)(22)【出願日】2014年9月18日
(65)【公表番号】特表2016-538485(P2016-538485A)
(43)【公表日】2016年12月8日
(86)【国際出願番号】NO2014050170
(87)【国際公開番号】WO2015047100
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2016年12月26日
(31)【優先権主張番号】20131286
(32)【優先日】2013年9月26日
(33)【優先権主張国】NO
(73)【特許権者】
【識別番号】516083623
【氏名又は名称】オテコス・アクシェセルスカプ
【氏名又は名称原語表記】Otechos AS
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(72)【発明者】
【氏名】ヒルバルグ・カロリウセン
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−201287(JP,A)
【文献】 特開2007−333065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/08
F16L 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する締め付け可能なフランジ(1;2)の間に配置される金属フランジ接合ガスケット(4)であって、ガスケット(4)は、その両面のそれぞれに、少なくとも1つの突き出ている円形の第一山部(8;8’)と、第一山部(8;8’)に隣接する少なくとも1つの第一谷部(9;9’)とを有し、
ガスケット(4)が:
第一厚さ(d1)を有する径方向外側部分(5)と;
外側部分(5)の径方向内側の第一径方向内側部分(6)と、
第一内側部分(6)の径方向内側の第二径方向内側部分(7)と
を有し、内側部分(6;7)の両方が第一厚さ(d1)よりも大きい第二厚さ(d2)を示すこと、
該少なくとも1つの円形の第一山部(8;8’)と、該少なくとも1つの隣接する第一谷部(9;9’)とが、少なくとも1つの該内側部分(6;7)に関連する領域に配置されること、
軸方向に反対向きに、すなわちガスケットのいずれかの側の面に配置される第一山部(8;8’)が、非押込状態において、第一ピーク間距離(d3)を有し、フランジ(1;2)が互いに対して引き寄せられ、または締め付けられ、それによりガスケットがフランジ封止機能状態にある押込状態において、より小さい第二ピーク間距離(d4)を有し、第一距離(d3)が第二ピーク間距離(d4)よりも大きく、第二厚さが第一距離(d3)および該第二距離(d4)よりも小さいこと、
ガスケット(4)は反対向きの両方の側面で:
第一山部(8;8’)の径方向外側において、第二山部(10)を、該第一山部と該第二山部との間に第一凹部(10’)を形成するように備えて構成され、および
第一山部(8;8’)の径方向内側において、第三山部(11)を、該第一山部と該第三山部との間に第二凹部(11’)を形成するように、備えて構成され、
ここで、軸方向に反対向きに、すなわち、ガスケットの両側の面に配置される第二および第三山部(10;11)が、非押込状態において、該第一ピーク間距離(d3)を有すること
を特徴とする、金属フランジ接合ガスケット(4)。
【請求項2】
第二山部(10)が、径方向外側部分(5)と第一径方向内側部分(6)との間のつなぎ部(5’)に配置され、および
第三山部(11)が、第二径方向内側部分(7)の端部に、ガスケット(4)の径方向内側円周(4’’)に近接して配置される、請求項1に記載の金属フランジ接合ガスケット。
【請求項3】
隣接する第一谷部(9)が、第一山部(8)の径方向内側でガスケット(4)に配置される、請求項1または2に記載の金属フランジ接合ガスケット。
【請求項4】
隣接する第一谷部(9’)が、第一山部(8’)の径方向外側でガスケット(4)に配置される、請求項1または2に記載の金属フランジ接合ガスケット。
【請求項5】
フランジ(1;2)を互いに対して引き寄せる、または締め付け前は、第一山部(8;8’)および第一谷部(9;9’)が尖っている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属フランジ接合ガスケット。
【請求項6】
フランジ(1;2)を互いに対して引き寄せる、または締め付け前は、該第二および第三山部(10;11)が尖っている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の金属フランジ接合ガスケット。
【請求項7】
ガスケット(4)がフランジと同じ材料から、または、フランジ材料の硬度に等しいか、もしくは近い硬度を有する材料から作られ、フランジ材料とガスケット材料とが、近接するか、または同一である電気化学系列にある、請求項1〜6のいずれか1項に記載の金属フランジ接合ガスケット。
【請求項8】
ガスケット(4)が、接合されるフランジに関する材料のうち最も硬いものと同じ材料から作られるか、または、接合されるフランジに関する材料のうち最も硬いものの硬度に等しいか、もしくは近い硬度を有する材料から作られる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の金属フランジ接合ガスケット。
【請求項9】
ガスケットの反対向きの側面の山部(8;8’)が互いに真反対に配置される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の金属フランジ接合ガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向する締め付け可能な(または引き寄せ可能な:attractable)フランジの間に配置される金属性フランジ接合ガスケットに関し、このガスケットは、その両側表面のそれぞれに、少なくとも1つの突出した円形の第一山部と、第一山部に隣接する少なくとも1つの第一谷部とを有する。
【背景技術】
【0002】
フランジを有する2つのパイプが、またはフランジを有するパイプと、フランジを有するユニットまたは要素(例えば、フランジを有するポンプおよび/またはバルブ)とが、相互に連結されるとき、フランジの接合を確実に締結するために、さまざまな種類のガスケットがフランジ間において使用される。しばしば、ゴム、繊維複合体などの延性材料のガスケット、および多くはないが、グラファイト含有紡績糸のインレーを有する金属ガスケットが使用される。特定の場合においては、金属のリングがフランジのグルーブに圧入されている、いわゆるRTJ連結器(RTJ−couplings)もまた使用される。
【0003】
前述したタイプのガスケットの全てがそれぞれの長所と短所とを有する。延性材料でできたガスケットは安価であるが、そのような材料は、時間が経つにつれ圧力によってへたり、フランジ接合は、締まりを維持するために締結し直さなければならないため、寿命が比較的短くなり得る。グラファイト含有紡績糸を有するタイプは、比較的高価であるが、非常に高い圧力および温度に耐え得る。これらも締結し直す必要があるが、その効果は数回に限られる。RTJ連結器は締結し直す必要がなく、非常に安定しており、および高い圧力と高い温度とに耐える。しかしながら、これらの連結器は特別に加工されたフランジが必要であり、フランジを取り替えることなく、他のガスケットに取り替えることができない。フランジ接合における漏れ(Leakage)は厳しい用途に関して深刻な結果をもたらし得る。ガスプラントおよびガス装置(またはガス設備)での漏れは、火災および爆発をもたらす可能性があり、これらは、そのような装置に備えられたフランジ接合における漏れにより生じた、いくつかの好ましくない重大な事故を引き起こしてきた。石油およびガス産業に関する海中(または海底)のパイプにとって、そのような漏れは、それらが発見されるまでの長期にわたる汚染または深刻な大きな漏れにつながるおそれがある。
【0004】
次の特許公報SU1141254−A、US4109923−AおよびDE814977−C1が、他の既知の関連技術として挙げられる。関連性のより低いガスケットシステムがGB2244782−Aから知られている。
【0005】
ノルウェーの特許出願20111571から、均質性材料を有する、輪状または円形の山部領域を備える金属性フランジ接合ガスケットが知られており、この領域ではフランジを互いに対して締め付けると、該材料は流動限界(flow limit)を容易に越え得るが、締め付ける力が増加するにつれて材料の面積がより大きくなるので、この流れ(flow)は流動限界に向かって下がって漸近線(asymptote)の方へ動く。しかしながら、この新規な構造は、いくつかの技術的欠陥を有し、良好なフランジ間の封止を提供しないことが判明している。これらの欠陥は主には、降伏するように意図された材料が流れるまたは動くための隣接空間を有しないことと、その構造が相互結合ボルトを締めたときにフランジがある程度曲がることが十分に考慮されていないことによって生じる。これにより、フランジの両面は封止領域の外側でガスケットに当接(land on:または着地)し、そして、さらなる締め付け力が加わると、封止から持ち上がる(lift off)。そのため、フランジを締め付けて、相互接合するために使用されるボルト接合への締め付け力が増加するにつれて、この接合は漏れが徐々に増加することになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そのため、本発明の目的は、その材料に関して均質な金属性フランジ接合ガスケットであって、締め付ける力を適用したときに該材料が降伏限界を容易に越えられるようにする円形に形作られた山部領域を備え、ノルウェーの特許出願20111571による技術的解決策に存在することが判明した欠点を克服する金属性フランジ接合ガスケットを提供することである。
【0007】
例えば隣接する海水または他の腐食性の環境であって、ガスケットの径方向外側に存在する腐食性の環境、または径方向内側に隣接するガスケットの領域であって、すなわち例えばパイプラインの内側の腐食性の環境を考慮に入れることもまた大切である。
【0008】
本発明によれば、金属性フランジ接合ガスケットは、
ガスケットが:
第一厚さを有する径方向外側部分と;
外側部分の径方向内側の第一径方向内側部分と、
第一内側部分の径方向内側の第二径方向内側部分と
を有し、内側部分の両方が第一厚さよりも大きい第二厚さを示すこと、
該少なくとも1つの円形の第一山部と、該少なくとも1つの隣接する第一谷部とが、少なくとも1つの該内側部分に関連する領域に配置されること、
軸方向に反対向きに、すなわちガスケットのいずれかの側の面に配置される第一山部が、非押込状態において、第一ピーク間距離を有し、フランジが互いに対して引き寄せられ、または締め付けられ、それによりガスケットがフランジ封止機能状態にある押込状態において、より小さい第二ピーク間距離を有し、第一距離が第二ピーク間距離よりも大きく、第二厚さが第一距離および該第二距離よりも小さいこと、
ガスケットは反対向きの両方の側面で:
第一山部の径方向外側において、第二山部を、該第一山部と該第二山部との間に第一凹部を形成するように備えて構成され、および
第一山部の径方向内側において、第三山部を、該第一山部と該第三山部との間に第二凹部を形成するように、備えて構成され、
ここで、軸方向に反対向きに、すなわち、ガスケットの両側の面に配置される第二および第三山部が、非押込状態において、該第一ピーク間距離を有すること
を特徴とする。
【0009】
さらなる態様は付随する従属請求項2〜9に表される。
【0010】
本発明は、本発明の限定されない態様を示す添付の図面を参照しながら以下に更に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明によるフランジ接合ガスケットを組み込んだフランジ接合の態様の片側からの斜視図を示す。
図2図2aは、フランジ接合ガスケットの片側からの平面図を示す。図2bは、反対側から見た本発明のフランジ接合ガスケットの斜視図を示す。図2cおよび2dはそれぞれ、IIc;IId−IIc;IId断面図を示す。図2cはフランジ接合ガスケットの第一態様を示し、図2dは本発明のフランジ接合の第二態様を示す。
図3図3aは、フランジ接合ガスケットの平面図を示し、図3bは、図3aのIIIbの部分を示す。
図4図4aは、フランジが互いに対して締め付けられる前の張り亘された状態(tensioned state)のフランジ接合を示す。図4bは、図4aのIVbの部分を示す。
図5図5aは、フランジが互いに対して締め付けられた後の、図2a、3aおよび4aのガスケットを示す。図5bは、図5aのVbの部分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(図面の詳細な説明)
図1には2つのパイプフランジ1、2が示されている。これらは複数の、図示する例においては合計8個のフランジ接合ロック3によって互いに対して引き寄せられまたは締め付けられている。図示する場合のように、このようなロック3は螺刻された端部3’を備えるボルトと、ナット3’’とから成ってよく、このボルトはフランジの穴1’’、2’’を通過する。フランジの直径に応じて、より多い、またはより少ない数で、このようなロック3が使用されることが想像できる。ボルトの螺刻部3’の上でナット3’’を回すことで、フランジの対向する面1’と2’とは互いにより近接し、それぞれの面の部分に接しているガスケットとよりきつく係合する。本発明によるフランジ接合ガスケットは図1においては見えない。
【0013】
図2a〜5bに示されるように、特に図4a、4b、図5aおよび5bを参照して、ガスケット4は外側円周4’および内側円周4’’と、第一厚さd1を有する半径方向外側部分5と、半径方向内側第一部分6および第一部分6の半径方向内側にある半径方向内側第二部分7とを有し、部分6および部分7は第二厚さまたは面間距離d2を示し、d2>d1である。
【0014】
図2a〜2cを参照して、部分6と7との間、ガスケット4の両面(または互いに相対する面)の外側に、少なくとも1つの円形山部8が、山部8の半径方向内側に隣接する第一谷部9を備えて配置されている。しかしながら図2dに示されるように、第一谷部(ここでは9’で示される)を、第一山部(ここでは8’で示される)より半径方向に外側に配置することができる。第一山部8;8’および第一谷部9;9’ が部分6および7の少なくとも1つと関連付けられる配置もまた想像され得る。また、山部および谷部が部分6と7の間のつなぎ部(transition)に配置されるのではなく、部分の1つにのみ配置されることもまた可能であり得る。例えば2対の第一山部と谷部とが使用される場合には、このとき例えば一方の山部と谷部とは部分6に配置されてよく、もう一方の山部と谷部とは部分7に配置されてよい。
【0015】
代わりの態様におけるガスケットは、例えば楕円または略錐体の横断面の形状である、フランジの形状が満たすべき接合の要求に適用する楕円形を有し得るため、図2および3のガスケットは円形の形状で示されているが、これは発明を限定するものとして解釈されない。このため、用語「円形」は、円形以外の他の形状を表すものである。
【0016】
現在のところ好適な態様において、第一山部8;8’は鋭く尖っており、第一谷部9;9’は同様に鋭く尖っている。
【0017】
ガスケット4の両側面の第一山部8;8’を45〜90°の範囲の、典型的には60°の先端角を備えて突出させてよく、および互いに真反対(または正反対)に配置されてよい。対応する様態において、第一谷部9;9’は第一山部の先端角と等しいか、それより小さい先端角の形状を有し得る。
【0018】
図2c、4bおよび5bにおいて、谷部9は、突き出ている第一山部8の半径方向内側に示されている。しかしながら谷部9’は、代わりに、図2dに示されるように第一山部8’の半径方向外側に存在し得る。
【0019】
図2dよる解決策は、連結部を流れる媒体よりも、周囲の環境が攻撃的(aggressive)でないときに適切であり得る。一方で、図2cの解決策は、提供された連結部を流れる媒体よりも、周囲の環境が攻撃的であるときに最も適切であり得る。各谷部9;9’の目的は、フランジ1、2(図5a、5b参照)が共にフランジ接合ロック3を張り亘して押圧されることにより、山部8;8’が変形して「流れる(flows)」ときに、山部8;8’からの材料を受容できるようにすることである。第一山部と第一谷部とは共通する1つの側面を有するので、山部8;8’にかかる圧力が増加し、およびそれにより山部8;8’の変形が増大するにつれて、この側面が外側に、および谷部9;9’の中へ出っ張り始める。圧縮された山部8;8’によってできる封止面8’’(図5b参照)は、山部8;8’が材料をそれ以上流さなくなるまで、次第に広がっていく。
【0020】
フランジ接合ガスケット4の外側4’および/または内側4’’のいずれであってもよいが、腐食性流体(例えば液体または粒子状材料を有する液体)が、一次封止を構成する第一山部8;8’および隣接谷部9;9’に接触し得ることを防ぐために、ガスケット4は、径方向外側部分5と第一径方向内側部分6との間のつなぎ部5’において、ガスケット4の部分6の各側面に第二山部10を有して構成される。同様に、ガスケット4は、第二径方向内側部分7の半径方向の最も内側の端領域(すなわち内側円周4’’)においてガスケット4の部分7の各側面に第三山部11を有して構成される。第二山部10と第三山部11とがガスケットの二次封止を構成する。
【0021】
反対向きに配置された第一山部8;8’の対ならびに該第二および第三山部10;11の対、すなわちガスケット4の両面にあり、それらの軸方向に存在するそれぞれの山部の対は、非押込状態で第一ピーク間距離d3を有し、フランジ1、2が互いに対して引き寄せられ、およびそれにより、ガスケットがフランジ封止機能(図5aおよび5b参照)にある押込状態でそれぞれより短いピーク間距離を有する。第一山部8;8’に関して、このより短いピーク間距離は実質的にd4である。第二および第三山部10;11の対の、同様のより短いピーク間距離もまた、d4に実質的に等しくなるか、またはd3よりも小さい値を有し得る。いかなる場合においてもd2<d3およびd3>d4である。
【0022】
ほとんどのフランジガスケットで、ガスケット4の外側部分5は、ガスケットの外側円周4’をボルト3の内向側面に向けて存在する。しかしながら、フランジと同じ直径を有し、ボルト3が通過するための複数の穴を備える種類のガスケットを使用することもできる。これは本発明に関するガスケットにおいても可能ではあるが、現在のところ好ましいガスケットの態様は、半径方向に反対に配置されたフランジボルト3間の最短距離に対応する最大直径を有する。
【0023】
図5bはボルトとナットとの接合3で張り亘した後のガスケット4の形状を示す。このような状況において、フランジ1、2は小さな鋭角(例えば1−10°の範囲内で、例えば1−5°)をなして互いに対して傾き得る。
【0024】
部分6の厚さd2から半径方向に最も外側の部分5の厚さd1への段下げ(stepping−down)が特定の機能を有することは直ちに理解される。d2からd1へのそのような段下げがないと、フランジ1,2とガスケット4の外側端部4’とはフランジを互いに対して押圧するあいだ、すなわちロックまたはボルトとナットの接合3の締結のあいだ、第一山部8;8’の材料が降伏し始め、および移動し始め、それが終わるまでで早期に接触する。ロックまたはボルトとナットの接合3のさらなる締結があると、山部8;8’の変形部8’’とフランジの面1’;2’との間の封止面はロックまたはボルトとナットの接合3およびフランジ1;2からの予備的な張り亘しを喪失し、最悪の場合、互いから離れる方向に持ち上がる。
【0025】
d2からd1への段下げはそのような予備的な張り亘しの喪失を防ぎ、封止面8’’;1’および8’’;2’の圧力はフランジ1,2ならびに締結し得るロックに基づくボルトおよびナットによってもたらされるばね効果の力の機能になる。しかしながら、第一山部8;8’と同様に、第二および第三山部10;11もまた、ロック3の締結により、フランジ面1’;2’との金属間(metal−into−metal)係合を形成する。そのため、該第二および第三山部10;11は、ガスケット4の各側面の部分6,7の第一山部8;8’と共に、3つの半径方向に離れた場所でフランジ面への円形の当接を形成する。これは、ボルトとナットのタイプのロック3の締結によって生じる部分6,7における圧迫(compression)のより安定な領域を生じさせるのみでなく、締結される山部10、11は、ボルトとナットのタイプのロック3に、第一および第二山部10;11が存在しなかった場合よりも大きな張り亘しの力を要求する。
【0026】
二次封止を形成する第二および第三山部10;11はオプションとして、第一山部8;8’と同じ尖った形状を有してよい。山部10;11の高さ(すなわち、部分6,7の面からのそれらの突出)が減らされたとき、圧迫された材料のいくらかが、隣接する第一凹部10’および隣接する第二凹部11’にそれぞれ移動し得ることにより、部分6,7のガスケット面が、引きつける力がかかる前のフランジ面1’;2’間の距離d3(山部の対のピーク間距離でもある)よりも短い相互距離d2(これらの部分の厚さである)を有することが、図4bから分かる。各凹部はボルトとナットの接合3を締結する前は(d3−d2)/2の深さを有する。
【0027】
ここに、第一山部8;8’が一次金属間封止を構成するのに対して、二次封止を構成する該第二および第三山部10;11は腐食性の環境が侵入し、ガスケット4の一次封止を構成する第一山部8;8’ならびに谷部9,9’と接触することを防ぐことが理解される。特に、山部8;8’で行われる金属圧着(またはスエージング)およびそれにより谷部9;9’に向かって生じる材料のずれ(displacement)のために、小さな構造上の、または冶金学的な(またはメタラジカルな)金属の変化を生じさせ得ることは重要であるが、それにより、腐食性の環境からの攻撃をより受けやすくなる。該第二および第三山部10;11の形の二次封止を使用することによって、このような不利な効果を避けることができる。
【0028】
同時に、該第二および第三山部10;11はガスケットに追加の封止(またはシーリング)を提供させ、および第一山部8;8’と隣接する谷部9;9’とが必要以上に圧迫または加締めされ得ないようにもする。
【0029】
導入部で述べたガスケットとは対照的に、本発明によるガスケットは延性材料ではないので、大きな温度変化に関して留意すべきいかなる量(extent)にも影響されない。
【0030】
この記載から、締結されたボルトとナットのタイプのロック3により、フランジ1;2が互いに対して引き寄せられると、第一山部8;8’は、フランジ材料の硬度よりも大きい硬度を有する場合、フランジ1;2の面1’;2’に侵入(penetrate)することができるということがわかる。これらは、同時に、特に山部の上端部分で部分的に変形されもする。対応する効果が該第二および第三谷部10;11でも生じる。
【0031】
山部8;8’および10;11の材料はフランジ1;2にある程度移動するため、山部8;8’および10;11は金属間封止を形成することができ、およびそれにより、フランジ接合を締め付ける。これにより生じた余分な材料は、山部8;8’については隣接する谷部9;9’に、山部10;11のついては凹部10’;11’に収容することができる。
【0032】
ガスケット4はフランジのいかなる調製も必要とせず、そのため、既存のガスケットまたはあらかじめ設置されたフランジ接合のガスケットに、非常に良好に取り替え得る。
【0033】
本発明のガスケットは、フランジ接合をフランジ接合を通る媒体としての加圧ヘリウムと共にウォーターコンテナに沈めて、ある期間にわたって非公的に実験的に試験され、完全に閉まっていることを確認された。
【0034】
図面には、ガスケット4の両側に1つの第一山部8;8’と、1つの第一谷部9;9’のみ存在するが、同様にガスケットの両側に存在する第二および第三山部10;11に加えて、2つ以上の一次封止(sealant)形成山部8;8’が谷部9;9’を備えてガスケット4の各側に存在してもよいことが分かる。
【0035】
ガスケット4の各側面に複数の第一山部8;8’と第一谷部9;9’があるとき、それぞれの第一谷部は、たとえば、関連する山部の同一半径方向側にあってよい。第一山部に関連する第一谷部が、半径方向外側に、すなわち、外側円周4’に面する第一山部の側面側にあり得ることもまた想像され得る。一方で、もう1つの第一山部に関連するもう1つの第一谷部は、半径方向内側に、すなわち、内側円周4’’に面する第一山部の側面側にあってよい。2つの第一山部があるこの場合において、それらは、このような場合、隣接する。これに関する代替手段において、第一山部に関連する第一谷部は、半径方向内側に、すなわち、内側円周4’’に面する第一山部の側面側にあってよい。一方で、もう1つの第一山部に関連するもう1つの第一谷部は、半径方向外側に、すなわち、外側円周4’に面する第一山部の側面側にあってよい。2つの第一山部があるこの場合において、それらのそれぞれの谷部は隣接する。
【0036】
現在好まれる態様は、図示および記載したような、ガスケットの両面の、谷部9;9’を備える1つの第一山部8;8’の対である。任意の場合において、該第二および第三山部10;11の対が加えて使用される。
【0037】
本発明によるフランジ接合ガスケットは、通常、フランジと同じ材料から、または、特には、周囲の環境において、またはフランジに接続するパイプラインにおいて使用される電解性物質または溶媒の存在下で、電気化学系列(galvanic electrochemical series)で非常に近い材料から作られる。これは電解腐食を防ぐ。このガスケットは、均質性であるために100%再生利用可能であるという利点も有する。
【0038】
結合される2つのフランジが、例えば、それぞれ青銅(またはブロンズ)と耐酸性スチールとであるような異なる材料からできている場合、バルブおよび/またはポンプを使用する生じ得る状況において、ガスケット材料の選択は最も高い硬度を有するフランジ材料の1つに基づいてなされるべきである。
【0039】
本発明に関するこのガスケットは、通常、ほとんどのフランジ材料に対して使用することができるが、山部8;8’および10、11の係合がクラックの形成または応力集中を生じさせ得る、たとえば鋳物であるような、脆性材料は例外である。
図1
図2a-2b】
図2c
図2d
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b