特許第6263619号(P6263619)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263619
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】抗血栓性医療デバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 31/02 20060101AFI20180104BHJP
   A61L 31/10 20060101ALI20180104BHJP
   A61L 31/12 20060101ALI20180104BHJP
   A61L 31/08 20060101ALI20180104BHJP
   A61L 33/06 20060101ALI20180104BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20180104BHJP
   A61F 2/90 20130101ALI20180104BHJP
【FI】
   A61L31/02
   A61L31/10
   A61L31/12 100
   A61L31/08
   A61L33/06 200
   A61L31/14 400
   A61F2/90
【請求項の数】20
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2016-529947(P2016-529947)
(86)(22)【出願日】2014年11月11日
(65)【公表番号】特表2017-501763(P2017-501763A)
(43)【公表日】2017年1月19日
(86)【国際出願番号】US2014064930
(87)【国際公開番号】WO2015077081
(87)【国際公開日】20150528
【審査請求日】2016年5月11日
(31)【優先権主張番号】14/087,459
(32)【優先日】2013年11月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512269650
【氏名又は名称】コヴィディエン リミテッド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】シェウ, ミン−シャン
(72)【発明者】
【氏名】マ, シャオドン
(72)【発明者】
【氏名】ワインライト, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】エラーモ, リンカーン
(72)【発明者】
【氏名】リ, ジュンウェイ
【審査官】 井関 めぐみ
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−523922(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/081870(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 31/02
A61F 2/90
A61L 31/08
A61L 31/10
A61L 31/12
A61L 31/14
A61L 33/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管内に移植するよう構成された複数の編組フィラメントを含む、拡張可能な管状体を含む医療デバイスであって前記複数の編組フィラメントは、
白金または白金合金を含む第1のフィラメントと、前記第1のフィラメントに直接適用されている第1のホスホリルコリンを含む第1のコーティング、ならびに
コバルト−クロム合金を含む第2のフィラメントと、第2のホスホリルコリンを含む第2のコーティングと、前記第2のフィラメントおよび前記第2のコーティングの間のシラン層
を含み、
ここで、前第1および第2のコーティングそれぞれ、100ナノメートル未満の厚さを規定し
前記シラン層は、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)トリエトキシシラン、5,6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)ジメチルエトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、(イソシアナトメチル)メチルジメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌラート、(3−トリエトキシシリルプロピル)−t−ブチルカルバマート、トリエトキシシリルプロピルエチルカルバマート、3−チオシアナトプロピルトリエトキシシラン、及びその組み合わせからなる群から選択されるシランを含む、
医療デバイス。
【請求項2】
前記第1および第2のホスホリルコリンがそれぞれ独立して、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、2−アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、並びに、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2’−(トリエチルアンモニオ)エチルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2’−(トリプロピルアンモニオ)エチルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2’−(トリブチルアンモニオ)エチルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシブチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−3’−(トリメチルアンモニオ)プロピルホスファート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−3’−(トリメチルアンモニオ)プロピルホスファート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチル−3’−(トリメチルアンモニオ)プロピルホスファート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−3’−(トリメチルアンモニオ)プロピルホスファート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−3’−(トリメチルアンモニオ)プロピルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−4’−(トリメチルアンモニオ)ブチルホスファート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−4’−(トリメチルアンモニオ)ブチルホスファート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチル−4’−(トリメチルアンモニオ)ブチルホスファート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−4’−(トリメチルアンモニオ)ブチルホスファート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−4’−(トリメチルアンモニオ)ブチルホスファート、及びその組み合わせを含むモノマーをもとにしたホスホリルコリンからなる群から選択される、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項3】
前記第1および第2のホスホリルコリンがそれぞれ、反応性の化学基を有する共重合体を含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項4】
反応性の化学基が、アミン基、ヒドロキシル基、エポキシ基、シラン基、アルデヒド基、カルボキシレート基及びチオール基からなる群から選択される、請求項3に記載の医療デバイス。
【請求項5】
前記第1のホスホリルコリンまたはその重合体若しくは共重合体が、前記第1のフィラメントに直接化学的に結合している、請求項に記載の医療デバイス。
【請求項6】
前記第1のホスホリルコリンまたはその重合体若しくは共重合体が、前記第1のフィラメントに共有結合している、請求項に記載の医療デバイス。
【請求項7】
前記第2のコーティングが、前記第2のフィラメント上のシランに化学結合している、請求項に記載の医療デバイス。
【請求項8】
前記第2のホスホリルコリン、またはその重合体若しくは共重合体が、前記第2のフィラメント上のシランに共有結合している、請求項に記載の医療デバイス。
【請求項9】
前記拡張可能な管状体が、それを動脈瘤に隣接して血管内に位置させた場合に、側壁から動脈瘤内への血液流入を阻害して動脈瘤を血栓化させ治癒をもたらすのに十分な程度にサイズ調整されている細孔を中に複数有した、前記複数の編組フィラメントで形成された側壁を有する、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項10】
前記拡張可能な管状体が、平均細孔径が500ミクロン以下である細孔を中に複数有した、前記複数の編組フィラメントで形成された側壁を有する、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項11】
前記拡張可能な管状体内で前記複数の編組フィラメントにかかるストレスが最も小さい構成となるよう前記拡張可能な管状体をヒートセットする、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項12】
前記第1および第2のコーティングが、前記第1および第2のフィラメントのそれぞれの最表面を形成する、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項13】
医療デバイスがステントを含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項14】
前記拡張可能な管状体が自己拡張型である、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項15】
前記医療デバイスが、編組フィラメント全体がベアメタルである同一デバイスより血栓形成性が低い、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項16】
前記医療デバイスが、トロンビンピークが形成されるまでの経過時間において、編組フィラメント全体がベアメタルである同一デバイスでトロンビンピークが形成されるまでの経過時間の少なくとも1.5倍を示す、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項17】
前記医療デバイスが、ピークトロンビン濃度において、編組フィラメント全体がベアメタルである同一デバイスのピークトロンビン濃度の0.8倍未満を示す、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項18】
前記第1および第2のコーティングそれぞれ、約1〜約25ナノメートルの厚さを規定する、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項19】
前記第1および第2のコーティングそれぞれ、約1〜約10ナノメートルの厚さを規定する、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項20】
前記シラン層が、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを含む、請求項に記載の医療デバイス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
血管壁、特に動脈壁は、動脈瘤と呼ばれる脆弱部位及び/または拡張部位を発症する場合がある。特定の動脈瘤、例えば、腹部大動脈瘤及び神経血管内の脳の動脈瘤、すなわち脳動脈瘤が破裂すると、出血し死亡する恐れがある。動脈瘤は、一般に、血管の脆弱化した部分を動脈循環から除外することにより治療する。脳動脈瘤の治療の場合、このような除外治療は、(i)動脈瘤の基部周辺に金属クリップを固定し、外科的にクリッピングする;(ii)動脈瘤に小さな可撓性のワイヤーコイル(マイクロコイル)を充填する;(iii)塞栓物質を使用して動脈瘤を「充填」する;(iv)取り外し可能なバルーンまたはコイルを使用し、動脈瘤に血液を供給する親血管を閉塞させる;及び/または、(v)フローダイバータ−(flow−diverter)治療を含む血管内にステントを留置することにより達成され得る。
【0002】
ステントとしては、一般に、血管内または管腔内で放射状またはその他の状態で拡張して血管遮断に対する治療または補助を提供する管状補てつ材が挙げられる。さまざまな構造のステントが利用でき、これらには、バルーン拡張型金属ステント、自己拡張型編組金属ステント、編み型金属ステント、コイルステント、ロール状ステント等が挙げられる。ステントグラフトも使用され、これには、金属ステントで支持された管状グラフト材料が挙げられる。
【0003】
医療デバイスには、潤滑特性及び/または抗接着特性を付与するためにコーティングが塗布されており、これは、生物活性剤放出用のデポーとして機能する。医療デバイス、特に、表面が不規則及び/または粗いものは血栓形成を促すことがあるため、血栓の形成を抑制するためにこうした医療デバイスにコーティングを塗布する場合がある。デバイス形成に使用される基材にこれらのコーティング剤を接着させることは、場合によっては離層が発生して困難となり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の特定の実施形態により、上に外層(複数可)を有して血栓形成性の低いデバイスを提供する、医療デバイス(例えば、ステント)が提供される。複数の実施形態では、本開示の医療デバイスは、血管内に移植するよう構成された複数の編組フィラメントを有する拡張可能な管状体を含み、かかる編組フィラメントは、白金、コバルト、クロム、ニッケルのような金属、その合金、及びその組み合わせを含み、ここで、かかるフィラメントは、ホスホリルコリンを含む外面を有し、かつ、かかるホスホリルコリンは、100ナノメートル未満の厚さを有する。
【0005】
本開示の医療デバイスを使用するシステムもまた提供される。複数の実施形態では、本開示のシステムは、動脈瘤を治療するためのシステムを含む。このようなシステムは、血管内挿入用に構成されたコアアセンブリを含み、かかるコアアセンブリは遠位セグメントと該コアアセンブリの遠位セグメントにより担持される拡張可能な管状体を有し、該管状体は、血管内に移植するよう構成された複数の編組フィラメントを有し、該編組フィラメントは、白金、コバルト、クロム、ニッケルのような金属、その合金、及びその組み合わせを含み、ここで、かかるフィラメントはホスホリルコリンを含む外面を有し、かつ、該ホスホリルコリンは厚さが100ナノメートル未満である。
【0006】
本開示の医療デバイスを用いて病状を治療するための方法もまた、提供される。複数の実施形態では、本開示の方法は、親血管の壁に形成された動脈瘤を治療する方法を含む。このような方法は、本開示の医療デバイスの管状体を、医療デバイスの側壁が動脈瘤のネックを横断して伸長するよう親血管内に展開し、これにより動脈瘤を血栓化させることを含む。
【0007】
その他の実施形態では、患者の親血管の壁に形成された動脈瘤を治療する方法は、厚さ100ナノメートル未満のホスホリルコリン外面を有する分流(flow−diverting)金属ステントを動脈瘤のネックを横断するよう親血管内で展開して、動脈瘤を治療すること、及び、(a)ホスホリルコリン外面のない他の類似ステントを患者に展開した場合に患者に処方されるであろうプロトコルよりも抗血小板薬の少ないプロトコルを患者に処方すること、または(b)患者に対していかなる抗血小板薬の処方も控えることのいずれかを含む。
【0008】
さらに別の実施形態では、患者の親血管の壁に形成された動脈瘤を治療する方法は、ピークトロンビン濃度が、ホスホリルコリン外面のない他の類似ステントのピークトロンビン濃度と比べて0.8倍未満となるよう、少なくとも一部に厚さ100ナノメートル未満のホスホリルコリン外面を有する分流(flow−diverting)ステントを、動脈瘤のネックを横断するように親血管内に展開して動脈瘤を治療すること;及び、(a)ホスホリルコリン外面のない他の類似ステントを患者に展開した場合に患者に処方されるであろうプロトコルよりも抗血小板薬の少ないプロトコルを患者に処方すること、または(b)患者に対していかなる抗血小板薬の処方も控えることのいずれかを含む。
【0009】
対象技術を、例えば、以下に記載されるさまざまな態様にしたがって説明する。対象技術の態様のさまざまな実施例を、便宜上、各項に番号を付して(1、2、3など)記載する。これらは、例として記載するもので、対象技術を限定するものではない。任意の従属項を任意の組み合わせで併用し、独立項、例えば、項1または項5それぞれに置いてよいことが留意される。他の項を同様に提示することが可能である。
項1.
白金、コバルト、クロム、ニッケル、その合金、及びその組み合わせからなる群から選択される金属を含む、血管内に移植するよう構成された編組フィラメントを複数含む、拡張可能な管状体を含み、
ここで、かかるフィラメントはホスホリルコリンを含む外面を有し、かつ
かかるホスホリルコリンは、厚さが100ナノメートル未満である、医療デバイス。
項2.
ホスホリルコリンが、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、2−アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、並びに、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2’−(トリエチルアンモニオ)エチルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2’−(トリプロピルアンモニオ)エチルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2’−(トリブチルアンモニオ)エチルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシブチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−3’−(トリメチルアンモニオ)プロピルホスファート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−3’−(トリメチルアンモニオ)プロピルホスファート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチル−3’−(トリメチルアンモニオ)プロピルホスファート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−3’−(トリメチルアンモニオ)プロピルホスファート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−3’−(トリメチルアンモニオ)プロピルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−4’−(トリメチルアンモニオ)ブチルホスファート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−4’−(トリメチルアンモニオ)ブチルホスファート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチル−4’−(トリメチルアンモニオ)ブチルホスファート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−4’−(トリメチルアンモニオ)ブチルホスファート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−4’−(トリメチルアンモニオ)ブチルホスファート、及びその組み合わせのようなモノマーをもとにしたホスホリルコリン、からなる群から選択される、項1に記載の医療デバイス。
項3.
ホスホリルコリンが、反応性の化学基を有する共重合体を含む、項1に記載の医療デバイス。
項4.
反応性の化学基が、アミン基、ヒドロキシル基、エポキシ基、シラン基、アルデヒド基、カルボキシレート基及びチオール基からなる群から選択される、項3に記載の医療デバイス。
項5.
金属とホスホリルコリンの間にシラン層をさらに含む、項1に記載の医療デバイス。
項6.
シランが、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)トリエトキシシラン、5,6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)ジメチルエトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、(イソシアナトメチル)メチルジメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌラート、(3−トリエトキシシリルプロピル)−t−ブチルカルバマート、トリエトキシシリルプロピルエチルカルバマート、3−チオシアナトプロピルトリエトキシシラン、及びその組み合わせからなる群から選択される、項5に記載の医療デバイス。
項7.
管状体が、(a)白金または白金合金のフィラメントを、(b)コバルト−クロム合金フィラメントとともに併せて含む、項1に記載の医療デバイス。
項8.
白金または白金合金のフィラメントがホスホリルコリンの層を有し、コバルト−クロム合金フィラメントが該コバルト−クロム合金フィラメントとホスホリルコリンとの間にシラン中間層を有する、項7に記載の医療デバイス。
項9.
ホスホリルコリン、またはその重合体若しくは共重合体が、白金または白金合金のフィラメントに直接化学的に結合している、項7に記載の医療デバイス。
項10.
ホスホリルコリン、またはその重合体若しくは共重合体が、白金または白金合金のフィラメントに共有結合している、項7に記載の医療デバイス。
項11.
ホスホリルコリン、またはその重合体若しくは共重合体が、コバルト−クロム合金フィラメント上のシランに化学結合している、項7に記載の医療デバイス。
項12.
ホスホリルコリン、またはその重合体若しくは共重合体が、コバルト−クロム合金フィラメント上のシランに共有結合している、項11に記載の医療デバイス。
項13.
管状体が、白金または白金合金のフィラメントを含む、項1に記載の医療デバイス。
項14.
ホスホリルコリン、またはその重合体若しくは共重合体が、白金または白金合金のフィラメントに共有結合している、項13に記載の医療デバイス。
項15.
ホスホリルコリン、またはその重合体若しくは共重合体が、白金または白金合金のフィラメントに化学結合している、項13に記載の医療デバイス。
項16.
管状体が、編組フィラメントで形成された側壁を有し、該側壁は、管状体を動脈瘤に隣接して血管内に位置させた場合に、側壁から動脈瘤内への血液流入を阻害して動脈瘤を血栓化させ治癒をもたらすのに十分な程度にサイズ調整されている細孔を中に複数有している、項1に記載の医療デバイス。
項17.
管状体が、編組フィラメントで形成された側壁を有し、該側壁は平均細孔径が500ミクロン以下である細孔を中に複数有している、項1に記載の医療デバイス。
項18.
管状体内でのフィラメントにかかるストレスが最も小さい構成となるよう管状体をヒートセットする、項1に記載の医療デバイス。
項19.
外面がフィラメントの最表面である、項1に記載の医療デバイス。
項20.
医療デバイスがステントを含む、項1に記載の医療デバイス。
項21.
ホスホリルコリンが、厚さ約1〜約100ナノメートルである、項1に記載の医療デバイス。
項22.
管状体が自己拡張型である、項1に記載の医療デバイス。
項23.
デバイスが、編組フィラメント全体がベアメタルである同一デバイスより血栓形成性が低い、項1に記載の医療デバイス。
項24.
デバイスでトロンビンピークが形成されるまでの経過時間が、編組フィラメント全体がベアメタルである同一デバイスでトロンビンピークが形成されるまでの経過時間の少なくとも1.5倍である、項1に記載の医療デバイス。
項25.
デバイスのピークトロンビン濃度が、編組フィラメント全体がベアメタルである同一デバイスのピークトロンビン濃度の0.8倍未満である、項1に記載の医療デバイス。
項26.
動脈瘤を治療するためのシステムであって、
遠位セグメントを有する、血管内挿入用に構成されたコアアセンブリと、
白金、コバルト、クロム、ニッケル、その合金、及びその組み合わせからなる群から選択される金属を含み、血管内に移植するよう構成された編組フィラメントを複数含む、該コアアセンブリ遠位セグメントにより担持される拡張可能な管状体と、を含み、
ここで、フィラメントは、ホスホリルコリンを含む外面を有し、かつ
ホスホリルコリンは、厚さが100ナノメートル未満である、システム。
項27.
ホスホリルコリンが、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、2−アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、並びに、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2’−(トリエチルアンモニオ)エチルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2’−(トリプロピルアンモニオ)エチルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2’−(トリブチルアンモニオ)エチルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシブチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−3’−(トリメチルアンモニオ)プロピルホスファート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−3’−(トリメチルアンモニオ)プロピルホスファート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチル−3’−(トリメチルアンモニオ)プロピルホスファート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−3’−(トリメチルアンモニオ)プロピルホスファート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−3’−(トリメチルアンモニオ)プロピルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−4’−(トリメチルアンモニオ)ブチルホスファート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−4’−(トリメチルアンモニオ)ブチルホスファート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチル−4’−(トリメチルアンモニオ)ブチルホスファート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−4’−(トリメチルアンモニオ)ブチルホスファート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−4’−(トリメチルアンモニオ)ブチルホスファート、及びその組み合わせのようなモノマーをもとにしたホスホリルコリン、からなる群から選択される、項26に記載のシステム。
項28.
金属とホスホリルコリンの間にシラン層をさらに含む、項26に記載のシステム。
項29.
シランが、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)トリエトキシシラン、5,6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)ジメチルエトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、(イソシアナトメチル)メチルジメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌラート、(3−トリエトキシシリルプロピル)−t−ブチルカルバマート、トリエトキシシリルプロピルエチルカルバマート、3−チオシアナトプロピルトリエトキシシラン、及びその組み合わせからなる群から選択される、項28に記載のシステム。
項30.
管状体が、(a)白金または白金合金のフィラメントを、(b)コバルト−クロム合金フィラメントとともに併せて含む、項26に記載のシステム。
項31.
白金または白金合金のフィラメントがホスホリルコリンの層を有し、コバルト−クロム合金フィラメントが該コバルト−クロム合金フィラメントとホスホリルコリンの間にシラン中間層を有する、項30に記載のシステム。
項32.
ホスホリルコリンが、白金または白金合金のフィラメントに直接化学結合している、項30に記載のシステム。
項33.
ホスホリルコリンが、白金または白金合金のフィラメントに共有結合している、項30に記載のシステム。
項34.
ホスホリルコリンが、コバルト−クロム合金フィラメント上のシランに化学結合している、項30に記載のシステム。
項35.
ホスホリルコリンが、コバルト−クロム合金フィラメント上のシランに共有結合している、項34に記載のシステム。
項36.
管状体が、白金または白金合金のフィラメントを含む、項26に記載のシステム。
項37.
ホスホリルコリンが、白金または白金合金のフィラメントに共有結合している、項36に記載のシステム。
項38.
ホスホリルコリンが、白金または白金合金のフィラメントに化学結合している、項36に記載のシステム。
項39.
管状体が、編組フィラメントで形成された側壁を有し、該側壁は、管状体を動脈瘤に隣接して血管内に位置させた場合に、側壁から動脈瘤内への血液流入を阻害して動脈瘤を血栓化させ治癒をもたらすのに十分な程度にサイズ調整されている細孔を中に複数有している、項26に記載のシステム。
項40.
管状体が、編組フィラメントで形成された側壁を有し、該側壁は平均細孔径が500ミクロン以下である細孔を中に複数有している、項26に記載のシステム。
項41.
管状体内でのフィラメントにかかるストレスが最も小さい構成となるよう管状体をヒートセットする、項26に記載のシステム。
項42.
外面がフィラメントの最表面である、項26に記載のシステム。
項43.
管状体がステントを含む、項26に記載のシステム。
項44.
ホスホリルコリンが厚さ約1〜約100ナノメートルである、項26に記載のシステム。
項45.
管状体が自己拡張型である、項26に記載のシステム。
項46.
管状体が、編組フィラメント全体がベアメタルである同一体より血栓形成性が低い、項26に記載のシステム。
項47.
管状体が示すトロンビンピーク形成までの経過時間が、編組フィラメント全体がベアメタルである同一管状体のトロンビンピークが形成されるまでの経過時間の少なくとも1.5倍である、項26に記載のシステム。
項48.
管状体が示すピークトロンビン濃度が、編組フィラメント全体がベアメタルである同一管状体のピークトロンビン濃度の0.8倍未満である、項26に記載のシステム。
項49.
マイクロカテーテルの管腔内にコアアセンブリ及び管状部材を摺動自在に受容するよう構成されたマイクロカテーテルをさらに含む、項26に記載のシステム。
項50.
親血管の壁に形成された動脈瘤を治療する方法であって、
項1〜49に記載の管状体を、医療デバイスの側壁が動脈瘤のネックを横断して伸長するよう親血管内に展開し、これにより動脈瘤を血栓化させることを含む、方法。
項51.
患者の親血管壁に形成された動脈瘤を治療する方法であって、
厚さ100ナノメートル未満のホスホリルコリン外面を有する分流(flow−diverting)金属ステントを動脈瘤のネックを横断するよう親血管内で展開して、動脈瘤を治療し、かつ
(a)ホスホリルコリン外面のない他の類似ステントを患者に展開した場合に患者に処方されるであろうプロトコルよりも抗血小板薬の少ないプロトコルを患者に処方すること、または(b)患者に対していかなる抗血小板薬の処方も控えることのいずれかを含む、方法。
項52.
ステントが、項1〜51に記載の管状体を含む、項51に記載の方法。
項53.
患者が、頭蓋内出血のリスクがあると診断されたことがある患者である、項51に記載の方法。
項54.
患者が、動脈瘤による脳出血のリスクがあると診断されたことがある患者である、項51に記載の方法。
項55.
親血管は頭蓋内動脈である、項51に記載の方法。
項56.
マイクロカテーテルを親血管内に挿入し、マイクロカテーテルを介してステントを治療領域まで送達することにより、動脈瘤近傍の治療領域にアクセスすることをさらに含む、項51に記載の方法。
項57.
ステントが示すトロンビンピークが形成されるまでの経過時間が、ホスホリルコリン外面のない類似ステントでの経過時間の少なくとも1.5倍である、項51に記載の方法。
項58.
ステントが示すピークトロンビン濃度が、ホスホリルコリン外面のない類似ステントでのピークトロンビン濃度の0.8倍未満である、項51に記載の方法。
項59.
患者の親血管壁に形成された動脈瘤を治療する方法であって、
ピークトロンビン濃度が、ホスホリルコリン外面のない他の類似ステントのピークトロンビン濃度の0.8倍未満となるよう、厚さ100ナノメートル未満のホスホリルコリン外面を少なくとも一部に有する分流(flow−diverting)ステントを、動脈瘤のネックを横断するように親血管内に展開して動脈瘤を治療すること;かつ
(a)ホスホリルコリン外面のない他の類似ステントを患者に展開した場合に患者に処方されるであろうプロトコルよりも抗血小板薬の少ないプロトコルを患者に処方すること、または(b)患者に対していかなる抗血小板薬の処方も控えることのいずれかを含む、方法。
項60.
ステントが、項1〜59に記載の管状体を含む、項59に記載の方法。
項61.
患者が、頭蓋内出血のリスクがあると診断されたことがある患者である、項59に記載の方法。
項62.
患者が、動脈瘤による脳出血のリスクがあると診断されたことがある患者である、項59に記載の方法。
項63.
親血管は頭蓋内動脈である、項59に記載の方法。
項64.
マイクロカテーテルを親血管内に挿入し、マイクロカテーテルを介してステントを治療領域まで送達することにより、動脈瘤近傍の治療領域にアクセスすることをさらに含む、項59に記載の方法。
【0010】
対象技術の別の特徴及び利点を下記説明に記載し、一部はその説明から明らかとなり、また、対象技術の実施により知り得る。対象技術の利点は、明細書及びその実施形態並びに添付の図面で詳しく指摘される構造により実現され、達成されるであろう。
【0011】
上述の概要及び以下の詳細な説明はいずれも、例示し解説するものであり、対象技術を詳細に説明することを意図していると理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
添付の図面は、対象技術のさらなる理解を提供するために含まれ、かつ、本明細書に組み入れられ、また、その一部を構成するものであり、同図面により、本開示の態様を例示し、記載説明と併せて、対象技術の原理の説明に使用される。
【0013】
図1図1は、いくつかの実施形態による、上の外層を含むステントの側面図である。
図2A図2Aは、いくつかの実施形態による、図1に示されるステントの拡大図である。
図2BC図2B〜2Cは、さまざまな状態における、図1のステントの細孔の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の詳細な説明では、対象技術の完全な理解が得られるよう、具体的な詳細が多数記載されている。これらの具体的な詳細の一部がなくても対象技術は実施され得ることを理解されるべきである。他の場合では、対象技術が不明瞭にならないよう、周知の構造及び技術は詳述されていない。さらに、本開示では、装置がステントである実施形態に言及することがあるが、本明細書に開示の実施形態の態様は、任意の移植型デバイス、例えば、コイル、フィルター、足場材(scaffold)、心室補助装置、自己拡張型及びバルーン拡張型ステント、並びに、他のデバイスで使用できる。
【0015】
本開示は、コーティング、表面処理及び/または層をその上に有しているデバイス、並びに、コーティング/表面処理/層を医療デバイスに塗布するための実施形態を提供する。本開示に従って医療デバイスを形成するために使用する基材は、金属、ガラス、セラミック、その組み合わせ等といった不活性材料などの任意の好適な物質で形成されてよい。
【0016】
複数の実施形態では、本開示の基材は、ガラス、セラミック、及び/または金属などの不活性材料で形成され得る。好適な金属には、金、銀、銅、鋼、アルミニウム、チタン、コバルト、クロム、白金、ニッケル、その合金、その組み合わせ等が挙げられる。好適な合金には、ニッケル−チタン(例えば、ニチノール)、コバルト−ニッケル、コバルト−クロム、及び白金−タングステンが挙げられる。好適なコバルト系合金の一つは、Fort Wayne Metals(Fort Wayne,Indiana,USA)から入手可能な35N LT(商標)である。
【0017】
本明細書に開示するいくつかの実施形態により、血栓形成性の低い医療デバイス(例えば、ステント)を提供する。さらに、いくつかの実施形態では、このようなデバイスは、編組型のもの及び/または分流セクションを有するものであり得る。
【0018】
本開示の医療デバイスは、その上に1以上のポリマー層を含むことができる。複数の実施形態では、本開示は、基材に結合する任意選択の中間層を形成するためのシランの使用を提供する。複数の実施形態では、次いで、ポリマー層、生物活性剤層、その組み合わせ等を基材及び/または任意の中間シラン層に塗布し直接結合させてよい。
【0019】
任意選択のシラン層形成に使用され得るシランは、アクリレート基、メタクリレート基、アルデヒド基、アミノ基、エポキシ基、エステル基、その組み合わせ等といった、これらに限定されない官能基を少なくとも1つ有してよい。複数の実施形態では、シラン層形成に使用され得る別のシランには、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(GPTS)、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)トリエトキシシラン、5,6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)ジメチルエトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、(イソシアナトメチル)メチルジメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌラート、(3−トリエトキシシリルプロピル)−t−ブチルカルバマート、トリエトキシシリルプロピルエチルカルバマート、3−チオシアナトプロピルトリエトキシシラン、その組み合わせ等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0020】
複数の実施形態では、シラン層形成に使用されるシランは溶解させてよく、その溶液を基材に塗布してよい。溶液形成に好適な溶媒には、例えば、エタノール、トルエン、水、脱イオン水、メタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート(PMアセタート)、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、その組み合わせ等が挙げられる。溶媒は、溶液の約0.1重量%〜約99.9重量%の量で存在してよく、複数の実施形態では、溶液の約50重量%〜約99.8重量%であってよい。いくつかの実施形態では、溶液は、エタノールと水とを約95%/5%の比で含んでよい。シランは、約0.1%〜約99.9%の濃度の溶液にしてよく、複数の実施形態では、約0.2%〜約50%であってよい。
【0021】
複数の実施形態では、シラン層に塗布するために好適な溶液として、エタノール/水(95%/5%)に溶解させたGPTSが含まれ得る。
【0022】
基材にポリマー層及び/または任意選択のシラン層を塗布するためには、最初に基材表面を清浄することが望ましい場合がある。例えば、基材表面を、最初に超音波処理に供し、アセトン、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノール、その組み合わせ等などの好適な溶媒で清浄してよい。超音波処理は約1分〜約20分の時間行ってよく、複数の実施形態では、約5分〜約15分行ってよい。しかし、複数の実施形態では、それより長い時間、最高1時間、最高2時間、または2時間以上、超音波処理を行ってよい。超音波処理/清浄に使用する溶媒は、混合物として塗布してよく、または個々の溶媒を順次、1回以上、塗布してよい。超音波処理は、室温、例えば、約21℃、または温度約18℃〜約55℃で行ってよく、複数の実施形態では、約40℃〜約50℃、複数の実施形態では、約45℃で行ってよい。
【0023】
洗浄後、ヒドロキシル基の生成を高めるために基材を処理に供してよい(本明細書中、ヒドロキシル化と呼ばれることもある)。基材表面は、かかる表面を、水酸化ナトリウム、硝酸、硫酸、塩酸、水酸化アンモニウム、過酸化水素、tert−ブチルヒドロペルオキシド、重クロム酸カリウム、過塩素酸、酸素プラズマ、水プラズマ、コロナ放電、オゾン、UV、その組み合わせ等を用いた処理に供することによりヒドロキシル化され得る。ヒドロキシル化に使用する物質は、濃度が約10%〜約100%であってよく、複数の実施形態では約15%〜約25%、複数の実施形態では約20%であり得る。ヒドロキシル化は、約0.5時間〜約2.5時間、または2.5時間以上起こり得、複数の実施形態では約1時間〜約2時間、複数の実施形態では約1.5時間、室温で起こり得る。ヒドロキシル化は、また、毎分約100〜約160回転(rpm)の振とうで起こり得、複数の実施形態では約120〜約140rpm、複数の実施形態では約130rpmで起こり得る。
【0024】
ヒドロキシル化後、基材は、脱イオン水、エタノール、メタノール、その組み合わせ等などの好適な物質ですすいでよい。
【0025】
その後、ヒドロキシル化した基材を、上記のポリマー及び/またはシランで処理してよい。例えば、複数の実施形態では、基材を、シランを含む溶液に約0.5時間〜約3.5時間の間浸漬してよく、複数の実施形態では約1時間〜約3時間、複数の実施形態では約2時間、室温で浸漬してよい。
【0026】
基材を有するシラン溶液は、毎分約100〜約160回転(rpm)の速度の振とうに供してもよく、複数の実施形態では約120〜約140rpm、複数の実施形態では約130rpmの速度であってよい。
【0027】
シラン物質に浸漬した後、基材を、エタノール、トルエン、脱イオン水、メタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、PMアセタート、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、その組み合わせ等などの好適な物質に、1回〜約5回、複数の実施形態では約3回、浸す、または該物質を噴霧してよい。その後、シランの付いた基材を温度約30℃〜約150℃で加熱してよく、複数の実施形態では約70℃〜約90℃、複数の実施形態では約80℃で加熱してよい。加熱は、約5分〜約25分間、または25分以上行われてよく、複数の実施形態では、約10分〜約20分、複数の実施形態では約15分行われてよい。
【0028】
基材に塗布される場合、シラン層は、厚さが50ナノメートル未満、または20ナノメートル未満、または10ナノメートル未満であってよく、複数の実施形態では約1ナノメートル〜約10ナノメートルであってよい。
【0029】
一旦、任意選択のシラン層が形成されたら、医療デバイスを別の成分で処理してシラン層上に外層を形成してよい。例えば、生物活性剤は、シラン層の遊離官能基に結合し得る。同様に、ポリマー物質及び/またはモノマー物質は、生物活性剤の有無にかかわらず、基材及び/または任意選択のシラン層の上の遊離官能基を結合し得る。
【0030】
本開示の医療デバイスに外層を形成するために使用され得、基材、若しくは上記の任意選択のシラン層のいずれか、または双方に結合し得る好適なポリマー物質及び/またはモノマー物質には、医療デバイスでの使用に好適な任意の物質が含まれる。このような物質は、低血栓形成性、潤滑性、薬物送達、タンパク質またはDNAの送達、再狭窄予防、細胞及びタンパク質の接着、潤滑性、RNA及び/または遺伝子送達、抗菌性、非汚染性、内皮化促進、その組み合わせ等、医療デバイスに望ましい特性を与え得る。
【0031】
複数の実施形態では、基材及び/または任意選択のシラン層に結合でき、本開示の医療デバイスの外層形成に使用され得る好適なポリマー物質及び/またはモノマー物質に、ホスホリルコリンが挙げられる。好適なホスホリルコリンには、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、2−アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン等、及びその組み合わせが挙げられる。他のホスホリルコリンを使用してよく、これらには、モノマーをもとにしたホスホリルコリンを含み、これらとして、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2’−(トリエチルアンモニオ)エチルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2’−(トリプロピルアンモニオ)エチルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2’−(トリブチルアンモニオ)エチルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシブチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−3’−(トリメチルアンモニオ)プロピルホスファート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−3’−(トリメチルアンモニオ)プロピルホスファート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチル−3’−(トリメチルアンモニオ)プロピルホスファート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−3’−(トリメチルアンモニオ)プロピルホスファート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−3’−(トリメチルアンモニオ)プロピルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−4’−(トリメチルアンモニオ)ブチルホスファート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−4’−(トリメチルアンモニオ)ブチルホスファート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチル−4’−(トリメチルアンモニオ)ブチルホスファート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−4’−(トリメチルアンモニオ)ブチルホスファート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−4’−(トリメチルアンモニオ)ブチルホスファート、及びその組み合わせ、が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用する場合、「(メタ)アクリル」は、メタクリル基及び/またはアクリル基の両方を含む。このようなホスホリルコリンには、日油株式会社(NOF Corporation:日本国東京)から市販されている、LIPIDURE(登録商標) MPC(例えば、反応性MPCであるLIPIDURE(登録商標)−NH01)が挙げられる。ホスホリルコリンは、反応性のホスホリルコリンを、例えば、ホスホリルコリンと反応性化学基との共重合体の形態で含むことができる。反応性基は、例えば、アミン基、ヒドロキシル基、エポキシ基、シラン基、アルデヒド基、カルボキシレート基またはチオール基であり得る。
【0032】
複数の実施形態では、ポリマー層の形成に使用されるホスホリルコリンは溶解させてよく、溶解後、その溶液を基質及び/または任意選択のシラン層に塗布する。上記のホスホリルコリンのようなポリマーを有する溶液を作製するために好適な溶媒として、例えば、エタノール、水、脱イオン水、メタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、PMアセタート、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、その組み合わせ等が挙げられる。ポリマーは、溶液の約0.5重量%〜約95重量%の量で存在してよく、複数の実施形態では溶液の約1重量%〜約50重量%の量で存在してよい。いくつかの実施形態では、溶液は、濃度約5%のMPCを含み得る。
【0033】
ポリマーは、浸漬、噴霧、ブラッシング、その組み合わせ等といったさまざまな方法を使用して基質及び/または任意選択のシラン層に塗布され得る。例えば、複数の実施形態では、任意選択でシラン層を有する基材を、ポリマーを含む溶液に約30秒〜約90秒間、複数の実施形態では約45秒〜約75秒間、複数の実施形態では約45秒間、室温で浸漬してよい。ポリマー塗布方法に関するさらなる情報は、2013年3月15日に出願された、「コーティングされた医療デバイス並びにそれを製造及び使用する用法(COATED MEDICAL DEVICES AND METHODS OF MAKING AND USING SAME)」という名称の米国特許出願第13/844,577号に記載されており、その全体は、参照により本明細書に組み入れられ、また、本明細書の一部をなすものとする。
【0034】
ポリマー溶液に浸漬し、いまや基材若しくは任意選択のシラン層のいずれか、または双方に直接結合したポリマー層を有している基材は、温度約60℃〜約100℃で加熱してよく、複数の実施形態では約70℃〜約90℃、複数の実施形態では約80℃で加熱してよい。加熱は、約15分〜約45分間、または45分以上行われてよく、複数の実施形態では約20分〜約35分間、複数の実施形態では約30分間行われてよい。
【0035】
加熱後、デバイスを再度洗浄してよい。例えば、デバイスを、超音波処理に供してから、水、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、PMアセタート、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、トルエン、その組み合わせ等で清浄してよい。超音波処理は、約1分〜約10分、または10分以上の時間行ってよく、複数の実施形態では約2分〜約8分間、複数の実施形態では約5分間行ってよい。超音波処理は、室温で行ってよい。
【0036】
この洗浄後、デバイスを、水、メタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、PMアセタート、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、その組み合わせ等のような好適な物質ですすいでよい。その後、デバイスを、温度約60℃〜約100℃で加熱してよく、複数の実施形態では約70℃〜約90℃、複数の実施形態では約80℃で加熱してよい。加熱は、約5分〜約25分間、または25分以上行ってよく、複数の実施形態では約10分〜約20分間、複数の実施形態では約15分間行ってよい。
【0037】
この加熱工程が完了すると、デバイスは、いまや、医療デバイスの包装に使用するために好適な任意の材料で包装できる状態である。
【0038】
得られた医療デバイス上のポリマー層は、厚さが約2000ナノメートル未満であってよく、複数の実施形態では約1000ナノメートル未満、複数の実施形態では約500ナノメートル未満、複数の実施形態では約250ナノメートル未満、複数の実施形態では約100ナノメートル未満、複数の実施形態では約50ナノメートル未満、複数の実施形態では約25ナノメートル未満、複数の実施形態では約10ナノメートル未満、複数の実施形態では約1ナノメートル〜約100ナノメートル、複数の実施形態では約1ナノメートル〜約50ナノメートル、複数の実施形態では約1ナノメートル〜約25ナノメートル、複数の実施形態では約1ナノメートル〜約10ナノメートルであってよい。複数の実施形態では、ポリマー層は、デバイス、例えば、ステントを形成するフィラメントを形成する医療デバイス及び/または任意の構成要素の最外層であり、かつ/または外面を形成する。
【0039】
上記のように、生物活性剤は、デバイスの一部として、及び/または層(複数可)の一部としてのいずれでも、本開示に従い塗布して本開示の医療デバイスに加えてよい。「生物活性剤」は本明細書で使用する場合、治療的または予防的効果;組織成長、細胞成長及び/または細胞分化に影響を与えるか、または関与する化合物;免疫応答などの生物学的プロセスを起こすかまたは予防することが可能な化合物;または、1つ以上の生物学的プロセスにおいて他の任意の役割を果たす化合物、を提供する任意の物質または物質混合物を含む。多種多様な生物活性剤が医療デバイスに組み込まれ得る。さらに、組織修復を高め、再狭窄リスクを制限し、かつ、ステントなどの医療デバイスの機械的または物理的特性を調節し得る任意の薬剤を、医療デバイスの調製中に加えてよい。複数の実施形態では、生物活性剤を、医療デバイスの外層形成に使用するポリマーに加えてよい。
【0040】
本開示に従って使用され得る生物活性剤の種類の例には、抗菌薬、鎮痛薬、麻酔薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、心血管薬、診断薬、交感神経模倣薬、コリン様作用薬、抗ムスカリン作用薬、鎮痙薬、ホルモン、成長因子、筋弛緩薬、アドレナリン作動性ニューロン遮断薬、抗腫瘍薬、免疫原性剤、免疫抑制剤、ステロイド、脂質、リポ多糖類、多糖類、及び酵素が挙げられる。生物活性剤を組み合わせて使用され得ることも意図される。
【0041】
本開示に含まれ得る他の生物活性剤には抗再狭窄薬があり、これらには、パクリタキセル、パクリタキセル誘導体、ラパマイシン、エバロリムス、シロリムス、QP2タキサン、アクチノマイシンD、ビンクリスチン、メトトレキサート、アンギオペプチン、マイトマイシン、BCP678、C−mycアンチセンス、シロリムス誘導体、タクロリムス、エバロリムス、ABT−578、バイオリムスA9、トラニラスト、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、インターフェロン、レフルノミド、シクロスポリン、ハロフジノン、C−プロテイナーゼ阻害剤、メタルプロテアーゼ阻害剤、バチマスタット、プロピルヒドロキシラーゼ阻害剤、VEGF、17β−エストラジオール、BCP671、HMG CoA還元酵素阻害剤、その組み合わせ等が挙げられる。
【0042】
さらに他の生物活性剤には、交感神経模倣薬;ビタミン類;抗コリン薬(例えば、オキシブチニン);冠血管拡張薬及びニトログリセリンのような心血管作動薬;アルカロイド;鎮痛薬;サリチル酸塩、アスピリン、アセトアミノフェン、d−プロポキシフェン等のような非麻薬性薬;抗癌剤;ホルモン剤、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、非ホルモン剤、アロプリノール、インドメタシン、フェニールブタゾン等のような抗炎症剤;プロスタグランジン及び細胞傷害性薬物;抗菌薬;抗生物質;抗真菌薬;抗ウイルス薬;抗凝固薬;及び免疫学的薬剤が挙げられる。
【0043】
本開示に含まれ得る好適な生物活性剤の他の例には、ウイルスおよび細胞;ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質、並びに、類似体、変異タンパク質、及びその活性断片;免疫グロブリン;抗体;サイトカイン(例えば、リンホカイン、モノカイン、ケモカイン);血液凝固因子;造血因子;インターロイキン(IL−2、IL−3、IL−4、IL−6);インターフェロン(β−IFN、(α−IFN及びγ−IFN));エリスロポエチン;ヌクレアーゼ;腫瘍壊死因子;コロニー刺激因子(例えば、GCSF、GM−CSF、MCSF);インシュリン;抗腫瘍薬及び腫瘍抑制因子;血液タンパク質;ゴナドトロピン(例えば、FSH、LH、CGなど);ホルモン及びホルモン類似体(例えば、成長ホルモン);ワクチン(例えば、腫瘍抗原、細菌抗原及びウイルス抗原;ソマトスタチン;抗原;血液凝固因子;成長因子(例えば、神経成長因子、インシュリン様成長因子);タンパク質阻害剤;タンパク質アンタゴニスト;タンパク質アゴニスト;アンチセンス分子、DNA、及びRNAなどの核酸;オリゴヌクレオチド;及びリボザイムが挙げられる。
【0044】
本開示に従って作成され得る好適な医療デバイスには、ステント、フィルター、ステントコーティング、グラフト、カテーテル、ステント/グラフト、クリップなどのファスナー、ステープル、縫合、ピン、ネジ、人工デバイス、薬物送達デバイス、吻合リング、外科用ブレード、コンタクトレンズ、眼内レンズ、外科用メッシュ、結節不要な創閉鎖、シーラント、接着剤、眼内レンズ、抗接着デバイス、アンカー、トンネル、骨充填剤、人工腱、人工靭帯、組織足場材(scaffold)、ステープル処理デバイス、バットレス、ラップバンド、整形外科用ハードウェア、ペーサー、ペースメーカー、並びに、他のインプラント及び埋込式デバイスが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0045】
複数の実施形態では、大部分のアクセス可能な基材表面は、ポリマー層及び任意選択のシラン層で覆われ得る。さらに別の実施形態では、基材全体が覆われてよい。かかる複数の層は、基材の面積、実施形態によってはステントの面積の約1%〜約100%を覆ってよく、複数の実施形態では基材面積の約20%〜約90%を覆ってよい。
【0046】
上記のように、複数の実施形態では、本開示による医療デバイスはステントである。いかなるステントも、本明細書の方法に従って処理され得る。ステントは、編組ステント、または、レーザーカットステント、ロール状ステント、バルーン拡張型ステント、自己拡張型ステント、編み型ステント等のような他形態ステントであってよい。
【0047】
複数の実施形態では、ステントのような編組血管デバイスは、金属合金及び/または他の高温材料で形成されるフィラメントを編んだものである。編み上がったものは、フィラメント内の内部ストレスの減少、及び/または、ステントの自己拡張能の増強若しくは付与を目的として、高温で熱処理、すなわち、「ヒートセット」する。ヒートセット済みステントの管状体を作っているフィラメントにかかるストレスが最も小さい、または小さい状態にあるのは、ステントが、ヒートセットされている時の形態にある場合である。このような、ストレスが最も小さい、または小さい状態には、拡張状態または完全拡張状態が含まれ得る。
【0048】
ステントは、脳内若しくは頭蓋内の動脈、または末梢動脈のように体の他の位置にある動脈などの血管内に見られるステントのような、動脈瘤治療用「フローダイバータ(flow diverter)」デバイスとして作用するよう任意選択で構成することができる。複数の実施形態では、ステントには、コヴィディエン(Covidien:Mansfield、Massachusetts)からPIPELINE(商標)塞栓デバイスとして販売されているステントを挙げることができる。このようなデバイスには、「動脈瘤用血管ステント留置(VASCULAR STENTING FOR ANEURYSMS)」という名称の2012年9月18日発行、米国特許第8,267,986号に開示されるものが挙げられ、その開示全体は参照により本明細書に組み入れられたものとする。
【0049】
例えば、本開示により、分流セクションを有するデバイスは、「分流細孔径」の細孔を有することができる。「分流細孔径」とは、平均細孔径が(デバイスの少なくとも1セクションにおいて)、そのセクションの細孔を介した流体交通を妨害または阻害するのに十分小さい細孔を意味し得る。例えば、デバイス(例えば、ステント)は、デバイス/ステントを動脈瘤のネックに隣接または横断して血管内に位置させたときに、血液が側壁から動脈瘤内に流入するのを阻害して動脈瘤を血栓化させ治癒させるのに十分な程度までそのセクションの細孔サイズが調整されている場合、作用セクション、すなわち、分流細孔径を有する分流セクションを有することができる。
【0050】
例えば、分流細孔径は、デバイス(例えば、ステント)が拡張状態の時に分流セクション、すなわち、作用セクション(または、ステント全体として)の細孔の平均細孔径が約500ミクロン未満の場合に達成可能である。(本明細書で、細孔径など編組ステントのパラメータを具体的に指すために「拡張状態」を使用する場合、かかる拡張状態とは、外部からいかなる拡張的力も加えず、かつ、外部からいかなる長手方向の延伸力または圧縮力も加えずに、ステントが自己拡張する状態である。測定を簡便にするため、この拡張状態は、ステントが封じ込め物または外部からの力が何もない状態で自己拡張して達する最大径より小さい内径を有したまっすぐなガラス円筒管内で、ステントが自己拡張して達する状態とすることができる)。いくつかの実施形態では、平均細孔径は約320ミクロン未満であり得る。本明細書に開示するいくつかの実施形態は、デバイスが、血栓形成性の低い分流セクション若しくは分流側壁を有する、または、デバイス全体として分流特性及び低血栓形成性を有するデバイス及び製造方法を可能にし、かつ提供する。
【0051】
したがって、いくつかの実施形態では、デバイスをその中に(またはそこを横断するよう)展開する体空間(例えば、動脈瘤)内の(または内への)血流が妨害されるように、デバイスの分流セクションまたは塞栓特性を備える他の部分を有することができる、編組ステントなどのデバイスが提供される。デバイスの1つ以上のセクションの多孔度及び/または細孔径は、動脈瘤または他の体空間を血栓化させるのに十分な程度まで血流を妨害するために、選択可能である。
【0052】
例えば、いくつかの実施形態では、血流を妨害して、親血管と動脈瘤との間の血液交換を全般的に減少させるよう構成可能なデバイス(例えば、ステント)が提供され、これにより、動脈瘤の血栓化を誘導することができる。このように、血流を妨害するデバイス(または、ステントの側壁またはかかる側壁のセクションなどのデバイス構成要素)は、「分流(flow diverting)」特性を有していると言うことができる。
【0053】
その上、いくつかの実施形態では、デバイス(例えば、ステント)に、編みの拡張時に使用され得る5%〜95%の範囲の多孔度を持たせることができる。いくつかの実施形態では、30%〜90%の範囲の多孔度にしてよい。さらには、50%〜85%の範囲の多孔度にしてよい。多孔度は、開状態ステントの外面総面積の百分率として算出でき、ここで、かかる外面総面積は、空(細孔占有部)表面積と中実(フィラメント占有部)表面積との和である。
【0054】
さらに、いくつかの実施形態では、デバイス(例えば、ステント)に、約20〜約300ミクロン(内径)の細孔径を持たせることができる。いくつかの実施形態では、細孔径を約25〜約250ミクロン(内径)にしてよい。いくつかの実施形態では、細孔径を約50〜約200ミクロン(内径)にしてよい。
【0055】
本明細書に開示するデバイス(例えば、ステント)の実施形態の処理方法及び製造方法もまた提供される。
【0056】
本明細書に開示される工程のいくつかの実施形態には、ポリマー層および任意選択の任意のシラン層を塗布する工程中、編組デバイス(例えば、ステント)を長手方向に延伸した形態で搭載または維持することが含まれる。このようなデバイスは拡張形態をとることができ、その場合、その細孔は一般に周方向に長くなるため、細孔径が小さくなった、すなわち、比較的「閉じた」形態となる。対照的に、細孔径が大きくなる、すなわち、比較的「開いた」形態となるのは、デバイスが長手方向に延伸した形態にある場合である。長手方向に延伸した形態では、デバイスの細孔は、すべてではないにしてもその多くが、より大きな細孔径または全般的に最大細孔径まで開かれ得る。
【0057】
例えば、いくつかの実施形態では、長手方向に延伸した形態により、デバイスの個々のフィラメントの方向を変えることで細孔が開かれ、正方形、長方形、平行四辺形、菱形、台形等のような、細孔が開いた四辺形のパターンを作ることができ、これにより、細孔径を全般的に最大化することができる。さらに、四辺形は、直角から約0°〜約15°の角度で交差するフィラメントにより形成することができる。いくつかの実施形態では、角度は、直角から約0°〜約10°であり得る。いくつかの実施形態では、角度は、直角から約0°〜約5°であり得る。その上、いくつかの実施形態では、フィラメントで正方形及び長方形などの直角四辺形を形成でき、これにより、細孔径を最大化できる。しかし、フィラメントで囲まれた細孔形状のいずれもが直角四辺形である必要はなく、デバイスの同一または異なるセクション内の細孔間で形状が異っている場合もあり得る。
【0058】
複数の実施形態では、デバイス(例えば、ステント)は、血管閉塞デバイス、血行再建デバイス、及び/または塞栓デバイスの形態をとることが可能である。いくつかの実施形態では、デバイスは、2種以上のフィラメントで作製された拡張型ステントであり得る。フィラメントは、白金、コバルト、クロム、ニッケル、その合金、及びその組み合わせなどの公知の可撓性材料で形成可能である。いくつかの実施形態では、フィラメントは、一般に円形、丸形または卵形の断面を有するワイヤーであり得る。さらに、フィラメントは、デバイスが自己拡張するように構成可能である。いくつかの実施形態では、デバイスは、タングステンを混ぜた白金合金(例えば、タングステン約8%)製の第1のフィラメント群、及び、コバルト−クロム合金またはコバルト−ニッケル合金(例えば、35N LT(商標))製の第2のフィラメント群で製作可能である。その他の実施形態では、1本以上のフィラメントを、生体適合性金属物質または生体適合性ポリマーで形成することができる。
【0059】
ワイヤーまたはフィラメントを編組み、管状、格子様構造を得ることができる。少なくとも一実施形態では、デバイス(例えば、ステント)の編組みまたは巻きつけの間、フィラメントは、1本−2本越え−2本くぐり、というパターンを使用して編組むことができる。ただし、その他の実施形態では、本開示の範囲から逸脱することなく、他の編組方法に従うことが可能である。デバイスは、例えば、動脈瘤内への血行力学的流れの抑制及び/または、例えば、動脈瘤内部での血栓化の誘導が行われるよう構成された多孔度を示し得るが、同時に、入口部にデバイスの一部が交差している隣接分岐血管への灌流を可能にする。十分に理解されるように、デバイスの多孔度は、当技術分野で公知のとおり、デバイスを展開中に「充填」することにより調整可能である。デバイスは、長さに合わせて両端部をカットできるため、半径方向の自由な拡張及び縮小は維持される。デバイスは、使用材料、フィラメント密度、およびワイヤーまたはフィラメントの端部同士が固定されていないこと、による高度な柔軟性を示すことができる。
【0060】
複数の実施形態では、上記方法に加え、本開示のフィラメントの組み合わせは、上に塗布されるポリマー層が異なっていてよい。例えば、複数の実施形態では、本開示の医療デバイスには、コバルト−ニッケルまたはコバルト−クロム合金フィラメントを編組するかまたは組み合わせた、白金または白金合金のフィラメントを含んでよい。白金または白金合金のフィラメントは、ホスホリルコリン層(例えば、フィラメントとホスホリルコリンの間に層を介在させない)を有してよく、コバルト−ニッケルまたはコバルト−クロム合金フィラメントは、シラン中間層を合金フィラメントとホスホリルコリン外層の間に有してよい。このような場合、ホスホリルコリンは、共有結合、化学結合、その組み合わせ等により白金または白金合金のフィラメントに直接結合し得る。同様に、ホスホリルコリンは、コバルト−ニッケルまたはコバルト−クロム合金フィラメント上のシラン層に化学的に結合し得るか、または、ホスホリルコリンは、コバルト−ニッケルまたはコバルト−クロム合金フィラメント上のシラン層に共有結合し得る。
【0061】
他の組み合わせもまた意図される。例えば、白金または白金合金のフィラメントは、ホスホリルコリン外層の他に中間シラン層を有してよく、また、コバルト−ニッケルまたはコバルト−クロム合金フィラメントは、ホスホリルコリン外層は有するが中間シラン層を有していなくてよい。
【0062】
図1は、ステント100として示されている管状自己拡張型デバイスを表し、少なくともその一部に沿って配されたポリマー層110を含む。任意選択のシラン層(図示せず)は、ステント100の形成に使用されたフィラメントとポリマー層110との間にあってよい。管状ステント100は、本明細書で論じる複数の編組フィラメントで形成可能な細長中空体を含む。本明細書に開示するいくつかの実施形態は、ステントの全長に沿って、またはその一部のみに沿ってポリマー層を含むことができる。ステント100は、分流部112、を含むことができる。分流部112は、分流細孔径を有する複数の細孔を含むことができ、この特性の代替または追加として、分流部112は、分流多孔度を有することができる。分流部112は、ステント100の一部、またはステント全体を含むことができる。分流細孔径は、ステントの関連部分内部、例えば、分流部112またはその一部の内部の平均細孔径、または、「算出」細孔径、すなわち、編組み角度、フィラメント数、フィラメントサイズ、フィラメント径、ステント径、長手方向の打ち込み本数、半径方向の打ち込み本数等のような、ステントの基本パラメータの測定値または公称値をもとに算出した細孔径であり得る。こうして算出した細孔径を平均細孔径の一種と見なすことができる。分流細孔径は、例えば、親血管と動脈瘤の間で、ステント100の側壁を介した血流を妨害または抑制して動脈瘤の血栓化を誘導するかまたはもたらすのに十分な径を有することが可能である。層は、一部または全体に分流部112に沿って、またはステント100の別の部分に沿って配することが可能である。
【0063】
いくつかの実施形態では、分流部112の細孔は、平均細孔径が500ミクロン未満(内径)、または約20〜約300ミクロン(内径)であり得る。さらに、平均細孔径は、約25〜約250ミクロン(内径)であり得る。さらには、平均細孔径は、約50〜約200ミクロン(内径)であり得る。
【0064】
分流部112の細孔の平均細孔径は、上に配した層材料がある、またはない場合に測定した細孔径の平均であり得る。したがって、ベアステントの分流部の平均細孔径は、分流範囲内であり得る。さらに、ステントの分流部の平均細孔径は、分流範囲内であり得る。さらには、分流部112は、細孔径が平均細孔径範囲より大きい、または小さい細孔を有することができる。
【0065】
図2Aは、ステント100の分流部112のセクションの拡大図を示す。この実施形態では、分流部112はフィラメント120を複数含み、これらが共に編組まれてステント100の管状体を形成している。図2Aは、自己拡張型ステント100の拡張または弛緩した状態を示す。この拡張または弛緩した状態において、フィラメント120は互いに交差してステント100の細孔を形成する。
【0066】
図2Bは、弛緩状態にある場合の分流セクション112の単一細孔140を示す。細孔140は、複数のフィラメント142、144、146、及び148により形成される。図示されるように、フィラメント142、144は互いに交差して、鈍角150を形成する。いくつかの実施形態では、鈍角150は約110°〜約170°であり得る。さらに、鈍角150は約120°〜約165°であり得る。さらに、鈍角150は約130°〜約160°であり得、いくつかの実施形態では、鈍角150は約150°であり得る。
【0067】
したがって、細孔140の細孔径または形態は、図2Bに示す拡張または弛緩した状態では「閉じている」、すなわち、比較的小さく、それに比べ、図2Cに示すように、ステント100が長手方向に延伸した形態では、細孔径140は比較的「開いている」。図2Cは、フィラメント142、144、146、及び148は、それぞれ互いに直角に近い、例えば、直角から約0°〜約15°以内の角度160で交差している図を示す。いくつかの実施形態では、角度160は直角から約0°〜約10°であり得る。いくつかの実施形態では、角度160は直角から約0°〜約5°であり得る。
【0068】
上記のように、フィラメント142、144、146及び148は、その上にある層が異なる別々の材料で作製してよい。例えば、フィラメント142、144、146及び148の少なくとも1つを、シラン層とポリマー外層とが上に塗布されている(図示せず)コバルト−ニッケルまたはコバルト−クロム合金で形成してよく、残りのフィラメントの少なくとも1つを、ポリマー層は有するが中間シラン層はない(図示せず)、白金または白金合金のフィラメントで形成してよい。
【0069】
その上、細孔径を最大化するために、いくつかの実施形態では、フィラメントは正方形及び/または長方形などの直角四辺形を形成できる。ただし、フィラメントに囲まれる細孔形状がすべて直角四辺形である必要はなく、ステントの同一または異なるセクションの細孔間で異なる場合もあり得る。
【0070】
デバイスは、いくつかの実施形態により、編組ステント、フィルター、または他の編組デバイスを形成するために複数のフィラメントを編組むことにより作製可能である。作製後、必要に応じてデバイスを清浄及び熱処理し、所望の特徴をデバイスに付与することができる。その後、デバイスは、本明細書に開示の方法の態様を使用して塗布された層をデバイス上に有し得る。
【0071】
したがって、本明細書に開示するデバイス及び方法のいくつかの実施形態は、血栓形成性が低いかまたはまったくない外層を有し、かつ、ステント全体を通して、またはステントの分流部分若しくは分流セクションにおいて、分流細孔径及び/または分流多孔度も有する、ステントまたは編組ステントのようなデバイスを提供することができる。
【0072】
本開示の抗血栓性ポリマー層は、かかるポリマー層のない類似のステント、デバイス、セクション等に比べ、かかるポリマー層を有するステント、デバイス、セクション等の血栓形成性を低下させる。血栓形成性を低下させることは有意であり得る。本開示による層を有するステントの、より高い抗血栓性についてのトロンボグラム(thrombogram)による試験が行われた。トロンボグラム(thrombogram)は、ステントの試料を含んでいる試験溶液中の蛍光添加剤の蛍光を検出することによりトロンビン形成を測定する。トロンビンピークが形成されるまでの経過時間を観察した。本開示に従ったポリマー層を有するステントにより、かかるポリマー層を有していない類似ステントに比してトロンビンピークの形成が有意に遅延されることがわかった。特に、トロンビンピークが形成されるまでの経過時間は、かかるポリマー層がない類似ステントの約4倍であることがわかった。したがって、かかるポリマー層を有するデバイス、ステント、セクション等を用いた場合にトロンビンピークが形成されるまでの時間は、かかるポリマー層がない類似のデバイス、ステント、セクション等を用いた場合の1.5倍以上、または2倍以上、または3倍以上、または約4倍になり得る。
【0073】
本開示に従ったポリマー層を有するステントにより、かかるポリマー層を有していない類似ステントに比してラグ相(lag phase)(トロンビン形成が発現するまでの経過時間)を有意に延長させることがわかった。特に、ラグ相(lag phase)は、かかるポリマー層がない類似ステントの約4倍であることがわかった。したがって、かかるポリマー層を有するデバイス、ステント、セクション等を用いた場合のラグ相(lag phase)は、かかるポリマー層がない類似のデバイス、ステント、セクション等を用いた場合の1.5倍以上、または2倍以上、または3倍以上、または約4倍になり得る。
【0074】
本開示に従ったポリマー層を有するステントにより、かかるポリマー層を有していない類似ステントに比して、ピークトロンビン濃度が有意に低下することがわかった。特に、ピークトロンビン濃度は、かかるポリマー層がない類似ステントの約0.3倍であることがわかった。したがって、かかるポリマー層を有するデバイス、ステント、セクション等を用いた場合のピークトロンビン濃度は、かかるポリマー層がない類似のデバイス、ステント、セクション等の場合の0.8倍未満、または0.6倍未満、または0.5倍未満、または約0.3倍であり得る。
【0075】
層の厚さは、100ナノメートル未満、50ナノメートル未満、25ナノメートル未満、または10ナノメートル未満、または、1ナノメートルから10,25、50、若しくは100ナノメートルまでであり得る。複数の実施形態では、ポリマー層の厚さは約2〜約3ナノメートルである。ステント、デバイス等のさまざまな実施形態では、上述の特性は、単独または任意の組み合わせで存在し得るか、またはまったく存在しなくてよい。
【0076】
本開示のデバイス及び工程には幾つかの利点がある。場合により、医療デバイスにシラン形成した後、その上にポリマー層を形成する本開示の方法は、基材表面へのポリマー層の接着性を高めることにより、基材上でのカバー範囲を広め得る。したがって、本開示によるポリマー層を有する医療デバイスは、より広い範囲をカバーするとともに、外層を保持し、その離層を回避する。さらに、ポリマー層としてホスホリルコリンのような材料を使用することにより、医療デバイスの血栓形成性が非常に低くなる。
【0077】
以下の実施例を、本開示の実施形態の説明のために提示する。これらの実施例は、あくまでも説明を意図しており、本開示の範囲を限定することは意図していない。また、部及び百分率は、特に明記しない限り、重量による。本明細書で使用する場合、「室温」とは、約20℃〜約30℃の温度をいう。
【実施例】
【0078】
実施例1
編組管状ステントを以下のとおり処理した。ステント各々を以下のとおり構成した:編組フィラメント48本のうち、12本は、8%タングステンとの白金合金製(フィラメント径:.0012インチ)、12本は、コバルト−クロム(35N LT(商標))製、(フィラメント径:.0012インチ)、及び24本は、35NLT製(フィラメント径:.0014インチ);全体の外径は5.2mm、及び長手方向の打ち込み本数は275本であり、両サイズとも、拡張状態、自由状態及び非延伸状態にあるときに最も一般的なサイズである。
【0079】
ステントは、何も付いていない、「ベアメタル」状態で提供され、以下のとおり調製した。各ステントを、酸(例えば、HNO、またはHSO/H混合物)、水酸化物(例えば、NaOH、またはNHOH/H混合物)またはプラズマ処理(例えば、HO、O)によりヒドロキシル化(−OH)した。ヒドロキシル化した金属を、エタノール及び脱イオン(DI)水ですすいでから、シラン処理用の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTS)溶液の入った容器内に置いた。GPTSは、容量で95%/5%のエタノール/水混合物を溶媒として使用した溶液にGPTS濃度2重量%で溶解させた。溶液に入れたステントを毎分130回転(rpm)で約90分間撹拌した。浸漬及び攪拌工程を室温下で実施した。その後、金属をエタノール及び水ですすぎ、80℃で15分間硬化させた。(硬化温度は、110℃または120℃に変更可能であり、硬化時間を15分〜90分に変えることができる)。
【0080】
次いで、シラン処理したステントを、アミノ基(濃度が5%であるLIPIDURE(登録商標)−NH01)を含有する反応性のMPC溶液内に1分間浸し、80℃で少なくとも30分間硬化させた。硬化させた後、金属表面を水に入れ超音波処理で5分間洗浄し、非共有結合しているポリマーを除去した。洗浄した金属表面を温度約80℃で15分間乾燥させた。工程及び長さのトリミングが完了した後、ステントは、それぞれの端部が開いており、一端からもう一端へ管腔が伸長し、かつ、ステントのフィラメントの全体にわたりMPCの外層を有する、管状編組ステント、と表現可能であった。MPCは、白金合金フィラメントに直接結合し、また、コバルト−クロム合金フィラメント上のシラン層に結合していた。
【0081】
本実施例1により塗布された層を上に有するステントを、トロンボグラム(thrombogram)により低血栓性について、以下のアッセイを用いて試験した。試験溶液を、(a)凍結乾燥血小板(カタログ番号101258(Biodata Corporation, Horsham, PA);血小板濃度がマイクロリットルあたり200,000の予混合物にトリス緩衝生理食塩水で再調製)、(b)凍結乾燥した正常対照血漿(PlasmaCon N、カタログ番号30−201(R2 Diagnostics, South Bend, IN);水で再調製)、(c)蛍光発光性基質(Z−Gly−Gly−Arg−AMC−HCl、カタログ番号I−1140(Bachem Americas Inc.,Torrance,CA);ジメチルスルホキシド中の予混合物濃度40mM)、及び(d)塩化カルシウム(カタログ番号223506−2.5KG(Sigma Aldrich,St. Louis,MO);水中の予混合物濃度1M)の混合物として調製した。これらを、蛍光発光性基質:塩化カルシウム:血小板:血漿が1部:2部:6部:100部の割合(容量)で試験溶液に合わせた。蛍光発光性基質の最終濃度は約400μM、また、塩化カルシウムの最終濃度は約20mMであった。
【0082】
トロンビン校正用標準溶液(カタログ番号TS20.00、Stago Diagnostics Inc.、Parsippany、NJ)および蛍光発光性基質を、基質:校正用標準溶液:対照血漿の割合(容量)が1部:11部:98部となるよう対照血漿に加え、蛍光発光性基質の最終濃度を約400μMとして校正用混合物を調製した。
【0083】
本実施例1により調製したステント(「被験ステント」)及び同一のベアメタル製ステント(「ベアステント」)をそれぞれ長さ9mmのセクションに切断して、両ステントの試料を準備した。被験ステント及びベアステントの9mmのセクションを、不透明な黒色ポリスチレン製96ウェルマイクロプレート(Fisher Scientific, Waltham, MA)の別々のウェルに個別に入れた。試験溶液(330マイクロリットル)を、被験ステント試料またはベアステント試料を含有している各ウェルに加え、同様に、それぞれが4mmのガラス球(Fisher Scientific, カタログ番号11−312B)を含有している、陽性対照として使用する数ウェルと、「ブランク」すなわち陰性対照として使用する空の数ウェルとに加えた。校正用混合物(330マイクロリットル)を空の数ウェル(陰性対照ウェルとは別)に加え、を校正用標準溶液を得た。Fluoroskan ASCENT(商標)プレートリーダー(Fisher Scientific, カタログ番号5210470)を用い、励起波長360nm、発光波長460nm、測定間隔20〜30秒、総試験時間150分で蛍光を測定した。
【0084】
被験ステントは、ベアステントに比してトロンビンピークの形成を有意に遅延させることがわかった。特に、トロンビンピークが形成されるまでの経過時間は、ベアステントで観察された時間の約4倍であることがわかった(ベアステントでの29.4分に対し被験ステントでは109.3分)。また、被験ステントの方が、ラグ相(lag phase)、すなわち、トロンビン形成が発現するまでの経過時間が長いこともわかり、被験ステントで観察されたラグ相(lag phase)はベアステントのそれの約4倍であった(ベアステントの26.2分に対し被験ステントでは99.3分)。また、被験ステントの方が、ベアステントよりピークトロンビン濃度も低いことがわかり、被験ステントで観察されたピークトロンビン濃度はベアステントの約0.3倍であった(ベアステントの473.6nmに対し被験ステントでは150.3nm)。
【0085】
また、被験ステントは、血栓形成性が空の(ブランク)ポリスチレン製ウェルよりわずかに高いだけであることもわかった。特に、被験ステントでトロンビンピークが形成されるまでの経過時間は、空ウェルで測定された時間の約97%であることがわかった(空ウェルの112.3分に対し被験ステントでは109.3分)。被験ステントで観察されたラグ相は、空ウェルの約97%であった(空ウェルの102.9分に対し被験ステントでは99.3分)。また、被験ステントは、ピークトロンビン濃度が空ウェルのそれより約6%しか高くないこともわかった(空ウェルの141.9nmに対し被験ステントでは150.3nm)。
【0086】
コバルト−クロムのフィラメントに塗布されたシラン層の厚さ測定値は、約1〜約10ナノメートルであり、白金−タングステンのフィラメント及びシラン層上のコバルト−クロムのフィラメントに塗布されたMPC層の厚さ測定値は、約2〜約3ナノメートルであった。
【0087】
治療方法
本明細書を通して言及されるように、本開示は、本明細書に開示するステントの実施形態の任意の実施形態を用いて動脈瘤または頭蓋内動脈瘤のような血管の病態を治療する方法も含む。本開示の低血栓性ステントは、いくつかの実施形態では、動脈瘤のネックを横断するように展開することができ、動脈瘤と親血管の間の血流を減少させるために利用される分流(flow−diverting)特性により、動脈瘤内側の血液が血栓化され動脈瘤に治癒をもたらす。
【0088】
有意に、本明細書に開示する低血栓性ステントは、以前はフローダイバータ−(flow−diverter)治療を受けることができなかった多数の患者の治療を容易にすることができる。このような患者とは、それまでに出血性動脈瘤に罹患した、または頭蓋内動脈系の動脈瘤から出血のリスクがあると診断されたことのある患者である。これらの患者は、現在、市販の分流(flow−diverting)ステントでは治療することはできない。なぜなら、それらのステントはベアメタルの編組ステントであり、その移植では、患者は、ステント移植後に抗血小板薬(典型的にはアスピリン及びPLAVIX(商標)(クロピドグレル))を長期間服用しなければならないからである。抗血小板薬を処方する目的は、患者の血管構造内に血栓(血餅)を形成しがちなベアメタルステントの傾向に対抗することである。しかし、頭蓋内出血を起こしたことがある、または現在そのリスクがある患者にとって、抗血小板薬を服用すると、こうした出血を起こし得るかまたはそのリスクが患者において高くなる。本明細書に開示するステントのいくつかの実施形態のような低血栓性分流(flow−diverting)ステントは、その低血栓形成性により血液希釈剤を減らすかまたは排除することができるため、抗血小板薬に忍容性のない患者に対するフローダイバータ−(flow−diverter)治療を可能にできる。
【0089】
本明細書に開示する任意のステントを移植するために、かかるステントを送達システムに搭載することができる。好適な送達システムは、2013年9月27日に出願された「医療デバイスの送達(DELIVERY OF MEDICAL DEVICES)」という名称の米国特許出願第14/040,477号;2013年8月29日に公開された「管腔ステント留置の方法及び装置(METHODS AND APPARATUS FOR LUMINAL STENTING)」という名称の米国特許出願公開第2013/0226276号;及び、2012年9月25日に発行された「血管内に閉塞デバイスを送達及び展開するためのシステム及び方法(SYSTEM AND METHOD FOR DELIVERING AND DEPLOYING AN OCCLUDING DEVICE WITHIN A VESSEL)」という名称の米国特許第8,273、101号に開示されている。これらの資料のいずれの開示もその全体が参照により本明細書に組み入れられ、かつ、本明細書の一部をなすものとする。特に、これらの資料のステント送達システム及び方法に関する教示を利用して、本明細書に開示するいかなるステントでも、これらの組み入れられる資料に開示の同じ方法で、同じ体内位置(複数可)に、しかも、同じ構成要素を使用して送達され得る。
【0090】
一般に、送達システムは、ステントを支持または含有する遠位セグメントを有する細長コアアセンブリを含むことができ、両構成要素は、マイクロカテーテルまたは他の細長いシースの管腔内に摺動自在に受けられて、マイクロカテーテルの遠位開口部が進むことができる任意の領域まで送達され得る。コアアセンブリは、ステントが血管中で動脈瘤または他の治療位置にまたがるような位置に自己拡張するよう、ステントをマイクロカテーテルを通して前進させ、その遠位端から出すために使用する。
【0091】
治療手順は、患者の動脈系への経皮的アクセスを、典型的には足または腕の主要血管を介して得ることから開始できる。ガイドワイヤーを経皮アクセスポイントを介して配置し、治療位置まで前進させることができ、この治療位置は、頭蓋内動脈であり得る。次いで、マイクロカテーテルをガイドワイヤー上で治療位置まで前進させ、カテーテルの遠位開口端部が治療位置に隣接するように位置させる。その後、ガイドワイヤーをマイクロカテーテルから抜去し、ステントを上に搭載しているかまたはステントを支持しているコアアセンブリを、マイクロカテーテルを通して前進させ、その遠位端から出す。ステントは、その後、血管の内壁とぴったり合って自己拡張できる。動脈瘤を治療する場合、ステントは、ステント側壁(例えば、編組管のセクション)が動脈瘤内部を親動脈の管腔から分離するよう、動脈瘤のネックを横断して留置される。一旦、ステントが留置されたら、コアアセンブリ及びマイクロカテーテルを患者から除去する。これで、ステント側壁は、動脈瘤で分流(flow−diverting)機能を行い、動脈瘤内の血液を血栓化させて動脈瘤治癒をもたらすことが可能となる。
【0092】
本明細書に開示するステントの低血栓特性ゆえに、治療方法のさらなる特定の態様が可能である。例えば、患者は、頭蓋内動脈系のような解剖学的動脈構造における動脈瘤からの出血をそれまで起こしたことのある患者、または、そのリスクがあると診断された患者であり得る。患者は、頭蓋内出血、動脈瘤による脳出血等のリスクがあると診断された患者であってよい。患者には、ホスホリルコリン外層またはホスホリルコリン表面がない他の類似ステントによる治療を受けた患者に必要とされるであろうレジメンまたはプロトコルの場合よりも抗血小板薬が少ないレジメンを処方可能である。患者に投与される用量が低くなり、薬物適用が少なくなり、強力ではない薬物が適用され、その後、投与頻度が減るという意味において、及び/または、ステント移植などの後の、患者の薬物適用期間が短縮されるという意味において、レジメンを「縮小」することができる。別法として、患者に、血液希釈剤をまったく処方しなくてよい。
【0093】
本明細書で論じるデバイス及び方法は、ステント上に層を塗布することだけに制限されるものではなく、他の植え込み型デバイスをいくつでも含み得る。治療部位には、血管、および、臓器体のような体部の場所または領域が含まれ得る。
【0094】
詳細な説明には具体例が数多く記載されているが、これらは、対象技術の範囲を限定するものとしてではなく、あくまでも対象技術の異なる実施例および態様の説明として解釈されるべきである。対象技術の範囲には、上記で詳述されていない他の実施形態が含まれることを理解されるべきである。本明細書に開示する対象技術の方法及び装置の構成、操作及び細部において、本開示の範囲から逸脱することなく、他のさまざまな修正、変更及び変形を行うことが可能である。特に明記されない限り、単数形での要素への言及は、明白に記載されている場合を除き、「1つ及び1つのみ」を意味することは意図しておらず、むしろ、「1つ以上」を意味することが意図される。さらに、デバイスまたは方法が、本開示の範囲内に包含するために、本開示の異なる実施形態により解決可能なあらゆる問題について扱うことを必要としない。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
白金、コバルト、クロム、ニッケル、その合金、及びその組み合わせからなる群から選択される金属を含む、血管内に移植するよう構成された編組フィラメントを複数含む、拡張可能な管状体を含み、
ここで、前記フィラメントはホスホリルコリンを含む外面を有し、かつ
前記ホスホリルコリンは、厚さが100ナノメートル未満である、
ことを含む、医療デバイス。
(項目2)
ホスホリルコリンが、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、2−アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、並びに、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2’−(トリエチルアンモニオ)エチルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2’−(トリプロピルアンモニオ)エチルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2’−(トリブチルアンモニオ)エチルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシブチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−3’−(トリメチルアンモニオ)プロピルホスファート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−3’−(トリメチルアンモニオ)プロピルホスファート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチル−3’−(トリメチルアンモニオ)プロピルホスファート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−3’−(トリメチルアンモニオ)プロピルホスファート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−3’−(トリメチルアンモニオ)プロピルホスファート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−4’−(トリメチルアンモニオ)ブチルホスファート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−4’−(トリメチルアンモニオ)ブチルホスファート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチル−4’−(トリメチルアンモニオ)ブチルホスファート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−4’−(トリメチルアンモニオ)ブチルホスファート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−4’−(トリメチルアンモニオ)ブチルホスファート、及びその組み合わせを含むモノマーをもとにしたホスホリルコリンからなる群から選択される、項目1に記載の医療デバイス。
(項目3)
ホスホリルコリンが、反応性の化学基を有する共重合体を含む、項目1に記載の医療デバイス。
(項目4)
反応性の化学基が、アミン基、ヒドロキシル基、エポキシ基、シラン基、アルデヒド基、カルボキシレート基及びチオール基からなる群から選択される、項目3に記載の医療デバイス。
(項目5)
前記金属と前記ホスホリルコリンの間にシラン層をさらに含む、項目1に記載の医療デバイス。
(項目6)
シランが、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル−トリメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)トリエトキシシラン、5,6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)ジメチルエトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、(イソシアナトメチル)メチルジメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌラート、(3−トリエトキシシリルプロピル)−t−ブチルカルバマート、トリエトキシシリルプロピルエチルカルバマート、3−チオシアナトプロピルトリエトキシシラン、及びその組み合わせからなる群から選択される、項目5に記載の医療デバイス。
(項目7)
管状体が、(a)白金または白金合金のフィラメントを、(b)コバルト−クロム合金フィラメントとともに併せて含む、項目1に記載の医療デバイス。
(項目8)
白金または白金合金のフィラメントがホスホリルコリンの層を有し、コバルト−クロム合金フィラメントが前記コバルト−クロム合金フィラメントと前記ホスホリルコリンとの間にシラン中間層を有する、項目7に記載の医療デバイス。
(項目9)
ホスホリルコリンまたはその重合体若しくは共重合体が、前記白金または白金合金のフィラメントに直接化学的に結合している、項目7に記載の医療デバイス。
(項目10)
ホスホリルコリンまたはその重合体若しくは共重合体が、前記白金または白金合金のフィラメントに共有結合している、項目7に記載の医療デバイス。
(項目11)
ホスホリルコリンまたはその重合体若しくは共重合体が、前記コバルト−クロム合金フィラメント上のシランに化学結合している、項目7に記載の医療デバイス。
(項目12)
ホスホリルコリン、またはその重合体若しくは共重合体が、前記コバルト−クロム合金フィラメント上のシランに共有結合している、項目11に記載の医療デバイス。
(項目13)
管状体が、白金または白金合金のフィラメントを含む、項目1に記載の医療デバイス。
(項目14)
ホスホリルコリン、またはその重合体若しくは共重合体が、前記白金または白金合金のフィラメントに共有結合している、項目13に記載の医療デバイス。
(項目15)
ホスホリルコリン、またはその重合体若しくは共重合体が、前記白金または白金合金のフィラメントに化学結合している、項目13に記載の医療デバイス。
(項目16)
管状体が、それを動脈瘤に隣接して血管内に位置させた場合に、側壁から動脈瘤内への血液流入を阻害して動脈瘤を血栓化させ治癒をもたらすのに十分な程度にサイズ調整されている細孔を中に複数有した、前記編組フィラメントで形成された側壁を有する、項目1に記載の医療デバイス。
(項目17)
管状体が、平均細孔径が500ミクロン以下である細孔を中に複数有した、前記編組フィラメントで形成された側壁を有する、項目1に記載の医療デバイス。
(項目18)
管状体内で前記フィラメントにかかるストレスが最も小さい構成となるよう管状体をヒートセットする、項目1に記載の医療デバイス。
(項目19)
外面が前記フィラメントの最表面である、項目1に記載の医療デバイス。
(項目20)
医療デバイスがステントを含む、項目1に記載の医療デバイス。
(項目21)
ホスホリルコリンが、厚さ約1〜約100ナノメートルである、項目1に記載の医療デバイス。
(項目22)
管状体が自己拡張型である、項目1に記載の医療デバイス。
(項目23)
デバイスが、編組フィラメント全体がベアメタルである同一デバイスより血栓形成性が低い、項目1に記載の医療デバイス。
(項目24)
デバイスが、トロンビンピークが形成されるまでの経過時間において、編組フィラメント全体がベアメタルである同一デバイスでトロンビンピークが形成されるまでの経過時間の少なくとも1.5倍を示す、項目1に記載の医療デバイス。
(項目25)
デバイスが、ピークトロンビン濃度において、編組フィラメント全体がベアメタルである同一デバイスのピークトロンビン濃度の0.8倍未満を示す、項目1に記載の医療デバイス。

図1
図2A
図2B
図2C