(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施形態におけるフィルタ装置は、増幅した信号の電圧が過電圧である場合、その増幅におけるゲインを低下させる。これにより、本実施形態におけるフィルタ装置は、過大な電圧の信号を出力することを防止するとともに、入力信号の波形を維持したまま所望の周波数帯域の信号を出力することができる。
【0018】
(第1の実施形態)
以下、
図1〜
図5を参照して、第1の実施形態におけるフィルタ装置1について説明する。
フィルタ装置1は、フィルタ部2、第1バッファ部3、抵抗R1,2、異常検出部4及びゲイン調整部5を備える。なお、ゲイン調整部5は、第1ハイパスフィルタ21に含まれて構成されてもよい。
フィルタ部2は、入力信号のうち所定の周波数帯域の信号を増幅する。この入力信号は、正側の信号と負側の信号との少なくともいずれか一方の信号が含まれる。
【0019】
フィルタ部2は、第1ハイパスフィルタ21及びバンドパスフィルタ22を備える。
第1ハイパスフィルタ21は、入力信号に対して低周波成分を除去した第1入力信号を、ゲイン調整部5を介して第1バッファ部3に出力する。
【0020】
第1バッファ部3は、第1バッファ部3の前段と後段との間における回路間のインピーダンス変換を行う。第1バッファ部3は、取得した第1入力信号を第1バッファ部3の後段のインピーダンスよりも低いインピーダンスでバンドパスフィルタ22に出力する。なお、第1バッファ部3の前段と後段との間における回路間のインピーダンスがマッチングしていれば、第1バッファ部3を省略可能である。
【0021】
バンドパスフィルタ22は、第1ハイパスフィルタ21の後段に設けられている。バンドパスフィルタ22は、第1バッファ部3を介して取得した第1入力信号に対して所定の周波数帯域の信号を所定のゲインで増幅させて出力する。すなわち、バンドパスフィルタ22は、第1入力信号の上限値と下限値とが所定の範囲に収まるように、第1入力信号を所定のゲインで増幅する。そして、バンドパスフィルタ22は、所定のゲインで増幅した第1入力信号を第2入力信号として出力する。
【0022】
例えば、バンドパスフィルタ22は、第2ハイパスフィルタ23及びローパスフィルタ24を備える。第2ハイパスフィルタ23は、第1カットオフ周波数未満の信号成分を減衰させるとともに、第1カットオフ周波数以上の信号成分を増幅する。ローパスフィルタ24は、第2カットオフ周波数以上の信号成分を減衰させるとともに、その第2カットオフ周波数未満の信号成分を増幅する。この第2カットオフ周波数は、第1カットオフ周波数よりも高い。したがって、所定の周波数帯域とは、第1カットオフ周波数以上で、且つ第2カットオフ周波数未満の周波数である。
【0023】
バンドパスフィルタ22から出力された第2入力信号は、異常検出部4に入力される。また、バンドパスフィルタ22から出力された第2入力信号は、抵抗R1及び抵抗R2で抵抗分圧されて、フィルタ装置1の後段に設けられた外部装置に出力される。なお、抵抗R1及び抵抗R2は、外部装置に出力される第2信号の電圧を調整する抵抗であって、フィルタ装置1の必須な構成ではない。
【0024】
異常検出部4は、フィルタ部2で増幅された入力信号の過電圧を検出する。すなわち、異常検出部4は、バンドパスフィルタ22から出力された第2入力信号の過電圧を検出する。
異常検出部4は、第2入力信号の電圧値が所定の検出閾値を超えた場合に、第2入力信号の過電圧を検出する。そして、異常検出部4は、第2入力信号の過電圧を検出した場合には、その過電圧を検出したことを示す異常信号をゲイン調整部5に出力する。なお、異常検出部4は、過電圧を検出した場合、異常信号を外部装置に出力してもよい。
【0025】
以下に、第1の実施形態における異常検出部4の概略構成の一例を説明する。
異常検出部4は、第2バッファ部41、第1過電圧検出部42、第2過電圧検出部43、ピークホールド部44,45、過電圧保護部46、ツェナーダイオードDz4及び抵抗R10を備える。
【0026】
第2バッファ部41は、第2バッファ部41の前段と後段との間における回路間のインピーダンス変換を行う。第2バッファ部41は、バンドパスフィルタ22から出力された第2入力信号を、第2バッファ部41の後段のインピーダンスよりも低いインピーダンスで第1過電圧検出部42及び第2過電圧検出部43に出力する。
【0027】
第1過電圧検出部42は、第2入力信号における正の過電圧を検出する。具体的には、第1過電圧検出部42は、第2入力信号における正の電圧が第1検出閾値を超えた場合に、第2入力信号における正の過電圧を検出する。この第1検出閾値は、正の値であって、外部装置の読み取り可能な電圧である許容電圧の最大値未満に設定される。
【0028】
第1過電圧検出部42は、ツェナーダイオードDz1、抵抗R3〜R6及びトランジスタTr1,Tr2を備える。
ツェナーダイオードDz1は、カソードが第2バッファ部41の出力に接続され、アノードが抵抗R3の一端及び過電圧保護部46に接続されている。
【0029】
抵抗R3の他端は、トランジスタTr1のベースに接続されている。抵抗R4は、トランジスタTr1のベースとエミッタとの間に接続されている。トランジスタTr1のエミッタはグラウンド(GND)に接続されている。抵抗R5は、トランジスタTr1のコレクタとトランジスタTr2のベースとの間に接続されている。抵抗R6は、トランジスタTr2のベースとトランジスタTr2のエミッタとの間に接続されている。トランジスタTr2のエミッタは電源電圧Vcに接続されている。また、トランジスタTr2のコレクタは、ピークホールド部44の入力に接続されている。本実施形態では、トランジスタTr1がNPN型のバイポーラトランジスタであり、トランジスタTr2がPNP型のバイポーラトランジスタである。
【0030】
以下に、第1過電圧検出部42の動作について、説明する。
ツェナーダイオードDz1は、逆方向に電圧が印加されると、第1の電圧値でツェナー降伏が発生し、流れる電流値にかかわらず一定の電圧が得られるものである。したがって、ツェナーダイオードDz1のカソードに入力した第2入力信号が第1の電圧値を超えた場合には、ツェナーダイオードDz1はツェナー降伏する。ツェナーダイオードDz1は、ツェナー降伏すると、カソードからアノードに向かって電流が流れる。これにより、抵抗R3を介してトランジスタTr1のベースに電流が流れ、トランジスタTr1がオン状態になる。そして、トランジスタTr2のベースに電流が流れるため、トランジスタTr2がオン状態になる。したがって、ピークホールド部
44に電圧が電源電圧Vcである異常信号が入力される。なお、第1検出閾値は、トランジスタTr1がオン状態になるときのツェナーダイオードDz1のカソードに印加される電圧であり、第1の電圧値に応じた値に設定される。
【0031】
次に、第2過電圧検出部43について、説明する。
第2過電圧検出部43は、第2入力信号における負の過電圧を検出する。具体的には、第2過電圧検出部43は、第2入力信号における負の電圧が第2検出閾値を超えた場合に、第2入力信号における負の過電圧を検出する。この場合における負の電圧が第2検出閾値を超えた場合とは、第2入力信号の負の電圧が第2検出閾値を下回ることを意味する。この第2検出閾値は、負の値であって、外部装置の読み取り可能な電圧である許容電圧の最小値よりも高い値に設定される。
【0032】
第2過電圧検出部43は、ツェナーダイオードDz2、ダイオードD1、抵抗R7,R8及びトランジスタTr3を備える。
ツェナーダイオードDz2は、アノードが第2バッファ部41の出力に接続され、カソードがダイオードD1のカソードに接続される。抵抗R7は、ダイオードD1のアノードとトランジスタTr3のベースとの間に接続される。抵抗R8は、トランジスタTr3のベースとエミッタとの間に接続される。トランジスタTr3のエミッタは電源電圧Vcに接続されている。また、トランジスタTr3のコレクタは、ピークホールド部45の出力に接続されている。本実施形態では、トランジスタTr3がPNP型のバイポーラトランジスタである。
【0033】
以下に、第2過電圧検出部43の動作について、説明する。
ツェナーダイオードDz2は、逆方向に電圧が印加されると、第2の電圧値でツェナー降伏が発生する。したがって、ツェナーダイオードDz2のアノードに第2入力信号の負電圧が入力されたことで、ツェナーダイオードDz2のアノードに対するカソードの電圧差が第2の電圧値を超えた場合には、ツェナーダイオードDz2はツェナー降伏する。すなわち、ツェナーダイオードDz2のカソードに印加されている電圧より第2の電圧値以下の電圧の第2入力信号がツェナーダイオードDz2のアノードに入力した場合にツェナーダイオードDz2はツェナー降伏する。ツェナーダイオードDz2は、ツェナー降伏すると、カソードからアノードに向かって電流が流れる。これにより、トランジスタTr3のベースに電流が流れるため、トランジスタTr3がオン状態になる。したがって、ピークホールド部45に電圧が電源電圧Vcである異常信号が入力される。ダイオードD1は、第2過電圧検出部43に電流が流れ込むことを防止する。なお、第2検出閾値は、トランジスタTr3がオン状態になるときのツェナーダイオードDz2のアノードに印加される電圧であり、第2の電圧値に応じた値に設定される。
【0034】
ピークホールド部44は、第1過電圧検出部42から出力された異常信号の電圧を所定時間の間ピークホールドしてゲイン調整部5に出力する。ピークホールド部45は、第2過電圧検出部43から出力された異常信号の電圧を所定時間の間ピークホールドしてゲイン調整部5に出力する。ピークホールド部44とピークホールド部45とのそれぞれが異常信号の電圧をピークホールドする時間は、同じであってもよいし、異なってもよい。以下に、ピークホールド部44が異常信号の電圧をピークホールドしている所定時間を第1ピークホールド時間という。以下に、ピークホールド部45が異常信号の電圧をピークホールドしている所定時間を第2ピークホールド時間という。
【0035】
過電圧保護部46は、第1入力信号の正側の過電圧を防止する。過電圧保護部46は、ツェナーダイオードDz3及び抵抗R9を備える。
ツェナーダイオードDz3は、逆方向に電圧が印加されると、第3の電圧値でツェナー降伏する。ツェナーダイオードDz3は、カソードが第1ハイパスフィルタ21の出力に接続されている。したがって、ツェナーダイオードDz3は、第1入力信号の正側の電圧が第3の電圧値を超えた場合には、ツェナー降伏する。これにより、トランジスタTr1のゲートに電流が流れ、トランジスタTr1がオン状態となる。これにより、ピークホールド部44に異常信号が入力される。ツェナーダイオードDz3は、第1入力信号の正側の電圧が第3の電圧値(第3検出閾値)以下になるように制御する。抵抗R9は、ツェナーダイオードDz3のツェナー降伏により流れる電流を制限する電流制限抵抗である。
【0036】
ゲイン調整部5は、異常検出部4によって第2入力信号の過電圧が検出された場合には、フィルタ部2のゲインを低下させる。例えば、ゲイン調整部5は、第2入力信号の過電圧が検出された場合には、第1ハイパスフィルタ21のゲインを低下させる。より具体的には、ゲイン調整部5は、第2入力信号の過電圧が検出された場合には、第1ハイパスフィルタ21から出力される第2入力信号の電圧を抵抗で分圧させることでゲインを低下させる。
【0037】
ゲイン調整部5は、抵抗R11〜抵抗R16、ツェナーダイオードDz11,12、トランジスタFET1及びトランジスタTr11を備える。
【0038】
抵抗R11は、一端が第1ハイパスフィルタ21の出力に接続され、他端が第1バッファ部3の入力に接続されている。抵抗R12は、一端が抵抗R11の他端に接続され、他端がグラウンドに接続されている。ツェナーダイオードDz11のアノードは抵抗R11の他端に接続されている。ツェナーダイオードDz11のカソードは、ツェナーダイオードDz12のアノードに接続されている。ツェナーダイオードDz12のカソードは、抵抗R13の一端とトランジスタTr11のコレクタとに接続されている。トランジスタFET1のドレインは、抵抗R13の他端に接続されている。トランジスタFET1のソースは、グラウンドに接続されている。抵抗R15は、トランジスタFET1のゲートとピークホールド部44の出力との間に接続される。抵抗R16は、一端がピークホールド部44の出力に接続され、他端がグラウンドに接続されている。トランジスタTr11のゲートとエミッタとの間に抵抗R14が接続されている。また、トランジスタTr11のエミッタがツェナーダイオードDz11のカソードとツェナーダイオードDz12のアノードとの接続点に接続されている。本実施形態では、トランジスタTr11がNPN型のバイポーラトランジスタである。トランジスタFET1はNchの電界効果トランジスタである。
【0039】
以下に、ゲイン調整部5の動作について、説明する。
第1過電圧検出部42により第2入力信号における正の過電圧が検出されていない場合には、ピークホールド部44からの異常信号がトランジスタFET1のゲートに入力されない。この場合には、トランジスタFET1はオフ状態である。したがって、第1入力信号は、抵抗R11と抵抗R12との抵抗分圧によって第1のゲインで第1バッファ部3に出力される。一方、第1過電圧検出部42により第2入力信号における正の過電圧が検出された場合には、ピークホールド部44からの異常信号がトランジスタFET1のゲートに入力される。この場合には、トランジスタFET1はオン状態である。したがって、第1入力信号は、抵抗R11と、抵抗R12及び抵抗R13の合成抵抗と、の抵抗分圧によってゲインが低下され、第2のゲインで第1バッファ部3に出力される。そのため、フィルタ部2から出力される第2入力信号は、入力信号の波形を維持したまま電圧のピーク値が低減する。換言すると、第2入力信号は、フィルタ装置1に入力する入力信号に対して振幅における倍率が異なるが、波形としては相似する。例えば、第2のゲインは、フィルタ部2で増幅された信号の電圧値の絶対値が検出閾値以下になる係数に応じて設定されている。
【0040】
以下に、ゲイン調整部5により第1入力信号のゲインが低下された場合における第2入力信号の波形について、
図2を用いて説明する。
図2に示すように、第2入力信号における所定の周波数帯域の信号が第1検出閾値を超えた場合、第1過電圧検出部42は、異常検出信号をトランジスタFET1のゲートに出力する。トランジスタFET1は、異常検出信号がゲートに入力するとオン状態に移行する(T1)。ただし、オフ状態からオン状態に移行するまで所定の時間のデットタイム(T2)が存在する。したがって、異常検出信号がトランジスタFET1のゲートに入力してから所定のデットタイムが経過した後、トランジスタFET1はオン状態になる(T3)。これにより、抵抗R11と、抵抗R12及び抵抗R13の合成抵抗と、の抵抗分圧によって、第1入力信号のゲインが第1のゲインから第2のゲインに低下される。
【0041】
このように、ゲイン調整部5は、トランジスタFET1がオフ状態である場合には、抵抗R11と抵抗R12とから決まる第1の分圧比で第1入力信号を分圧する。一方、ゲイン調整部5は、トランジスタFET1がオン状態である場合には、第1入力信号を第1の分圧比よりも小さい第2の分圧比で分圧する。この第2の分圧比は、抵抗R11、抵抗R12及び抵抗R13から決定される。これにより、第2入力信号は、トランジスタFET1がオン状態である場合には、入力信号の波形を維持したまま電圧のピーク値が低減される。ここで、ゲインの低下が行われない場合には、T3からT4の間のいずれかにおいて第2入力信号は、許容電圧の最大値を超えてしまう(a)。しかしながら、ゲイン調整部5においてゲインの低下が行われることでフィルタ装置1から出力される第2入力信号の最大値(b)は、外部装置の許容電圧の最大値を超えない。なお、トランジスタFET1のゲートには、第1ピークホールド時間において異常信号が入力されている。したがって、第2入力信号が第1検出閾値未満になった場合においても、第1入力信号はゲインが低下したままである。換言すれば、第1ピークホールド時間を調整することでトランジスタFET1がオン状態となる時間(ゲインを低下させる期間)を設定することができる。
【0042】
第2入力信号が第1検出閾値を超えてから第1ピークホールド時間が経過すると、異常検出信号が消失する。したがって、トランジスタFET1がオン状態からオフ状態に移行し(T4)、第1入力信号のゲインが第2のゲインから第1のゲインに戻る。
【0043】
図1に戻り、ツェナーダイオードDz11及びツェナーダイオードDz12は、第1入力信号の負の過電圧を防止する。例えば、第2入力信号における負の電圧が第2検出閾値を超えていない場合には、トランジスタTr11のベースに異常信号が入力されない。したがって、トランジスタTr11はオフ状態である。この場合には、ツェナーダイオードDz11及びツェナーダイオードDz12の降伏電圧と抵抗R13の抵抗値に基づいて第1入力信号の負電圧のゲインを低下させる。一方、第2入力信号における負の電圧が第2検出閾値を超えた場合には、トランジスタTr11のベースに異常信号が入力される。したがって、トランジスタTr11はオン状態である。この場合には、ツェナーダイオードDz11の降伏電圧と抵抗R13の抵抗値とに基づいて第1入力信号の負の電圧のゲインを低下させる。したがって、トランジスタTr11のオフ状態とオン状態とでは、オン状態の方が第1入力信号の負の電圧のゲインの変化を大きくすることができる。
【0044】
以下に、第1の実施形態におけるフィルタ装置1の動作の流れについて、
図3〜
図5を用いて、説明する。
第1ハイパスフィルタ21は、
図4に示すような入力信号を取得する(ステップS101)。第1ハイパスフィルタ21は、取得した入力信号に対して低周波成分を除去した第1入力信号をゲイン調整部5を介して第1バッファ部3に出力する(ステップS102)。第1バッファ部3は、取得した第1入力信号を第1バッファ部3の後段のインピーダンスよりも低いインピーダンスでバンドパスフィルタ22に出力する。
【0045】
バンドパスフィルタ22は、第1バッファ部3を介して取得した第1入力信号に対して所定の周波数帯域の信号を所定のゲインで増幅させた第2入力信号を出力する(ステップS103)。
【0046】
異常検出部4は、第1入力信号又は第2入力信号の電圧値が検出閾値を超えたか否かを判定する。
異常検出部4の過電圧保護部46は、第1入力信号の正側の電圧が第3検出閾値を超えるか否かを判定する。過電圧保護部46は、第1入力信号が第3検出閾値を超える場合には、異常信号をゲイン調整部5に出力して、フィルタ部2のゲインを低下させる。一方、過電圧保護部46は、第1入力信号が第3検出閾値以下の場合には、異常信号をゲイン調整部5に出力しない(ステップS104)。
【0047】
また、異常検出部4は、第2入力信号の電圧値が検出閾値を超えたか否かを判定する(ステップS105)。例えば、異常検出部4は、第2入力信号の正の電圧値が第1検出閾値を超えた場合に、第2入力信号における正の過電圧を検出する。そして、異常検出部4は、第2入力信号における正の過電圧を検出した場合には、異常信号をゲイン調整部5に出力する。なお、第2入力信号の正の電圧値が第1検出閾値を超える場合とは、例えば、温度や湿度等の外部環境によりフィルタ装置1内の部品の特性が変化することでフィルタ部2のゲインが上昇してしまう場合である。本実施形態では、
図4の符号c示す入力信号の信号波形が外部環境によるフィルタ部2のゲインの上昇により過度に増幅されたとする。
【0048】
ゲイン調整部5は、異常検出部4から異常信号を検出した場合には、フィルタ部2のゲインを低下させる(ステップS106)。例えば、ゲイン調整部5は、異常検出部4から異常信号を検出した場合には、第1ハイパスフィルタから出力される第1入力信号の電圧を抵抗で分圧させることで第1のゲインから第2のゲインに低下させる。これにより、
図5に示すように、フィルタ装置1は、第2入力信号の電圧をクランプすることなく、フィルタ部2のゲインを低下させることで第2入力信号の電圧(
図4の符号c示す入力信号の電圧)が許容電圧の最大値を超えることを防止する。したがって、フィルタ装置1は、入力信号の波形を維持したまま所望の周波数帯域の第2入力信号を出力することができる。
【0049】
ゲイン調整部5は、異常検出部4からの異常信号の出力が停止したか否かを判定する(ステップS107)。ゲイン調整部5は、異常検出部4からの異常信号の出力が停止した場合には、フィルタ部2のゲインを第1のゲインに戻す(ステップS108)。一方、ゲイン調整部5は、異常検出部4からの異常信号の出力が停止されていない場合には、フィルタ部2のゲインを第2のゲインのままに保持する。
【0050】
上述したように、第1の実施形態におけるフィルタ装置1は、入力信号のうち所定の周波数帯域の信号を増幅するフィルタ部2と、フィルタ部2で増幅された信号の過電圧を検出する異常検出部4と、フィルタ部2で増幅された信号の過電圧が検出された場合にはフィルタ部2のゲインを低下させるゲイン調整部5と、を備える。これにより、第1の実施形態におけるフィルタ装置1は、過大な電圧の信号を出力することを防止するとともに、入力信号の波形を維持したまま所望の周波数帯域の信号を出力することができる。
【0051】
(第2の実施形態)
以下、
図6を参照して、第2の実施形態におけるフィルタ装置1Aについて説明する。フィルタ装置1Aは、第1の実施形態におけるフィルタ装置1と比較して、異常検出部4Aとゲイン調整部5Aとにおいて構成が異なる。なお、図面において、同一又は類似の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省く場合がある。
【0052】
フィルタ装置1Aは、フィルタ部2、第1バッファ部3、抵抗R1,2、異常検出部4A及びゲイン調整部5Aを備える。
【0053】
異常検出部4Aは、フィルタ部2Aで増幅された入力信号の過電圧を検出する。すなわち、異常検出部4Aは、バンドパスフィルタ22から出力された第2入力信号の過電圧を検出する。
【0054】
以下に、第2の実施形態における異常検出部4Aの概略構成の一例を説明する。
異常検出部4Aは、第2バッファ部41、第1過電圧検出部42、第2過電圧検出部43、ピークホールド部50、過電圧保護部46,47及び抵抗R22,23を備える。
【0055】
過電圧保護部47は、第1入力信号の負側の過電圧を防止する。過電圧保護部47は、トランジスタTr4、抵抗20,21及びツェナーダイオードDz5を備える。
【0056】
トランジスタTr4のコレクタは、抵抗R7及びダイオードD1のアノードの接続点に接続されている。トランジスタTr4のエミッタは、グラウンドに接続されている。トランジスタTr4のエミッタとべースとの間に抵抗R21が接続されている。トランジスタTr4のベースには、抵抗R20の一端が接続されている。抵抗R20の他端には、ツェナーダイオードDz5のアノードが接続されている。ツェナーダイオードDz5のカソードはグラウンドに接続されている。
【0057】
ツェナーダイオードDz5は、逆方向に電圧が印加されると、第4の電圧値でツェナー降伏する。したがって、ツェナーダイオードDz5は、第1入力信号の負側の電圧が第4の電圧値を超えた場合にツェナー降伏する。ツェナーダイオードDz5は、ツェナー降伏すると、トランジスタTr4のベースに電流が流れ込むためオン状態となる。トランジスタTr4がオン状態になると、トランジスタTr3のベースに電流が流れるため、トランジスタTr3がオン状態となり、異常信号がピークホールド部50に出力される。これにより、第1入力信号の負側の過電圧を防止可能となる。なお、防止可能な第1入力信号の負側の過電圧は、第4の電圧値に応じて設定されてもよい。
【0058】
ピークホールド部50は、第1過電圧検出部42と第2過電圧検出部43のぞれぞれの出力に接続されている。ピークホールド部50は、第1過電圧検出部42と第2過電圧検出部43との少なくともいずれから異常信号を取得した場合には、その異常信号の電圧を所定時間の間においてピークホールドしてゲイン調整部5に出力する。
【0059】
ゲイン調整部5Aは、異常検出部4において第2入力信号の過電圧が検出された場合には、フィルタ部2のゲインを低下させる。例えば、ゲイン調整部5Aは、第2入力信号の過電圧が検出された場合には、第1ハイパスフィルタ21のゲインを低下させる。
【0060】
ゲイン調整部5Aは、抵抗R11〜抵抗R13及びリレー部60を備える。
抵抗R13は一端が抵抗R11の他端に接続されている。リレー部60は、抵抗R13の他端とグラウンドとの間に接続されている。また、リレー部60は、ピークホールド部50の出力に接続されている。
【0061】
リレー部60は、ピークホールド部50から異常信号が出力されている間、抵抗R13の他端とグラウンドとの間を導通させる。これにより、第1入力信号は、抵抗R11と、抵抗R12及び抵抗R13の合成抵抗と、の抵抗分圧によってゲインが低下され、第2のゲインで第1バッファ部3に出力される。一方、リレー部60に対してピークホールド部50からの異常信号が出力されない場合、リレー部60は、抵抗R13の他端とグラウンドとの間を非導通にする。
【0062】
例えば、リレー部60は、フォトMOSリレーである。リレー部60がフォトMOSリレーである場合、ピークホールド部50の出力とグラウンドとの間にフォトMOSリレーの発光部であるLED61が接続される。また、フォトMOSリレーの受光部であるMOSFET62には抵抗R13とグラウンドとがそれぞれ接続される。
【0063】
このように、第2の実施形態の異常検出部4Aは、第2入力信号の正の電圧値が第1検出閾値を超えた場合に異常信号をゲイン調整部5Aに出力する。また、異常検出部4Aは、第2入力信号の負の電圧値が第2検出閾値を超えた場合に異常信号をゲイン調整部5Aに出力する。そして、ゲイン調整部5Aは、異常検出部4Aから異常信号を取得した場合には、フィルタ部2のゲインを低下させる。これにより、フィルタ装置1Aは、第2入力信号の正側及び負側の過大な電圧の信号を出力することを防止するとともに、入力信号の波形を維持したまま所望の周波数帯域の第2入力信号を出力することができる。
【0064】
上述の実施形態において、フィルタ装置1,1Aは、ハードウエアにより実現されてもよく、ソフトウエアにより実現されてもよく、ハードウエアとソフトウエアとの組み合わせにより実現されてもよい。また、プログラムが実行されることにより、コンピュータが、フィルタ装置1,1Aの一部として機能してもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な媒体に記憶されていてもよく、ネットワークに接続された記憶装置に記憶されていてもよい。
【0065】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
入力信号のうち所定の周波数帯域の信号を増幅するフィルタ部と、前記フィルタ部で増幅された信号の過電圧を検出する異常検出部と、前記過電圧が検出された場合には前記フィルタ部のゲインを低下させるゲイン調整部と、を備える。