(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記酸または酸の金属塩が、無機酸、無機酸アルカリ金属塩、有機酸、および有機酸アルカリ金属塩よりなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の金属防錆剤組成物。
前記無機酸または無機酸アルカリ金属塩が、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、およびホウ酸よりなる群から選択される少なくとも1種である請求項2に記載の金属防錆剤組成物。
前記有機酸または有機酸アルカリ金属塩が、脂肪族ジカルボン酸、芳香族カルボン酸、複素環カルボン酸化合物、オキシカルボン酸、アミノカルボン酸、ポリアミノカルボン酸、およびこれらの酸をアルカリ金属で部分中和した塩よりなる群から選択される少なくとも1種である請求項2に記載の金属防錆剤組成物。
さらに、ベンゾトリアゾール、メチルベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾールもしくはメチルベンゾトリアゾールをアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属で部分的に中和した塩、3−メチル−5−ピラゾロン、1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、および2−メルカプトベンゾイミダゾールよりなる群から選択される少なくとも1種を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属防錆剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.金属防錆剤組成物
本発明の金属防錆剤組成物は一般式(I)
【0018】
[一般式(I)中、Rは、水素原子、又は、炭素数1〜4のアルキル基を表す。]
で表される化合物のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩と、酸または酸の金属塩とを含有し、1質量%の濃度で水に溶解または分散させたときのpHが4.5以上、6.5以下であることを特徴とする。一般式(I)において、Rとしては、水素原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が挙げられ、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、水素原子、炭素数1〜2のアルキル基がより好ましく、水素原子及び炭素数1のアルキル基(メチル基)が特に好ましい。
【0019】
本発明の金属防錆剤組成物は、化合物(I)のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩と、酸または酸の金属塩とを使用することにより、金属防錆剤組成物は加熱に対しても比較的安定となり、例えば、乾燥状態で熱可塑性樹脂に練り込んで防錆フィルムを製造する際にも、気化消失しにくくなる。さらに、化合物(I)のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩と、酸または酸の金属塩とを、特定の酸性度となるように共存させると、雰囲気中の水分により化合物(I)のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の複分解反応が起こり、化合物(I)の防錆ガスが発生する。これにより、本発明の金属防錆剤組成物は、優れた接触防錆性能を維持しながら、気化防錆性能に優れるとともに耐熱性に優れ、特に鋳鉄や鉄鋼などの鉄系金属に対する防錆性能に優れるものとなる。
【0020】
なお、本明細書において、接触防錆性能とは、金属防錆剤組成物と金属とが接触している状態における防錆性能を表し、気化防錆性能とは、金属防錆剤組成物と金属とが接触していない状態における防錆性能を表すものとする。金属防錆剤組成物と金属とが接触している状態とは、金属防錆剤組成物そのものが、何らかの形態で金属に接触している状態を意味するものとし、金属表面に生じた結露に溶解した状態で金属と接触している状態も含むものとする。また、金属防錆剤組成物と金属とが接触していない状態とは、金属防錆剤組成物そのものは金属に接触していない(非接触の)状態を意味するものとし、金属防錆剤組成物の複分解反応等により生じたガスが金属に接触し、金属防錆剤組成物そのものは金属に接触していない状態も含むものとする。
【0021】
本発明の金属防錆剤組成物は、化合物(I)のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を含む。これらの成分は、加熱に対しても比較的安定であり、例えば、熱可塑性樹脂に練り込んで防錆フィルムを製造する際にも、気化消失しにくいものである。化合物(I)としては、安息香酸、トルイル酸、エチル安息香酸、n−プロピル安息香酸、2−プロピル安息香酸、n−ブチル安息香酸、2−ブチル安息香酸、tert−ブチル安息香酸等が挙げられる。なお、Rが炭素数1〜4のアルキル基である場合、カルボキシ基とRの置換位置は、オルト、メタ、パラのいずれでもよく、また、複数の置換位置の化合物が混合した化合物であってもよい。また、化合物(I)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよいが、1種を単独で用いることが好ましい。化合物(I)としては、安息香酸、トルイル酸が特に好ましい。
【0022】
化合物(I)のアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。化合物(I)のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して用いてもよいが、1種を単独で使用することが好ましい。化合物(I)のアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の複分解反応をより起こりやすくし、化合物(I)の防錆ガスの発生を一層促進する観点から、化合物(I)のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩としては、アルカリ金属塩であることがより好ましく、ナトリウム塩であることが特に好ましい。
【0023】
安息香酸のアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩としては、安息香酸リチウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム等の安息香酸のアルカリ金属塩;安息香酸マグネシウム、安息香酸カルシウム等の安息香酸のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。また、トルイル酸のアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩としては、トルイル酸リチウム、トルイル酸ナトリウム、トルイル酸カリウム等のトルイル酸のアルカリ金属塩;トルイル酸マグネシウム、トルイル酸カルシウム等のトルイル酸のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。
【0024】
化合物(I)のアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の複分解反応をより起こりやすくし、化合物(I)の防錆ガスの発生を一層促進する観点から、化合物(I)のアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩としては、安息香酸またはトルイル酸のアルカリ金属塩であることがより好ましく、安息香酸ナトリウムまたはトルイル酸ナトリウムであることが特に好ましい。これにより、鉄鋼に対してより高い気化防錆性能を発揮させることができる。
【0025】
本発明の金属防錆剤組成物において、化合物(I)のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の含有量は、金属防錆剤組成物の100質量%に対して、50質量%以上であることが好ましい。化合物(I)のアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の含有量が多いほど、鋳鉄や鉄鋼などの鉄系金属に対する防錆性能に優れる。そのため、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは65質量%以上である。また、複分解反応による化合物(I)の防錆ガスの発生を促進する観点からは、化合物(I)のアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の含有量は、金属防錆剤組成物の100質量%に対して、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは88質量%以下である。
【0026】
本発明の金属防錆剤組成物は、酸または酸の金属塩を含む。酸または酸の金属塩を含むことにより、本発明の金属防錆剤組成物の酸性度を調整することができる。その結果、複分解反応を起こり易くし、化合物(I)の防錆ガスの発生を促進することができる。前記酸または酸の金属塩としては、無機酸、無機酸アルカリ金属塩、有機酸、および有機酸アルカリ金属塩よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。なお、前記無機酸アルカリ金属塩、有機酸アルカリ金属塩は、無機酸、有機酸がアルカリ金属により部分的に中和された化合物を意味するものであり、これらの無機酸アルカリ金属塩、有機酸アルカリ金属塩は、酸として作用するものである。
【0027】
無機酸、有機酸がアルカリ金属により部分的に中和された化合物を製造する方法としては、例えば、無機酸、有機酸と、その酸の価数よりも少ない当量のアルカリ金属の水酸化物とを混合し、水存在下で混合溶解反応させ、急速に乾燥させる方法などを用いることができる。急速に乾燥させる方法としては、噴霧乾燥(スプレードライ)法などを好ましく用いることができる。
【0028】
無機酸としては、硫酸、リン酸、ホウ酸等が挙げられる。無機酸アルカリ金属塩としては、前記無機酸のアルカリ金属塩、すなわち硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム等の硫酸水素アルカリ金属塩;リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム等のリン酸二水素アルカリ金属塩等が挙げられる。中でも、前記無機酸または無機酸アルカリ金属塩としては、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、およびホウ酸よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0029】
有機酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、テトラデカンジカルボン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸等;p−ニトロ安息香酸、アミノ安息香酸、サリチル酸、p−トルイル酸、p−tert−ブチル安息香酸等の芳香族カルボン酸;2−ピリジン酸、3−ピリジン酸、4−ピリジン酸、カルボキシベンゾトリアゾール等の複素環カルボン酸化合物、グリコール酸、乳酸、α−オキシ酪酸、リンゴ酸、α−オキシグルタル酸、クエン酸、グリセリン酸等のオキシカルボン酸;メチルグリシンジ酢酸、イミノジコハク酸、ヒドロキシイミノジコハク酸等のアミノカルボン酸;エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸等のポリアミノカルボン酸等が挙げられる。有機酸アルカリ金属塩としては、前記有機酸のアルカリ金属塩が挙げられ、好ましくは前記飽和脂肪族ジカルボン酸のアルカリ金属塩である。中でも、前記有機酸または有機酸アルカリ金属塩としては、脂肪族ジカルボン酸、芳香族カルボン酸、複素環カルボン酸化合物、オキシカルボン酸、アミノカルボン酸、ポリアミノカルボン酸およびこれらの酸をアルカリ金属で部分中和した塩よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。なお、複素環カルボン酸化合物は、非鉄金属に対しても優れた接触および気化防錆性能を発揮することができるため、好ましい。
【0030】
前記酸または酸の金属塩は、無機酸アルカリ金属塩が好ましく、リン酸二水素アルカリ金属塩がより好ましく、リン酸二水素ナトリウム塩が特に好ましい。
【0031】
また、前記酸または酸の金属塩は、カルボン酸を有すると、上記の酸性度を調整する作用に加えて、金属表面に吸着することができるため、他の酸化成分と金属との接触の機会が少なくなり、一層優れた接触防錆効果を発揮することができる。このような観点からは、酸または酸の金属塩としては、飽和脂肪族ジカルボン酸、芳香族カルボン酸、複素環カルボン酸化合物が好ましい。さらに、飽和脂肪族カルボン酸は飽和脂肪族ジカルボン酸がより好ましく、これらカルボキシ基の両末端が鉄表面に吸着することで、鉄に対する防錆効果が発揮される。また、飽和脂肪族ジカルボン酸の炭素数は8〜12がさらに好ましく、セバシン酸、ドデカン二酸がより好ましい。酸または酸の金属塩は、カルボン酸に加えて芳香環を有すると酸化防止効果が強まるため、芳香族カルボン酸がより好ましく、p−トルイル酸が特に好ましい。酸または酸の金属塩は、複素環を有すると、金属と複合して表面皮膜を形成し、より効果的に接触防錆効果を発揮することができるため、複素環カルボン酸化合物がより好ましく、カルボキシベンゾトリアゾールが特に好ましい。
【0032】
本発明の金属防錆剤組成物において、酸または酸の金属塩の含有量は、金属防錆剤組成物の100質量%に対して、5質量%以上、50質量%以下であることが好ましい。酸または酸の金属塩の含有量が多いほど、金属防錆剤組成物の酸性度が強くなり(高くなり)、これにより化合物(I)のアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の複分解反応が促進されるため、気化防錆性能を向上することができる。そのため、酸または酸の金属塩の含有量は、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは12質量%以上である。また、酸または酸の金属塩の含有量が少ないほど、金属防錆剤組成物の酸性度が弱くなり(低くなり)、接触防錆性能を向上することができる。そのため、酸または酸の金属塩の含有量は、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下である。
【0033】
また本発明の金属防錆剤組成物において、化合物(I)のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の含有量と、酸または酸の金属塩の含有量の比(化合物(I)のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩:酸または酸の金属塩)は、質量比で、6:1以上、2:1以下であることが好ましい。前記比が大きいほど、金属防錆剤組成物の酸性度が弱くなる(低くなる)ため接触防錆性能が向上する。そのため、前記比は、より好ましくは3:1以上、さらに好ましくは3.5:1以上、特に好ましくは3.8:1以上である。また、前記比が小さいほど、金属防錆剤組成物の酸性度が強くなる(高くなる)ため気化防錆性能が向上する。そのため、前記比は、より好ましくは5.5:1以下、さらに好ましくは5:1以下、特に好ましくは4.8:1以下である。
【0034】
本発明の金属防錆剤組成物は、さらに、防錆助剤として、カルボキシ基を有しない複素環化合物を含むことが好ましい。これにより、鋳鉄や鉄鋼などの鉄のみならず、銅や亜鉛、銀などに対しても優れた接触防錆性能を発揮する。複素環化合物は、金属と複合して表面皮膜を形成することにより、一層効果的に接触防錆効果を発揮することができる。このような優れた接触防錆効果は、銅、亜鉛、銀等の非鉄金属に対して用いた場合に一層顕著に発揮される。カルボキシ基を有しない複素環化合物としては、カルボキシ基を有しないベンゾトリアゾール化合物、カルボキシ基を有しないピラゾロン化合物、カルボキシ基を有しないイミダゾール化合物が挙げられる。
【0035】
前記カルボキシ基を有しないベンゾトリアゾール化合物は、分子中にベンゾトリアゾール骨格を有し、カルボキシ基を有しない化合物であれば特に限定されない。前記ベンゾトリアゾール化合物としては、ベンゾトリアゾール、メチルベンゾトリアゾール、ジメチルベンゾトリアゾール、および、これらの化合物を、アルカリ金属またはアルカリ土類金属で部分的に中和した塩等が挙げられる。これらのベンゾトリアゾール化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、ベンゾトリアゾールもしくはメチルベンゾトリアゾールを、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属で部分中和した塩が好ましく、ベンゾトリアゾールのアルカリ金属塩またはメチルベンゾトリアゾールのアルカリ土類金属塩がより好ましい。
【0036】
前記カルボキシ基を有しないピラゾロン化合物としては、分子中にピラゾロン骨格を有し、カルボキシ基を有しない化合物であれば特に制限されない。前記ピラゾロン化合物としては、3−メチル−5−ピラゾロン、1,3−ジメチル−5−ピラゾロン、1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロンなどを挙げることができる。これらのピラゾロン化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、3−メチル−5−ピラゾロン、1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロンが好ましい。
【0037】
前記カルボキシ基を有しないイミダゾール化合物としては、分子中にイミダゾール骨格を有し、カルボキシ基を有しない化合物であれば特に限定されない。前記イミダゾール化合物としては、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ホルミルイミダゾール、4−ホルミルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、イミダゾール−4,5−ジカルボン酸、2−メルカプトベンゾイミダゾールなどを挙げることができる。これらのイミダゾール化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾールが好ましい。
【0038】
本発明の金属防錆剤組成物において、防錆助剤としてカルボキシ基を有しない複素環化合物を含む場合、その含有量は、金属防錆剤組成物の100質量%に対して、5質量%以上、40質量%以下であることが好ましい。カルボキシ基を有しない複素環化合物の含有量が多いほど、銅、亜鉛、銀等の非鉄金属に対する接触防錆性能が向上する。そのため、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは12質量%以上である。また、カルボキシ基を有しない複素環化合物の含有量が少ないほど、化合物(I)のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩と、酸または酸の金属塩の含有量を増やすことができ、気化防錆性能を一層向上することができる。そのため、カルボキシ基を有しない複素環化合物の含有量は、より好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
【0039】
また、本発明の金属防錆剤組成物において、化合物(I)のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の含有量と、カルボキシ基を有しない複素環化合物の含有量の比(化合物(I)のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩:カルボキシ基を有しない複素環化合物)は、質量比で、1:1以上、6:1以下であることが好ましい。また、前記比が大きいほど、化合物(I)のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩と、酸または酸の金属塩の含有量を増やすことができ、気化防錆性能を一層向上することができる。そのため、前記比は、より好ましくは1.5:1以上、さらに好ましくは2.0:1以上、特に好ましくは2.2:1以上である。また、前記比が小さいほど、銅、亜鉛、銀等の非鉄金属(より好ましくは、銅、亜鉛)に対する接触防錆性能が向上する。そのため、前記比は、より好ましくは、5.5:1以下、さらに好ましくは5:1以下、特に好ましくは4.8:1以下である。
【0040】
本発明の金属防錆剤組成物は、1質量%の濃度で水に溶解または分散させたときの水溶液または分散液のpHが4.5以上、6.5以下であることが好ましい。前記水溶液または分散液のpHが高いほど、接触防錆性能が向上する。そのため、pHは、より好ましくは4.7以上、さらに好ましくは4.8以上である。また、上記水溶液または分散液のpHが低いほど、化合物(I)のアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の複分解反応が促進されるため、気化防錆性能を向上することができる。そのため、pHは、より好ましくは6.4以下、さらに好ましくは6.3以下である。
【0041】
金属防錆剤組成物の1質量%水溶液または分散液のpHは、従来公知の方法で測定することができ、例えば、金属電極法(水素電極法、キンヒドロン電極法、アンチモン電極法)、ガラス電極法、半導体センサ法等で測定することができる。本発明では、ガラス電極法で測定することが好ましい。
【0042】
なお、本発明の金属防錆剤組成物は、亜硝酸塩を含まなくとも、鉄鋼材に対して優れた防錆性能を発揮することができる。亜硝酸塩は、鉄鋼材に対しては高い接触防錆作用を有するものの、アルミニウムや亜鉛、真鍮などを始めとする多くの非鉄金属に対しては却って腐食を助長し、また単独では、殆ど気化防錆能を示さない。本発明の金属防錆剤組成物は、亜硝酸塩を含む場合を除くものであることが好ましい。
【0043】
このような亜硝酸塩としては、例えば、亜硝酸のアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩から選択される少なくとも1種が挙げられ、具体的には亜硝酸ナトリウム等が挙げられる。
【0044】
また、本発明の金属防錆剤組成物の形状は特に限定されず、粉末状(例えば平均粒子径150μm未満のもの)、粒状(例えば、平均粒子径150μm以上、5mm未満のもの)、フレーク状(例えば、平均粒子径5mm以上、1cm未満のもの)、錠剤状(例えば、平均粒子径1cm以上のもの)などであってよい。本発明の金属防錆剤組成物の形状は、後述する熱可塑性樹脂と均一に混合する観点からは、粉末状であることが好ましく、平均粒子径120μm以下の粉末がより好ましく、平均粒子径110μm以下の粉末がさらに好ましい。また、取り扱い時の飛散防止なども含めた搬送性や取扱い性の観点からは、粒状やフレーク状、錠剤状であることが好ましい。また、保管、搬送時等は、粒状、フレーク状、錠剤状とし、使用時に粉砕して粉末状としてもよい。粉砕には、従来公知の粉砕機を使用することができる。なお、本明細書において、平均粒子径は体積平均粒子径を表すものとしレーザートラッキング法や散乱法により測定した50%平均粒子径(D50、粉体をある粒子径から2つの集合に分けたとき、粒子径の大きい側の集合と小さい側の集合とが等しい体積となる粒子径)を表すものとする。
【0045】
2.金属防錆用樹脂組成物
本発明の金属防錆用樹脂組成物は、上記金属防錆剤組成物と、熱可塑性樹脂とを含有する。
【0046】
本発明の金属防錆用樹脂組成物において、金属防錆剤組成物と混合する熱可塑性樹脂としては、従来公知の熱可塑性樹脂を使用することができ、このような熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン)、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂やポリオレフィン共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エチレン−酢酸ビニルやアクリル酸エステル等の共重合体、アイオノマー樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール等が挙げられる。中でも、成形加工性の観点からは、ポリオレフィン樹脂、ポリオレフィン共重合体樹脂が好ましく、より好ましくはポリオレフィン樹脂であり、さらに好ましくはポリエチレンであり、特に好ましくは低密度ポリエチレンである。熱可塑性樹脂は、粉末状、粒状、フレーク状、錠剤状のいずれであってもよい。
【0047】
金属防錆用樹脂組成物において、金属防錆剤組成物の含有量は、熱可塑性樹脂の100質量%に対して0.5質量%以上、10質量%以下であることが好ましい。金属防錆剤組成物の含有量が多いほど、防錆性能を高めることが可能となる。そのため、金属防錆剤組成物の含有量は、0.7質量%以上であることがより好ましく、0.8質量%以上であることがさらに好ましい。また、金属防錆剤組成物の含有量が少ないほど、金属防錆用樹脂組成物の強度や外観(透明性)が良好である。そのため、金属防錆剤組成物の含有量は、5質量%以下であることがより好ましく、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0048】
本発明の金属防錆用樹脂組成物には、さらに、滑剤、充填剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、難燃剤、着色剤、防黴剤などの添加剤を用途、目的に応じて適量配合してもよい。
【0049】
滑剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルクなどが挙げられる。充填剤としては、炭酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、カーボンブラック等の無機充填材等が挙げられる。可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル、芳香族2塩基酸エステル類、プロセスオイル、脂肪酸油、芳香族系エステル、脂肪酸エステル、リン酸エステル、スルホン酸エステル、スルホンアミド等が挙げられる。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、芳香族アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン酸系酸化防止剤が挙げられる。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤が挙げられる。光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤、フェノール系光安定剤、ニッケル系光安定剤などが挙げられる。帯電防止剤としては、脂肪酸エステル、ポリアルキレングリコールエステル等が挙げられる。難燃剤としては、リン酸エステル等が挙げられる。着色剤としては、有機顔料、有機染料、無機顔料、無機染料等が挙げられる。防黴剤としては、有機硫黄系防黴剤、有機窒素硫黄系防黴剤、有機ハロゲン系防黴剤等が挙げられる。
【0050】
金属防錆用樹脂組成物において、添加剤を含む場合、添加剤の含有量は、金属防錆用樹脂組成物の全量100質量%に対して、0.01質量%以上、20質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上、10質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上、5質量%以下であることが好ましい。
【0051】
金属防錆剤組成物と、熱可塑性樹脂とを混合する方法としては、単に、金属防錆剤組成物と、熱可塑性樹脂とを混合してもよいし、金属防錆剤組成物と熱可塑性樹脂とを混合してから、バンバリーミキサー、ミキシングロール、ニーダー、二軸混練押出機等によって混練し、コンパウンド化してもよい。
【0052】
金属防錆用樹脂組成物の形状は特に限定されず、用途に応じてフィルム状(厚さ250μm未満)、シート状(厚さ250μm以上)、繊維状、テープ状、塊状等のいずれであってもよく、さらに袋状、包装紙状、箱状等に加工することもできる。金属防錆用樹脂組成物が繊維状である場合には、繊維がさらに集合して、不織布状やネット状、織物状、編物状となっている場合も含む。中でも、フィルム状、シート状であることが好ましく、フィルム状であることがより好ましい。本発明の金属防錆用樹脂組成物は、上記の形状であるため、金属製品の保管時もしくは輸送時における錆の発生を可及的に抑制することができる。また、場合によっては、金属製品が封入された容器内にシート片や布状片として封入しておくことで、防錆能を発揮させることもできる。更には各種反応容器や処理容器のように、特に、内部の防錆が必要となる金属製品においては、搬送中や保管中の金属製品内部に本発明の金属防錆用樹脂組成物を配置しておくことで、防錆性能を発揮することもできる。
【0053】
特に、本発明の金属防錆用樹脂組成物は、フィルム状に加工し防錆フィルムとすることで、金属防錆用フィルム、シート、テープ、容器等の金属防錆包装材料として有効に活用でき、特に、フィルム内部に金属製品を配置して、ヒートシールなど任意の方法で密封包装することで、一層効果的に防錆を図ることができる。防錆フィルムの厚みは、500μm以下であることが好ましく、より好ましくは200μm以下であり、さらに好ましくは150μm以下である。防錆フィルムの厚みが前記範囲であると、防錆フィルムの取扱い性に優れるとともに防錆性能にも優れたものとなる。
【0054】
金属防錆用樹脂組成物を成形する方法としては、インフレーション法、Tダイ法、溶融押出法、射出成形法等の方法を用いることができる。フィルム状に成形する場合には、インフレーション法、Tダイ法が好ましく、シート状に成形する場合にはTダイ法が好ましく、繊維状に成形する場合には、溶融押出法が好ましい。また、箱状等の複雑な形状に成形する場合には、射出成形法が好ましい。
【0055】
成形時の温度は、熱可塑性樹脂が十分に成形可能となる温度であればよく、例えば50℃以上、好ましくは160℃以上、より好ましくは170℃以上、さらに好ましくは175℃以上である。また、金属防錆剤組成物の揮散を抑制する観点からは、成形時の温度は、例えば300℃以下であり、250℃以下であることが好ましく、より好ましくは230℃以下であり、さらに好ましくは200℃以下である。
また、防錆助剤として塩を形成していないベンゾトリアゾール、メチルベンゾトリアゾールを使用する場合、これらの化合物の分解を防ぐ観点から、成形時の温度は、160℃以下が好ましく、より好ましくは150℃以下であり、さらに好ましくは140℃以下である。
【0056】
本発明の金属防錆剤組成物は、上記のように化合物(I)のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩と酸または酸の金属塩を含み、これらの成分を合わせた酸性度が所定の範囲にあるため、乾燥状態で熱可塑性樹脂に練り込んで防錆フィルムを製造する際にも、気化消失することはない。これにより、安全な作業環境を確保することが可能になるとともに、優れた接触防錆性能を維持しながら、安定した気化防錆性能を有する防錆フィルムを得ることができ、特に鉄鋼に対して高い気化防錆性能を発揮させることができる。さらに、本発明の金属防錆剤組成物は、非鉄金属に対する防錆効果の高い防錆成分を含むこともでき、これにより、鋳鉄、鉄鋼などの鉄系金属のみならず、銅、亜鉛、銀などの非鉄系金属に対しても優れた防錆性能を発揮することができる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下においては、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
【0058】
1.物性測定方法
各種物性の測定は、以下の方法で行った。
【0059】
気化性防錆試験
本発明の防錆フィルムについて、気化性錆び止め紙(JIS Z 1535)の気化性錆び止め性L形(暴露なし)に準拠した試験方法で錆び止め性を評価した。すなわち、ゴム栓に、25×150mmの大きさにカットした防錆フィルムを6枚、セロハンテープで貼り付け、さらに、直径16mm、長さ13mmの炭素鋼(JIS G 4051 S15C)を研磨布で研磨しアセトンに浸して清浄にしたテストピースを固定した。1000mLの広口共栓瓶に35%グリセリン水溶液10mLを入れ、相対湿度を90%に調整して、上記防錆フィルムとテストピースを装着したゴム栓で栓をした。この広口共栓瓶を、20±2℃に保った恒温槽に入れ、20時間後に、広口共栓瓶の温度を0.0〜2.0℃にして、テストピースの表面に強制的に結露させ、3時間後にテストピース表面のさび発生の有無を確認した。さび発生の評価方法は、最初に肉眼によるさびの数を計測することとし、さびの数が0の場合は、拡大鏡によるさびの数を計測し、表1のとおり等級5〜等級3に区分する。また、肉眼によるさびの数が1以上の場合は、防錆率を求め、表1のとおり等級2〜等級0に区分する。1種類の防錆フィルムにつき、各3回、この測定を行い、さびの数、および、防錆率を平均して、各等級に区分した。
【0060】
防錆率の測定
防錆率の判定方法は以下の通りである。まずテストピースを写真撮影し、評価面が直径160mmの円となるよう、写真を拡大する。線幅0.26mm(0.75ポイント)で10mm間隔の碁盤目を引いた、一辺160mmの内部が無色透明な正方形の測定板を作成し、各隅にある10個の碁盤目(計40個)は、色塗りする。この測定板における測定対象となる碁盤目の数は、216個となる(
図1)。拡大した写真の上に前記測定板を重ね合わせ、評価面が測定板の一辺160mmの正方形からはみ出さないように位置を調整する。この状態で、肉眼で1点以上のさびが発生している碁盤目の数を数える。ただし、各隅の色塗りした碁盤目は、数えない。なお、碁盤目の線上又は交差点に発生したさびが、隣接する碁盤目にもはみ出している場合は、はみ出している各碁盤目とも、さびが発生したものとする。また、碁盤目の線上又は交差点からはみ出していない場合は、隣接する碁盤目にさび発生のないものがあれば、そのうちの一つをさびが発生したものとする。数えたさびが発生している碁盤目の数を用いて、次の式によって防錆率を算出する。
【0061】
【数1】
【0062】
E:防錆率(%)
X:評価面にさびが発生している碁盤目の数(個)
X
0:空試験を行った評価面にさびが発生している碁盤目の数の平均値(個)
ただし、X
0は、空試験に供した試験片全数(3個)の平均値とし、小数点以下は、四捨五入する。
【0063】
【表1】
【0064】
接触性防錆試験
供与金属板として、鋼板はSPCC−SB(冷間圧延鋼板)(60×80×1.2mm)、銅板はC1100P(タフピッチ銅)(60×40×1.5mm)、亜鉛板は旧2種(60×40×1.5mm)を用いた。これらの供与金属板の前処理として、SPCC−SB鋼板は、#240の研磨布で乾式研磨後、メタノール、アセトンで脱脂、洗浄してから乾燥し、また、亜鉛板、銅板およびアルミニウム板は、#320の耐水研磨紙を用いて脱イオン水中で研磨した後、メタノールおよびアセトンで脱脂、洗浄してから乾燥する。
【0065】
防錆フィルムを用いて袋を作製し、上記供与金属板を入れて、内部の空気を抜気した後、ヒートシールで密封包装し、16時間保持した。袋は、SPCC−SB鋼板については、100×150mmの大きさとし、銅板、亜鉛板は60×100mmの大きさとした。上記密封保持した各試験片を、環境試験機内で強制結露させた。具体的には、5℃、湿度50%で3時間保持、50℃、湿度95%で3時間保持、5℃、湿度50%で3時間保持、50℃、湿度95%で15時間保持するサイクルを1サイクルとし、これを30回繰り返して(30サイクル)、試験片表面の錆および腐食、変色状態を確認した。
【0066】
pH測定
金属防錆剤組成物を1%の濃度となるように水に溶解し、pHを測定した。pHは、pHメーター計(東亜電波工業株式会社 ガラス電極pHメーターSシリーズ 品番:HM−30S)を用い、ガラス電極法で測定した。
【0067】
実施例1
安息香酸ナトリウムおよびリン酸二水素ナトリウムを80:20の割合で混合し、金属防錆剤組成物を得た。得られた金属防錆剤組成物を卓上粉砕機で100μm以下に粉砕したものを低密度ポリエチレン(東ソー社製、「ペトロセン(登録商標)180」、密度0.922、MI=2.0)に対して1.5重量%となるよう、よくブレンドし、得られた金属防錆用樹脂組成物をインフレーション法にて成形温度180℃で厚さ100μmの防錆フィルムを得た。
【0068】
実施例2
安息香酸ナトリウムおよびセバシン酸を80:20の割合で混合し、金属防錆剤組成物を得た。得られた金属防錆剤組成物を卓上粉砕機で100μm以下に粉砕したものを低密度ポリエチレン(東ソー社製、「ペトロセン180」、密度0.922、MI=2.0)に対して1.5重量%となるよう、よくブレンドし、得られた金属防錆用樹脂組成物をインフレーション法にて成形温度180℃で厚さ100μmの防錆フィルムを得た。
【0069】
実施例3
安息香酸ナトリウムおよびp−トルイル酸を80:20の割合で混合し、金属防錆剤組成物を得た。得られた金属防錆剤組成物を卓上粉砕機で100μm以下に粉砕したものを低密度ポリエチレン(東ソー社製、「ペトロセン180」、密度0.922、MI=2.0)に対して1.0重量%となるよう、よくブレンドし、得られた金属防錆用樹脂組成物をインフレーション法にて成形温度180℃で厚さ100μmの防錆フィルムを得た。
【0070】
実施例4
安息香酸ナトリウムおよびカルボキシベンゾトリアゾール80:20の割合で混合し、金属防錆剤組成物を得た。得られた金属防錆剤組成物を卓上粉砕機で100μm以下に粉砕したものを低密度ポリエチレン(東ソー社製、「ペトロセン180」、密度0.922、MI=2.0)に対して1.0重量%となるよう、よくブレンドし、得られた金属防錆用樹脂組成物をインフレーション法にて成形温度180℃で厚さ100μmの防錆フィルムを得た。
【0071】
実施例5
先ず、べンゾトリアゾール1モルに対しナトリウムが0.5モルとなるよう、水存在下で水酸化ナトリウムと混合溶解反応させ、スプレードライ方式にて水分を蒸発させ水分値0.5%以下にした結晶を得た。この得られた結晶および安息香酸ナトリウムおよびセバシン酸15:70:15の割合で混合し、金属防錆剤組成物を得た。得られた金属防錆剤組成物を卓上粉砕機で100μm以下に粉砕したものを低密度ポリエチレン(東ソー社製、「ペトロセン180」、密度0.922、MI=2.0)に対して1.5重量%となるよう、よくブレンドし、得られた金属防錆用樹脂組成物をインフレーション法にて成形温度180℃で厚さ100μmの防錆フィルムを得た。
【0072】
実施例6
先ず、メチルベンゾトリアゾール1モルに対しカルシウムが0.5モルとなるよう、水存在下で水酸化カルシウムと混合溶解反応させ、スプレードライ方式にて水分を蒸発させ水分値0.5%以下にした結晶を得た。この得られた結晶および安息香酸ナトリウムおよびセバシン酸15:70:15の割合で混合し、金属防錆剤組成物を得た。得られた金属防錆剤組成物を卓上粉砕機で100μm以下に粉砕したものを低密度ポリエチレン(東ソー社製、「ペトロセン180」、密度0.922、MI=2.0)に対して1.5重量%となるよう、よくブレンドし、得られた金属防錆用樹脂組成物をインフレーション法にて成形温度180℃で厚さ100μmの防錆フィルムを得た。
【0073】
実施例7
安息香酸ナトリウムおよびセバシン酸および2−メルカプトベンゾイミダゾールを60:15:25の割合で混合し、金属防錆剤組成物を得た。得られた金属防錆剤組成物を卓上粉砕機で100μm以下に粉砕したものを低密度ポリエチレン(東ソー社製、「ペトロセン180」、密度0.922、MI=2.0)に対して1.5重量%となるよう、よくブレンドし、得られた金属防錆用樹脂組成物をインフレーション法にて成形温度180℃で厚さ100μmの防錆フィルムを得た。
【0074】
実施例1〜7の各金属防錆剤組成物の組成を表2に示す。
【0075】
【表2】
【0076】
比較例1
低密度ポリエチレン(東ソー社製、「ペトロセン180」、密度0.922、MI=2.0)をインフレーション法にて成形温度180℃で厚さ100μmのフィルムを得た。
【0077】
比較例2
安息香酸ナトリウムを卓上粉砕機で100μm以下に粉砕したものを低密度ポリエチレン(東ソー社製、「ペトロセン180」、密度0.922、MI=2.0)に対して1.5重量%となるよう、よくブレンドし、インフレーション法にて成形温度180℃で厚さ100μmのフィルムを得た。
【0078】
比較例3
安息香酸ナトリウムおよびセバシン酸ナトリウムを80:20の割合で混合し、卓上粉砕機で100μm以下に粉砕したものを低密度ポリエチレン(東ソー社製、「ペトロセン180」、密度0.922、MI=2.0)に対して1.5重量%となるよう、よくブレンドし、インフレーション法にて成形温度180℃で厚さ100μmのフィルムを得た。
【0079】
比較例4
安息香酸ナトリウムおよびセバシン酸ナトリウムおよびベンゾトリアゾールを60:15:25の割合で混合し、卓上粉砕機で100μm以下に粉砕したものを低密度ポリエチレン(東ソー社製、「ペトロセン180」、密度0.922、MI=2.0)に対して1.5重量%となるよう、よくブレンドし、インフレーション法にて成形温度140℃で厚さ100μmのフィルムを得た。
【0080】
比較例5
安息香酸ナトリウムおよびアジピン酸を60:40の割合で混合し、卓上粉砕機で100μm以下に粉砕したものを低密度ポリエチレン(東ソー社製、「ペトロセン180」、密度0.922、MI=2.0)に対して1.5重量%となるよう、よくブレンドし、インフレーション法にて成形温度180℃で厚さ100μmのフィルムを得た。
【0081】
比較例1〜5の各防錆成分の組成を表3に示す。
【表3】
【0082】
上記実施例、比較例で得たフィルムの各金属に対する防錆試験結果を表4に示す。
【0083】
【表4】
【0084】
接触防錆性能 評価基準
◎腐食、変色なし
○極僅かな腐食:点さび1〜3個又は変色面積10%未満
△軽度の腐食:点さび4〜9個又は変色面積10〜30%未満
×明確な腐食:点さび10個以上又は変色面積30〜50%未満
××激しい腐食:腐食、変色面積50%以上
【0085】
表4から明らかな様に、実施例1〜7の防錆フィルムは、鉄鋼に対して優れた接触防錆性能を維持しながら、鉄鋼に対する気化防錆性能に優れていた。これに対して、比較例1〜4のフィルムでは十分な気化防錆性能が得られず、比較例5のフィルムでは鉄鋼への気化防錆性能は良好となったものの、安息香酸ナトリウムに比較的酸性度が強いアジピン酸を添加したことで、pHが低下しすぎたことにより、鉄鋼への接触防錆性に悪影響が出た。さらに、実施例5〜7の金属防錆剤組成物は、いずれも銅、亜鉛に対する防錆効果が高く、いずれも180℃で防錆フィルムに成形した際にも殆ど気化消失しなかったため、銅、亜鉛に対しても高い防錆効果を発揮する結果となった。