【実施例】
【0016】
本願発明の実施形態につき、図面を参照しながら詳述することとする。
図1は、本発明の腰椎牽引機の底板1を示し、該底板1は、本発明の腰椎牽引機の下部における基板をなす板体であって、後に記述する枠板を中央部で支える基盤部を形成するものである。この底板1は、利用者の身体方向に直角の方向に横長に形成された矩形状態を形成している。この底板1の材質は特に拘らないが、合板で形成すると丈夫で扱いが便宜である。
【0017】
図2は、本発明の腰椎牽引機の枠板2を示し、前記底板1の横長を呈しており中央部の上に載置固定するもので、後に記述する可動板を受容する基盤部を形成する板体2である。前記底板1上において、利用者の身体方向の短い辺とこの辺の方向と直交する方向に長く形成された辺とで矩形状態を形成している。該枠板2は、短手方向の両縁部の枠3,6並びに長手方向の両縁部の枠4,5が形成されており、後述する可動板を受容し、かつ、該可動板の動きを規制する役割を担うものである。前述した利用者の身体に直交する方向の前後端縁部に形成された枠4,5は、利用者の右先端側端部が夫々内側方向に短かく伸びて略逆L字型、L字型を呈している。図中、7,7,7,7は、これ等枠に設けられた滑車であって、後述する可動板を動かすワイヤの滑動を円滑に促すガイドとなるものである。図中8は、該枠板2の利用者の右側側方の端縁部の枠6の前後方向中央部に設置されて、可動板を牽引するための後述する可動レバーの回動支点となるレバー支軸である。
【0018】
前記枠板2も、材質は特に拘らないが、合板で形成すると丈夫で扱いが便宜である。なお、該枠板2の内部表面に硬い当板(例、ステンレス製板)を載置しておくと、次に記述する可動板の滑動を一層円滑にすることができる。
【0019】
図3は、本発明の腰椎牽引機の可動板9を示し、前記底板1上に載置固定した枠板2の枠3,4,5,6に囲まれた板体内に設置されて、利用者の身体の前後方向に滑り移動させるための可動板9であって、腰部を伸長させる機構を担っているものである。
【0020】
図3中、9aは可動板9の上面前方部に形成された板厚部であり、9bは、可動板9の上面後方部に形成された板厚部であり、9cは、これ等両板厚部間に形成された可動板上面中央部の凹部である。該凹部9cに利用者の臀部が程好く載置され、可動板9の可動に伴い、利用者の身体をともども前方に移動させることができるように突出した臀部を受容することができるようになっている。
【0021】
図3中、10,10、……は鋼球であり、該可動板9の裏面に埋設された鋼球受座金11に抱持されて、可動板9の裏面から該鋼球10、10、…の滑動部分がやや突出して枠板2底面をスライドできるようになっている。斯くして、可動板9が、枠板2の上を円滑に前後動することができるように形成されている。前記鋼球10.10、…の配列と該鋼球10,10、…の数は、図示の態様に拘らず、任意の形態、数で対処してかまわない。
【0022】
同
図3中において示す如く、可動板9には、後述するワイヤを取付け固定するためのワイヤ固着部12a、12bが該可動板9の
下肢方向側、反下肢方向側端縁夫々の略中央部に形成されている。斯くして、後述する可動レバーの作動に伴って前記可動板9が可動レバーとワイヤによって牽引されて、可動板9が枠板2面上において利用者の腰部を下肢方向へ移動するように誘導することとなる。
【0023】
図4は、本発明の腰椎牽引機の可動レバー13を、示すものであり、平面視略逆L字型に形成されており、上記枠板2の右縁側の枠6の中央部に立設されたレバー支軸8を回動の要として回動するものである。従って、該可動レバー13の逆L字型の長手の肢先端部に形成された摘みボルト14又は、逆L字型の短手の肢先端部に形成された摘みボルト15を以って、該可動レバー13を回動せしめることを通じてワイヤWによって牽引されて、上記可動板9が前後動することとなる。即ち、可動レバー13の回動を通じてワイヤWが滑車4,4…を介して前記可動板9に対する動きを誘発する駆動の源を生起させることとなる。
【0024】
同
図4中、ワイヤWを受ける貫通ワイヤ受16が、前記可動レバー13の逆L字状の長手部分の裏面中央部に形成されており、可動レバー13の回動によりワイヤWを受けてワイヤWを介して前記可動板9を移動せしめる起因力となるものである。
【0025】
同
図4中、ワイヤWは、可動レバー13をそのレバー支軸8を回動中心として回動せしめたとき貫通ワイヤ受16が、ワイヤWを引張りその結果、ワイヤWを固定係着したワイヤ固着部を通じて、可動板9に前後動の起動力を付与し、該可動板9を滑動移動させる。
【0026】
4図中、18は後述するラックギアに咬合して前記ワイヤWの
移動状況を維持するためのストッパボルトで、可動レバー13の長手の肢に設けられ、該ストッパボルト18を抱持するバネに抗して昇降動自在に応動できる。該ストッパボルト18の先端にはテーパが形成されており前記ラックギアに対してラチェット機能を有してワイヤの引張りを維持するものである。同図中19は、ラック解除レバーであり、前記ストッパボルト18を上方へ引き上げて前記ラックギアと該ストッパボルト18との咬合を解除する。即ち、ラック解除レバー19の先端が、該解除レバー19のシーソー形式で回動する回動の要を中心とする梃子の原理で該解除レバーの先端にあるストッパボルト18を上方に上げて、前記ラックギアとストッパボルト18との咬合を解除する。
【0027】
図5は、稼動レバー13によってワイヤWを引っ張り、以って、可動板9を利用者の身体共共下肢方向に移動する態様を説明する平面図である。同
図5中、ワイヤWは、可動レバー13をそのレバー支軸8を回動中心として回動せしめるに当たり、前記摘みボルト14(又は15)を以って、レバー支軸8を支点として
矢印方向(反下肢側)に回動せしめると、前記ワイヤ受16が、ワイヤWを反下肢側に引張り、その結果、梃子の原理でワイヤWに引張りが生じ、前記ワイヤWを4個の滑車7,7を介して、固定係着した固着部12a,12bを通じて、可動板9に
下肢側に移動させる起因力を付与させることとなる。その結果、前記可動板9は、前記枠板2面上を
下肢側に滑動して、利用者Mの下肢方向に移動することとなる。
【0028】
その際、前記可動板9の表面の
前方板厚部9a(反下肢側側板厚部)と
後方板厚部9b(下肢側板厚部)間に形成された凹部9Cに利用者の臀部が程好くはまり込んでいるので、可動板9の下肢側への滑動に伴い、利用者の腰椎の牽引が誘導がなされることとなる。該可動板2の移動量は、大約30mm〜90mmであり、その結果、利用者の腰椎2おいては、数mmの牽引、伸長が期待されるものである。
【0029】
他方、上記可動板9の
下肢方向移動状況下で、該可動板9を
反下肢側に移動して戻したいときは、前記ラック解除レバー19によって前記ストッパボルト18を上げて、ラックギア17(後述するがラックギア、即ち歯板は、17で図示)と該ストッパボルト18との咬合を解除することを通じて、自ずと、ワイヤWの引張りを戻すか、前記摘みボルト15(又は14)を以って、前記レバー支軸8を回動の要として、該可動レバー13を
反矢印方向(下肢側)に回動させると、可動レバー13の長さを以って梃子の原理でワイヤWに貫通ワイヤ受け16によってワイヤWを
時計回りに引っ張る起因力が発生し、その結果、ワイヤWを係着固設した固着部12a,12bを通じてワイヤWを介して
反下肢側への引張り力が生じ、可動板9が、利用者Mの
下肢と反対側(反下肢側)に移動し、以前の位置に戻すことができる。以後、これ等の操作の繰返しを通じて何度でも可動板9の前後動の操作を繰返継続することが可能である。
【0030】
ワイヤWは、可動レバー13の回動を通じて何度も該可動レバー13のモーメントを以って
移動・牽引せられるものであるところ、柔軟性と強靭で応力に耐える素材であることを必要とするものであるから、例えば、直径φ1.7mm位のステンレスワイヤ等を以って充当すると良い。
【0031】
図5中、前後するが、17は、底板1に設けられたラックギア(歯板)である。ラックギア17は、前記可動レバー13にて回動伸長せしめて引張ったワイヤWを当該引張った箇所で停止する歯止ラックである。より詳細には、該ラックギア17に、前記ストッパボルト18の先端(テーパ付)を咬合させて、ワイヤWを引張った箇所で引張りを維持ストップさせる機能を有する。前記したとおり、該ワイヤWの引張り状況を解除するには、ラック解除レバー19の梃子の原理で、前記ストッパボルト18を上方に引上げることで、ラックギア17との咬合を解除することを通じて行う。
【0032】
前後するが、滑車7,7,7,7の作動について言及するに、滑車7,7、・・・は、ワイヤWに沿って円滑に滑動し、ワイヤWの
移動力を前記可動板9の前後動がスムーズに稼働するようにガイドするものである。そして、その際、可動板9が円滑に滑動できるのは、該可動板9の裏面に設けられた複数個の鋼球10、10、・・・がベアリング球の役目を果たし、前記枠板2の内側の板表面において自由闊達な前後動を誘導することとなるからである。
【0033】
即ち、可動レバー13による可動レバーの長さによる梃子の原理とワイヤに掛けた滑車の持つ抵抗のない滑性並びに可動板9の裏面に設けられた複数個の鋼球10,10、…の持つ円滑な滑り性能が相俟って、可動板9が、利用者Mの腰部を載置してもスムーズに移動することを可能とするものである。
【0034】
尚、上記可動板9の上部に、該可動板9と縦横の大きさを同寸とする上板を載置固定し、該上板の中央部に凹部を形成し該凹部の前後にゴム等でできた粗面を形成する凸状板厚部を設けると、利用者Mの腰部を確実に該可動板9にフィットさせることができ、一層効果的に利用者Mの腰部を移動させつつ腰椎を牽引せしめる実を上げることができる。
【0035】
図6は、本発明の底板1、腰椎牽引機の枠板2、可動板9、可動レバー13の相互を連携した可動板9の動きと利用者Mの利用態様を示す可動レバー13部分の動きを示す上面図である。図中、利用者Mが最上部に存する関係上、他の部材が若干見え難いが、可動レバー13を回動した結果、利用者の腰椎部に牽引作用が及ぶ態様の概略を示すものである。
【0036】
図6において、可動レバー13を以って、ワイヤWを引張った際、当該引張った箇所においてワイヤWの引張りを存続させるために、底板1にラックギア17が設けられており、該ラックギア17に可動レバー13に設けたストッパボルト18の先端テーパ部を咬合させて、ワイヤWの
移動状態を維持するものである。なお、該ラックギア17とストッパボルト18の先端の咬合を解除するには、前述の通り可動レバー13に設けたラック解除レバー19にて、解除する。即ち、前記のとおり、ラック解除レバー19の中央部の回動の要を中心にシーソー形式に回動してストッパボルト18を上昇させてラック解除を実現する。
【0037】
更にまた、
図6において示す如く、本願発明の腰椎牽引機の底板1に付設して、別途、背中当て板20を、前記底板1の利用者Mの背中側端部に複数個の蝶番を介して取り付けると、一層、利用者Mの利用を快適にするという便益をもたらすことができる。また、前記背中当て板20は、蝶番、即ち、ヒンジを以って付設するから、不使用時においては、該背中当て板を本体側に折り込むことによって、コンパクトに収納することができる。
【0038】
以上のとおり、本発明の腰椎牽引機によれば、重層加重なベッドを離れた、簡易な機構で、利用者による操作が容易にでき、低コストで以って、所望の腰部の歪みと腰痛を矯正し、腰椎の牽引を達成し、腰痛に悩む高齢者の治癒や、病後のリハビリの支援策等に、多大の有用性をもたらすことできる。