(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般的な酸化ストロンチウム結晶は、6配位構造である塩化ナトリウム型構造を有する。
【0003】
しかし、かかる一般的な結晶構造の酸化ストロンチウム結晶は常温常圧下で化学的に不安定であり、空気中の水分や炭酸ガスと容易に反応して水酸化ストロンチウムや炭酸ストロンチウムに変化してしまうという欠点を有する。
【0004】
それに対して、塩化セシウム型構造の酸化ストロンチウム結晶は、6配位構造である塩化ナトリウム型結晶よりも高い安定性を示す。
【0005】
ところが、塩化セシウム型構造の酸化ストロンチウム結晶には、製造が難しいという欠点がある。即ち、塩化セシウム型構造の酸化ストロンチウム結晶を製造するには、酸化ストロンチウムを36GPa以上の高圧で処理しなければならないことが知られている。しかし、このような高圧条件は地球の地殻のマントルに相当する圧力であり、このレベルまで工業的に圧力を高めることは難しいので、塩化セシウム型酸化ストロンチウム結晶の量産化は非現実的であるといわざるを得ない。
【0006】
塩化セシウム型構造の酸化ストロンチウム結晶の製造方法としては、ダイヤモンドアンビルセルを用いた衝撃圧縮法がある。この方法は、2つの宝石用ダイヤモンドを向き合わせ、その間に酸化ストロンチウムを挟みこんで圧縮する方法である。この方法により、立方晶系の酸化ストロンチウムが175kbar(約17.5GPa)において正方晶系へ変化するとの報告例や(非特許文献1)、36GPaにおいて酸化ストロンチウムの塩化ナトリウム構造から塩化セシウム構造への相転移がX線回折の結果より確認された報告例がある(非特許文献2)。
【0007】
青色蛍光体は光の三原色の一つを担う蛍光体として非常に重要であり、現在、主としてアルミン酸塩を母構造とするものが実用化されている。中でも代表的なものとして、例えば特許文献1に開示されているBaMg
2Al
16O
27:Euや、特許文献2に開示されているBaMgAl
10O
17:Euなどが挙げられる。これら以外にも、上記BaMgAl
10O
17:Euに対してBaやAlの比率を多くしたり、Baの一部をSrに置換したりすることでベーキング処理による熱劣化を抑えたもの(特許文献3)や、マグネトプランバイト型構造のアルミン酸塩にEuを賦活剤として添加したもの(特許文献4)などが知られている。
【0008】
このように青色蛍光体は他の三原色である緑色蛍光体や赤色蛍光体に比べて構成元素数が多く組成が複雑になる傾向があり、母構造が単元素酸化物からなる青色蛍光体の報告例はこれまでない。
【0009】
ところで、単元素酸化物である酸化ストロンチウムにユウロピウムをドープすることにより得られるSrO:Eu蛍光体に関しては、酸化ストロンチウムとフッ化ユウロピウムを混合し、窒素雰囲気または水素雰囲気中、1200℃で2時間熱処理して得られるとの報告がある(非特許文献3)。
【0010】
しかし、かかるSrO:Eu蛍光体を紫外線励起することにより発せられる光の波長域は550〜700nmと、当該蛍光体から発せられる光は緑色であり、青色蛍光体ではない。さらに、当該蛍光体は、空気中の水分や炭酸ガスを容易に吸収するため化学的に不安定な塩化ナトリウム型構造からなり、また、粉砕などの機械的外力を加えると格子欠陥による緑色光を発するなど、その物性は実用には程遠い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述したように、従来、一般的ではあるが不安定な塩化ナトリウム型酸化ストロンチウム結晶とは異なり、安定な塩化セシウム型の結晶は知られていたが、その製造方法としては高圧を要するものしか知られておらず、工業的に大量生産可能なものではなかった。
【0014】
また、上述したように、従来、青色光を発する蛍光体は知られていたが、緑色蛍光体や赤色蛍光体に比べて組成が複雑であったり、また、安定性が十分でないものであった。
【0015】
そこで、本発明は、安定性に優れる塩化セシウム型構造に類似する構造の酸化ストロンチウム結晶を、大気圧下であっても簡便に製造することができる方法を提供することを目的とする。また、本発明は、構造が単純で且つ安定な酸化ストロンチウム系青色蛍光体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、ストロンチウム化合物の粉体を、還元雰囲気中、マグネシウム化合物と接触させつつ加熱処理するのみで、従来、超高圧下でのみ生成するとされていた塩化セシウム型構造に類似する構造の酸化ストロンチウム結晶が容易に得られることを見出して、本発明を完成した。また、本発明者らは、ストロンチウム化合物とユウロピウム化合物の混合粉体を、還元雰囲気中、マグネシウム化合物と接触させつつ加熱処理するのみで、安定ではあるが超高圧下でしか生成しないといわれていた塩化セシウム型構造に類似する構造のユウロピウムドープ酸化ストロンチウム結晶が容易に得られ、且つ非常に単純な組成を有する当該結晶が青色蛍光を発することを見出して、本発明を完成した。
【0017】
本発明に係る塩化セシウム型類似構造の酸化ストロンチウム結晶の製造方法は、ストロンチウム化合物とマグネシウム化合物とを接触させながら還元雰囲気中で加熱処理する工程を含むことを特徴とする。
【0018】
上記本発明方法では、ストロンチウム化合物とマグネシウム化合物に加え、さらにユウロピウム化合物を接触させながら還元雰囲気中で加熱処理することが好ましい。かかる態様により、ユウロピウムがドープした塩化セシウム型類似構造の酸化ストロンチウム結晶を得ることができる。
【0019】
酸化ストロンチウム結晶にユウロピウムをドープさせたい場合、ストロンチウム化合物およびユウロピウム化合物を含む溶液から混合粉体を調製し、マグネシウム化合物と接触させることが好ましい。かかる態様により、ストロンチウムとユウロピウムが均一に混合された粉体の調製が可能になり、ひいては組成が均一な蛍光体を製造し易くなる。
【0020】
本発明に係る上記製造方法において、上記マグネシウム化合物としては酸化マグネシウムが好適であり;上記ストロンチウム化合物としては、酸化ストロンチウム、水酸化ストロンチウムおよび炭酸ストロンチウムからなる群から選ばれる少なくとも一種が好適である。これら化合物を原料化合物として用いた場合、塩化セシウム型類似構造の酸化ストロンチウム結晶を良好に製造できることは、本発明者らの実験により確認されている。
【0021】
本発明に係る酸化ストロンチウム系青色蛍光体は、一般組成式(Sr
1-xEu
x)O[0<x≦0.5]で表され、且つ、塩化セシウム型類似構造の結晶を含むことを特徴とする。
【0022】
本発明に係る酸化ストロンチウム系青色蛍光体としては、上記一般組成式中、0.001≦x≦0.3であるものがより好ましい。
【0023】
本発明に係る酸化ストロンチウム系青色蛍光体としては、発光中心波長が450nm以上、485nm未満であるものが好ましい。当該波長が450nm以上であれば、発せられる光は十分青色に感じられる。一方、当該波長が長過ぎると、例えば三原色の発光体の一つとして本発明の青色蛍光体を用いる場合、緑色蛍光体が発する緑色と区別し難くなり、画像素子などに用いると画像が明確でなくなるおそれがあり得るので、当該波長としては485nm未満が好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明方法によれば、一般的なものではあるが安定性に劣る塩化ナトリウム型構造の酸化ストロンチウム結晶に比べ、安定性に極めて優れる塩化セシウム型構造に類似する構造の結晶を製造することができる。また、従来、塩化セシウム型構造の酸化ストロンチウム結晶を得るには、工業的な大量生産では非現実的な超高圧条件が必要であったが、本発明方法では、大気圧下での製造が可能である。よって、本発明方法は、安定性に極めて優れる塩化セシウム型類似構造の酸化ストロンチウム結晶の工業的な大量生産を可能にするものとして、産業上非常に有用である。
【0025】
また、本発明方法により製造される塩化セシウム型構造に類似する構造の酸化ストロンチウム結晶は、安定性に優れ、特に電子材料などに適用できることから、産業上非常に有用である。
【0026】
さらに、本発明に係る酸化ストロンチウム系青色蛍光体は、ストロンチウムとユウロピウムとの二元素系酸化物という非常にシンプルな組成を有しながら、紫外線などでの励起により発光中心波長が456nm付近である高色純度の青色という特異的な蛍光を発するものであり、青色発光体として極めて有用である。さらに本発明に係る酸化ストロンチウム系青色蛍光体は、結晶構造として、一般的ではあるが安定性に劣る塩化ナトリウム型結晶ではなく、塩化セシウム型構造に類似する構造の結晶からなり、安定性に極めて優れる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1(1)は、本発明に係る酸化ストロンチウム結晶(実施例1)のX線回折チャートであり、
図1(2)は、一般的な塩化ナトリウム型の酸化ストロンチウム結晶の標準試料のX線回折チャートであり、
図1(3)は、塩化セシウム型の酸化ストロンチウム結晶の標準試料のX線回折チャートである。
【
図2】
図2(1)は、本発明に係る酸化ストロンチウム結晶(実施例2)のX線回折チャートであり、
図2(2)は、一般的な塩化ナトリウム型の酸化ストロンチウム結晶の標準試料のX線回折チャートであり、
図2(3)は、塩化セシウム型の酸化ストロンチウム結晶の標準試料のX線回折チャートである。
【
図3】
図3(1)は、本発明に係る酸化ストロンチウム結晶(実施例2)を大気中で7日間放置した後のX線回折チャートであり、
図3(2)は、一般的な塩化ナトリウム型の酸化ストロンチウム結晶の標準試料のX線回折チャートであり、
図3(3)は、塩化セシウム型の酸化ストロンチウム結晶の標準試料のX線回折チャートである。
【
図4】
図4(1)は、本発明に係る酸化ストロンチウム結晶(実施例3)のX線回折チャートであり、
図4(2)は、一般的な塩化ナトリウム型の酸化ストロンチウム結晶の標準試料のX線回折チャートであり、
図4(3)は、塩化セシウム型の酸化ストロンチウム結晶の標準試料のX線回折チャートである。
【
図5】
図5は、均一なストロンチウム−ユウロピウム混合粉体から調製した本発明に係る酸化ストロンチウム系青色蛍光体(実施例4)に波長325nmの紫外線を照射して励起したときの発光スペクトルである。
【
図6】
図6(1)は、本発明に係る酸化ストロンチウム系青色蛍光体(実施例4)のX線回折チャートであり、
図6(2)は、塩化セシウム型の酸化ストロンチウム結晶の標準試料のX線回折チャートである。
【
図7】
図7は、均一なストロンチウム−ユウロピウム混合粉体から調製した本発明に係る酸化ストロンチウム系青色蛍光体(実施例5)に波長325nmの紫外線を照射して励起したときの発光スペクトルである。
【
図8】
図8(1)は、本発明に係る酸化ストロンチウム系青色蛍光体(実施例5)のX線回折チャートであり、
図8(2)は、塩化セシウム型の酸化ストロンチウム結晶の標準試料のX線回折チャートである。
【
図9】
図9は、本発明に係る酸化ストロンチウム系青色蛍光体(実施例5)を大気中で7日間放置した後に波長325nmの紫外線を照射して励起したときの発光スペクトルである。
【
図10】
図10(1)は、本発明に係る酸化ストロンチウム系青色蛍光体(実施例5)を大気中で7日間放置した後のX線回折チャートであり、
図10(2)は、塩化セシウム型の酸化ストロンチウム結晶の標準試料のX線回折チャートである。
【
図11】
図11は、機械的に混合したストロンチウム−ユウロピウム混合粉体から調製した本発明に係る酸化ストロンチウム系青色蛍光体(実施例6)に波長325nmの紫外線を照射して励起したときの発光スペクトルである。
【
図12】
図12(1)は、本発明に係る酸化ストロンチウム系青色蛍光体(実施例6)のX線回折チャートであり、
図12(2)は、塩化セシウム型の酸化ストロンチウム結晶のX線回折チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明方法を実施の順番に従って詳細に説明する。
【0029】
先ず、本発明では、ストロンチウム化合物とマグネシウム化合物とを接触させる。
【0030】
ストロンチウム化合物としては、金属ストロンチウムの他、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)などとのキレート錯体;クエン酸などとの有機酸塩;ストロンチウムイソプロポキシドなどの有機金属化合物;酸化物(酸化ストロンチウム);水酸化物(水酸化ストロンチウム);炭酸塩(炭酸ストロンチウム)などの無機塩を挙げることができる。これらは一種のみ選択して使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。なお、キレート錯体は、ストロンチウムイオンやユウロピウムイオンの他、続く加熱処理工程において除去可能なものであれば、アンモニウムイオンなど金属カチオン以外のカチオンを含んでいてもよい。
【0031】
本発明方法においては、上記ストロンチウム化合物に加え、その他の金属化合物を用いてもよい。その他の金属化合物としては、遷移金属、希土類金属の金属自体と、ストロンチウム化合物として例示したものと同様のキレート錯体、有機酸塩、有機金属化合物、酸化物、水酸化物、無機塩を挙げることができる。その他の金属化合物を用いた場合には、塩化セシウム型構造に類似する構造の酸化ストロンチウム結晶からなる母構造に、その他の金属がドープしたものが製造でき、かかるドープにより、優れた発光特性や電気特性などが発揮される可能性がある。例えば、塩化セシウム型類似構造の酸化ストロンチウム結晶にユウロピウムをドープさせることにより、優れた発光特性を示す蛍光体が得られる可能性がある。
【0032】
なお、以下において、ユウロピウム化合物などその他の金属化合物の記載があっても、その他の金属化合物は当該化合物を結晶にドープさせたい場合などに用い、その使用は必須ではない。
【0033】
ストロンチウム化合物とその他の金属化合物は、その他の金属化合物の所望のドープ量に応じて、それらの使用量を決定することが好ましい。例えば、所望の(Sr
1-xEu
x)O結晶(式中、0<x≦0.5)を得るために、ストロンチウムとユウロピウムのモル比(Sr:Eu)が1−x:xとなるように夫々ストロンチウム化合物とユウロピウム化合物を秤量し、均一となるように混合する。
【0034】
但し、本発明方法で得られる結晶は、あくまで塩化セシウム型類似構造の酸化ストロンチウム結晶を母構造とするものであるので、ストロンチウムに対するその他の金属のモル数の比は0.5以下とすることが好ましく、0.3以下とすることがより好ましい。また、その他の金属をドープさせる場合には、当該比としては0.001以上が好ましい。かかるモル比は、使用するストロンチウム化合物中のストロンチウムと、その他の金属化合物中の金属のモル比として調整可能である。
【0035】
マグネシウム化合物は、特に制限されないが、例えば、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)などとのキレート錯体;クエン酸などとの有機酸塩;マグネシウムイソプロポキシドなどの有機金属化合物;酸化物(酸化マグネシウム);水酸化物(水酸化マグネシウム);炭酸塩(炭酸マグネシウム)などの無機塩を挙げることができる。これらは一種のみ選択して使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。これらの中では、酸化マグネシウムが好ましい。なお、キレート錯体がマグネシウムイオンの他、続く加熱処理工程において除去可能なものであれば、アンモニウムイオンなど金属カチオン以外のカチオンを含んでいてもよいことは、ストロンチウムキレート錯体と同様である。
【0036】
マグネシウム化合物の形状は特に制限されないが、例えば粗粒子状、微粒子状、薄膜状、基板状などが挙げられる。またそれらは単結晶体でも多結晶体でも構わない。これらのマグネシウム化合物と上記混合粉体が接触している状態は、夫々の表面がお互いに接している状態であれば特に制限されない。例えば粒子状のマグネシウム化合物の場合、上記混合粉体と固相混合した状態であればよく、また、薄膜状や基板状のマグネシウム化合物の場合、上記混合粉体を静電吸着させたり、上記混合粉体をスラリー状にしてスラリーコートすればよい。
【0037】
なお、本発明方法におけるマグネシウム化合物の役割は必ずしも明らかではないが、マグネシウムの触媒作用により塩化セシウム型類似構造の酸化ストロンチウム結晶の形成が促進されている可能性がある。よって、ストロンチウム化合物およびその他の金属化合物とマグネシウム化合物との接触面積を大きくすることが好ましい。
【0038】
ストロンチウム化合物、その他の金属化合物およびマグネシウム化合物との接触方法は、特に制限されない。例えば、これら化合物の接触面積を大きくする手段として、これら化合物の粉体を均一混合してもよいし、また、ストロンチウム化合物およびその他の金属化合物の混合粉体の分散液や、ストロンチウム化合物およびその他の金属化合物の溶液をマグネシウム化合物に塗布または延展した上で、乾燥してもよい。
【0039】
粉体の調製方法は特に制限されないが、例えば、機械的粉砕方法としては、乳鉢と乳棒を用いるもの、ボールミル、ハンマーミル、ビーズミルなどを挙げることができる。これら方法は、二種以上を組合わせて用いてもよい。例えば、先ずはボールミルを用いて粗粉砕しつつ混合した後、ビーズミルを用いて微粉砕することができる。なお、その他の金属化合物を用いる場合には、両化合物の粒度をできるだけ細かくして均一にすることが好ましい。
【0040】
特にその他の金属化合物を用いる場合には、上述した機械的粉砕方法の他、化学的方法を用いてもよい。化学的方法は、ストロンチウム化合物などをいったん溶解してイオンレベルまで分散できるので、より均一な混合粉体が得られ、ひいてはより均一な構造を有するドープ結晶が得られることから好ましい。例えば、ストロンチウム化合物の溶液とその他の金属化合物の溶液を混合すれば、ストロンチウムとその他の金属がイオンレベルで分散した溶液を得ることができる。この場合、ストロンチウム化合物とその他の金属錯体化合物の溶液や、ストロンチウムとその他の金属化合物の両方がキレートした錯体化合物の溶液を用いることが好ましい。
【0041】
ストロンチウムとその他の金属を含む溶液から混合粉体を得る液相法としては、例えば、共沈法、ゾル−ゲル法、冷凍乾燥法、噴霧乾燥法、噴霧熱分解法などを挙げることができる。
【0042】
次に、ストロンチウム化合物、その他の金属化合物およびマグネシウム化合物とを接触させながら還元雰囲気中で加熱処理する。
【0043】
ストロンチウム化合物とマグネシウム化合物とが接触している状態のまま還元雰囲気で加熱処理することにより、塩化セシウム型構造に類似する構造の酸化ストロンチウム結晶を得ることができる。なお、通常の酸化ストロンチウム結晶は塩化ナトリウム型構造を有し、従来、塩化セシウム型の酸化ストロンチウム結晶は高圧下でなければ製造できなかったが、本発明方法によれば、塩化セシウム型構造に類似する構造の酸化ストロンチウム結晶を、大気圧下でも非常に簡便に得ることができる。
【0044】
還元雰囲気を構成する気体としては特に制限されないが、水素を含む気体が好ましく、アルゴン/水素混合気体や窒素/水素混合気体がより好ましい。また、当該気体中における水素濃度としては、0.5v/v%以上、10v/v%以下が好ましい。
【0045】
加熱温度は適宜決定すればよいが、例えば、800℃以上、1600℃以下が好ましい。当該温度が800℃以上であれば、還元反応が十分に進行し、所望の酸化ストロンチウム結晶がより確実に得られる。一方、当該温度が高過ぎると元素成分の蒸散が始まって組成が変化するおそれがあり得るため、当該温度としては1600℃以下が好ましい。当該温度としては、1000℃以上が好ましく、1200℃以上がより好ましい。
【0046】
本発明方法で得られる酸化ストロンチウム結晶は、塩化セシウム型構造に類似する構造を有する。
【0047】
酸化ストロンチウム結晶の構造としては、塩化ナトリウム型と塩化セシウム型が知られている。これらは共に立方晶系であるが、塩化ナトリウム型結晶ではストロンチウムイオンに陰イオンが6配位しているのに対して、塩化セシウム型結晶ではストロンチウムイオンに陰イオンが8配位している。本発明に係る酸化ストロンチウム結晶は、塩化ナトリウム型酸化ストロンチウム結晶とX線回折データの点で明確で異なり、また、塩化セシウム型酸化ストロンチウム結晶と同様に安定性に優れる。その一方で、本発明に係る酸化ストロンチウム結晶の結晶形は、正方晶系または斜方晶系、即ち、正方晶または斜方晶を主体とするものである。よって、本発明に係る酸化ストロンチウム結晶は、塩化セシウム型に類似する構造を有するものであると結論付けられる。
【0048】
本発明に係る酸化ストロンチウム結晶は、一般的な塩化ナトリウム型結晶よりも、安定性に極めて優れている。よって、長期的に安定な誘電体や蛍光体などとして、特にエレクトロニクス分野などで非常に有効に活用可能である。
【0049】
本発明に係る酸化ストロンチウム結晶全体に対する塩化セシウム型類似構造の結晶の割合は、80質量%以上が好ましく、85質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上が特に好ましい。一方、上限は特に定められず、当該割合としては100質量%が好ましいが、当該割合が100質量%の結晶を製造するのは難しい場合もあり得るので、当該割合としては99質量%以下がより好ましく、98質量%以下がさらに好ましい。なお、ここでの塩化セシウム型類似構造の結晶とは、他の金属によりドープされたものである場合であっても酸化ストロンチウム結晶の結晶形をいい、主に酸化ストロンチウムの配列により決定されるが、上記割合には他の金属の質量も含まれるものとする。
【0050】
塩化セシウム型構造に類似する構造の酸化ストロンチウム結晶は、通常相である塩化ナトリウム型結晶に比べて安定性に優れるので、工業的に利用価値が高い。塩化セシウム型類似構造の結晶と塩化ナトリウム型構造の結晶の違いは、X線回折チャートにより明らかとすることができる。
【0051】
また、本発明で得られる酸化ストロンチウム結晶は、正方晶または斜方晶である。即ち、基本的には正方晶であるが、製造条件や金属ドープにより結晶構造が変化し、斜方晶になる。いずれの結晶であるかは、X線回折チャートにより判断することができる。具体的には、X線回折チャートから結晶の各方位の面間隔を計算し、2方位が同じ長さの場合は正方晶であり、3方位全ての長さが異なる場合には斜方晶であると判断することができる。
【0052】
本発明に係る酸化ストロンチウム系青色蛍光体は、上記本発明方法において、その他の金属化合物としてユウロピウム化合物を用いて得られる。本発明に係る酸化ストロンチウム系青色蛍光体は、一般組成式(Sr
1-xEu
x)O[0<x≦0.5]で表され、且つ、塩化セシウム型類似構造の結晶を含むことを特徴とする。
【0053】
本発明の酸化ストロンチウム系青色蛍光体は、紫外線、X線、電子線などを照射して励起すると、青色の蛍光を発する。特に本発明の酸化ストロンチウム系青色蛍光体は、456nmを中心とした高色純度の青色光を発する。
【0054】
通常、450nm以上、485nm未満程度の波長の光は青色といえる。しかし、一般的には485nm以上の波長の光は緑色に感じられるため、例えば本発明の蛍光体を三原色のうち青色の発光体として用いる場合には、緑色発光体との区別を明確にするため、本発明の青色蛍光体の発する光の波長としては470nm未満が好ましい。当該波長としては、465nm以下がより好ましく、460nm以下がさらに好ましく、460nm未満が特に好ましい。
【0055】
本発明の酸化ストロンチウム系青色蛍光体は、塩化セシウム型類似構造の結晶を主な母構造とする。塩化セシウム型類似構造の酸化ストロンチウム結晶は、一般的な塩化ナトリウム型構造の結晶に比べて安定性に優れる。詳しくは、一般的な塩化ナトリウム型酸化ストロンチウム結晶は化学的に不安定であり、空気中の水分や炭酸ガスを吸収して水酸化物や炭酸塩を形成する。それに対して、塩化セシウム型構造やその類似構造を有する酸化ストロンチウム結晶を主な母構造とする本発明に係る蛍光体は化学的に安定であり、大気暴露で化学変化することなく、かつ発光波長と輝度についても劣化が起こらない。
【0056】
本発明に係る酸化ストロンチウム系青色蛍光体全体に対する塩化セシウム型類似結晶の割合は、80質量%以上が好ましく、85質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上が特に好ましい。一方、上限は特に定められず、当該割合としては100質量%が好ましいが、当該割合が100質量%の蛍光体を製造するのは難しい場合もあり得るので、当該割合としては99質量%以下がより好ましく、98質量%以下がさらに好ましい。なお、ここでの塩化セシウム型類似結晶とは、Euによりドープされた酸化ストロンチウム結晶の結晶形をいい、主に酸化ストロンチウムの配列により決定されるが、上記割合にはEuの質量も含まれるものとする。
【0057】
塩化セシウム型類似構造の酸化ストロンチウム結晶は、一般的な塩化ナトリウム型結晶に比べて安定性に優れるので、工業的に利用価値が高い。塩化セシウム型類似結晶と塩化ナトリウム型結晶の違いは、X線回折チャートにより明らかとすることができる。詳しくは、塩化ナトリウム型構造の酸化ストロンチウム結晶のX線回折チャートには、2θ=30.0°、34.7°、49.9°および59.3°にそれぞれ(111)、(200)、(220)および(311)の特徴的なピークが認められる。それに対してユウロピウムをドープした塩化セシウム型類似構造の酸化ストロンチウム結晶のX線回折チャートには、例えば、2θ=22.7°、22.8°、32.4°および32.7°にそれぞれ(010)、(100)、(011)および(101)の特徴的なピークが認められる。なお、X線回折ピークは、ユウロピウムのドープ量、試料の状態、測定条件などにより多少変化する場合があり、上記の特徴的ピークの2θ値も、±0.3°程度ずれる可能性がある。
【0058】
本発明の酸化ストロンチウム系青色蛍光体は、ユウロピウムがドープされている。上記一般組成式((Sr
1-xEu
x)O)においてEuドープ量xの範囲を0<x≦0.5と定めたのは、xがゼロ(0)、即ちEuドープなしでは発光中心がなくなって発光を示さなくなる一方で、Euドープ量が多くなり過ぎてxの値が0.5を超えると、濃度消光を起して輝度の低下が顕著となることによる。xのより好ましい範囲は0.001≦x≦0.3の範囲であり、この範囲で最も高い発光特性が発揮される。なお、本発明に係る青色蛍光体中、ユウロピウムはEu
2+として存在している。
【0059】
本発明に係る酸化ストロンチウム系青色蛍光体は、紫外線などを照射して励起することにより、発光ピーク波長が456nmを中心とした高色純度の青色蛍光を発する。よって、本発明に係る酸化ストロンチウム系青色蛍光体は、励起源として紫外線を用いるものとして三波長型蛍光灯やプラズマディスプレイなどの青色発光体として、また、励起源として電子線を用いるものとしてブラウン管、蛍光表示管などの青色発光体などとして、極めて有効に活用できる。
【0060】
本願は、2011年3月4日に出願された日本国特許出願第2011−048356号および日本国特許出願第2011−048357号に基づく優先権の利益を主張するものである。2011年3月4日に出願された日本国特許出願第2011−048356号および日本国特許出願第2011−048357号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【実施例】
【0061】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0062】
実施例1
酸化ストロンチウム(高純度化学社製,98%)を乳鉢で十分に粉砕し、その粉末5mgをエタノールに分散し、10mm×10mmの(110)配向の酸化マグネシウム基板上に滴下して乾燥した後、Ar+H
2(3%)の気流中、1500℃で24時間還元処理することにより、酸化物を作製した。
【0063】
得られた酸化物のX線回折チャート、一般的な塩化ナトリウム型構造の酸化ストロンチウム結晶の標準試料のX線回折チャートおよび塩化セシウム型構造の酸化ストロンチウム結晶の標準試料のX線回折チャートを、それぞれ
図1(1)〜(3)として示す。
図1のとおり、得られた酸化物は通常相の塩化ナトリウム型構造の酸化ストロンチウム結晶とは一致しない。また、塩化セシウム型構造の酸化ストロンチウム結晶とは近いが、正方晶系の特徴を示す。よって、得られた酸化物は、従来、超高圧下でのみ生成するとされていた塩化セシウム型構造に類似する構造の酸化ストロンチウム結晶であることが確認された。
【0064】
実施例2
酸化ストロンチウム(高純度化学社製,98%)を乳鉢で十分に粉砕し、その粉末5mgをエタノールに分散し、10mm×10mmの(100)配向の酸化マグネシウム基板上に滴下して乾燥した後、Ar+H
2(3%)の気流中、1500℃で24時間還元処理することにより、酸化物を作製した。
【0065】
得られた酸化物をシリコン基板に載せて測定したX線回折チャート、一般的な塩化ナトリウム型構造の酸化ストロンチウム結晶の標準試料のX線回折チャートおよび塩化セシウム型構造の標準試料の酸化ストロンチウム結晶のX線回折チャートを、それぞれ
図2(1)〜(3)として示す。
図2のとおり、得られた酸化物は通常相の塩化ナトリウム型構造の酸化ストロンチウム結晶とは一致しない。また、塩化セシウム型構造の酸化ストロンチウム結晶とは近いが、正方晶系の特徴を示す。よって、得られた酸化物は、従来、超高圧下でのみ生成するとされていた塩化セシウム型構造に類似する構造の酸化ストロンチウム結晶であることが確認された。
【0066】
さらに、得られた酸化ストロンチウム結晶の安定性を試験した。具体的には、得られた酸化ストロンチウム結晶を大気開放で7日間放置した後、シリコン基板に載せてX線回折の測定を行った。大気に7日間暴露した上記酸化ストロンチウム結晶のチャートを
図3(1)に、また、一般的な塩化ナトリウム型構造の酸化ストロンチウム結晶のX線回折チャートおよび塩化セシウム型構造の酸化ストロンチウム結晶のX線回折チャートをそれぞれ
図3(2)〜(3)に示す。
【0067】
一般的に、一般的な塩化ナトリウム型構造の酸化ストロンチウム結晶は空気中の水分や炭酸ガスを吸収して水酸化ストロンチウムや炭酸ストロンチウムへ変化するが、X線回折チャートも塩化セシウム型構造酸化ストロンチウム結晶の標準試料のもの(
図3(3))とよく一致し、大気開放下においても優れた安定性を示すことが確認された。
【0068】
実施例3
実施例2の酸化ストロンチウムを炭酸ストロンチウム(和光純薬社製,99%)に代えた以外は実施例1の条件で酸化物を作製した。
【0069】
得られた酸化物のX線回折チャートを
図4に示す。
図4のとおり、得られた酸化物は、従来、超高圧下でのみ生成するとされていた塩化セシウム型類似構造の酸化ストロンチウム結晶であることが確認された。
【0070】
実施例4
200mL容のビーカーにエチレンジアミン四酢酸ストロンチウム二アンモニウム塩水溶液(Sr:6.5wt%)192.24gを入れ、さらにエチレンジアミン四酢酸ユウロピウムアンモニウム塩(Eu:31.1wt%)1.51gを加えて完全に溶解し、無色透明のストロンチウム−EDTAとユウロピウム−EDTAの混合溶液を得た。この溶液を、噴霧乾燥法によって乾燥温度160℃で粉末化することにより、(Sr,Eu)−EDTA錯体粉末を得た。この錯体粉末を、大気開放型の電気炉により800℃で3時間仮焼して有機物を熱分解除去し、ストロンチウムとユウロピウムからなる焼成粉末を得た。この焼成粉末5mgをエタノールに分散し、10mm×10mmの(110)配向の酸化マグネシウム基板上に滴下して乾燥した後、Ar+H
2(3%)の気流中、1500℃で24時間還元処理することにより、蛍光体膜を作製した。
【0071】
当該蛍光体膜に、励起波長325nmの紫外線を照射したときの発光スペクトルを
図5に示す。この図からも明らかな様に、発光ピーク波長が456nmである高色純度かつ高輝度な青色発光を発することが分かる。また加速電圧15kVの電子線励起による発光スペクトルも
図5と同じスペクトルであることが確認され、紫外線励起および電子線励起のいずれにも適用可能な有用な青色蛍光体であることを確認できた。
【0072】
また、当該蛍光体膜のX線回折チャートを
図6(1)に示す。かかるX線回折チャートは、一般的な塩化ナトリウム型構造の酸化ストロンチウムのものとは一致せず、塩化セシウム型構造の酸化ストロンチウムの標準試料のもの(
図6(2))と一致しない。また、塩化セシウム型構造の酸化ストロンチウム結晶とは近いが、正方晶系の特徴を示す。よって、得られた酸化物は、従来、超高圧下でのみ生成するとされていた塩化セシウム型構造に類似する構造の酸化ストロンチウム結晶であることが確認された。
【0073】
実施例5
200mL容のビーカーにエチレンジアミン四酢酸ストロンチウム二アンモニウム塩水溶液(Sr:6.5wt%)192.24gを入れ、さらにエチレンジアミン四酢酸ユウロピウムアンモニウム塩(Eu:31.1wt%)1.51gを加えて完全に溶解し、無色透明のストロンチウム−EDTAとユウロピウム−EDTAの混合溶液を得た。この溶液を、噴霧乾燥法によって乾燥温度160℃で粉末化することにより、(Sr,Eu)−EDTA錯体粉末を得た。この錯体粉末を、大気開放型の電気炉により800℃で3時間仮焼して有機物を熱分解除去し、ストロンチウムとユウロピウムからなる焼成粉末を得た。この焼成粉末5mgをエタノールに分散し、10mm×10mmの(100)配向の酸化マグネシウム基板上に滴下して乾燥した後、Ar+H
2(3%)の気流中、1500℃で24時間還元処理することにより、蛍光体を作製した。なお、EDTA溶液を用いた噴霧乾燥法により、非常に再現性良く良好な蛍光体を作製することができた。
【0074】
当該蛍光体に、励起波長325nmの紫外線を照射したときの発光スペクトルを
図7に示す。この図からも明らかな様に、発光ピーク波長が456nmである高色純度かつ高輝度な青色発光を発することが分かる。また加速電圧15kVの電子線励起による発光スペクトルも
図5と同じスペクトルであることが確認され、紫外線励起および電子線励起のいずれにも適用可能な有用な青色蛍光体であることを確認できた。
【0075】
また、当該蛍光体をシリコン基板上に載せて測定したX線回折チャートを
図8(1)に示す。かかるX線回折チャートは、一般的な塩化ナトリウム型構造の酸化ストロンチウムのものとは一致しない。また、塩化セシウム型構造の酸化ストロンチウム結晶の標準資料のもの(
図8(2))とは近いが、正方晶系の特徴を示す。よって、得られた酸化物は、従来、超高圧下でのみ生成するとされていた塩化セシウム型構造に類似する構造の酸化ストロンチウム結晶であることが確認された。
【0076】
さらに、得られた蛍光体の安定性を試験した。具体的には、得られた蛍光体を大気開放で7日間放置した後、励起波長325nmの紫外線を照射し、発光スペクトルとX線回折を測定した。発光スペクトルを
図9に、シリコン基板上に載せて測定したX線回折チャートを
図10(1)に示す。一般的に、一般的な塩化ナトリウム型構造の酸化ストロンチウムは空気中の水分や炭酸ガスを吸収して水酸化ストロンチウムや炭酸ストロンチウムへ変化するが、得られた蛍光体の発光スペクトルに変化はなく、またX線回折チャートも塩化セシウム型構造酸化ストロンチウムの標準試料のもの(
図10(2))とよく一致し、大気開放下においても優れた安定性を示すことが確認された。
【0077】
実施例6
塩化ナトリウム型構造を有する酸化ストロンチウム(高純度化学社製,98%)と酸化ユウロピウム(高純度化学社製,98%)を機械混合して得られた粉末5mgをエタノールに分散し、10mm×10mmの(110)配向の酸化マグネシウム基板上に滴下して乾燥した後、Ar+H
2(3%)の気流中、1500℃で24時間還元処理することにより、蛍光体膜を作製した。
【0078】
当該蛍光体膜に、励起波長325nmの紫外線を照射したときの発光スペクトルを
図11に示す。この図からも明らかな様に、発光ピーク波長が456nmである高色純度かつ高輝度な青色発光を発することが分かる。また加速電圧15kVの電子線励起による発光スペクトルも
図11と同じスペクトルであることが確認され、紫外線励起および電子線励起のいずれにも適用可能な有用な青色蛍光体であることを確認できた。
【0079】
また、当該蛍光体膜のX線回折チャートを
図12(1)に示す。かかるX線回折チャートは、一般的な塩化ナトリウム型構造の酸化ストロンチウムのものとは一致しない。また、塩化セシウム型構造の酸化ストロンチウム結晶の標準資料のもの(
図12(2))とは近いが、正方晶系の特徴を示す。よって、得られた酸化物は、従来、超高圧下でのみ生成するとされていた塩化セシウム型構造に類似する構造の酸化ストロンチウム結晶であることが確認された。