特許第6263791号(P6263791)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6263791骨伝導を利用した聴音構造及びその構造を備えた骨伝導を利用した聴音装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6263791
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】骨伝導を利用した聴音構造及びその構造を備えた骨伝導を利用した聴音装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/00 20060101AFI20180115BHJP
   H04R 1/10 20060101ALI20180115BHJP
   H04R 25/00 20060101ALN20180115BHJP
【FI】
   H04R1/00 317
   H04R1/10 104A
   !H04R25/00 F
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-223668(P2016-223668)
(22)【出願日】2016年11月16日
【審査請求日】2017年3月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516040866
【氏名又は名称】BoCo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100149799
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】謝 端明
【審査官】 北原 昂
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−165938(JP,A)
【文献】 特開2001−320790(JP,A)
【文献】 特開昭56−089200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00
H04R 1/10
H04R 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響電気信号を振動に変換する骨伝導ドライブが格納された筐体と、
前記骨伝導ドライブで変換された振動を出力する振動出力構造体と、
前記筐体の上方に配設され耳孔の外周縁に突起した対珠の近傍の窪みに引っかけるフックと、
前記筐体の下部に開閉可能に配設されたクリップとで前記対珠の近傍を挟んで装着する挟着構造体で構成され、
前記筐体、前記フック、および前記クリップは、同一の基板上に配設され、
前記筐体は、当該筐体内に格納された骨伝導ドライブで変換された振動を出力する振動出力部の先端部を前記対珠の軟骨の近傍に当接させられるように配設されることを特徴とした骨伝導を利用した聴音装置。
【請求項2】
音響電気信号を振動に変換する骨伝導ドライブが格納された筐体と、
前記骨伝導ドライブで変換された振動を出力する振動出力構造体と、
前記筐体の上方に配設され耳孔の外周縁に突起した対珠の近傍の窪みに引っかけるフックと、前記筐体の下部に開閉可能に配設されたクリップとで前記対珠の近傍を挟んで装着する挟着構造体で構成され、
前記筐体は、格納・固定された骨伝導ドライブに外部から音声電気信号を入力するための信号ケーブルを備え、筐体内に格納・固定された骨伝導ドライブで変換された振動を出力する振動出力部の先端部を前記対珠の軟骨の近傍に当接させられるように基板に配設され、
また、前記挟着構造体のフックは、前記基板の上方に配設され、前記クリップは、前記基板の下方に配設された開閉自在にしてなる腕木と押さえ具で構成されてなることを特徴とした骨伝導を利用した聴音装置。
【請求項3】
前記筐体の前記基板における位置を調節するスライド機構を更に備えることを特徴とした請求項1または請求項2に記載の聴音装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨に振動に与えることで音を認識させる骨伝導を利用した聴音構造及び同聴音構造による骨伝導を利用した聴音装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、音楽やラジオ、テレビ等の音を聴く手段として、あるいは携帯電話や無線での会話の手段として、ヘッドホンやイヤホンのような聴音装置が広く使用されてきている。
例えば、聴音装置で一般的なヘッドホンには、耳孔に装着されるものや、耳全体を覆うものなどがあり、これらは、電気信号として入力された音源を空気振動に変換して鼓膜に伝えて振動させ、該鼓膜の振動が耳の奥の中耳を通って、脳に音の情報が伝達され認識される仕組みを利用している。
ところで、近年は、上記のような空気振動により鼓膜を振動させる仕組みではなく、頭蓋骨に音の振動を与えて骨の振動によって音を認識させる骨伝導を利用した聴音装置が開発されている。この骨伝導を利用した聴音装置は、ヘッドホンやイヤホンのように耳孔に挿入して使用する必要がなく、したがって、耳には周囲の音が遮蔽されることなく入ってくるので、装着していても安全であり、また鼓膜の振動を利用しないことから、難聴の人でも音を認識することができ、補聴器等への利用も進められている。
【0003】
この骨伝導を利用した聴音装置は、電気信号として入力された音響信号を機械的な振動に変換し、その振動を適切な位置から骨に与えて骨に振動を伝え、その振動により伝わる骨伝導音で音を認識させるものである。
前記適切な位置としては、こめかみ周辺や乳様突起と呼ばれる側頭骨の後下方にある大きな突起周辺が挙げられる。
こめかみ周辺は、すなわち頭蓋骨そのものであり、こめかみ周辺にしっかりと振動部を当接すれば的確に骨に音の振動を与えられることから、骨伝導を利用する聴音装置、特にヘッドホンタイプでは、このこめかみに当接するものが広く採用されている。そして、このタイプの骨伝導を利用した聴音装置では、振動部が的確にこめかみ周辺に当接することが重要であることから、耳の上部に引っかけて使用できるようアーム形状をなしている。
一方、乳様突起に振動を与えるものとしては、たとえば、特許文献1に「骨伝導型音声聴取装置及び方法」として開示されている、ほぼ英文字Cの形状を有するハウジング内に、聴取者の乳様突起をほぼ覆うように骨伝導手段のスピーカーが配置される構造のものがある。
上記のような、こめかみ周辺に振動を与える構造のものも、乳様突起に振動を与える構造のものも、いずれも耳を塞ぐことなく装着でき、前述のように耳には周囲の音が遮蔽されることなく入ってくるので、装着していても安全であり、また難聴者でも音を聴くことができるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平02−62199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
骨伝導を利用した聴音装置は、上述したとおり、振動部を適切な位置に当接させることで聴音が可能となる。そして、適切な位置に当接させた振動部から骨に振動を伝えるためには、ある程度の当接圧力を加えなければならず、そのため締め付けが必要となる。締め付けが弱く、単に接触している程度では、きちんと振動が伝わらず音を認識しにくくなるからである。
しかし、上述したこめかみ周辺に振動部を当接させる骨伝導聴音装置においては、こめかみ周辺の締め付けは強いストレスとなり、痛みを生じさせることにもなりかねず、また、装着者の動きに伴って、前記振動部が適切な当接位置からずれてしまった場合には、再度適切な位置に振動部が当接するように調整しなければならず、運動時等には使いにくいという問題がある。
また、特許文献1のような乳様突起を覆うように振動部が配置される構造のものは、こめかみ周辺ほどの締め付けはないものの、ほぼ英文字Cの形状をなすハウジングが大きく重量があり、人の目を引くとともに、デザイン性に乏しく、また、耳の後方に耳と頭の間に挟んで装着する構造となっているため、耳の大きさに応じて英文字Cの形状を調整しなければならず、大きさの異なる多種の装置を製造して用意しておかねばならないという問題があり、コスト高が懸念される。
上述したようにこれまでの骨伝導を利用した聴音装置にはいくつかの問題点がありその普及を妨げてきていた。
【0006】
ところで、これまでの骨伝導を利用した聴音装置としては、上述のように、こめかみ部周辺や、乳様突起周辺に振動を与える構造のものが広く開発されてきた。
これは、こめかみ部周辺や乳様突起周辺の頭蓋骨に直接振動を与えることが、最も聴覚感度特性が高いとされてきたためである。
しかし、様々な実験の結果、耳孔の外周縁の軟骨部も、頭蓋骨に直接振動を与える場合と同等あるいはそれ以上に高い聴覚感度特性を発揮することがわかってきた。
ところが、耳孔の外周縁の軟骨部は、形状が特殊であり、該軟骨部に振動部を適切に安定して当接する構造のものはなく、これまでの構造では応用できず、到底難しく不可能であった。
【0007】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題を解決するために、こめかみ周辺や乳様突起周辺といった、頭蓋骨に直接音の振動を与えることを目的として振動部を当接する構造とは全く異なる構造により、締め付けによるストレスを感じさせず、かつ、軽量でデザイン性に優れ、装着や取り外しが容易で、スポーツ等の動きのある活動の際にもずれにくく、快適に安定して装着できる骨伝導を利用した聴音装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、上記目的を達成するため、本願発明者は、鋭意研究の結果、耳孔の外周縁の軟骨部周辺に振動部を当接する以下に示すような骨伝導を利用した聴音装置を発明した。
【0009】
(1) 音響電気信号を振動に変換する骨伝導ドライブが格納された筐体と、
前記骨伝導ドライブで変換された振動を出力する振動出力構造体と、
前記筐体の上方に配設され耳孔の外周縁に突起した対珠の近傍の窪みに引っかけるフックと、
前記筐体の下部に開閉可能に配設されたクリップとで前記対珠の近傍を挟んで装着する挟着構造体で構成され、
前記筐体、前記フック、および前記クリップは、同一の基板上に配設され、
前記筐体は、当該筐体内に格納された骨伝導ドライブで変換された振動を出力する振動出力部の先端部を前記対珠の軟骨の近傍に当接させられるように配設されることを特徴とした骨伝導を利用した聴音装置。
(2) 音響電気信号を振動に変換する骨伝導ドライブが格納された筐体と、
前記骨伝導ドライブで変換された振動を出力する振動出力構造体と、
前記筐体の上方に配設され耳孔の外周縁に突起した対珠の近傍の窪みに引っかけるフックと、前記筐体の下部に開閉可能に配設されたクリップとで前記対珠の近傍を挟んで装着する挟着構造体で構成され、
前記筐体は、格納・固定された骨伝導ドライブに外部から音声電気信号を入力するための信号ケーブルを備え、筐体内に格納・固定された骨伝導ドライブで変換された振動を出力する振動出力部の先端部を前記対珠の軟骨の近傍に当接させられるように基板に配設され、
また、前記挟着構造体のフックは、前記基板の上方に配設され、前記クリップは、前記基板の下方に配設された開閉自在にしてなる腕木と押さえ具で構成されてなることを特徴とした骨伝導を利用した聴音装置。
(3) 前記筐体の前記基板における位置を調節するスライド機構を更に備えることを特徴とした前記(1)又は前記(2)に記載の骨伝導を利用した聴音装置。
【0010】
なお、本発明は、上記の構成や後述する発明の詳細な説明における構成に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱することなく種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【発明の効果】
【0011】
本発明の骨伝導を利用した聴音装置によれば、音響電気信号を振動に変換する骨伝導ドライブが格納された筐体と、前記骨伝導ドライブで変換された振動を出力する振動出力構造体と、前記筐体の上方に配設され耳孔の外周縁に突起した対珠の近傍の窪みに引っかけるフックと、前記筐体の下部に開閉可能の配設されたクリップとで前記対珠の近傍を挟んで装着する挟着構造体で構成されているので、前記振動出力構造体を前記対珠の軟骨の近傍に当接して振動を伝達でき、鮮明に聴音できるとともに、振動部をこめかみ周辺や乳様突起に当接する骨伝導装置のような締め付けによるストレスを与えることなく、装着時に優れた快適性を有する。
また、本発明は、クリップで挟み込む構造なので、装着者の耳垂の厚さに合わせて装着でき、はずれたりずれたりしにくく安定した装着性を有する。
さらに、本発明は、耳孔の外周縁に引っかける構造からなるので、耳孔を封鎖せず、安全性が高く、ヘッドホンマイクや補聴器等、騒音の激しい現場での会話を可能にするヘルメットなど、様々な分野の装置に使用できる。
【0012】
また、本発明の聴音装置によれば、上記効果に加えて、該聴音装置が、基板により前記筐体と振動出力構造体と、フック及びクリップとからなる狭着構造体とが一体に配設されるので、的確に振動出力構造体を耳孔の外周縁の対珠の軟骨近傍に当接することができ、小型で軽量にでき、基板の形状を変えるだけで多様なデザインに構成できるため、様々な年齢層の趣向や用途に合わせられることから、骨伝導を利用した聴音装置を広く普及させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る聴音構造を実現した聴音装置の実施例の側面図である。
図2】本発明に係る聴音構造を実現した聴音装置の実施例の正面図である。
図3】耳にかかる名称の説明図である。
図4】本発明に係る聴音装置の配置位置の説明図である。
図5】本発明に係る聴音装置におけるフックと挟着構造体の位置関係の説明図である。
図6】本発明に係る聴音装置を耳に取り付けた時の装置各部の位置関係を示す説明図である。
図7】本発明に係る聴音装置を装着した状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る骨伝導を利用した聴音構造及びその構造を備えた骨伝導を利用した聴音装置の実施の形態を実施例の図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る聴音構造を実現した聴音装置の実施例の側面図である。図2は本発明に係る聴音構造を実現した聴音装置の実施例の正面図である。図1及び図2において、1は聴音装置、2は筐体、3はフック、4は挟着構造体、5は基板であり、21は骨伝導ドライブ、22は振動出力部である。また、41はクリップ、42は押さえ具、43はバネ、44は軸部である。
【0015】
図1に示す本発明にかかる聴音構造を実現した聴音装置1の実施例では、音響電気信号を振動に変換する骨伝導ドライブ21が筐体2に格納され、基板5に固着されている。
音響電気信号を振動に変換するとは、外部から入力された音響電気信号を機械振動に変換することであり、骨伝導ドライブは、音響電気信号によってダイヤフラム等を振動させ、該音響電気信号を、骨に伝達する機械振動に変換している。なお、本発明においては、前記骨伝導ドライブの振動方式は、特に限定されるものではなく、音響電気信号を機械振動に変換できればよく、圧電式、電磁式、超磁歪など、従来から用いられている方法を採用することができる。
また筐体2には格納・固定された骨伝導ドライブ21に外部から音声電気信号を入力するための信号ケーブルを備え、そして筐体内に格納・固定された骨伝導ドライブ21で変換された振動は、該骨伝導ドライブ21に接続された振動出力部22の先端から装着者に伝達される。
したがって、振動出力部22は装着者の皮膚に触れることから、装着時に痛みや不快感を与えない素材で構成される。例えば、合成樹脂や合成ゴム等が挙げられ、これに限られないが、本発明にかかる聴音装置においては、振動出力部22は耳孔の外周縁の対珠の軟骨の近傍に当接するよう配設されることから、可撓性や柔軟性を有する素材で構成されることが好ましい。
【0016】
本発明に係る聴音装置は、耳孔の外周縁に突起した対珠の近傍の窪みに引っかけるフック3を有し、該フック3は、前記筐体2の上方に配置され、筐体2に格納された骨伝導ドライブ21からの振動が伝達される振動出力部22が、適切な位置である耳孔の外周縁の対珠の軟骨の近傍に当接するように配置される。
したがって、フック3は、振動出力部22の皮膚と当接する側面に対し、垂直方向に耳孔に向かって形成され、フック3を耳孔の外周縁の対珠の近傍の窪みに引っかけると、必然的に振動出力部22が適切な位置に配置される。
本実施例においてフック3は、基板5に固着された筐体2の上方で、基板5の上方に配設されている。
なお、本実施例においては、フック3を鉤型で構成しているが、耳孔の外周縁に安定して引っかけることができる形状であればよく、特に形状を限定しているものではない。
【0017】
または、本発明に係る聴音装置は、耳垂を前記フック3との間に挟み込み、対珠の近傍を挟んで該聴音装置1を装着するために、前記フック3と筐体2の下方に開閉可能に配設されたクリップとで構成される挟着構造体4を有する。本実施例においては、該挟着構造体4は、基板5に固定された軸部44を回転軸として、先端に押さえ具42を備えた腕木からなるクリップ41が開閉可能に配設され、該クリップ41が閉じた状態において、前記フック3と該クリップ41の先端の押さえ具42が耳垂を挟んで対峙するようリング状のバネ43で調整される。該バネ43の弾性により、フック3と押さえ具42とで、耳垂を挟み込むように装着できる構造となっている。
該挟着構造体4は、前記フック3が移動したり、はずれたりせず、安定して耳孔の外周縁に引っかかるように、耳垂の裏側から、フック3を押さえ、聴音装置1全体を、確実に適切な位置に保持する役目を担っている。
したがって、挟着構造体4は、上記役目を果たすことができる狭着構造であればよく、本実施例の形態に限定されず、例えば、クリップは、腕木と押さえ板で構成されるものでなく、全体で押さえる形状のものであってもよく、また、リングバネ以外の、板バネや、ワッシャを介して軸着するクリップ方式や、マグネット式など、耳垂を挟み込んで安定して聴音装置1を装着する目的を達成できる構造であればよい。
なお、聴音装置1の装着時に、挟着力で挟み込んだ個所に痛みが生じないよう挟着力を調整できる構造が好ましい。
【0018】
このように、本発明に係る聴音装置は、前記フック3とクリップ41とからなる前記挟着構造体4により、前記振動出力部22が、耳孔の外周縁の対珠の軟骨近傍に当接するよう構成される。すなわち、本発明に係る聴音装置1は、振動出力部22を該耳孔の外周縁の対珠の軟骨近傍に当接させ、該軟骨周辺から、脳へ振動を伝達する構造である。
前記耳孔の外周縁の対珠の軟骨の近傍について、図3に示す耳にかかる名称の説明図で説明する。
本発明において、図3(A)は、耳の各部における一般的な名称である。(B)は、本発明において、使用している名称である。
本発明においては、外耳孔aから続く耳甲介腔bの窪みを含めて「耳孔」と称し、耳珠c下方から珠間切痕d、軟骨の隆起部である対珠e、前記対珠eの軟骨の隆起部を下がったやや凹んだ部分から、対輪fへ続く部分を「耳孔の外周縁」と称し、該耳孔の外周縁に突起した対珠eの近傍の窪みを「対珠の近傍の窪み(A)」と称し、対珠eを中心とした周囲の軟骨部を「耳孔の外周縁の対珠の軟骨の近傍(B)」と称している。
具体的には、図4に示す本発明に係る聴音装置の配置位置の説明図に示すように、耳孔外周縁の対珠の近傍の窪み(A)にフック3の係止位置31aが、耳孔外周縁の対珠の軟骨の近傍B周辺に振動出力部22の当接位置22aが配置される。そして、フック3の係止位置31aの耳裏側に挟着構造体4の押さえ具42の当接位置42aが配置される。
フック3と挟着構造体4の位置関係は、図5に示すように、耳孔外周縁の対珠の近傍に引っかけられたフック3の先端が、耳垂の裏側からクリップ41の先端の押さえ具42で押さえられる構造となっている。
また、筐体2とフック3及び挟着構造体4の位置関係は、図6に示すように、振動出力部22が、耳孔外周縁の対珠の軟骨の近傍Bに当接し、該振動出力部22の配置位置を維持するように、フック3が耳孔外周縁の対珠の近傍の窪みBに引っかけられ、該フック3を安定して保持するよう、耳垂の裏側から、押さえ具42がフック3と対峙して配置され、クリップ41とで、耳垂を挟み込むよう構成される。
このような構成とすることで、振動出力部22を確実に耳孔の外周縁の対珠の軟骨の近傍Bに接触させて振動を伝達することができ、安定した装着感とともに、鮮明に聴音できる構造となっている。
【0019】
本発明にかかる聴音構造は、上記聴音装置1の実施例で説明したように、筐体2と、フック3及び挟着構造体4とからなり、該聴音構造を備えた聴音装置1は、様々な用途に利用できる。
例えば、該聴音装置1にマイクを付加することで、イヤホンマイクを構成でき、集音器を付加することで補聴器を構成できる。
また、筐体2と、フック3及びクリップ41とで構成される挟着構造体4を基板5に一体に配設し、音響機器等と有線あるいは無線で接続することで、骨伝導を利用したヘッドホンを構成することもできる。
図7は、本発明にかかる聴音構造を備えた骨伝導を利用した聴音装置の使用の状態を示す図である。
図に示すようなヘッドホンを構成する場合に、基板5への各構造の配設は、詳しくは、前記筐体2については、振動出力部22が耳孔の外周縁の対珠の軟骨近傍B周辺に当接するように配設され、前記フック3は、前記筐体2の上方であって、振動出力部22からの振動が直接伝達されない位置に配設され、前記挟着構造体4は、前記筐体2の下方であって、前記フック3との間に耳垂を挟み込み、該フック3が接触する部分の耳垂の裏面から挟着構造体4の押さえ具42がフック3を押さえる位置に配設される。
また、図7に示す聴音装置でイヤホンマイクを構成する場合には、図示しないが、上記基板5に対し、平行に回動自在にマイクを配設することで、振動出力部22の当接位置を動かすことなく、会話が可能となる。
なお、本発明に係る聴音装置は、片耳でも両耳でも使用ができるので、両耳で使用する場合には、ネックアームの両端部に本発明にかかる聴音装置を取り付けたり、ケーブルで繋いだりする。
さらに、基板5の形状は任意にデザイン性の高いものに変更することができ、様々な年齢層の、様々な用途に合わせて利用できる。
また、フック3を基板5に配設するにあたって、筐体2の上方に、左右位置が調整できるように配設してもよく、その場合には、耳孔の外周縁の形状に合わせて、フック3の位置の微調整を可能とすることもできる。
さらに、基板5への筐体2の配設にあたっては、該筐体2の位置を上下方向に調節できるよう、スライド機構を備えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、骨伝導を利用する装置を構成することができ、骨伝導ヘッドホンに限るものではなく、補聴器、マイクロホン、騒音の激しい場所での会話用など、さまざまな骨伝導を利用する装置や機器に利用することができる。
【符号の説明】
【0021】
1 聴音装置
2 筐体
3 フック
4 挟着構造体
5 基板
21 骨伝導ドライブ
22 振動出力部
22a 振動出力部の当接位置
31a フックの係止位置
41 クリップ部
42 押さえ具
42a 押さえ具の当接位置
43 バネ
44 軸部
a 外耳孔
b 耳甲介腔
c 耳珠
d 珠間切痕
e 対珠
f 対輪
A 耳孔の外周縁の対珠の近傍の窪み
B 耳孔の外周縁の対珠の軟骨の近傍
【要約】
【課題】締め付けによるストレスを感じさせず、かつ、軽量でデザイン性に優れ、装着や取り外しが容易で、快適に安定して装着できる骨伝導を利用した聴音構造及びその構造を備えた骨伝導を利用した聴音装置を提供する。
【解決手段】音響電気信号を振動に変換する骨伝導ドライブが格納された筐体と、前記骨伝導ドライブで変換された振動を出力する振動出力構造体と、前記筐体の上方に配設され耳孔の外周縁に突起した対珠の近傍の窪みに引っかけるフックと、前記筐体の下部に開閉可能に配設されたクリップとで前記対珠の近傍を挟んで装着する挟着構造体で構成され、前記振動出力構造体が、対珠の軟骨の近傍に当接して骨伝導によって音の認識を可能にしてなる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7