(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された発明では、弁体が全開となる時に発生する衝撃を筒内圧センサで検出し、この時刻を起点として開弁期間を算出するため、開弁開始から弁体が全開となるまでの間の燃料噴射量は考慮されていない。従って、上記開弁開始から弁体が全開となるまでの間の燃料噴射量を含めた、より正確な燃料噴射量を算出することはできなかった。
【0005】
ところで、近年では、上記燃料噴射弁として弁体と可動コアを別体構造としたハンマリングコア構造の燃料噴射弁が普及しつつある。このようなハンマリングコア構造の燃料噴射弁に特許文献1に開示された発明を適用することが考えられる。しかしながら、上述のように、特許文献1に開示された発明では開弁から全開となるまでの間の燃料噴射量が考慮されていない。このため、近年の燃料噴射制御のさらなる高精度化の要求に応えることができない。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、ハンマリングコア構造の燃料噴射装置の制御を行う燃料噴射制御装置において、より高精度な燃料噴射制御を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、第1の手段として、弁座と、弁体と、上記弁体と別体とされた可動コアと、上記可動コアの移動を停止する固定コアとを備えた燃料噴射弁を制御する燃料噴射制御装置であって、上記燃料噴射弁の動作状態を検出する検出手段から入力される入力信号に含まれる弁体が開弁を開始するタイミングを示す第1衝突信号に基づいて、第1開弁タイミングを判定する第1開弁タイミング判定手段と、上記入力信号に含まれる弁体が全開となるタイミングを示す第2衝突信号に基づいて、第2開弁タイミングを判定する第2開弁タイミング判定手段とを備える、という構成を採用する。
【0008】
第2の手段として、上記第1の手段において、上記第1開弁タイミング及び上記第2開弁タイミングに基づいて燃料噴射量を補正する、という構成を採用する。
【0009】
第3の手段として、上記第2の手段において、上記検出手段から入力される入力信号に含まれる弁体が閉弁するタイミングを示す第3衝突信号に基づいて閉弁タイミングを判定し、上記閉弁タイミング、上記第1開弁タイミング及び上記第2開弁タイミングに基づいて上記燃料噴射量を算出する、という構成を採用する。
【0010】
第4の手段として、上記第1〜3いずれかの手段において、上記検出手段は、シリンダ内に設置された筒内圧センサである、という構成を採用する。
【0011】
第5の手段として、上記第1〜3いずれかの手段において、上記検出手段は、振動センサである、という構成を採用する。
【0012】
第6の手段として、上記第1〜5いずれかの手段において、上記第1衝突信号又は閉弁時に上記可動コアが停止するタイミングを示す第4衝突信号に基づいて、上記検出手段の故障を検出する、という構成を採用する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、燃料噴射制御装置において、ハンマリングコア構造の燃料噴射弁の可動コアと弁体との衝突による振動と、可動コアと固定コアの衝突による振動とを検出することができる。このことから、第1開弁タイミング(弁体が開弁を開始するタイミング)を判定することができ、かつ第2開弁タイミング(弁体が全開となるタイミング)の判定も可能である。従って、ハンマリングコア構造の燃料噴射弁において、より高精度な燃料噴射制御が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明に係る燃料噴射制御装置の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。また、本実施形態の燃料噴射制御装置は、車両に搭載されるECU1(Engine Control Unit)に組み込まれている。
【0016】
まず、本実施形態のECU1によって制御される燃料噴射弁10について、
図1〜
図4を参照して説明する。
図1は、燃料噴射弁10とECU1とを示す模式図である。この図に示すように、燃料噴射弁10は、ハウジング11と、接続カプラ12と、固定コア13と、コイル14と、弁体15と、弁体付勢バネ16と、可動コア17と、可動コア付勢バネ18と、筒内圧センサ19とを備えている。
【0017】
ハウジング11は、固定コア13、コイル14、弁体15、弁体付勢バネ16、可動コア17及び可動コア付勢バネ18を収容するケースである。このハウジング11は、固定コア13やコイル14等を収容する大径部11aと、大径部11aに対して同心状に接続される小径部11bとを有している。また、この小径部11bの先端部は、燃料を噴射する噴射孔11cが形成された弁座11dとされている。このようなハウジング11は、
図1の上部から内部に燃料を供給可能とされている。接続カプラ12は、ハウジング11の大径部11a側の端部に接続されており、ハウジング11から斜め側方に突出されている。この接続カプラ12は、燃料噴射弁10と本実施形態のECU1とを電気的に接続する部分である。
【0018】
固定コア13は、ハウジング11の大径部11aの内部に同心状に収容される円筒状の部材であり、不図示の固定部によってハウジング11に対して固定されている。この固定コア13は、磁性体からなる。この固定コア13の弁座11d側の端面は、可動コア17との当接面とされている。コイル14は、導線が環状に巻回されることにより形成されており、固定コア13を外側から囲うように固定コア13と同心状に配置されている。このコイル14は、接続カプラ12を通じて、ECU1により制御される不図示の給電ユニットと電気的に接続されており、給電ユニットから電流が供給されることによって磁界を発生させる。
【0019】
弁体15は、弁ニードル15aと、弁部15bと、ガイド部材15cと、ストッパ15dとを備えている。弁ニードル15aは、固定コア13の中心軸線に沿って延在する長尺状の棒部材である。この弁ニードル15aは、
図1に示すように、固定コア13側の一部が固定コア13の内部に位置し、弁座11d側の一部が固定コア13から弁座11d側に突出するように配置されている。弁部15bは、弁ニードル15aの弁座11d側の先端に固定された球状の部位である。この弁部15bは、弁座11dに当接することによって噴射孔11cを閉鎖し、弁座11dから離間することによって噴射孔11cを開放する。
【0020】
ガイド部材15cは、弁ニードル15aの弁部15bと反対側の端部近傍に固定された円筒状の部材である。このガイド部材15cは、弁部15b側の端面が可動コア17との当接面とされており、弁部15bと反対側の端面が弁体付勢バネ16との当接面とされている。また、ガイド部材15cの弁部15bと反対側の端部には、弁ニードル15aの径方向に突出するフランジ15eが形成されている。このフランジ15eは、周面が固定コア13の内周面との摺動面とされ、弁部15b側の面が可動コア付勢バネ18との当接面とされている。このようなガイド部材15cは、弁部15bが弁座11dに当接しているときに、弁部15b側の端面(可動コア17との当接面)が固定コア13の弁座11d側の端面よりも弁座11d側に位置するように弁ニードル15aに固定されている。
【0021】
ストッパ15dは、弁部15bとガイド部材15cとの間にて弁ニードル15aに固定された円筒状の部材である。このストッパ15dは、ガイド部材15c側の端面が可動コア17との当接面とされており、この当接面がガイド部材15cの弁部15b側の端面に対して可動コア17の厚みよりも大きく離間するように配置されている。
【0022】
弁体付勢バネ16は、固定コア13の内部に収容された圧縮コイルバネであり、ハウジング11の内壁面と弁体15のガイド部材15cと間に介挿されている。このような弁体付勢バネ16は、弁体15を弁座11d側に付勢する。つまり、弁体15は、コイル14に給電されてない場合には、弁体付勢バネ16の付勢力により、弁部15bが弁座11dに当接される。
【0023】
可動コア17は、固定コア13よりも弁座11d側にて、弁体15のガイド部材15cとストッパ15dとの間に配置されている。この可動コア17は、中央部に弁ニードル15aが挿通される貫通孔が形成された円筒状の部材であり、弁ニードル15aに対して貫通孔の内壁面が摺動可能とされている。つまり、可動コア17は、弁体15とは別体とされており、弁ニードル15aの延在方向に沿って弁体15に対して移動可能とされている。また、可動コア17のガイド部材15c側の端面は、固定コア13及び可動コア付勢バネ18との当接面とされている。また、可動コア17のストッパ15d側の端面は、ストッパ15dとの当接面とされている。このような可動コア17は、磁性体によって形成されている。コイル14に通電され、コイル14が励磁されると、固定コア13及び可動コア17を含む磁路が形成され、この磁路形成により発生する吸引力により可動コア17が固定コア13側に移動される。
【0024】
可動コア付勢バネ18は、弁ニードル15aを囲む圧縮コイルバネであり、弁体15が備えるガイド部材15cのフランジ15eと可動コア17との間に介挿されている。このような可動コア付勢バネ18は、可動コア17をストッパ15d側に付勢する。つまり、可動コア17は、コイル14に給電されていない場合には、可動コア付勢バネ18の付勢力により、ストッパ15dに当接される。
【0025】
筒内圧センサ19は、ハウジング11の小径部11bの先端部の周面に固定されている。この筒内圧センサ19は、燃料噴射弁10が設置されるシリンダ内部の圧力を検出して出力するセンサである。なお、筒内圧センサ19は、ハウジング11に固定されていることから燃料噴射弁10で生じた衝撃が伝わり、この衝撃を含む検出信号を出力する。本実施形態では、筒内圧センサ19は、可動コア17が弁体15のガイド部材15cに衝突したときの衝撃を示す信号(以下、第1衝突信号と称する)、可動コア17が固定コア13に衝突したときの衝撃を示す信号(以下、第2衝突信号と称する)、弁体15の弁部15bが弁座11dに衝突したときの衝撃を示す信号(以下、第3衝突信号と称する)、及び、可動コア17が弁体15のストッパ15dに衝突したときの衝撃を示す信号(以下、第4衝突信号と称する)を含む検出信号を出力する。このように筒内圧センサ19は、シリンダ内の圧力のみではなく、燃料噴射弁10の動作状態(可動コア17等の衝突状態)を検出する。
【0026】
続いて、このように構成された燃料噴射弁10の動作について説明する。なお、ここでは、コイル14に対して電流が供給されていない状態から説明を行う。
【0027】
上述の燃料噴射弁10の構成の説明で用いた
図1は、コイル14に対して電流が供給されていない状態の示す図である。この図に示すように、コイル14に対して電流が供給されていない状態では、弁体付勢バネ16の付勢力によって弁体15の弁部15bが弁座11dに当接される。このように弁部15bが弁座11dに当接されることによって噴射孔11cが閉鎖される。また、コイル14に対して電流が供給されていない状態では、可動コア付勢バネ18の付勢力によって可動コア17が弁体15のストッパ15dに当接されている。
【0028】
図2(a)〜(c)は、燃料噴射弁10の開弁動作を説明するための模式図である。ECU1の制御の下、不図示の給電ユニットからコイル14に電流が供給されると、コイル14が励磁されることにより、固定コア13及び可動コア17を含む磁路が形成され、これによって発生する吸引力により、可動コア17が固定コア13側に移動される。この結果、
図2(a)に示すように、可動コア付勢バネ18が縮み、可動コア17がストッパ15dから離間すると共に、可動コア17が弁体15のガイド部材15cに衝突する。
【0029】
さらに可動コア17が固定コア13側に移動されると、弁体15が持ち上げられ、弁体15が弁座11dから離間する方向に移動される。この結果、弁体15の弁部15bが弁座11dから離間し、噴射孔11cが開放されて燃料の噴射が開始される。このように磁力によって移動される可動コア17は、
図2(b)に示すように、固定コア13に衝突することによって停止される。このとき、弁体15は慣性力によって移動を続ける。この結果、
図2(c)に示すように、一時的にガイド部材15cが可動コア17から浮き上がり、その後、弁体付勢バネ16の付勢力によってガイド部材15cが可動コア17に当接する位置まで戻る。以上の流れによって燃料噴射弁10の開弁動作が終了する。
【0030】
また、開弁が維持される間(すなわち開弁指令がECU1から入力されている間)は、一定量の電流がコイル14に供給され、弁体15の弁部15bが弁座11dから離間された状態が維持される。
【0031】
このように開弁された燃料噴射弁10を閉弁する場合には、コイル14への電流の供給が停止される。このようにコイル14への電流の供給が停止すると、固定コア13と可動コア17との間に生じていた磁力が消滅し、弁体15が弁体付勢バネ16の付勢力によって弁座11d側に移動される。この結果、弁体15の弁部15bが弁座11dに当接して噴射孔11cが塞がれる。その後、可動コア付勢バネ18の付勢力によって可動コア17が弁体15のストッパ15d側に移動され、ストッパ15dに当接することによって可動コア17が停止される。
【0032】
また、燃料噴射弁10が備える筒内圧センサ19からは、シリンダ内の圧力を示す信号の他、第1衝突信号、第2衝突信号、第3衝突信号及び第4衝突信号が含まれる検出信号が出力される。
図3(a)〜(d)は、燃料噴射弁10の弁体15及び可動コア17の動作と筒内圧センサ19からの検出信号との関係を示すグラフである。
図3(a)〜(d)の各図において、上側が時間と弁体15及び可動コア17のストローク位置との関係を示すグラフであり、下側が時間と筒内圧センサ19から出力される検出信号に含まれる衝突信号のレベルとの関係を示すグラフである。なお、
図3(a)〜(d)の各図における上側に示すグラフでは、開弁動作のときに可動コア17と弁体15のガイド部材15cとが衝突する位置をストローク位置がゼロの位置としている。
【0033】
図3(a)に示すように、コイル14に電流が供給されると、可動コア17のみが移動され、可動コア17と弁体15のガイド部材15cとが衝突するタイミングで第1衝突信号Saが筒内圧センサ19から出力される。さらに可動コア17が移動し、固定コア13に衝突するタイミングで、
図3(b)に示すように、第2衝突信号Sbが筒内圧センサ19から出力される。
【0034】
閉弁時には、弁体15及び可動コア17が弁座11dの方向に移動され、弁部15bが弁座11dに衝突するタイミングで、
図3(c)に示すように、第3衝突信号Scが筒内圧センサ19から出力される。さらに、可動コア17のみが弁座11dの方向に移動され、弁体15のストッパ15dに衝突するタイミングで、
図3(d)に示すように、第4衝突信号Sdが筒内圧センサ19から出力される。
【0035】
さらに、
図4を参照して、燃料噴射弁10の開弁期間について説明する。
図4は、コイル14への通電期間と、燃料噴射弁10の弁体15及び可動コア17の動作と、筒内圧センサ19からの検出信号との関係を示すグラフである。この図に示すように、Tをコイル14への通電期間とし、TConをコイル14への通電開始から第1衝突信号Saが出力されるまでの期間とし、TV
onをコイル14への通電開始から第2衝突信号Sbが出力されるまでの期間とし、TVoffをコイル14への通電停止から第3衝突信号Scが出力されるまでの期間とし、TCoffをコイル14への通電停止から第4衝突信号Sdが出力されるまでの期間とする。
【0036】
実際に噴射孔11cから燃料が噴射される実開弁期間は、弁体15の弁部15bが弁座11dから離間する瞬間(すなわち第1衝突信号Saが出力されたタイミング)から、弁部15bが弁座11dに衝突する瞬間(すなわち第3衝突信号Scが出力されたタイミング)までの間である。したがって、通電期間をT、実開弁期間をTrとすると、実開弁期間Trは下式(1)によって表される。
Tr=T−TCon+TVoff (1)
【0037】
続いて、本実施形態のECU1について
図5〜6を参照して詳しく説明する。
図5は、ECU1の機能ブロック図である。
【0038】
図5に示すように、本実施形態のECU1は、第1開弁タイミング判定部2と、第2開弁タイミング判定部3と、閉弁タイミング判定部4と、通電期間設定部5と、補正部6とを備えている。なお、ECU1はICチップやメモリ等のハードウェアと、メモリ等に記憶されるソフトウェアとを備えている。第1開弁タイミング判定部2と、第2開弁タイミング判定部3と、閉弁タイミング判定部4と、通電期間設定部5と、補正部6とは、上述のハードウェアとソフトウェアが協働することにより具現化されている。
【0039】
ECU1には、筒内圧センサ19からの検出信号A(検出手段から入力される入力信号)と、運転状態信号Bとが入力されている。第1開弁タイミング判定部2は、検出信号Aから第1衝突信号Saを検出し、第1衝突信号SaがECU1に入力された時刻を第1開弁タイミングであると判定する。第2開弁タイミング判定部3は、検出信号Aから第2衝突信号Sbを検出し、第2衝突信号Sbが入力された時刻を第2開弁タイミングであると判定する。閉弁タイミング判定部4は、検出信号Aから第3衝突信号Scを検出し、第3衝突信号Scを検出した時刻を閉弁タイミングであると判定する。
【0040】
通電期間設定部5は、運転状態信号Bから、燃料噴射弁の要求通電期間Tiを算出する。この要求通電期間Tiは、第1開弁タイミングから第2開弁タイミングまでの開弁動作期間Toの間に噴射された燃料噴射量を考慮していない。また、全開状態から閉弁タイミングまでの閉弁動作期間Tc(
図4に示すTVoff)の間に噴射された燃料噴射量も考慮していない。このことから、さらに、通電期間設定部5は、補正部6で算出された補正値Cを用いて弁体15の開弁制御を行う期間である通電期間Tを求める。ここでは、通電期間設定部5は、要求通電期間Tiと補正値Cから下式(2)に基づいて通電期間Tを算出する。
T=Ti+C (2)
【0041】
補正部6は、第1開弁タイミング判定部2により判定された第1開弁タイミングと、第2開弁タイミング判定部3により判定された第2開弁タイミングとの差分から開弁動作期間Toを算出する。さらに、補正部6は、通電期間終了時刻から閉弁タイミング判定部4により判定された閉弁タイミングまでの閉弁動作期間Tcを算出する。補正部6は、開弁動作期間Toの間に噴射された燃料噴射量及び閉弁動作期間Tcの間に噴射された燃料噴射量を算出し、当該燃料噴射量に基づいた補正値Cを算出する。
【0042】
続いて、
図6を用いて、本実施形態に係る燃料噴射制御装置であるECU1の動作について詳述していく。
図6はECU1が運転状態信号Bを取得してから燃料噴射弁の開弁制御を終了するまでのフローチャートである。
【0043】
車両からの運転状態信号Bが通電期間設定部5に入力されると、まず通電期間設定部5は、運転状態信号Bに応じた要求通電期間Tiを求める(ステップS1)。さらに、通電期間設定部5は、補正値Cを用いて上記の式(2)に基づいて通電期間Tを算出する(ステップS2)。なお、ここで用いる補正値Cは、先に補正部6によって算出されたものであり、過去の第1開弁タイミングと第2開弁タイミングとに基づいて算出されたものである。
【0044】
通電期間Tが算出されると、ECU1は、給電ユニットを通じて燃料噴射弁に通電を開始する(ステップS3)。続いて、第1開弁タイミング判定部2は、検出信号Aから、可動コア17とガイド部材15cが衝突したときに発生する第1衝突信号Saが入力されたか否かを判定する(ステップS4)。続いて、第2開弁タイミング判定部3は、同様に検出信号Aから、可動コア17が固定コア13に衝突したときに発生する第2衝突信号Sbが入力された否かを判定する(ステップS5)。
【0045】
続いて、閉弁タイミング判定部4は、検出信号Aから、弁部15bが弁座11dに衝突したときに発生する第3衝突信号Scが入力されたか否かを判定する(ステップS6)。第3衝突信号Scが入力された場合には、補正部6は開弁動作期間To及び閉弁動作期間Tcを算出する。さらに、補正部6は、これに基づいた補正値Cを算出すると共に通電期間設定部5に記憶された補正値Cを更新する(ステップS7)。このステップS4で算出された補正値Cは、最新の第1開弁タイミング、第2開弁タイミングと閉弁タイミングに基づいて算出されたものである。更新が終了すると、ECU1は処理を終了する。
【0046】
このような本実施形態のECU1によれば、ハンマリングコア構造の燃料噴射弁の制御において、筒内圧センサ19からの検出信号Aより第1開弁タイミングを判定する第1開弁タイミング判定部2と、筒内圧センサ19からの検出信号Aより第2開弁タイミングを判定する第2開弁タイミング判定部3とを備えている。このため、開弁動作期間Toにおける燃料噴射量を考慮した噴射量の調節ができる。したがって、本実施形態のECU1によれば、ハンマリングコア構造の燃料噴射弁において、より高精度な燃料噴射制御が可能である。
【0047】
また、本実施形態のECU1によれば、閉弁タイミングを判定する閉弁タイミング判定部4を備えている。このため、第1開弁タイミング及び閉弁タイミングより、正確な実開弁期間Trを算出することができる。
【0048】
なお、弁体15がなんらかの要因によりスティックした(弁体15が移動しなくなった)場合においても、弁体15と可動コア17を別体構造としたハンマリングコア構造の燃料噴射弁10のため、コイル14に電流が供給された場合は第1衝突信号Saが出力される。又コイル14に電流が停止された場合は第4衝突信号Sdが出力される。よって、コイル14に電流が供給され、停止された場合に、第1衝突信号Sa又は第4衝突信号Sdが検出されない場合には、筒内圧センサ19の故障と判断できる。
【0049】
なお、本実施形態のECU1では、第1開弁タイミングと、第2開弁タイミングと、閉弁タイミングによって補正値Cを求めている。本実施形態のECU1では、さらに、これらの第1開弁タイミングと、第2開弁タイミングとから、開弁動作期間Toにおける燃料噴射量を算出するようにしても良い。このように算出された燃料噴射量は、第1開弁タイミングと第2開弁タイミングとに基づく正確なものであることから、正確な燃料噴射量を知ることができる。
【0050】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせなどは一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0051】
例えば、上記実施形態においては、弁体15の衝突による振動の検出に筒内圧センサ19を用いている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、別途振動センサや他のセンサを設置してもよい。
【0052】
また、燃料噴射弁10が固定コア13と可動コア17が衝突する構造であるが、固定コア13と可動コア17の間に他の部材、(例えばカラー等)を設置してもよい。
【0053】
また、上記実施形態においては、本発明の燃料噴射制御装置がECU1である構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、ECU1とは別体として燃料噴射制御装置を設置しても良い。
【0054】
また、上記実施形態においては、閉弁タイミング判定部4を備える構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、閉弁タイミング判定部4を備えない構成を採用することも可能である。