特許第6263826号(P6263826)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263826
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】制御板
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/00 20060101AFI20180115BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20180115BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   F16H61/00
   F16J15/10 U
   C09K3/10 R
   C09K3/10 Q
   C09K3/10 M
   C09K3/10 G
   C09K3/10 E
   C09K3/10 D
   C09K3/10 Z
   C09K3/10 L
   C09K3/10 K
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-544493(P2015-544493)
(86)(22)【出願日】2013年12月2日
(65)【公表番号】特表2016-500148(P2016-500148A)
(43)【公表日】2016年1月7日
(86)【国際出願番号】EP2013075220
(87)【国際公開番号】WO2014083199
(87)【国際公開日】20140605
【審査請求日】2015年5月28日
(31)【優先権主張番号】202012011555.3
(32)【優先日】2012年11月30日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】505467753
【氏名又は名称】レインツ デッチタングス ゲー エム ベー ハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ブレルシュ ロバート
(72)【発明者】
【氏名】エグロフ ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】クラウス オリバー
(72)【発明者】
【氏名】ヒバート ビクトル
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルトフォーゲル ハンス
【審査官】 日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−295929(JP,A)
【文献】 米国特許第06073938(US,A)
【文献】 特開平06−109138(JP,A)
【文献】 特開平08−258203(JP,A)
【文献】 米国特許第05852957(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 59/00−61/12
F16H 61/16−61/24
F16H 61/66−61/70
F16H 63/40−63/50
F16J 15/10
C09K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1層の金属層(104)と、金属層(104)の少なくとも一方の表面上を部分的に切れ目なく被覆するポリマー系の被膜(103)とを有し、空気圧又は液圧制御で用いられる制御板であって、
切れ目なく被覆するポリマー系の被膜(103)の端部の間に拡がる範囲で、かつ、当該端部から離れた範囲である被膜線を含んで切れ目なく被覆する範囲内の切れ目なく被覆するポリマー系の被膜(103)が、被膜線に沿った少なくとも2つの異なる領域において異なる厚さを示す
ことを特徴とする制御板。
【請求項2】
二つの異なる領域における被膜(103)は同一又は略同一の幅を示す
ことを特徴とする請求項1記載の制御板。
【請求項3】
二つの異なる領域における被膜(103)の厚さは、広い方の被覆領域の幅の、又は、両方の被覆領域の幅の、多くとも20%、好ましくは多くとも10%、最も好ましくは多くとも5%異なる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の制御板。
【請求項4】
金属層(104)の表面に密封手段として塗布されたポリマー系の被膜(103)を別にして、金属層(104)は更なる密封手段を備えておらず、特に、金属層に形成されるビーズ(beads)又は輪郭(profilings)を備えていない
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の制御板。
【請求項5】
切れ目なく被覆する範囲内での異なる厚さの二つの領域の間でポリマー系の被膜(103)の厚さが連続的に変化する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の制御板。
【請求項6】
厚さは、切れ目なく被覆する範囲の中心領域を通る部分に沿った被膜の高さであり、
前記中心領域は、ポリマー系の被膜(103)の最小幅の少なくとも10%以上、好ましくは20%以上、好ましくは30%以上、又は、ポリマー系の被膜(103)の近くの端部に対して少なくとも0.8mmの距離を有する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の制御板。
【請求項7】
切れ目なく被覆する範囲は、30mm以下の、好ましくは20mm以下の距離において、10μm以上、好ましくは12μm以上のポリマー系の被膜(103)の厚さの変化を示す
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の制御板。
【請求項8】
切れ目なく被覆する範囲は、100mm以下の、好ましくは50mm以下の距離において、12μm以上、好ましくは15μm以上のポリマー系の被膜(103)の厚さの変化を示す
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の制御板。
【請求項9】
少なくとも1層の金属層(104)は、特に、ボルト穴のような、締め付け構成要素のための一つ又は複数の通過孔(101)を備えていること、及び、
少なくとも一つの切れ目なく被覆する範囲は、通過孔に隣接する第1の部分範囲と、通過孔からかなり離れている第2の部分範囲とを有し、
第2の部分範囲は締め付け構成要素のための通過孔を有さず、
非圧縮状態における第1の部分範囲のポリマー系の被膜(103)は、第2の部分範囲の被膜の厚さより小さい、特に少なくとも30%小さい厚さを示す
ことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の制御板。
【請求項10】
第2の部分範囲は、締め付け手段のためのいずれの通過孔(101)からも、各通過孔(101)の少なくとも一つ、特に、少なくとも二つの直径だけ離れている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の制御板。
【請求項11】
非圧縮状態における第1の部分範囲のポリマー系の被膜(103)は、第2の部分範囲の被膜の厚さより少なくとも40%小さく、特に少なくとも50%小さい厚さを示す
ことを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の制御板。
【請求項12】
金属層(104)の平面に平行に拡がり、ポリマー系の被膜(103)で被覆された、金属層(104)の少なくとも一つの表面は、完全に平坦であり、特に局所的な突起又は局所的なへこみを示さない
ことを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の制御板。
【請求項13】
少なくとも1層の金属層(104)は、少なくとも0.175mmの、多くとも2.0mmの、好ましくは、少なくとも0.5mmの、多くとも1.2mmのシート厚さ(sheet thickness)を有する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載の制御板。
【請求項14】
制御板(100)は、
共通平面に投影されたときに好ましくは部分だけで一致する二つの被膜で表面の両方が部分的に又は完全に被覆されているまさに1層の金属層(104)を備えている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載の制御板。
【請求項15】
制御板(100)は、
表面のまさに一方が部分的に又は完全に被覆されているまさに1層の金属層(104)を備えている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載の制御板。
【請求項16】
制御板(100)は、まさに2層の金属層(104、104')を備えており、
金属層のそれぞれは、他層から離れる方を向いているそれぞれの表面が、共通平面に投影されたときに好ましくは部分だけで一致する二つの被膜で部分的に又は完全に被覆されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載の制御板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、空気圧又は液圧制御で用いられるような制御板に関する。そのような制御板の例は変速装置制御板であって、変速装置制御板を用いて、自動変速装置が液圧で制御される。
【背景技術】
【0002】
制御板はしばしば金属層を備えており、金属層は例えばオイルのような作動液のための通過孔を備える。この層は、しばしば距離層(distance layer)又はキャリア層(carrier layer)とも呼ばれるが、典型的にはおよそ1mm以上の厚さを有する。この金属層に隣接して、バルブハウジング(valve housings)が配置され、バルブハウジングを用いて、作動液の流れが制御される。
その制御目的を果たすために、作動液が、変速板によって覆われた変速装置の各部分の表面上の流路を流れる。変速板は多数の通過孔を備えており、作動液は、通過孔を通って一の表面から反対の表面へと流れて、他の流路を流れ続けることができる。変速装置の動作状態に依存して、作動液は異なる流路を異なる速度及び圧力で流れる。また、動作状態に依存して、作動液は流路のいくつかでは動きを示さない。結果として、これらの流路の全てにおいて同じ作動液が存在するにもかかわらず、これらの流路はお互いに対して密封される必要がある。その上、金属層はその外側の境界において、外部に対して密封される(sealed)必要がある。それゆえに、オイル通過孔は、個々に又はグループで、分離され又は個々のオイル通過孔までの流路孔(channels opening)と連続して、作動油の圧力条件を考慮する密封線(sealing line)によって囲まれる必要がある。その上、制御板の外側の境界の密封も必要とされる。
【0003】
この目的のために、従来技術によれば、例えばスクリーン印刷を用いて、少なくとも孔を囲む部分において、被膜(coating)が金属層に対して塗布される。この被膜は実質的に均一の厚さを示す。それはエラストマー(elastomer)からなっており、ねじ(螺子)を締め付ける間に金属層が隣接する部分で圧縮されるときに、エラストマーは金属層と隣接する部分との間で圧縮される。この方法は、その密封効果を提供する。
しかしながら、そのような部分的に被覆された層は、ねじの力がねじ穴の領域に局所的に導入されて、ネジ穴の間の領域において圧縮力がかなり小さい一方で、ねじ穴の周りの領域において高い圧縮力が存在するという問題に関連する。このことは、被膜のアンバランスな密封効果という結果になる。その上、金属層の全部の伸張部分(complete extension)に渡って圧縮が同じである必要がなく、しかし、特定の領域において慎重に増加又は抑制された圧縮が必要とされても良いという状況がある。
【0004】
この問題を解決するために、従来技術では、金属層、つまり、距離層に隣接して、追加の活性ガスケット層(active gasket layers)が配置される。これらのガスケット層は、密封されるべきオイル運搬通路の周りに特に拡がる、例えば、エンボス加工されたビーズ(embossed beads)のような追加の密封する構成要素を備える。そのような密封するビーズは、密封されるべき領域の周りの範囲に追加の圧縮力を提供する。同様の方法で、特許文献1は、密封されるべき領域を囲む段差を距離層に備えるように提案する。このことは、段差の領域での圧縮の増大につながり、オイル通路のような密封されるべき範囲の周りの改善された密封をもたらす。
これらの解決方法は、密封効果の改善のために、追加の層又は距離層の追加の形成を必要とする点に不都合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第102007040101号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、したがって、制御板の全部の伸張部分に渡って改善された密封効果をもたらすような方法で、従来の制御板を増強することにある。そのような改善された制御板は、追加の製造工程又は追加の構成要素なしで、信頼できる密封を保証するであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1に係る制御板により解決される。本発明に係る制御板の有利な実施の形態は、従属請求項で与えられる。
本発明は、少なくとも1層の金属層を備える制御板から出発する。この金属層も、従来技術と同様に、少なくとも一つの表面が少なくとも部分的に被覆される。
エッジ効果(edge-effects)及び製造の影響に起因する厚さの変動を別にして、均一の厚さを示すポリマー系の被膜を有する従来の制御板とは対照的に、本発明の制御板の被膜は、切れ目なく被覆された範囲の異なる領域において異なる厚さを有する被膜の厚さのトポグラフィ(topography)を示す。もしも、他に言及されなければ、被膜の厚さは、非圧縮状態の制御板における被膜の厚さとして理解されるべきである。
【0008】
有利には、本発明は、同一又は実質的に同一の幅を示す、切れ目なく被覆された範囲の異なる領域に、特に関する。「同一又は実質的に同一の幅」とは、考慮される領域の幅が、太い方の領域の幅の多くとも20%、好ましくは多くとも10%、最も好ましくは多くとも5%の差異を示すことを意味する。
制御板の製造工程の間に、特に、被覆工程の間に、被膜の著しく異なる幅を用いて、小さい領域と比べて、大きな領域の中心で、より小さい厚さを達成することができる。名目上の厚さからのそのような意図しない逸脱は、しかしながら、本発明では扱われないであろう。
【0009】
本発明はこのように主として同等の幅を有する領域に関する。特に、本発明は、少なくとも、もしも、被膜が最も近いボルト孔から十分な距離を示すならば、被膜が分岐して、それゆえにこれらの領域で大きな厚さを示すような被膜の領域に関しない。そのようなより広い領域は特に、密封線がT字型の様式で分岐する領域である。そのような分岐された領域が最も近いボルト孔から十分に離れている限り、本発明は、もしも、それらが小さい幅を示すならば、同様の切れ目のない被膜の他の領域と比較して、それらの厚さに関して表現することをしない。この文脈において「最も近いボルト孔から十分に離れている」とは、考慮される被膜の拡張された領域の外側の輪郭と、最も近いボルト孔との間の距離が、最も近いボルト孔の直径の2倍よりも大きいことを意味する。
【0010】
本発明はこのように特に、直線的に通常の幅で拡がる全く同一の被覆部分に属する被覆領域に関し、しかし、ねじ穴までに大きな距離を有するT領域のような特に拡張された領域には関しない。しかしながら、もしも、そのような拡張された領域がボルト孔に近接して与えられるならば、それらは本発明に係る切れ目のない被覆領域のトポグラフィ設計に含まれることができ、従って、請求項1に従って設計される。
このことは、切れ目なく被覆された範囲により、ねじ穴から遠く離れた領域内よりも、例えばねじ穴の周りの領域内において、被膜を小さくしておくことを可能にする。もしも、ねじ穴から遠く離れた領域において被膜の厚さが増加したならば、この厚い被膜はこれらの領域における圧縮が増加することを引き起こし、結果として、完全に被覆された領域における制御板全体の圧縮はより平衡(equilibrated)になり、特定の領域において慎重に設計されることができる。最終的に、被覆のトポグラフィの設計は、金属層の一部又は全体の領域に渡るねじの力の平衡な又は意図的な分布を許容する。
【0011】
このことにより、制御板の締め付けは一般的に増加することができ、制御板はその表面上の異なる流路における高い圧力差のために用いられることができる。
制御板全体に対するねじの力の平衡した分布を用いて、ねじの締め付けによって導入される密封されるべき部分の引き締めは、平衡化されることができる。制御板における平衡した圧縮力及びそれゆえねじ穴の周りの抑制された圧縮圧力があるとするならば、ねじ穴の周りの領域における設定行動も改善される。
目的に合わせたスクリーン印刷のスクリーンを用いて、切れ目のない領域に渡って一つの工程で異なる層の厚さで、被膜は塗布されることができる。それゆえ、目的に合った意図的な個々の輪郭(profiling)で被膜を塗布するために、追加の作業工程は必要とされない。
【0012】
本発明に係る制御板は、期待される加圧力と制御板でのそれらの分布とを今すぐ評価することを更に可能にする。制御板の個々の領域における被膜の厚さは、従って適合化されることができる。特に、例えば、ねじ穴、水穴、オイル穴などの通過孔の周りの被膜の厚さは、個々に適合化されることができる。
本発明は、1層の制御板に適用されることに特に適している。そのような1層の制御板は、更なる機能的な層が無く、ただ一つのキャリア層を備え、従来技術に関して既に記述されている。
【0013】
有利には、1層の制御板及び多層の制御板の両方で、少なくとも被覆された領域において、金属層の被覆された表面は完全に平坦であって、層の表面に関してくぼみも隆起も示さない。「完全に平坦」とは、意図的なくぼみ又は隆起が形成されず、孔又は外側の境界の切除による反りが可能であるというように理解されるべきである。通常の表面の粗さも意味を有しない。
本発明に係る被覆の輪郭により、密封効果の改善のための例えばビーズを有する更なる活性層は省くことができる。本発明の方法で輪郭が描かれた被膜は、一般的に、独特な密封手段として十分である。
【0014】
しかしながら、もしも、制御板の比較的大きな全体の厚さが必要とされるならば、二つの金属層を結合して、各金属層の他の金属層から遠ざかる方向を向いている表面上に部分的に被覆することが必要かもしれない。そのことは、もしも、両方の表面が慎重に適合化された被膜高さで被覆されるならば、好ましい。
1層の制御板の金属製のキャリア層及び多層の制御板の金属製の層は、それぞれ個々に又はまとまって、炭素鋼、ステンレス鋼、好ましくは、スプリングハード鋼(spring-hard steel)、最も好ましくは、表面処理したステンレス鋼、特に、クロメート処理した、アルミニウムめっきした又は亜鉛めっきしたステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、言及した材料の又は言及していない材料の慎重な組み合わせで構成することができ、又は、それらを含むことができる。
【0015】
被覆材料としては、次の材料の一つ又は複数を含む、又は、それらで構成するポリマー系の被膜が特に適している。エラストマー、熱硬化性樹脂(thermoset)、特に、フッ素系ポリマー(fluorous polymer)、例えば、フッ化ビニリデン(vinylidene fluoride)‐ヘキサフルオロピレン共重合体のようなフッ化エラストマー(fluoroelastomer、FPM)、シリコンゴム、アクリルブタジエンゴム(NBR)、水和(hydrated)アクリルブタジエンゴム(HNBR)、ポリウレタン(PUR)、天然ゴム(NR)、パーフルオロエラストマー(FFKM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエン(BR)、フルオロシリコンゴム(FVMQ)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、エチレンプロピレンゴム(EPM)エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、シリコン、エポキシ樹脂、言及した材料及びここでは言及していない材料の組み合わせ。
【0016】
本発明に係る搭載されていない状態の制御板は、有利には、被膜の厚さ無しで、層毎に、0.175mm以上で2.0mm以下、好ましくは、0.4mm以上で1.2mm以下の厚さを示す。
被膜の厚さは、有利には、抑制された圧縮の領域で30〜60μm、過渡領域で20〜50μm、高圧の領域、例えば、ねじ領域で10〜35μmに達する。
有利には、被膜の厚さは連続して変化する。厚さが連続して変化している切れ目なく被覆された範囲における異なる領域間での厚さの差異は、100mm以下の、有利には80mm以下の、特に有利には50mm以下の距離において、12μm、好ましくは、15μm以上変化する。変形例としては、切れ目なく被覆された領域の二つの領域の間の厚さの変化は、30mm以下の、好ましくは20mm以下の距離において、10μm、好ましくは、12μm以上である。
【0017】
本発明は、ポリマー系被膜の端部の間でポリマー系被膜の端部から離れて拡がり、有利には、上記した値を示すポリマー系被膜の厚さの変化に関する。このことは、本発明が被覆領域の境界の厚さではなく、被覆領域の中心領域での厚さだけの変化に関することを意味する。「中心領域」とは、被膜の最も近い境界に対して、ポリマー系被膜の最小幅の少なくとも10%、好ましくは、少なくとも20%、より好ましくは、少なくとも30%離れた領域として理解されるべきである。大きな被覆領域に関しては、被膜の最も近い境界から少なくとも0.8mmの距離が尊重されるべきである。
同様に、本発明は、測定誤差又は製造ばらつきの範囲内で変動する厚さの変化には関しない。そのようなばらつきは、支配的な製造ばらつきの寄与により、典型的には5μm以下、好ましくは、4μm以下である。本発明はこのように、製造ばらつき及び測定誤差よりも大きく、切れ目なく被覆された範囲の中心領域で起こる、被膜の厚さの変化を用いた切れ目なく被覆された領域のトポグラフィ設計に関する。
【0018】
制御板では、多くの領域における密封する被膜(sealing coatings)の幅は、密封されるべき部分及び当該部分に備えられた流路によって決定され、又は、当該幅は一般的な最小幅に由来する。結果として、多くの領域における被膜の密封効果は、被膜の厚さのトポグラフィ設計によってのみ平衡化されることができる。広い領域(view areas)においてのみ、このように、被膜の幅を圧力条件に適合させることができる。もしも、そのような領域に広いシールリップ(sealing lips)が適用されるならば、同一の絶対圧縮力(absolute compression forces)での小さなシールリップと比べて、この広いシールリップは、小さな表面圧力により、少しだけ横にずらされることだけができる。結果として、シールリップの圧縮及びこれにより大きな圧縮力の後に、大きな有効な厚さが結果として生じる。
【発明の効果】
【0019】
以下では、本発明に係る制御板のいくつかの例が与えられる。同じ又は類似の参照番号が、同じ又は類似の構成要素に用いられる。次の例では、多くの特徴が組み合わされて示される。しかしながら、これらの特徴の一つずつは、それぞれの例から切り離されて考えられたときには、本発明に係る実施の形態となることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】従来技術に係る制御板の詳細平面図である。
図2】制御板の透視図である。
図3】制御板の被膜の詳細平面図である。
図4】制御板の被膜の詳細平面図である。
図5図4のA‐A部分に沿った被膜の厚さの推移である。
図6図4のB‐B部分に沿った被膜の厚さの推移である。
図7】制御板の詳細図である。
図8】制御板の詳細断面図である。
図9】制御板の詳細断面図である。
図10】制御板の詳細断面図である。
図11】制御板の被膜の詳細平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、従来の制御板100の詳細平面図である。この制御板は、液圧変速装置制御板(hydraulic transmission control plate)である。この変速装置制御板は、被覆領域103が分布する金属層104を備える。エラストマー材料が被覆材料として用いられる。
被覆領域103の間に位置する領域102は、孔(開口)102又は非被覆領域102である。ここで101として参照される孔は、ねじが締め付けられたときに、変速装置制御板100に圧縮力が導入されるねじ穴である。図面を明瞭にしておくために、オイル通過孔の表示は省略した。
【0022】
この従来技術に係る制御板100では、被覆領域103の被膜は、横の境界領域及び製造、測定の変動を別にして、被覆領域全体に渡って同一の厚さを示す。しかしながら、ここでの被膜の表示は、被覆領域を示すだけではなく、制御板100を設置する間に感圧膜を用いて得られた痕跡(print)を同時に示す。切れ目のない被膜の、したがって、密封線の薄い色の領域は、不十分な圧縮の、それゆえ、不十分な密封の領域を示す。対照的に、例えば、ねじ穴101の近くに現れる、これらの密封線の暗い部分は、高い圧縮の、それゆえに良い局所的な密封の領域を示す。
圧縮条件のこの表示から開始して、被膜の局所的な高さは本発明に従って変えられ、例えば、不十分に圧縮された領域では増加され、及び/又は、他の領域と比べて圧縮がとても高い領域では抑制されて、平衡化された圧縮と、それゆえの良い密封効果とが、制御板全体に関して得られる。
【0023】
図2は、変速装置制御板100の両側にある二つの密封被膜103の経路が、それらが平行に走る領域を表し、それらがお互いに独立して拡がる領域を表すかもしれないということを示している。見る人(spectator)の側を向いている表面の上の被膜103aは、左上から右下に延びるハッチングで表され、右上から左下に延びるハッチングは、見る人から遠ざかる方を向いている表面の上の被膜103bを表す。多くの領域で、二つのハッチングの重なりの結果である、菱形のハッチングで表されるように、被膜103aと被膜103bとが重なり、その一方で、被膜103a、103bの一つが単独で拡がるいくつかの数少ない領域がある。これらの領域は孤立し、又は、他の被膜が存在する領域に続くかもしれない。結果として、透明図には交差する点(junction)と交差する領域(crossing areas)とがある。図2は、従来技術及び以下に記述される本発明の両方に適用できる。被膜の二つの異なる経路は、変速装置制御板100の単一の層又は異なる層の反対側の表面に存在することができる。
【0024】
次に、図3は、本発明に係る変速装置制御板100の被覆パターンの詳細平面図を示す。ここでは、概略図において、たった5つの代表的なオイル通過孔111が、より正確に言えば、それらの境界が示されている。図面を明瞭にしておくために、全てのオイル通過孔の表示は省略した。図3では、全部で10ポイント(1〜10)に個々に印が付けられ、そこでは、本発明に係る被膜の厚さが測定された。図3では、二つの切れ目のない被覆領域が表わされており、第1の領域はポイント1〜4を有し、第2の領域はポイント5〜10を有する。従来技術では、そのような切れ目のない被覆領域は、一定の厚さの被膜により製造される。これらの10ポイントに加えて、上記の第2の切れ目のない密封領域の範囲にある線F‐Fに沿った4つの等距離のポイントが個々のシールリップ部分の中央にあると考えられ、それらは図3で個々に印を付けられていないけれどもポイント11〜14として参照される。
【0025】
次の表は、これらのポイントで測定された厚さが示されている。

【表1】
【0026】
図3では、ポイント2、3、5、9はねじ穴101に比較的近い。これらの領域では、シールリップの中心領域で測定された、比較的薄い被膜厚さが選択された。対照的に、ポイント4、6、7、8、10はねじ穴とは完全に離れている。これらのポイントでの圧力条件に従って、それらの多くに関して、増加された被膜厚さが選択された。異なる被膜厚さの間の差異は約10μmに達する。差異が考慮されたこれらのポイントとは対照的に、ポイント11〜14は、意図的な変化が導入されていない領域の被膜の高さの差異を確かめるために測定された。それらは、標準偏差0.5μmで平均の高さ27.1μmを示す。このことは、製造及び測定の不確かさにより、少数第1位は無視されるべきであることを強調する。
【0027】
図4は、変速装置制御板100の被覆パターンの更なる詳細平面図を示す。ここで示された被膜は、まったく切れ目が無く、単一の被覆工程で製造される。
密封リップ(coating lip)の中心でそれぞれ測定された、次の表に示される被膜厚さは、圧縮状態でのねじ穴101の周り及びねじ穴101の間に与えられた圧縮条件に従って設計された。

【表2】

特に、ねじ穴からそれぞれ離れた測定ポイント4、8、9では、被膜が高い厚さで塗布されている。しかしながら、ねじ穴からの距離は、被膜高さを設計するときに考慮される唯一の係数ではない。むしろ、個々の圧力条件が考慮されるべきである。このことは、例えば、ぴったりと隣り合ったポイント9及びポイント10での著しく異なる被膜厚さからも明らかである。
【0028】
図5は、図4におけるA‐A部分に沿った被膜の厚さの推移を示す。図5の左側ではポイント10が示され、図の右側では、ポイント9を見ることができる。被膜の中心領域において、その高さが15μmと27μmとの間で変化することが明らかである。図4はまた測定ポイント9及び測定ポイント10がともに被覆領域の外側の境界から0.8mmよりも離れていることを強調する。
図6は、図4における線B‐Bに沿った、測定ポイント7及び測定ポイント8を有する部分を示す。被膜の厚さもこの線に沿って変化する。それは実際には被膜の中心領域で20μmと33μmとの間で変化する。既に上記した通りに、0μmの厚さで底値に達する被膜の境界領域は、本発明では考慮されない。
【0029】
図7は、略図における制御板100の詳細平面図である。制御板は1層の金属層104を備える。ねじ穴がこの金属層104に掘られている。ねじ穴101の近くには被覆領域103があるが、しかしながら、それは非被覆領域102によりねじ穴102とは離れている。被膜として、ここではフッ素ゴム(fluoro-rubber)が用いられている。図8、9、10は異なる制御板に関する図7の線X‐Xに沿った断面を示す。
図8では、1層の金属層104だけを備える一層(one-layered)制御板100が示されている。被膜103においては、ねじ穴101までの距離が増えるに従って、半径方向で被膜が増加する。
【0030】
図9は、第1の金属層104及び第2の金属層104’を有する二層(two-layered)制御板100を示す。両方の層において、外側を向いた各表面は、それぞれエラストマー被膜103、103’で被覆されている。エラストマー被膜103、103'の厚さは、ねじ穴101からの距離が増えるに従って、増加する。
図10もまた金属層104を有する一層制御板100を示す。図8とは対照的に、この金属層104はその両方の表面上がエラストマー被膜103a、103bで被覆されている。両方の被膜103a、103bの厚さは、ねじ穴101からの距離が増えるに従って増加する。
図8乃至図10は、シールリップの横方向の境界(lateral edge)に向かう被膜厚さは、その厚さを着実に減らさないということを示している。むしろ、シールリップの中心範囲と比較して、被膜厚さがかすかに増加する内側の境界範囲(inner edge region)が存在する。この内側の範囲の隣には、被膜輪郭(coating profile)の急激な落ち込みがあって、被膜輪郭は、被膜が徐々に消失する外側の境界範囲に移行する。
【0031】
図11Aの平面図及び図11Bで示される個別詳細図を含む図11は、被膜線(coating line)又はシールリップの幅が被膜の高さに著しい影響を与えることを示すために、変速板の外側の境界に近い小さな範囲に注意を向けている。この境界範囲では、塗布の間に、被膜高さの意図的な変更は行われていない。しかしながら、次の表に示すように、この小さい領域において、まったく異なる被膜高さを観ることができる。矢印は、3次元顕微鏡を用いて測定したときの測定方向を示している。*印(asterisk)は測定ポイント2及び測定ポイント6の両方を表し、このポイントにおける高さは、測定ポイントが通過する度に測定された。

【表3】
【0032】
高さの測定値の3つのグループが識別されることができる。一方では、3ポイントは、考慮された詳細図Gの中心の大きな被覆領域の境界にある。それらは、22〜25μmの高さを示す。他方では、3ポイントは、大きな被覆領域の中心に近く、18μm又は19μmの被膜高さを有する。このことは、図8乃至図10の状況で既に観測されたものと一致する。十分に太い被覆線に関しては、被膜は、その中心ではなく、内側の境界範囲で最大高さを示す傾向にある。被膜がスクリーン印刷を用いて塗布されるときは、極端に小さな粘度を有する液体が、ガスケット層(gasket layer)の表面に塗布される。境界においては外側面も溶媒が発散することを許容するので、境界範囲は中心領域よりも大きい乾燥速度を示す。結果として、中心範囲が完全に乾燥していない間に、境界範囲の形状は既に固まり、この範囲における被膜の表皮は既にまったく決定的になっている。その後の乾燥段階では、残された溶媒が発散する間も、中心範囲の表皮は相変わらずとても柔軟である。結果として、この中心領域の被膜の量は更に削減され、高さが下がる。外皮はこの工程に従うために、相変わらず十分な柔軟性を示す。もしも、熱硬化性の、又は、エラストマーの被膜が塗布されるならば、架橋から同じ効果が生じ、全体的な効果が増加される。
【0033】
更に、考慮された詳細図Gの中心の大きな被覆領域から分岐する小さな被膜線の中心であるポイント4で極端に高い被膜を確認することができる。このことは前に述べたことと一致しており、ここでは密封線はとても細く、その中心では被膜の落ち込みは発生せず、被膜は、上記した外側の境界範囲を別にして、そのほとんど全体の幅に渡って、同一の高さを有する。
このことは、切れ目のない被膜線の範囲で慎重に導入されたトポグラフィは、被覆領域の中心領域でのみ達成されるべきであり、同様の被膜幅を示すそのような領域だけが比べられるべきであることを強調する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11