【実施例】
【0025】
以下、実施例により、本発明の繊維構造物について詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。実施例中の品質評価は、次の方法で実施した。
(PFOAおよびPFOSの量)
次の条件で測定し、ng/gで表示した。
装置:LC−MS/MSタンデム型質量分析計TSQ−7000(サーモエレクトロン)
高速液体クロマトグラフLC−10Avp(島津製作所)
カラム:Capcellpak C8 100mm×2mmi.d.(5μm)
移動層:A;0.5mmol/L酢酸アンモニウム
B;アセトニトリル
流速:0.2mL/min、試料注入量:3μL
イオン化電圧:4.5kv、イオンマルチ:1300v
イオン化法:ESI−Negative
(撥水性)
JIS L 1092「繊維製品の防水性試験方法」(1998年)に規定される方法でスプレー法により評価を行い、級判定を行った。
(保水率)
20×20cmに切った繊維構造物の中央に直径11.2cmの円を描き、該円の面積が80%拡大されるように伸張し、撥水度試験(JIS L 1092)に使用する試験片保持枠に取り付け、スプレー試験(JIS L 1092)を行った後、保持枠から取り外し、20℃×53%RHの環境下で風乾する。同繊維構造物を10枚準備し、1枚ずつ重量を測定したものを「処理前重量」とする。
【0026】
洗濯機(JIS C 9606)に30Lの水を入れ(水温;25〜29℃)、前記繊維構造物10枚を水中に入れ「強条件」で10分間回転させた後、水中から一枚ずつ取り出し、拡布状態で15度程度傾けて10秒間待って、繊維構造物についた水滴を落とし、重量を測定したものを「処理後重量」とし、下記式により保水率を測定する。
【0027】
保水率(%)=((処理後重量−処理前重量)/処理前重量)×100
(試験用基布1)
33デシテックス、10フィラメントのナイロン66加工糸で78デシテックスのポリウレタン弾性繊維をカバーリングした糸を経糸に、33デシテックス、10フィラメントのナイロン66加工糸で55デシテックスのポリウレタン弾性繊維をカバーリングした糸を緯糸に使用したナイロン78%、ポリウレタン22%織物を作成し、通常の精練、染色を行いタテ密度179×ヨコ密度180本/インチの織物としたものを試験用基布1とした。
(試験用基布2)
44デシテックス、36フィラメントのカチオン可染ポリエステルで44デシテックスのポリウレタン弾性繊維をカバーリングしカチオン可染ポリエステル65%、ポリウレタン35%のトリコットを作成し、通常の精練、染色を行いウェル50×コース40本/インチの編物としたものを試験用基布2とした。
(実施例1)
試験用基布1を液流染色機を使用し、前処理として下記に示した加工液で浴比1:20に調整し、常温から80℃まで2℃/分で昇温し、30分間浴中処理した。次いで50℃まで降温した後、廃液、水洗、脱水後にピンテンターを使用し140℃で乾燥した。
・ナイロンフィックス501(センカ(株) 製 多価フェノール系縮合物):5%owf
かかる基布1を使用し、下記に示した加工液に浸漬し、絞り率91%になるようマングルで絞り、130℃で乾燥した後、170℃で1分間セットした。
【0028】
得られた加工布について、撥水度および保水率を測定した結果を表1に示す。得られた加工布は高い撥水度を示すとともに、保水率が低く優れた撥水性を示す繊維構造物が得られた。また、PFOA含有量についても5ng/g未満であり、環境的にも優れた繊維構造物である。
・CF
3(CF
2)
3(CH
2CF
2)(CF
2CF
2)
2(CH
2CH
2)OCOH=CH
2
のフッ素重合体乳化分散液(固形分30%) : 100g/L
・ベッカミンM−3(大日本インキ化学工業(株)製 メラミン樹脂) :3g/L
・ベッカミンACX(大日本インキ化学工業(株)製 触媒):2g/L
・スーパーフレッシュJB7200
((株)京絹化成 製 水分散型多官能性イソシアネート架橋剤 : 5g/L
(実施例2)
試験用基布2を液流染色機を使用し、前処理および撥水加工について実施例1と同様の処理を行った。
得られた加工布について、撥水度および保水率を測定した結果を表1に示す。得られた加工布は高い撥水度を示すとともに、保水率が低く優れた撥水性を示す繊維構造物が得られた。また、PFOA含有量についても5ng/g未満であり、環境的にも優れた繊維構造物である。
(実施例3)
試験用基布2を液流染色機を使用し、前処理として下記に示した加工液で浴比1:20に調整し、常温から70℃まで2℃/分で昇温し、30分間浴中処理した。次いで50℃まで降温した後、廃液、水洗、脱水後にピンテンターを使用し140℃で乾燥した。
・TR−AN((株)京絹化成 製 スルホン基含有化合物) : 5%owf
・酢酸(純分90%品) : 2g/L
かかる基布2を使用し、実施例1と同様の処理を行った。
【0029】
得られた加工布について、撥水度および保水率を測定した結果を表1に示す。得られた加工布は高い撥水度を示すとともに、保水率が低く優れた撥水性を示す繊維構造物が得られた。また、PFOA含有量についても5ng/g未満であり、環境的にも優れた繊維構造物である。
(実施例4)
実施例3の前処理を行った基布2を使用し、下記に示した加工液に浸漬し、絞り率40%になるようマングルで絞り、130℃で乾燥した後、170℃で1分間セットした。得られた加工布について、撥水度および保水率を測定した結果を表1に示す。得られた加工布は高い撥水度を示すとともに、保水率が低く優れた撥水性を示す繊維構造物が得られた。
【0030】
また、PFOA含有量についても5ng/g未満であり、環境的にも優れた繊維構造物である。
・CF
3(CF
2)
3(CH
2CF
2)(CF
2CF
2)
2(CH
2CH
2)OCOH=CH
2
のフッ素重合体乳化分散液(固形分30%) : 100g/L
・SM8706
(東レ・ダウコーニング(株) 製 シリコーン系撥水剤、固形分33%) :5g/L
・ベッカミンM−3
(大日本インキ化学工業(株)製 メラミン樹脂、固形分80%) :3g/L
・ベッカミンACX(大日本インキ化学工業(株)製 触媒) :2g/L
・NKアシストV
(日華化学(株)製、水分散型多官能性イソシアネート架橋剤、固形分40%):5g/L
(実施例5)
実施例1の前処理を行った基布1を使用し、下記に示した加工液に浸漬し、絞り率91%になるようマングルで絞り、130℃で乾燥した後、170℃で1分間セットした。得られた加工布について、撥水度および保水率を測定した結果を表1に示す。得られた加工布は高い撥水度を示すとともに、保水率が低く優れた撥水性を示す繊維構造物が得られた。
【0031】
また、PFOA含有量についても5ng/g未満であり、環境的にも優れた繊維構造物である。
・CF
3(CF
2)
3(CH
2CF
2)(CF
2CF
2)
2(CH
2CH
2)OCOH=CH
2のフッ素重合体乳化分散液(固形分30%) : 100g/L
・パラヂウムECO200
(大原パラヂウム化学(株) 製 パラフィン系撥水剤、固形分20%) :20g/L
・ベッカミンM−3
(大日本インキ化学工業(株)製 メラミン樹脂、固形分80%) :3g/L
・ベッカミンACX(大日本インキ化学工業(株)製 触媒) :2g/L
・メイカネートBX
(明成化学工業(株)製 水分散型多官能性イソシアネート架橋剤、固形分20%):5g/L
(実施例6)
実施例1の前処理を行った基布1を使用し、下記に示した加工液に浸漬し、絞り率91%になるようマングルで絞り、130℃で乾燥した後、170℃で1分間セットした。得られた加工布について、撥水度および保水率を測定した結果を表1に示す。得られた加工布は高い撥水度を示すとともに、保水率が低く優れた撥水性を示す繊維構造物が得られた。
【0032】
また、PFOA含有量についても5ng/g未満であり、環境的にも優れた繊維構造物である。
・CF
3(CF
2)
3(CH
2CF
2)(CF
2CF
2)
2(CH
2CH
2)OCOH=CH
2
のフッ素重合体乳化分散液(固形分30%) : 50g/L
・アサヒガードE−082
(旭硝子(株) 製 炭素数6以下フッ素系撥水剤、固形分20%) : 50g/L
・ベッカミンM−3
(大日本インキ化学工業(株)製 メラミン樹脂、固形分80%) :3g/L
・ベッカミンACX(大日本インキ化学工業(株)製 触媒) :2g/L
・スーパーフレッシュJB7200
((株)京絹化成製 水分散型多官能性イソシアネート架橋剤、固形分40%):5g/L
(実施例7)
実施例3の前処理を行った基布2を使用し、絞り率40%で実施例6と同様の加工を行った。得られた加工布について、撥水度および保水率を測定した結果を表1に示す。得られた加工布は高い撥水度を示すとともに、保水率が低く優れた撥水性を示す繊維構造物が得られた。また、PFOA含有量についても5ng/g未満であり、環境的にも優れた繊維構造物である。
(比較例1)
実施例1の前処理を行った基布1を使用し、下記に示した加工液に浸漬し、絞り率70%になるようマングルで絞り、130℃で乾燥した後、170℃で1分間セットした。得られた加工布について、撥水度および保水率を測定した結果を表1に示す。得られた加工布は高い撥水度を示し、また保水率も低く抑えられているものの、PFOAは5ng/gを越える量が検出され、環境的に問題となるものであった。
・マックスガードF247((株)京絹化成製
炭素数6以上を含有するフッ素系撥水剤、固形分20%):100g/L
・ベッカミンM−3
(大日本インキ化学工業(株)製 メラミン樹脂、固形分80%) :3g/L
・ベッカミンACX(大日本インキ化学工業(株)製 触媒) :2g/L
・スーパーフレッシュJB7200
((株)京絹化成製 水分散型多官能性イソシアネート架橋剤、固形分40%):5g/L
(比較例2)
前処理を行わない試験用基布1を使用し、実施例1と同様の撥水加工を行った。得られた加工布について、撥水度および保水率を測定した結果を表1に示す。得られた加工布は高い撥水度は示すものの、保水率が高く、水中に浸漬した場合に布帛全体が濡れた状態となり撥水性としての性能は低いものであった。PFOA含有量については5ng/g未満であり、環境的には優れた繊維構造物である。
(比較例3)
実施例1の前処理を行った基布1を使用し、下記に示した加工液に浸漬し、絞り率70%になるようマングルで絞り、130℃で乾燥した後、170℃で1分間セットした。得られた加工布について、撥水度および保水率を測定した結果を表1に示す。得られた加工布は撥水度が低く、保水率が高く、水中に浸漬した場合に布帛全体が濡れた状態となり撥水性としての性能は低いものであった。PFOA含有量については5ng/g未満であり、環境的には優れた繊維構造物である。
・アサヒガードE−081
(旭硝子(株) 製 炭素数6以下フッ素系撥水剤、固形分30%) : 100g/L
・ベッカミンM−3
(大日本インキ化学工業(株)製 メラミン樹脂、固形分80%) :3g/L
・ベッカミンACX(大日本インキ化学工業(株)製 触媒) :2g/L
・スーパーフレッシュJB7200
((株)京絹化成製 水分散型多官能性イソシアネート架橋剤、固形分40%):5g/L
(比較例4)
実施例2の前処理を行った基布1を使用し、下記に示した加工液に浸漬し、絞り率91%になるようマングルで絞り、130℃で乾燥した後、170℃で1分間セットした。得られた加工布について、撥水度および保水率を測定した結果を表1に示す。得られた加工布は撥水度は低く、保水率が高く、水中に浸漬した場合に布帛全体が濡れた状態となり撥水性としての性能は低いものであった。PFOA含有量については5ng/g未満であり、環境的には優れた繊維構造物である。
・SM8706
(東レ・ダウコーニング(株) 製 シリコーン系撥水剤、固形分33%):30g/L
(比較例5)
前処理を行わない試験用基布2を使用し、実施例1と同様の撥水加工を行った。得られた加工布について、撥水度および保水率を測定した結果を表1に示す。得られた加工布は高い撥水度は示すものの、保水率が高く、水中に浸漬した場合に布帛全体が濡れた状態となり撥水性としての性能は低いものであった。PFOA含有量については5ng/g未満であり、環境的には優れた繊維構造物である。
【0033】
【表1】