(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内燃機関と電動発電機を有するハイブリッドシステムにおいて、前記内燃機関のクランク軸に直結して無段変速機構を設け、該無段変速機構に前記電動発電機を連結すると共に、
前記電動発電機の目標回転数と前記内燃機関の回転数に基づいて、前記無段変速機構の変速比を変化させる変速比変化手段と、該変速比変化手段を実施する制御がなされた後に、前記電動発電機の回転数と前記目標回転数との回転数差が予め定めた異常判定値よりも大きくなったと判断されたときに、前記無段変速機構に異常があると診断する異常診断手段を有する制御装置を設けることを特徴とするハイブリッドシステム。
内燃機関と電動発電機を有すると共に、前記内燃機関のクランク軸に直結して無段変速機構を設け、該無段変速機構に前記電動発電機を連結して構成されるハイブリッドシステムの異常診断方法であって、
前記電動発電機の目標回転数を設定すると共に、前記内燃機関の回転数を検知し、
設定した前記目標回転数と検知した前記内燃機関の回転数とに基づいて、前記無段変速機構の変速比を変化させて、
前記変速比を変化させた後に、前記電動発電機の回転数を検知し、
前記目標回転数と検知した前記電動発電機の回転数との回転数差が予め定めた異常判定値よりも大きいか否かを判断し、
前記回転数差が前記異常判定値よりも大きいと判断したときに、前記無段変速機構に異常があると診断することを特徴とするハイブリッドシステムの異常診断方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その課題は、内燃機関のクランク軸と電動発電機との間の動力伝達を行う無段変速機構の異常を単純なロジックで診断し、安全性を確保することができるハイブリッドシステム、ハイブリッド車両、及びハイブリッドシステムの異常診断方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための本発明のハイブリッドシステムは、内燃機関と電動発電機を有するハイブリッドシステムにおいて、前記内燃機関のクランク軸に直結して無段変速機構を設け、該無段変速機構に前記電動発電機を連結すると共に、
前記電動発電機の目標回転数と前記内燃機関の回転数に基づいて、前記無段変速機構の変速比を変化させる変速比変化手段と、該変速比変化手段を実施する制御がなされた
後に、
前記電動発電機の回転数と前記目標回転数との回転数差が予め定めた異常判定値よりも大きくなったと判断されたときに、前記無段変速機構に異常があると診断する異常診断手段を有する制御装置を設けて構成される。
【0008】
なお、ここでいう変速比変化手段による電動発電機の回転数の変動がないとは、電動発電機の回転数が変速比変化手段による目標の回転数にならないことを示している。例えば
、変速比変化手段を実施する制御が行われた場合に、無段変速機構に異常がなければ、電動発電機の回転数は目標の回転数に変動するが、仮に、無段変速機構に異常が発生すれば、電動発電機の回転数はその目標の回転数にならない。
【0009】
よって、この変速比変化手段による電動発電機の回転数の変動がないことは、変速比変化手段を実施する制御がなされた後に、電動発電機の回転数が全く変動しない、つまり回転数の変動がゼロの場合、電動発電機の回転数が殆ど変動しない場合、及び電動発電機の回転数が目標の回転数にならない場合を含む。
【0010】
この構成によれば、無段変速機構の変速比を変化させる制御がなされた場合で、変速比変化手段による電動発電機の回転数の変動がないと判断されたときに、無段変速機構に異常があると診断することができる。
【0011】
例えば、従来技術において、内燃機関と駆動輪との間に設けられた変速機としての無段変速機の故障を検知する場合には、無段変速機のアクチュエータの作動の有無や、アクチュエータを作動させるための油圧機構の油圧状況、あるいは、ベルトの滑り具合などを検知するセンサを新たに追加する必要があり、更に、異常を診断するロジックが複雑になる。
【0012】
一方、上記の構成によれば、無段変速機構の変速比を変化させる制御がなされた場合で、ハイブリッドシステムを運用する上で必要となる電動発電機の回転数を検知し、その回転数の変動をモニタリングするだけでよく、無段変速機構の異常を診断するための部品点数の増加や、制御の複雑化を抑制することができ、単純なロジックで、迅速且つ正確に無段変速機構の故障を診断することができる。これにより、無段変速機構に予期せぬ異常が発生した場合に、その異常を容易に診断して、システム全体の安全性を確保することができる。
【0013】
また、電動発電機の動力伝達に無段変速機構を介すことで、例えば、内燃機関と電動発電機の回転数比を連続的に変更できるレシオ可変機構として、CVT等の無段変速機構を用いて、内燃機関のクランク軸の動力を電動発電機に伝達するので、内燃機関のクランク軸の回転数の変動に依存することなく、電動発電機の回転軸の回転数を電動発電機の発電又は駆動に適した回転数に制御することができる。
【0014】
そのため、電動発電機における回転数の使用回転域が限定されることにより、電気的特性の効率が高い状態で電動発電機を使用することが可能となり、発電時及び電動駆動時のエネルギー効率を高めることができる。また、電動発電機側において、過大な回転数で使用できるように信頼性を確保するために必要とされる過剰な構成の軸受け構造及び高強度の構造体を採用する必要が無くなる。その結果、電動発電機及びハイブリッドシステムの小型化及び軽量化を図ることができる。
【0015】
また、上記のハイブリッドシステムにおいて、前記変速比変化手段を、前記電動発電機の回転数が予め定めた高効率回転領域に限定されるように設定された前記電動発電機の目標回転数と前記内燃機関の回転数に基づいて前記無段変速機構の変速比を変化させる手段とし、前記異常診断手段を、前記変速比変化手段を実施する制御がなされた後で、前記電動発電機の回転数と前記目標回転数との回転数差が予め定めた異常判定値よりも大きくなったと判断されたときに、前記無段変速機構に異常があると診断する手段とするように構成されることが望ましい。
【0016】
なお、ここでいう目標回転数とは、電動発電機の電気的特性の効率の高い、つまり駆動効率や回生効率の高い高効率回転領域内の値に設定される電動発電機の回転数の目標値で
ある。この目標回転数は、無段変速機構の変速比を可変する際に使用され、無段変速機構の変速比を、電動発電機の回転数をその目標回転数にするように、その目標回転数と内燃機関の回転数に基づいて変化させる。
【0017】
この構成によれば、無段変速機構の変速比を変化させる制御がなされた後の電動発電機の回転数と目標回転数との回転数差が、異常判定値よりも大きくなったときに、つまり、目標回転数と回転数との乖離が許容値を超えたときに、変速比変化手段による電動発電機の回転数の変動がないと判断し、無段変速機構に異常があると診断する。これにより、より正確且つ迅速に動力断接装置の異常を診断することができる。また、ハイブリッドシステムを運用する上で必要となる電動発電機の回転数とその目標回転数とを比較するだけでよく、新たなセンサを追加することなく、容易に異常を診断することができる。
【0018】
そして、上記の課題を解決するための本発明のハイブリッド車両は、上記のハイブリッドシステムを搭載して構成される。この構成によれば、システムに設けられた装置の異常を診断することで、安全性を確保したハイブリッド車両を提供することができる。
【0019】
そして、上記の課題を解決するための本発明のハイブリッドシステムの異常診断方法は、内燃機関と電動発電機を有すると共に、前記内燃機関のクランク軸に直結して無段変速機構を設け、該無段変速機構に前記電動発電機を連結して構成されるハイブリッドシステムの異常診断方法であって、
前記電動発電機の目標回転数を設定すると共に、前記内燃機関の回転数を検知し、設定した前記目標回転数と検知した前記内燃機関の回転数とに基づいて、前記無段変速機構の変速比を変化させ
て、前記変速比を変化させた後に、前記電動発電機の回転数を検知し、前記目標回転数と検知した前記電動発電機の回転数との回転数差が予め定めた異常判定値よりも大きいか否かを判断し、前記回転数差が前記異常判定値よりも大きいと判断したときに、前記無段変速機構に異常があると診断することを特徴とする方法である。
【0020】
また、上記のハイブリッドシステムの異常診断方法において、前記電動発電機の回転数が予め定めた高効率回転領域に限定されるように設定された前記電動発電機の目標回転数と前記内燃機関の回転数に基づいて前記無段変速機構の変速比を変化させる制御がなされた後で、前記電動発電機の回転数と前記目標回転数との回転数差が予め定めた異常判定値よりも大きくなったと判断されたときに、前記無段変速機構に異常があると診断することが望ましい。
【0021】
この方法によれば、ハイブリッドシステムを運用する上で検知される電動発電機の回転数と目標回転数との回転数差を算出し、その回転数差と予め定めた異常判定値と比較するという容易な方法で、ハイブリッドシステムに設けた無段変速機構の異常を診断することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のハイブリッドシステム、ハイブリッド車両、及びハイブリッドシステムの異常診断方法によれば、単純なロジックにより、迅速且つ正確に無段変速機構の異常を診断することができる。詳しくは、無段変速機構の変速比を変化させる制御がなされた場合で、無段変速機構の変速比を変化による電動発電機の回転数の変動がないと判断されたときに、無段変速機構に異常があると診断することができる。そのため、無段変速機構の異常を診断するために新たなセンサなどを追加することなく、無段変速機構に予期せぬ異常が発生した場合に、単純なロジックで、その異常を迅速且つ正確に診断し、安全性を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施の形態のハイブリッドシステム、ハイブリッド車両、及びハイブリッドシステムの異常診断方法について説明する。
【0025】
図1に示すように、この実施の形態のハイブリッドシステム2は、エンジン(内燃機関)10と電動発電機(M/G)21を有するハイブリッドシステムである。なお、ここでは、このハイブリッドシステム2はハイブリッド車両(HEV:以下車両とする)1に搭載されているものとして説明するが、必ずしも、車両に搭載されるものに限定されない。
【0026】
図1の例に示すように、ハイブリッドシステム2は、エンジン10にエンジン本体(ENG)11と排気通路12とターボ過給器13と、排気通路12に設けられた排気ガス浄化装置(後処理装置)14を備えている。
【0027】
エンジン10のクランク軸15に直結してベルト又はチェーン式のCVT(無段変速機構:レシオ可変機構)16を設け、このCVT16に電動発電機21を連結する。つまり、エンジン10のクランク軸15にCVT16の第1プーリー16aを設けると共に、電動発電機21にCVT16の第2プーリー16bを設けて構成し、第1プーリー16aと第2プーリー16bを介してクランク軸15と電動発電機21との間の動力伝達を行うように構成する。
【0028】
この第1プーリー16aと第2プーリー16bとの間には無端状のベルト又はチェーン(動力伝達部材)16cが掛けられており、クランク軸15から第1プーリー16aと動力伝達部材16cと第2プーリー16bを経由して電動発電機21に、また逆に、電動発電機21から第2プーリー16bと動力伝達部材16cと第1プーリー16aを経由してクランク軸15に、動力が伝達される。
【0029】
このCVT16では、2個一組の第1プーリー16aと第2プーリー16bにV字形状の動力伝達部材16cをかけ、個々のプーリー16a、16bの幅を変えることにより、プーリー16a、16bと動力伝達部材16cの接する位置を変えるようにしており、幅が拡げられて動力伝達部材16cの接する位置が内側に(軸に近く)なれば直径が小さくなり、逆に幅が狭められて動力伝達部材16cの接する位置が外側なれば(外周側に移動すれば)直径が大きくなるように構成されている。そして、電子制御による油圧又は電動機構(図示しない)で2個のプーリー16a、16bの幅の拡縮が互いに逆になるように変化させる制御を行うことにより、動力伝達部材16cをたるませることなく、変速を連続的に行うことができる。
【0030】
このCVT16を、エンジン10において、クランク軸15の一方に変速機31が接続されており、クランク軸15の他方にCVT16が接続されているように構成すると、CVT16が、エンジン10に関して、変速機31とは反対側のクランク軸15に設けられていることになる。これにより、エンジン10と変速機31の間にCVT16を設ける必要がなくなる。そのため、ハイブリッドシステムを考慮していない、既存のエンジンと変速機との組み合わせ(パワートレイン)に対しても、電動発電機を容易に設けることができ、ハイブリッドシステムを搭載できるパワートレインの種類を拡大することが容易にできる。
【0031】
なお、この場合、従来技術では、エンジンに関して、変速機とは反対側には、クランク軸から駆動力を得ている冷却ファンや冷却水ポンプや潤滑油ポンプ等の補機が配置されているので、これらの補機は電動化して、クランク軸から直接駆動力を得ることなく、電動発電機で発電した電力で駆動されるようにすることが好ましい。これにより、補機類のレ
イアウトに関して自由性が増し、更には状況に応じて補機による負荷損失のないエンジン出力を駆動力に活用できるというメリットが生じる。
【0032】
そして、電力システム20の一部である電動発電機21は、発電機として、エンジン10の駆動力を受けて発電をしたり、又は、車両1のブレーキ力等の回生力発生による回生発電をしたり、モータとして駆動して、その駆動力をエンジン10のクランク軸15に伝達して、エンジン10の駆動力をアシストしたりする。
【0033】
なお、発電して得た電力は、配線22を経由してインバータ(INV)23で変換して第1バッテリ(充電器:B1)24Aに充電される。また、電動発電機21を駆動するときは、第1バッテリ24Aに充電された電力をインバータ23で変換して電動発電機21に供給する。
【0034】
図1の構成では、更に、DC−DCコンバータ(CON)25と第2バッテリ(B2)24Bを第1バッテリ24Aに直列に設けて、第1バッテリ24Aの、例えば、一般的な12Vや24V以上の高い電圧の電力を、DC−DCコンバータ25で、例えば、12Vに電圧降下させて、第2バッテリ24Bに充電して、この第2バッテリ24Bから補機の冷却ファン26A、冷却水ポンプ26B、潤滑油ポンプ26C等に電力を供給するように構成している。
【0035】
このハイブリッドシステム2を搭載したハイブリッド車両(以下車両)1においては、エンジン10の動力は、動力伝達システム30の変速機(トランスミッション)31に伝達され、更に、変速機31より推進軸(プロペラシャフト)32を介して作動装置(デファレンシャルギア)33に伝達され、作動装置33より駆動軸(ドライブシャフト)34を介して車輪35に伝達される。これにより、エンジン10の動力が車輪35に伝達され、車両1が走行する。
【0036】
尚、エンジン10の搭載方式によっては、エンジン本体11から車輪35までの動力の伝達経路は異なってもよい。
【0037】
一方、電動発電機21の動力に関しては、第1バッテリ24Aに充電された電力がインバータ23を介して電動発電機21に供給され、この電力により電動発電機21が駆動され動力を発生する。この電動発電機21の動力は、CVT16を介してクランク軸15に伝達されて、エンジン10の動力伝達経路を伝達して、車輪35に伝達される。
【0038】
これにより、電動発電機21の動力がエンジン10の動力と共に車輪35に伝達され、車両1が走行する。なお、回生時には、逆の経路で、車輪35の回生力、又はエンジン10の回生力が電動発電機21に伝達されて、電動発電機21で発電が可能となる。
【0039】
また、ハイブリッドシステム用制御装置41が設けられ、エンジン10の回転数Neや負荷Q等の運転状態や電動発電機21の回転数Nm等の運転状態や第1バッテリ24A、第2バッテリ24Bの充電量(SOC)の状態をモニターしながら、CVT16や電動発電機21、インバータ23、DC−DCコンバータ25等を制御する。このハイブリッドシステム用制御装置41は、通常は、エンジン10や車両1を制御する全体制御装置40に組み込まれて構成される。この全体制御装置40は、エンジン10の制御では、シリンダ内燃焼やターボ過給器13や排気ガス浄化装置14や補機の冷却ファン26A、冷却水ポンプ26B、潤滑油ポンプ26Cなどを制御している。
【0040】
上記の第1の実施の形態のハイブリッドシステム2において、各装置の異常を診断することはシステムの安全性を向上するために必要である。そこで、この実施の形態のハイブ
リッドシステム2は、上記のCVT16に予期せぬ異常が発生した場合に、その異常を診断するために、ハイブリッドシステム用制御装置41が、変速比変化手段M1と異常診断手段M2と警報手段M3とを有して構成される。
【0041】
変速比変化手段M1は、CVT16のプーリー比(変速比)Rを変化させる手段であり、詳しくは、電動発電機21の回転数Nmが予め定めた高効率回転領域に限定されるように設定された電動発電機21の目標回転数Nm’とエンジン10のエンジン回転数Neに基づいて、CVT16のプーリー比Rを変化させる手段である。
【0042】
高効率回転領域は、電動発電機21の回生効率及び駆動効率に基づいて、それらの電気的特性の効率が高くなるように最適化された回転領域であり、電動発電機21の最大トルクや最大馬力などの特性によって定められる回転領域である。
【0043】
この変速比変化手段M1は、まず、ハイブリッドシステム用制御装置41に予め記憶された高効率回転領域内の目標回転数Nm’を設定する。次に、内燃機関回転数検知手段として、クランク角センサなどの回転数センサでエンジン回転数Neを検知する。次に、エンジン回転数Neと目標回転数Nm’に基づいて、ハイブリッドシステム用制御装置41に予め記憶されたプーリー比制御マップを参照し、CVT16に設けた図示しないアクチュエータにより、第1プーリー16aと第2プーリー16bのそれぞれ幅を拡縮して、それぞれのプーリー径を変化させて、プーリー比Rを変化させる。
【0044】
この変速比変化手段M1は、特に、エンジン10の運転領域が高負荷高回転領域になっている場合でも、電動発電機21の回転数を高効率回転領域内に限定することができるので、電動発電機21の回転数Nmが電気的特性の効率が悪い高回転数になることを防止して、電動発電機21のエネルギー損失が増加することを回避することができる。
【0045】
異常診断手段M2は、変速比変化手段M1を実施する制御がなされた場合で、電動発電機回転数検知手段として設けられた回転数センサなどから検知された電動発電機21の回転数Nmが変速比変化手段M1による目標の回転数にならないと判断したときに、CVT16に異常があると診断する手段である。
【0046】
詳しくは、CVT16のプーリー比Rを変化させる制御がなされた後で、電動発電機21の回転数Nmと目標回転数Nm’との回転数差ΔNが予め定めた異常判定値N’よりも大きくなったときに、CVT16のプーリー比Rの変化による電動発電機21の回転数Nmの変動がないと判断し、CVT16に異常があると診断する手段である。
【0047】
この異常判定値N’は、予め実験などにより求めておく値であり、例えば、正常なCVT16のプーリー比Rを変化させて、上記のハイブリッドシステム2を多種な状況で運転させたときの回転数Nmと目標回転数Nm’との回転数差ΔNを求め、その回転数差ΔNの最大値よりも大きい値に設定するとよい。
【0048】
警報手段M3は、異常診断手段M2でCVT16に異常があると診断された場合に、その診断結果を、警報器43により、運転手に報知する手段である。具体的には、運転席に設けられたブザー43aを鳴らしたり、インジケータ43bを点灯させたりして、運転手に報知する手段である。これにより、運転手はCVT16に異常が発生したことを早期に知ることができ、その異常に対して迅速に対応することができるので、安全性を確保することができる。
【0049】
そして、上記の手段を実施して行われる実施の形態におけるハイブリッドシステム2の異常診断方法は、CVT16のプーリー比Rを変化させる制御がなされた際に、CVT1
6のプーリー比Rの変化による電動発電機21の回転数Nmの変動がないと判断したときに、詳しくは、電動発電機21の回転数Nmが予め定めた高効率回転領域に限定されるように設定された目標回転数Nm’とエンジン回転数Neに基づいてCVT16のプーリー比Rを変化させる制御がなされた後で、電動発電機21の回転数Nmと目標回転数Nm’との回転数差ΔNが予め定めた異常判定値N’よりも大きくなったと判断したときに、CVT16に異常があると診断することを特徴とする方法である。
【0050】
この異常診断方法について、
図2のフローチャートを参照しながら説明する。なお、以下で説明する異常診断方法は、変速比変化手段M1を実施する制御がなされた後に行われる方法である。
【0051】
まず、変速比変化手段M1を実施して、電動発電機21の回転数Nmが予め定めた高効率回転領域に限定されるように設定された電動発電機21の目標回転数Nm’を設定するステップS10が行われる。次に、エンジン回転数Neを検知するステップS20を行う。次に、目標回転数Nm’とエンジン回転数Neに基づいて、CVT16のプーリー比Rを変化させる制御を実施するステップS30が行われる。
【0052】
次に、電動発電機21の回転数Nmを検知するステップS40を行う。次に、異常診断手段M2を実施して、電動発電機21の回転数Nmと目標回転数Nm’との回転数差ΔNを算出するステップS50を行う。次に、回転数差ΔNが異常判定値N’よりも大きいか否かを判定するステップS60を行う。このステップS60で回転数差ΔNが異常判定値N’以下の場合は、ステップS30によりCVT16のプーリー比Rが変化したことになり、CVT16に異常がないと診断されて、この異常診断方法を終了する。
【0053】
一方、ステップS60で回転数差ΔNが異常判定値N’よりも大きい場合は、ステップS30によりCVT16のプーリー比Rが変化しないことになり、CVT16のプーリー比Rの変化による電動発電機21の回転数Nmの変動がないと判断し、CVT16に異常があると診断される。
【0054】
CVT16に異常があると診断されると、次に、警報手段M3を実施して、警報器43で異常を警報するステップS70を行って、異常診断方法を終了する。
【0055】
本発明の実施の形態のハイブリッドシステム2、ハイブリッド車両1、及びその異常診断方法によれば、電動発電機21の動力の伝達を行うCVT16の異常を診断し、安全性を確保することができる。
【0056】
詳しくは、電動発電機21の回転数Nmが電気的特性の効率の高い、つまり回生効率や駆動効率の高い高効率回転領域に限定されるように設定された目標回転数Nm’とエンジン回転数Neに基づいてCVT16のプーリー比Rを変化させる制御がなされた後で、電動発電機21の回転数Nmと目標回転数Nm’との回転数差ΔNが異常判定値N’よりも大きくなったときに、CVT16のプーリー比Rの変化による電動発電機21の回転数Nmの変動がないと判断し、CVT16に異常があると診断することができる。
【0057】
そのため、CVT16の異常を診断するための部品点数の増加や、制御の複雑化を抑制することができ、迅速且つ正確にCVT16の故障を診断することができる。これにより、CVT16に予期せぬ異常が発生した場合に、単純なロジックで、その異常を診断して、システム全体の安全性を確保することができる。
【0058】
また、上記の効果に加えて、CVT16を用いて、エンジン10のクランク軸15の動力を電動発電機21に伝達するので、エンジン10のクランク軸15の回転数Neの変動
に依存することなく、電動発電機21の回転軸の回転数Nmを電動発電機21の発電又は駆動に適した高効率回転領域に限定するように制御することができる。
【0059】
そのため、電動発電機21における回転数Nmの使用回転域が限定されることにより、電気的特性の効率が高い状態で電動発電機21を使用することが可能となり、発電時及び電動駆動時のエネルギー効率を高めることができる。
【0060】
更に、電動発電機21側において、過大な回転数で使用できるように信頼性を確保するために必要とされる過剰な構成の軸受け構造及び高強度の構造体を採用する必要が無くなり、その結果、電動発電機21及びハイブリッドシステム2の小型化及び軽量化を図ることができる。
【0061】
なお、上記の実施の形態のハイブリッドシステム2のエンジン10は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンに適用することができ、その気筒数や配列は限定されない。
【0062】
また、電動発電機21は、一般的なスタータモータなどに用いられる高回転になるに従ってトルクが低下する直巻きDCモータとは異なり、力行運転により駆動力をアシストしたり、余剰な駆動力により回生運転されると、発電したりできるモータであって、ある回転までは一定のトルクを発生する誘導モータや同期モータが望ましい。
【0063】
このような誘導モータや同期モータを電動発電機21として用いる場合は、前述したように、CVT16のプーリー比Rを変化させることにより、電動発電機21の回転数Nmを電気的特性の効率の良い高効率回転領域に限定することで、常に電動発電機21の駆動効率や回生効率を向上することができる。
【0064】
加えて、上記のハイブリッドシステム2は、電動発電機21に別の電動発電機を直列に配置して、電動発電機を複数設けるように構成することができる。複数の電動発電機を設けることで、設計の自由度が増加するので、多様な仕様に対応することができる。また、標準仕様で電動発電機21の1個にした場合でも、オプションとして容易に、後から別の電動発電機を追加できるので、基本レイアウトを同一とすることができ、部品点数、重量、コストを削減することができる。
【0065】
更に、クランク軸15と第1プーリー16aとの間に、クランク軸15と電動発電機21との間の動力の伝達を断接するクランク軸用クラッチを設けて構成することができる。クランク軸用クラッチを設けることで、エンジン10のクランク軸15の動力で電動発電機21を発電する場合や電動発電機21の駆動力でエンジン10の駆動力をアシストする場合には、接状態にして、クランク軸15と電動発電機21の間での動力の伝達を行う。一方、電動発電機21での発電が不要な場合には断状態にして、エンジン10と電動発電機21間の動力の伝達を切る。
【0066】
これにより、エンジン10のクランク軸15に電動発電機21側及びCVT16側のフリクションが加わることを回避することができるので、燃費を向上することができる。なお、クランク軸用クラッチは、エンジン10のクランク軸15と、電動発電機21の駆動軸とを切り離すことが可能な装置であればよく、例えば、摩擦式クラッチ、電磁式クラッチ(パウダークラッチ)、及び流体継手などを用いることができる。また、その配置場所は第2プーリーと電動発電機21との間でもよく、複数の電動発電機を設ける場合は、電動発電機の間に設けてもよい。
【0067】
クランク軸用クラッチを設ける場合は、上記のステップS10の前に、クランク軸用クラッチが接状態又は断状態のどちらの状態かを判断するステップを設ける。このステップ
でクランク軸用クラッチが断状態の場合は、クランク軸15と電動発電機21との間の動力伝達が切断された状態のため、CVT16に異常があるかないかの診断が行えないため終了する。
【0068】
また、ステップS50でCVT16に異常があると診断されると、クランク軸用クラッチを断状態にするステップを行うとよい。CVT16に異常があると診断された後で、クランク軸用クラッチを断状態にすることで、クランク軸15と電動発電機21との間を切断することができ、CVT16に異常がある状態のまま電動発電機21を駆動することを防止することができる。
【0069】
その上、電動発電機21の回転数Nmを検知する回転数検知手段として、回転数センサを用いた例を説明したが、これらの回転数センサの代わりに、インバータ23で制御されている周波数などから求めることもできる。