特許第6263946号(P6263946)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263946
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】発音状態表示プログラム、装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/18 20060101AFI20180115BHJP
   G10G 1/00 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   G10H1/18 Z
   G10G1/00
   G10H1/18 101
【請求項の数】12
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-214279(P2013-214279)
(22)【出願日】2013年10月12日
(65)【公開番号】特開2015-75753(P2015-75753A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2016年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102635
【弁理士】
【氏名又は名称】浅見 保男
(74)【代理人】
【識別番号】100197022
【弁理士】
【氏名又は名称】谷水 浩一
(72)【発明者】
【氏名】安良岡 直希
(72)【発明者】
【氏名】水野 成彦
(72)【発明者】
【氏名】奥村 智子
【審査官】 上田 雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−202654(JP,A)
【文献】 特開平05−080692(JP,A)
【文献】 特開2011−215256(JP,A)
【文献】 特開2000−250533(JP,A)
【文献】 特開2004−045902(JP,A)
【文献】 特開2010−079179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00−7/12
G10G 1/00−3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発音割当て用ノートの入力を受け付けるノート入力ステップと、
ノート入力ステップで入力が受け付けられた複数の発音割当て用ノートの音高から、所定の音高決定ルールに従って、複数のパートの夫々において発音すべき1又は複数の音高を選択する音高選択ステップと、
複数パートの夫々に対応して、ノート入力ステップで入力が受け付けられた複数の発音割当て用ノートの音高のうち、音高選択ステップで選択されない音高については、第1態様で表示し、音高選択ステップで選択された音高については、第2態様で表示する表示制御ステップと
から成る手順をコンピュータに実行させる発音状態表示プログラム。
【請求項2】
複数の発音割当て用ノートの入力を受け付けるノート入力ステップと、
ノート入力ステップで入力が受け付けられた複数の発音割当て用ノートの音高から、所定の音高決定ルールに従って、複数のパートの夫々において発音すべき1又は複数の音高を選択する音高選択ステップと、
ノート入力ステップで入力が受け付けられた複数の発音割当て用ノートの音高を第1態様で表示し、音高選択ステップで選択された音高を複数パートの夫々に対応して第2態様で表示する表示制御ステップと
から成る手順をコンピュータに実行させる発音状態表示プログラム。
【請求項3】
ノート入力ステップでは、ユーザの演奏操作によって指定されたノートを発音割当て用ノートとして受け付ける
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の発音状態表示プログラム。
【請求項4】
前記手順は、さらに、ユーザの演奏操作によって指定されたノートに基づき、複数のノートを自動的に生成するノート生成ステップを含み、
ノート入力ステップでは、ノート生成ステップで生成された複数のノートを発音割当て用ノートとして受け付ける
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の発音状態表示プログラム。
【請求項5】
前記手順は、さらに、コード情報を取得するコード取得ステップを含み、
ノート生成ステップでは、ユーザの演奏操作によって指定されたノート及びコード取得ステップで取得されたコード情報に基づき、複数のノートを自動的に生成する
ことを特徴とする請求項4に記載の発音状態表示プログラム。
【請求項6】
前記音高決定ルールは、パートごとに、複数の発音割当て用ノートの音高から、音高順位乃至ノートオンタイミング順に基づき選択された1又は複数のノートの音高を、当該パートで発音すべき音高として選択するものである
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の発音状態表示プログラム。
【請求項7】
前記音高決定ルールは、複数の発音割当て用ノートの個数及び音高順位に基づいて各パートで発音すべき音高を選択するものである
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の発音状態表示プログラム。
【請求項8】
複数の発音割当て用ノートの入力を受け付けるノート入力手段と、
ノート入力手段により入力が受け付けられた複数の発音割当て用ノートの音高から、所定の音高決定ルールに従って、複数のパートの夫々において発音すべき1又は複数の音高を選択する音高選択手段と、
複数パートの夫々に対応して、ノート入力手段により入力が受け付けられた複数の発音割当て用ノートの音高のうち、音高選択手段により選択されない音高については、第1態様で表示し、音高選択手段により選択された音高については、第2態様で表示する表示制御手段と
を具備することを特徴とする発音状態表示装置。
【請求項9】
複数の発音割当て用ノートの入力を受け付けるノート入力手段と、
ノート入力手段により入力が受け付けられた複数の発音割当て用ノートの音高から、所定の音高決定ルールに従って、複数のパートの夫々において発音すべき1又は複数の音高を選択する音高選択手段と、
ノート入力手段により入力が受け付けられた複数の発音割当て用ノートの音高を第1態様で表示し、音高選択手段により選択された音高を複数パートの夫々に対応して第2態様で表示する表示制御手段と
を具備することを特徴とする発音状態表示装置。
【請求項10】
さらに、
各パートに対して、音高選択手段により選択された音高の楽音を、予め定められた音色で発音させる発音手段
を具備することを特徴とする請求項8又は9に記載の発音状態表示装置。
【請求項11】
複数のパートにおける発音状態を画面上に表示する発音状態表示装置において実行される発音状態表示方法であって、
複数の発音割当て用ノートの入力を受け付けるノート入力ステップと、
ノート入力ステップで入力が受け付けられた複数の発音割当て用ノートの音高から、所定の音高決定ルールに従って、複数のパートの夫々において発音すべき1又は複数の音高を選択する音高選択ステップと、
複数パートの夫々に対応して、ノート入力ステップで入力が受け付けられた複数の発音割当て用ノートの音高のうち、音高選択ステップで選択されない音高については、第1態様で表示し、音高選択ステップで選択された音高については、第2態様で表示する表示制御ステップと
から成ることを特徴とする発音状態表示方法。
【請求項12】
複数のパートにおける発音状態を画面上に表示する発音状態表示装置において実行される発音状態表示方法であって、
複数の発音割当て用ノートの入力を受け付けるノート入力ステップと、
ノート入力ステップで入力が受け付けられた複数の発音割当て用ノートの音高から、所定の音高決定ルールに従って、複数のパートの夫々において発音すべき1又は複数の音高を選択する音高選択ステップと、
ノート入力ステップで入力が受け付けられた複数の発音割当て用ノートの音高を第1態様で表示し、音高選択ステップで選択された音高を複数パートの夫々に対応して第2態様で表示する表示制御ステップと
から成ることを特徴とする発音状態表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数のノート(音高)に複数のパートを割り当てて各パートの音色で発音させる際に、各パートの発音状態を画面上に分かり易く表示することができるようにした発音状態表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子楽器において、ユーザが鍵盤を弾いたときに複数のパート乃至音色を同時に発音させることが一般的に行われており、特に、複数鍵の同時押圧等により入力される複数の異なる音高のノートを複数のパート乃至音色に分散して発音させる技術(以下、「アンサンブル発音機能」という)として、鍵盤等を用いて入力された複数のノートに複数のパート乃至音色の何れかを割り当てて各パート乃至音色で発音させる電子楽器が知られている。例えば、特許文献1の電子楽器では、ユニゾン2モードにおいて、押鍵中ノートの夫々に、楽器編成を構成しそれぞれ異なる音色が設定される所定の複数パート(例えば、4つのパート)を、音高順位に従い略均一に割り当てて、押鍵中ノートの数が変化しても、発音するパートの総数が変化せず各パートが均一に利用されるようにしている。
【0003】
また、特許文献2の電子楽器では、割当て優先ルール(アサイン方式:高音優先、後着優先、低音優先)、発音数及び音色(TC:ピアノA、バイオリンBなど)の組合わせに従い、押鍵音を発音チャンネルに割り当てる(対応付ける)複数のアサイナ(As1,As2)によって、どのような割当て優先ルールで、幾つの押鍵音まで、どの音色で発音可能とするかを制御し、割当て優先ルールを適宜組み合わせることでふさわしい割当て形式を選択し、各アサイナ(As1,As2)に割り当てられる音色(TC)を変更することでデュアルやスプリットなどの機能を実現することができるようにしている。
【0004】
しかしながら、特許文献1或いは特許文献2の電子楽器では、複数の押鍵(ノートオン入力)が同時になされた場合に、各パート或いは各音色(TC)で異なる音高の楽音を発音させると、どのパート或いはどの音色(TC)でどの音高の楽音が発音しているのかが分かりづらい。また、入力されるノート自体がユーザ操作(押鍵)によるものではなく、外部入力されたものや自動的に生成されたものであると、どのような入力に対して、各パート或いは各音色(TC)でどのような発音がなされているのか発音状況を把握するのは、更に困難である。さらに、発音状況の確認が困難になると、ユーザにとっては、発音割当て方式などを設定するためのハードルが上がる。
【0005】
これに対して、押鍵状態などの表示に関する技術が知られており、例えば、非特許文献3には、画面上に表示された五線譜や鍵盤上に、押した鍵盤の譜面上の位置や押した鍵盤の位置が表示されたり、ソング(MIDI形式の曲データ)のメロディー・コードが表示されたり、コードの構成音が表示されることが記載されているが(「音符表示」及び「鍵盤表示」の欄)、入力された複数のノートに複数のパート乃至音色を割り当てて発音させる際の発音状態を表示することについては開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−79179号公報
【特許文献2】特許第2565069号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】PSR−E344取扱説明書(2012年、ヤマハ株式会社)13ページ<http://www2.yamaha.co.jp/manual/pdf/emi/japan/port/psre344_ja_om_a0.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、このような事情に鑑み、複数の入力ノートに対して複数のパートの発音に分散させる場合に、各パートの発音状態を簡単に確認することができるようにした発音割当て表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の第1の特徴に従うと、複数の発音割当て用ノート〔Nk(Nk1,Nk2,…)/Nki+Na(Na1,Na2,…)〕の入力を受け付けるノート入力ステップ(S31)と、ノート入力ステップ(S31)で入力が受け付けられた複数の発音割当て用ノート(Nk/Nki+Na)の音高から、所定の音高決定ルール(「アサインタイプ」)に従って、複数のパートの夫々において発音すべき1又は複数の音高(Nt)を選択する音高選択ステップ(S34)と、複数パートの夫々に対応して、ノート入力ステップ(S31)で入力が受け付けられた複数の発音割当て用ノート(Nk/Nki+Na)の音高のうち、音高選択ステップ(S34)で選択されない音高については、第1態様で表示し(S41)、音高選択ステップ(S34)で選択された音高(Nt)については、第2態様で表示する(S44)表示制御ステップ(S4)とから成る手順をコンピュータ(EM)に実行させる発音状態表示プログラム〔請求項1〕、複数の発音割当て用ノート〔Nk(Nk1,Nk2,…)/Nki+Na(Na1,Na2,…)〕の入力を受け付けるノート入力手段(S31)と、ノート入力手段(S31)により入力が受け付けられた複数の発音割当て用ノート(Nk/Nki+Na)の音高から、所定の音高決定ルール(「アサインタイプ」)に従って、複数のパートの夫々において発音すべき1又は複数の音高(Nt)を選択する音高選択手段(S34)と、複数パートの夫々に対応して、ノート入力手段(S31)により入力が受け付けられた複数の発音割当て用ノート(Nk/Nki+Na)の音高のうち、音高選択手段(S34)により選択されない音高については、第1態様で表示し(S41)、音高選択手段(S34)により選択された音高(Nt)については、第2態様で表示する(S44)表示制御手段(S4)とを具備する発音状態表示装置(EM)〔請求項8〕、並びに、複数のパートにおける発音状態を画面(13)上に表示する発音状態表示装置(EM)において実行される発音状態表示方法であって、複数の発音割当て用ノート〔Nk(Nk1,Nk2,…)/Nki+Na(Na1,Na2,…)〕の入力を受け付けるノート入力ステップ(S31)と、ノート入力ステップ(S31)で入力が受け付けられた複数の発音割当て用ノート(Nk/Nki+Na)の音高から、所定の音高決定ルール(「アサインタイプ」)に従って、複数のパートの夫々において発音すべき1又は複数の音高(Nt)を選択する音高選択ステップ(S34)と、複数パートの夫々に対応して、ノート入力ステップ(S31)で入力が受け付けられた複数の発音割当て用ノート(Nk/Nki+Na)の音高のうち、音高選択ステップ(S34)で選択されない音高については、第1態様で表示し(S41)、音高選択ステップ(S34)で選択された音高(Nt)については、第2態様で表示する(S44)表示制御ステップ(S4)とから成る発音状態表示方法〔請求項11〕が提供される。なお、括弧書きは、理解の便のために付記した実施例の参照記号や用語、参照箇所などであり、以下においても同様である。
【0010】
また、この発明の第2の特徴に従うと、複数の発音割当て用ノート〔Nk(Nk1,Nk2,…)/Nki+Na(Na1,Na2,…)〕の入力を受け付けるノート入力ステップ(S31)と、ノート入力ステップ(S31)で入力が受け付けられた複数の発音割当て用ノート(Nk/Nki+Na)の音高から、所定の音高決定ルール(「アサインタイプ」)に従って、複数のパートの夫々において発音すべき1又は複数の音高(Nt)を選択する音高選択ステップ(S34)と、ノート入力ステップ(S31)で入力が受け付けられた複数の割当用ノート(Nk/Nki+Nai)の音高を第1態様で表示し(S41)、音高選択ステップ(S34)で選択された音高(Nt)を複数パートの夫々に対応して第2態様で表示する(S44)表示制御ステップ(S4)とから成る手順をコンピュータ(EM)に実行させる発音状態表示プログラム〔請求項2〕、複数の発音割当て用ノート〔Nk(Nk1,Nk2,…)/Nki+Na(Na1,Na2,…)〕の入力を受け付けるノート入力手段(S31)と、ノート入力手段(S31)により入力が受け付けられた複数の発音割当て用ノート(Nk/Nki+Na)の音高から、所定の音高決定ルール(「アサインタイプ」)に従って、複数のパートの夫々において発音すべき1又は複数の音高(Nt)を選択する音高選択手段(S34)と、ノート入力手段(S31)により入力が受け付けられた複数の発音割当て用ノート(Nk/Nki+Na)の音高を第1態様で表示し(S41)、音高選択ステップ(S34)で選択された音高(Nt)を複数パートの夫々に対応して第2態様で表示する(S44)表示制御手段(S4)とを具備する発音状態表示装置(EM)〔請求項9〕、並びに、複数のパートにおける発音状態を画面(13)上に表示する発音状態表示装置(EM)において実行される発音状態表示方法であって、複数の発音割当て用ノート〔Nk(Nk1,Nk2,…)/Nki+Na(Na1,Na2,…)〕の入力を受け付けるノート入力ステップ(S31)と、ノート入力ステップ(S31)で入力が受け付けられた複数の発音割当て用ノート(Nk/Nki+Na)の音高から、所定の音高決定ルール(「アサインタイプ」)に従って、複数のパートの夫々において発音すべき1又は複数の音高(Nt)を選択する音高選択ステップ(S34)と、ノート入力ステップ(S31)で入力が受け付けられた複数の発音割当て用ノート(Nk/Nki+Na)の音高を第1態様で表示し(S41)、音高選択ステップ(S34)で選択された音高(Nt)を複数パートの夫々に対応して第2態様で表示する(S44)表示制御ステップ(S4)とから成る発音状態表示方法〔請求項12〕が提供される。
【0011】
この発明による発音状態表示プログラムにおいて、ノート入力ステップ(S31)では、ユーザの演奏操作によって指定された複数のノート〔Nk(Nk1,Nk2,…)〕を発音割当て用ノートとして受け付ける〔請求項3〕ように構成することができる。また、この発明による発音状態表示プログラムにおいて、前記手順は、さらに、ユーザの演奏操作によって指定されたノート(Nki)に基づき、複数のノート〔Na(Na1,Na2,…)〕を自動的に生成するノート生成ステップ(AN;S25)を含み、ノート入力ステップ(S31)では、ノート生成ステップ(S25)で生成された複数のノート〔Na(Na1,Na2,…)〕を発音割当て用ノートとして受け付ける〔請求項4〕ように構成することができる。
【0012】
この発明による発音状態表示プログラムにおいて、前記手順は、さらに、コード情報を取得するコード取得ステップ(AN;S23)を含み、ノート生成ステップ(S25)では、ユーザの演奏操作によって指定されたノート(Nki)及びコード取得ステップ(S23)で取得されたコード情報に基づき、複数のノート〔Na(Na1,Na2,…)〕を自動的に生成する〔請求項5〕ように構成することができる。
【0013】
この発明による発音状態表示プログラムにおいて、音高決定ルール(「アサインタイプ」)は、パートごとに、複数の発音割当て用ノート(Nk/Nki+Na)の音高から、音高順位乃至ノートオンタイミング順に基づき選択された1又は複数のノートの音高(Nt)を、当該パートで発音すべき音高として選択するもの(アサインタイプ1,2)である〔請求項6〕ように構成することができる。
【0014】
或いは、この発明による発音状態表示プログラムにおいて、音高決定ルール(「アサインタイプ」)は、複数の発音割当て用ノート(Nk/Nki+Na)の個数及び音高順位に基づいて各パートで発音すべき音高(Nt)を選択するもの(アサインタイプ3)である〔請求項7〕ように構成することができる。
【0015】
また、この発明による発音状態表示装置(EM)は、さらに、各パートに対して、音高選択手段(S34)により選択された音高(Nt)の楽音を、予め定められた音色で発音させる発音手段(7)を具備する〔請求項10〕ように構成することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明の第1の特徴による発音状態表示システムによると(請求項1,8,11)、複数のパートにおける発音状態を画面(13)上に表示する発音状態表示装置(EM)において、複数の発音割当て用ノート〔Nk(Nk1,Nk2,…)/Nki+Na(Na1,Na2,…)〕の入力を受け付けると(S31)、入力が受け付けられた複数の発音割当て用ノート(Nk/Nki+Na)の音高から、所定の音高決定ルール(「アサインタイプ」)に従って、複数のパートの夫々において発音すべき1又は複数の音高(Nt)が選択され(S34)、複数パートの夫々に対応して、入力が受け付けられた複数の発音割当て用ノート(Nk/Nki+Na)の音高のうち、選択されない音高については、第1態様で表示され(S41)、選択された音高(Nt)については、第2態様で表示される(S44)。
つまり、この発明では、複数のパートを、同時入力された複数音高の発音割当て用ノート(Nk/Nki+Na)に割り当てて、夫々のパートの音色で発音させるアンサンブル発音機能を実行し、複数音高(Nk/Nki+Na)を複数パートに分散して発音する場合に、各パートの発音状態を画面(13)上に表示する際、各パートごとに、入力を受け付けたノート(Nk/Nki+Na)に対して「発音しないノート」と「発音するノート」(Nt)を異なる表示態様で表示するようにしている。
従って、この発明によれば、複数の入力ノートに対して複数のパートの発音に分散させる場合に、パートごとに、実際に発音される入力ノートの音高と発音されない入力ノートの音高とを異なる表示態様とすることによって、どのノートを割当て対象として受け付け、どの音高で発音しているかが分るようにしているので、複数のノートに分散して発音する複数パートが、それぞれ、どの音高で発音するか、各パートの発音状態を、視覚的に簡単に確認することができる。
【0017】
この発明の第2の特徴による発音状態表示システムによると(請求項2,9,12)、複数のパートにおける発音状態を画面(13)上に表示する発音状態表示装置(EM)において、複数の発音割当て用ノート〔Nk(Nk1,Nk2,…)/Nki+Na(Na1,Na2,…)〕の入力を受け付けると(S31)、入力が受け付けられた複数の発音割当て用ノート(Nk/Nki+Na)の音高から、所定の音高決定ルール(「アサインタイプ」)に従って、複数のパートの夫々において発音すべき1又は複数の音高(Nt)が選択され(S34)、入力が受け付けられた複数の発音割当て用ノート(Nk/Nki+Na)の音高が第1態様で表示され(S41)、選択された音高(Nt)が複数パートの夫々に対応して第2態様で表示される(S44)。
つまり、この発明では、複数のパートを、同時入力された複数音高の発音割当て用ノート(Nk/Nki+Na)に割り当てて、夫々のパートの音色で発音させるアンサンブル発音機能を実行し、複数音高(Nk/Nki+Na)を複数パートに分散して発音する場合に、各パートの発音状態を画面(13)上に表示する際、「入力を受け付けたノート(Nk/Nki+Na)」の表示態様と各パートごとの「発音するノート」(Nt)の表示態様を異なるようにしている。
従って、この発明によれば、複数の入力ノートに対して複数のパートの発音に分散させる場合に、全ての入力ノート(音高)とパートごとに実際に発音される入力ノート(音高)とを異なる表示態様とすることによって、どのノートを割当て対象として受け付け、どの音高で発音しているかが分るようにしているので、複数のノートに分散して発音する複数パートが、それぞれ、どの音高で発音するか、各パートの発音状態を、視覚的に簡単に確認することができる。
【0018】
また、この発明による発音状態表示プログラムでは、ユーザの演奏操作によって指定されたノート〔Nk(Nk1,Nk2,…)/Nki〕を発音割当て用ノートとして受け付ける(S31)ように構成される(請求項3)。
従って、この発明によれば、押鍵などのユーザの実演奏に基づく演奏音の各パートにおける発音状態を確認することができる。
【0019】
また、この発明による発音状態表示プログラムでは、ユーザの演奏操作によって指定されたノート(Nki)に基づき、複数のノートを自動的に生成し(AN;S25)、生成された複数のノート〔Na(Na1,Na2,…)〕を発音割当て用ノートとして受け付ける(S31)ように構成される(請求項4)。
従って、この発明によれば、押鍵などのユーザ演奏に基づく演奏音に応じて自動生成された付加音が、各パートでどのように発音されているのかを確認することができる。
【0020】
さらに、この発明による発音状態表示プログラムでは、コード(和音)情報を取得し(AN;S23)、ユーザの演奏操作によって指定されたノート(Nki)及び取得されたコード情報に基づいて、複数のノートを自動的に生成する(S25)ように構成される(請求項5)。
従って、この発明によれば、押鍵などのユーザ演奏に基づく演奏音と、この演奏音に応じて自動生成されたハーモニー付加音とが、各パートにおいてどのように発音されているのかを視覚的に確認することができる。
【0021】
また、この発明による発音状態表示プログラムでは、所定の音高決定ルール(アサインタイプ1,2)により、パートごとに、複数の発音割当て用ノート(Nk/Nki+Na)の音高から、音高順位乃至ノートオンタイミング順に基づき選択された1又は複数のノートの音高(Nt)を、夫々のパートで発音すべき音高として選択する(S34)ように構成される(請求項6)。
従って、この発明によれば、複数の入力ノートから、音高順位乃至ノートオンタイミング順の優先順位に基づいて各パートで発音すべきノートを決定した場合に、各パートにおいて入力ノートがどのように発音されているのかを視覚的に確認することができる。
【0022】
また、この発明による発音状態表示プログラムでは、所定の音高決定ルール(アサインタイプ3)により、複数の発音割当て用ノート(Nk/Nki+Na)の個数及び音高順位に基づいて各パートで発音すべき音高として選択する(S34)ように構成される(請求項7)。
従って、この発明によれば、複数の入力ノートが入力ノートの個数及び音高順位に応じて各パートに振り分けられた場合に、各パートにおいて入力ノートがどのように発音されているのかを視覚的に視認することができる。
【0023】
また、この発明による発音状態表示装置(EM)では、各パートに対して選択された音高(Nt)の楽音を、各パートで予め定められた音色で発音させる(7)ように構成される(請求項10)。
従って、この発明によれば、発音されている演奏音を聴きながら、各パートで発音されている演奏音の音高を視覚的に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】この発明の一実施例による電子楽器のハードウエア構成ブロック図である。
図2】この発明の一実施例による発音割当て機能の概要を示すブロック図である。
図3】この発明の一実施例によるハーモニー機能オフ時の画面表示例を示す。
図4】この発明の一実施例によるハーモニー機能オン時の画面表示例を示す。
図5】この発明の別の実施形態による画面表示例を示す。
図6】この発明の一実施例によるアサインタイプの例を示す。
図7】この発明の一実施例による発音割当表示処理の全体的な動作を示すフローチャートである。
図8】この発明の一実施例による発音割当用ノート決定処理を示すフローチャートである。
図9】この発明の一実施例による発音割当処理を示すフローチャートである。
図10】この発明の一実施例による表示制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔発音状態表示装置のハードウエア構成〕
この発明の一実施例による発音状態表示システムでは、発音状態表示装置として電子楽器が用いられ、この電子楽器は発音割当て装置としても機能する。図1は、この発明の一実施例による発音状態表示装置のハードウエア構成ブロック図である。この発音状態表示装置即ち電子楽器EMは、ハードウエア構成として、中央処理装置(CPU)1、ランダムアクセスメモリ(RAM)2、読出専用メモリ(ROM)3、記憶装置4、検出回路5、表示回路6、音源回路7、通信インターフェース(通信I/F)8などの要素を備え、これら要素1〜8はバス9を介して互いに接続される。
【0026】
この電子楽器EM全体を制御するCPU1は、RAM2及びROM3と共にデータ処理部を構成し、タイマ10によるクロックを利用し、発音割当て表示処理プログラムを含む各種制御プログラムに従って、発音割当て表示処理を含む各種処理を実行する。RAM2は、これらの処理に際して必要な各種データを一時的に記憶乃至保持するのに用いられ、ROM3には、所定の制御プログラムや制御用データが記憶されている。
【0027】
記憶装置4は、HD(ハードディスク)やフラッシュメモリなどの記憶媒体とその駆動装置を含み、制御プログラムや種々のデータを任意の記憶媒体に記憶することができる。記憶媒体は、この装置に内蔵されていてもよいし、外付けの各種記憶用メディア(メモリカード、USBメモリ、CD−Rなど)のように着脱可能であってもよい。また、記憶装置4には、各種アプリケーションプログラムや各種データを記憶しておくことができる。
【0028】
検出回路5は、鍵盤などの演奏操作子11と共に演奏操作部を構成し、演奏操作子11の演奏操作を検出して検出内容に対応する演奏操作情報をデータ処理部(1〜3)に導入し、データ処理部は、この演奏操作情報に基づいて演奏情報を生成し、音源回路7に送る。発音割当て表示処理の際、演奏操作子(鍵盤)11は発音指示受付部として機能し、検出回路5は押鍵状態検出部として機能し、データ処理部(1〜3)は付加音生成部(AN)及び割当て制御部(AC)として機能する。検出回路5は、また、スイッチなどの設定操作子12と共に入力操作部を構成し、設定操作子12に対する操作を検出し、操作に対応する各種情報をデータ処理部(1〜3)に導入する。
【0029】
表示回路6は、LCDなどのディスプレイ(表示器)13と共に表示部を構成し、ディスプレイ13の表示内容をCPU1からの指令に従って制御し、各種のユーザ操作に対する表示援助を行う。例えば、発音割当て表示処理の際には、押鍵に基づく複数の音高が複数のパートに分散して発音される状態を鍵盤画像などで表示する発音状態表示画面がディスプレイ13に表示される。また、ディスプレイ13に表示されるボタンを設定操作子(カーソルスイッチ)12で指示することにより操作子として用いることができる。なお、タッチパネルを使用して設定操作子12及びディスプレイ13の機能を一体化することができ、この場合は、表示ボタンをタッチ操作可能な操作子として用いることができる。
【0030】
音源回路7は、楽音発生部(音源)として機能し、音源部やDSP(デジタル信号処理部)を備え、演奏操作部(11−5)からの演奏操作情報に基づく実演奏情報、記憶装置4に記憶された自動演奏情報、外部の自動演奏情報源から通信I/F8経由で受信される自動演奏情報、或いは、この電子楽器EMに備えられた付加音生成機能により生成された演奏情報に従って、種々の楽器音色の楽音波形を表わす楽音信号を生成し(音源部)、生成された楽音信号に対し所定の効果を付与したりミキシングを行って(DSP)、ディジタル楽音信号を発生する。ディジタルアナログ変換回路(DAC)14は、アンプ、スピーカ等を備えたサウンドシステム15と共に、楽音出力部(SD)として機能し、音源回路7で生成されたディジタル楽音信号をアナログ楽音信号に変換してサウンドシステム15に出力し、アナログ楽音信号に基づく楽音を発生させる。
【0031】
通信I/F8は、MIDIなどの音楽用I/F、USBやIEEE1394等の汎用近距離有線I/F、Ethernet(登録商標)等の汎用ネットワークI/F、無線LANやBluetooth(登録商標)Lan等の汎用近距離無線I/Fなどを含み、通信ネットワークを通じて外部機器と交信するのに用いられる。
【0032】
〔発音割当て機能の概要〕
この電子楽器は、発音割当て表示処理プログラムに従って発音割当て表示処理を実行し、発音割当て装置乃至発音状態表示装置として機能する。図2は、この発明の一実施例による発音割当て機能の概要を説明するための機能ブロック図である。この電子楽器EMは、発音割当て表示処理により発音割当て装置として機能し、図示のように、発音指示受付部11、押鍵状態検出部5、付加音生成部AN、割当て制御部AC、楽音発生部7及び楽音出力部SDの機能ブロックで示される発音割当て機能を実行する。
【0033】
発音指示受付部11は、演奏操作子11(図1)の機能に対応し、例えば、鍵盤タイプの演奏操作子のユーザ操作による発音指示を受け付ける。すなわち、ユーザの演奏操作により任意の1又は複数のノートの音高が指定されると、当該音高の楽音を発生すべき旨の指示を受け付ける。例えば、鍵盤の何れかの鍵が押鍵されると、押鍵に対応する音高信号を押鍵状態検出部5に供給する。
【0034】
押鍵状態検出部5は、検出回路5(図1)の機能に対応し、発音指示受付部11から供給された音高信号に基づき、押鍵された鍵の音高情報(ノートナンバ)及びキーオン情報(ノートオンイベント)を生成し、当該音高情報及びキーオン情報を含む押鍵ノート情報Nki+Nkc;Nkを付加音生成部AN或いは割当て制御部ACに出力し、押鍵に対応するノートの音高が指定されたことを通知する。なお、それまで押鍵されていた鍵が離鍵されたときには、離鍵に対応する音高信号に応じて、当該鍵の音高情報(ノートナンバ)及びキーオフ情報(ノートオフイベント)を含む情報を出力し、当該鍵に対応して音高指定されていたノートが消滅したことを通知する。
【0035】
ここで、「ハーモニー機能」(後述する)がオフに設定されている(図示の仮想的な2つの切換えスイッチが実線のようにハーモニー機能オフBhf側にある)ときは、鍵盤11の全鍵域における押鍵に基づく通常の押鍵ノート情報Nk:Nk1,Nk2,…(記号“Nk”は,通常の押鍵ノート情報を代表的に表わす)が発音割当て用ノート情報として割当て制御部ACに出力される。一方、ハーモニー機能がオンに設定されている(図示の仮想的切換えスイッチが破線のようにハーモニー機能オンBhn側にある)ときには、鍵盤11の演奏鍵域(Ki)における押鍵に基づく演奏鍵域の押鍵ノート情報Nki及びコード鍵域(Kc)における押鍵に基づくコード鍵域の押鍵ノート情報Nkc(Nkc1,Nkc2,…)が、付加音生成のために、付加音生成部ANに出力される。
【0036】
付加音生成部ANは、CPU1を含むデータ処理部(図1:1〜3)の付加音生成機能に対応し、ハーモニー機能のオン設定時に動作し、押鍵状態検出部5から入力されるノート情報Nki,Nkcに基づいて、所定音高を示す複数の付加ノート情報Na:Na1,Na2,…(記号“Na”は、付加ノート情報を代表的に表わす)を自動的に生成する。つまり、ハーモニー機能オン時には、押鍵状態検出部5から、演奏鍵域(Ki)における押鍵に基づく演奏鍵域の押鍵ノート情報Nkiとコード鍵域(Kc)における押鍵に基づくコード鍵域の押鍵ノート情報Nkcが入力されると、コード鍵域の押鍵ノート情報Nkcの音高(ノートナンバ)に基づいてコードを判定し、判定されたコードに従って、演奏鍵域の押鍵ノート情報Nkiの音高に調和する音高を持つ複数の付加ノート情報Na1,Na2,…を自動生成し、演奏鍵域の押鍵ノート情報Nki及び複数の付加ノート情報Na1,Na2,…を発音割当て用ノート情報として割当て制御部ACに出力する。
【0037】
割当て制御部ACは、CPU1を含むデータ処理部(図1:1〜3)の割当て制御機能に対応し、複数のアサイナAS:AS1,AS2,…,ASi,…,ASn(記号“AS”は、アサイナを代表的に表わす)を備え、押鍵状態検出部5或いは付加音生成部ANから発音割当て用ノート情報として入力される「通常の押鍵ノート情報Nk:Nk1,Nk2,…」或いは「演奏鍵域の押鍵ノート情報Nki+付加ノート情報Na:Na1,Na2,…」に対して、アサイナASごとに独自の音色を割り当てると共に、各音色が割り当てられた発音ノート情報Nt:Nt1,Nt2,…,Nti,…,Ntn(記号“Nt”は、発音ノート情報を代表的に表わす)を、楽音発生部7の対応する楽音信号処理系列TC:TC1,TC2,…,TCi,…,TCnに出力する。
【0038】
より詳しく説明すると、各アサイナASには、任意の音色を設定することができ、所定の音高決定ルール(「アサインタイプ」)に従って、発音割当て用ノート情報Nk/Nki+Naが表わすノートの音高(ノートナンバ)やノートオンタイミングの順番に基づき、発音割当て用ノート情報Nk/Nki+Na中のどの音高のノート情報を、当該アサイナASに設定された音色で発音させるか(当該アサイナASに対応する音色を割り当てるか)などを規定する「割当て基準」を設定することができる。従って、発音割当て用ノート情報Nk/Nki+Naが割当て制御部ACに入力されると、各アサイナASは、夫々の設定内容に基づいて、現在入力されている発音割当て用ノート情報Nk/Nki+Naのうち、どの音高のノート情報を、当該アサイナASに設定された音色で発音すべきかを決定し、これにより、入力された所定音高の発音割当て用ノート情報が所定音色のパートに割り当てられる。そして、アサイナASごとに発音すべきと決定されたノート情報は、発音ノート情報Ntとして楽音発生部7に供給される。
【0039】
楽音発生部7は、音源回路7(図1)の機能に対応しており、複数の発音処理系列TC1〜TCnを備え、また、楽音出力部SDは、DAC14及びサウンドシステムの機能に対応している。つまり、楽音発生部7では、割当て制御部ACにおいてアサイナASごとに決定された発音ノート情報Ntが、当該アサイナASの割当て基準に対応する発音処理系列TCに供給され、各発音処理系列TCは、各発音ノート情報Ntに基づいて、割り当てられた音色の楽音信号を生成し、生成された楽音信号は、楽音出力部SDのスピーカーを通じて発音される。なお、同一の音色と同一の割当て基準が設定されたアサイナASに対応する発音系列は「パート」と呼ばれる。また、各楽音信号処理系列TCは、同一音色が設定された1乃至複数の楽音信号生成チャンネルで構成され、各アサイナASは、発音すべきと決定した1又は複数の発音ノート情報Ntを当該アサイナASに設定された音色で発音するように、対応する楽音信号処理系列TCに指示するように構成されるので、必ずしも、発音処理系列TCの数はアサイナASの数と一致するものではないが、図示の例では、説明を簡単にするために、アサイナAS、パート、楽音信号処理系列TCは、1対1で対応し、同数「n」であるとしている。
【0040】
以上説明したように、この電子楽器EMは発音割当て装置として機能し、ハーモニー機能オフ時は、押鍵状態検出部5から通常の押鍵ノートNkが割当て制御部ACに発音割当て用ノートとして入力され、割当て制御部ACは、入力された通常の押鍵ノートNkのうち、各アサイナASの割当て基準に合うノートを、当該アサイナASに設定された音色のパートに割り当てて当該音色で発音させる。これに対して、ハーモニー機能オン時には、付加音生成部ANで、コード鍵域(Kc)の押鍵ノートNkcの音高に基づいてコードを判定し、判定されたコードに従って、演奏鍵域(Ki)の押鍵ノートNkiの音高に調和する音高を持つ複数の付加ノートNa:Na1,Na2,…が自動生成され、「演奏鍵域の押鍵ノートNki+付加ノートNa」が発音割当て用ノートとして割当て制御部ACに入力され、割当て制御部ACは、ハーモニー機能オフ時と同様に、入力された「演奏鍵域の押鍵ノートNki+付加ノートNa」に対し、複数のパート(音色)を割り当てて、複数音高を複数パートの音色でばらけて発音させる。つまり、ハーモニー機能オン時には、ユーザ演奏に基づく押鍵ノートNkiだけでなく、押鍵ノートNkiに対応して自動生成された付加ノートNaについても、アンサンブル発音機能による発音割当処理が実施されるので、押鍵数が少ない簡単な演奏操作で、アンサンブル演奏を行っているような効果を得ることができる。
【0041】
〔表示例〕
この電子楽器EMは、発音割当て表示処理により発音状態表示装置として機能し、複数の入力ノートに複数パートを割り当てて発音させるアンサンブル発音機能を実行するのに合わせて、各パートの発音状態を画面上に表示し、その際、割当て制御のために入力される割当て用ノートに対して,各パートで「発音しないノート」と「発音するノート」(Nt)を別の表示態様で表示するようにしている。図3及び図4は、この発明の一実施例による発音状態表示機能を説明するための表示例を示す。なお、以下の説明では、アサイナAS・パート・楽音信号処理系列TCは、1対1で対応し、同数(n=4)であるものとし、例えば、アサイナ1・パート1・系列TC1には楽器音色:「トランペット」が、アサイナ2・パート2・系列TC2には楽器音色:「トロンボーン」が、アサイナ3・パート3・系列TC3には楽器音色:「テナーサックス」が、アサイナ4・パート4・系列TC4には、楽器音色:「バリトンサックス」が、それぞれ、設定されているものとする。
【0042】
この電子楽器EMでは、発音割当て表示処理の際、図示のような発音状態表示画面がディスプレイ13に表示される。発音状態表示画面には、4つのパート名表記:「パート1」〜「パート4」に対応してそれぞれ4つの鍵盤画像Kb1〜Kb4(表示されるだけで操作は不可)が表示され、これら鍵盤画像Kb1〜Kb4下の左右には、キーアサインタイプ設定エリアSa及びハーモニー設定エリアShが設けられる。キーアサインタイプ設定エリアSa内には、3つのアサインタイプ指定ボタンBa1〜Ba3が操作可能に表示され、ハーモニー設定エリアSh内には、ハーモニー機能オンボタンBhn、ハーモニー機能オフボタンBhf、2つのハーモニータイプ指定ボタンBh1,Bh2が操作可能に表示される。つまり、各ボタンBa1〜Ba3,Bhn,Bhf,Bh1,Bh2は、操作パネル上の対応する設定操作子(スイッチ等)12の操作により操作可能であり、設定操作子12及びディスプレイ13がタッチパネルで構成される場合は、各ボタンを直接操作することができる。
【0043】
図3は、ハーモニー設定エリアShのハーモニー機能オフボタンBhfの操作により「ハーモニー機能」がオフに設定され〔ボタンBhfはハイライト表示(高明度表示)がなされる〕、キーアサインタイプ設定エリアSaの第1のアサインタイプ指定ボタンBa1の操作により「アサインタイプ1」が指定されている場合(ボタンBa1はハイライト表示)の発音状態表示画面を示しており、この発音状態表示画面は、鍵盤画像Kb1〜Kb4の表示領域のすぐ上に矢印で示すように、ユーザにより、現在、キー:「C3,E3,G3,C4」が弾かれていることを表わしている。つまり、鍵盤(演奏操作子)11の全鍵域における押鍵に基づく通常の押鍵ノートNk1〜Nk4:「C3,E3,G3,C4」が、全て、発音割当て用ノートとして割当て制御部ACに入力される。
【0044】
この場合、「アサインタイプ1」により規定される音高決定ルールに従って、発音割当て用ノートとして入力された押鍵ノートNk1〜Nk4:「C3,E3,G3,C4」のうち、ノートNk4:「C4」がパート1における発音ノートNt1として選択され、ノートNk3:「G3」がパート2における発音ノートNt2として選択され、ノートNk2:「E3」がパート3における発音ノートNt3として選択され、ノートNk1:「C3」がパート4における発音ノートNt4として選択され、選択された発音ノートNt1〜Nt4は、アサイナ1〜アサイナ4を介して楽音発生部7の楽音信号処理系列TC1〜TC4に送られ、夫々の系列に設定された音色(例えば、「トランペット」、「トロンボーン」、「テナーサックス」、「バリトンサックス」)で発音される。
【0045】
これに応じて、表示部6−13は、発音ノートNt1〜Nt4に対応する鍵盤画像Kb1〜Kb4中の各キーについて、網目模様で図示するように、所定の表示態様(例えば、オレンジ色)で強調表示する。また、各パート1〜4において発音ノートNtに選択されなかった押鍵ノートNkに対応する各鍵盤画像Kb1〜Kb4中の各キーについては、斜線模様で図示するように、別の表示態様(例えば、グレー)で強調表示する。
【0046】
以上のように、「ハーモニー機能」がオフに設定されている場合は、通常の押鍵ノートNk1〜Nk4が全て発音割当て用ノートとみなされて、各パート1〜4では、通常の押鍵ノートNk1〜Nk4に対応するキーが強調表示(他のキーと視覚的に明確に相違すると認識されるような表示態様。例えば、色や模様をつけたり明度を異ならせる)がなされるが、これらノートNk1〜Nk4のうち、各パート1〜4で発音されないノートに対応するキーは、所定の表示態様即ち第1態様(例えば、グレー)で表示され、各パート1〜4で発音されるノート(Nt1〜Nt4)に対応するキーについては、別の表示態様即ち第2態様(例えば、オレンジ色)で表示される。
【0047】
図4は、ハーモニー設定エリアShのハーモニー機能オンボタンBhn及び第1のハーモニータイプ指定ボタンBh1の操作により「ハーモニー機能」がオンに設定され、「ハーモニータイプ1」が指定されると共に、キーアサインタイプ設定エリアSaの第1のアサインタイプ指定ボタンBa1の操作により「アサインタイプ1」が指定されている〔ボタンBhn,Bh1,Ba1はハイライト表示(高明度表示)がなされる〕場合の発音状態表示画面を示しており、この発音状態表示画面は、矢印で示すように、ユーザにより、現在、キー:「G1,C2,E2,C3」が弾かれていることを表わしている。「ハーモニー機能」がオンに設定され「ハーモニータイプ1」が指定されると、スプリット機能がオンし、予め設定されたスプリットポイントで鍵域が分割される。この画面では、スプリット表記:「SP」、逆三角形のスプリットマーク及びプリットマーク下に走る破線が、スプリットポイントを表示しており、キー:「G1,C2,E2」は、スプリットポイントの左側、即ち、コード鍵域Kc内にあり、キー:「C3」は、スプリットポイントの右側、即ち、演奏鍵域Ki内にある。つまり、鍵盤(演奏操作子)11の演奏鍵域Ki内における押鍵に基づく演奏鍵域の押鍵ノートNki:「C3」と、コード鍵域Kc内における押鍵に基づくコード鍵域の押鍵ノートNkc1〜Nkc3:「G1,C2,E2」に基づくコード判定に従って付加音生成部ANで生成された付加ノートNa1〜Na3:「E2,G2,E3」とが発音割当て用ノートとして割当て制御部ACに入力される。
【0048】
ここで、ハーモニー機能オン時のスプリット機能及び付加音生成部ANの機能についてより詳しく説明する。スプリット機能がオンになると、予め設定されたスプリットポイントで鍵盤11の鍵域が演奏鍵域Kiとコード鍵域Kcに分割される。図4の例では、音高:F#2をスプリットポイントとして左右に鍵域が分割されており、音高:F#2以下がコード検出用のコード鍵域、音高:G2以上がアンサンブル発音用の入力鍵域として動作する。なお、スプリット機能のオンについては、ハーモニー機能のオンオフに連動して、スプリット機能をオンオフしてもよいし、操作パネル上のスイッチ等(設定操作子12)に対するユーザ操作でスプリット機能をオンオフさせてもよい。
【0049】
図示の矢印のように、ユーザが鍵盤11で「G1, C2, E2, C3」を弾いた場
合、付加音生成部ANは、次のように動作する:
(1)押鍵したノートのうち、アンサンブル発音用の演奏鍵域Ki内にある「C3」を、発音割当て用ノートとみなす。
(2)押鍵したノートのうち、コード鍵域内にある「G1, C2, E2」に基づいて、コード判定を行う。コード判定は、既存技術を用いて行われ、このケースでは、例えば、「Cメジャー」と判定される。
(3)(1)で発音割当て用ノートとみなされた「C3」に対し、所定のルールに従って、(2)で判定したコードに基づく付加音を付加する。
付加音を付加するルールは既存技術を用いる。図4の例では、「ハーモニータイプ1」と「ハーモニータイプ2」が選択できるようになっており、タイプによって付加ルールが異なる。例えば、現在選択中の「ハーモニータイプ1」では、ユーザ押鍵の上下1オクターブ以内に3音〜5音(コードにより異なる)が付加されるものである。
このようなノート付加機能により、付加されるノートを「E2, G2, E3」に決定し、この付加ノート「E2, G2, E3」と、(1)で発音割当て用ノートとみなされた「C3」とを合わせた「E2, G2, C3,E3」を割当て制御部ACに入力する。
【0050】
なお、「ハーモニータイプ1」では、上述のように、コードに基づいてハーモニー音が付加されるが、「ハーモニータイプ2」は、コードに基づかないハーモニー音を生成するタイプであり、例えば、入力音に1オクターブ上(又は下)のノートを追加したり、5度上のノートを足すといったものである。
【0051】
割当て制御部ACでは、付加音生成部ANから入力された演奏鍵域の押鍵ノートNki:「C3」及び付加ノートNa1〜Na3:「E2,G2,E3」を発音割当て用ノートとみなし、現在選択中の「アサインタイプ1」に従って、各パート1〜4で発音するノートNt1〜Nt4が決定される。そして、発音するノートNt1〜Nt4は、例えば、オレンジ色で表示され、発音しないノートは、例えば、グレーで表示される。
【0052】
つまり、「アサインタイプ1」により規定される音高決定ルールに従って、発音割当て用ノートとして入力された演奏鍵域の押鍵ノートNki:「C3」及び付加ノートNa1〜Na3:「E2,G2,E3」のうち、付加ノートNa3:「E3」がパート1における発音ノートNt1として選択され、演奏鍵域の押鍵ノートNki:「C3」がパート2における発音ノートNt2として選択され、付加ノートNa2:「G2」がパート3における発音ノートNt3として選択され、付加ノートNa1がパート4における発音ノートNt4として選択され、選択された発音ノートNt1〜Nt4は、アサイナ1〜アサイナ4を介して楽音発生部7の楽音信号処理系列TC1〜TC4に送られ、夫々の系列に設定された音色(例えば、「トランペット」、「トロンボーン」、「テナーサックス」、「バリトンサックス」)で発音される。
【0053】
これに応じて、表示部6−13は、発音ノートNt1〜Nt4に対応する鍵盤画像Kb1〜Kb4中の各キーについて、網目模様で図示されるように、所定の表示態様(例えば、オレンジ色)で強調表示する。また、各パート1〜4において発音ノートNtに選択されなかった演奏鍵域の押鍵ノートNki乃至付加ノートNa1〜Na3に対応する各鍵盤画像Kb1〜Kb4中の各キーについては、斜線模様で図示されるように、別の表示態様(例えば、グレー)で強調表示する。
【0054】
以上のように、「ハーモニ一機能」がオンに設定されている場合は、演奏鍵域Kiの押鍵ノートNki及び付加ノートNa1〜Na3が全て発音割当て用ノートとみなされて、各パート1〜4では、発音割当用ノートNki,Na1〜Na3に対応するキーが強調表示がなされるが、これらノートのうち、各パート1〜4で発音されないノートに対応するキーは、所定の表示態様即ち第1態様(例えば、グレー)で表示され、各パート1〜4で発音されるノート(Nt1〜Nt4)に対応するキーは、別の表示態様即ち第2態様(例えば、オレンジ色)で表示される。
【0055】
なお、パート名表記については、便宜上、「パート1」,「パート2」,…を用いたが、実際には、「トランペット」、「トロンボーン」、「テナーサックス」、「バリトンサックス」、…など、対応する楽器音色名や、所定の楽器音色記号などを用いることができる。また、ノートを説明するための図中の記号:Nk1,Nk2,…;Nkc1,Nkc2,…;Nki;G1,C2,E2,G2,C3,E3,G3,C4;(Nt1),(Nt2),…;(Na1),(Na2),…は、画面に表示されないが、押鍵したキーを指示する矢印については、表示しなくてもよいし、矢印画像などで表示してよい。さらに、スプリット機能のオン時に設定されるスプリットポイント(鍵域分割される音高上の位置)について、図3及び図4では、スプリット表記:「SP」、逆三角形のスプリットマーク及びスプリットポイントに相当する鍵盤画像Kb1〜Kb4上の位置を上下に通る破線で、スプリットポイントを表示するようにしているが、スプリットポイントの音高を文字表記で任意位置に表示してもよく、これらのスプリットポイント表示方法の何れか1乃至複数を採用してもよいし、場合によっては、この画面にはスプリット位置を表示せず、操作パネル上の別の文字表示器にスプリットポイントの音高を表示してもよい。
【0056】
〔別の表示形態〕
図3及び図4では、発音状態表示画面に鍵盤画像を表示して発音割当て用ノート乃至発音ノートに対応する鍵画像の表示態様を制御するものについて説明したが、発音状態表示画面には、パート鍵盤画像を表示しなくてもよい。音高情報が表示できれば何でもよく、例えば、五線譜や音名表記などを採用することができる。図5は、この発明の別の実施形態による画面表示例を示す。
【0057】
(1)五線譜表示
発音状態表示画面には、発音割当て用ノートや発音ノートNtを表わす音符を五線譜上に表示し、これら音符の表示態様を制御するようにしてもよい。例えば、図5(1)に示すように、パート1〜4ごとに五線譜を表示し、発音割当て用ノートを第1態様として白音符画像Wh(音符内は、例えば、空白)で各五線譜上に表示するが、各パート1〜4の発音ノートNt1〜Nt4については、第2態様として色音符画像Co(音符内の網目模様は、例えば、オレンジ色を表わす)で各五線譜上に表示する。
【0058】
(2)音名文字表示
発音状態表示画面には、発音割当て用ノートや発音ノートNtの音名を表わす文字を表示し、これら文字の表示態様を制御するようにしてもよい。例えば、図5(2)に示すように、パート1〜4ごとに、発音割当て用ノートの音名を表わす文字画像を第1態様として通常フォントで表示するが、発音ノートNt1〜Nt4の音名を表わす文字画像については、第2態様としてアンダーライン(下線)Unを付けて表示する。この実施形態は、ディスプレイ13として表示能力の低い表示器が用いられる場合にも適用可能である。
【0059】
(3)共通鍵盤表示
発音状態表示画面には、鍵盤をパートごとに表示せず、各パートに共通のものとして表示し、パートごとに発音割当て用ノートや発音ノートNtを簡略化したもので表示するようにしてもよい。例えば、図5(3)に示すように、各パート1〜4に共通な鍵盤画像Kbcと、画面の縦方向に配置された各パート名表記(「パート1」〜「パート4」)に対応して鍵盤画像Kbcの配列方向(画面の横方向)に延びるパートラインL1〜L4とを表示する。そして、共通鍵盤画像Kbcについては、発音割当て用ノートNt1〜Nt4に該当する鍵画像を強調表示し〔当該鍵画像の網目模様は、例えば、オレンジ色を表わす〕、各パートラインL1〜L4上には、発音割当て用ノートに該当する位置に丸マーク(○印)Mkbを表示するが、当該パート1〜4の発音ノートNt1〜Nt4に該当する位置には、サイズの大きい星マーク(★印)Mkaを表示する。つまり、各パート1〜4の発音割当て用ノートを「丸マーク(○印)Mkb+鍵画像の強調表示」による第1態様で表示し、各パート1〜4の発音ノートNt1〜Nt4を「星マーク(★印)Mka+鍵画像の強調表示」による第2態様で表示する。
【0060】
ここで、丸マーク(○印)Mkbは表示しなくてもよい。この場合は、入力される発音割当て用ノートが、鍵画像Kbc(Nt1〜Nt4対応鍵)の強調表示(例えば、オレンジ色表示)による第1態様で表示され、各パート1〜4の発音ノートNt1〜Nt4が、強調表示された鍵画像に対応する位置に置かれた星マーク(★印)Mkaによる第2態様で表示される。つまり、入力が受け付けられた複数の割当用ノートの音高を第1態様(例えば、オレンジ色の鍵画像)で表示し、複数パートの夫々において発音すべきと選択された音高Ntを各パートに対応して第2態様(例えば、オレンジ色鍵画像に対応する位置にある各パートの星マーク)で表示することにより、入力ノートのうち各パートがどの音高を発音すべきとして選択したかを容易に把握することができる。
【0061】
以上説明したように、この電子楽器EMは発音割当て表示装置として機能し、割当て制御部ACでは、複数の発音割当て用ノート(Nk1〜Nk4:図3/Nki,Na1〜Na3:図4)の入力を受け付け、「アサインタイプ」と呼ばれる所定の音高決定ルールに従って、これら発音割当て用ノート(Nk1〜Nk4/Nki,Na1〜Na3)の音高から、複数のパート1〜4の夫々において発音すべき音高Ntを選択する。これに対して、表示部6−13では、複数のパート1〜4における発音状態を画面上に表示し、発音すべきとして選択された音高のノートNtの各パート1〜4における表示態様を、入力を受け付けた他のノート或いは全ノートの表示態様とは異ならせる。つまり、複数のパート1〜4の夫々に対応して、入力を受け付けた複数の発音割当て用ノート(Nk1〜Nk4/Nki,Na1〜Na3)のうち、各パート1〜4で発音されないノートについては、所定の表示態様〔例えば、グレーのキー画像(斜線模様:図3及び図4)〕で表示し、各パート1〜4で発音すべきとして選択された音高のノートNtについては、別の表示態様〔例えば、オレンジ色のキー画像(網目模様:図3及び図4)〕で表示するか、或いは、入力を受け付けた複数の発音割当て用ノートを所定の表示態様〔例えば、オレンジ色のキー画像(網目模様):図5(3)で丸マークを表示しない場合〕で表示し、複数のパート1〜4の夫々で発音すべきとして選択された音高のノートNtについては、各パート1〜4に対応して別の表示態様〔例えば、オレンジ色のキー画像(網目模様)に対応する位置に置かれた星マーク:図5(3)で丸マークを表示しない場合)〕で表示する。
【0062】
このように、複数の入力ノートに対して複数のパートの発音に分散させる場合、発音されない入力ノート(音高)と発音される入力ノート(音高)Ntとをパートごとに異なる表示態様とするか、或いは、入力される全てのノート(音高)とパートごとに発音される入力ノート(音高)Ntとを異なる表示態様とするように構成することによって、どのノートを割当て対象として受け付けてどの音高で発音しているか、各パートの発音状態を視覚的に簡単に確認することができる。
【0063】
〔種々のアサインタイプ〕
この電子楽器EMでは、「アサインタイプ」と呼ばれる割当てルールがテーブル形式で記憶装置4に記憶されており、発音割当て機能により、複数の入力ノートに複数パートを割り当てる際、ユーザ操作により選択された任意のアサインタイプを適用することができる。図6は、この発明の一実施例によるアサインタイプの例を示す。
【0064】
(1)アサインタイプ1
アサインタイプ1のテーブルには、各アサイナAS1〜AS4に対応するパート1〜4ごとに、独自の音色が設定されており、図6(1)に示すように、「対象ノート」、「優先方式」及び「発音数」が割当て基準として規定されている。「対象ノート」は、各アサイナASによって、当該アサイナASに対応するパートの割当て対象となるノートの音高範囲を規定しており、「対象ノート」の規定に従って、全発音割当て用ノートのうち当該パートを割り当てるノートを選択する。「対象ノート」は、例えば、「すべて」、「(すべての発音割当て用ノートから)最高音を除く」、「低音側から2音まで(以内)」などである。
【0065】
「優先方式」は、各パートの「対象ノート」(音高範囲)の中から、実際に発音させるノート(音高)Ntを決定するための優先順位を規定しており、「発音数」は、当該アサイナASを介して同時に発音可能なノート数を規定する。従って、各パート1〜4では、「優先方式」の規定に従って、「発音数」で規定される所定数の発音ノート(音高)Ntが選択される。例えば、「優先方式」が「高音優先」に設定されている場合は、「対象ノート」の高音側から「発音数」分の音高が選択され、「低音優先」に設定されている場合は、「対象ノート」の低音側から「発音数」分の音高が選択される。また、「後着優先」に設定されている場合は、「対象ノート」の中でノートオンタイミングが遅い音高から「発音数」分選択する。「先着優先」となっている場合は、「対象ノート」の中でノートオンタイミングが早い音高から「発音数」分選択する。
【0066】
(2)アサインタイプ2
アサインタイプ2のテーブルには、各アサイナAS1〜AS4に対応するパート1〜4ごとに、独自の音色が設定されており、図6(2)に示すように、「対象ノート1」、「対象ノート2」、「優先方式」及び「発音数」が割当て基準として規定されている。アサインタイプ1とアサインタイプ2では、発音割当て用ノートから各パートの発音ノートNtの音高範囲を抽出するために、アサインタイプ1が「対象ノート」という1段階の音高フィルタをかけるのに対して、アサインタイプ2では、「対象ノート1」と「対象ノート2」の2段階で音高フィルタをかけるところだけが相違する。例えば、「対象ノート1」は、「すべて」、「(すべての発音割当て用ノートから)最高音を除く」、「(すべての発音割当て用ノートから)最低音を除く」などである。また、「対象ノート2」は、「高音側から2音」、「低音側から2音」などであり、設定なし(「−」)の場合もある。
【0067】
アサインタイプ1,2を適用してパート1〜4を割り当てる場合、次のような手順で各パートの発音音高が決定される:
(a)抽出処理:発音割当て用ノートから、各パート1〜4の「対象ノート」又は「対象ノート1」及び「対象ノート2」の規定に従って音高によるフィルタをかけることで、パート1〜4ごとに特定の音高順位のノートを抽出もしくは削除する。
(b)(a)で抽出されたノート群に対し、「優先方式」の規定,すなわち、音高順に基づく「高音優先/低音優先」、または、ノートオンタイミング順に基づく「後着優先/先着優先」の何れかに従って、「発音数」が示す数分のノートを選択し、各パートで発音させる発音ノートNt1〜Nt4を決定する。
【0068】
アサインタイプ1,2では、図6(1),(2)のように「発音数」=1の場合、すべてのパート1〜4が、常に1音以下しか発音しない「モノ発音」となるが、2音以上の発音が可能な「ポリ発音」を行うパートがあってもよく、「発音数」=2以上が設定されるパートはポリ発音パートとなる。
【0069】
(3)アサインタイプ3
アサインタイプ3のテーブルには、各アサイナAS1〜AS4に対応するパート1〜4ごとに、独自の音色が設定されており、図6(3)に示すように、「ノート数1」〜「ノート数4」が示す発音割当て用ノートの個数に対して、選択すべきノート音高が割当て基準として規定されている。アサインタイプ1,2を適用してパート1〜4を割り当てる場合、次の手順で各パートの発音音高が決定される:
(a)発音割当て用ノートが決定されると、発音割当て用ノートの個数を確認し、確認した個数を「ノート数」に決定する。
(b)(a)で決定された「ノート数」に該当する「ノート数1」〜「ノート数4」の何れかに対する割当て基準に基づき、各パート1〜4をどの音高で発音するかを決定する。
【0070】
なお、図6(3)のテーブルでは、「ノート4」までしか定義されていないが、発音割当て用ノートが5個以上の場合について規定しておいてもよい。或いは、発音割当て用ノート数が5を超えたときには、所定の優先方式に基づき(例えば、後着優先で)4音を選択した上で、図6(3)のテーブルを適用してもよい。
【0071】
〔発音割当て表示処理の動作例〕
図7図10は、この発明の一実施例による発音割当て表示処理の動作を示すフローチャートであり、図7のフローチャートはこの発音割当て表示処理の全体的且つ基本的な動作を示し、図8図10のフローチャートは、それぞれ、図7の発音割当て表示処理中の発音割当て用ノート決定処理、発音割当て処理及び表示制御処理の具体的な動作を示す。
【0072】
図7の発音割当て表示処理は、押鍵状態が変わった際に起動する。この発音割当て表示処理がスタートすると、電子楽器EMのCPU1は、まず、ステップS1で、鍵盤11における押鍵状態の変化を検出し、続くステップS2で、図8に示される発音割当て用ノート決定処理を実行して発音割当て用ノートを決定する。次いで、ステップS3に進んで、図9に示される発音割当て処理を実行して、各パートで発音される発音ノートNtを決定し、さらに、次のステップS4で、図10に示される表示制御処理を実行して、発音割当て処理の結果に従って、各パートの発音状態をディスプレイ13に表示し、ステップS5に進む。ステップS5では、楽音発生部7により、発音割当て処理で決定された発音ノートNtに基づく楽音信号を生成し、楽音出力部SDを通じて発音する。また、ステップS1で、発音ノートNtに対応する押鍵ノートについてノートオフが検出された場合は、関連するノートを消滅させて消音を行う。そして、ステップS5の発音/消音処理を終えると、今回の発音割当て表示処理を終了し、次の押鍵状態変化を待機する。
【0073】
<発音割当て用ノート決定処理>
図8の発音割当て用ノート決定処理がスタートすると、電子楽器EMのCPU1は、まず、ステップS21で、ステップS1で検出された押鍵状態の変化がコード鍵域Kcにおける押鍵を示しているか否かを判定する。ここで、コード鍵域Kcにおける押鍵はない(鍵域分割が行われていない、または、押鍵は演奏鍵域Kiのみで押鍵されている)と判定したときは(S21=NO)、ステップS22に進み、現在押鍵されている全てのノートNk(例えば、図3最上部のNk1〜Nk4)を発音割当て用ノートとしてセットし、今回の発音割当て用ノート決定処理を終了し、発音割当て表示処理(図7)のステップS3にリターンする〔=発音割当て処理(図9)のステップS31に進む〕。
【0074】
一方、ステップS21で、コード鍵域Kcにおける押鍵がある(鍵域分割が行われている)と判定したときは(S21=YES)、ステップS23に進んで、コード鍵域Kcの押鍵ノートNkc(例えば、図4最上部のNkc1〜Nkc3)からコードを判定し、ステップS24に進む。ステップS24では、ステップS1で検出された押鍵状態に演奏鍵域Kiにおける押鍵があるか否かを判定し、演奏鍵域Kiにおける押鍵はないと判定したときは(S24=NO)、発音割当て表示処理(図7)のステップS3にリターンする。
【0075】
これに対し、ステップS24で、演奏鍵域Kiにおける押鍵があると判定したときは(S24=YES)、ステップS25に進んで、演奏鍵域Kiの押鍵ノートNkiに対する付加ノートNa(例えば、図4のNa1〜Na3)を決定し、ステップS26に進む。ステップS26では、演奏鍵域Kiの押鍵ノートNkiと付加ノートNaとを発音割当て用ノートとしてセットし、発音割当て表示処理(図7)のステップS3にリターンする。
【0076】
<発音割当て処理>
図9の発音割当て処理がスタートすると、電子楽器EMのCPU1は、まず、ステップS31で、ステップS22,S26でセットされた発音割当て用ノートを取得し、次のステップS32で、アサイナ番号N(図2ではN=1〜n、図3以下ではN=1〜4。Nはパート番号でもある)の値を「1」にセットして(N=1)、ステップS33に進む。
【0077】
ステップS33では、アサイナNを選択し、次のステップS34で、当該アサイナNの設定に基づいて、対応するパートNの発音ノートNtの音高を決定して、ステップS35に進んで、現在のアサイナ番号Nが最後のアサイナを示しているか否かを判定する。ここで、現在のアサイナ番号Nが最後のアサイナ番号(図2では「n」、図3以下では「4」)に達していないときは(S35=NO)、ステップS36で、現在セットされているアサイナ番号Nを「+1」して(N=N+1)ステップS33に戻る。
【0078】
そして、アサイナ番号Nが最後のアサイナ番号に達していない間は(S35=NO)、ステップS33〜S36の処理を繰り返し、最後のアサイナ番号に到達すると(S35=YES)、今回の発音割当て処理を終了し、発音割当て表示処理(図7)のステップS4にリターンする〔=表示制御処理(図10)のステップS41に進む〕。つまり、図9の発音割り当て処理により、各パートの発音ノートNtが決定され、すべてのパートについて発音ノートNtが決定すると、次の処理へと進む。
【0079】
<表示制御処理>
図10の表示制御処理がスタートすると、電子楽器EMのCPU1は、まず、ステップS41で、表示部6−13を介して、ディスプレイ13に表示されている発音状態表示画面において発音割当て用ノートを第1態様で表示させる。次いで、ステップS42で、パート番号N(図2ではN=1〜n、図3以下ではN=1〜4。Nはアサイナ番号でもある)の値を「1」にセットして(N=1)、ステップS43に進む。
【0080】
ステップS43では、パートNの発音ノートNtの音高を取得し、次のステップS44で、発音状態表示画面13において発音ノートNtを第2態様で表示させる。この場合、パートごとに、発音される入力ノートNtの音高と発音されない入力ノートの音高とを異なる表示態様とする場合は、ステップS41で第1態様で表示されていたパートNの発音割当て用ノートのうち、発音ノートNtについては、第1態様から第2態様に変更して表示される。例えば、図3及び図4の表示形態が採用される場合は、ステップS41で、発音割当て用ノートに対応する鍵画像をグレーで塗り潰し(第1態様)、ステップS44で、発音ノートNtに対応する鍵画像をグレーからオレンジ色に塗り換える(第2態様)。
【0081】
次いで、現在のパート番号Nが最後のパートを示しているか否かを判定し、最後のパート番号(図2では「n」、図3以下では「4」)に達していないときは(S45=NO)、ステップS46で、現在セットされているパート番号Nを「+1」して(N=N+1)ステップS43に戻る。そして、パート番号Nが最後のパート番号に達していない間は(S45=NO)、ステップS43〜S46の処理を繰り返し、最後のパート番号に到達すると(S45=YES)、今回の表示制御処理を終了し、発音割当て表示処理(図7)のステップS5にリターンする。
【0082】
なお、図10の表示制御処理例では、例えば、図3及び図4のように、パートごとに、発音される入力ノートNtの音高と発音されない入力ノートの音高とを異なる表示態様とする場合、発音割当て用ノートを第1態様で表示する処理(S41)を行った後に、各パートの発音ノートNtを第2態様に上書きする処理(S44)を行うようにしたが、処理の順序はこれに限らない。パートごとに発音割当て用ノートの音高を「発音音高でないもの」と「発音音高」とに区別する処理を行った後で、発音音高でないノートを第1態様で表示し、発音音高のノートNtを第2態様で表示するように構成してもよい。
【0083】
〔種々の実施態様〕
以上、図面を参照しつつ、この発明に関する発音状態表示システムの実施例を説明したが、この発明は、これら実施例の構成に限らず種々の変更が可能である。例えば、ユーザの演奏操作によるノートオンの受付には、鍵盤ではなく、弦楽器やパッド、平面操作子など、どのような形態の演奏操作子を用いてもよい。
【0084】
発音指示については、外部装置から通信I/F(8)経由で受け付けてもよいし、自動演奏装置で再生されたノートを受け付けてもよい。
【0085】
また、自動生成される複数の付加ノートは、実施例のように、コード鍵域の押鍵ノートに従って付加されるハーモニー音に限らない。例えば、鍵盤で適当な複数音を弾くとコードに応じて適切な音高に変換されるような場合や、1音を弾いたときに自動で和音フレーズが生成されるような場合にも適応できる。
【符号の説明】
【0086】
EM 電子楽器(発音状態表示装置、発音割当て装置)、
13 ディスプレイ又はその画面、
AN 付加音生成部、
AC 割当て制御部、
AS:AS1,AS2,…,ASi,…,ASn アサイナ、
SD 楽音出力部(DAC及びサウンドシステム)、
TC1〜TCn パート1〜nに対応する楽音信号生成系列(発音系列)、
Nk:Nk1,Nk2,… 通常の押鍵ノート[情報]、
Nki,Nkc 演奏鍵域の押鍵ノート[情報]及びコード鍵域の押鍵ノート[情報]、
Na:Na1,Na2,… 付加ノート[情報]、
Nt:Nt1,Nt2,… 発音ノート[情報]、
Kb1〜Kb4,Kbc パート鍵盤画像及び共通鍵盤画像、
Sa アサインタイプ設定エリア、
Ba1〜Ba3 アサインタイプ指定ボタン、
Sh ハーモニー設定エリア、
Bhn,Bhf ハーモニー機能オンボタン及びハーモニー機能オフボタン、
Bh1,Bh2 ハーモニータイプ指定ボタン、
SP,Ki,Kc スプリット表記、演奏鍵域及びコード鍵域、
Un アンダーライン(下線)、
L1〜L4 パートライン、
Mka,Mkb 星マーク(★印)及び丸マーク(○印)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10