特許第6263979号(P6263979)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6263979
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】地山補強材および地山補強構造
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/04 20060101AFI20180115BHJP
【FI】
   E21D9/04 F
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-238242(P2013-238242)
(22)【出願日】2013年11月18日
(65)【公開番号】特開2015-98685(P2015-98685A)
(43)【公開日】2015年5月28日
【審査請求日】2016年10月20日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行日:平成25年8月1日 刊行物:土木学会第68回年次学術講演会 講演要旨集819頁〜820頁 発行者:公益社団法人 土木学会(東京都新宿区四谷1丁目外濠公園内)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行日:平成25年8月19日 刊行物:第6回地殻応力国際シンポジウム(In−situ Rock Stress)講演要旨集856頁〜862頁 発行者:岩の力学連合会(東京都文京区千石4−38−2 公益社団法人地盤工学会内)
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】木梨 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 哲
(72)【発明者】
【氏名】磐田 吾郎
【審査官】 亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−273251(JP,A)
【文献】 特開2011−007000(JP,A)
【文献】 特開2002−332611(JP,A)
【文献】 特開平07−331748(JP,A)
【文献】 特開2011−080238(JP,A)
【文献】 特開2009−263882(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00726383(EP,A1)
【文献】 特開2013−083047(JP,A)
【文献】 特開2010−077605(JP,A)
【文献】 特開2010−013933(JP,A)
【文献】 特開2008−255614(JP,A)
【文献】 特開2008−050779(JP,A)
【文献】 特開2002−294694(JP,A)
【文献】 特開平11−173059(JP,A)
【文献】 特開2000−045274(JP,A)
【文献】 特開2010−255237(JP,A)
【文献】 特開2009−197573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/04−9/12
E02D 5/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル地山に打設される鋼管と、当該鋼管内に挿入される棒状のGFRP材と、前記鋼管の内空において鋼管内壁と前記GFRP材との間に充填される充填材とからなり、
前記鋼管の内壁沿いに周方向に延びる凸部が設けられ、該凸部は周方向に不連続となっており、
前記凸部が、前記鋼管の軸方向に複数列備わっており、隣接する一組の前記凸部の間で、各々の不連続部の位置が、鋼管軸方向において一部のみ一致したものであることを特徴とする地山補強材。
【請求項2】
請求項1に記載の地山補強材をトンネル地山に施工してなることを特徴とする地山補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地山補強材および地山補強構造に関するものであり、具体的には、地山の掘削面に生じる軸力に効果的に抵抗し、トンネル地山の安定化を図る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
未固結の土砂地山や大土被りの押出し性地山におけるトンネル掘削では、鏡面の押出しや切羽の不安定化対策として、鏡ボルトの施工が行われる。この鏡ボルトは、トンネル切羽面から前方地山に向けて打設される鋼管やGFRP管と、その内外に注入されるモルタル等の充填材から構成され、充填材を介して地山と一体となった鋼管等が鏡面押し出し等に伴う引張に抵抗し、崩壊等を防止する。
【0003】
こうした鏡面の補強構造に関しては、以下のような技術が提案されている。すなわち、引っ張り力によってねじ継手部から破断せず、地山を安定した状態に保ち続けることを目的とした、鋼管からなる一般部と、該一般部の両端に設けられたねじ継手部とを備えた地山補強用鋼管であって、上述のねじ継手部を、その引張強度が一般部の引張強度と同程度になるように構成した地山補強用鋼管(特許文献1)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−7000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特に膨張性の強い地山や土被り厚の大きなトンネルにおいては、鏡面の押し出し力が非常に大きいため、鏡ボルトの備える引張耐力を越えた過大な軸力が作用する。自身の引張耐力を越える過大な軸力を受けた各鏡ボルトは、継手部など所定箇所において相次いで破断することになる。こうした鏡ボルトの破断は、鏡面における補強機能喪失につながり、鏡面での押し出し増大、崩落の発生等の問題を生じることになる。
【0006】
そこで本発明は、トンネル施工時に生じる軸力に効果的に抵抗し、トンネル地山の安定化を図る技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する地山補強材は、トンネル地山に打設される鋼管と、当該鋼管内に挿入される棒状のGFRP材と、前記鋼管の内空において鋼管内壁と前記GFRP材との間に充填される充填材とからなり、前記鋼管の内壁沿いに周方向に延びる凸部が設けられ、該凸部は周方向に不連続となっており、前記凸部が、前記鋼管の軸方向に複数列備わっており、隣接する一組の前記凸部の間で、各々の不連続部の位置が、鋼管軸方向において一部のみ一致したものであることを特徴とする。
【0008】
これによれば、膨張性地山での鏡面に生じる、強い押し出しに伴う軸力に対し、充填材を介して鋼管と一体となったGFRP材が効果的に抵抗して、地山補強材全体の引張軸耐力の向上が図られる。そのため、土被り厚が大きいトンネル等においても、鋼管破断に伴う鏡面の押し出し増大や崩落の発生する事態を回避可能となる。したがって、地山の掘削面に生じる軸力に効果的に抵抗し、確実なトンネル地山の安定化を図ることが可能となる。
【0010】
また、前記鋼管の内壁沿いに周方向に延びる凸部が設けられ、該凸部は周方向に不連続となっていることにより、鋼管打設時に鋼管内を移動する排泥が、上述した凸部の不連続部分を通過可能であるため、特段阻害されることなく効率良く管軸方向に流動可能であり、全体の施工効率を良好に保つことが出来ると共に、鋼管内壁の凸部によって、GFRP材が充填材を介して鋼管に確実に付着し、トンネル地山から鋼管に作用する引張軸力を効果的にGFRP材に伝達することが可能になる。従って、膨張性地山での鏡面に生じる、強い押し出しに伴う軸力に対し、充填材を介してより確実に鋼管と一体となったGFRP材が更に効果的に抵抗可能となる。
【0012】
さらに、上述の地山補強材が、前記凸部が、前記鋼管の軸方向に複数列備わっており、隣接する一組の前記凸部の間で、各々の不連続部の位置が、鋼管軸方向において一部のみ一致していることにより、鋼管内壁に複数列備わる凸部によって、充填材を介したGFRP材と鋼管との付着が更に確実なものとなり、トンネル地山から鋼管に作用する引張軸力を一層効果的にGFRP材に伝達可能になると共に、各凸部の間で不連続部分が少なくとも一部は重なるよう構成され、上述の鋼管内での排泥の流動を妨げないため、全体の施工効率を良好に保つことが出来る。
【0013】
また、本発明の地山補強構造は、上記地山補強材をトンネル地山に施工してなることを特徴とする。
【0014】
これによれば、膨張性地山での鏡面に生じる、強い押し出しに伴う軸力に対し、充填材を介して鋼管と一体となったGFRP材が効果的に抵抗して、地山補強材全体の引張軸耐力の向上が図られた構造を形成する。そのため、土被り厚が大きいトンネル等においても、鋼管破断に伴う鏡面の押し出し増大や崩落の発生する事態を回避可能となる。したがって、地山の掘削面に生じる軸力に効果的に抵抗し、確実なトンネル地山の安定化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、地山の掘削面に生じる軸力に効果的に抵抗し、確実なトンネル地山の安定化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態における地山補強材の構造例を示す斜視図である。
図2】本実施形態における地山補強材の施工形態を示す図である。
図3】本実施形態における地山補強材の構造例を示す側断面図である。
図4】本実施形態の地山補強材における断面例1を示す図である。
図5】本実施形態の地山補強材における断面例2を示す図である。
図6】他の地山補強材の断面例1を示す図である。
図7】他の地山補強材の断面例2を示す図である。
図8】本実施形態における地山補強材の使用材料諸元を示す図である。
図9】本実施形態における地山補強材の供試体種類を示す図である。
図10】本実施形態における引張試験結果を示す図である。
図11】本実施形態における引張試験結果のグラフを示す図である。
図12】本実施形態における継手破断時荷重配分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は本実施形態における地山補強材10の構造例を示す斜視図であり、図2は本実施形態における地山補強材の施工形態を示す図である。本実施形態の地山補強材10は、トンネル工事での施工対象が膨張性地山である場合など、鏡面200に強い押し出しが発生する施工状況に際し、上述の押し出しに伴う軸力に確実に抵抗し、地山安定化を図るものである。
【0018】
地山補強材10は、図1にて例示するように、トンネル地山1に打設される鋼管2と、当該鋼管2内に挿入されるGFRP(Glass fiber reinforced plastics)材3と、鋼管2の内空5において鋼管内壁6とGFRP材3との間に充填されるモルタル等の充填材7とからなる。
【0019】
このうち鋼管2は、例えば12〜13m程度の長尺鋼管であり、図2にて示すように、トンネル坑内45に配置した油圧ジャンボ50における、ブーム51のドリフタ52にセットされ、鏡面200からトンネル掘進方向のトンネル地山1に打設される。この場合、鋼管2は、先端部に備わる掘削ビット20がドリフタ52で駆動されることでトンネル地山1に対する削孔動作を行い、鏡面200から徐々に掘進し、トンネル地山1に打設されることとなる。打設された鋼管2とその周囲のトンネル地山1との間には、鋼管2の内空5から所定孔を介してグラウト材30が注入され、トンネル地山1と鋼管2とは一体化される。
【0020】
また、地山補強材10を構成する上述のGFRP材3は、鋼管2の内空5に挿入可能な幅、厚みを有する棒状の部材であり、一例としては、図1にて示すように平板状に成形された部材を採用できる。本実施形態の地山補強材10の場合、こうした平板状のGFRP材3を、スペーサー4を介して3つ組み合わせ、一体のGFRP材3として鋼管2の内空5に挿入した構造となっている。
【0021】
GFRP材3は、ガラス繊維強化プラスチック材であり、母材のプラスチックにガラス繊維を混入し、主に引張強度を高めた複合材料である。このGFRP材3は、地山補強材10に必要となる引張耐力、すなわちトンネル地山1から鏡面200に作用する押し出しに伴う軸力に抵抗可能な強度を備えるよう、予め、部材やサイズの選定を行うものとする。
【0022】
なお、上述のスペーサー4は、GFRP材3の少なくとも両端において、各GFRP材3の側面と嵌合し、各GFRP材3の位置関係を固定するように構成されている。また、スペーサー4は、その断面中心において、充填材7の注入管8を挿通させる挿通孔11を有している。注入管8は、鋼管2の内空5に対するGFRP材3の挿入後、適宜な圧送装置から供給されたモルタルなどの充填材7を、鋼管2の内空5に導く管路となる。本実施形態における注入管8は、長さの異なる複数の補助注入管9を内包しているものとする。各補助注入管9の長さは、図3にて例示するように、鋼管2の内空5にて偏り無く充填材7が注入されるよう、鏡面200から鋼管2の先端に向けて一定間隔毎の所定位置に至る各長さに対応したものとなる。
【0023】
こうして鏡面200からトンネル地山1に施工された地山補強材10は、押し出しに伴う引張軸力に抵抗する地山補強構造100を形成する。図2の例では、トンネル掘進方向に向けて打設する鏡ボルトとしての地山補強材10を示しているが、この他にも、レッグパイルやサイドパイルのような脚部補強パイル、或いはロックボルトに本実施形態の地山補強材10を適用するとしてもよい。
【0024】
続いて、上述した鋼管2における内空5の内壁6の特徴的な構造について説明する。図3は本実施形態における地山補強材10の構造例を示す側断面図であり、図4は本実施形態の地山補強材10における断面例1を示す図、図5は本実施形態の地山補強材10における断面例2を示す図である。鏡面200からトンネル地山1にかけて構築すべき地山補強構造100は、上述した軸力に抗する支点を確保するため、鏡面200からトンネル掘進方向に十分離れ、トンネル地山1において押し出し作用が所定レベル以下と推定される適宜な位置に、その先端部位110を配置し定着させる必要がある。
【0025】
このため鋼管2の打設に際しては、その先端が上述の先端部位110の位置に達するまで、複数の鋼管2を互いの継手構造17により継続的に連結させることになる。この各鋼管2における継手構造17は、鋼管端部に備わるネジ継手である。
【0026】
また、本実施形態における鋼管2の内壁6には、鋼管端部から所定距離だけ離間した位置に、周方向に延びる凸部15が備わっている。凸部15は、図4、5にも示すように、内壁6の周上において不連続部16を挟んで円周状に配置されている。なお、図4、5においては、この凸部15の構造を明示するため、鋼管2の内空5について、継手構造17から鏡面200側の端部18に向けた視点で観察した場合の内壁6を、遠近感を加味して示している。
【0027】
トンネル地山1に対する鋼管2の打設時、鋼管先端の掘削ビット20で生じた掘削土の後方排出のため、鋼管2の内空5では排泥が効率良く行われる必要がある。この排泥は鋼管2の内壁6の滑らかさに応じて効率が上下するため、内壁6表面が滑らかであると鋼管打設工程に関して好適であるが、一方で、鋼管2とGFRP材3との一体化を確実なものとするためには、両者間に充填される充填材7が内壁6に対し確実に付着する必要もある。そこで、本実施形態における鋼管2の内壁6には、上述した凸部15を不連続部16を挟んで配置し、内空5における排泥が不連続部16を通して鋼管2の軸方向に流動可能な構成としている。従って、鋼管2の内空5において、排泥は特段阻害されることなく効率良く流動可能であり、全体の施工効率を良好に保つことが出来る。他方、内壁6の凸部15によって、GFRP材3が充填材7を介して鋼管2に確実に付着し、トンネル地山1から鋼管2に作用する引張軸力を効果的にGFRP材3に伝達することが可能になる。GFRP材3は十分な引張耐力を発揮するため、鋼管2から伝達された軸力に対して確実に抵抗し、地山補強材10として必要な引張耐力が確保されることとなる。
【0028】
また、上述した凸部15は、図4のように一列のみの場合と、図5のように、鋼管2の軸方向に複数列備わる場合のいずれも採用できる。このうち凸部15が複数列備わる場合、凸部15の各列間で、各々の不連続部16の位置が、鋼管軸方向において少なくとも一部一致する配置となっている。このような配置であれば、複数列となっている凸部15により、一列のみの凸部15の場合に比べて、GFRP材3が充填材7を介して鋼管2に更に確実に付着することになる。一方、複数列の凸部15が配置された構造であっても、不連続部16が一部連通する配置となっており、排泥は特段阻害されることなく効率良く流動可能である。よって全体の施工効率を良好に保つことが出来る。
【0029】
なお、本実施形態では、凸部15が、継手構造17すなわち鋼管2の端部から所定距離以内の内壁6に位置する例を示したが、製造時点から鋼管2に凸部15を設ける仕様となっている場合、そうした鋼管端部からの距離に無関係に凸部15を配置する構成としてもよい。
【0030】
続いて、本実施形態における地山補強材10について、上述のGFRP材3による強度向上効果を把握するために行った引張試験について説明する。ここでは、供試体として長さ1mの鋼管を採用し、各鋼管同士を溶接・ネジ継手で繋ぎ、その内空にGFRP材(幅40mm×厚さ7mm×長さ2.0m:3本)を挿入後、充填材たるモルタル(W/C=61.1%)を充填し、24時間後に引張試験を行った。なお、引張試験に際しては供試体両端の鋼管のみを油圧ジャッキに固定し、引張荷重を与えた。
【0031】
また、鋼管内壁に設ける凸部については、溶接突起全周1列(図6参照)、溶接突起半周(3分割)×1列および2列(上述した図4、5)、の構成を対象とすると共に、削り加工により鋼管内壁に凹部を設けた構成(図7参照)についても検討を行った。なお、供試体としての鋼管、GFRP材、充填材の各材料諸元を図8に、供試体の種類一覧を図9に示す(図中ではGFRP材を「フラットバー」と記載している)。
【0032】
図10は本実施形態における引張試験結果を示す図であり、図11は本実施形態における引張試験結果のグラフ(荷重変位曲線)を示す図である。上述の供試体に対する引張試験結果は、いずれの供試体も、継手破断後、GFRP材の破断もしくはモルタルの引抜けにより破壊に至ったことを示している。なお図10、11における変位は供試体全体(L=2m)の引張変位であり、図11におけるグラフではGFRP材のみの場合に推定される荷重変位も示している。
【0033】
また、継手破断時の鋼管とGFRP材の荷重配分について算出し、図12に示す算出結果を得た。荷重配分の算出に際しては、GFRP材のひずみから負担荷重を逆算し、総荷重からそれを除すことで鋼管の負担荷重を算出することとした。
【0034】
以上の引張試験の結果によれば、充填モルタルと鋼管の付着強度は供試体(1)の試験結果より、150kN/m程度と推定される。また、継手破断強度は、溶接継手で500kN〜540kN程度、ネジ継手で460kN〜520kN程度であった。また、鋼管の負担荷重によれば、溶接継手単体の破断は365kN〜400kN、ネジ継手単体の破断が300kN程度で発生したことが分かる。また、GFRP材の負担荷重は溶接継手で100〜170kN、ネジ継手で190〜230kNであった。
【0035】
また、GFRP材による補強効果は、鋼管内壁における凹凸の別で踏まえると、(削り加工による凹部)<(溶接突起半周1列)<(溶接突起全周1列)<(溶接突起全周2列)の順で補強効果が大きくなることが判明し、本実施形態における凸部による効果の有効性が確認できた。また、GFRP材により、溶接継手・ネジ継手部ともに強度500kN以上の耐力が得られ、継手破断後は、GFRP材が耐力を発揮し、弾塑性的に耐力を発揮することが確認できた。
【0036】
本実施形態によれば、地山の掘削面に生じる軸力に効果的に抵抗し、トンネル地山の安定化を図ることが可能となる。
【0037】
以上、本発明の実施の形態について、その実施の形態に基づき具体的に説明したが、これに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 トンネル地山
2 鋼管
3 GFRP材
4 スペーサー
5 鋼管内空
6 鋼管内壁
7 充填材
8 注入管
9 補助注入管
10 地山補強材
11 挿通孔
15 凸部
16 不連続部
17 継手構造
18 鋼管端部
20 掘削ビット
30 グラウト材
45 トンネル坑内
50 油圧ジャンボ
51 ブーム
52 ドリフタ
100 地山補強構造
110 先端部位
200 鏡面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12