(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来から、データを記録している途中で記憶媒体のデータ量が記憶媒体の容量限界に達し、空きの容量が無くなった場合の処理が提案されている。
【0003】
特許文献1には、録音済曲の録音日付情報をディスクの所定箇所に記録しておき、所望曲の録音中に未録音部分がなくなったときに、録音日付の古い録音済曲に所望曲を上書きすることで録音を継続することが記載されている。
【0004】
特許文献2には、音声データの記録中にメモリカードに未記憶領域がなくなった場合に、ハードディスクに切り替えて音声データの記録を継続し、録音終了後に、メモリカードとハードディスクに分割されて記録された音声データを集約してファイルを結合することが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、消去が禁止されていない録音済曲に対しては、古い録音済曲を無差別に消去してしまうため、プロテクトし忘れた録音済曲を不本意に消去してしまうおそれがある。
【0007】
また、特許文献2に記載された技術では、記録結果が複数の記憶媒体に分かれてしまう問題があり、メモリカード以外にもハードディスク等の別の記憶媒体の存在を前提とする問題もある。
【0008】
本発明の目的は、複数の記憶媒体の存在を前提とすることなく、データ記録中に記憶媒体のデータ量が記憶媒体の容量限界に達した場合においても、当該データの記録を継続することができる装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
記憶媒体の空き容量が閾値未満の場合に1回の記録セッションで記録すべきデータを複数の小ファイルに分割する分割手段と、前記小ファイルを記憶媒体に順次記録するとともに、前記記憶媒体のデータ量が前記記憶媒体の容量限界に達した場合に、前記記憶媒体に記録された、前記記録セッションを構成する小ファイルのうち最も古い小ファイルを消去し、消去して得られた空き領域に引き続き前記小ファイルを記録していく記録手段と、前記記憶媒体に記録された、前記記録セッションを構成する全ての小ファイルを結合して前記記憶媒体に記録する結合手段とを備え
、前記記録手段は、前記小ファイルのファイル名として、前記記録セッションを特定する共通識別子と、録音日時を特定する識別子を付加して前記記憶媒体に記録し、前記結合手段は、前記小ファイルのファイル名に含まれる前記共通識別子及び前記録音日時を特定する識別子を用いて前記小ファイルを時系列順に結合し、結合して得られた単一ファイルに単一ファイル名を再付加して前記記憶媒体に記録することを特徴とする。
【0011】
本発明において、例えば前記記録セッションを録音セッションとし、前記記録すべきデータを楽音データとして楽音データを記憶媒体に録音することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、データ記録中に記憶媒体のデータ量が記憶媒体の容量限界に達した場合でも、当該データの記録を中断することなく同一の記憶媒体への記録を継続することができる。本発明によれば、記憶媒体の容量制限に達する場合に備えて予め複数の記憶媒体を用意しておく必要もない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について、データ記録装置として楽音データを記録する録音装置を例にとり説明する。
【0015】
図1に、本実施形態における録音装置(ポータブルデジタルレコーダ)10の構成ブロック図を示す。録音装置10は、CPU12、プログラムメモリ14、ワーキングメモリ16、アナログデジタルコンバータ(ADC)18、デジタルアナログコンバータ(DAC)20、タッチパネル22、及びメモリコントローラ24を備える。
【0016】
CPU12は、プログラムメモリ14に記憶されたプログラムに従い、各部を制御してアナログ楽音データをデジタルデータに変換してメモリ26に記録する。具体的には、CPU12は、プログラムに従い、楽音データを仮想的な小ファイルに分割してメモリ26に記録する。また、CPU12は、楽音データをメモリ26に記録中にデータ量がメモリ26の容量限界に達したか否かを判定し、達していない場合には楽音データの記録を続行し、達した場合には所定の処理を実行した上で楽音データの記録を続行する。また、CPU12は、楽音データの記録が終了した場合に、仮想的に分割された小ファイルを互いに結合して1つの楽音ファイルとし、メモリ26に記録する。CPU12は、ワーキングメモリ16を用いてこれらの各処理を実行する。
【0017】
ADC18は、マイクや入力端子から入力されたアナログ楽音データをデジタルデータに変換してCPU12に供給する。
【0018】
DAC20は、メモリ26に記憶されたデジタル楽音データをアナログ楽音データに変換してスピーカや出力端子に出力する。
【0019】
タッチパネル22は、ユーザの各種操作を入力してCPU12に供給するとともに、録音装置10の状態を表示する。ユーザの各種操作には、録音操作や再生操作、一時停止操作、停止操作等が含まれる。録音装置10の状態には、録音時間や録音状態が含まれる。なお、タッチパネル22に代えて、各種ボタンやスイッチからなる入力装置と、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示装置を備えてもよい。
【0020】
メモリコントローラ24は、CPU12からの指示に基づき、仮想的に小ファイルに分割された楽音データを順次メモリ26に記録する。また、CPU12からの指示に基づき、メモリ26に記録されている楽音データを読み出してCPU12に供給する。
【0021】
メモリ26は、フラッシュメモリ等の可搬性半導体メモリであり、録音装置10本体のスロットに挿入することでメモリコントローラ24と接続される。なお、本実施形態では、メモリ26は可搬性半導体メモリであって録音装置10本体から着脱自在としているが、録音装置10がメモリ26を内蔵していてもよく、この場合にはメモリ26も録音装置10の構成部材となる。
【0022】
このような構成において、ユーザがタッチパネル22を操作して録音操作を開始すると、CPU12は、入力された楽音データをデジタルデータに変換してメモリ26に記録していくが、録音の途中でメモリ26のデータ量が容量制限に達してしまうと、そのままでは録音を継続することができない。メモリ26のデータ量が容量制限に達すると自動的に録音を停止する構成では、ユーザはメモリ26を入れ替えるなどして当該楽音データを最初から録音しなければならず煩雑である。他方、メモリ26として予め第1のメモリと第2のメモリの複数種類を用意し、第1のメモリのデータ量が容量制限に達した場合に第2のメモリに分割して記録する構成でも、一つの楽音データが異なる2つのメモリに分割記録されるためユーザの使い勝手が低下するとともに、2つのメモリの存在が前提となってしまう。
【0023】
そこで、本実施形態では、楽音データの録音中にメモリ26のデータ量が容量制限に達する場合があることを想定し、予め楽音データを録音する際に、楽音データを仮想的に小ファイルに分割して記録しておき、仮にメモリ26のデータ量が容量制限に達したときには、当該楽音データの小ファイルの中で最も古いファイルを消去することでメモリ26に空き領域を形成し、この空き領域を利用して当該楽音データの録音を続行するものである。
【0024】
図2に、本実施形態の録音処理を示す。
【0025】
ユーザの録音操作に応じて楽音データの録音を開始すると(S101)、CPU12は、楽音データを仮想的に小ファイルに分割してメモリ26に記憶する(S102)。分割して形成される小ファイルのファイルには特に制限はなく、使用するファイルシステムに応じて決定すればよい。例えば、楽音データを16MBで区切って分割する。ここで、「仮想的」とは、一つの楽音データを形式的に複数の小ファイルに分割することを意味する。楽音データを仮想的に小ファイルに分割する際には、本来、1回の録音セッションにおいて録音されるべき楽音データであることを示すために、各小ファイルには、データの連続性を示すファイル名を付加しておく。例えば、楽音データを3つの小ファイルに分割した場合、
ファイル1:Take_001_20131210120000.wav
ファイル2:Take_001_20131210150000.wav
ファイル3:Take_001_20131210180000.wav
とファイル名を付加する。これらのファイル名において、「Take_001」は、今回の録音セッションにより録音しようとする一つの楽音データであることを示す録音セッション識別子(あるいはインデックス)であり、それに続く「20131210120000」等は録音日時識別子(あるいはインデックス)である。ここで、録音セッションとは、録音の開始から当該録音の終了までの1録音期間を意味する。全ての小ファイルに共通の「Take001」がファイル名に含まれていることで、これらの小ファイルが全て同一の楽音データを構成するファイルであることが容易に分かる。また、録音日時がファイル名に含まれていることで、これら小ファイルの時系列順を容易に識別できる。
【0026】
次に、CPU12は、楽音データを仮想的に小ファイルに分割しつつメモリ26に記録する際に、メモリ26のデータ量が容量限界に達したか否かを判定する(S103)。メモリ26のデータ量が未だ容量限界に達していない場合には、メモリ26への記録を繰り返す。他方、メモリ26のデータ量が容量限界に達した場合には、CPU12は、録音を続行するに先立って、今回の録音セッションにおいて、既にメモリ26に記録されている複数の小ファイルのうち、最も古い小ファイルを検索してこれを消去する(S104)。
【0027】
例えば、上記のように既にメモリ26に3つの小ファイルであるファイル1〜3が記録されており、次の小ファイルであるファイル4を記録する際にメモリ26のデータ量が容量限界に達した場合、ファイル1〜3のうち最も古い小ファイルであるファイル1を消去する。各小ファイルのファイル名には録音日時が含まれているため、CPU12は、このファイル名を用いて最も古い小ファイルを特定する。
【0028】
最も古い小ファイルを消去することでメモリ26の容量に空きが生じるので、CPU12は、録音が終了していなければ(S105)、空き領域を用いてさらに楽音データの録音を続行する。録音を続行して再びメモリ26のデータ量が容量限界に達すれば、再び今回の録音セッションにおいて最も古い小ファイルを消去して空き領域を形成し、この空き領域を用いて録音を続行する。このように、メモリ26のデータ量が容量限界に達する毎に、今回の録音セッションにおいて最も古い小ファイルを消去して空き領域を確保し、録音を続行することができるので、メモリ26の容量限界があるにもかかわらず録音を続行することができる、いわばエンドレス録音が実現する。
【0029】
以上のようにして楽音データの録音を続行し、楽音データの全てのデータを録音する、あるいはユーザが自ら録音停止操作を行うと録音が終了し(S105)、CPU12は、メモリ26に記録されている仮想的な小ファイルを互いに結合して一つのファイルを形成し、再びメモリ26に記録する(S106)。すなわち、CPU12は、小ファイルのファイル名に着目して、ファイル名のうち、同一の録音セッション識別子を有する小ファイルを読み出し、ワーキングメモリ16を用いてこれらを時系列順に結合し、単一のファイル名を付加してメモリ26に再び記録する。単一のファイル名は、例えば、
ファイル:Take_001wav
である。なお、小ファイルを結合する際に、常にワーキングメモリ16を用いるのではなく、メモリ26の空き容量を確認し、空き容量がなければワーキングメモリ16を用いて小ファイルを結合し、空き容量があればメモリ26の空き容量を用いて小ファイルを結合してもよい。また、小ファイルの結合は、録音終了に応じて自動的に実行するように設定してもよいし、ユーザの指示に応じて実行するように設定してもよい。
【0030】
図3に、本実施形態の処理を模式的に示す。
【0031】
図3(a)は、ある録音セッションの録音が開始された状況を示す。楽音データは仮想的に小ファイル100に分割されてメモリ26に記録されていく。
【0032】
図3(b)は、録音が実行されている間に、ある時点でメモリ26のデータ量がメモリ26の容量限界に達した状況を示す。CPU12は、メモリ26のデータ量が容量限界に達すると、今回の録音セッションにおいて最も古い小ファイルを消去してその分だけの空き容量を形成する。
【0033】
図3(c)は、古いファイルを消去した後の状況を示す。空き領域が確保されたため、この空き容量を用いて引き続き録音を続行し、小ファイル100に分割して録音を行う。
【0034】
図3(d)は、録音が完了した状況を示す。今回の録音セッションにおける全ての小ファイルが結合され、一つのファイルとしてメモリ26に記録される。メモリ26に今回の録音セッションと関係のないファイルが混在していたとしても、CPU12は、小ファイルのファイル名を用いて無関係のファイルを排除して小ファイルを結合することができる。例えば、メモリ26に、
ファイル1:sound1.wav
ファイル2:sound2.wav
ファイル3:Take_001_20131210120000.wav
ファイル4:Take_001_20131210150000.wav
ファイル5:Take_001_20131210180000.wav
ファイル6:tempfaile1.dat
ファイル7:tempfaile2.dat
と複数のファイルが混在して記録されていたとしても、今回の録音セッションを構成するファイル3,4,5のみを特定して結合し、一つの楽音データファイルを得ることができる。また、メモリ26のデータ量が容量限界に達した場合でも、消去するのは今回の録音セッションの小ファイルのみであるから、無関係なファイルを意図せず消去してしまうおそれもない。
【0035】
以上のように、本実施形態では、メモリ26のデータ量がメモリ26の容量限界に達しても録音を終了する必要はなく、ユーザが自ら録音の終了タイミングを決定することができ、かつ、必ず時系列で直近の楽音データをメモリ26に記録することができる。
【0036】
本実施形態では、1回の録音セッションの途中においてメモリ26のデータ量が容量限界に達した場合、最も古い小ファイルが消去される結果、当該録音セッションの頭部分が存在しないことになるが、途中で中断することなく録音セッションを最後まで実行できる意義は大きいといえる。
【0037】
なお、本実施形態において、メモリ26のデータ量がメモリ26の容量限界に達した場合に従来と同様に録音を自動的に終了するか、あるいは本実施形態のようなエンドレス録音を行うかを選択できるように構成してもよい。また、CPU12が、通常録音とエンドレス録音とを自動的に切り替えてもよい。例えば、1回の録音セッションの開始時においてメモリ26の空き容量を確認し、空き容量が50%以上ある場合には通常録音で録音を開始し(つまり、小ファイルに分割することなく録音を開始)、録音セッションの開始時においてメモリ26の空き容量が50%未満である場合には本実施形態のエンドレス録音で録音を開始する等である。
【0038】
また、本実施形態において、メモリ26のデータ量が容量限界に達した場合に、今回の録音セッションにおける最も古い小ファイルを消去しているが、次に記録すべき小ファイルを最も古い小ファイルに上書き記録することで、最も古い小ファイルの消去と、次に記録すべき小ファイルの記録を同時に実行してもよい。上書き記録する場合でも、最も古い小ファイルを消去していることに変わりなく、本発明の技術的思想の範囲内であることはいうまでもない。
【0039】
さらに、本実施形態において、楽音データを小ファイルに分割しているが、小ファイルに分割する際の基準として、ファイルサイズの他に再生時間を基準として分割してもよい。例えば、楽音データを5分毎の小ファイルに分割する等である。wavファイルを再生時間で分割する技術ないしコンピュータプログラムは公知であり、これらの技術をそのまま用いることができる。また、小ファイルのサイズは固定ではなく、ユーザが適宜指定し得る可変サイズとしてもよい。
【0040】
本実施形態では、楽音データを記録する録音装置を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、画像データ(動画及び静止画を含む)を記録する装置に適用してもよい。画像データを記録する場合、「録音セッション」を「記録セッション」とし、1回の記録セッションにおいてデータを小ファイルに分割し、メモリ26のデータ量が容量限界に達した場合に当該記録セッションを構成する小ファイルのうち最も古い小ファイルを消去して空き領域を確保すればよい。本発明のデータ記録装置は、いわゆるレコーダ、コンピュータ、モバイル機器のいずれにも適用可能である。