(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置は、前記燃料の目標流量に応じた前記制御指令値が所定許容範囲内であるか否かを判定する判定部と、使用者への警告を行う警告部と、をさらに備え、前記判定部によって前記燃料の目標流量に応じた前記制御指令値が、所定許容範囲内であると判定された場合に前記燃料種推定部によって前記燃料の種類を推定し、所定許容範囲内でないと判定された場合に前記警告部によって使用者への警告を行う請求項1乃至請求項3記載の燃料電池システム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明による燃料電池システムの第一実施形態について説明する。
図1はこの燃料電池システムの概要を示す概要図である。この燃料電池システムは、発電ユニット10および貯湯槽21を備えている。
発電ユニット10は、燃料電池モジュール11(30)、熱交換器12、インバータ装置13、水タンク14、制御装置15(50)を備えている。
【0013】
燃料電池モジュール11は、後述するように燃料電池34aを少なくとも含んで構成されるものである。燃料電池モジュール11は、燃料(改質用原料)、改質水および酸化剤ガス(カソードエア)が供給されている。燃料電池34aは、燃料が供給される燃料極と、酸化剤ガスが供給される酸化剤極とを有し、燃料と酸化剤ガスとにより発電するものである。
【0014】
熱交換器12は、燃料電池モジュール11から排気される燃焼排ガスが供給されるとともに貯湯槽21からの貯湯水が供給され、燃焼排ガスと貯湯水とが熱交換する熱交換器である。具体的には、貯湯槽21は、貯湯水を貯湯するものであり、貯湯水が循環する(図にて矢印の方向に循環する)貯湯水循環ライン22が接続されている。貯湯水循環ライン22上には、下端から上端に向かって順番に貯湯水循環ポンプ22aおよび熱交換器12が配設されている。熱交換器12は、燃料電池モジュール11からの排気管11dが接続(貫設)されている。熱交換器12は、水タンク14に接続されている凝縮水供給管12aが接続されている。
【0015】
熱交換器12において、燃料電池モジュール11からの燃焼排ガスは、排気管11dを通って熱交換器12内に導入され、貯湯水との間で熱交換が行われ凝縮されるとともに冷却される。凝縮後の燃焼排ガスは排気管11dを通って外部に排出される。また、凝縮された凝縮水は、凝縮水供給管12aを通って水タンク14に供給される。なお、水タンク14は、凝縮水をイオン交換樹脂によって純水化するようになっている。
上述した熱交換器12、貯湯槽21および貯湯水循環ライン22から、排熱回収システム20が構成されている。排熱回収システム20は、燃料電池モジュール11の排熱を貯湯水に回収して蓄える。
【0016】
さらに、インバータ装置13は、燃料電池34aから出力される直流電圧を入力し所定の交流電圧に変換して、交流の系統電源16aおよび外部電力負荷16c(例えば電化製品)に接続されている電源ライン16bに出力する。また、インバータ装置13は、系統電源16aからの交流電圧を電源ライン16bを介して入力し所定の直流電圧に変換して補機(各ポンプ、ブロワなど)や制御装置15に出力する。制御装置15は、補機を駆動して燃料電池システムの運転を制御する。制御装置15は、燃料電池34aの制御を少なくとも行うものである。制御装置15は、燃料電池システムの発電運転中において、燃料電池34aの発電電力を外部電力負荷16cの消費電力となるように制御する。
【0017】
燃料電池モジュール30は、固体酸化物形の燃料電池モジュールである。燃料電池モジュール30は、モジュール用ケーシング31(以下、ケーシング31とする。)、燃料電池34aを少なくとも含んで構成されるものである。本実施形態では、燃料電池モジュール30は、ケーシング31、蒸発部32、改質部33および燃料電池装置34を備えている。
【0018】
ケーシング31は、断熱性材料で箱状に形成されている。ケーシング31内には、蒸発部32、改質部33、燃料電池装置34および燃焼部35である燃焼空間Rが配設されている。このとき、蒸発部32、改質部33が燃料電池装置34の上方に位置するように配設されている。また、燃焼部35は、改質部33と燃料電池装置34との間に配設されている。
【0019】
蒸発部32は、後述する燃焼ガスにより加熱されて、凝縮水を蒸発させて水蒸気(改質用水蒸気)を生成して導出するものである。また、蒸発部32は、供給された燃料(改質用原料)を予熱するものである。そして、蒸発部32は、凝縮水を蒸発させて生成された水蒸気(改質用水蒸気)と予熱された燃料(改質用原料)を混合して改質部33へ導出するものである。燃料としては天然ガス(メタンガス)、都市ガス、LPG(液化石油ガス)などの改質用気体燃料、灯油、ガソリン、メタノールなどの改質用液体燃料がある。本実施形態においては、都市ガスにて説明する。一般的に、都市ガスは、天然ガスにLPGを混合して熱量調整したものである。また、都市ガスには、13Aや12A等の規格が設定されており、規格毎にガスが有する単位量あたりの熱量が異なる。例えば、1m
3あたりの熱量は、規格13Aがおよそ45メガジュールであり、規格12Aがおよそ41メガジュールである。本実施形態の燃料電池システムには、いずれの規格の都市ガスも燃料として適用することができる。一方、本実施形態の燃料電池システムには、LPGを燃料として適用することができない。LPGは、主にプロパンおよびブタンによって構成されている。LPGの1m
3あたりの熱量は、およそ101メガジュールである。なお、都市ガスは、LPGに比べて、比重が小さい。
【0020】
蒸発部32には、一端(下端)が水タンク14内に配設された給水管41の他端が接続されている。給水管41には、改質水ポンプ41aが設けられている。改質水ポンプ41aは、蒸発部32に改質水(凝縮水)を供給するとともに、制御装置15からの制御指令値にしたがって、その改質水の流量(単位時間あたりの流量)を調整するものである。
【0021】
また、蒸発部32には、燃料供給源(以下、供給源という。)Gsからの燃料が燃料供給管42を介して供給されている。供給源Gsは、例えば都市ガスの配管である。燃料供給管42には、上流から順番に、遮断弁42a、脱硫器42b、流量センサ42c(特許請求の範囲の流量検出装置に相当)、バッファタンク42d、燃料ポンプ42e(特許請求の範囲の燃料供給装置に相当)および逆止弁42fが設けられている。
【0022】
遮断弁42aは、供給源Gsと脱硫器42bとの間に配設され、燃料供給管42を開路または閉路にすることにより燃料を流通または遮断するものである。
脱硫器42bは、燃料に添加されている付臭剤(有機硫黄化合物)を吸着(脱硫)するものである。
流量センサ42cは、燃料極に供給されている燃料の流量を検出するものである流量センサ42cは、例えば熱式流量センサである。流量センサ42cは、脱硫器42bとバッファタンク42dとの間に配設されている。流量センサ42cは、その配設された位置において燃料供給管42を流通する燃料の流量(単位時間あたりの流量)を検出するものである。流量センサ42cによって検出される流量である検出流量Qkは、検出信号として制御装置15に送信される。
バッファタンク42dは、燃料ポンプ42eの振動(脈動)を吸収して、燃料ポンプ42eの脈動により流量センサ42cの精度低下や真値からの逸脱を抑制するものである。
【0023】
燃料ポンプ42eは、供給源Gsと燃料極との間に配設され、燃料極に燃料を供給するものである。具体的には、燃料ポンプ42eは、バッファタンク42dと逆止弁42fとの間に配設され、燃料電池モジュール30(蒸発部32)に燃料(改質用原料)を供給する。燃料ポンプ42eは、制御装置15からの制御指令値にしたがって供給源Gsからの燃料の流量を調整するものである。
逆止弁42fは、その配設された位置において供給源Gsから燃料電池モジュール30への流れを許容するがその反対方向の流れを禁止するものである。
【0024】
改質部33は、改質用原料と水蒸気(改質用水蒸気)とから改質ガスを生成するものである。具体的には、改質部33は、後述する燃焼ガスにより加熱されて水蒸気改質反応に必要な熱が供給されることで、蒸発部32から供給された混合ガス(改質用原料、改質用水蒸気)から改質ガスを生成して導出するものである。改質部33内には、触媒(例えば、RuまたはNi系の触媒)が充填されており、混合ガスが触媒によって反応し改質されて水素ガスと一酸化炭素ガスが生成されている(いわゆる水蒸気改質反応)。これと同時に、水蒸気改質反応にて生成された一酸化炭素と水蒸気が反応して、水素ガスと二酸化炭素とに変成するいわゆる一酸化炭素シフト反応が生じている。これら生成されたガス(いわゆる改質ガス)は燃料電池34aの燃料極に導出されるようになっている。改質ガスは、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気、未改質の天然ガス(メタンガス)およびプロパンガス、改質に使用されなかった改質水(水蒸気)を含んでいる。なお、水蒸気改質反応は吸熱反応であり、一酸化炭素シフト反応は発熱反応である。
【0025】
燃料電池装置34は、燃料電池34aおよびマニホールド34bを備えている。燃料電池34aは、改質ガス(アノードガス)と酸化剤ガス(カソードガス)とにより発電するものである。酸化剤ガスは、空気である。燃料電池34aは、燃料極、空気極(酸化剤極)、及び両極の間に介装された電解質からなる複数のセル34a1が
図1における左右方向に沿って積層されて構成されている。本実施形態の燃料電池は、固体酸化物形燃料電池であり、電解質として固体酸化物の一種である酸化ジルコニウムを使用している。燃料電池34aの燃料極には、燃料として水素、一酸化炭素、メタンガス、プロパンガスなどが供給される。動作温度は400〜1000℃程度である。また、燃料には、水素だけではなく天然ガスや石炭ガスなども直接燃料として用いることが可能である。この場合は、改質部33を省略することができる。
【0026】
セル34a1の燃料極側には、燃料である改質ガスが流通する燃料流路34a2が形成されている。セル34a1の空気極側には、酸化剤ガスである空気(カソードエア)が流通する空気流路34a3が形成されている。
【0027】
燃料電池34aは、マニホールド34b上に設けられている。マニホールド34bには、改質部33からの改質ガスが改質ガス供給管33cを介して供給される。燃料流路34a2は、その下端(一端)がマニホールド34bの燃料導出口に接続されており、その燃料導出口から導出される改質ガスが下端から導入され上端から導出されるようになっている。一方、カソードエアブロワ43aによって送出されたカソードエアは、カソードエア供給管43を介して供給され、空気流路34a3の下端から導入され上端から導出されるようになっている。
【0028】
カソードエアブロワ43aは、発電ユニット10内に配設されている。カソードエアブロワ43aは、発電ユニット10内の空気を吸入し燃料電池34aの空気極に吐出するものであり、その吐出量は制御装置15により調整制御(例えば燃料電池34aの負荷電力量(外部電力負荷16cの消費電力量)に応じて制御)されるものである。
【0029】
燃料電池34aにおいては、燃料極に供給された改質ガスと空気極に供給された酸化剤ガスによって発電が行われる。すなわち、燃料極では、下記化1及び化2に示す反応が生じ、空気極では、下記化3に示す反応が生じている。すなわち、空気極で生成した酸化物イオン(O
2−)が、電解質を透過し、燃料極で水素と反応することにより電気エネルギーを発生させている。したがって、燃料流路34a2及び空気流路34a3からは、発電に使用されなかった改質ガス及び酸化剤ガス(空気)が導出する。
(化1)
H
2+O
2−→H
2O+2e
−
(化2)
CO+O
2−→CO
2+2e
−
(化3)
1/2O
2+2e
−→O
2−
【0030】
そして、燃料流路34a2及び空気流路34a3から導出した、発電に使用されなかった改質ガス(アノードオフガス)は、燃焼空間Rにて、発電に使用されなかった酸化剤ガス(カソードオフガス)によって燃焼され、その燃焼ガス(火炎36)によって蒸発部32及び改質部33が加熱される。さらに、燃焼ガスは、燃料電池モジュール30内を動作温度に加熱している。このように、燃焼空間Rが、燃料電池34aからのアノードオフガスと燃料電池34aからのカソードオフガスとを燃焼して蒸発部32および改質部33を加熱する燃焼部35である。
【0031】
燃焼部35(燃焼空間R)は、可燃性ガスと酸化剤ガスとを燃焼するものである。可燃性ガスは、燃えるガスであり、本実施形態では改質用燃料、アノードオフガス、一酸化炭素などである。すなわち、燃焼部35は、燃料電池34aから導出されるアノードオフガスを燃焼させるものである。そして、燃焼部35は、アノードオフガスを燃焼させ、燃焼排ガスを発生する。その燃焼排ガスは排気管11dを介して燃料電池モジュール30から排気される。
【0032】
制御装置50は、燃料ポンプ42eによって供給される燃料の流量の制御を少なくとも行うものである。制御装置50は、
図2に示すように、フィードバック制御部51、記憶部52、算出部53および補正部54を備えている。
フィードバック制御部51は、検出流量Qkと燃料の目標流量Qtとの偏差etに基づいて、燃料ポンプ42eに対する制御指令信号を算出して、制御指令値を燃料ポンプ42eに出力するものである。フィードバック制御部51は、減算器51aおよびPI演算器51bを備えている。
【0033】
減算器51aは、目標流量Qtが入力されるとともに、検出流量Qkが流量センサ42cから入力される。減算器51aは、目標流量Qtから検出流量Qkを減算してそれら入力した両流量の偏差(=目標流量Qt−検出流量Qk)etを算出する。
PI演算器51bは、フィードバック制御を行う制御器である。PI演算器51bは、減算器51aで算出した偏差etを入力し、その偏差etに基づいて燃料ポンプ42eの回転数(ポンプの吐出量(流量))すなわちフィードバック量(操作量)を算出する。ここで、燃料ポンプ42eがPWM制御されているため、フィードバック量はPWM制御のデューティ比Dで算出される。
【0034】
本実施形態においては、PI演算器51bは、偏差etに基づいて比例および積分演算を行うPI演算器である。PI演算器51bは、制御指令値を燃料ポンプ42eのフィードバック制御量(デューティ比D)として算出する。なお、PI演算器51bでは、PI制御(比例動作器および積分動作器の機能が作用する。)を行うようにしたが、PID制御(比例動作器、積分動作器、微分動作器の機能が作用する。)を行うような演算器に代えてもよく、また、P制御(比例動作器の機能のみ作用する。)を行うような演算器に代えても良い。いずれもフィードバック制御量を算出するものである。
【0035】
このフィードバック制御量(デューティ比D)が、PI演算器51bから燃料ポンプ42eのドライバ回路42e1に制御指令値として送信されて、検出流量Qkが目標流量Qtとなるようにフィードバック制御される。
【0036】
記憶部52は、制御プログラムを実行する際に用いられるデータ等を記憶するものである。記憶部52には、第一マップ52a、第二マップ52bおよび第三マップ52cが記憶されている。
第一マップ52aは、
図3に示すように、燃料の種類毎に目標流量Qtと制御指令値との第一相関関係C1を示したものである。具体的には、制御指令値は、デューティ比Dにて示されている。また、燃料の成分量にばらつきがあるため、目標流量Qtに応じたデューティ比Dには、ばらつきが生じる。よって、目標流量Qtに応じたデューティ比Dが、そのばらつきに相当する所定の範囲を有するように設定されている。したがって、目標流量Qtとデューティ比Dとの相関関係を示す第一相関関係C1は、燃料の種類毎に、所定の範囲を有するように設定されている。さらに、燃料の種類(燃料の組成)の違いにより、燃料の比重等の特性が異なる。よって、同じ目標流量Qtにて燃料の種類毎のデューティ比Dを比較した場合、比重の大きい燃料ほど、その同じ目標流量Qtに応じたデューティ比Dが大きくなる。なお、燃料の種類毎の第一相関関係C1は、予め実験等により実測されて導出されている。第一燃料F1は、例えば都市ガス(規格12A)である。第二燃料F2は、例えば都市ガス(13A)である。第三燃料F3は、例えばLPGである。
【0037】
第二マップ52bは、
図4に示すように、燃料の種類毎に設定された燃料電池34aの発電電流Iと目標流量Qtとの第二相関関係C2を示したものである。ここで、燃料の種類にかかわらず発電電流Iに応じて燃料電池34aに供給すべき熱量が予め設定されている。この燃料電池34aに供給すべき熱量は、燃料電池34aにて発電するために必要な熱量および燃焼部35にて燃焼するために必要な熱量を合わせた熱量である。よって、発電電流Iが大きくなるにしたがって、燃料電池34aに必要な熱量が大きくなる。ここで、燃料の種類(燃料の組成)の違いにより、燃料が有する熱量(単位量あたりの熱量)が異なる。よって、発電電流Iに応じた必要な熱量を供給するために、燃料電池34aに供給する燃料の目標流量Qtは、燃料の種類によって異なる。したがって、第二相関関係C2は、燃料の種類毎に、複数設定されている。また、同じ発電電流Iにて燃料の種類毎の目標流量Qtを比較した場合、単位量あたりの熱量が大きい燃料ほど、その発電電流Iに応じた燃料の目標流量Qtが小さくなる。
【0038】
第三マップ52cは、
図5に示すように、燃料の種類毎に燃料極に供給される燃料の実際の流量である実流量Qrと検出流量Qkとの第三相関関係C3を示したものである。一般的に、流量センサは、特定の特性をもつ流体の流量を精度よく検出するように構成されている。すなわち、流体の特性が異なる場合、流体の特性毎に検出流量Qkの検出誤差が異なる。よって、燃料の種類(組成)がことなることにより、燃料の種類(組成)毎に検出流量Qkの検出誤差が異なる。また、燃料の比重が大きいと、検出誤差が大きい。したがって、同じ検出流量Qkにて燃料の種類毎の実流量Qrを比較した場合、比重が大きい燃料ほど実流量Qrが小さい。燃料の種類毎の第三相関関係C3は、予め実験等により実測されて導出されている。なお、第三マップ52cにおける実流量Qrは、実験のために備えられた比較的精度の高い流量センサにより計測されている。
【0039】
算出部53は、燃料電池34aを発電電流Iにて発電させるように、燃料ポンプ42eがフィードバック制御されて燃料を供給する場合に、発電電流Iに応じた燃料の目標流量Qtを算出するものである。具体的には、
図2に示すように、算出部53には、後述する燃料種推定部によって推定された燃料の種類における第二相関関係C2と発電電流Iとが入力される。算出部53は、その燃料の種類における第二相関関係C2とその発電電流Iとから、その発電電流Iに対する目標流量Qtを算出する。算出部53によって算出された目標流量Qtは、フィードバック制御部51の減算器51aに入力される。
【0040】
補正部54は、燃料電池34aを発電電流Iにて発電させるように、燃料ポンプ42eがフィードバック制御されて燃料を供給する場合に、検出流量Qkを補正するものである。具体的には、
図2に示すように、補正部54には、後述する燃料種推定部によって推定された第三相関関係C3と検出流量Qkとが入力される。補正部54は、その燃料の種類における第三相関関係C3とその検出流量Qkとから、その検出流量Qkに応じた実流量Qrを算出する。すなわち、補正部54は、入力された検出流量Qkをその検出流量Qkに応じた実流量Qrに補正し、その実流量Qrを減算器51aに出力する。
【0041】
次に、上述した燃料電池システムおける燃料電池システムに供給される燃料の種類の推定制御について、
図6に示すフローチャートに沿って説明する。なお、燃料の種類の推定制御において、燃料ポンプ42eのフィードバック制御を行う場合、検出流量Qkは、補正部54によって補正されずに、検出流量Qkのまま減算器51aに入力される。
【0042】
制御装置50は、スタートスイッチ(図示なし)が押されて運転が開始される場合、または計画運転にしたがって運転が開始される場合には、
図6に示すプログラムを起動する。制御装置50は、燃料の目標流量Qtを所定目標流量Qt1に設定して燃料の供給を開始して、燃料ポンプ42eのフィードバック制御を行う(ステップS102)。所定目標流量Qt1は、例えば2.0NL/minである。そして、制御装置50は、所定目標流量Qt1に応じたデューティ比Dである応答デューティ比D1を読み込む(ステップS104)。応答デューティ比D1は、検出流量Qkがおよそ所定目標流量Qt1にて安定した状態におけるデューティ比Dである。具体的に、応答デューティ比D1は、偏差etが所定値(例えば0.1NL/min)以下になった場合におけるデューティ比Dである。
【0043】
また、制御装置50は、その応答デューティ比D1が所定許容範囲Ra内であるか否かを判定する(判定部;ステップS106)。所定許容範囲Raは、本実施形態の燃料電池システムにおいて使用可能な燃料における目標流量Qtに応じたデューティ比Dを含むが、使用不可能な燃料における目標流量Qtに応じたデューティ比Dを含まないデューティ比Dの範囲に設定されている。制御装置50は、応答デューティ比D1が所定許容範囲Ra内でない場合、本実施形態の燃料電池システムにて使用できない燃料が供給されていると判断する。この場合、制御装置50は、ステップS106にて「NO」と判定し、使用者への警告を行う(警告部;ステップS108)。警告方法は、表示器(LED画面、ランプなど)に表示させるようにしてもよいし、スピーカなどにより音声で知らせるようにしてもよい。なお、制御装置50は、ステップS108の警告を行った場合、燃料の供給を停止する。
一方、制御装置50は、応答デューティ比D1が所定許容範囲Ra内である場合、本実施形態の燃料電池システムにて使用できる燃料が供給されていると判断する。この場合、制御装置50は、ステップS106にて「YES」と判定し、プログラムをステップS110に進める。
【0044】
制御装置50は、燃料電池システムに供給されている燃料の種類の推定を行う。具体的には、制御装置50は、第一マップ52aに基づいて、目標流量Qtに応じた制御指令値から燃料の種類を推定する(燃料種推定部;ステップS110)。すなわち、制御装置50は、所定目標流量Qt1と応答デューティ比D1との関係が、どの燃料の種類の第一相関関係C1に属するかを判定し、その判定結果から燃料の種類を推定する。
【0045】
そして、制御装置50は、第二マップ52bに基づいて、ステップS110にて推定された燃料の種類の第二相関関係C2を選定する(第一選定部;ステップS112)。また、制御装置50は、第三マップ52cに基づいて、ステップS110にて推定された燃料の種類の第三相関関係C3を選定する(第二選定部;ステップS114)。
【0046】
次に、上述したフローチャートに沿って、燃料電池システムが作動した場合について説明する。第二燃料F2(都市ガス(13A))が燃料電池システムに供給された場合について説明する。制御装置50は、スタートスイッチ(図示なし)が押されて運転が開始される場合、または計画運転にしたがって運転が開始される場合に、燃料の目標流量Qtを所定目標流量Qt1に設定して燃料の供給を開始する(ステップS102)。このとき、フィードバック制御部51によって燃料ポンプ42eがフィードバック制御される。そして、偏差etが所定値以下になったときに、第二燃料F2の応答デューティ比D1である第一応答デューティ比D1aを読み込む(ステップS104)。ここで、第一応答デューティ比D1aは、第一マップ52aにおいて所定許容範囲Ra内に属する(
図3参照)。よって、制御装置50は、燃料電池システムに使用できる燃料であると判定し(ステップS106)、燃料の種類の推定を行う。
【0047】
第一応答デューティ比D1aと所定目標流量Qt1との相関関係は、第二燃料F2の第一相関関係C1に属する。よって、制御装置50は、燃料の種類が第二燃料F2であると推定する(燃料種推定部;ステップS110)。そして、制御装置50は、第二マップ52bから第二燃料F2の第二相関関係C2を選定する(第一選定部;ステップS112)。また、制御装置50は、第三マップ52cから第二燃料F2の第三相関関係C3を選定する(第二選定部;ステップS114)。
【0048】
そして、燃料電池34aを発電電流Iにて発電させるように、燃料ポンプ42eがフィードバック制御されて燃料を供給する場合には、目標流量Qtが算出部53によって算出され、検出流量Qkは、補正部54によって補正される。具体的には、算出部53は、第二燃料F2の第二相関関係C2が入力されるとともに、燃料電池34aの負荷電力量(外部電力負荷16cの消費電力)に応じた発電電流Iが入力される。算出部53は、その発電電流Iと第二燃料F2の第二相関関係C2とから、第二燃料F2に応じた目標流量Qtを算出する。また、補正部54は、第二燃料F2の第三相関関係C3が入力されるとともに、流量センサ42cから検出流量Qkが入力される。補正部54は、第二燃料F2の第三相関関係C3と検出流量Qkとから第二燃料F2に応じた実流量Qrを算出する。これにより、燃料ポンプ42eにより燃料電池モジュール30(蒸発部32)に供給される実流量Qrが第二燃料F2に応じた目標流量Qtになるように、燃料ポンプ42eがフィードバック制御されることにより、第二燃料F2の流量を適切に制御する。よって、制御装置50は、燃料電池34aに供給される第二燃料F2の熱量を適切に制御する。
【0049】
さらに、燃料が第三燃料F3(LPG)である場合について説明する。第三燃料F3は、第二燃料F2よりも比重が大きいため、第三燃料F3の応答デューティ比D1である第二応答デューティ比D1bが第二燃料F2の応答デューティ比D1である第一応答デューティ比D1aよりも大きい(
図3参照)。ここで、第二応答デューティ比D1bは、第一マップ52aにおいて所定許容範囲Ra内に属さない。よって、制御装置50は、燃料が燃料電池システムに使用できる燃料でないと判定し(ステップS106)、使用者へ警告を行う(警告部;ステップS108)。
【0050】
本実施形態によれば、燃料電池システムは、燃料が供給される燃料極と、酸化剤ガスが供給される酸化剤極とを有し、燃料と酸化剤ガスとにより発電する燃料電池34aと、燃料極に燃料を供給する燃料ポンプ42eと、燃料極に供給されている燃料の流量を検出する流量センサ42cと、燃料ポンプ42eによって供給される燃料の流量の制御を少なくとも行う制御装置50と、を備える燃料電池システムであって、制御装置50は、流量センサ42cによって検出される燃料の流量である検出流量Qkと燃料の目標流量Qtとの偏差etに基づいて、燃料ポンプ42eに対する制御指令値を算出して、制御指令値を燃料ポンプ42eに出力するフィードバック制御を行うフィードバック制御部51と、燃料の種類毎に目標流量Qtと制御指令値との第一相関関係C1を示した第一マップ52aを有する記憶部52と、第一マップ52aに基づいて、燃料の目標流量Qtに応じた制御指令値から燃料の種類を推定する燃料種推定部(ステップS110)と、を備えている。
これによれば、制御装置50は、燃料種推定部(ステップS110)によって、燃料の種類毎に目標流量Qtと制御指令値との第一相関関係C1を示した第一マップ52aに基づいて、燃料の目標流量Qtに応じた制御指令値から燃料の種類を推定する。よって、制御装置50は、燃料電池システムに供給される燃料の種類が異なる場合においても、燃料の種類に応じて、燃料電池34aを適切に制御することができる。
【0051】
また、記憶部52は、燃料の種類毎に設定された燃料電池34aの発電電流Iと燃料の目標流量Qtとの複数の第二相関関係C2を示した第二マップ52bをさらに備え、制御装置50は、第二マップ52bに基づいて、燃料種推定部によって推定された燃料の種類の第二相関関係C2を選定する第一選定部(ステップS112)と、第一選定部によって選定された第二相関関係C2に基づいて、燃料の目標流量Qtを算出する算出部53をさらに備えている。
これによれば、制御装置50は、算出部53にて、燃料種推定部によって推定された燃料の種類における燃料電池34aの発電電流Iと燃料の目標流量Qtとの第二相関関係C2に基づいて、発電電流Iに応じた燃料の目標流量Qtを算出する。よって、制御装置50は、燃料電池システムに供給される燃料の種類が異なる場合においても、燃料の種類に応じて、燃料の流量を適切に制御することができる。したがって、制御装置50は、燃料の種類に応じて、燃料電池34aに供給される燃料の熱量を適切に制御することができる。
【0052】
また、記憶部52は、燃料の種類毎に燃料極に供給される燃料の実際の流量である実流量Qrと検出流量Qkとの複数の第三相関関係C3を示した第三マップ52cをさらに備え、制御装置50は、第三マップ52cに基づいて、燃料種推定部によって推定された燃料の種類の第三相関関係C3を選定する第二選定部(ステップS114)と、第二選定部によって選定された第三相関関係C3に基づいて、検出流量Qkを補正する補正部54と、をさらに備えている。
これによれば、制御装置50は、補正部54にて、燃料種推定部によって推定された燃料の種類における実流量Qrと検出流量Qkとの第三相関関係C3に基づいて、検出流量Qkを実流量Qrに補正する。よって、制御装置50は、燃料電池システムに供給される燃料の種類が異なる場合においても、燃料の種類に応じて流量センサ42cの検出誤差を補正することができる。したがって、制御装置50は、燃料の種類に応じて、燃料電池34aに供給される燃料の熱量を適切に制御することができる。
【0053】
また、制御装置50は、燃料の目標流量Qtに応じた制御指令値が所定許容範囲Ra内であるか否かを判定する判定部(ステップS106)と、使用者への警告を行う警告部(ステップS108)と、をさらに備え、判定部によって燃料の目標流量Qtに応じた制御指令値が、所定許容範囲Ra内であると判定された場合に燃料種推定部によって燃料の種類を推定し、所定許容範囲Ra内でないと判定された場合に警告部によって使用者への警告を行う。
これによれば、制御装置50は、判定部によって燃料の目標流量Qtに応じた制御指令値が所定許容範囲Ra内であるか否かを判定するため、供給された燃料が燃料電池システムに使用できる燃料であるか否かを選別することができる。そして、制御装置50は、判定部によって燃料の目標流量Qtに応じた制御指令値が、所定許容範囲Ra内であると判定された場合に、供給された燃料が燃料電池システムに使用できる燃料であるとして、燃料種推定部によって燃料の種類を推定するため、燃料電池システムに使用できる燃料の種類の推定を確実に行うことができる。
また、制御装置50は、判定部によって燃料の目標流量Qtに応じた制御指令値が、所定許容範囲Ra内でないと判定された場合に、燃料電池システムに使用できない燃料であるとして、警告部によって使用者への警告を行う。したがって、燃料電池システムに使用できない燃料が供給された事を使用者に知らせることができる。
【0054】
なお、上述した実施形態において、燃料電池システムの一例を示したが、本発明はこれに限定されず、他の構成を採用することもできる。例えば、上述した各実施形態において、燃料電池システムに燃料F1,F2(都市ガス)が供給され、第三燃料F3(LPG)が供給されないように所定許容範囲Raが設定されているが、これ代えて、第三燃料F3(LPG)が供給され、燃料F1,F2(都市ガス)が供給されないようにしても良い。この場合、液化石油ガス法やJIS規格(JIS K2240)に定められているLPGの規格に応じて複数の相関関係を設定するようにしても良い。また、LPGは通常ボンベからの自然気化方式で供給されているため、LPGの組成がボンベ内のガス量の変化に応じて変化する。すなわち、ボンベ内のガス量の変化は、例えばLPGの消費やボンベ交換等によって生じる。よって、同じLPG規格においても、ボンベ内のガス量に応じて複数の相関関係を設定するようにしても良い。
【0055】
また、上述した実施形態において、
図6に示すプログラムを、スタートスイッチ(図示なし)が押されて運転が開始される場合、または計画運転にしたがって運転が開始される場合に起動しているが、これに代えて、発電運転中において、第一所定時間(例えば24時間)毎に起動するようにしても良い。これによれば、発電運転中に燃料の組成が変化するような場合においても、燃料電池34aに必要な熱量を適切に供給することができる。また、発電運転中に発電電流Iに応じて設定される目標流量Qtが、燃料の種類の推定制御を実行する場合における目標流量Qtに設定する所定目標流量Qt1と同じ流量に設定される毎に起動するようにしても良い。これによれば、使用者の電力需要に応じて、燃料電池34aに必要な熱量を適切に供給することができる。
また、発電運転中に燃料の種類の推定制御を実行する場合、算出部53に既に入力されている第二相関関係C2における燃料の種類と、燃料種推定部(ステップS110)によって推定された燃料の種類とが一致するときは、燃料種推定部(ステップS110)によって燃料の種類を推定した後、第一選定部(ステップS112)による推定された燃料の種類の第二相関関係C2の選定を行わずに、第二選定部(ステップS114)による選定を行うようにしても良い。すなわち、この場合は、燃料の種類の推定制御を実行する前から、算出部53が、推定された燃料の種類の第二相関関係C2に基づいて燃料の目標流量Qtを算出しているため、第一選定部による選定を省略できる。
【0056】
また、上述した実施形態において、
図6に示すプログラムにおいて、燃料の種類を推定するために、燃料の供給を所定目標流量Qt1にて開始し、所定目標流量Qt1に応じたデューティ比Dである応答デューティ比D1を読み込んでいるが、これに代えて、燃料の供給を所定デューティ比Dtにて開始し、所定デューティ比Dtに応じた流量を読み込むようにしても良い。例えば、所定デューティ比Dtに応じた流量が流量Q1である場合、
図3に示す第一マップ52aにおいて、所定デューティ比Dtと流量Q1との関係は、第一燃料F1の第一相関関係C1に属する。よって、供給された燃料の種類は、第一燃料F1と推定される。
また、複数の目標流量Qtを設定して燃料を供給し、その複数の目標流量Qtと複数の目標流量Qtに応じたデューティ比Dとから近似式を導出し、その近似式と第一相関関係C1とを比較して、燃料の種類を推定するようにしても良い。
【0057】
また、上述した実施形態において、補正部54には、推定された燃料の第三相関関係C3が入力されているが、これに代えて、第三相関関係C3が、比例関係すなわち実流量Qr=(方向係数a×検出流量Qk)にて表される場合には、推定された燃料の方向係数aを補正部54に入力するようにしても良い。この場合、補正部54にて、推定された燃料の方向係数aと検出流量Qkとを乗算することにより、実流量Qrを算出するようにしても良い。
また、上述した実施形態において、目標流量Qtに応じたデューティ比Dである応答デューティ比D1は、偏差etが所定値以下になったときのデューティ比Dであるが、これに代えて、燃料の供給を開始した時点から第二所定時間(例えば30秒)経過した時点のデューティ比Dにするようにしても良い。
【0058】
また、上述した実施形態において、特許請求の範囲の流量検出装置は、流量センサ42cであるが、これに代えて、特許請求の範囲の流量検出装置を、
図7に示すように、流量検出装置60とするようにしても良い。ここで、本実施形態においては、燃料ポンプ42eが、回転センサ42e2および圧力センサ42e3をさらに備えている。また、記憶部52は、第四マップ52dをさらに備えている。さらに、制御装置50は、流量推定部55をさらに備えている。そして、流量検出装置60は、回転センサ42e2、圧力センサ42e3および流量推定部55によって構成されている。
【0059】
回転センサ42e2は、燃料ポンプ42eの回転数rpmを検出するものである。その検出された回転数rpmは、検出信号として流量推定部55に入力される。回転センサ42e2は、例えば磁気式ロータリエンコーダである。圧力センサ42e3は、燃料ポンプ42eの出口側の流体の圧力を検出するものである。その検出された圧力値Pは、検出信号として流量推定部55に入力される。圧力センサ42e3は、例えばダイアフラムゲージである。第四マップ52dは、回転センサ42e2によって検出された回転数rpmと、圧力センサ42e3によって検出された圧力値Pと、実験により比較的高精度の流量センサにて予め計測された実流量Qrとの第四相関関係C4を示したものである。流量推定部55は、回転数rpm、圧力値Pおよび第四相関関係C4が入力され、第四相関関係C4に基づいて、回転数rpmおよび圧力値Pから、実流量Qrを算出(推定)するものである。算出された実流量Qrは、減算器51aに入力される。このように、流量検出装置60が実流量Qrを算出するため、本実施形態においては、補正部54を省略することができる。
また、上述した各実施形態において、燃料電池34aは、固体酸化物形燃料電池であるが、これに代えて、固体高分子形燃料電池とするようにしても良い。