(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
燃焼ガスにより駆動するガスタービンと、前記ガスタービンから排気された燃焼ガスの熱により蒸気を発生する排熱回収ボイラーと、前記蒸気で駆動する第一及び第二蒸気タービンと、前記第二蒸気タービンから排気された蒸気を水に戻す復水器と、を備え、
前記排熱回収ボイラーは、前記燃焼ガスの熱により前記第一蒸気タービンに供給する第一蒸気を発生する第一蒸気発生部と、前記第一蒸気タービンから排気された蒸気を加熱する再熱部と、を有し、
前記排熱回収ボイラーの前記第一蒸気発生部と前記第一蒸気タービンとは、前記第一蒸気を前記第一蒸気タービンに導く第一蒸気ラインで接続され、
前記第一蒸気タービンと前記第二蒸気タービンとは、前記第一蒸気タービンから排気された蒸気を前記排熱回収ボイラーの前記再熱部を経て前記第二蒸気タービンに導く再熱蒸気ラインで接続され、
前記再熱蒸気ライン中で前記第一蒸気タービンから前記再熱部までの再熱前蒸気ラインと前記第一蒸気ラインとは、第一バイパスラインで接続され、
前記再熱前蒸気ラインと前記復水器とは、第二バイパスラインで接続され、
前記第二バイパスラインには、前記第二バイパスラインを通る蒸気の流量を調節するベンチレータ弁が設けられているコンバインドサイクルプラントの制御装置において、
前記第一蒸気タービン及び前記第二蒸気タービンの起動過程で、前記第一蒸気タービンに流入する前記第一蒸気の流量が規定流量になったか否かを設定されたしきい値から判断する判断部と、
前記判断部により、前記第一蒸気タービンに流入する前記第一蒸気の流量が規定流量になったと判断されると、開状態の前記ベンチレータ弁に対して閉状態への移行を示す閉指令を出力する指令出力部と、
前記排熱回収ボイラーの起動モードにおけるモードの種類に応じて前記しきい値を変更するしきい値変更部と、
を有する制御装置。
燃焼ガスにより駆動するガスタービンと、前記ガスタービンから排気された燃焼ガスの熱により蒸気を発生する排熱回収ボイラーと、前記蒸気で駆動する第一及び第二蒸気タービンと、前記第二蒸気タービンから排気された蒸気を水に戻す復水器と、を備え、
前記排熱回収ボイラーは、前記燃焼ガスの熱により前記第一蒸気タービンに供給する第一蒸気を発生する第一蒸気発生部と、前記第一蒸気タービンから排気された蒸気を加熱する再熱部と、を有し、
前記排熱回収ボイラーの前記第一蒸気発生部と前記第一蒸気タービンとは、前記第一蒸気を前記第一蒸気タービンに導く第一蒸気ラインで接続され、
前記第一蒸気タービンと前記第二蒸気タービンとは、前記第一蒸気タービンから排気された蒸気を前記排熱回収ボイラーの前記再熱部を経て前記第二蒸気タービンに導く再熱蒸気ラインで接続され、
前記再熱蒸気ライン中で前記第一蒸気タービンから前記再熱部までの再熱前蒸気ラインと前記第一蒸気ラインとは、第一バイパスラインで接続され、
前記再熱前蒸気ラインと前記復水器とは、第二バイパスラインで接続され、
前記第二バイパスラインには、前記第二バイパスラインを通る蒸気の流量を調節するベンチレータ弁が設けられているコンバインドサイクルプラントの制御方法において、
前記第一蒸気タービン及び前記第二蒸気タービンの起動過程で、前記第一蒸気タービンに流入する前記第一蒸気の流量が規定流量になったか否かを設定されたしきい値から判断する判断工程と、
前記判断工程で、前記第一蒸気タービンに流入する前記第一蒸気の流量が規定流量になったと判断されると、開状態の前記ベンチレータ弁に対して閉状態への移行を示す閉指令を出力する指令出力工程と、
前記排熱回収ボイラーの起動モードにおけるモードの種類に応じて前記しきい値を変更するしきい値変更工程と、
を実行するコンバインドサイクルプラントの制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載の技術では、起動過程で、開状態のベンチレータ弁が閉じられると、再熱蒸気ラインに流れる蒸気の流量が急激に増えることになる。このため、再熱蒸気ラインに関する制御系が一時的に不安定になるおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、起動過程で制御系が不安定になることを抑えることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための発明に係る一態様としての制御装置は、
燃焼ガスにより駆動するガスタービンと、前記ガスタービンから排気された燃焼ガスの熱により蒸気を発生する排熱回収ボイラーと、前記蒸気で駆動する第一及び第二蒸気タービンと、前記第二蒸気タービンから排気された蒸気を水に戻す復水器と、を備え、前記排熱回収ボイラーは、前記燃焼ガスの熱により前記第一蒸気タービンに供給する第一蒸気を発生する第一蒸気発生部と、前記第一蒸気タービンから排気された蒸気を加熱する再熱部と、を有し、前記排熱回収ボイラーの前記第一蒸気発生部と前記第一蒸気タービンとは、前記第一蒸気を前記第一蒸気タービンに導く第一蒸気ラインで接続され、前記第一蒸気タービンと前記第二蒸気タービンとは、前記第一蒸気タービンから排気された蒸気を前記排熱回収ボイラーの前記再熱部を経て前記第二蒸気タービンに導く再熱蒸気ラインで接続され、前記再熱蒸気ライン中で前記第一蒸気タービンから前記再熱部までの再熱前蒸気ラインと前記第一蒸気ラインとは、第一バイパスラインで接続され、前記再熱前蒸気ラインと前記復水器とは、第二バイパスラインで接続され、前記第二バイパスラインには、前記第二バイパスラインを通る蒸気の流量を調節するベンチレータ弁が設けられているコンバインドサイクルプラントの制御装置において、
前記第一蒸気タービン及び前記第二蒸気タービンの起動過程で、前記第一蒸気タービンに流入する前記第一蒸気の流量が規定流量になったか否かを
設定されたしきい値から判断する判断部と、前記判断部により、前記第一蒸気タービンに流入する前記第一蒸気の流量が規定流量になったと判断されると、開状態の前記ベンチレータ弁に対して閉状態への移行を示す閉指令を出力する指令出力部と、前記排熱回収ボイラーの起動モードにおけるモードの種類に応じて前記しきい値を変更するしきい値変更部と、を有する。
【0010】
制御装置において、第一蒸気の発生量が多い場合でも少ない場合でも、判断部が規定流量になったか否かを判断するしきい値を仮に同じであるとする。すなわち、制御装置は、第一蒸気の発生量が少ない場合でも、第一蒸気の発生量の多い場合と同じしきい値で、第一蒸気タービンに流入する第一蒸気の流量が規定流量になったと判断すると仮定する。この仮定のもとでは、第一蒸気の発生量が少ない場合でも、第一蒸気タービンに流入する第一蒸気の流量が第一蒸気の発生量が多い場合のときの規定流量になったときに、ベンチレータ弁が閉じることになる。このため、この仮定のもとでは、第一蒸気の発生量が少ない場合でも、ベンチレータ弁が閉じる直前で、ベンチレータ弁を介して復水器に流入する第一蒸気の流量が、第一蒸気の発生量が多い場合のときの規定流量と実質的に同じ流量になる。また、この仮定のもとでは、第一バイパスラインを介して再熱蒸気ラインに流入する第一蒸気の流量が、第一蒸気の発生量が多い場合のときに第一バイパスラインを介して再熱蒸気ラインに流入する第一蒸気の流量よりも少なくなる。よって、この仮定のもとでは、ベンチレータ弁が閉じる前後における再熱蒸気ラインを流れる蒸気の流量変化率が、第一蒸気の発生量が多い場合よりも第一蒸気の発生量が少ない場合に大きくなる。このため、第一蒸気の発生量が少ない場合、再熱蒸気ラインに関する制御系が不安定になる可能性が高くなる。
【0011】
ところで、プラントの起動過程では、第一蒸気発生部からの第一蒸気の温度とこの第一蒸気の発生量とには、正の相関性がある。つまり、プラントの起動過程では、第一蒸気発生部の第一蒸気の温度が高くなると、この第一蒸気の発生量が多くなり、第一蒸気発生部の第一蒸気の温度が低くなると、この第一蒸気の発生量が少なくなる。これは、第一蒸気の温度を高くするために、第一蒸気発生部に高いエネルギーを有する排ガスを供給する必要があり、必然的に第一蒸気の発生量が多くなるからである。また、プラントの起動過程では、第一蒸気の温度が高くなると、第一蒸気タービンに供給する第一蒸気の流量が多くなる。このため、プラントの起動過程では、第一蒸気の温度と第一蒸気タービンへ供給する第一蒸気の流量とには、正の相関性がある。これは、第一蒸気の温度が高くなると、高圧蒸気タービン出口の排気温度上昇を抑制するための必要蒸気量が多くなるからである。
【0012】
そこで、当該制御装置では、判断部が規定流量になったか否かを判断するしきい値を
、起動モードにおけるモードの種類に応じて、変更している。このため、当該制御装置では、第一蒸気発生部からの第一蒸気の発生量が少ないときには規定流量が小さくなり、ベンチレータ弁の閉じる前後での再熱蒸気ラインに流れる蒸気の流量変化率を小さくすることができる。
【0013】
ここで、前記一態様としての前記制御装置において、前記排熱回収ボイラーの
前記起動モードが少なくともコールドモードであるかホットモードであるかを認識する起動モード認識部を有し、前記しきい値変更部は、前記起動モード認識部が認識した
モードの種類に応じて、前記しきい値を変更してもよい。
【0014】
また、前記起動モード認識部を有する前記制御装置において、前記起動モード認識部は、温度計で検知された前記第一蒸気タービンにおける蒸気接触部の温度に応じて前記起動モード
の種類を認識してもよい。
【0015】
また、前記一態様としての前記制御装置において、
前記しきい値は、前記第一蒸気タービンに流入する前記第一蒸気の圧力に関する値であってもよい。
【0016】
また、
前記一態様としての前記制御装置において、
前記しきい値は、前記第一蒸気タービンに流入する前記第一蒸気の規定流量に対応する前記第一蒸気の圧力であってもよい。
【0017】
上記目的を達成するための発明に係る一態様としてのコンバインドサイクルプラントは、
以上のいずれかの前記制御装置と、前記ガスタービンと、前記排熱回収ボイラーと、前記第一蒸気タービンと、前記第二蒸気タービンと、前記復水器と、を備えている。
【0018】
上記目的を達成するための発明に係る一態様としての制御方法は、
燃焼ガスにより駆動するガスタービンと、前記ガスタービンから排気された燃焼ガスの熱により蒸気を発生する排熱回収ボイラーと、前記蒸気で駆動する第一及び第二蒸気タービンと、前記第二蒸気タービンから排気された蒸気を水に戻す復水器と、を備え、前記排熱回収ボイラーは、前記燃焼ガスの熱により前記第一蒸気タービンに供給する第一蒸気を発生する第一蒸気発生部と、前記第一蒸気タービンから排気された蒸気を加熱する再熱部と、を有し、前記排熱回収ボイラーの前記第一蒸気発生部と前記第一蒸気タービンとは、前記第一蒸気を前記第一蒸気タービンに導く第一蒸気ラインで接続され、前記第一蒸気タービンと前記第二蒸気タービンとは、前記第一蒸気タービンから排気された蒸気を前記排熱回収ボイラーの前記再熱部を経て前記第二蒸気タービンに導く再熱蒸気ラインで接続され、前記再熱蒸気ライン中で前記第一蒸気タービンから前記再熱部までの再熱前蒸気ラインと前記第一蒸気ラインとは、第一バイパスラインで接続され、前記再熱前蒸気ラインと前記復水器とは、第二バイパスラインで接続され、前記第二バイパスラインには、前記第二バイパスラインを通る蒸気の流量を調節するベンチレータ弁が設けられているコンバインドサイクルプラントの制御方法において、
前記第一蒸気タービン及び前記第二蒸気タービンの起動過程で、前記第一蒸気タービンに流入する前記第一蒸気の流量が規定流量になったか否かを
設定されたしきい値から判断する判断工程と、前記判断工程で、前記第一蒸気タービンに流入する前記第一蒸気の流量が規定流量になったと判断されると、開状態の前記ベンチレータ弁に対して閉状態への移行を示す閉指令を出力する指令出力工程と、前記排熱回収ボイラーの起動モードにおけるモードの種類に応じて前記しきい値を変更するしきい値変更工程と、を実行する。
【0019】
当該制御方法でも、前述の制御装置と同様、ベンチレータ弁の閉じる前後での再熱蒸気ラインに流れる蒸気の流量変化率を小さくすることができる。
【0020】
ここで、前記一態様としての前記制御方法において、前記排熱回収ボイラーの前記起動モードが少なくともコールドモードであるかホットモードであるかを認識する起動モード認識工程を実行し、前記しきい値変更工程では、前記起動モード認識工程で認識された
モードの種類に応じて、前記しきい値を変更してもよい。
【0021】
また、前記起動モード認識工程を実行する前記制御方法において、前記起動モード認識工程では、温度計で検知された前記第一蒸気タービンにおける蒸気接触部の温度に応じて前記起動モード
の種類を認識してもよい。
【0022】
また、前記一態様としての前記制御方法において、
前記しきい値は、前記第一蒸気タービンに流入する前記第一蒸気の圧力に関する値であってもよい。
【0023】
また、
前記一態様としての前記制御方法において、
前記しきい値は、前記第一蒸気タービンに流入する前記第一蒸気の規定流量に対応する前記第一蒸気の圧力であってもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明では、蒸気タービンの起動過程で、ベンチレータ弁の閉じる前後での再熱蒸気ラインに流れる蒸気の流量変化率を小さくすることができる。よって、本発明によれば、再熱蒸気ラインに関する制御系が一時的に不安定になることを抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係るコンバインドサイクルプラントの実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
本実施形態のコンバインドサイクルプラントは、
図1に示すように、ガスタービン10と、ガスタービン10から排気される燃焼ガスの排熱で蒸気を発生させる排熱回収ボイラー20と、排熱回収ボイラー20からの蒸気で駆動する高圧蒸気タービン(第一蒸気タービン)31、中圧蒸気タービン(第二蒸気タービン)32及び低圧蒸気タービン33と、各タービン10,31,32,33の駆動で発電する発電機34と、低圧蒸気タービン33から排気された蒸気を水に戻す復水器36と、復水器36から水を排熱回収ボイラー20に送る給水ポンプ37と、これらを制御する制御装置100と、を備えている。なお、以下の説明の都合上、高圧蒸気タービン31の定格圧力は12MPaで、中圧蒸気タービン32の定格圧力は4MPaで、低圧蒸気タービン33の定格圧力は1MPaであるとする。
【0028】
ガスタービン10は、外気を圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機11と、燃料ガスに圧縮空気を混合して燃焼させ高温の燃焼ガスを生成する燃焼器12と、燃焼ガスにより駆動するタービン13と、燃焼器12に供給する燃料流量を調節する燃料流量調節弁76と、を備えている。
【0029】
ガスタービン10の燃焼器12には、燃料供給源からの燃料を燃焼器12に供給する燃料ラインが接続されている。この燃料ラインには、前述の燃料流量調節弁76が設けられている。ガスタービン10のタービン13は、その排気口が排熱回収ボイラー20と接続されている。
【0030】
圧縮機11の圧縮機ロータとタービン13のタービンロータとは、同一の軸線上に位置に互いに連結されて、ガスタービンロータとして一体回転する。また、本実施形態では、このガスタービンロータと、高圧蒸気タービン31のタービンロータと、中圧蒸気タービン32のタービンロータと、低圧蒸気タービン33のタービンロータと、発電機34の発電機ロータとが、同一軸線上に位置し互いに連結されて、一体回転する。よって、本実施形態のコンバインドサイクルプラントは、一軸式のコンバインドサイクルプラントである。
【0031】
排熱回収ボイラー20は、高圧蒸気タービン31に供給する高圧蒸気(第一蒸気)を発生する高圧蒸気発生部(第一蒸気発生部)21と、中圧蒸気タービン32に供給する中圧蒸気を発生する中圧蒸気発生部23と、低圧蒸気タービン33に供給する
低圧蒸気を発生する低圧蒸気発生部27と、高圧蒸気タービン31から排気された蒸気を加熱する再熱部26と、を備えている。高圧蒸気発生部21は、蒸気を発生する高圧ドラム22aと、高圧ドラム22aで発生した蒸気を過熱する高圧過熱器22bと、を有する。中圧蒸気発生部23は、中圧蒸気を発生する中圧ドラム24aと、中圧ドラム24aで発生した中圧蒸気を過熱する中圧過熱器24bと、を有する。中圧ドラム24aには、中圧ドラム24a内の圧力P5を検知する中圧ドラム圧力計87が設けられている。低圧蒸気発生部27は、蒸気を発生する低圧ドラム28aと、低圧ドラム28aで発生した蒸気を過熱する低圧過熱器28bと、を有する。
【0032】
排熱回収ボイラー20の高圧過熱器22bと高圧蒸気タービン31の蒸気入口とは、高圧過熱器22bからの高圧蒸気を高圧蒸気タービン31に導く主蒸気ライン(第一蒸気ライン)41で接続されている。高圧蒸気タービン31の蒸気出口と中圧蒸気タービン32の蒸気入口とは、高圧蒸気タービン31から排気された蒸気を排熱回収ボイラー20の再熱部26を経て中圧蒸気タービン32の蒸気入口に導く再熱蒸気ライン42で接続されている。ここで、再熱蒸気ライン42で、高圧蒸気タービン31の蒸気出口と再熱部26との間を再熱前蒸気ライン42aとし、再熱部26と中圧蒸気タービン32の蒸気入口との間を再熱後蒸気ライン42bとする。排熱回収ボイラー20の低圧過熱器28bと低圧蒸気タービン33の蒸気入口とは、低圧蒸気を低圧蒸気タービン33に導く低圧蒸気ライン43で接続されている。
【0033】
中圧蒸気タービン32の蒸気出口と低圧蒸気タービン33の蒸気入口とは、中圧タービン排気ライン56で接続されている。低圧蒸気タービン33の蒸気出口には、復水器36が接続されている。この復水器36には、復水を排熱回収ボイラー20に導く給水ライン44が接続されている。この給水ライン44には、前述の給水ポンプ37が設けられている。
【0034】
排熱回収ボイラー20の中圧過熱器24bと再熱前蒸気ライン42aとは、中圧蒸気ライン55で接続されている。主蒸気ライン41と再熱前蒸気ライン42aとは、高圧タービンバイパスライン(第一バイパスライン)51で接続されている。再熱前蒸気ライン42aと復水器36とは、ベンチレータライン(第二バイパスライン)52で接続されている。なお、再熱前蒸気ライン42a中における高圧タービンバイパスライン51の接続位置は、ベンチレータライン52の接続位置よりも下流側(再熱部26側)である。また、再熱前蒸気ライン42a中における中圧蒸気ライン55の接続位置は、高圧タービンバイパスライン51の接続位置よりも下流側(再熱部26側)である。再熱後蒸気ライン42bと復水器36とは、中圧タービンバイパスライン53で接続され、低圧蒸気ライン43と復水器36とは、低圧タービンバイパスライン54で接続されている。
【0035】
主蒸気ライン41で、高圧タービンバイパスライン51との接続位置よりも下流側(高圧蒸気タービン31側)には、高圧過熱器22bからの高圧蒸気の圧力P2を検知する高圧蒸気圧力計81と、主蒸気止め弁61と、主蒸気加減弁62と、流入蒸気圧力計82とが、下流側に向かってこの順序で設けられている。高圧蒸気圧力計81は、高圧過熱器22bから高圧蒸気の圧力であって主蒸気止め弁61よりも上流側(高圧蒸気発生部21側)の圧力P2を検知する。流入蒸気圧力計82は、高圧蒸気の圧力であって、主蒸気加減弁62よりも下流側の圧力P1を検知する。すなわち、流入蒸気圧力計82は、高圧蒸気タービン31に流入する直前の高圧蒸気の圧力P1を検知する。
【0036】
高圧蒸気タービン31の第一段静翼環には、この第一段静翼環(蒸気接触部)の温度を検知する温度計83が設けられている。
【0037】
高圧タービンバイパスライン51には、高圧タービンバイパス弁68と減温器69とが設けられている。中圧蒸気ライン55には、中圧ドラム24a内の圧力を調節する中圧ドラム圧力調節弁74と、再熱前蒸気ライン42aからの蒸気が中圧ドラム24aに流入するのを防ぐ逆止弁75が設けられている。
【0038】
再熱前蒸気ライン42aで、ベンチレータライン52との接続位置よりも下流側(再熱部26側)には、逆止弁63が設けられている。この逆止弁63は、高圧タービンバイパスライン51や中圧蒸気ライン55を経て再熱前蒸気ライン42aに流入した蒸気が高圧蒸気タービン31に流入するのを防ぐ。ベンチレータライン52には、ベンチレータ弁71が設けられている。
【0039】
再熱後蒸気ライン42bで中圧タービンバイパスライン53との接続位置よりも下流側(中圧蒸気タービン32側)には、再熱蒸気圧力計84、再熱蒸気止め弁64、及び再熱蒸気加減弁65が、下流側に向かってこの順序で設けられている。中圧タービンバイパスライン53には、中圧タービンバイパス弁72が設けられている。
【0040】
低圧蒸気ライン43の低圧タービンバイパスライン54との接続位置よりも下流側(低圧蒸気タービン33側)には、低圧蒸気圧力計85、低圧蒸気止め弁66、及び低圧蒸気加減弁67が、下流側に向かってこの順序で設けられている。低圧タービンバイパスライン54には、低圧タービンバイパス弁73が設けられている。
【0041】
制御装置100は、
図2に示すように、燃料流量調節弁76の動作を制御する燃料流量制御器101と、主蒸気止め弁61の動作を制御する主蒸気止め弁制御器102と、主蒸気加減弁62の動作を制御する主蒸気加減弁制御器103と、高圧タービンバイパス弁68の動作を制御する高圧タービンバイパス弁制御器104と、ベンチレータ弁71の動作を制御するベンチレータ弁制御器110と、を有する。制御装置100は、以上の他、再熱蒸気止め弁64、再熱蒸気加減弁65、低圧蒸気止め弁66、低圧蒸気加減弁67、中圧タービンバイパス弁72、低圧タービンバイパス弁73、中圧ドラム圧力調節弁74の動作を制御する制御器等も有している。
【0042】
ベンチレータ弁制御器110は、流入蒸気圧力計82で検知された高圧蒸気の圧力P1がしきい値になったか否かを判断する判断部111と、判断部111により高圧蒸気の圧力P1がしきい値になったと判断されるとベンチレータ弁71に対して閉指令を出力する指令出力部112と、温度計83で検知された高圧蒸気タービン31の温度で排熱回収ボイラー20の起動モードを認識する起動モード認識部113と、起動モード認識部113が認識した起動モードに応じて判断部111におけるしきい値を変更するしきい値変更部114と、を有する。
【0043】
排熱回収ボイラー20の起動モードとしては、例えば、高圧蒸気タービン31の温度が高い状態からの起動であるホットモードと、高圧蒸気タービン31の温度が低い状態からの起動であるコールドモードとがある。起動モード認識部113は、高圧蒸気タービン31に蒸気を通気する直前に、温度計83で検知された高圧蒸気タービン31の温度が例えば400℃以上の場合、ホットモードであると認識する。また、起動モード認識部113は、高圧蒸気タービン31に蒸気を通気する直前に、温度計83で検知された高圧蒸気タービン31の温度が例えば400℃未満の場合、コールドモードであると認識する。
【0044】
なお、本実施形態の制御装置100は、コンピュータで構成されており、制御装置100の各部の処理は、いずれも、ハードディスクドライブ装置等の外部記憶装置やメモリ等の記憶装置と、この記憶装置に記憶されているプログラムを実行するCPUとを有して構成されている。
【0045】
次に、本実施形態のコンバインドサイクルプラントの起動過程における動作について説明する。
【0046】
制御装置100が外部から起動指令を受け付けると、図示されていない起動装置に対して起動指令を出力し、この起動装置を起動させる。この起動装置の起動により、ガスタービン10の圧縮機ロータ及びタービンロータが回転し始める。圧縮機ロータが回転すると、圧縮機11からの圧縮空気が燃焼器12に供給され始められる。圧縮機ロータ及びタービンロータが例えば予め定められた回転数になると、燃料流量制御器101は、燃料流量調節弁76に対して開指令を出力する。この結果、燃料ラインからの燃料が燃料流量調節弁76を介して燃焼器12に供給され始められる。この燃料は、圧縮機11から燃焼器12に供給された圧縮空気中で燃焼する。燃焼器12で発生した燃焼ガスは、タービン13に流れ込み、タービンロータを回転させる。
【0047】
燃料流量制御器101は、ガスタービン10の起動過程では、燃料流量調節弁76が時間経過に伴って次第に開く予め定められたパターンに従った開度を示す開指令を出力する。このため、燃焼器12に供給される燃料の流量も次第に増加し、
図3に示すように、タービンロータの回転数も次第に増加する。タービンロータが予め定められた回転数になると、起動装置によるタービンロータの回転補助が停止される。その後、タービンロータの回転数が定格回転数、例えば、3600rpmになると、発電機34が系統電力線に接続され、タービンロータ及び発電機34ロータの回転数は、この定格回転数に維持される。
【0048】
タービン13を通過した燃焼ガスは、排気ガスとして排熱回収ボイラー20に送られる。排熱回収ボイラー20の各蒸気発生部21,23,27では、排熱回収ボイラー20を流れる排気ガスと水とを熱交換させて、水を加熱し蒸気にする。高圧蒸気発生部21で発生した高圧蒸気は、主蒸気ライン41に流入する。中圧蒸気発生部23で発生した中圧蒸気は中圧蒸気ライン55に流入する。低圧蒸気発生部27で発生した低圧蒸気は、低圧蒸気ライン43に流入する。
【0049】
排熱回収ボイラー20から蒸気が発生し始める前、主蒸気止め弁61、主蒸気加減弁62、再熱蒸気止め弁64、再熱蒸気加減弁65、低圧蒸気止め弁66、低圧蒸気加減弁67、高圧タービンバイパス弁68、中圧タービンバイパス弁72、低圧タービンバイパス弁73、中圧ドラム圧力調節弁74は、いずれも、閉状態である。一方、ベンチレータ弁71は、排熱回収ボイラー20から蒸気が発生し始める前、開状態である。
【0050】
低圧タービンバイパス弁73は、プラントの起動過程で、低圧蒸気ライン43の圧力P4が例えば低圧蒸気タービン33の定格圧力1MPaよりも低い0.5MPaに維持されるよう、制御装置100により制御される。このため、低圧蒸気圧力計85で検知される低圧蒸気の圧力P4が0.5MPaになるまで、低圧タービンバイパス弁73は閉じている。低圧蒸気発生部27での低圧蒸気の発生量が増加し、低圧蒸気ライン43の圧力P4が0.5MPa以上になると、低圧タービンバイパス弁73が開き、低圧蒸気発生部27からの低圧蒸気が低圧タービンバイパスライン54を介して復水器36に流入するようになる。
【0051】
制御装置100は、中圧ドラム24aが予め定められた圧力、例えば、中圧蒸気タービン32の定格圧力4MPaよりもいくらか高い圧力に維持されるよう、中圧ドラム圧力調節弁74を制御する。よって、中圧ドラム24a内の圧力が維持すべき圧力以上になると、中圧ドラム圧力調節弁74が開き、中圧ドラム24aで発生した中圧蒸気が中圧蒸気ライン55を介して、再熱前蒸気ライン42aに流れ込むようになる。
【0052】
中圧タービンバイパス弁72は、プラントの起動過程で、再熱後蒸気ライン42bの圧力P3が例えば中圧蒸気タービン32の定格圧力4MPaよりも低い2MPaに維持されるよう、制御装置100により制御される。このため、再熱蒸気圧力計84で検知される再熱(中圧)蒸気の圧力P3が2MPaになるまで、中圧タービンバイパス弁72は閉じている。中圧蒸気発生部23での中圧蒸気の発生量や高圧タービンバイパスライン51を経てきた蒸気等の流量が増加し、再熱後蒸気ライン42bの圧力P3が2.0MPa以上になると、中圧タービンバイパス弁72が開き、再熱後蒸気ライン42bを流れる蒸気が中圧タービンバイパスライン53を介して復水器36に流入するようになる。
【0053】
高圧タービンバイパス弁68は、プラントの起動過程で、主蒸気ライン41の圧力P2が例えば高圧蒸気タービン31の定格圧力12MPaよりも低い5MPaに維持されるよう、制御装置100の高圧タービンバイパス弁制御器104により制御される。このため、高圧蒸気圧力計81で検知される高圧蒸気の圧力P2が5MPaになるまで、
図3に示すように、高圧タービンバイパス弁68は閉じている。高圧蒸気発生部21での高圧蒸気の発生量が増加し、主蒸気ライン41の圧力P2が5MPa以上になると、高圧タービンバイパス弁68が開き、高圧蒸気発生部21からの高圧蒸気が高圧タービンバイパスライン51を介して再熱蒸気ライン42に流入するようになる。
【0054】
制御装置100は、プラントの起動過程で、各蒸気タービン31,32,33に供給する蒸気の供給開始条件が成立したことを認識すると、各蒸気タービン31,32,33の蒸気止め弁61,64,66及び蒸気加減弁62,65,67を開ける。蒸気の供給開始条件としては、例えば、高圧蒸気タービン31に設けられている温度計83で検知された温度が予め定められた温度になることである。この際、各蒸気加減弁62,65,67は、予め定められた開度パターンに従って徐々に開けられる。この結果、
図3に示すように、各蒸気タービン31,32,33に蒸気が供給され始められ、蒸気タービン出力(高圧蒸気タービン31、中圧蒸気タービン32、低圧蒸気タービン33の合計出力)が徐々に増加する。
【0055】
なお、ここでは、蒸気の供給開始条件を、高圧蒸気タービン31に設けられている温度計83で検知された温度が予め定められた温度になることにしている。しかしながら、蒸気の供給開始条件を、高圧蒸気タービン31に設けられている温度計83で検知された温度が予め定められた温度になり、且つ中圧蒸気タービン32に設けられている温度計で検知された温度が予め定められた温度になることにしてもよい。
【0056】
低圧蒸気止め弁66及び低圧蒸気加減弁67が開き、低圧蒸気タービン33に低圧蒸気が供給され始められると、低圧蒸気ライン43の圧力P4が低下する。そこで、制御装置100は、低圧蒸気ライン43の圧力P4を維持するため、低圧タービンバイパス弁73を徐々に閉じる。
【0057】
再熱蒸気止め弁64及び再熱蒸気加減弁65が開き、中圧蒸気タービン32に蒸気が供給され始められると、再熱後蒸気ライン42bの圧力P3が低下する。そこで、制御装置100は、再熱後蒸気ライン42bの圧力P3を維持するため、中圧タービンバイパス弁72を徐々に閉じる。
【0058】
主蒸気止め弁61及び主蒸気加減弁62が開き、高圧蒸気タービン31に高圧蒸気が供給され始められると、主蒸気ライン41の圧力P2が低下する。そこで、高圧タービンバイパス弁制御器104は、主蒸気ライン41の圧力P2を維持するため、
図3に示すように、高圧タービンバイパス弁68を徐々に閉じる。
【0059】
制御装置100は、その後、各蒸気タービン31,32,33に供給する蒸気について切替条件が成立したことを認識すると、各蒸気タービン31,32,33に蒸気を供給する蒸気ラインの維持圧力を変更する。具体的に、制御装置100は、低圧蒸気ライン43の圧力P4が例えば低圧蒸気タービン33の定格圧力1MPaよりも僅かに高い1.1MPaに維持されるよう、低圧タービンバイパス弁73を制御する。このため、上記切替条件が一旦満たされると、低圧蒸気ライン43の圧力P4が1.1MPa以上にならない限り、低圧タービンバイパス弁73は開かない。また、制御装置100は、上記切替条件が成立したと認識すると、再熱後蒸気ライン42bの圧力P3が例えば中圧蒸気タービン32の定格圧力4MPaよりも僅かに高い4.1MPaに維持されるよう、中圧タービンバイパス弁72を制御する。このため、上記切替条件が一旦満たされると、再熱後蒸気ライン42bの圧力P3が4.1MPa以上にならない限り、中圧タービンバイパス弁72は開かない。また、制御装置100の高圧タービンバイパス弁制御器104は、上記切替条件が成立したと認識すると、主蒸気ライン41の圧力P2が例えば高圧蒸気タービン31の定格圧力12MPaよりも僅かに高い12.1MPaに維持されるよう、高圧タービンバイパス弁68を制御する。このため、上記切替条件が一旦満たされると、主蒸気ライン41の圧力P2が12.1MPa以上にならない限り、高圧タービンバイパス弁68は開かない。
【0060】
前述したように、主蒸気加減弁62が徐々に開き、高圧蒸気タービン31に高圧蒸気が徐々に供給されている過程では、高圧蒸気タービン31から排気される蒸気の温度が風損による上昇する。そこで、本実施形態では、高圧蒸気タービン31の起動過程では、
図3に示すように、ベンチレータ弁71を開けておき、高圧蒸気タービン31から排気された蒸気をベンチレータライン52を介して復水器36に送るようにしている。このため、本実施形態では、高圧蒸気タービン31の蒸気入口での圧力と蒸気出口の圧力との圧力差が大きくなり、高圧蒸気タービン31内での蒸気の仕事量が多くなって、高圧蒸気タービン31から排気される蒸気の温度上昇を抑えることができる。
【0061】
ベンチレータ弁71は、ベンチレータ弁制御器110の判断部111により、高圧蒸気タービン31に供給される高圧蒸気の流量が規定流量になったと判断されときに閉じる。具体的に、ベンチレータ弁制御器110の判断部111は、高圧蒸気タービン31に供給される高圧蒸気の流量が規定流量になったか否かを流入蒸気圧力計82で検知された圧力P1により判断する(判断工程)。高圧蒸気タービン31に供給される高圧蒸気の流量と流入蒸気圧力計82で検知される圧力P1とは、正の相関性をもつ。このため、流入蒸気圧力計82で検知される圧力P1で、高圧蒸気の流量に関する規定流量に対応する圧力をしきい値として定めておくことで、判断部111は、流入蒸気圧力計82で検知された圧力P1がしきい値になったか否かにより、高圧蒸気の流量が規定流量になったか否かを判断することができる。
【0062】
このしきい値は、ベンチレータ弁制御器110のしきい値変更部114により、排熱回収ボイラー20の起動モードに応じて変更される。起動モード認識部113は、高圧蒸気タービン31に蒸気を通気される直前に、高圧蒸気タービン31に設けられている温度計83で検知された高圧蒸気タービン31の温度が例えば400℃以上の場合ホットモードであると認識し、温度計83で検知された高圧蒸気タービン31の温度が例えば400℃未満の場合コールドモードであると認識する(起動モード認識工程)。しきい値変更部114は、起動モード認識部113により認識された起動モードがホットモードである場合、しきい値を例えば4MPaに設定する。また、しきい値変更部114は、起動モード認識部113により認識された起動モードがコールドモードである場合、しきい値を例えば2MPaに設定する(しきい値変更工程)。
【0063】
判断部111が、高圧蒸気タービン31に流入する高圧蒸気の流量が規定流量になった、つまり流入蒸気圧力計82で検知された圧力P1がしきい値になったと判断すると、ベンチレータ弁制御器110の指令出力部112がベンチレータ弁71に対して閉指令を出力する(指令出力工程)。この閉指令には、ベンチレータ弁71の単位時間当たりの開度変化量である開度変化率を予め定められた開度変化率にする内容も含まれている。ベンチレータ弁71は、この閉指令を受けると、予め定められた開度変化率で徐々に閉じられる。
【0064】
ここで、起動モードがホットモードの場合とコールドモードの場合とにおける各弁の動作タイミングの相違について、
図3及び
図4を用いて説明する。なお、
図3は起動モードがホットモードの場合のタイミングチャートを示し、
図4は起動モードがコールドモードの場合のタイミングチャートを示す。
【0065】
ガスタービン10の出力が得られ始めるタイミングt1は、基本的に、ホットモードの場合とコールドモードの場合とで同じである。但し、ガスタービン10の出力が定格出力に至るまでの時間は、ホットモードの場合よりコールドモードの場合の方が長くなる。
【0066】
各蒸気タービン31,32,33の蒸気止め弁61,64,66及び蒸気加減弁62,65,67を開ける条件、つまり、各蒸気タービン31,32,33に供給する蒸気の供給開始条件は、ホットモードの場合とコールドモードの場合とで同じである。しかしながら、コールドモードの場合、ホットモードの場合よりも排熱回収ボイラー20に滞留している水の温度や各蒸気タービン31,32,33のメタル温度が低いため、各蒸気タービン31,32,33に供給する蒸気の供給開始条件が成立するタイミングがホットモードの場合のタイミングよりも遅くなる。よって、コールドモードの場合に各蒸気タービン31,32,33の蒸気止め弁61,64,66及び蒸気加減弁62,65,67が開くタイミング、さらに、蒸気タービン31,32,33の出力が得られ始めるタイミングt2(c)は、ホットモードの場合の同タイミングt2(h)より遅くなる。
【0067】
さらに、各蒸気タービン31,32,33の蒸気加減弁62,65,67の単位時間当たりの開度変化量である開度変化率が、ホットモードの場合よりもコールドモードの場合の方が小さい。言い換えると、ホットモードの場合よりもコールドモードの場合の方が、各蒸気タービン31,32,33の蒸気加減弁62,65,67はゆっくりと開く。このため、蒸気タービン31,32,33の出力は、ホットモードの場合よりもコールドモードの場合の方がゆっくりと増加する。
【0068】
プラントの起動過程で、各蒸気ラインで維持すべき圧力は、ホットモードの場合とコールドモードの場合とで同じである。すなわち、プラントの起動過程では、ホットモードの場合でもコールドモードの場合でも、主蒸気ライン41の圧力P2が5MPaに維持されるように高圧タービンバイパス弁68が制御され、再熱後蒸気ライン42bの圧力P3が2MPaに維持されるように中圧タービンバイパス弁72が制御され、低圧蒸気ライン43の圧力P4が0.5MPaに維持されるように低圧タービンバイパス弁73が制御される。
【0069】
ホットモードでの起動過程では、高圧蒸気タービン31の第一段静翼環の温度が400℃以上である。このため、ホットモードでの起動過程では、ベンチレータ弁制御器110の起動モード認識部113は、起動モードがホットモードであると認識する。しきい値変更部114は、前述したように、起動モード認識部113により認識された起動モードがホットモードである場合、しきい値を例えば4MPaに設定する。よって、ホットモードでの起動過程では、流入蒸気圧力計82で検知される圧力P1が4MPaになると、判断部111は、高圧蒸気タービン31に流入する高圧蒸気の流量が規定流量になったと判断する。判断部111が規定流量になったと判断すると、ベンチレータ弁制御器110の指令出力部112がベンチレータ弁71に対して閉指令を出力する。ベンチレータ弁71は、
図3に示しように、この閉指令を受けると、予め定められた開度変化率で閉じられる(t3(h))。
【0070】
また、コールドモードでの起動過程では、高圧蒸気タービン31の第一段静翼環の温度が400℃未満である。このため、コールドモードでの起動過程では、ベンチレータ弁制御器110の起動モード認識部113は、起動モードがコールドモードであると認識する。しきい値変更部114は、前述したように、起動モード認識部113により認識された起動モードがコールドモードである場合、しきい値を例えば2MPaに設定する。よって、コールドモードでの起動過程では、流入蒸気圧力計82で検知される圧力P1が2MPaになると、判断部111は、高圧蒸気タービン31に流入する高圧蒸気の流量が規定流量になったと判断する。判断部111が規定流量になったと判断すると、前述したように、ベンチレータ弁制御器110の指令出力部112がベンチレータ弁71に対して閉指令を出力する。ベンチレータ弁71は、
図4に示すように、この閉指令を受けると、予め定められた開度変化率で閉じられる(t3(c))。
【0071】
仮に、本実施形態において、ホットモードの場合にベンチレータ弁71が閉じ始める直前の高圧蒸気発生部21における高圧蒸気の発生量が200t/hであるとする。さらに、この高圧蒸気のうち、高圧タービンバイパス弁68及び排熱回収ボイラー20の再熱部26を経て再熱後蒸気ライン42bに流入する高圧蒸気の流量が100t/hであり、ベンチレータ弁71を介して復水器36に流入する高圧蒸気の流量が100t/hであるとする。この場合、再熱後蒸気ライン42bに流れる蒸気の流量は、中圧蒸気発生部23で発生した中圧蒸気を無視すると、ベンチレータ弁71を閉じる前後で、100t/hから200t/hに変化する。
【0072】
また、仮に、本実施形態において、コールドモードの場合にベンチレータ弁71が閉じ始める直前の高圧蒸気発生部21における高圧蒸気の発生量が150t/hであるとする。さらに、この高圧蒸気のうち、高圧タービンバイパス弁68及び排熱回収ボイラー20の再熱部26を経て再熱後蒸気ライン42bに流入する高圧蒸気の流量が100t/hであり、ベンチレータ弁71を介して復水器36に流入する高圧蒸気の流量が50t/hであるとする。この場合、再熱後蒸気ライン42bに流れる蒸気の流量は、前述と同様、中圧蒸気発生部23で発生した中圧蒸気を無視すると、ベンチレータ弁71を閉じる前後で、100t/hから150t/hに変化する。
【0073】
ここで、比較例として、コールドモードの場合に、高圧蒸気タービン31に流入する高圧蒸気の流量が規定流量になったか否かを判断するしきい値が、ホットモードの場合と同じある例について説明する。この比較例においても、本実施形態のコールドモードの場合と同様、コールドモードの場合にベンチレータ弁71が閉じ始める直前の高圧蒸気発生部21における高圧蒸気の発生量が、150t/hであるとする。この比較例では、高圧蒸気タービン31に流入する高圧蒸気の流量が規定流量になったか否かを判断するしきい値(規定流量が100t/h相当の4MPa)が、コールドモードの場合でもホットモードの場合と同じであるため、ベンチレータ弁71が閉じ始める直前でベンチレータ弁71を介して復水器36に流入する高圧蒸気の流量が100t/hになる。言い換えると、
図4に示すように、比較例でベンチレータ弁71を閉じるタイミングt3(cc)は、本実施形態でベンチレータ弁71を閉じるタイミングt3(c)よりも遅くなる。この結果、高圧蒸気発生部21における高圧蒸気の発生量のうち、高圧タービンバイパス弁68及び排熱回収ボイラー20の再熱部26を経て再熱後蒸気ライン42bに流入する高圧蒸気の流量が50t/h(=150t/h−100t/h)になる。よって、この比較例では、コールドモードの場合、再熱後蒸気ライン42bに流れる蒸気の流量は、中圧蒸気発生部23で発生した中圧蒸気を無視すると、ベンチレータ弁71を閉じる前後で、50t/hから150t/hに変化する。
【0074】
従って、比較例でのコールドモードの場合は、本実施形態のコールドモード及びホットモードの場合よりも、ベンチレータ弁71を閉じる前後での再熱後蒸気ライン42bに流れる蒸気の流量変化率が大きくなる。このため、比較例でのコールドモードの場合、再熱蒸気ライン42に関する制御系、より具体的には、再熱後蒸気ライン42bを通る蒸気の状態量等に基づいて制御する制御系が不安定になる可能性が高くなる。
【0075】
しかしながら、本実施形態では、以上で説明したように、高圧蒸気タービン31に流入する高圧蒸気の流量が規定流量になったか否かを判断するしきい値を、ホットモードの場合に4MPa(規定流量が100t/h相当)とし、コールドモードの場合に2MPa(規定流量が50t/h相当)にしている。このため、本実施形態では、コールドモードの場合でも、ベンチレータ弁71を閉じる前後での再熱後蒸気ライン42bに流れる蒸気の流量変化率をホットモードの場合と同様に比較的小さくすることができ、再熱蒸気ライン42に関する制御系が不安定になることを抑えることができる。
【0076】
プラントの起動過程では、高圧蒸気発生部21からの高圧蒸気の温度とこの高圧蒸気の発生量とには、正の相関性がある。つまり、プラントの起動過程では、高圧蒸気発生部21からの高圧蒸気の温度が高くなると、この高圧蒸気の発生量が多くなり、高圧蒸気発生部21からの高圧蒸気の温度が低くなると、この高圧蒸気の発生量が少なくなる。また、プラントの起動過程では、高圧蒸気の温度が高くなると、高圧蒸気タービン31に供給する高圧蒸気の流量が多くなる。このため、プラントの起動過程では、高圧蒸気の温度と高圧蒸気タービン31へ供給する高圧蒸気の流量とには、正の相関性がある。発明者は、係る点に着目して、本実施形態において、判断部111が規定流量になったか否かを判断するしきい値を、高圧蒸気の温度に対して正の相関性を持たせて変更している。このため、本実施形態では、高圧蒸気発生部21からの高圧蒸気の発生量が少ないときには規定流量が小さくなり、ベンチレータ弁71の閉じる前後での再熱後蒸気ライン42bに流れる蒸気の流量変化率を小さくすることができる。
【0077】
なお、以上の実施形態では、高圧蒸気タービン31に設けた温度計83で検知された温度に応じて、排熱回収ボイラー20の起動モードを認識している。しかしながら、今回のガスタービン10の起動が前回のガスタービン10の停止から予め定められた時間以内の場合に、排熱回収ボイラー20の起動モードがホットモードであると認識し、予め定められた時間を超える場合に、排熱回収ボイラー20の起動モードがコールドモードであると認識するようにしてもよい。
【0078】
また、以上の実施形態では、排熱回収ボイラー20の起動モードに応じて、しきい値を変更している。しかしながら、
図1中で想像線で示すように、主蒸気ライン41に温度計89を設け、この温度計89で検知される高圧蒸気の温度に応じて、しきい値を変更してもよい。この場合、高圧蒸気の温度が高いときにはしきい値を大きくし、高圧蒸気の温度が低いときにはしきい値を小さくする。すなわち、この場合、ベンチレータ弁制御器110は、排熱回収ボイラー20の起動モードを認識しない。
【0079】
また、以上では、しきい値として二つの値を採用しているが、三つ以上の値を採用してもよい。例えば、排熱回収ボイラー20の起動モードとして、高圧蒸気タービン31
の温度が450℃以上のホットモードと、高圧蒸気タービン31の温度が450℃未満で350℃以上のウォームモードと、高圧蒸気タービン31の温度が350℃未満のコールドモードがある場合、ホットモードのときにしきい値として4MPa、ウォームモードのときのしきい値として3MPa、コールドモードのときのしきい値として2MPaを設定するようにしてもよい。
【0080】
以上では、高圧蒸気タービン31に流入する高圧蒸気の特定の圧力を、判断部111が規定流量になったか否かを判断するしきい値にしている。しかしながら、高圧蒸気タービン31に流入する高圧蒸気の流量を検知する流量計を設け、この流量計で検知される特定の流量を、判断部111が規定流量になったか否かを判断するしきい値にしてもよい。
【0081】
また、以上では、ベンチレータ弁71に対する閉指令に、ベンチレータ弁71の単位時間当たりの開度変化量である開度変化率を予め定められた開度変化率にする内容が含まれている。そこで、この開度変化率に関しても、高圧蒸気の温度に対して正の相関性を持たせて変更してもよい。すなわち、高圧蒸気の温度が高い場合には、開度変化率を大きくし、高圧蒸気の温度が低い場合には、開度変化率を小さくしてもよい。
【0082】
また、本実施形態のコンバインドサイクルプラントは、高圧蒸気タービン31と中圧蒸気タービン32と低圧蒸気タービン33の3台の蒸気タービンを備えている。しかしながら、本実施形態の高圧蒸気タービン31に相当する第一蒸気タービンと本実施形態の中圧蒸気タービン32に相当する第二蒸気タービンとを備え、本実施形態の低圧蒸気タービン33に相当する蒸気タービンを備えていない場合でも、本発明を適用することができる。