(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記液体は、ヘキサン、ヘプタン、ノナン、クロロホルム、トルエン、オクタン、ジエチルエーテル、酢酸エチル及び塩化メチレンからなる群から選ばれた少なくとも一種を含む、請求項1に記載の波長変換部材の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の発光デバイスの発光強度は、封止部の厚みに左右される。しかしながら、量子ドットを含む樹脂組成物により封止部を構成した場合、封止部を乾燥する際の樹脂の収縮により、封止部の厚みにばらつきが生じ、封止部の厚みを均一にすることは困難である。従って、特許文献1に記載の発光デバイスには、発光強度のむらを小さくすることが困難であるという問題がある。
【0006】
本発明の主な目的は、発光強度等の特性のばらつきを小さくし得る構成を有する発光デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る発光デバイスは、励起光が入射したときに、励起光とは波長が異なる波長の光を出射する波長変換部材と、波長変換部材に励起光を照射する光源と、を備える発光デバイスであって、波長変換部材は、多孔質体と、多孔質体の内表面上に担持された量子ドットと、を有する。この場合、量子ドットを担持した多孔質体の厚みのばらつきを抑制できるため、発光強度等のばらつきを小さくし得る。
【0008】
本発明に係る発光デバイスでは、多孔質体が、複数の粒子の圧粉体又は焼結体により構成されていてもよい。多孔質体を圧粉体又は焼結体とすることで、量子ドットを多孔質体の内表面上に好適に担持できる。
【0009】
本発明に係る発光デバイスでは、多孔質体が、連続気泡を有していてもよい。この場合、連続気泡を通じて多孔質体の内部に量子ドットを好適に導入できるため、量子ドットを多孔質体の内表面上に好適に担持させることができる。
【0010】
本発明に係る発光デバイスでは、多孔質体が、無機材により構成されていることが好ましい。この場合、多孔質体が光源や量子ドットからの光によって劣化し難くなる。また、多孔質体の機械的強度を高めることができる。
【0011】
本発明に係る発光デバイスでは、多孔質体が、ガラス、シリカ、アルミナ、ジルコニア及びハフニアからなる群から選ばれた少なくとも一種により構成されていてもよい。この場合、多孔質体が光源や量子ドットからの光によって劣化することをより効果的に抑制できる。また、多孔質体の機械的強度をより効果的に高めることができる。
【0012】
本発明に係る発光デバイスは、波長変換部材が、多孔質体の外表面の少なくとも一部を覆うコーティング膜をさらに有していてもよい。この場合、コーティング膜により、量子ドットと、酸素や水分との接触を抑制できるので、量子ドットの酸素や水分に起因する劣化を抑制することができる。
【0013】
本発明に係る発光デバイスでは、コーティング膜が、ガラス、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、ITO(インジウムスズ酸化物)、フッ化マグネシウム及びフッ化セリウムからなる群から選ばれた少なくとも一種により構成されていてもよい。この場合、コーティング膜の酸素や水分の透過度が低いため、量子ドットの酸素や水分に起因する劣化をより効果的に抑制することができる。
【0014】
本発明に係る発光デバイスでは、波長変換部材は、量子ドットが担持された多孔質体を封止するセルをさらに有していてもよい。この場合、セルによって、波長変換部材中に含まれる量子ドットと、酸素及び水分との接触をより効果的に抑制できるので、量子ドットの酸素や水分に起因する劣化をさらに抑制することができる。
【0015】
本発明に係る発光デバイスでは、多孔質体の平均細孔径が、0.01μm〜500μmであってもよい。この場合、量子ドットを多孔質体の内表面上に好適に担持させることができる。
【0016】
本発明に係る発光デバイスでは、多孔質体は、厚みが5mm以下の部分を有していてもよい。この場合、多孔質体の厚みが5mm以下と薄いので、多孔質体の内部で光が過剰に散乱することを抑制できる。このため、光の透過率が低くなりすぎることを抑制することができる。
【0017】
本発明に係る波長変換部材は、多孔質体と、多孔質体の内表面上に担持された量子ドットと、を備える。この場合、量子ドットを担持した多孔質体の厚みのばらつきを抑制できるため、発光強度等のばらつきを小さくし得る。
【0018】
本発明に係る第1の波長変換部材の製造方法は、連続気泡を有する多孔質体を準備する工程と、量子ドットを含む液体を多孔質体に含浸させる工程と、量子ドットを含む液体を含浸した多孔質体を乾燥させることにより、多孔質体と、多孔質体の内表面上に担持された量子ドットとを有する波長変換部材を得る工程と、を備える。このようにすることにより、連続気泡を通じて多孔質体の内部に量子ドットを好適に導入できると共に、量子ドットを担持した多孔質体の厚みのばらつきを抑制できるため、波長変換部材の発光強度等のばらつきを小さくできる。
【0019】
本発明に係る第1の波長変換部材の製造方法では、液体は、ヘキサン、ヘプタン、ノナン、クロロホルム、トルエン、オクタン、ジエチルエーテル、酢酸エチル及び塩化メチレンからなる群から選ばれた少なくとも一種を含んでいてもよい。これらの液体は、低い沸点を有するため、多孔質体から液体を容易に除去することができる。
【0020】
本発明に係る第1の波長変換部材の製造方法は、乾燥させた多孔質体をセルで封止する工程をさらに含んでいてもよい。このようにすることにより、量子ドットと、酸素及び水分との接触を抑制することができる。よって、量子ドットの酸素や水分に起因する劣化を抑制することができる。
【0021】
本発明に係る第1の波長変換部材の製造方法は、多孔質体を、貫通孔を有するセル内に配する工程と、貫通孔から量子ドットを含む液体を注入し、量子ドットを含む液体を多孔質体に含浸させる工程と、量子ドットを含む液体を含浸した多孔質体を乾燥させた後に、貫通孔を塞ぐ工程と、をさらに備えていてもよい。このようにすることにより、量子ドットと、酸素及び水分との接触をより効果的に抑制することができる。よって、量子ドットの酸素や水分に起因する劣化をより効果的に抑制することができる。
【0022】
本発明に係る第2の波長変換部材の製造方法は、担体粒子と、量子ドットとを有するペーストを調製する工程と、ペーストを成形し、成形体を得る工程と、成形体を乾燥させることにより、担体粒子により構成された多孔質体と、多孔質体の内表面上に担持された量子ドットとを有する波長変換部材を得る工程と、を備える。このようにすることにより、量子ドットを担持した多孔質体の厚みのばらつきを抑制できるため、発光デバイスの発光強度等の特性のばらつきを小さくできる。
【0023】
本発明に係る第2の波長変換部材の製造方法では、成形体を焼成する工程をさらに行ってもよい。成形体を焼成することにより、発光の際に発生する熱によって、多孔質体の厚みが変化することを抑制することができるため、発光デバイスの発光強度等の特性のばらつきを小さくできる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、発光強度等の特性のばらつきを小さくし得る構成を有する発光デバイスを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施した好ましい形態について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0027】
また、実施形態等において参照する各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照することとする。また、実施形態等において参照する図面は、模式的に記載されたものである。図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。図面相互間においても、物体の寸法比率等が異なる場合がある。具体的な物体の寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0028】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る発光デバイス1の模式的断面図である。
【0029】
図1に示すように、発光デバイス1は、波長変換部材10と、光源11とを備える。
【0030】
波長変換部材10は、励起光が入射したときに、励起光とは波長が異なる波長の光を出射する部材である。光源11は、波長変換部材10に対して励起光を出射する。発光デバイス1においては、光源11から出射された光の実質的にすべてが波長変換部材10により吸収されてもよいし、一部の光が波長変換部材10を透過してもよい。すなわち、発光デバイス1は、光源11から出射され波長変換部材10を透過した光と、波長変換部材10から出射した光との混合光を出射するデバイスであってもよい。
【0031】
光源11は、例えば、LED(Light Emitting Diode)素子、LD(Laser Diode)素子等により構成することができる。
【0032】
図2は、波長変換部材10の一部分の模式的断面図である。
図2に示すように、波長変換部材10は、多孔質体12を備える。本実施形態では、多孔質体12は、複数の担体粒子13の圧粉体により構成されている。担体粒子13の粒子径は、0.5μm〜10μmであることが好ましく、1μm〜3μmであることがより好ましい。なお、担体粒子13の粒子径が小さすぎると、多孔質体12の気孔率が低下し、量子ドット14を多孔質体12の内表面上に担持させにくくなる場合がある。また、量子ドット14を含む液体に多孔質体12を含浸させて波長変換部材を作製する際に、多孔質体12から、溶媒が揮発しにくくなる。一方、担体粒子13の粒子径が大きすぎると、多孔質体12の気孔率が増大し、光の散乱が大きくなりすぎて透過率が低下しやすくなる場合がある。
【0033】
多孔質体12の気孔率は、特に限定されないが、例えば、5%〜45%程度であることが好ましく、5%〜40%であることがより好ましい。なお、多孔質体12の気孔率が低くなりすぎると、量子ドット14を多孔質体12の内表面上に担持させにくくなる場合がある。また、量子ドット14を含む液体に多孔質体12を含浸させて波長変換部材を作製する際に、多孔質体12から、溶媒が揮発しにくくなる場合がある。一方、多孔質体12の気孔率が大きくなりすぎると、光の散乱が大きくなりすぎて透過率が低下しやすくなる場合がある。
【0034】
多孔質体12の平均細孔径は、特に限定されないが、0.01μm〜500μmであることが好ましく、20μm〜100μmであることがより好ましい。多孔質体12の平均細孔径が小さすぎると、量子ドット14を多孔質体12の内表面上に担持させにくくなる場合がある。また、量子ドット14を含む液体に多孔質体12を含浸させて波長変換部材を作製する際に、多孔質体12から、溶媒が揮発しにくくなる場合がある。一方、多孔質体12の平均細孔径が大きすぎると、光の散乱が大きくなりすぎて透過率が低下しやすくなる場合がある。多孔質体12の平均細孔径は、多点BET法等により測定することができる。
【0035】
多孔質体12は、厚み(t)が5mm以下の部分を有することが好ましい。多孔質体12の厚み(t)が大きすぎると、光の散乱が大きくなりすぎて透過率が低下しやすくなる場合がある。但し、多孔質体12の厚み(t)が薄すぎると、面内における発光むらを緩和しにくくなり、発光デバイスの発光強度等の特性のばらつきが大きくなる場合がある。従って、多孔質体12の厚み(t)は、0.1mm以上であることが好ましい。
【0036】
担体粒子13は、無機材により構成されていることが好ましい。具体的には、担体粒子13は、例えば、ガラス、シリカ、アルミナ、ジルコニア及びハフニアからなる群から選ばれた少なくとも一種により構成されていることが好ましい。この場合、多孔質体が光源や量子ドットからの光によって劣化することをより効果的に抑制できる。また、多孔質体の機械的耐久性をより効果的に高めることができる。
【0037】
担体粒子13は、球状であることが好ましい。この場合、多孔質体12の内表面において光が過剰に散乱することを抑制することができる。従って、光の取り出し効率が高い発光デバイス1を得ることができる。
【0038】
本実施形態のように、多孔質体12を無機材により構成することにより、光源11からの光や量子ドット14から出射された光により多孔質体12が劣化し難い。また、多孔質体12の機械的耐久性を高めることができる。
【0039】
波長変換部材10では、多孔質体12の内表面に量子ドット14が担持されている。波長変換部材10は、1種類の量子ドット14を含んでいてもよいし、複数種類の量子ドット14を含んでいてもよい。複数種類の量子ドット14を含有させることで、変換光の色調に幅を持たせることが可能となる。
【0040】
なお、量子ドット14は、量子ドット14の励起光が入射したときに、励起光とは異なる波長の光を出射する。量子ドット14から出射される光の波長は、量子ドット14の粒子径に依存する。すなわち、量子ドット14の粒子径を変化させることにより得られる光の波長を調整することができる。このため、量子ドット14の粒子径は、得ようとする光の波長に応じた粒子径とされている。量子ドット14の粒子径は、通常、2nm〜10nm程度である。
【0041】
例えば、波長300nm〜440nmの紫外〜近紫外の励起光を照射すると青色の可視光(波長440nm〜480nmの蛍光)を発する量子ドット14の具体例としては、粒子径が2.0nm〜3.0nm程度のCdSe/ZnSの微結晶などが挙げられる。波長300nm〜440nmの紫外〜近紫外の励起光や波長440nm〜480nmの青色の励起光を照射すると緑色の可視光(波長が500nm〜540nmの蛍光)を発する量子ドット14の具体例としては、粒子径が3.0nm〜3.3nm程度のCdSe/ZnSの微結晶などが挙げられる。波長300nm〜440nmの紫外〜近紫外の励起光や波長440nm〜480nmの青色の励起光を照射すると黄色の可視光(波長が540nm〜595nmの蛍光)を発する量子ドット14の具体例としては、粒子径が3.3nm〜4.5nm程度のCdSe/ZnSの微結晶などが挙げられる。波長300nm〜440nmの紫外〜近紫外の励起光や波長440nm〜480nmの青色の励起光を照射すると赤色の可視光(波長が600nm〜700nmの蛍光)を発する量子ドット14の具体例としては、粒子径が4.5nm〜10nm程度のCdSe/ZnSの微結晶などが挙げられる。
【0042】
量子ドット14の粒子径に対する、担体粒子13の粒子径の比((担体粒子13の粒子径)/(量子ドット14の粒子径))は、10以上であることが好ましく、100以上であることがより好ましい。量子ドット14の粒子径に対する、担体粒子13の粒子径の比((担体粒子13の粒子径)/(量子ドット14の粒子径))は、100000以下であることが好ましく、10000以下であることがより好ましい。なお、量子ドット14の粒子径に対する、担体粒子13の粒子径の比((担体粒子13の粒子径)/(量子ドット14の粒子径))が小さすぎると、多孔質体12の気孔率が低下し、量子ドット14を多孔質体12の内表面上に担持させにくくなる場合がある。また、量子ドット14を含む液体に多孔質体12を含浸させて波長変換部材を作製する際に、多孔質体12から、溶媒が揮発しにくくなる場合がある。一方、量子ドット14の粒子径に対する、担体粒子13の粒子径の比((担体粒子13の粒子径)/(量子ドット14の粒子径))が大きすぎると、多孔質体12の気孔率が増大し、光の散乱が大きくなりすぎて透過率が低下しやすくなる場合がある。
【0043】
図1に示すように、波長変換部材10は、多孔質体12を封止するセル15を備えている。このため、波長変換部材10中に含まれる量子ドット14と、酸素及び水分との接触を抑制することができる。従って、量子ドット14の酸素や水分に起因する劣化を抑制することができる。また、セル15と光源11とが離間しているため、光源11の熱によりセル15内の量子ドット14が劣化し難い。
【0044】
量子ドット14の劣化をより効果的に抑制する観点から、セル15は、無機材により構成されていることが好ましく、ガラス材、セラミック材等により構成されていることがより好ましい。この場合、より確実に、波長変換部材10中に含まれる量子ドット14と、酸素及び水分との接触を抑制することができる。
【0045】
例えば特許文献1に記載のように、量子ドットを分散させた樹脂組成物により構成された波長変換部材は、例えば、量子ドットと樹脂とを含むペーストを印刷し、乾燥させることにより形成することができる。このような方法で形成した波長変換部材においては、例えば、ペーストにおける樹脂等の濃度が変化したり、ペーストの温度が変化したりすることがある。このため、ペーストの塗布時における粘度が変化する場合がある。ペーストの粘度が変化すると、厚みが変化しやすい。波長変換部材の厚みが変化すると、波長変換部材により吸収される励起光の量や、波長変換部材からの出射光の量が変化する。従って、量子ドットを分散させた樹脂組成物により波長変換部材が構成されている場合は、発光強度むらが大きくなりやすい。
【0046】
それに対して波長変換部材10では、多孔質体12の内表面に量子ドット14が担持されている。ペーストの塗膜の厚みの製造むらを小さくすることに比べ、製造時の体積収縮率を低くできるため、多孔質体12の厚みの製造むらを小さくすることは比較的容易である。従って、波長変換部材10によれば、発光強度等の特性のばらつきを小さくし得る。
【0047】
〔波長変換部材10の製造方法〕
波長変換部材10の製造方法は、特に限定されない。波長変換部材10は、例えば、以下の要領で製造することができる。
【0048】
〈第1の製造方法〉
まず、多孔質体12を作製する。多孔質体12は、例えば、担体粒子13を含むペーストを成形して得られた成形体を焼成することにより形成することができる。成形体には、例えば、樹脂やカーボン等の消失剤や、無機結合剤等を含ませておいてもよい。
【0049】
次に、量子ドット14を含む液体に多孔質体12を含浸させる。具体的には、量子ドット14を含む液体に多孔質体12を浸漬することにより、多孔質体12内に、量子ドット14を含む液体を侵入させる。多孔質体12に液体を好適に含浸させる観点からは、多孔質体12が連続気泡を有することが好ましい。
【0050】
次に、量子ドット14を含む液体を含浸した多孔質体12を乾燥させることにより、多孔質体12の気泡内に位置している液体を除去する。これにより、多孔質体12の内表面に量子ドット14を担持させることができる。
【0051】
量子ドット14を含む液体は、例えば、ヘキサン、ヘプタン、ノナン、クロロホルム、トルエン、オクタン、ジエチルエーテル、酢酸エチル及び塩化メチレンからなる群から選ばれた少なくとも一種を含んでいてもよい。これらの液体は、低い沸点を有する。このため、これらの液体を用いることにより、多孔質体12から液体を容易に除去することができる。
【0052】
多孔質体12を乾燥させた後に、多孔質体12をセル15で封止してもよい。
【0053】
以上の工程により、波長変換部材10を製造することができる。
【0054】
第1の製造方法では、多孔質体12を作製した後に、量子ドット14を担持させる。このため、量子ドット14を焼成時の高熱に曝す必要がない。従って、波長変換部材10を製造する際の熱による劣化を抑制できるとともに、耐熱性の低い量子ドット14をも使用し得る。また、多孔質体12であれば、量子ドットを分散させた樹脂組成物に比べて、製造時における体積収縮率が低く、多孔質体12の厚みの製造ばらつきを抑えることができる。よって、発光強度等の特性のばらつきを小さくし得る。
【0055】
〈第2の製造方法〉
第2の製造方法では、まず、担体粒子13と量子ドット14とを有するペーストを調製する。次に、そのペーストを成形し、成形体を得る。ペーストの成形方法は、特に限定されない。例えば、ペーストを、スクリーン印刷法やインクジェット印刷法等の印刷法により印刷し、乾燥させることにより成形してもよい。また、例えば、厚膜に印刷したペーストをさらにプレス成形してもよい。
【0056】
次に、成形体を乾燥させることにより、波長変換部材10を得ることができる。なお、成形体を乾燥させた後に、焼成することにより波長変換部材10を得てもよい。その場合は、焼成体により構成された波長変換部材10を製造することができる。焼成体により構成された波長変換部材10であれば、発光の際に発生する熱によって、波長変換部材10の厚みが変化することを抑制することができるため、発光デバイスの発光強度等の特性のばらつきを小さくできる。
【0057】
以下、本発明の好ましい実施形態の他の例について説明する。以下の説明において、上記第1の実施形態と実質的に共通の機能を有する部材を共通の符号で参照し、説明を省略する。
図2は、第2及び第3の実施形態において共通に参照する。
【0058】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態に係る発光デバイス1aの模式的断面図である。
【0059】
第1の実施形態では、光源11がセル15の外部に配されている例について説明した。但し、本発明は、この構成に限定されない。
図3に示すように、実装基板16aの上に光源11を備えたデバイス本体16の凹部内に、波長変換部材10が封止されるように、一方の表面の一部に波長変換部材10を形成した透明な無機材(例えば、ガラス材、セラミック材等)からなるカバー部材15aとデバイス本体16とを一体化してもよい。この場合、波長変換部材10は、カバー部材15aでデバイス本体16内に封止されるため、波長変換部材10中に含まれる量子ドット14と、酸素及び水分との接触を抑制することができる。また、光源11と波長変換部材10との配置精度を高くすることができる。さらに、発光デバイス1aをより小型化し得る。
【0060】
(第3の実施形態)
図4は、第3の実施形態に係る発光デバイス1bの模式的断面図である。
【0061】
図4に示すように、発光デバイス1bでは、多孔質体12の外表面の少なくとも一部がコーティング膜17により覆われている。このため、多孔質体12に含まれる量子ドット14と、酸素や水分との接触を抑制することができる。従って、量子ドット14の酸素や水分に起因する劣化を抑制することができる。量子ドット14の酸素や水分に起因する劣化をより効果的に抑制する観点からは、多孔質体12の外表面のうち、少なくともカバー部材15aにより覆われていない部分の実質的に全体を覆うことがより好ましく、多孔質体12の外表面の全体を覆うことがさらに好ましい。
【0062】
多孔質体12内への酸素や水分の侵入をより効果的に抑制する観点からは、コーティング膜17が無機材により構成されていることが好ましく、ガラス、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、インジウムスズ酸化物(ITO)、フッ化マグネシウム及びフッ化セリウムからなる群から選ばれた少なくとも一種により構成されていることがより好ましい。コーティング膜17の厚みは、0.01μm〜20μmであることが好ましく、1μm〜5μmであることがより好ましい。なお、コーティング膜17の厚みが小さすぎると、酸素や水分の侵入を抑制する効果が得にくくなる場合がある。一方、コーティング膜17の厚みが大きすぎると、コーティング膜にクラックが発生しやすくなり、酸素や水分の侵入を抑制する効果が得にくくなる場合がある。
【0063】
(第4の実施形態)
図5は、第4の実施形態に係る波長変換部材10aの模式的斜視図である。
図6は、第4の実施形態に係る波長変換部材10aの模式的断面図である。
【0064】
第1の実施形態における第1の製造方法では、量子ドット14を含む液体に含浸させた多孔質体12を乾燥させた後に、セル15により多孔質体12を封止する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0065】
第4の実施形態では、
図6に示すように、多孔質体12をセル15内に配した後に、量子ドット14を含む液体を多孔質体12に含浸させる例について説明する。
【0066】
第4の実施形態では、まず、作製した多孔質体12を、貫通孔15bを有するセル15内に配する。例えば、基板の上に、多孔質体12を構成するためのペーストを塗布し、乾燥させた後に焼成することにより多孔質体12を作製する。その後、多孔質体12の周辺部において、基板と、基板の上に配された別の基板とをガラスなどの無機融着剤を用いて融着することにより、内部に多孔質体12が配されたセル15を作製することができる。
【0067】
次に、貫通孔15bから、量子ドット14を含む液体を注入する。これにより、量子ドット14を含む液体を多孔質体12に含浸させる。
【0068】
次に、量子ドット14を含む液体を含浸した多孔質体12を乾燥させる。具体的には、例えば、セル15を加熱しながら減圧することにより、多孔質体12を乾燥させることができる。多孔質体12を好適に乾燥させる観点からは、貫通孔15bを複数設けておくことが好ましい。また、貫通孔15bを複数設けておくことにより、量子ドット14を含む液体を好適に注入することができる。
【0069】
次に、セル15の貫通孔15bを塞ぐ。具体的には、例えば、ガラス等の無機封止材を融着させることにより貫通孔15bを塞ぐことができる。
【0070】
上記工程により、波長変換部材10aを得ることができる。
【0071】
第4の実施形態では、多孔質体12をセル15内に配した後に、量子ドット14を含む液体に含浸させ、乾燥させる。よって、量子ドット14が酸素や水分と接触することをより効果的に抑制することができる。従って、量子ドット14の酸素や水分に起因する劣化を抑制することができる。
【0072】
波長変換部材10aでは、セル15の内側面の上に、反射部材18が設けられている。このため、セル15の内壁から光が出射することを抑制することができる。
【0073】
(第5の実施形態)
図7は、第5の実施形態に係る発光デバイス1cの模式的断面図である。
図7に示すように、第4の実施形態に係る波長変換部材10aを、光源11が搭載されたデバイス本体16に取り付けてもよい。