特許第6264292号(P6264292)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6264292
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】歯磨剤組成物及び歯の再石灰化促進剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20180115BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20180115BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   A61K8/19
   A61K8/44
   A61Q11/00
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-539692(P2014-539692)
(86)(22)【出願日】2013年9月27日
(86)【国際出願番号】JP2013076187
(87)【国際公開番号】WO2014054509
(87)【国際公開日】20140410
【審査請求日】2016年3月24日
(31)【優先権主張番号】特願2012-219239(P2012-219239)
(32)【優先日】2012年10月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織
(74)【代理人】
【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成
(74)【代理人】
【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100157831
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 克彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 幸司
(72)【発明者】
【氏名】今村 健一
(72)【発明者】
【氏名】坂本 亜希
(72)【発明者】
【氏名】青木 優子
【審査官】 松村 真里
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−007479(JP,A)
【文献】 特開2007−169234(JP,A)
【文献】 特開2008−063291(JP,A)
【文献】 特開2010−111648(JP,A)
【文献】 特開2010−006728(JP,A)
【文献】 特開平9−295924(JP,A)
【文献】 特開2012−56868(JP,A)
【文献】 特開2012−97057(JP,A)
【文献】 特開2014−224124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)平均一次粒子径が0.04〜1μmである微細炭酸カルシウム(但し、水溶性薬効成分化合物が担持されてなる薬効成分複合化炭酸カルシウム微粒子を除く)0.1〜10質量%と、(B)脂肪酸アミドプロピルベタイン0.1〜5質量%とを含有してなり、組成物のpHが7〜10であることを特徴とする歯磨剤組成物。
【請求項2】
(A)成分/(B)成分が質量比として0.02〜30である請求項1記載の歯磨剤組成物。
【請求項3】
(A)成分の配合量が組成物全体の0.5〜10質量%であり、(B)成分の配合量が0.2〜5質量%である請求項1記載の歯磨剤組成物。
【請求項4】
(A)成分の微細炭酸カルシウムが、50質量%以上の粒子の一次粒子径が0.04〜0.5μmの範囲内である請求項1、2又は3記載の歯磨剤組成物。
【請求項5】
(B)成分がヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインである請求項1乃至4のいずれか1項記載の歯磨剤組成物。
【請求項6】
更に、フッ素化合物をフッ素イオンとして400〜1,500ppm含有する請求項1乃至5のいずれか1項記載の歯磨剤組成物。
【請求項7】
更に、研磨剤を5〜50質量%、粘稠剤を5〜50質量%、粘結剤を0〜5質量%、アニオン性界面活性剤,非イオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤から選ばれる界面活性剤を0.5〜5質量%含有する練歯磨剤組成物である請求項1乃至6のいずれか1項記載の歯磨剤組成物。
【請求項8】
(A)平均一次粒子径が0.04〜1μmである微細炭酸カルシウム(但し、水溶性薬効成分化合物が担持されてなる薬効成分複合化炭酸カルシウム微粒子を除く)0.1〜10質量%と、(B)脂肪酸アミドプロピルベタイン0.1〜5質量%とを含有してなり、pHが7〜10である歯の再石灰化促進剤。
【請求項9】
(A)成分/(B)成分が質量比として0.02〜30である請求項8記載の歯の再石灰化促進剤。
【請求項10】
(A)成分の微細炭酸カルシウムが、50質量%以上の粒子の一次粒子径が0.04〜0.5μmの範囲内である請求項8又は9記載の歯の再石灰化促進剤。
【請求項11】
(B)成分がヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインである請求項8乃至10のいずれか1項記載の歯の再石灰化促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯の再石灰化促進効果に優れ、高いう蝕予防効果を奏し、また、製剤の外観安定性が良好な歯磨剤組成物及び歯の再石灰化促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
歯の再石灰化を促進するために、口腔内にカルシウムを供給する方法として、コロイド性炭酸カルシウムを用いる技術が特許文献1(特開平9−295924号公報)に提案されている。これは、コロイド性炭酸カルシウムを歯垢中で産生される酸の中和剤として使用した結果、カルシウムイオンを口腔内に放出することによるものである。
【0003】
炭酸カルシウムの配合により高い再石灰化効果を発揮させるには、炭酸カルシウムが口腔内で短時間のうちに分解し、カルシウムイオンを放出する必要がある。炭酸カルシウムの分解性を決める要因の一つとして、炭酸カルシウムの粒子径があり、特許文献1では平均一次粒子径が0.04〜3μmと規定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−295924号公報
【特許文献2】特開平11−29454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように炭酸カルシウムを用いた歯の再石灰化促進については、従来から種々の提案がなされているが、再石灰化促進に対してより有効な歯磨剤組成物を与える新たな技術が求められていた。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、歯の再石灰化促進効果に優れ、高いう蝕予防効果を奏し、また、製剤の外観安定性が良好な歯磨剤組成物及び歯の再石灰化促進剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、(A)平均一次粒子径が1μm以下である微細炭酸カルシウムと、(B)両性界面活性剤とを併用して配合し、pHが7以上であることによって、歯の再石灰化促進に対して優れた効果を有することを知見した。また、製剤の外観安定性にも優れることを知見した。
【0008】
即ち、出願人は、歯垢内で産生された酸の中和能或いはう蝕予防効果を発揮できる炭酸カルシウムとして、50質量%以上の粒子が一次粒子の大きさとして粒子径0.04〜0.5μmの範囲にある微細炭酸カルシウムが有効であることを特許文献1に提案したが、微細炭酸カルシウムによる再石灰化促進効果は十分とは言い難いものであった。そこで、本発明者らは、微細炭酸カルシウムによる再石灰化の促進について、更に検討を進めた結果、(A)、(B)成分を併用し、pHが7以上であると、意外にも、(A)、(B)成分が相乗的に作用して格段に高い再石灰化促進効果を奏することを見出した。
更に詳述すると、微細炭酸カルシウムは、歯磨剤組成物中で他の配合成分、例えば研磨剤、水などの影響で凝集し易く、一旦凝集すると、再分散させることが困難となり、口腔内で分解し難くなるという課題が生じるが、本発明においては、(A)成分に(B)成分の両性界面活性剤、特に脂肪酸アミドプロピルベタインが特異的に作用し、これにより(A)成分の製剤中での凝集が抑制されて分散性が向上し、かつ口腔内へのカルシウムイオン放出性が高まり、再石灰化促進効果が向上すると推測される。また、製剤中で微細炭酸カルシウムが分解してカルシウムイオンが放出されると、経時において練り肌等の製剤外観に課題が生じるが、本発明によれば、口腔内でのカルシウムイオンの放出性は高まるが、製剤中での微細炭酸カルシウムの分解は抑えられ、製剤外観を安定に維持することもできる。
一般に歯の再石灰化とは、歯垢内で産生された酸により口内のpHが酸性に傾いてミネラル(Ca2+とHPO42-)の溶出が生じた後、唾液等の作用によりpHが中性方向に傾き、一度溶け出したミネラルが再び歯の内部に戻って、溶かされた歯の表層下を修復する作用のことである。本発明では、(A)成分の微細炭酸カルシウムが口腔内の細部にまで行き渡ることで、酸の中和及びカルシウムイオンの補給によりミネラルの再沈着が進み、再石灰化がより促進されると推測される。
このように本発明では、(A)、(B)成分の併用によって特異的に歯の再石灰化促進効果が増強し、単なる微細炭酸カルシウムの配合、更には単なる界面活性剤の添加では達成し得ない格別顕著な作用効果を与える。
【0009】
なお、特許文献2(特開平11−29454号公報)は、BET比表面積が特定範囲で、一次粒子の平均粒径が1μm以下である極微細炭酸カルシウムに特定のアルギン酸塩を併用して配合することで、上記極微細炭酸カルシウムが特異的にプラークに付着して再石灰化を向上し得るものであり、本発明とは技術的に相違する。
【0010】
従って、本発明は、(A)平均一次粒子径が0.04〜1μmである微細炭酸カルシウム(但し、水溶性薬効成分化合物が担持されてなる薬効成分複合化炭酸カルシウム微粒子を除く)0.1〜10質量%と、(B)脂肪酸アミドプロピルベタイン0.1〜5質量%とを含有してなり、組成物のpHが7〜10であることを特徴とする歯磨剤組成物、及び(A)平均一次粒子径が0.04〜1μmである微細炭酸カルシウム(但し、水溶性薬効成分化合物が担持されてなる薬効成分複合化炭酸カルシウム微粒子を除く)0.1〜10質量%と、(B)脂肪酸アミドプロピルベタイン0.1〜5質量%とからなり、pHが7〜10である歯の再石灰化促進剤を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、歯の再石灰化を促進する効果が向上し、高いう蝕予防効果を奏し、また、製剤の外観安定性が良好な歯磨剤組成物及び歯の再石灰化促進剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明につき更に詳述する。本発明の歯磨剤組成物は、(A)平均一次粒子径が1μm以下である微細炭酸カルシウム、(B)両性界面活性剤を含有してなり、pHが7以上であることを特徴とする。
【0013】
(A)成分の微細炭酸カルシウムは、平均一次粒子径が1μm以下であり、好ましくは0.04〜1μm、より好ましくは0.04〜0.5μmである。平均一次粒子径が1μmを超えると、有効性が低下し満足な再石灰化促進効果が得られない。なお、平均一次粒子径が0.04μm未満のものは製造が困難な場合がある。
【0014】
ここで、一次粒子径は、電子顕微鏡で粒子の大きさを測定した値であり、測定法は下記の通りである(以下、同様)。
粒子を水に分散し、更に超音波を数分間照射して高度に分散させ、この分散液を電子顕微鏡観察用の保持台に少量滴下して乾燥させ、最後に蒸着して電子顕微鏡観察を行った。粒子径の計測には、異なった4つの視野から一次粒子と認めることができる粒子のみを選択して(1視野あたり25個)計測した。粒子が不定形の場合は、最長径と最短径の積の平方根を一次粒子径とした。
合計100個の一次粒子径を平均したものを一次粒子の平均粒子径とした。
【0015】
(A)成分の微細炭酸カルシウムとしては、特に50質量%以上、とりわけ90質量%以上の粒子が一次粒子の大きさとして粒子径0.04〜0.5μmの範囲にあるものが、再石灰化促進効果の有効性の点からより好適である。
【0016】
上記微細炭酸カルシウムは、遊離のカルシウムイオンを放出しミネラル(カルシウムアパタイト)の溶解を抑制し、同時に再石灰化(ミネラルの再沈着)を促進する。上記平均一次粒子径を超えるものではかかる作用効果に劣る。通常、研磨剤として使用される炭酸カルシウムの平均一次粒子径は1μmを超え、多くは3〜30μmである。この場合、一次粒子径0.5μm以下の粒子を累積値として1〜3質量%程度含むが、このような炭酸カルシウムでは再石灰化促進効果はない。
【0017】
微細炭酸カルシウムとしては、粒子径分布を制御し易いなど製法上の点から軽質炭酸カルシウムが好適に使用できる。
(A)成分の微細炭酸カルシウムとしては、例えば白石カルシウム(株)製の商品名 カルエッセン−A、コロカルソ−EX、コロカルソ−MG等の市販品を使用できる。
【0018】
(A)成分の配合量は、組成全体の0.1〜10%(質量%、以下同様。)が好ましく、より好ましくは0.5〜10%、さらに好ましくは0.5〜3%である。配合量が多いほど再石灰化促進効果が高まるが、10%以下であると、(B)成分の両性界面活性剤による分散効果を満足に発揮させることができ、また、製剤外観を安定に維持できることから好ましい。
【0019】
本発明では、(A)微細炭酸カルシウムに(B)両性界面活性剤を併用することで、高い再石灰化促進効果を奏するもので、(A)成分を欠くと再石灰化促進効果が発揮されず、また、(B)成分を欠くと再石灰化促進効果に劣り、本発明の目的が達成されない。
【0020】
(B)成分の両性界面活性剤としては、ベタイン型の界面活性剤が好ましく、例えばヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等の脂肪酸アミドプロピルベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のアルキルイミダゾリニウムベタイン、アルキルベタインなどが挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。中でも、脂肪酸アミドプロピルベタイン、アルキルイミダゾリニウムベタイン、とりわけヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインが、特に再石灰化促進効果が高い上に異味が弱く、好適に使用できる。なお、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインにおいて、ヤシ油脂肪酸はラウリン酸、ミリスチン酸等を含むものとして脂肪酸の成分、比率が化粧品原料基準の注解に示されており、(B)成分は医薬部外品原料規格に記載のものを使用し得る。
【0021】
両性界面活性剤は市販品を使用できる。ベタイン型両性界面活性剤として具体的には、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインとして商品名 TEGO Betain CK OK(EVONIK社製)、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインとしてエナジコールC−40H(ライオン(株)製)等が挙げられる。
【0022】
(B)成分の配合量は、組成全体の0.1〜5%が好ましく、より好ましくは0.2〜5%、さらに好ましくは0.5〜5%、とりわけ0.5〜2.5%が好ましい。配合量が多いほど再石灰化促進効果を高めることができ、0.1%以上配合することが効果発現には好適であり、5%以下であることが、製剤の外観安定性を維持するのに好ましい。
【0023】
(A)成分と(B)成分との配合比率は、(A)成分/(B)成分が質量比として好ましくは0.02〜30、より好ましくは0.05〜25、さらに好ましくは0.2〜20、とりわけ0.2〜5が好適である。配合比率が上記範囲内であると、再石灰化促進効果がより高まり、製剤の外観安定性にも優れる。
【0024】
本発明の歯磨剤組成物のpH(25℃)は7以上であり、再石灰化促進効果と製剤安定性の点から、好ましくは7〜10、より好ましくは7〜9である。pH7以上であると、(A)、(B)成分の併用系が再石灰化促進効果に優れる。pH7未満であると、上記併用系による再石灰化促進効果が発揮されない。また、(A)成分の微細炭酸カルシウムが、製剤中で溶解してカルシウムイオンが溶出し、製剤安定性に劣る。なお、なりゆきで組成物のpHが7以上になるときもあるが、必要に応じて水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のpH調整剤を用いて適切なpHに調整してもよい。
【0025】
本発明の歯磨剤組成物には、上記成分に加えて、更にフッ素化合物を配合することが好ましく、フッ素化合物を配合すると歯の脱灰抑制効果が向上し、う蝕予防効果をより高めることができる。
フッ素化合物としては、フッ化ナトリウム、フッ化アンモニウム、フッ化カリウム等のアルカリフッ化物、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸アンモニウム、モノフルオロリン酸カリウム等のモノフルオロリン酸塩などの可溶性フッ素化合物が挙げられる。
【0026】
フッ素化合物を配合する場合、その配合量は組成全体に対して、フッ素イオンとして400〜1,500ppm、特に500〜1,000ppmが好ましい。1,500ppm以下であることが、製剤安定性を良好に維持するのに好適である。
【0027】
本発明の歯磨剤組成物は、練歯磨剤、液状歯磨剤等として、特に練歯磨剤として好適に調製される。また、その剤型に応じて、上記成分以外に通常使用される公知の成分を必要に応じて配合できる。例えば、研磨剤、粘稠剤、粘結剤、界面活性剤、香料、甘味料、防腐剤、着色剤、上記以外の有効成分などを、本発明の効果を妨げない範囲で通常量で用いることができる。
【0028】
(A)微細炭酸カルシウムは研磨剤としての機能はほとんどないため、別途研磨剤を配合することが好ましい。研磨剤としては、従来使用されている、平均一次粒子径が1μmを超え、特に3〜30μm程度の研磨剤用炭酸カルシウムをはじめ、シリカゲル、沈降シリカ、アルミノシリケート、ジルコノシリケート等のシリカ系研磨剤(平均一次粒子径は通常、0.01〜0.03μm程度)、第2リン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ゼオライト、ケイ酸ジルコニウム、第3リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、第4リン酸カルシウム、合成樹脂系研磨剤等が挙げられる。なお、研磨剤の平均一次粒子径は、上記と同様に電子顕微鏡により測定し求めた値である。
研磨剤の配合量は通常、組成全体の5〜50%、特に10〜30%である。
【0029】
粘稠剤としては、ソルビット、キシリット、マルチット、ラクチット等の糖アルコール、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコールが挙げられる。これら粘稠剤の配合量は通常、組成全体の5〜50%である。
【0030】
粘結剤としては、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、カラギーナン、ポリアクリル酸ナトリウム、増粘性シリカ等が挙げられる。粘結剤の配合量は通常、組成全体の0〜5%、特に0.1〜5%である。
【0031】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤を配合できる。具体的に、アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシンナトリウム、N−ミリストイルサルコシンナトリウム等のN−アシルサルコシンナトリウム、α−オレフィンスルフォン酸ナトリウムなどが挙げられる。
非イオン性界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の糖アルコール脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等の多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のエーテル型又はエステル型の界面活性剤、ラウリン酸ジエタノールアミド等の脂肪酸アルカノールアミドなどが挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、アルキルアンモニウム、アルキルベンジルアンモニウム塩等が挙げられる。
これら界面活性剤の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で、組成全体の0.5〜5%が好ましい。
【0032】
甘味料としてはサッカリンナトリウム等、防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。着色剤としては、青色1号、黄色4号等が挙げられる。
【0033】
香料としては、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、グレープフルーツ油、スウィーティー油、柚油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料、及びこれら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料や、メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料など、歯磨剤組成物に用いられる公知の香料素材を組み合わせて使用することができる。
【0034】
有効成分としては、フッ素化合物以外にも、例えばデキストラナーゼ、ムタナーゼ等の酵素、正リン酸のカリウム塩、ナトリウム塩等の水溶性リン酸化合物、イソプロピルメチルフェノール、トラネキサム酸、イプシロン−アミノカプロン酸、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、ヒノキチオール、アスコルビン酸、酢酸dl−トコフェロール、ジヒドロコレステロール、α−ビサボロール、クロルヘキシジン塩類、アズレン、グリチルリチン、グリチルレチン酸、銅クロロフィリンナトリウム、クロロフィル、グリセロホスフェート、グルコン酸銅、乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム、硝酸カリウム、ベルベリン、ヒドロキサム酸及びその誘導体、トリポリリン酸ナトリウム、ゼオライト、メトキシエチレン、無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エピジヒドロコレステリン、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、ジヒドロコレステロール、トリクロロカルバニリド、クエン酸亜鉛、トウキ軟エキス、オウバクエキス、カミツレ、チョウジ、ローズマリー、オウゴン、ベニバナ等の植物抽出物などを配合できる。これら有効成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で有効量とすることができる。
なお、本発明組成物は、溶剤として精製水が配合され、組成中の水分量は通常量でよい。
【0035】
更に、本発明では、(A)平均一次粒子径が1μm以下である微細炭酸カルシウムと、(B)両性界面活性剤とからなり、pHが7以上である歯の再石灰化促進剤を提供する。この場合、(A)成分/(B)成分は質量比として好ましくは0.02〜30であり、この範囲内であると、再石灰化促進効果がより優れ、また、製剤の外観安定性もより優れる。
なお、配合成分、その配合量、配合比率、pH等の詳細については、いずれも歯磨剤組成物にかかわる上記記載と同様である。
【実施例】
【0036】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は特に断らない限りいずれも質量%を示す。
【0037】
[実施例、参考例及び比較例]
表1、2に示す組成の練歯磨剤組成物を常法により調製し、下記方法で再石灰化促進効果、製剤安定性を評価した。結果を表に併記する。
【0038】
また、使用原料の詳細は下記の通りである。微細炭酸カルシウムの平均一次粒子径は、上記と同様に電子顕微鏡により測定した値である。
(A)微細炭酸カルシウム;
微細炭酸カルシウム(A−1);コロカルソ−EX(白石カルシウム(株)製、平均一次粒子径0.25μm、50%以上の粒子の一次粒子径は0.04〜0.5μmの範囲内。)
微細炭酸カルシウム(A−2);カルエッセン−A(白石カルシウム(株)製、平均一次粒子径0.07μm、50%以上の粒子の一次粒子径は0.04〜0.5μmの範囲内。)
(B)ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン;TEGO Betain CK OK(EVONIK社製)
(B)2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン;エナジコールC−40H(ライオン(株)製)
無水ケイ酸;ローディア社製のシリカ系研磨剤
【0039】
(1)再石灰化促進効果の評価方法
ヒト臼歯の歯ブロックをpH4.5の脱灰液に浸漬して初期う蝕サンプルを作製した。QLF(Quantitative Light−induced Fluoresence)を用いて、初期平均脱灰深さΔF0値を測定した。この歯ブロックを用いて、歯磨剤組成物の3倍希釈液で3分間処置→水洗浄→人工唾液(pH6.0、37℃)を2週間繰り返し行った。その後、QLFを用いて歯ブロックの平均脱灰深さΔF値を測定し、下記の計算方法にて再石灰化率を算出し、下記基準にて評価を行った。
再石灰化率[%]=(ΔF−ΔF0)/ΔF0×100
再石灰化促進効果の評価基準
◎:再石灰化率が50%以上
○:再石灰化率が30%以上50%未満
△:再石灰化率が20%以上30%未満
×:再石灰化率が20%未満
【0040】
(2)製剤安定性(外観)の評価方法
調製した歯磨剤組成物をラミネートチューブに充填し、それぞれ5本ずつを40℃で1ヶ月間保存した。その後、常温に戻した歯磨剤組成物を歯ブラシの上にのせ、その外観を観察し、下記基準にて評価を行った。
製剤安定性(外観)の評点基準
4:表面状態にツヤがあり,ツブやシワなどが無く、なめらかである
3:表面状態はツブやシワなどがわずかに認められるが、なめらかであ

2:表面状態にツブ又はシワが認められ、ペーストの均一性がない状態
である
1:押し出したときのペースト状態に著しくツブ又はシワが認められ、
不均一でペーストの連続性がない状態である
製剤安定性(外観)の評価基準
◎:4.0点
○:3.0点以上4.0点未満
△:2.0点以上3.0点未満
×:2.0点未満
【0041】
【表1】
*:ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインとしての純分換算量(以下、同様。)。
【0042】
【表2】